(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】スラリー生成装置およびスラリー生成システム
(51)【国際特許分類】
B22D 17/00 20060101AFI20221212BHJP
B22D 17/30 20060101ALI20221212BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B22D17/00 312
B22D17/30 Z
B22D17/32 Z
(21)【出願番号】P 2018171743
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】中田 光栄
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237172(JP,A)
【文献】特開2002-153945(JP,A)
【文献】特開2015-074031(JP,A)
【文献】特表2008-511443(JP,A)
【文献】特開2006-315046(JP,A)
【文献】特開平06-039521(JP,A)
【文献】特開2014-217864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 15/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の金属材料が注がれる容器と、
空の前記容器を設置して、前記容器に液状の金属材料を注ぐための容器設置部と、
前記容器設置部に設置された前記容器の温度を測定する第1温度センサと、
前記第1温度センサの測定温度が、前記容器内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、前記容器内の半凝固状の金属材料をダイカストマシンのスリーブに供給するための制御信号を、金属材料の搬送装置に出力する制御部と、を備え、
前記容器設置部に設置される前の空の前記容器を第1の時間を掛けて冷却する冷却部をさらに備え、
前記制御部は、前記容器設置部に設置されて金属材料が注がれていない状態の空の前記容器の前記第1温度センサにより測定された初期温度が所定温度以上である場合には、前記冷却部における冷却時間を前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定する制御を行う、スラリー生成装置。
【請求項2】
前記容器に前記第1温度センサが接触する際に、前記容器の前記容器設置部への設置状態を保持するための容器保持部をさらに備える、請求項1に記載のスラリー生成装置。
【請求項3】
前記容器設置部は、前記容器に注がれた液状の金属材料を下端から冷却することにより、金属材料の下端に所定厚みの固体部分を形成するように構成され、
前記第1温度センサは、前記容器の高さ方向において、前記容器に注がれた金属材料のうち前記固体部分を除く部分の中間位置近傍の温度を測定するように構成されている、請求項1または2に記載のスラリー生成装置。
【請求項4】
前記第1温度センサを前記容器に接触させる接触位置と、前記第1温度センサを前記容器から離間させる離間位置とに進退移動させる進退駆動部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のスラリー生成装置。
【請求項5】
前記容器設置部は、前記容器に注がれた液状の金属材料を下端から冷却することにより、金属材料の下端に所定厚みの固体部分を形成するように構成され、
前記第1温度センサの下方側に配置され、前記固体部分の上端近傍の半凝固状の金属材料の部分に対応する前記容器の温度を測定する第2温度センサをさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のスラリー生成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記容器に液状の金属材料が注がれた時点からの容器の温度と、前記容器内の金属材料の温度との関係を示すテーブルに基づいて、前記制御信号を出力する際の前記容器の前記所定の温度を決定するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のスラリー生成装置。
【請求項7】
前記第1温度センサに加えて、前記進退駆動部に対して設けられ、前記容器に向けてエアーを噴射することにより、前記容器に付着した異物を除去するエアブローをさらに備える、請求項4に記載のスラリー生成装置。
【請求項8】
前記進退駆動部は、前記第1温度センサを進退移動させるモータおよびエアシリンダの少なくとも一方を含む、請求項4または7に記載のスラリー生成装置。
【請求項9】
スリーブを含むダイカストマシンと、
スラリー生成装置と、
前記スラリー生成装置において生成された半凝固状の金属材料を前記スリーブに搬送する搬送装置と、を備え、
前記スラリー生成装置は、
液状の金属材料が注がれる容器と、
空の前記容器を設置して、前記容器に液状の金属材料を注ぐための容器設置部と、
前記容器設置部に設置された前記容器の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサの測定温度が、前記容器内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、前記容器内の半凝固状の金属材料を前記スリーブに供給するための制御信号を前記搬送装置に出力する制御部と、を含み、
前記スラリー生成装置は、前記容器設置部に設置される前の空の前記容器を第1の時間を掛けて冷却する冷却部をさらに含み、
前記制御部は、前記容器設置部に設置されて金属材料が注がれていない状態の空の前記容器の前
記温度センサにより測定された初期温度が所定温度以上である場合には、前記冷却部における冷却時間を前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定する制御を行う、スラリー生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラリー生成装置およびスラリー生成システムに関し、特に、スラリーを生成するための容器を備えるスラリー生成装置およびスラリー生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラリーを生成するための容器を備えるスラリー生成装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、スラリー(固液共存金属)を生成するための容器と、容器内の金属材料の温度を調整してスラリーを生成する制御を行う制御部とを備えたスラリー生成装置が開示されている。制御部は、成形サイクルタイムを所定時間(60秒)に設定して連続運転する制御を行うように構成されている。すなわち、スラリー生成装置は、スラリーをスリーブに供給するタイミングを時間により管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のスラリー生成装置では、成形サイクルタイムを設定しており、スラリーをスリーブに供給するタイミングを時間により管理していることから、サイクルの繰り返しや、周囲環境の変化などに起因して、スリーブに供給する際のスラリーの固相率にばらつきが生じるという問題点がある。なお、スラリーの固相率がばらつくと、スリーブ内でスラリーの形状が崩れて射出時に空気を巻き込みやすくなったり、緻密な成形品が得られないなどの不具合が生じやすくなるため好ましくない。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、スリーブに供給する際のスラリーの固相率にばらつきが生じるのを抑制することが可能なスラリー生成装置およびスラリー生成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるスラリー生成装置は、液状の金属材料が注がれる容器と、空の容器を設置して、容器に液状の金属材料を注ぐための容器設置部と、容器設置部に設置された容器の温度を測定する第1温度センサと、第1温度センサの測定温度が、容器内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、容器内の半凝固状の金属材料をダイカストマシンのスリーブに供給するための制御信号を、金属材料の搬送装置に出力する制御部と、を備え、容器設置部に設置される前の空の容器を第1の時間を掛けて冷却する冷却部をさらに備え、制御部は、容器設置部に設置されて金属材料が注がれていない状態の空の容器の第1温度センサにより測定された初期温度が所定温度以上である場合には、冷却部における冷却時間を第1の時間よりも長い第2の時間に設定する制御を行う。
【0008】
この発明の第1の局面によるスラリー生成装置では、上記のように、第1温度センサの測定温度が、容器内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、容器内の半凝固状の金属材料をダイカストマシンのスリーブに供給するための制御信号を、金属材料の搬送装置に出力する制御部を設ける。これにより、従来のようにスラリー(半凝固状の金属材料)をスリーブに供給するタイミングを時間で管理する場合とは異なり、容器内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の第1温度センサの温度で、スラリーをスリーブに供給するタイミングを決定することができる。このため、サイクルの繰り返しや周辺環境の変化に起因して金属材料が液状から半凝固状に変化するタイミングが変化した場合にも、容器の温度によってスラリーをスリーブに供給するタイミングを管理することにより、スリーブに供給する際のスラリーの固相率にばらつきが生じるのを抑制することができる。その結果、成形に適した固相率のスラリーをスリーブに供給することができる。また、制御部が、容器設置部に設置された容器の初期温度が所定温度以上である場合には、冷却部における冷却時間を第1の時間よりも長い第2の時間に設定する制御を行うことによって、サイクルの繰り返し回数が多くなり容器の初期温度が高くなったとしても、容器の温度を適切な初期温度に戻すことができる。その結果、容器により金属材料から熱を効果的に奪うことができるので、容器による金属材料の冷却速度を速めて、より短い時間で金属材料を液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達させることができる。すなわち、サイクルタイムを短縮することができる。
【0009】
上記第1の局面によるスラリー生成装置において、好ましくは、容器に第1温度センサが接触する際に、容器の容器設置部への設置状態を保持するための容器保持部をさらに備える。このように構成すれば、第1温度センサが容器に接触して、容器の位置がずれたり、容器が倒れたりすることを、容器保持部により防止することができる。したがって、第1温度センサを容器に確実に接触させることができるので、容器の温度測定を安定して行うことができる。
【0010】
上記第1の局面によるスラリー生成装置において、好ましくは、容器設置部は、容器に注がれた液状の金属材料を下端から冷却することにより、金属材料の下端に所定厚みの固体部分を形成するように構成され、第1温度センサは、容器の高さ方向において、容器に注がれた金属材料のうち固体部分を除く部分の中間位置近傍の温度を測定するように構成されている。このように構成すれば、容器内の金属材料のうち比較的高い温度になる部分の温度を、第1温度センサにより測定することができる。その結果、第1温度センサにより、所定の固相率になるタイミングを精度よく検知することができる。
【0011】
上記第1の局面によるスラリー生成装置において、好ましくは、第1温度センサを容器に接触させる接触位置と、第1温度センサを容器から離間させる離間位置とに進退移動させる進退駆動部をさらに備える。このように構成すれば、第1温度センサを離間位置(退避位置)に移動させることができるので、容器の温度を測定する位置に容器を搬送する装置や、容器の温度を測定する位置からスリーブに容器を搬送する搬送装置などに、第1温度センサが干渉するのを防止することができる。
【0012】
上記第1の局面によるスラリー生成装置において、好ましくは、容器設置部は、容器に注がれた液状の金属材料を下端から冷却することにより、金属材料の下端に所定厚みの固体部分を形成するように構成され、第1温度センサの下方側に配置され、固体部分の上端近傍の半凝固状の金属材料の部分に対応する容器の温度を測定する第2温度センサをさらに備える。このように構成すれば、液状(半凝固状)の金属材料の部分に対応する中で特に温度が低くなりやすい位置の容器の温度を測定することにより、金属材料の温度のむらを把握することができる。その結果、金属材料の温度むらが大きい場合には、ユーザに対して警告を発したりすること、などができる。
【0014】
上記第1の局面によるスラリー生成装置において、好ましくは、制御部は、容器に液状の金属材料が注がれた時点からの容器の温度と、容器内の金属材料の温度との関係を示すテーブルに基づいて、制御信号を出力する際の容器の所定の温度を決定するように構成されている。このように構成すれば、テーブルにより、制御信号を出力する際の容器の所定の温度を適切な温度に設定することができるので、成形に、より適した固相率のスラリーをスリーブに供給することができる。
【0015】
上記進退駆動部を備える構成において、好ましくは、第1温度センサに加えて、進退駆動部に対して設けられ、容器に向けてエアーを噴射することにより、容器に付着した異物を除去するエアブローをさらに備える。このように構成すれば、容器の初期温度が高くなりすぎている場合などに、エアブローにより容器の温度を調整することができる。
【0016】
上記進退駆動部を備える構成において、好ましくは、進退駆動部は、第1温度センサを進退移動させるモータおよびエアシリンダの少なくとも一方を含む。このように構成すれば、モータおよびエアシリンダの少なくとも一方により、第1温度センサを容器に対して進退移動させる構造を容易に実現することができる。
【0017】
この発明の第2の局面におけるスラリー生成システムは、スリーブを含むダイカストマシンと、スラリー生成装置と、スラリー生成装置において生成された半凝固状の金属材料をスリーブに搬送する搬送装置と、を備え、スラリー生成装置は、液状の金属材料が注がれる容器と、空の容器を設置して、容器に液状の金属材料を注ぐための容器設置部と、容器設置部に設置された容器の温度を測定する温度センサと、温度センサの測定温度が、容器内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、容器内の半凝固状の金属材料をスリーブに供給するための制御信号を搬送装置に出力する制御部と、を含み、スラリー生成装置は、容器設置部に設置される前の空の容器を第1の時間を掛けて冷却する冷却部をさらに含み、制御部は、容器設置部に設置されて金属材料が注がれていない状態の空の容器の温度センサにより測定された初期温度が所定温度以上である場合には、冷却部における冷却時間を第1の時間よりも長い第2の時間に設定する制御を行う。
【0018】
この発明の第2の局面によるスラリー生成システムでは、上記のように、温度センサの測定温度が、容器内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、容器内の半凝固状の金属材料をダイカストマシンのスリーブに供給するための制御信号を、金属材料の搬送装置に出力する制御部を設ける。これにより、従来のようにスラリー(半凝固状の金属材料)をスリーブに供給するタイミングを時間で管理する場合とは異なり、容器内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度センサの温度で、スラリーをスリーブに供給するタイミングを決定することができるので、スリーブに供給する際のスラリーの固相率にばらつきが生じるのを抑制することができる。その結果、成形に適した固相率のスラリーをスリーブに供給することが可能なスラリー生成システムを提供することができる。また、制御部が、容器設置部に設置された容器の初期温度が所定温度以上である場合には、冷却部における冷却時間を第1の時間よりも長い第2の時間に設定する制御を行うことによって、サイクルの繰り返し回数が多くなり容器の初期温度が高くなったとしても、容器の温度を適切な初期温度に戻すことができる。その結果、容器により金属材料から熱を効果的に奪うことができるので、容器による金属材料の冷却速度を速めて、より短い時間で金属材料を液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達させることができる。すなわち、サイクルタイムを短縮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、スリーブに供給する際のスラリーの固相率にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態によるスラリー生成システムの全体構成を模式的に示した図である。
【
図2】第1実施形態によるスラリー生成装置の全体構成を示した図である。
【
図3】第1実施形態によるスラリー生成装置の容器を示した図である。
【
図4】第1実施形態によるスラリー生成装置の進退駆動装置について説明するための図である。
【
図5】第1実施形態によるスラリー生成装置、注湯装置および搬送装置のブロック図である。
【
図6】容器に注がれた金属材料の温度と容器の温度との関係を表したテーブルを示した図である。
【
図7】第2実施形態によるスラリー生成装置の全体構成を示した図である。
【
図8】第1および第2実施形態の変形例によるスラリー生成装置の全体構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1~
図6を参照して、第1実施形態によるスラリー生成装置104を備えるスラリー生成システム100の構成について説明する。
【0023】
(スラリー生成システムの構成)
図1に示すように、スラリー生成システム100は、注湯装置101と、搬送装置102と、スリーブ92aを含むダイカストマシン103と、スラリー生成装置104とを備えている。
【0024】
スラリー生成システム100は、スラリー生成装置104において生成した半凝固状の金属材料(スラリー)を、搬送装置102によりスリーブ92aに搬送(供給)して、金型Mが取り付けられたダイカストマシン103により成形品を製造するように構成されている。なお、スラリー生成システム100は、液状の金属材料をスリーブに供給して成形を行う一般的な成形と比較して、半凝固状の金属材料(スラリー)を用いて成形を行うことにより、緻密かつ鋳巣の少ない成形品を得ることが可能である。すなわち、スラリー生成システム100は、いわゆるレオキャスト法により成形品を製造するためのシステムである。なお、金属材料としては、比較的熱伝導性の高い材料が用いられる。たとえば、金属材料としては、アルミ二ウム合金が用いられる。
【0025】
注湯装置101は、保持炉Fから液状の金属材料(溶湯)を汲み取って、スラリー生成装置104の容器1に供給(注湯)するように構成されている。注湯装置101は、保持炉Fから液状の金属材料を汲み取るラドル101aと、先端に設けられたラドル101aを移動させるロボットアーム101bとを備えている。なお、保持炉Fには、加熱によって所定温度に保持される液状の金属材料が収容されている。注湯装置101は、スラリー生成装置104(後述する制御部7)から出力される制御信号Sを受信して駆動されるように構成されている。
【0026】
搬送装置102は、スラリー生成装置104において生成された半凝固状の金属材料を、スリーブ92aに搬送して、スリーブ92aに供給するように構成されている。搬送装置102は、容器1を挟み込んで保持する挟持部102aと、先端に設けられた挟持部102aを移動させるロボットアーム102bとを備えている。
【0027】
搬送装置102は、金属材料をスリーブ92aに供給する際に、半凝固状の金属材料の容器1の上方側に位置する部分(後述する表面層部分K1)を、プランジャ91aとは逆側に配置するとともに、半凝固状の金属材料の容器1の下方側に位置する部分(後述する固体部分K)を、プランジャ91a側に配置するように構成されている。この表面層部分K1および固体部分Kは、ダイカストマシン103による射出時において、それぞれ金型M(移動金型M2)に設けられた凹部(トラップ)および湯道に残留して、キャビティ内に流入することはない。搬送装置102は、スラリー生成装置104(後述する制御部7)から出力される制御信号Sを受信して駆動されるように構成されている。
【0028】
ダイカストマシン103は、射出装置91と、マシン本体92と、移動金型M2(移動ダイプレート92c)を移動させる駆動機構93とを備えている。
【0029】
射出装置91は、プランジャ91aと、駆動ユニット(図示せず)とを含んでいる。プランジャ91aは、スリーブ92a内に挿入され、スリーブ92a内に供給された半凝固状の金属材料を金型M内に押し込むための射出部材である。駆動ユニットは、プランジャ91aに接続されており、プランジャ91aをスリーブ92a内で進退移動させるように構成されている。駆動ユニットは、たとえば、油圧回路によって駆動される油圧シリンダである。
【0030】
マシン本体92は、スリーブ92aと、固定金型M1が取り付けられる固定ダイプレート92bと、移動金型M2が取り付けられる移動ダイプレート92cと、移動ダイプレート92cの移動をガイドするように支持する複数のタイバー92dとを含んでいる。ダイカストマシン103は、タイバー92dが水平方向に延びる横型のダイカストマシンである。なお、スラリー生成装置104は、縦型のダイカストマシンにも用いることが可能である。
【0031】
駆動機構93は、タイバー92dに沿って、固定金型M1に対して移動金型M2(移動ダイプレート92c)を接近または離間させる方向に移動させることにより、金型Mの型締めおよび型開きを行うように構成されている。駆動機構93は、トグル機構(図示せず)を含んでいる。
【0032】
(スラリー生成装置の構成)
図2に示すように、スラリー生成装置104は、容器1と、冷却部2と、容器設置部3と、容器保持部41と、漏斗42と、容器1の温度を測定する温度センサ51と、エアブロー52と、進退駆動部6と、制御部7とを備えている。なお、温度センサ51は、特許請求の範囲の「第1温度センサ」の一例である。
【0033】
〈容器の構成〉
容器1は、注湯装置101により液状の金属材料が注がれて、注がれた溶湯を内側で半凝固状にするように構成されている。容器1は、概して、所定の傾斜角度により上方に向けて傾斜した内側面を有する円筒形状を有している。したがって、スラリー(半凝固状の金属材料)は、円錐台形状を有している。所定の傾斜角度は、たとえば、1度または2度などに設定される。容器1は、比較的熱伝導性および耐食性の高い金属材料により形成されている。
【0034】
ここで、第1実施形態では、スラリー生成装置104(制御部7)は、温度センサ51の測定温度が、容器1内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、容器1内の半凝固状の金属材料をダイカストマシン103のスリーブ92aに供給するための制御信号Sを、搬送装置102に出力するように構成されている。所定の温度とは、金属材料の固相率が所定の割合に到達する温度(実験により事前に求められた温度)である。すなわち、スラリー生成システム100は、温度センサ51の測定温度が所定温度に到達したことをトリガーとして、搬送装置102による容器1のスリーブ92aへの搬送を開始するように構成されている。詳細については後述する。
【0035】
ここで、
図3を参照して、容器1の形状(寸法)の設計について簡単に説明する。具体的には、容器1の厚みtの導出について説明する。容器1の厚みtは以下の式により得られる。
(容器1の厚み)=(容器1の重量)÷(容器1の密度)÷(円錐台形状のスラリーの側面積)
【0036】
ここで、上記式の容器1の重量は、半凝固状にするために所定重量の液状の金属材料から奪うべき熱量と、容器1の初期温度と容器1の最終温度との温度差と、容器1を形成する金属材料の比熱とにより導出することができる。
【0037】
なお、所定重量の液状の金属材料から奪うべき熱量とは、実験に基づいて得られる熱量であり、所定重量の液状の金属材料からこの熱量を奪うことにより、成形に適した所定の固相率の半凝固状の金属材料が得られる。
【0038】
また、容器1の初期温度(
図6参照)とは、冷却部2によって冷却されることで到達する容器1の所定の温度であり、注湯前の容器1の温度である。すなわち、容器1の初期温度とは、温度センサ51(
図2参照)により、最初に測定される温度である。容器1の最終温度(
図6参照)とは、スリーブ92a(
図2参照)に半凝固状の金属材料を供給する際の容器1の所定の温度であり、成形に適した所定の固相率の金属材料が得られる容器1の温度である。
【0039】
上記式の円錐台形状のスラリーの側面積は、スラリーの上面(または下面)の半径Rと、スラリーの厚みDと、スラリーの側面(容器1の内側面)の傾斜角度αと、スラリー重量Mと、スラリーの比重Hとに基づいて円錐台の体積の公式、および、円錐台の側面積の公式より導出することができる。
【0040】
〈冷却部の構成〉
図1に示す冷却部2は、容器設置部3に設置される前の空の容器1を所定の時間(第1の時間)を掛けて冷却するように構成されている。容器1は、各サイクルごとに溶湯によって温度上昇することから、液状の金属材料から効果的に熱を奪うことが可能なように、液状の金属材料を注ぐ前に冷却される必要がある。
【0041】
冷却部2は、容器1を載置する載置部21と、載置部21を冷却する部分(図示せず)とを含んでいる。載置部21は、容器1と比較して、十分に低い温度に保持されている。冷却部2において所定の時間を掛けて冷却された容器1は、搬送装置102により搬送されて、容器設置部3に設置される。なお、スラリー生成装置104は、冷却部2に載置されている容器1を、搬送装置102とは別の専用の搬送装置(図示せず)により、容器設置部3に設置するように構成されていてもよい。
【0042】
冷却部2は、前のサイクルにおいて、温度センサ51による測定された容器1の初期温度が所定温度以上になっている場合には、第1の時間よりも長い第2の時間を掛けて空の容器1を冷却するように構成されている。これにより、容器設置部3に設置される際の容器1の初期温度を一定に近づけることが可能である。
【0043】
〈容器設置部の構成〉
容器設置部3は、冷却部2において冷却された空の容器1を設置して、容器1に液状の金属材料を注ぐための設置台である。容器設置部3は、上部に平坦面を有する平板形状を有している。また、容器設置部3は、容器1の設置性を向上させるために、容器1の重みを吸収する弾性部材(図示せず)を含んでいる。これにより、容器1の下端と容器設置部3との面接触状態を安定して保持することが可能となる。
【0044】
容器設置部3は、容器1に注がれた液状の金属材料を下端から冷却することにより、金属材料の下端に所定厚みの固体部分Kを形成するように構成されている。詳細には、容器設置部3は、設置台を冷却する冷却部(図示せず)を含んでいる。容器設置部3は、冷却部によって、設置された容器1、および、容器1に注がれた液状の金属材料の下端から熱を奪うように構成されている。その結果、容器1に注がれた液状の金属材料の下端には、所定厚みの固体部分Kが形成される。固体部分Kの厚みは、たとえば、25mm~30mm程度である。この固体部分Kは、容器1に対する半凝固状の金属材料のはく離性(取出性)を向上させるものである。スリーブ92aへの金属材料の供給の際に、容器1の下端側から固体部分Kを押圧して、固体部分Kとともに半凝固状の金属材料を押し出すことも可能である。
【0045】
〈容器保持部の構成〉
図2に示すように、容器保持部41は、容器1に温度センサ51が接触する際に、容器1の容器設置部3への設置状態を保持するように構成されている。また、容器保持部41は、空の容器1に液状の金属材料が注がれる際に、容器1の容器設置部3への設置状態を保持するように構成されている。すなわち、容器保持部41は、容器1が容器設置部3上で移動したり、倒れたりすることがないように、容器1を保持するように構成されている。なお、温度センサ51は、制御部7による制御の下、空の容器1に液状の金属材料が注がれる前に、容器1に接触する。
【0046】
詳細には、容器保持部41は、容器設置部3上の容器1を、容器設置部3側の下方に押圧(クランプ)するように構成されている。容器保持部41は、容器1の円環状の上端に接触する環状の当接部41aと、当接部41aを上下方向に移動させる複数のエアシリンダ41bとを含んでいる。
【0047】
容器保持部41は、制御部7による制御の下、温度センサ51と容器1との接触状態が解除された場合に、エアシリンダ41bにより当接部41aを容器1から離間させるように構成されている。
【0048】
〈漏斗の構成〉
漏斗42は、容器保持部41の当接部41aが容器1に接触した場合に、当接部41aの上方側の近傍に配置されるように構成されている。漏斗42は、容器1に液状の金属材料を確実に導入する機能を有している。また、漏斗42は、注がれる液状の金属材料に接触することにより、容器1内において液状の金属材料を撹拌して半凝固状の金属材料の生成を促進する機能を有している。漏斗42は、上下方向に移動可能に構成されている。
【0049】
〈温度センサの構成〉
温度センサ51は、進退駆動部6の後述する取付部材63に設けられている(取り付けられている)。温度センサ51は、容器設置部3に設置された容器1の温度を測定するための温度センサである。温度センサ51は、容器1の外側面に接触して容器1の温度を測定する熱電対により構成されている。温度センサ51は、容器1の高さ方向において、容器1に注がれた金属材料のうち、固体部分Kを除く部分の中間位置近傍の温度を測定するように構成されている。
【0050】
すなわち、温度センサ51は、容器1に注がれた金属材料の全体の上端と、固体部分Kの上端との略中間の高さ位置の温度を測定するように構成されている。固体部分Kを除く部分の中間位置近傍の温度は、金属材料の固相率の上昇に応じて上昇する。このため、制御部7は、固体部分Kを除く部分の中間位置近傍の温度に基づいて、容器1内に所定の固相率の半凝固状の金属材料が生成されていることを判断することが可能である。要するに、制御部7は、温度センサ51の測定値により、金属材料のスリーブ92aへの供給タイミングを判断することが可能である。一方、固体部分K近傍の容器1の温度は比較的低い温度となるため、制御部7は、固体部分K近傍の容器1の温度のみに基づいて、容器1内に所定の固相率の半凝固状の金属材料が生成されていることを判断するのは困難である。
【0051】
温度センサ51の先端は、図示しないが温度センサ51の延びる方向から見て、円形状に形成されている。また、温度センサ51の先端には、容器1との接触状態を安定させるための弾性部材(図示せず)が設けられている。
【0052】
〈エアブローの構成〉
エアブロー52は、温度センサ51に加えて、進退駆動部6の取付部材63に設けられている(取り付けられている)。エアブロー52は、容器1の下端側に向けてエアーを噴射することにより、容器1に付着した異物を除去するように構成されている。また、エアブロー52は、容器設置部3に付着した異物を除去することも可能である。
【0053】
また、エアブロー52は、複数サイクルの繰り返しにより容器1の初期温度が高くなった場合などにおいて、必要に応じて、容器設置部3に設置された空の容器1に向けてエアーを噴射することにより、注湯前の容器1の初期温度を調整することが可能である。
【0054】
〈進退駆動部の構成〉
図2または
図4に示すように、進退駆動部6は、概して温度センサ51の水平方向位置を変位させることによって、温度センサ51を容器1に接触させる接触位置(進入位置)と、温度センサ51を容器1から離間させる離間位置(退避位置)とに進退移動させるように構成されている。
【0055】
進退駆動部6は、モータ61と、移動部62と、取付部材63と、エアシリンダ64とを含んでいる。
【0056】
移動部62は、ラック(図示せず)を有しており、ラックがモータ61のモータギアに噛み合うことにより、水平方向に直線状にスライド移動(進退移動)するように構成されている。
【0057】
取付部材63は、移動部62に固定的に取り付けられている。取付部材63は、L字形状を有しており、移動部62から上方に突出している。取付部材63には、下方側にエアブロー52が固定的に取り付けられている。また、取付部材63には、エアブロー52の上方側に温度センサ51およびエアシリンダ64が固定的に取り付けられている。なお、取付部材63は、温度センサ51が容器1の外側面に直交する方向から当接するように、温度センサ51を水平に対して所定角度(たとえば1度または2度)だけ傾斜させて固定している。
【0058】
エアシリンダ64は、ロッドを前進させることにより温度センサ51を容器1に接触させる接触位置に移動させるように構成されている。また、エアシリンダ64は、ロッドを後退させることにより温度センサ51を容器1から離間させる離間位置(退避位置)に移動させるように構成されている。なお、進退駆動部6は、エアシリンダ64のロッドを前進させた状態で、モータ61により移動部62を前後に移動させることによって、温度センサ51を離間位置(退避位置)と接触位置(進入位置)とに移動させてもよい。
【0059】
〈制御部の構成〉
図5に示す制御部7は、スラリー生成装置104の各部に接続されており、スラリー生成装置104の各部の駆動を制御するように構成されている。また、制御部7は、上記の通り、温度センサ51の測定温度が、容器1内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、容器1内の半凝固状の金属材料をダイカストマシン103のスリーブ92aに供給するための制御信号Sを、搬送装置102に出力するように構成されている。すなわち、制御部7は、温度センサ51の所定温度の検出信号に基づいて、半凝固状の金属材料をダイカストマシン103のスリーブ92aに供給するのを開始するための制御を行う。
【0060】
また、制御部7は、容器設置部3に設置された容器1の初期温度が所定温度以上である場合には、冷却部2における冷却時間を第1の時間よりも長い第2の時間に設定する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部7は、容器1により半凝固状の金属材料の生成を繰り返すことにより、容器1の初期温度が上昇した場合には、通常よりも長い時間を掛けて冷却部2において冷却するように構成されている。また、制御部7は、容器1の初期温度が上昇した場合には、ユーザに向けて所定の警告を発するための制御を行ってもよい。
【0061】
また、
図6に示すように、制御部7は、容器1に液状の金属材料が注がれた時点からの容器1の温度と、容器1内の金属材料の温度との関係を示すテーブルTに基づいて、制御信号Sを出力する際の容器1の所定の温度を決定するように構成されている。詳細には、制御部7は、メモリ(図示せず)を含んでおりテーブルTがメモリに保存されている。なお、制御部7は、各種設定や、温度、容器形状などを記憶して学習する機能を備えていてもよい。これにより、制御部7は、状況に応じて、各種設定などを微調整して、より最適な固相率のスラリーを生成することが可能となる。
【0062】
(スラリー生成システムによるスラリーの製造工程)
次に、
図1を参照して、スラリー生成システム100によるスラリーの製造工程(製造手順)の例について簡単に説明する。なお、以下のスラリーの製造工程は一例にすぎず、この製造工程に限定されるものではない。
【0063】
はじめに、スラリーの製造工程では、冷却部2で所定時間(第1の時間または第2の時間)をかけて容器1が冷却される。その後、搬送装置102により、容器1が容器設置部3に設置される。
【0064】
そして、容器保持部41により、容器1が容器設置部3に対して保持(クランプ)される。その後、容器保持部41の直上の所定位置に漏斗42が配置される。
【0065】
そして、進退駆動部6により、温度センサ51を離間位置(退避位置)から接触位置(進入位置)に移動させる。すなわち、温度センサ51を容器1に接触させる。この際、容器1は、容器設置部3により保持されているため、温度センサ51により動くことはない。
【0066】
そして、注湯装置101のラドル101aによって、保持炉Fから溶湯を汲み取り、容器1に注湯する。この際、容器1は、容器設置部3により保持されているため、溶湯により動くことはない。
【0067】
そして、温度センサ51の測定温度が、所定の温度(容器1内に注がれた金属材料が液状から所定の固相率の半凝固状(スラリー)に変化する温度)に到達したことに基づいて、容器1内の半凝固状の金属材料をダイカストマシン103のスリーブ92aに供給するための制御信号Sを、制御部7から搬送装置102に出力する。
【0068】
また、制御部7による制御信号Sの出力と略同じタイミングで、進退駆動部6により、温度センサ51を接触位置(進入位置)から離間位置(退避位置)に移動させる。すなわち、温度センサ51を容器1から離間させる。
【0069】
そして、搬送装置102が制御信号Sを受信したら、搬送装置102により容器1をスリーブ92aまで搬送して、スリーブ92aに半凝固状の金属材料を供給する。その後、プランジャ91aが前進して金型M内への半凝固状の金属材料の射出動作が行われる。
【0070】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の効果について説明する。
【0071】
第1実施形態では、上記のように、温度センサ51の測定温度が、容器1内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達したことに基づいて、容器1内の半凝固状の金属材料をダイカストマシン103のスリーブ92aに供給するための制御信号Sを、金属材料の搬送装置102に出力する制御部7を設ける。これにより、従来のようにスラリー(半凝固状の金属材料)をスリーブ92aに供給するタイミングを時間で管理する場合とは異なり、容器1内に注がれた金属材料が液状から半凝固状に変化する所定の温度センサ51の温度で、スラリーをスリーブ92aに供給するタイミングを決定することができる。このため、サイクルの繰り返しや周辺環境の変化に起因して金属材料が液状から半凝固状に変化するタイミングが変化した場合にも、容器1の温度によってスラリーをスリーブ92aに供給するタイミングを管理することにより、スリーブ92aに供給する際のスラリーの固相率にばらつきが生じるのを抑制することができる。その結果、成形に適した固相率のスラリーをスリーブ92aに供給することができる。
【0072】
第1実施形態では、上記のように、容器1に温度センサ51が接触する際に、容器1の容器設置部3への設置状態を保持するための容器保持部41をさらに備える。このように構成すれば、温度センサ51が容器1に接触して、容器1の位置がずれたり、容器1が倒れたりすることを、容器保持部41により防止することができる。したがって、温度センサ51を容器1に確実に接触させることができるので、容器1の温度測定を安定して行うことができる。
【0073】
第1実施形態では、上記のように、容器設置部3は、容器1に注がれた液状の金属材料を下端から冷却することにより、金属材料の下端に所定厚みの固体部分Kを形成するように構成され、温度センサ51は、容器1の高さ方向において、容器1に注がれた金属材料のうち固体部分Kを除く部分の中間位置近傍の温度を測定するように構成されている。これにより、容器1内の金属材料のうち比較的高い温度になる部分の温度を温度センサ51により測定することができる。その結果、温度センサ51により、所定の固相率になるタイミングを精度よく検知することができる。
【0074】
第1実施形態では、上記のように、温度センサ51を容器1に接触させる接触位置と、温度センサ51を容器1から離間させる離間位置とに進退移動させる進退駆動部6をさらに備える。これにより、温度センサ51を離間位置(退避位置)に移動させることができるので、容器1の温度を測定する位置に容器1を搬送する装置や、容器1の温度を測定する位置からスリーブ92aに容器1を搬送する搬送装置102などに、温度センサ51が干渉するのを防止することができる。
【0075】
第1実施形態では、上記のように、容器設置部3に設置される前の空の容器1を第1の時間を掛けて冷却する冷却部2をさらに備え、制御部7は、容器設置部3に設置された容器1の初期温度が所定温度以上である場合には、冷却部2における冷却時間を第1の時間よりも長い第2の時間に設定する制御を行う。これにより、サイクルの繰り返し回数が多くなり容器1の初期温度が高くなったとしても、容器1の温度を適切な初期温度に戻すことができる。その結果、容器1により金属材料から熱を効果的に奪うことができるので、容器1による金属材料の冷却速度を速めて、より短い時間で金属材料を液状から半凝固状に変化する所定の温度に到達させることができる。すなわち、サイクルタイムを短縮することができる。
【0076】
第1実施形態では、上記のように、制御部7は、容器1に液状の金属材料が注がれた時点からの容器1の温度と、容器1内の金属材料の温度との関係を示すテーブルTに基づいて、制御信号Sを出力する際の容器1の所定の温度を決定するように構成されている。これにより、テーブルTによって、制御信号Sを出力する際の容器1の所定の温度を適切な温度に設定することができるので、成形に、より適した固相率のスラリーをスリーブ92aに供給することができる。
【0077】
第1実施形態では、上記のように、温度センサ51に加えて、進退駆動部6に対して設けられ、容器1に向けてエアーを噴射することにより、容器1に付着した異物を除去するエアブロー52をさらに備える。これにより、容器1の初期温度が高くなりすぎている場合などに、エアブロー52により容器1の温度を調整することができる。
【0078】
第1実施形態では、上記のように、進退駆動部6は、温度センサ51を進退移動させるモータ61およびエアシリンダ64を含む。これにより、モータ61およびエアシリンダ64により、温度センサ51を容器1に対して進退移動させる構造を容易に実現することができる。
【0079】
[第2実施形態]
次に、
図7を参照して、第2実施形態のスラリー生成装置204について説明する。この第2実施形態では、スラリー生成装置104が温度センサ51を備える上記第1実施形態の構成に加えて、スラリー生成装置204が温度センサ251をさらに備える例について説明する。図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。なお、温度センサ251は、特許請求の範囲の「第2温度センサ」の一例である。
【0080】
第2実施形態のスラリー生成装置204は、温度センサ51と、温度センサ251との2つの温度センサを備えている。温度センサ251は、熱電対により構成されている。なお、
図7では、上記第1実施形態で説明したエアブローの図示を省略している。
【0081】
温度センサ251は、温度センサ51の下方側に配置され、固体部分Kの上端近傍の半凝固状の金属材料の部分に対応する容器1の温度を測定するように構成されている。制御部7は、温度センサ251の測定温度と、温度センサ51の測定温度とに所定温度以上の差がある場合(スラリーに温度ムラがある場合)には、ユーザに対して所定の警告を発するように構成されている。この際、制御部7は、スラリー生成システム100を停止するなどしてもよい。
【0082】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0083】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の効果について説明する。
【0084】
第2実施形態では、上記のように、容器設置部3は、容器1に注がれた液状の金属材料を下端から冷却することにより、金属材料の下端に所定厚みの固体部分Kを形成するように構成され、温度センサ51の下方側に配置され、固体部分Kの上端近傍の半凝固状の金属材料の部分に対応する容器1の温度を測定する温度センサ251をさらに備える。これにより、液状(半凝固状)の金属材料の部分に対応する中で特に温度が低くなりやすい位置の容器1の温度を測定することにより、金属材料の温度のむらを把握することができる。なお、金属材料の温度むらが大きい場合には、ユーザに対して警告を発したりなどを行う。
【0085】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0086】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0087】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、容器に対して温度センサを固定的に配置した例を示したが本発明はこれに限られない。本発明では、
図8に示す変形例のスラリー生成装置304ように、容器に対して温度センサ51を移動可能に構成してもよい。具体的には、スラリー生成装置304の取付部材63に、温度センサ51を上下方向に移動させる上下駆動機構353を設けて、温度センサ51を容器1に接触させた状態を保持しながら、温度センサ51を容器1に対して移動させながら温度を測定してもよい。なお、温度センサ51を下方から上方に徐々に移動させる。これにより、1つの温度センサ51により、金属材料(容器1)の複数箇所の温度を検知して、温度ムラを検知することができる。
【0088】
また、上記第1および第2実施形態では、それぞれ1つおよび2つの温度センサを備える例を示したが本発明はこれに限られない。本発明では、3つ以上の温度センサを備えていてもよい。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、スラリー生成装置と、搬送装置とを別構成とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、搬送装置を、スラリー生成装置が備える構成としてもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、スラリー生成装置と、注湯装置とを別構成とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、注湯装置を、スラリー生成装置が備える構成としてもよい。
【0091】
また、本発明では上記第1および第2実施形態で説明した温度センサによる容器の測定位置に限られることはなく、溶湯温度に容器の測定温度を適切に対応させることが可能であるならば、温度センサにより、容器の外側面のいずれの箇所の温度を測定してもよい。
【0092】
また、上記第1および第2実施形態では、搬送装置を、ロボットアームを含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、搬送装置を、コンベアを含むように構成してもよい。すなわち、容器を、コンベアによりスリーブまで搬送し、容器を所定の方法により傾斜させて金属材料をスリーブに投入してもよい。
【0093】
また、上記第1および第2実施形態では、スラリー生成装置により、金属材料の下部に固体部分を形成して、スリーブに供給した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スラリー生成装置により、金属材料の下部に固体部分を形成することなく、スリーブに供給してもよい。
【0094】
また、上記第1および第2実施形態では、進退駆動部を、モータおよびエアシリンダの両方を含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、進退駆動部を、モータおよびエアシリンダの一方のみを含むように構成してもよい。
【0095】
また、上記第1および第2実施形態では、容器を、概して円筒形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、容器を、下端が閉じられたコップ状に形成してもよい。
【0096】
また、上記第1および第2実施形態では、温度センサを熱電対により構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、温度センサを熱電対以外のセンサにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 容器
2 冷却部
3 容器設置部
6 進退駆動部
7 制御部
41 容器保持部
51 温度センサ(第1温度センサ)
52 エアブロー
61 モータ
64 エアシリンダ
92a スリーブ
100 スラリー生成システム
102 搬送装置
103 ダイカストマシン
104、204、304 スラリー生成装置
251 温度センサ(第2温度センサ)
K 固体部分
S 制御信号
T テーブル