IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-傾斜センサ 図1
  • 特許-傾斜センサ 図2
  • 特許-傾斜センサ 図3
  • 特許-傾斜センサ 図4
  • 特許-傾斜センサ 図5
  • 特許-傾斜センサ 図6
  • 特許-傾斜センサ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】傾斜センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/06 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G01C9/06 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018168787
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020041887
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】植田 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】播磨 幸一
(72)【発明者】
【氏名】柏木 昇
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕哉
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-271312(JP,A)
【文献】特開2017-090069(JP,A)
【文献】特開2012-202762(JP,A)
【文献】特開2008-101980(JP,A)
【文献】特開2014-178218(JP,A)
【文献】特開2011-038986(JP,A)
【文献】特開2006-145505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/06
G01C 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの機能部を有するセンサ基板と、前記センサ基板を支持する固定基板と、を有し、
前記機能部は、固定電極と、可動電極とを具備し、前記可動電極の変位による静電容量変化に基づいて、傾斜を検知可能とされており、
前記センサ基板には、前記固定電極及び前記可動電極と配線を介して電気的に接続された複数の電極パッドが設けられており、
前記固定基板には、前記電極パッドに電気的に接続された複数の電極接続部が設けられており、
複数の前記電極パッド及び前記電極接続部が、集約して配置されており、
前記センサ基板と前記固定基板との間には、前記機能部の外側の位置に、前記センサ基板を前記固定基板上に支持する支持部であって、前記センサ基板を固定しない前記支持部が介在することを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
前記機能部は、複数設けられており、
各機能部の前記電極パッド及び前記電極接続部が、前記機能部の間に、集約して配置されることを特徴とする請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項3】
複数の前記電極パッド及び前記電極接続部は、前記センサ基板の少なくとも長手方向の略中央に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の傾斜センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量変化に基づいて傾斜を検知可能な傾斜センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固定電極と可動電極とを有し、可動電極の変位に伴う静電容量変化に基づいて傾斜を検知する傾斜センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-38986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
傾斜センサは、固定電極及び可動電極を備えるセンサ基板と、センサ基板を支持する固定基板と、を有して構成される。
【0005】
しかしながら、センサ基板と固定基板とでは、線膨張係数が異なるため、センサ基板と固定基板との間に熱応力が生じ、センサ基板と固定基板との間の接合安定性が低下する問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、特に、センサ基板と固定基板との間の接合安定性を向上させた傾斜センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の傾斜センサは、少なくとも1つの機能部を有するセンサ基板と、前記センサ基板を支持する固定基板と、を有し、前記機能部は、固定電極と、可動電極とを具備し、前記可動電極の変位による静電容量変化に基づいて、傾斜を検知可能とされており、前記センサ基板には、前記固定電極及び前記可動電極と配線を介して電気的に接続された複数の電極パッドが設けられており、前記固定基板には、前記電極パッドに電気的に接続された複数の電極接続部が設けられており、複数の前記電極パッド及び前記電極接続部が、集約して配置されており、前記センサ基板と前記固定基板との間には、前記機能部の外側の位置に、前記センサ基板を前記固定基板上に支持する支持部であって、前記センサ基板を固定しない前記支持部が介在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の傾斜センサによれば、センサ基板と固定基板との間の接合安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の傾斜センサの平面図である。
図2】本実施形態の傾斜センサの断面図である。
図3】本実施形態の傾斜センサを構成する機能部の拡大模式図である。
図4】本実施形態の電極接続部の拡大断面図である。
図5】本実施形態のセンサ基板に形成されたスリット部分の拡大斜視図である。
図6】本実施形態の傾斜センサに設けられた支持部の拡大断面図である。
図7】他の実施形態の傾斜センサの平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
図1は、本実施形態の傾斜センサの平面図である。図2は、図1に示す傾斜センサをA―A線に沿って厚さ方向に切断し矢印方向から見た断面図である。図3は、本実施形態の傾斜センサを構成する機能部の拡大模式図である。
【0012】
図1に示す傾斜センサ1は、センサ基板2と、センサ基板2を支持する固定基板3と、を有して構成される。
【0013】
本実施形態では、センサ基板2の材質を限定するものではないが、水晶板であることが好ましい。なお、水晶板は、三方晶系の単結晶である。
【0014】
図1に示すように、センサ基板2には、機能部4が設けられている。機能部4は、センサ基板2をエッチング加工して図1図3の輪郭に沿ってスリットを入れることで形成できる。この実施形態では、機能部4は、2つであるが、数を限定するものではない。ただし、センサ基板2として三方晶系の水晶板を用いることが好ましく、水晶板に対する良好なエッチング加工性を実現するために、機能部4の数は、1つ、2つ、或いは3つであることが好ましい。
【0015】
機能部4の構造を図3の拡大模式図を用いて説明する。なお、図3は、機能部4を、固定基板3側から見た裏面図である。機能部4は、固定電極5と、可動電極6とを具備する。固定電極5は、図3の図示左側に位置する左固定電極5aと、図3の図示右側に位置する右固定電極5bとを有して構成される。図3に示すように、左固定電極5a及び右固定電極5bは、夫々、複数本の固定電極指5a1、5b1がX方向に間隔を空けて並設された櫛歯状電極である。各固定電極指5a1、5b1は、X方向に直交するY方向に沿って幅細形状で形成されている。
【0016】
図3に示す各固定電極指5a1、5b1に重ねて、導電薄膜が形成されている。導電薄膜は、例えば、CrとAuのスパッタ膜である。なお、この導電薄膜は、各固定電極指5a1、5b1の少なくとも側面に形成されている。或いは、導電薄膜は、各固定電極指5a1、5b1の表面、裏面及び側面の全周にわたって形成されている。
【0017】
図3に示すように、左固定電極5aには、左固定電極指5a1に積層された導電薄膜と一体となって左配線層7aが、形成されている。左配線層7aは、可動電極6を構成する左錘部6aの側方に沿って延出し、左固定電極指5a1の配置側とは反対側に引き出されている。
【0018】
図3に示すように、右固定電極5bでは、右固定電極指5b1に積層された導電薄膜と一体となって右配線層7bが、形成されている。右配線層7bは、可動電極6を構成する右錘部6bの側方に沿って延出し、右固定電極指5b1の配置側とは反対側に引き出されている。
【0019】
図3に示すように、可動電極6は、左錘部6a、右錘部6b及び、左錘部6aと右錘部6bとを繋ぐ共通電極6c、を有して構成される。図3に示すように、共通電極6cと左錘部6a、及び共通電極6cと右錘部6bは、幅細のばね部6dにより繋がれている。なお、本実施形態では、共通電極6cもばね部6dと同様に幅細で形成されている。傾斜角の印加により、左錘部6a及び右錘部6bが、共通電極6cを介して変位する。
【0020】
図3に示すように、左錘部6aには、複数本の左可動電極指6a1がX方向に間隔を空けて形成されており、各左可動電極指6a1は、左固定電極指5a1とX方向に交互に間隔を空けながら配列されている。すなわち、各左可動電極指6a1は、左固定電極指5a1の間に位置する櫛歯状電極である。
【0021】
図3に示すように、右錘部6bには、複数本の右可動電極指6b1がX方向に間隔を空けて形成されており、各右可動電極指6b1は、右固定電極指5b1とX方向に交互に間隔を空けながら配列されている。すなわち、各右可動電極指6b1は、右固定電極指5b1の間に位置する櫛歯状電極である。
【0022】
導電薄膜は、各可動電極指6a1、6b1からばね部6dを介して共通電極6cに重ねて形成される。なお、この導電薄膜は、各可動電極指6a1、6b1の少なくとも側面に形成され、或いは、表面、裏面及び側面の全周にわたって形成される。導電薄膜は、ばね部6d及び共通電極6cの各表面、各裏面及び各側面にわたって形成されることが好ましい。
【0023】
図3に示すように、共通電極6cから延出する中央配線層7c、左固定電極5aから延出する左配線層7a、及び右固定電極5bから延出する右配線層7bが、機能部4から離れる方向に延出している。
【0024】
上記したように、傾斜角の印加により、左錘部6a及び右錘部6bが、X方向に変位すると、左固定電極指5a1と、左可動電極指6a1との間の静電容量、及び、右固定電極指5b1と、右可動電極指6b1との間の静電容量が夫々変動する。このとき生じる、左側と右側との静電容量差に基づいて、傾斜を検知することができる。
【0025】
図3に示す実施形態では、左固定電極指5a1と左可動電極指6a1との間の間隔(スリット幅)、及び右固定電極指5b1と右可動電極指6b1との間の間隔(スリット幅)が略一定とされている。ただし、左側と右側との静電容量の差動の導出の仕方により、間隔を種々変更することができる。
【0026】
図1に示すように、左配線層7aは、第1の左配線層7a1と第2の左配線層7a2を備えており、第1の左配線層7a1は、センサ基板2の下面側(固定基板3と対向する側)に設けられ、第2の左配線層7a2は、センサ基板2の上面側に形成されている。
【0027】
図5に示すように、左錘部6aの周囲にスリット8(図3も参照されたい)が形成されており、このスリット8によりセンサ基板2から左錘部6aが切り出されている。なお、右錘部6b、共通電極6c、及び固定電極5についても同様である。
【0028】
図5に示すように、スリット8の側面に沿って導電薄膜9が形成されている。導電薄膜9は、センサ基板2の表面2aや裏面2bにも一定幅で延出しており、センサ基板2の裏面2bに一定幅で延出した導電薄膜9を、図3では、左配線層7aとして表した。
【0029】
図5に示すように、センサ基板2の裏面2bに形成された左配線層7aは、上記した第1の左配線層7a1に該当し、第1の左配線層7a1から引き出されて第1の左電極パッド10aが形成されている。また、図5に示すように、センサ基板2の表面2aに形成された左配線層7aは、上記した第2の左配線層7a2に該当し、第2の左配線層7a2から引き出されて第2の左電極パッド11aが形成されている。
【0030】
図1に示すように、右配線層7bは、第1の右配線層7b1と第2の右配線層7b2を備えている。そして、センサ基板2の裏面2bに形成された右配線層7bは、第1の右配線層7b1に該当し、第1の右配線層7b1から引き出されて第1の右電極パッド10bが形成されている。また、センサ基板2の表面2aに形成された右配線層7bは、上記した第2の右配線層7b2に該当し、第2の右配線層7b2から引き出されて第2の右電極パッド11bが形成されている。
【0031】
図1に示すように、中央配線層7cは、第1の中央配線層7c1と第2の中央配線層7c2を備えている。そして、センサ基板2の裏面2bに形成された中央配線層7cは、第1の中央配線層7c1に該当し、第1の中央配線層7c1から引き出されて第1の中央電極パッド10cが形成されている。また、センサ基板2の表面2aに形成された中央配線層7cは、上記した第2の中央配線層7c2に該当し、第2の中央配線層7c2から引き出されて第2の中央電極パッド11cが形成されている。
【0032】
図1に示すように、センサ基板2は、横方向aに延びる辺と、横方向aに対して直交する縦方向bに延びる辺を有する矩形状の平面を備える。図1に示す実施形態では、センサ基板2は、横方向aの長さのほうが、縦方向bの長さよりも長く形成されている。
【0033】
図1に示すように、長さの長い横方向aの中央に位置する中央線cの左右に、夫々、一つずつ機能部4が配置されている。各機能部4は、横方向a及び縦方向bから傾く方向に配置されている。ここで、「傾く」とは、図3を示して詳述した各電極指の延出方向が、縦方向b或いは横方向aから傾いた状態を指す。一例であるが、左右の機能部4は夫々、中央線cに対して60°ずつ傾いており、左右の機能部4は、120°間隔で配置されている。
【0034】
図1に示すように、左右の機能部4には夫々、3つずつ第1の電極パッド10a~10cが電気的に接続されている。図1に示すように、左側の機能部4と電気的に接続された3つの電極パッド10a~10cは、中央線cよりもやや左側にて縦方向bに間隔を空けて一列に配列されている。また、図1に示すように、右側の機能部4と電気的に接続された3つの電極パッド10a~10cは、中央線cよりもやや右側にて縦方向bに間隔を空けて一列配列されている。このように、6つの電極パッド10a~10cは、中央線c付近に集約して配置されている。また、第2の電極パッド11a~11cも各機能部4から中央線c側に配置されているが、第1の電極パッド10a~10cに比べて中央線cからやや離れた位置に配列されている。
【0035】
図1に示すように、左右の機能部4及び各電極パッド10a~10c、11a~11cは、中央線cを対称軸として線対称配置とされている。
【0036】
次に、固定基板3について説明する。本実施形態において、限定されるものではないが、固定基板3は、例えば、多層回路基板(LTCC基板)である。LTCC基板は、導体抵抗の小さいAgやCuを内層導体として用いて多層化されている。
【0037】
図2に示すように、固定基板3には、有底の収容凹部3aが形成されている。この収容凹部3aに、上記したセンサ基板2が配置される。
【0038】
図2に示すように、固定基板3に形成された収容凹部3aは、2段で形成されており、収容凹部3aのうち、底面側の1段目には、センサ基板2が収容される。段差面3bを介した2段目には、蓋体12が配置される。図2に示すように、蓋体12は、段差面3bに、接着層13を介して接合されている。本実施形態において、限定するものではないが、蓋体12は、例えば、ガラス基板である。
【0039】
図2に示すように、センサ基板2と固定基板3との間には、第1のギャップG1が設けられている。また、センサ基板2と蓋体12との間には、第2のギャップG2が設けられている。また、センサ基板2の厚みは、tである。ここで、第1のギャップG1及び第2のギャップG2は、いずれも、センサ基板2の厚みtより小さいことが好ましい。これにより、傾斜センサ1に大きな衝撃が加わった際に、図3に示す可動電極指6a1、6b1が、隣の固定電極指5a1、5b1の表面や裏面に乗ってしまう(厚み方向に重なる)ことを防止することができる。
【0040】
第1のギャップG1の大きさと第2のギャップG2の大きさとを変えることもできる。例えば、使用用途により、衝撃の加わる方向が決まっている場合、衝撃により可動電極指6a1、6b1が大きく変動する側のギャップを、他方のギャップより狭くすることができる。ただし、図2に示すように、第1のギャップG1の大きさと第2のギャップG2の大きさを同程度とすることで、衝撃がどちら方向に印加されても、可動電極指6a1、6b1が、隣の固定電極指5a1、5b1の表面や裏面に乗ってしまう不具合を適切に防止することが可能である。
【0041】
ギャップG1、G2の大きさを限定するものではないが、本実施形態では、ギャップG1、G2は、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。また、ギャップG1、G2は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。ギャップG1、G2は小さすぎても、衝撃が加わったときに、電極指が強く固定基板3や蓋体12に衝突するため、ギャップG1、G2は適度な大きさを有することが好ましい。一例であるが、第1のギャップG1、第2のギャップG2及びセンサ基板2の厚みtを合わせて200μm程度となるように調整する。このとき、センサ基板2の厚みtは100μm程度であり、第1のギャップG1及び第2のギャップG2は夫々50μm程度に設定される。
【0042】
図2に示すように、固定基板3の表面(センサ基板2と対向する側の面)3cには、複数の電極接続部14を含む接続構造部15が形成されている。なお、図1では、電極接続部14は、各第1の電極パッド10a~10cの下に重なり見えていないため、図1には符号14を図示していない。以下、接続構造部15について、図4を用いて説明する。
【0043】
図4に示すように、固定基板3の表面3cには、電極配線層16a~16cが形成されている。なお、図4には、電極配線層16aが図示されている。この実施形態では、電極配線層16a~16cは、図1に示すように、全部で6つ設けられている。
【0044】
図1に示すように、3つの電極配線層16a~16cは、中央線cよりも左側の領域であって、縦方向bに間隔を空けて一列に形成されている。残り3つの電極配線層16a~16cは、中央線cよりも右側の領域であって、縦方向bに間隔を空けて一列に形成されている。各電極配線層16a~16cは、中央線cを対称軸として左右対称に形成されている。
【0045】
各電極配線層16a~16cは、LTCC基板の内層導体と電気的に接続されている。
【0046】
図4に示すように、固定基板3の表面3cに形成された電極配線層16a~16c上から固定基板3上に重ねて絶縁保護層17が形成されている。図1に示すように、絶縁保護層17は、例えば、略矩形状で形成されているが、形状を限定するものではない。また、絶縁保護層17の材質は、電気絶縁材料であれば特に問うものではなく、既存材料を使用することができる。
【0047】
図4に示すように、絶縁保護層17には、センサ基板2側の第1の電極パッド10a~10cと対向する位置に複数の貫通孔17aが形成されている。各貫通孔17aからは夫々、電極配線層16a~16cの先端部が露出している。
【0048】
そして、図4に示すように、各貫通孔17a内に電極接続部14が形成され、各電極接続部14と、各電極配線層16a~16cとが電気的に接続されている。電極接続部14は、例えば、はんだ層である。はんだ層は、例えば、AuSnはんだである。また、電極配線層16a~16cは、例えば、Ag配線である。
【0049】
図2に示すように、センサ基板2の各第1の電極パッド10a~10c(符号10b、10cは不図示)と、固定基板3の電極接続部14とが電気的に接合される。これにより、センサ基板2は、固定基板3の上方に第1のギャップG1を有した状態で固定支持される。
【0050】
なお、センサ基板2を、固定基板3上に安定して支持するために、図1に示すように、センサ基板2と固定基板3との間であって、機能部4の外側に、支持部19を設けることが好ましい。支持部19は、センサ基板2の外周部の一部に、設けることが好ましい。本実施形態において、支持部19の形状を限定するものではないが、図1に示すように、ドット状とすることが、応力集中を緩和でき、固定基板3とセンサ基板2との間の接合安定性を良好なものにできて好ましい。なお、支持部19には、センサ基板2を載せているが、支持部19とセンサ基板2は固定しないのが好ましい。支持部19とセンサ基板2を固定すると、その接合により応力が発生するため、センサ基板2に歪みが生じる等の不都合が生じる恐れがある。
【0051】
また、本実施形態において、支持部19の材質を限定するものではないが、はんだ層を用いて形成することができる。例えば、支持部19は、図6に示すように、下地層19aとはんだ層19bとの積層構造で形成される。例えば、下地層19aは、図4に示す電極配線層16a~16cと同じ材質で形成され、はんだ層19bは、電極接続部14と同じ材質で形成される。
【0052】
本実施形態の傾斜センサ1は、複数の第1の電極パッド10a~10cと、第1の電極パッド10a~10cに電気的に接続される各電極接続部14が、図1に示すように、集約して配置されている。「集約して配置」とは、所定領域或に一箇所にまとまって配置されることを意味する。
【0053】
センサ基板2と固定基板3では線膨張係数が異なる。このため、センサ基板2と固定基板3との間の接合部に該当する、複数の第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14を、集約して配置する。これにより、センサ基板2と固定基板3間に生じる熱応力を緩和でき、センサ基板と固定基板との間の接合安定性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、電極接続部14は硬いほうが、効果的に、センサ基板と固定基板との間の接合安定性を向上させることができて好ましい。具体的には、電極接続部14のビッカース硬度は、100Hv以上であることが好ましい。
【0055】
図1に示す実施形態では、2つの機能部4が設けられている。かかる構成では、複数の第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14を、各機能部4の間の領域に集約させることが好ましい。これにより、機能部4、第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14を、対称関係で配置しやすく、バランスよい配置となり、より効果的に、センサ基板と固定基板との間の接合安定性を向上させることができる。
【0056】
例えば、図7に示すように、センサ基板2に機能部4を3つ配置した構成では、3つの機能部4に共通する内側の領域に、第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14を集約させることが好ましい。なお、図7には、図面が煩雑になるのを避けるため、第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14を意味する符号10、14を代用した。なお、図7に示す3つの機能部4は、120°間隔で配置することができる。
【0057】
また、本実施形態では、図1に示すように、センサ基板2の長手方向である横方向aの略中央に、第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14を配置することが好ましい。図1では、第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14を、中央線c付近に集約して配置している。これにより、より効果的に、熱応力を緩和でき、センサ基板と固定基板との間の接合安定性をより向上させることができる。ここで、「略中央」とは、多少の幅を許容することを意味し、例えば、中央線cと横方向aへの端部との間の長さに対し、中央線cから20%以内の幅領域を指す。好ましくは、中央線cから15%以内の幅領域であり、より好ましくは、中央線cから10%以内の幅領域である。
【0058】
また、図1では、第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14は、短辺側である縦方向bの中央から図示下側に、ややずれて配置されている。このとき、短辺側では、長辺側に比べて熱応力の影響が小さいため、短辺側の中央から多少ずれて配置されても、センサ基板2と固定基板3との間の接合安定性に対する影響は小さい。ただし、長手方向のみならず、短辺側である縦方向bの中央付近(すなわち、センサ基板の真ん中付近)に、第1の電極パッド10a~10c及び電極接続部14を配置することが、センサ基板2と固定基板3との間の接合安定性をより効果的に向上させることができ好適である。
【0059】
本実施形態では、図1及び図5に示すように、第2の電極パッド11a~11cがセンサ基板2の表面2aに形成されている。本実施形態では、第2の電極パッド11a~11cを、検査用として用いることができる。ただし、本実施懈怠において、第2の電極パッド11a~11cは、必須の構成ではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の傾斜センサは、固定基板とセンサ基板との接合安定性に優れており、良好な耐環境性、及び耐久性を有する。したがって、本発明の傾斜センサを様々な使用用途に適用できる。例えば、土木や、建築現場等での傾斜角の測定、工場内で製造される製品の水平度検査等に好ましく適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 :傾斜センサ
2 :センサ基板
3 :固定基板
3a :収容凹部
3b :段差面
4 :機能部
5 :固定電極
5a :左固定電極
5a1 :左固定電極指
5b :右固定電極
5b1 :右固定電極指
6 :可動電極
6a :左錘部
6a1 :左可動電極指
6b :右錘部
6b1 :右可動電極指
6c :共通電極
6d :ばね部
7a :左配線層
7a1 :第1の左配線層
7a2 :第2の左配線層
7b :右配線層
7b1 :第1の右配線層
7b2 :第2の右配線層
7c :中央配線層
7c1 :第1の中央配線層
7c2 :第2の中央配線層
8 :スリット
9 :導電薄膜
10a~10c :第1の電極パッド
11a~11c :第2の電極パッド
12 :蓋体
13 :接着層
14 :電極接続部
15 :接続構造部
16a~16c :電極配線層
17 :絶縁保護層
17a :貫通孔
19 :支持部
19a :下地層
19b :はんだ層
G1 :第1のギャップ
G2 :第2のギャップ
a :横方向
b :縦方向
c :中央線
t :厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7