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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20221212BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20221212BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221212BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B5/00 K
G03B17/14
H04N5/225 300
H04N5/225 400
H04N5/232 030
H04N5/232 480
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018167529
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020042078
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】灘本 健
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021253(JP,A)
【文献】特開2011-221148(JP,A)
【文献】特開2015-141391(JP,A)
【文献】特開2017-058660(JP,A)
【文献】特開2015-161730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 - 5/08
G03B 17/14
H04N 5/222 - 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学機器と、該第1の光学機器に対して着脱可能かつ通信可能に接続される第2の光学機器とを含み、前記第1および第2の光学機器のうち一方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な光学素子を有し、他方の光学機器が前記像振れ補正のために移動可能な撮像素子を有する撮像システムに用いられる前記第1の光学機器であって、
前記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報、前記他方の光学機器における前記撮像素子のメカニカルな移動可能量の情報および前記撮像素子の信号読出し範囲のサイズの情報を用いて、符号により区別される複数の振れ方向ごとに前記光学素子の移動による像振れ補正量前記撮像素子の移動による像振れ補正量の比率を設定する設定手段を有することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記設定手段は、前記光学素子の移動による像振れ補正可能量と、前記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報、前記他方の光学機器における前記撮像素子のメカニカルな移動可能量の情報および前記撮像素子の信号読出し範囲のサイズの情報を用いて決定される前記撮像素子の移動による像振れ補正可能量とに応じて、前記比率を設定することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記イメージサークル情報は、前記イメージサークルの中心位置と半径または直径の情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記設定手段は、前記イメージサークルの中心位置が前記信号読出し範囲の中心位置に対してずれている場合に前記振れ方向ごとに前記比率を設定することを特徴とする請求項3に記載の光学機器。
【請求項5】
前記第1の光学機器が前記一方の光学機器であり、前記第2の光学機器が前記他方の光学機器である場合に、前記設定手段は、前記撮像素子に対して設定した前記比率を前記第2の光学機器に送信することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項6】
前記第1の光学機器が前記他方の光学機器であり、前記第2の光学機器が前記一方の光学機器である場合に、前記設定手段は、前記光学素子に対して設定した前記比率を前記第2の光学機器に送信することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項7】
前記設定手段は、ロール振れに対する像振れ補正のために前記撮像素子を回転させる場合に、前記撮像素子の前記信号読出し範囲のサイズを、実際の前記信号読出し範囲のサイズより大きく設定して前記比率を設定することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項8】
前記設定手段は、前記撮像素子が電子式像振れ補正を行う場合に、前記撮像素子の前記信号読出し範囲のサイズを、実際の前記信号読出し範囲のサイズより小さく設定して前記比率を設定することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の光学機器。
【請求項9】
第1の光学機器と、該第1の光学機器に対して着脱可能かつ通信可能に接続される第2の光学機器とを含み、前記第1および第2の光学機器のうち一方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な光学素子を有し、他方の光学機器が前記像振れ補正のために移動可能な撮像素子を有する撮像システムに用いられる前記第1の光学機器であって、
前記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報を用いて、前記他方の光学機器における前記撮像素子の移動の初期位置を、符号により区別される前記撮像素子の移動方向ごとの移動可能量が互いに等しくなる位置であり、前記撮像素子の移動可能範囲の中心からずれた位置に移動させる制御手段を有することを特徴とする光学機器。
【請求項10】
前記光学素子と前記撮像素子の移動方向によらない該光学素子と該撮像素子の像振れ補正量の比率を設定する設定手段をさらに有することを特徴とする請求項に記載の光学機器。
【請求項11】
第1の光学機器と、該第1の光学機器に対して着脱可能かつ通信可能に接続される第2の光学機器とを含み、前記第1および第2の光学機器のうち一方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な光学素子を有し、他方の光学機器が前記像振れ補正のために移動可能な撮像素子を有する撮像システムに用いられる前記第1の光学機器の制御方法であって、
前記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報、前記他方の光学機器における前記撮像素子のメカニカルな移動可能量の情報および前記撮像素子の信号読出し範囲のサイズの情報を取得するステップと、
前記情報を用いて、符号により区別される複数の振れ方向ごとに前記光学素子の移動による像振れ補正量前記撮像素子の移動よる像振れ補正量の比率を設定するステップとを有することを特徴とする光学機器の制御方法。
【請求項12】
第1の光学機器と、該第1の光学機器に対して着脱可能かつ通信可能に接続される第2の光学機器とを含み、前記第1および第2の光学機器のうち一方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な光学素子を有し、他方の光学機器が前記像振れ補正のために移動可能な撮像素子を有する撮像システムに用いられる前記第1の光学機器の制御方法であって、
前記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報を取得するステップと、
該イメージサークルの情報を用いて、前記他方の光学機器における前記撮像素子の移動の初期位置を、符号により区別される前記撮像素子の移動方向ごとの移動可能量が互いに等しくなる位置であり、前記撮像素子の移動可能範囲の中心からずれた位置に移動させるステップとを有することを特徴とする光学機器の制御方法。
【請求項13】
光学機器のコンピュータに、請求項11または12に記載の制御方法に従う処理を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像振れ補正機能を有する撮像システムに用いられる交換レンズやカメラ等の光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的に像振れを低減する像振れ補正機能を有するレンズ交換型撮像システムには、交換レンズに設けられた補正レンズを光軸に対して移動させるとともに、カメラに設けられた撮像素子を光軸に対して移動させるものがある。
【0003】
ただし、補正レンズの移動可能量にはメカニカルな制限があり、撮像素子の移動可能量にはそれらに加えて交換レンズのイメージサークルによる制限がある。特許文献1には、補正レンズの移動可能量と撮像素子の移動可能量とに応じて、補正レンズの移動による像振れ補正量と撮像素子の移動による像振れ補正量との比率(補正比率)を変更する撮像システムが開示されている。
【0004】
また、レンズ交換式カメラでは、交換レンズの製造誤差等によってイメージサークルの中心が撮像素子の中心からずれる場合がある。特許文献2には、交換レンズにより結像されたチャートの像を撮像素子により撮像し、該チャート像に基づいて撮像素子の移動初期位置を本来の中心位置から移動させるカメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-265182号公報
【文献】特開2009-139877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、交換レンズの個体ごとにイメージサークルの中心のずれ量やずれ方向が異なる。この結果、撮像素子の移動可能量も、その移動方向(+方向と-方向)ごとに異なる。このため、特許文献1にて開示されているように単純に補正レンズの移動可能量と撮像素子の移動可能量とに応じて補正比率を決めると、良好な像振れ補正を行うことができない場合が生ずる。また、特許文献2にて開示されているように撮像素子の移動初期位置を本来の中心位置から移動させた場合も、同様に撮像素子の移動可能量が移動方向ごとに異なる。
【0007】
本発明は、イメージサークルの中心が撮像素子の中心からずれている場合でも、撮像素子の移動可能量を有効活用できるようにした光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての光学機器は、第1の光学機器と、該第1の光学機器に対して着脱可能かつ通信可能に接続される第2の光学機器とを含み、第1および第2の光学機器のうち一方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な光学素子を有し、他方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な撮像素子を有する撮像システムに用いられる第1の光学機器である。該光学機器は、上記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報、上記他方の光学機器における撮像素子のメカニカルな移動可能量の情報および撮像素子の信号読出し範囲のサイズの情報を用いて、符号により区別される複数の振れ方向ごとに光学素子の移動による像振れ補正量と該撮像素子の移動よる像振れ補正量の比率を設定する設定手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の一側面としての光学機器は、第1の光学機器と、該第1の光学機器に対して着脱可能かつ通信可能に接続される第2の光学機器とを含み、第1および第2の光学機器のうち一方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な光学素子を有し、他方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な撮像素子を有する撮像システムに用いられる第1の光学機器である。該光学機器は、上記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報を用いて、上記他方の光学機器における撮像素子の移動の初期位置を、符号により区別される該撮像素子の移動方向ごとの移動可能量が互いに等しくなる位置であり、撮像素子の移動可能範囲の中心からずれた位置に移動させる制御手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の一側面としての制御方法は、第1の光学機器と、該第1の光学機器に対して着脱可能かつ通信可能に接続される第2の光学機器とを含み、第1および第2の光学機器のうち一方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な光学素子を有し、他方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な撮像素子を有する撮像システムに用いられる第1の光学機器に適用される。該制御方法は、上記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報、上記他方の光学機器における撮像素子のメカニカルな移動可能量の情報および撮像素子の信号読出し範囲のサイズの情報を取得するステップと、これらの情報を用いて、符号により区別される複数の振れ方向ごとに光学素子の移動による像振れ補正量と該撮像素子の移動よる像振れ補正量の比率を設定するステップとを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の一側面としての制御方法は、第1の光学機器と、該第1の光学機器に対して着脱可能かつ通信可能に接続される第2の光学機器とを含み、第1および第2の光学機器のうち一方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な光学素子を有し、他方の光学機器が像振れ補正のために移動可能な撮像素子を有する撮像システムに用いられる第1の光学機器に適用される。該制御方法は、上記一方の光学機器が形成するイメージサークルの情報を取得するステップと、該イメージサークルの情報を用いて、上記他方の光学機器における撮像素子の移動の初期位置を、符号により区別される該撮像素子の移動方向ごとの移動可能量が互いに等しくなる位置であり、撮像素子の移動可能範囲の中心からずれた位置に移動させるステップとを有することを特徴とする。
【0012】
なお、コンピュータに上記各制御方法に従う処理を実行させるコンピュータプログラムも、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、イメージサークルの中心が撮像素子の中心からずれている場合であっても撮像素子の移動可能量を有効活用して像振れ補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1である撮像システムの構成を示すブロック図。
図2】交換レンズのイメージサークルの中心がIISメカストローク範囲の中心に対してずれていない場合のIIS駆動可能量を示す図。
図3】交換レンズのイメージサークルの中心がIISメカストローク範囲の中心に対してずれている場合のIIS駆動可能量を示す図。
図4】実施例1において行われる像振れ補正処理を示すフローチャート。
図5】実施例1におけるIIS駆動可能量の算出処理を示すフローチャート。
図6】実施例1においてIISによりロール振れ補正を行う場合のセンサ読出し範囲を示す図。
図7】実施例1における補正レンズと撮像素子の移動による像振れ補正の例を示す図。
図8】本発明の実施例2において行われる像振れ補正処理を示すフローチャート。
図9】本発明の実施例3において行われる像振れ補正処理を示すフローチャート。
図10】実施例3におけるセンサ有効サイズの設定処理を示すフローチャート。
図11】実施例3におけるセンサ有効サイズの設定処理を示す別のフローチャート。
図12】実施例3におけるIISでの画像切出し範囲を示す図。
図13】実施例3におけるIISのロール振れ補正分を考慮した画像読出し範囲を示す図。
図14】本発明の実施例4において行われる像振れ補正処理を示すフローチャート。
図15】本発明の他の実施例において行われる処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1である撮像システム10の構成を示している。撮像システム10は、第1の光学機器(一方の光学機器)としての交換レンズ101と、該交換レンズ101が着脱可能および通信可能に接続される第2の光学機器(他方の光学機器)としてのカメラ本体100とにより構成される。カメラ本体100は、カメラMPU102、操作部103、撮像素子104、カメラ側接続端子105、カメラ側ジャイロセンサ106および背面ディスプレイ120を有する。
【0017】
カメラMPU(カメラ制御手段)102は、カメラ本体100および交換レンズ101の制御全体を司るコンピュータであり、後述する操作部103からの入力に応じてAE、AFおよび撮像等の様々な動作を制御する。カメラMPU102は、カメラ側接続端子105および交換レンズ101に設けられたレンズ側接続端子111を通じて、コンピュータとしてのレンズMPU(レンズ制御手段)109との間で各種命令や情報を通信する。カメラ側接続端子105およびレンズ側接続端子111には、カメラ本体100から交換レンズ101に対して電源を供給するための電源端子も含まれている。
【0018】
操作部103は、各種撮像モードの設定を行うモードダイヤルや、撮像準備動作や撮像動作の開始を指示するためのレリーズボタン等を含む。レリーズボタンの半押し操作によって第1スイッチ(SW1)がオンになり、全押し操作により第2スイッチ(SW2)がオンになる。SW1のオンに応じて撮像準備動作としてのAEおよびAFが行われ、SW2のオンに応じて撮像(露光)動作の開始が指示され、該指示から所定時間後に撮像動作が開始される。SW1およびSW2のオフ/オンは、通信によりカメラMPU102からレンズMPU109に通知される。
【0019】
撮像素子104は、CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成され、後述する撮像光学系により形成される被写体像を光電変換して撮像信号を生成する。カメラMPU102は、撮像素子104からの撮像信号を用いて静止画や動画(映像信号)を生成する。
【0020】
カメラ側ジャイロセンサ106は、手振れ等によるカメラ本体100の角度振れ(以下、カメラ振れという)を検出して角速度信号としてのカメラ振れ検出信号を出力する振れセンサである。カメラMPU102は、カメラ振れ検出信号と交換レンズ101から受信するIIS補正比率(これについては後述する)に基づいて撮像素子アクチュエータ107を駆動して、撮像素子104を後述する撮像光学系の光軸に直交する方向または光軸に直交する方向の成分を含む方向に移動させる。これにより、カメラ振れに伴う像振れを低減(補正)する。この際、カメラMPU102は、撮像素子位置センサ108により検出される撮像素子104の位置(移動中心である光軸上の位置からの移動量)が目標位置に近づくように撮像素子アクチュエータ107のフィードバック制御を行う。これにより、撮像素子104の移動による像振れ補正(以下、IISという)を行う。なお、IISは、上下方向(ピッチ方向)のカメラ振れおよび左右方向(ヨー方向)のカメラ振れに対して行われる。
【0021】
表示手段としての背面ディスプレイ120は、カメラMPU102が撮像素子104からの撮像信号を用いて生成した映像信号に対応する動画像を表示する。撮像前においては、ユーザは表示される映像をファインダ映像(ライブビュー映像)として観察することができる。また、撮像後には、背面ディスプレイ120に撮像により生成された記録用の静止画または動画を表示することができる。本実施例にいう「撮像」とは、記録用撮像を意味する。
【0022】
交換レンズ101は、不図示の撮像光学系と、前述したレンズMPU109およびレンズ側接続端子111と、レンズ側ジャイロセンサ110とを有する。レンズ側ジャイロセンサ110は、交換レンズ101の角度振れ(レンズ振れ)を検出して角速度信号としてのレンズ振れ検出信号を出力する振れセンサである。
【0023】
レンズMPU109は、レンズ振れ検出信号と後述するOIS補正比率とに基づいてレンズアクチュエータ112を駆動して、撮像光学系の一部である光学素子としての補正レンズ113を撮像光学系の光軸に直交する方向に移動させる。これにより、レンズ振れに伴う像振れを低減(補正)する。この際、レンズMPU109は、レンズ位置センサ114により検出される補正レンズ113の位置(移動中心である光軸上の位置からの移動量)が目標位置に近づくようにレンズアクチュエータ112のフィードバック制御を行う。これにより、補正レンズ113の移動による像振れ補正(以下、OISという)を行う。
【0024】
なお、OISも、IISと同様に、ピッチ方向のレンズ振れおよびヨー方向のレンズ振れに対して行われる。また、補正レンズ113は、光軸に直交する方向に移動すればよく、光軸に直交する平面内で平行移動してもよいし、光軸上の点を中心に回動しながら該方向に移動してもよい。
【0025】
次に、交換レンズ101のイメージサークルの中心位置とIISにおける撮像素子104のメカニカルな移動可能範囲(以下、IISメカストローク範囲という)の中心位置との関係に応じた撮像素子104の制御上の移動可能量(以下、IIS駆動可能量という)について説明する。IIS駆動可能量から求まるIISによる像振れ補正可能量を以下、IIS補正可能量といい、補正レンズ113のメカニカルな又は制御上の移動可能範囲から求まるOISによる像振れ補正可能量を以下、OIS補正可能量という。本実施例では、IIS補正可能量とOIS補正可能量はいずれも角度(deg)である。また、前述したIIS補正比率とOIS補正比率はそれぞれ、IISとOISによる全像振れ補正可能量に対するIIS補正可能量の比率とOIS補正可能量の比率である。
【0026】
図2は、イメージサークル3の中心位置1′がIISメカストローク範囲2の中心位置1に一致する理想的な場合のIIS駆動可能量を示している図2および後述する図3において、右方向を+X方向(左方向を-X方向)とし、上方向を+Y方向(下方向を-Y方向)とする。
【0027】
IISでは、撮像素子104の撮像面のうち表示用または記録用画像を生成するための撮像信号を読み出す信号読出し範囲(以下、センサ読出し範囲という)4、イメージサークル3内かつIISメカストローク範囲2内に収まる範囲で移動させることができる。図2では、+X方向のIIS駆動可能量5と-X方向のIIS駆動可能量6とは互いに等しい。このため、+X方向のIIS補正比率と-X方向のIIS補正比率も互いに等しい。+Y方向と-Y方向についても同様である。
【0028】
一方、図3は、交換レンズ101の製造誤差等によりイメージサークル3の中心位置1′がIISメカストローク範囲2の中心位置1に対して左下にずれている場合を示している。この場合は、+X方向のIIS駆動可能量6′と-X方向のIIS駆動可能量5′とが互いに異なる(IIS駆動可能量6′がIIS駆動可能量5′より小さい)。このため、+X方向のIIS補正比率と-X方向のIIS補正比率も互いに異なる。この場合に、イメージサークルのずれ、言い換えれば撮像素子104の移動方向を考慮せずにIIS補正比率を設定しても、+X方向と-X方向のうち一方の方向においてIIS補正比率を実現することができない。
【0029】
具体的には、一方の方向において実際に実現可能なIIS補正比率より大きいIIS補正比率が設定され、センサ移動可能量を十分に活用することができない。また、これにより、実際に実現可能なOIS補正比率より小さいOIS補正比率が設定されると、OIS補正可能量も十分に活用することができない。この結果、良好な像振れ補正を行えなくなる。+Y方向と-Y方向についても同様である。本実施例は、このような問題を解消するため、以下のような処理を行う。
【0030】
図4のフローチャートは、カメラ本体100(カメラMPU102)および交換レンズ101(レンズMPU109)が行う像振れ補正処理1を示す。図4の左側にカメラMPU102が行う処理を、右側にレンズMPU109が行う処理をそれぞれ示している。カメラMPU102とレンズMPU109はそれぞれ、カメラ本体100と交換レンズ101内のメモリ130,140に記憶されたコンピュータプログラムに従ってそれぞれの処理を実行する。
【0031】
カメラ本体100の電源が投入されて交換レンズ101に電源が供給され、さらにカメラMPU102とレンズMPU109の間での通信が開始されると、カメラMPU102はステップS101にて本処理を開始する。以下では、X方向における像振れ補正処理について説明するが、Y方向についても同じ像振れ補正処理が行われる。このことは、後述する他の処理(フローチャート)についても同じである。
【0032】
ステップS101では、カメラMPU102は、レンズMPU109に対して、センサ有効サイズ、IISにおける撮像素子104のメカストローク量(以下、IISメカストローク量という)およびIISにおけるロール振れ補正可能角度を通信する。センサ有効サイズは、前述した撮像素子104におけるセンサ読出し範囲4のサイズ(横幅と縦幅)である。ロール振れ補正可能角度は、IISにより撮像素子104(センサ読出し範囲)の中心回りの回転振れであるロール振れによる像振れを補正するロール振れ補正(Roll補正)における最大補正可能角度である。
【0033】
こうしてレンズMPU109は、センサ有効サイズ、IISメカストローク量およびIISにおけるロール振れ補正可能角度を取得(受信)する。
【0034】
次にステップS102では、レンズMPU109は、交換レンズ101(撮像光学系)のイメージサークルの情報(以下、イメージサークル情報という)と焦点距離の情報(以下、焦点距離情報という)とをカメラMPU102に通知する。
【0035】
イメージサークル情報は、製造誤差等により設計上のイメージサークルの中心位置、つまりは撮像素子104のセンサ読出し範囲の中心位置からずれた実際のイメージサークルの中心位置の情報を少なくとも含む。本実施例においては、さらに、イメージサークルの半径の情報も含む。なお、イメージサークル情報がイメージサークルの直径を示してもよい。直径から半径を求められるからである。イメージサークル情報は、カメラMPU102が後にIIS駆動可能範囲を算出する際に必要となる。また、イメージサークル情報は、撮像光学系の焦点距離、フォーカス位置、絞り径および姿勢等の撮像条件に応じて変化しうる。そのため、レンズMPU109からカメラMPU102に通知するイメージサークル情報は、これらの撮像条件のパラメータのうちの少なくとも一つのパラメータの値と対応付けられていることが好ましい。
【0036】
焦点距離情報は、撮像光学系の焦点距離を示す情報であり、IISの制御において撮像素子104の移動による像振れ補正量(角度)を撮像素子104の移動量に変換するために必要となる。
【0037】
ステップS103では、レンズMPU109は、撮像素子104の移動方向(+X方向、-X方向)ごとのIIS補正可能量(角度)を算出する。図5のフローチャートを用いて、IIS補正可能量の算出方法について説明する。
【0038】
ステップS201では、レンズMPU109は、センサ読出し範囲4がイメージサークル3からはみ出ないようなIIS駆動可能量を移動方向ごとに計算する。ステップS101においてカメラMPU102から送られてきたロール振れ補正可能角度が0に設定されており、IISがロール振れ補正を行わない場合は図3の+方向のIIS駆動可能量6′と-方向のIIS駆動可能量5′を算出する。
【0039】
IISがロール振れ補正を行う場合は、カメラMPU102がIISにおけるロール振れ補正角度をレンズMPU109に通知し、レンズMPU109はそのロール振れ補正分も考慮してIIS駆動可能量5′,6′を算出する。図6は、IISがロール振れ補正を行う場合にセンサ読出し範囲4が移動(回転)し得る範囲7を示している。符号1,1′~4は図3中のそれらと同じである。
【0040】
センサ読出し範囲4が回転し得る範囲7は、センサ有効サイズとロール振れ補正可能角度とから計算される。具体的には、センサ読出し範囲4が回転し得る範囲7がイメージサークル3からはみ出ないようなIIS駆動可能量を移動方向(+X方向、-X方向)ごとに算出する。
【0041】
次にステップS202では、レンズMPU109は、センサ有効サイズとイメージサークル情報とから算出した移動方向ごとのIIS駆動可能量が、IISメカストローク量よりも小さいか否かを判定する。レンズMPU109は、IIS駆動可能量がIISメカストローク量よりも小さい場合はステップS203に進む。
【0042】
ステップS203では、レンズMPU109は、IIS補正比率を設定するために使用するIIS駆動可能量をセンサ有効サイズとイメージサークル情報から算出したIIS駆動可能量に設定する。IIS駆動可能量がIISメカストローク量よりも大きい場合はステップS204に進み、IIS補正比率を設定するために使用するIIS駆動可能量をIISメカストローク量に対応する駆動可能量に設定する。
【0043】
次に図4のステップS104において、レンズMPU109は、撮像光学系の焦点距離情報を用いてOIS駆動可能量をOIS補正可能角度θOISに変換する。以下の説明では、補正レンズ113が光軸に対して+X方向に移動する場合のOIS補正可能角度をOIS+補正可能角度θOIS とし、-X方向に移動する場合のOIS補正可能角度をOIS-補正可能角度θOIS とする。
【0044】
また本ステップにおいて、レンズMPU109は、撮像光学系の焦点距離情報を用いて、IIS駆動可能量をIIS補正可能角度θIISに変換する。以下の説明では、撮像素子104がその初期位置(センサ読出し範囲4の中心位置)から+X方向に移動する場合のIIS補正可能角度θIISをIIS+補正可能角度θIIS とし、-X方向に移動する場合のIIS補正可能角度θIISをIIS-補正可能角度θIIS とする。IIS駆動可能量は撮像素子104の移動方向ごとに異なるため、IIS補正可能角度も移動方向ごとに異なる。
【0045】
次にステップS105では、設定手段としてのレンズMPU109は、補正レンズ113と撮像素子104の移動方向ごとに、OIS補正比率とIIS補正比率を算出(設定)する。OIS補正比率は、OISとIISの双方による合計の像振れ補正量(全像振れ補正量:角度deg)に対するOISよる像振れ補正量(以下、OIS補正量という)の比率を示す。IIS補正比率は、上記全振れ補正量に対するIISによる像振れ補正量(以下、IIS補正量という)の比率を示す。
【0046】
OIS+補正比率、OIS-補正比率、IIS+補正比率およびIIS-補正比率は、以下のように計算される。
【0047】
OIS+補正比率:θOIS /(θIIS +θOIS )
OIS-補正比率:θOIS /(θIIS +θOIS )
IIS+補正比率:θIIS /(θIIS +θOIS )
IIS-補正比率:θIIS /(θIIS +θOIS )
次にステップS106では、レンズMPU109は、ステップS105で算出したIIS+補正比率とIIS-補正比率をカメラMPU102に通知(送信)する。
【0048】
そしてステップS107では、カメラMPU102は、ステップS106でレンズMPU109から通知された(受信した)IIS+補正比率とIIS-補正比率を用いたIISの制御を行う。具体的には、カメラMPU102は、カメラ側ジャイロセンサ106により検出されたカメラ振れとIIS±補正比率とに応じてIIS補正量を算出する。そして、該IIS補正量に対応する目標位置に撮像素子104を移動させるように撮像素子アクチュエータ107を制御する。
【0049】
ステップS107と同時にステップS108では、レンズMPU109は、ステップS105で算出したOIS+補正比率とOIS-補正比率を用いたOISの制御を行う。具体的には、レンズMPU109は、レンズ側ジャイロセンサ110により検出されたレンズ振れとOIS±補正比率とに応じてOIS補正量を算出する。そして、該OIS補正量に対応する目標位置に補正レンズ113を移動させるようにレンズアクチュエータ112を制御する。
【0050】
これにより、OISとIIS、すなわち補正レンズ113と撮像素子104の双方による協調像振れ補正が行われる。
【0051】
次に図7を用いて、OISとIISによる協調像振れ補正について説明する。図7の中段には、IIS補正量の変化を実線で示している。また、図7の下段には、OIS補正量の変化を実線で示している。さらに図7の上段には、中段で示したIIS補正量と下段に示したOIS補正量の合計である合計補正量を示しており、中段および下段には該合計補正量を点線で示している。これらの図において、0は補正レンズ113のメカストローク範囲(OISメカストローク範囲)とIISメカストローク範囲のそれぞれの中心位置を示す。
【0052】
OISにおいて、補正レンズ113はOISメカストローク範囲の中心位置を基準としたOIS+領域とOIS-領域とでレンズ振れに応じて移動される。一方、IISにおいて、撮像素子104はIISメカストローク範囲の中心位置(初期位置)を基準とするIIS+領域とIIS-領域とでカメラ振れに応じて移動される。
【0053】
中段の図に示すように、撮像素子104がIIS+領域で移動する際のIIS+補正比率とIIS-領域で移動する際のIIS-補正比率とが互いに異なる。すなわちレンズMPU109は、IIS+補正比率とIIS-補正比率として、IIS+補正可能角度θIIS とIIS-補正可能角度θIIS に応じて互いに異なる値を設定する。IIS+補正比率とIIS-補正比率が互いに異なることで、補正レンズ113がOIS+領域で移動する際のOIS+補正比率とOIS-領域で移動する際のOIS-補正比率も互いに異なる。
【0054】
以上説明したように、本実施例では、イメージサークルのずれによって生じるIIS+補正可能角度とIIS-補正可能角度との差異に応じて、IIS+補正比率とIIS-補正比率を互いに異なる適切な値に設定する。これにより、補正レンズ113と撮像素子104の駆動可能量を有効活用した像振れ補正を行うことができる。
【0055】
なお、本実施例において撮像光学系のフォーカスやズーム等の光学状態が変化した場合は、IISおよびOIS補正可能角度は再度計算される。カメラMPU102がIISおよびOIS補正可能角度を計算する場合、定期的に撮影光学系の現在の光学状態がカメラMPU102に通知され、当該情報と取得したイメージサークル情報に基づいてIISおよびOIS補正可能角度を算出する。このことは、他の実施例でも同様である。
【実施例2】
【0056】
本発明の実施例2では、第1の光学機器(他方の光学機器)としてのカメラ本体100が、第2の光学機器(一方の光学機器)としての交換レンズ101から受信したOIS補正可能角度、イメージサークル情報および焦点距離情報を用いてOIS補正比率およびIIS補正比率を補正レンズ113および撮像素子104の移動方向ごとに設定する。そして、交換レンズ101は、カメラ本体100から受信したOIS補正比率に応じてOISの制御を行う。本実施例の撮像システムの構成は実施例1と同じであり、共通する構成要素には実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0057】
図8のフローチャートは、カメラ本体100(カメラMPU102)および交換レンズ101(レンズMPU109)が行う像振れ補正処理2を示す。図8の左側にカメラMPU102が行う処理を、右側にレンズMPU109が行う処理をそれぞれ示している。カメラMPU102とレンズMPU109は、コンピュータプログラムに従ってそれぞれの処理を実行する。
【0058】
カメラ本体100の電源が投入されて交換レンズ101に電源が供給され、さらにカメラMPU102とレンズMPU109の間での通信が開始されると、レンズMPU109はステップS301にて本処理を開始する。
【0059】
ステップS301では、レンズMPU109は、OIS駆動可能量と焦点距離情報とからOIS補正可能角度θOISを算出し、これをカメラMPU102に通知する。
【0060】
次にステップS302では、レンズMPU109は、イメージサークル情報と焦点距離情報をカメラMPU102に通知する。この理由は実施例1のステップS102で説明した通りである。こうしてカメラMPU102はイメージサークル情報と焦点距離情報を取得(受信)する。
【0061】
次にステップS303では、カメラMPU102は、撮像素子104の移動方向(+X方向、-X方向)ごとのIIS駆動可能量を算出する。IIS駆動可能量の算出方法は、実施例1のステップS103で説明した算出方法と同じである。
【0062】
次にステップS304では、カメラMPU102は、ステップS303で算出したIIS駆動可能量を、ステップS302でレンズMPU109から通知された焦点距離情報を用いてIIS補正可能角度θIISに変換する。
【0063】
次にステップS305では、設定手段としてのカメラMPU102は、移動方向ごとのOIS補正比率(OIS+補正比率およびOIS-補正比率)とIIS補正比率(IIS+補正比率およびIIS-補正比率)を算出(設定)する。これらの算出方法は、実施例1のステップS105で説明した算出方法と同じである。
【0064】
次にステップS306では、カメラMPU102は、ステップS305で算出したOIS+補正比率とOIS-補正比率をレンズMPU109に通知(送信)する。
【0065】
そしてステップS307では、カメラMPU102は、実施例1のステップS107と同様に、ステップS306で算出したIIS+補正比率とIIS-補正比率を用いたIISの制御を行う。
【0066】
ステップS307と同時にステップS308では、レンズMPU109は、実施例1のステップS108と同様に、ステップS306でカメラMPU102から通知された(受信した)OIS+補正比率とOIS-補正比率を用いたOISの制御を行う。
【0067】
これにより、OISとIIS、すなわち補正レンズ113と撮像素子104の双方による協調像振れ補正が行われる。
【0068】
本実施例では、レンズMPU109からカメラMPU102にOIS補正可能角度としての角度換算値を通知する。しかし、本発明の他の実施例として、角度換算値の代わりにレンズMPU109が補正レンズ113の駆動可能量[mm]をカメラMPU102に通知してもよい。ただし、駆動可能量[mm]をカメラMPU102に通知する場合は、レンズMPU109は、像振れ補正敏感度(補正レンズ113の移動量[mm]を角度[deg]に変換するための敏感度)の情報を別途、カメラMPU102に通知する。
【0069】
両方法を比較すると、レンズMPU109はOIS補正可能角度をカメラMPU102に通知することがより好ましい。これにより、像ぶれ補正敏感度の分の通信量を削減できる。
【実施例3】
【0070】
本発明の実施例3では、第2の光学機器(他方の光学機器)としてのカメラ本体100は、IISに加えて電子式像振れ補正(以下、EISという)を行う。また、第1の光学機器(一方の光学機器)としての交換レンズ101が、カメラ本体100から受信したセンサ有効サイズとIISメカストローク量とを用いて、OIS補正比率とカメラ本体100が行うIISとEISの合計の補正比率としてのIIS+EIS補正比率を設定する。そして、カメラ本体100は、交換レンズ101から受信したIIS+EIS補正比率に応じてIISとEISを制御する。
【0071】
本実施例におけるレンズMPU109は、他の実施例とは異なり、OIS補正可能角度とIIS補正可能角度だけでなく、EISによる補正可能角度(以下、EIS補正可能角度という)も考慮して各補正比率を設定する必要がある。また、実施例1では、カメラMPU102がIISのロール振れ補正可能角度をレンズMPU109に通知し、レンズMPU109がロール振れ補正可能角度を考慮してIIS駆動可能量を算出する必要がある。これに対して実施例3では、レンズMPU109は、EIS補正可能角度とIISのロール振れ補正可能角度をカメラMPU102から受け取ることなく、各補正比率を算出する。これにより、カメラ本体100と交換レンズ101間での通信量の削減や補正比率の算出処理の簡素化が可能となる。
【0072】
図9のフローチャートは、カメラ本体100(カメラMPU102)および交換レンズ101(レンズMPU109)が行う像振れ補正処理3を示す。図9の左側にカメラMPU102が行う処理を、右側にレンズMPU109が行う処理をそれぞれ示している。カメラMPU102とレンズMPU109は、コンピュータプログラムに従ってそれぞれの処理を実行する。
【0073】
カメラ本体100の電源が投入されて交換レンズ101に電源が供給され、さらにカメラMPU102とレンズMPU109間での通信が開始されると、カメラMPU102はステップS401にて本処理を開始する。
【0074】
ステップS401では、カメラMPU102は、EIS補正可能角度とIISのロール振れ補正可能角度を考慮した上でセンサ有効サイズを算出する。この場合、カメラMPU102は、センサ有効サイズを実際のセンサ読出し範囲4とは異ならせる。図10のフローチャートを用いて、センサ有効サイズを算出する処理について説明する。
【0075】
ステップS501では、カメラMPU102は、カメラ本体100においてEISを行うか否かを判定する。カメラMPU102は、EISを行う場合はステップS502に進み、センサ有効サイズを、センサ読出し範囲4よりも小さいEIS切出しサイズに設定する。図11は、センサ読出し範囲4とEISにおける画像切出し範囲であるEIS切出し範囲8を示す。EIS補正可能角度は、EIS切出し範囲8がセンサ読出し範囲4内で移動できる最大量から決まる。また、イメージサークル3内かつIISメカストローク範囲2内でのEIS切出し範囲8の移動可能量は、センサ読出し範囲4内でのEIS切出し範囲8の移動可能量とIIS駆動可能量との和となる。
【0076】
次にステップS503では、カメラMPU102は、IISにおいてロール振れ補正を行うかを判定する。カメラMPU102は、ロール振れ補正を行う場合はステップS504に進む。
【0077】
ステップS504では、カメラMPU102は、センサ有効サイズを実際のセンサ読出し範囲4またはステップ502の処理が行われた場合はEIS切出し範囲8よりも大きく設定する。
【0078】
図12を用いて、IISのロール振れ補正分を考慮したセンサ有効サイズ9を示している。センサ有効サイズ9は、ロール振れ補正によってセンサ読出し範囲4が回転する範囲7をすべて含むような長方形として設定される。このセンサ有効サイズ9は以下の式(1)によって表される。
【0079】
【数1】
【0080】
式(1)において、Lx′とLy′はそれぞれIISのロール振れ補正分を考慮したセンサ有効サイズの横幅と縦幅であり、LxとLyはそれぞれセンサ読出し範囲4と同じセンサ有効サイズの縦幅と横幅である。θRolllはロール振れ補正可能角度である。
【0081】
実施例1のステップS103においては、センサ読出し範囲4が回転し得る範囲7の形状が複雑であるために、イメージサークル3内およびIISメカストローク範囲2内でのIIS駆動可能量の計算が複雑になる。これに対して、本実施例のようにロール振れ補正分を考慮した長方形のセンサ有効サイズ9を用いれば、IIS駆動可能量を単純な計算により求めることができる。
【0082】
次にステップS402では、カメラMPU102は、ステップS401で算出したセンサ有効サイズとIISメカストローク量をレンズMPU109に通知する。このときに通知されるセンサ有効サイズは、EIS補正可能角度とIISのロール振れ補正可能角度とが考慮されて設定されているため、EIS補正可能角度とロール振れ補正可能角度をレンズMPU109に通知する必要はない。
【0083】
次にステップS403では、レンズMPU109は、イメージサークル情報と焦点距離情報をカメラMPU102に通知する。この理由は、実施例1のステップS102で説明した通りである。こうしてカメラMPU102はイメージサークル情報と焦点距離情報を取得(受信)する。
【0084】
次にステップS404では、レンズMPU109は、センサ有効サイズ、イメージサークル情報およびIISメカストローク量を用いて、撮像素子104の移動方向ごとのI/EIS駆動可能量を算出する。I/EISはIIS+EISを意味する。I/EIS駆動可能量の算出方法は、実施例1のステップS103で説明した算出方法と同様である。センサ有効サイズは、ステップS401でEIS分とIISのロール振れ補正分とが考慮されて設定されているため、本ステップで算出されるI/EIS駆動可能量は、IISのロール振れ補正分が考慮されたIIS駆動可能量とEIS駆動可能量との和となっている。
【0085】
次にステップS405では、レンズMPU109は、実施例1のステップS104と同様の変換方法により、OIS駆動可能量とI/EIS駆動可能量をそれぞれ補正可能角度に変換する。
【0086】
ステップS406では、設定手段としてのレンズMPU109は、OIS補正可能角度とI/EIS補正可能角度との比率から、補正レンズ113と撮像素子104の移動方向ごとのOIS補正比率(OIS+補正比率、OIS-補正比率)とI/EIS補正比率(I/EIS+補正比率、I/EIS-補正比率)を算出(設定)する。OIS補正比率とI/EIS補正比率はそれぞれ、IISとEISとOISによる合計の像振れ補正可能量(全像振れ補正量:角度deg)に対するOIS補正量の比率とI/EISによる像振れ補正量であるI/EIS補正量の比率である。
【0087】
次にステップS407では、レンズMPU109は、ステップS406で算出したI/EIS補正比率をカメラMPU102に通知(送信)する。
【0088】
そしてステップS408では、カメラMPU102は、ステップS403でレンズMPU109から通知されたイメージサークル情報と焦点距離情報を用いてEIS補正可能角度とIIS補正可能角度を算出する。そして、ステップS407でレンズMPU109から通知された(受信した)I/EIS補正比率を、EIS補正可能角度とIIS補正可能角度との比率に応じて分割する。これにより、撮像素子104の移動方向ごとにIIS補正比率(IIS+補正比率、IIS-補正比率)とEIS補正比率(EIS+補正比率、EIS-補正比率)を算出する。IIS補正比率とEIS補正比率はそれぞれ、IISとEISとOISによる全像振れ補正量に対するIIS補正量の比率とEISによる像振れ補正量であるEIS補正量の比率である。
【0089】
次にステップS409では、カメラMPU102は、ステップS408で算出したEIS補正比率(EIS+補正比率、EIS-補正比率)を用いたEISの制御を行う。具体的には、カメラMPU102は、カメラ側ジャイロセンサ106により検出されたカメラ振れとEIS補正比率とに応じて、EIS切出し範囲の移動量であるEIS補正量を算出する。そしてカメラMPU102は、算出したEIS補正量に応じてEIS切出し範囲の位置を変更して動画を出力する。
【0090】
ステップS409と同時にステップS410では、カメラMPU102は、実施例1のステップS107と同様に、ステップS408で算出したIIS補正比率(IIS+補正比率、IIS-補正比率)を用いたIISの制御を行う。
【0091】
さらにステップS409と同時にステップS411では、レンズMPU109は、実施例1のステップS108と同様に、ステップS407で算出したOIS補正比率(OIS+補正比率、OIS-補正比率)を用いたOISの制御を行う。
【0092】
これにより、OISとIISとEISによる協調像振れ補正が行われる。
【0093】
本実施例では、センサ有効サイズをEIS補正分とIISのロール振れ補正分に応じて変更してレンズMPU109に通知する。これにより、レンズMPU109はカメラ本体100におけるEIS補正可能角度およびロール振れ補正可能角度を考慮することなく、OIS補正比率とI/EIS補正比率を算出(設定)することができる。このため、カメラ本体100と交換レンズ101との間の通信量を削減することができるとともに、各補正比率を算出する際のレンズMPU109の処理負荷を軽減することができる。
【実施例4】
【0094】
本発明の実施例4では、第2の光学機器(他方の光学機器)としてのカメラ本体100が撮像素子104の移動の初期位置(以下、IIS初期位置という)を変更することにより、他の実施例のようにIIS補正比率を撮像素子104の移動方向ごとに算出する必要をなくする。第1の光学機器(一方の光学機器)としての交換レンズ101は、カメラ本体100から受信したIIS駆動可能量を用いて、OIS補正比率とIIS補正比率を算出する。そしてカメラ本体100が、交換レンズ101から受信したIIS補正比率に応じてIISを制御する。
【0095】
図13を用いてIIS初期位置の変更について説明する。図13の左側および右側の図はともに、図3と同様に、イメージサークル3の中心位置1′がIISメカストローク範囲の中心位置1に対して左下にずれている場合を示している。また、左側の図は、IIS初期位置がIISメカストローク範囲2の中心位置1にある場合における+X方向のIIS駆動可能量6′と-X方向のIIS駆動可能量5′を示している。IIS駆動可能量5′,6′は互いに異なる。同様に、+Y方向のIIS駆動可能量12′と-Y方向のIIS駆動可能量11′も互いに異なる。このため、他の実施例のように撮像素子104の移動方向(+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向)ごとにIIS補正比率を算出して設定する必要がある。
【0096】
一方、右側の図は、IIS初期位置をX方向とY方向のそれぞれにおいて+方向と-方向で同じ駆動可能量になる位置に設定した場合を示す。この場合は、+X方向のIIS駆動可能量6″と-X方向のIIS駆動可能量5″とが互いに等しく、+Y方向のIIS駆動可能量12″と-Y方向のIIS駆動可能量11″とが互いに等しい。このため、撮像素子104の移動方向ごとにIIS補正比率を算出する必要はなく、+X方向と-X方向で同じIIS補正比率を用いることができるとともに、+Y方向と-Y方向で同じIIS補正比率を用いることができる。
【0097】
図14のフローチャートは、カメラ本体100(カメラMPU102)および交換レンズ101(レンズMPU109)が行う像振れ補正処理を示す。図14の左側にカメラMPU102が行う処理を、右側にレンズMPU109が行う処理をそれぞれ示している。カメラMPU102とレンズMPU109は、コンピュータプログラムに従ってそれぞれの処理を実行する。
【0098】
カメラ本体100の電源が投入されて交換レンズ101に電源が供給され、さらにカメラMPU102とレンズMPU109の間での通信が開始されると、レンズMPU109はステップS601にて本処理を開始する。
【0099】
ステップS601では、レンズMPU109は、イメージサークル情報をカメラMPU102に通知する。こうしてカメラMPU102はイメージサークル情報を取得(受信)する。
【0100】
次にステップS602では、カメラMPU102は、センサ有効サイズとイメージサークル情報とIISメカストローク量とを用いて、撮像素子104の移動方向ごとのIIS駆動可能量を算出する。IIS駆動可能量の算出方法は実施例1のステップS103で説明した算出方法と同じである。
【0101】
次にステップS603では、制御手段としてのカメラMPU102は、ステップS602で算出した移動方向(+X方向と-X方向)ごとのIIS駆動可能量が互いに等しくなる位置にIIS初期位置(つまりは撮像素子104)を移動させる。そしてカメラMPU102は、IIS駆動可能量を再算出する。このとき移動方向ごとのIISの駆動可能量は互いに等しいため、1つの移動方向のIIS駆動可能量のみを算出すればよい。IIS初期位置の移動後のIIS駆動可能量は、以下の式(2)で表される。
【0102】
【数2】
【0103】
式(2)において、d′はIIS初期位置の移動後の+X方向と-X方向のIIS駆動可能量であり、d は+X方向でのIIS駆動可能量、d は-X方向でのIIS駆動可能量である。
【0104】
次にステップS604では、カメラMPU102は、ステップS603で算出したIIS駆動可能量をレンズMPU109に通知する。前述したように移動方向ごとのIISの駆動可能量が互いに等しいため、1つの移動方向のIIS駆動可能量のみをレンズMPU109に通知すればよい。
【0105】
次にステップS605では、レンズMPU109は、撮像光学系の焦点距離情報をカメラMPU102に通知する。
【0106】
次にステップS606では、レンズMPU109は、実施例1のステップS104と同様の変換方法により、OIS駆動可能量をとIIS駆動可能量をそれぞれ、OIS補正可能角度とIIS補正可能角度に変換する。
【0107】
次にステップS607では、設定手段としてのレンズMPU109は、ステップS606で算出したOIS補正可能角度とIIS補正可能角度の比率からOIS補正比率とIIS補正比率を算出(設定)する。このとき、IIS補正可能角度は+X方向と-X方向とで共通であるため、該方向ごとにIIS補正比率を算出する必要はない。
【0108】
次にステップS608では、レンズMPU109は、+X方向と-X方向とで共通のIIS補正比率をカメラMPU102に通知(送信)する。
【0109】
そしてステップS609では、カメラMPU102は、実施例1のステップS107と同様に、ステップS606でレンズMPU109から通知された(受信した)IIS補正比率を用いたIISの制御を行う。
【0110】
ステップS609と同時にステップS610では、レンズMPU109は、実施例1のステップS108と同様に、ステップS607で算出したOIS補正比率を用いたOISの制御を行う。
【0111】
これにより、OISとIIS、すなわち補正レンズ113と撮像素子104の双方による協調像振れ補正が行われる。
【0112】
本実施例によれば、IIS初期位置を撮像素子104の移動方向(+X方向、-X方向)によらずIIS駆動可能量が同じとなる位置に移動させることによって、IIS補正比率も移動方向によらず互いに等しくなる。このため、移動方向ごとの、IIS補正比率を算出する必要をなくすることができる。したがって、カメラ本体100と交換レンズ101間で移動方向ごとのIIS補正比率を通信する必要がなくなり、通信量の削減をすることができる。また、IIS補正比率を移動方向ごとに算出する必要がなくなるため、レンズMPU109の処理負荷を軽減することができる。
【0113】
なお、実施例1では、カメラMPU102がセンサ有効サイズ、IISメカストローク量およびIISのロール振れ補正可能角度をレンズMPU109に通知し、レンズMPU109が撮像素子104の移動方向ごとのIIS駆動可能量を算出する場合について説明した。しかし、カメラMPU102がイメージサークル情報と焦点距離情報を用いて予め移動方向ごとのIIS駆動可能量を算出し、それをレンズMPU109に通知し、レンズMPU109がIIS補正比率を算出してもよい。
【0114】
また、実施例3では、レンズMPU109がI/EIS駆動可能量やI/EIS補正比率を算出する場合について説明した。しかし、カメラMPU102がI/EIS駆動可能量やI/EIS補正比率を算出してもよい。この場合、カメラMPU102が、センサ有効サイズをロール振れ補正分を考慮したセンサ有効サイズに変換することによって、I/EIS駆動可能量やI/EIS補正比率を算出する際のカメラMPU102の処理負荷を軽減することができる。
【0115】
さらに、カメラ本体100が静止画撮像を行う際は実施例1で説明した像振れ補正処理1を行い、動画撮像を行う際は実施例2で説明した像振れ補正処理2を行うようにしてもよい。図15は、この場合にカメラMPU102が行う処理を示している。
【0116】
ステップS701において、カメラMPU102は、カメラ本体100が静止画撮像を行うか動画撮像を行うかを判定する。静止画撮像を行う場合は、カメラMPU102はステップS702に進み、レンズMPU109とともに像振れ補正処理1を行う。一方、動画撮像を行う場合は、カメラMPU102はステップS703に進み、レンズMPU109とともに像振れ補正処理2を行う。
【0117】
これにより、静止画撮像時と動画撮像時とで適切な像振れ補正処理を選択的に行うことができる。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0118】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0119】
100 カメラ本体
101 交換レンズ
102 カメラMPU
104 撮像素子
109 レンズMPU
113 補正レンズ
図1
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