IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液体吐出装置 図1
  • 特許-液体吐出装置 図2
  • 特許-液体吐出装置 図3
  • 特許-液体吐出装置 図4
  • 特許-液体吐出装置 図5
  • 特許-液体吐出装置 図6
  • 特許-液体吐出装置 図7
  • 特許-液体吐出装置 図8
  • 特許-液体吐出装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/175 501
B41J2/175 503
B41J2/175 151
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018168994
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020040269
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠城 達雄
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 健太
(72)【発明者】
【氏名】越川 浩志
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 啓輔
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-021971(JP,A)
【文献】特開2015-112847(JP,A)
【文献】特開2002-001987(JP,A)
【文献】特開2017-081121(JP,A)
【文献】特開2007-105882(JP,A)
【文献】特開2017-081076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0085386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯留する液体を吐出可能なカートリッジと、前記カートリッジに液体を供給可能な液体タンクと前記カートリッジとを流体連通する流路と、前記流路を閉塞可能な閉塞手段と、を備えた液体吐出装置において、
前記カートリッジと前記流路との連結が解除される前に操作される可動部材を備え、
前記閉塞手段は、閉塞部材を備え、前記可動部材の動きに伴って、前記閉塞部材が動くことで前記流路を閉塞し、
前記カートリッジを搭載可能であり、前記カートリッジの液体吐出時に移動可能なキャリッジを更に備え、
前記可動部材は、外装の一部を形成するカバー部材および前記キャリッジに設けられ前記カートリッジを被覆する被覆部材であり、前記カバー部材は、前記カートリッジの交換時に、前記カートリッジにアクセスするためにユーザーによって開かれ、前記被覆部材は、前記カートリッジの交換時に、前記カートリッジにアクセスするためにユーザーによって被覆を解除されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記カバー部材を開くことで前記流路を閉塞し、前記カバー部材を閉じることで前記流路の閉塞を解除する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記カートリッジの交換時に回動することで、前記カートリッジへの被覆を解除し、
前記閉塞部材は、前記被覆部材の回動中心を中心に回動することで、前記流路を閉塞する請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記カートリッジと前記流路とは、前記被覆部材が備えたジョイント部材を介して連結されており、
前記カートリッジの交換時に、前記被覆部材による被覆を解除することで、前記カートリッジと前記流路との連結が解除される請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記流路は、可撓性部材からなるチューブである請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記閉塞部材は、前記チューブを外部から押圧する押圧部材である請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記カートリッジは、吐出ヘッドから液体を吐出し、
前記液体タンクの内部の液面が、前記吐出ヘッドにおける液面よりも低い位置となるように構成されている請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に関し、特には、液体タンクからカートリッジに液体を供給し、カートリッジに設けられた吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置には、カートリッジ内部に負圧を発生させる機構として、吐出ヘッドの位置よりも重力方向下方に液体タンクを設け、水頭差により負圧を発生させるものがある。
【0003】
特許文献1には、インクタンクからヘッドユニットへインクを供給するインクジェット記録装置で、ヘッドユニットへインクを供給する流路中にバルブユニットを備え、ユーザーがバルブユニットを操作することでインクの流路を閉塞することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-147424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カートリッジを交換する時には、特許文献1に記載されているバルブユニットで流路であるチューブを閉塞することで、カートリッジを外した際にチューブ内の液体が水頭差により液体タンク内に戻ってしまうことを抑制することができる。
【0006】
しかし、ユーザーがバルブユニットの操作を忘れてしまうと、チューブ内の液体は水頭差により液体タンク内に戻ってしまう。この場合、新しいカートリッジを搭載後、吐出ヘッド内の液体を吐出もしくは吸引することで排出し、その後、吸引によってチューブ内を液体で満たす必要がある。そのため、吐出可能状態となるまでかなりの時間を要してしまい稼働率の低下を招く虞がある。更には、大量の液体を無駄に消費してしまう。
【0007】
よって本発明は、稼働率の低下を抑制し、無駄な液体の消費を抑制することができる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明の液体吐出装置は、内部に貯留する液体を吐出可能なカートリッジと、前記カートリッジに液体を供給可能な液体タンクと前記カートリッジとを流体連通する流路と、前記流路を閉塞可能な閉塞手段と、を備えた液体吐出装置において、前記カートリッジと前記流路との連結が解除される前に操作される可動部材を備え、前記閉塞手段は、閉塞部材を備え、前記可動部材の動きに伴って、前記閉塞部材が動くことで前記流路を閉塞し、前記カートリッジを搭載可能であり、前記カートリッジの液体吐出時に移動可能なキャリッジを更に備え、前記可動部材は、外装の一部を形成するカバー部材および前記キャリッジに設けられ前記カートリッジを被覆する被覆部材であり、前記カバー部材は、前記カートリッジの交換時に、前記カートリッジにアクセスするためにユーザーによって開かれ、前記被覆部材は、前記カートリッジの交換時に、前記カートリッジにアクセスするためにユーザーによって被覆を解除されることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、稼働率の低下を抑制し、無駄な液体の消費を抑制することができる液体吐出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液体吐出装置示した概略正面図である。
図2】フロントカバーとインクタンクカバーを開いた液体吐出装置の正面図である。
図3】フロントカバーが閉じた液体吐出装置のインク供給系を示した模式図である。
図4】フロントカバーが開いた液体吐出装置のインク供給系を示した模式図である。
図5】キャリッジカバーが開いた液体吐出装置のインク供給系を示した図である。
図6】従来の液体吐出装置のインク供給系を示した図である。
図7】従来の液体吐出装置のインク供給系を示した図である。
図8】キャリッジカバーが閉じた液体吐出装置のインク供給系を示した図である。
図9】キャリッジカバーが開いた液体吐出装置のインク供給系を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明を適用可能な液体吐出装置100示した概略正面図である。液体吐出装置100は、媒体に対してカートリッジから液体(以下、インクともいう)を吐出することで、媒体に画像を形成(以下、記録ともいう)することができる。液体吐出装置100の正面には、ユーザーによって動作可能なフロントカバー(可動部材)140が設けられており、カートリッジ200の交換時や紙詰まり時にフロントカバー140をユーザーが開くことでカートリッジの交換や紙詰まり処理を行うことができる。画像が形成された媒体は、排出部110から排出される。
【0013】
図2は、フロントカバー(カバー部材)140とインクタンクカバー131とを開いた状態の液体吐出装置100を示した概略正面図である。液体吐出装置100は、記録部120を備えており、記録部120は、主走査方向に往復移動可能なキャリッジ121にカートリッジ200を搭載可能となっている。カートリッジ200を搭載したキャリッジ121は、記録時(液体吐出時)には、カートリッジ200を主走査方向へと移動させる。フロントカバー140は、液体吐出装置100の外装に一部を形成しており、ユーザーはフロントカバー140を開くことで、記録部120にアクセスすることができる。キャリッジ121には、カートリッジ200をカバー(被覆)するキャリッジカバー122が設けられている。カートリッジ200は、インクを吐出可能であり、カートリッジ200内に貯留されたインクを吐出する。インクタンク132はカートリッジ200にインクを供給可能であり、記録に用いられるインクは、インタンクユニット130内のインクタンク132に充填されている。
【0014】
カートリッジ200には、可撓性部材からなるチューブ150を介してインクタンク(液体タンク)132からカートリッジ200で消費した分のインクが供給される。カートリッジ200は、ブラック用のカートリッジ201と、シアン・マゼンタ・イエローの3色からなるカラー用のカートリッジ202の2つのカートリッジが搭載されている。インクタンク132内のインクが少なくなった場合、インクタンクカバー131を開き、ゴム栓136を外して、インクタンク132にインクを直接注ぎ込むことでインク補充が行われる。
【0015】
フロントカバー140は、操作部として機能し、フロントカバー140の動きに連動して後述する弁(閉塞部材)がチューブ150の流路を開閉する。フロントカバー140は、手前方向に倒すことで開き、インクタンクカバー131は、反時計回りに回動させることで開く。
【0016】
図3は、フロントカバー140が閉じた状態の液体吐出装置100のインク供給系を示した模式図である。液体吐出装置100は、図3に示す状態が、通常の記録動作(記録待機も含む)を行っている状態である。ここでは、ブラック用のカートリッジ201を例に説明するが、カラー用のカートリッジ202と同じ構成である。カートリッジ201は、使用時の姿勢における重力方向最下部にインクを吐出する吐出ヘッド211を備えている。また、カートリッジ201は、その内部にインクを吸収する吸収体212を備えており、この吸収体212でインクを保持している。この吸収体212によって、液体吐出装置100への搭載前の状態において、吐出ヘッド211からインクが漏れ出すことを抑制する。
【0017】
カートリッジ201の上部にはフタ部材213が設けられており、フタ部材213とタンクケース214とが溶着されることで、カートリッジ201の内部を画成している。またこのフタ部材213には、チューブ150の端部に設けられているジョイント部材160と連結する一段下がった個所から筒状に延びるインク導入口215が設けられている。インク導入口215とジョイント部材160とが連結された状態で、吐出ヘッド211内のインクが消費されると、インクタンク132からチューブ150、ジョイント部材160を経由してカートリッジ201内にインクが充填される。
【0018】
インクタンク132は、インクを貯留可能な内部空間を有している。その下部には外部との連通部となるインク取出し口133が設けられて、インク取出し口133は、チューブ150と圧入により連結し、インクタンク132内部のインクはインク取出し口133からチューブ150へ流出する。また、インクタンク132の上部には、内部のインクが減少した分の空気を取り込む大気連通口134が設けられている。大気連通口134のサイズは、インクの漏れ出しや蒸発を抑制するため小さく設定しているが、更に大気連通口134の先に迷路や小部屋、気液分離膜などを設けてもよい。
【0019】
更にインクタンク132の上部には、インク充填口135が設けられている。着荷後やインクの残りが少なくなった場合に、インクボトルなどに入っているインクを、インク充填口135からインクタンク132内に注ぎ入れる。またインク充填口135は、インクボトルなどの先端ノズルが入り込むことができるように、大気連通口134と比較して大きな開口を備えている。なお、インクの漏れ出しや蒸発を抑制するため、インク補充時以外はゴム栓136でインク充填口135は封止されている。
【0020】
チューブ150の一端は、インクタンク132と連結され、他端はジョイント部材160を介してカートリッジ201と連結されており、インクタンク132からカートリッジ201までのインク経路を成している。つまり、チューブ150は、インクタンク132とカートリッジ201とを流体連通している。チューブ150は、キャリッジ121の走査に追従することができ、且つ後述する弁170によって閉塞可能であることが求められるため、その材料には可撓性の材料を採用している。また、チューブ150には、エアバリア性及び水蒸気バリア性も求められることから、本実施形態ではスチレン系エラストマを採用している。
【0021】
ジョイント部材160は、カートリッジ201とチューブ150とを連結する連結部材であり、チューブ150と連結されるインク口161と、カートリッジ201と連結されるジョイント口162とを有している。インク口161は、チューブ150との圧入により連結されており、ジョイント口162は、開口部にゴム部材163が有されており、インク導入口215と、ゴム部材163のシールにより密閉を保ちつつ連結されている。ジョイント部材160は、キャリッジ121のキャリッジカバー(被覆部材)122に取り付けられており、キャリッジカバー122の回動と同期してカートリッジ201とジョイント口162との連結が行われる。つまり、キャリッジカバー122が開かれた状態では、ジョイント部材160のジョイント口162はカートリッジ201と離れた状態となり、キャリッジカバー122が閉じた状態で、ジョイント口162とインク導入口215とが連結される。
【0022】
弁170は、インクタンク132とカートリッジ201との間のチューブ150の一部を閉塞可能に設けられており、弁体171と押圧部(押圧部材)172と保持部173とで構成されている。押圧部172は、フロントカバー140に設けられており、フロントカバー140の開閉動作に連動して、押圧部172が弁体171を押圧することで、チューブ150の一部を閉塞することができる。
【0023】
図4は、フロントカバー140が開いた状態の液体吐出装置100のインク供給系を示した模式図である。押圧部172はカム状に形成されており、フロントカバー140の開閉動作に伴って押圧部172のカムが回動することで弁体171を移動させる。フロントカバー140が閉じている場合(図3参照)には、押圧部172は弁体171を押圧していない。フロントカバー140が開いている場合(図4参照)には、押圧部172は弁体171を押圧する。押圧された弁体171は、チューブ150を閉塞する方向に移動し、チューブ150を挟んで弁体171と対向する位置にある保持部173と、弁体171とでチューブ150を挟むことでチューブ150を閉塞する。
【0024】
次に、液体吐出装置100におけるインク供給方法について説明する。図3に示すように、吐出ヘッド211に対して、インクタンク132内のインクの液面は、重力方法下方に位置するように構成されている。この状態においてチューブ150内のインクは、水頭差があることからインクタンク132側へ戻ろうとする。そのため、カートリッジ201内には図中矢印の高さ分の水頭差による負圧が発生する。この水頭差による負圧と、吸収体212の毛管力と、により吐出ヘッド211からインクが漏れ出さないようになっている。
【0025】
吐出ヘッド211からインクが吐出されると、その分カートリッジ200内のインク量が減少する。インク量が減少すると、カートリッジ200内の負圧はさらに高まるため、インク導入口215からカートリッジ201内部に消費した分のインクが供給され負圧が緩和される。この現象を繰り返すことで、カートリッジ201へのインク供給が行われる。
【0026】
以下、本発明の特徴的な構成について説明する。
【0027】
図5は、フロントカバー140及びキャリッジカバー122が開いた状態の液体吐出装置100のインク供給系を示した模式図である。記録待機状態である図3に示す状態から、カートリッジ交換が行われる。カートリッジを交換するため、ユーザーはまず操作部であるカートリッジ201にアクセスするためにフロントカバー140を開く。フロントカバー140を開くと、図4に示すように、フロントカバー140の開動作と連動して弁体171が押圧部172のカムに押圧されて移動しチューブ150を閉塞する。つまり、ユーザーの意思に関わらず、フロントカバー140を開くことでチューブ150を閉塞する。なお、この弁体171については、必ずしも必要なわけではなく、押圧部172が直接チューブ150を押圧して閉塞する構成でもよい。
【0028】
その後、図5に示すように、キャリッジカバー122を開く。キャリッジカバー122を開くと、キャリッジカバー122に取り付けられているジョイント部材160も、キャリッジカバー122と共に回動しながらカートリッジ201との連結を解除する。ジョイント部材160とカートリッジ201との連結が解除されると、従来の構成ではジョイント部材160及びチューブ150内に入っているインクは水頭差によりインクタンク132側へ流れ込む方向に力がかかり移動する。しかし本実施形態では、弁170がチューブ150を閉塞していることから、ジョイント部材160及びチューブ150内に入っているインクは移動することなく状態を維持する。この状態で、ユーザーはカートリッジ201の交換を行う。
【0029】
カートリッジ201を新しいものと交換し、キャリッジカバー122を閉じると、キャリッジカバー122に取り付けられているジョイント部材160は、カートリッジ201と連結される。カートリッジ201を交換すると、ユーザーはフロントカバー140を閉じる。この時、チューブ150を押圧していた弁体171は、フロントカバー140の回動に伴って押圧を解除し、弁170によるチューブ150の閉塞を解除する。フロントカバー140を閉じることでカートリッジ201の交換作業は完了となる。本実施形態におけるカートリッジ201の交換では、交換作業の直後に吐出動作を実施することができる。
【0030】
図6は、従来の構成におけるフロントカバー140及びキャリッジカバー122が開いた状態の液体吐出装置のインク供給系を示した図であり、図7は、フロントカバー140及びキャリッジカバー122が閉じた状態のインク供給系を示した図である。ここで、図6図7を用いて従来の構成におけるカートリッジの交換について説明する。なお、ここでは、ユーザーが弁の開閉動作を忘れた場合について説明するため、弁は不図示となっている。
【0031】
図6のように、フロントカバー140を開き、キャリッジカバー122を開いてジョイント部材160とカートリッジ201との連結を解除する。すると従来の構成では、チューブ150が閉塞されていないため、チューブ150及びジョイント部材160内のインクは、水頭差によりインクタンク132へ引き込まれる。この状態で、新しいカートリッジと交換して、キャリッジカバー122を閉じてカートリッジとジョイント部材とを連結しても、ジョイント部材とチューブ内には空気が入った状態で連結されてしまう(図7参照)。このようにカートリッジとインクタンクとの経路内に空気が入った状態で吐出が行われると、カートリッジ201内のインクを消費しても、チューブ150内のインクがカートリッジに到達するまでは、インクがカートリッジ201内に充填されない。そのため、記録を継続すると、カートリッジ201内のインクが無くなり不吐出が発生する虞がある。
【0032】
また、図7の状態で長期間放置されると、外気とチューブ150内の湿度の高い空気との間の浸透圧により、外気が図7の矢印に示すようにチューブ150内の空気に向かって入り込む。このように空気が入り込むと、チューブ150内のインクは押し出されインクタンク132側へ移動する。例えば、吐出→長期間不使用、を繰り返すと、カートリッジ201内のインクは吐出で消費されるのに対し、浸透圧で入り込む空気によりインクがなかなかカートリッジ201に充填されない状態に陥る。このようになると、カートリッジ201内の初期インク量が十分多くても不吐出が発生する虞がある。
【0033】
このような状態から復帰するには、ポンプにより吐出ヘッド211側から吸引を行い、カートリッジ201内にインクを充填する必要があり多くの時間を要する。また、復帰には吐出動作も必要であることから、無駄に消費するインクを増やす虞がある。
【0034】
これに対し本実施形態では、液体吐出装置100は、チューブ150を閉塞可能な弁170を備えており、その弁170は、カートリッジ201の交換のために開かれるフロントカバー140の開閉動作と連動して、チューブ150への押圧/解除を行う。そのため、ユーザーは弁170の操作を意識する必要がなく、カートリッジ201とチューブ150との接続解除前に、自動的に弁170の開閉動作が行われる。これによって、確実にチューブ150閉塞してからカートリッジ交換が行われるため、カートリッジ交換後すぐに記録を行うことができ、また無駄にインクを消費することもない。
【0035】
なお、本実施形態では、フロントカバー140を開く動作に伴って、弁170でチューブ150を閉塞したが、これに限定するものではない。つまり、カートリッジ201とチューブ150との連結が解除される前に行われる部材の動作に伴って、弁170がチューブ150を閉塞する構成であればよい。
【0036】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0037】
図8は、本実施形態におけるキャリッジカバーが閉じた液体吐出装置のインク供給系を示した図であり、図9は、キャリッジカバーが開いた液体吐出装置のインク供給系を示した図である。本実施形態では、弁170は、キャリッジカバー122の開閉動作と連動してチューブ150の閉塞/解除を行うように構成されている。弁170は、弁体171と保持部173を備えており、弁体171と保持部173との間にチューブ150が配されている。弁体171は、キャリッジカバー122の回動中心を中心に回動するように設けられており、キャリッジカバー122の開動作に伴って弁体171が回動することで、弁体171と保持部173とでチューブ150を挟んで閉塞する。ここで、カートリッジ201とジョイント部材160との連結は、チューブ150が弁170で閉塞された後に、解除されるように設計されている。
【0038】
弁170は、チューブ150を矢印方向にしごいて閉塞するため、潰された分のインクがインクタンク132側へ移動する。このように、潰された分のインクがジョイント部材160側へ移動しないようにすることで、連結解除後のジョイント口162からインクが滴下して、カートリッジ201を汚す可能性を低減させることができる。
【0039】
このような構成でも、カートリッジ交換の一連の操作の中でユーザーの意思によらずチューブ150が閉塞される。そのため、カートリッジ201とジョイント部材160との連結が解除されても、ジョイント部材160とチューブ150内のインクが水頭差でインクタンクに引き込まれることがない。弁170によって確実にチューブ150を閉塞してからカートリッジ201の交換が行われるため、カートリッジ交換後すぐに記録動作を行うことができ、また無駄にインクを消費することもない。
【符号の説明】
【0040】
100 液体吐出装置
120 記録部
122 キャリッジカバー
132 インクタンク
140 フロントカバー
150 チューブ
160ジョイント部材
170 弁
172 押圧部
200 カートリッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9