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特許7191606型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置、成形方法、及び、物品製造方法
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  • 特許-型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置、成形方法、及び、物品製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置、成形方法、及び、物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221212BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20221212BHJP
   B29C 33/34 20060101ALI20221212BHJP
   B29C 33/36 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
B29C33/34
B29C33/36
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018172974
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020047649
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴徳
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-320541(JP,A)
【文献】再公表特許第2004/114388(JP,A1)
【文献】特開2012-212781(JP,A)
【文献】特開2013-068839(JP,A)
【文献】特開2018-070023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、
前記型を吸着保持し、外周領域が複数の領域に区分けされている型保持部と、
前記型保持部の複数の領域のそれぞれを駆動する複数の駆動部と、
前記複数の駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の駆動部をそれぞれ独立して前記基板の表面に交差する方向に駆動制御して前記領域で吸着保持された前記型の部分に前記方向の力を加え、当該型の部分から前記組成物から前記型を引き離す離型が前記基板の外周に沿って進行するように制御する、ことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記型保持部の各領域は、前記基板の外周に沿って配置され、前記型の外周を保持することを特徴とする請求項に記載の成形装置。
【請求項3】
前記制御部は、隣り合う前記型保持部の領域が順次駆動するように前記複数の駆動部を制御する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の駆動部のうちの一つを制御することで、前記離型を開始させる、ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記離型を開始する際に前記型保持部の各領域の一部の保持力を低減するよう制御する、ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項6】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、
前記型を吸着保持し、外周領域が複数の領域に区分けされている型保持部と、
前記型保持部の複数の領域のそれぞれを駆動する複数の駆動部と、
前記複数の駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の駆動部を制御することで、前記組成物から前記型を引き離す離型が前記基板の外周に沿って進行するように制御し、さらに
前記制御部は、前記離型を開始する際に前記型保持部の各領域の一部の保持力を低減するように制御する、ことを特徴とする成形装置。
【請求項7】
前記成形装置は、前記型の平面部を前記組成物に接触させることにより前記組成物を平坦にすることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項8】
前記成形装置は、前記型のパターンを前記組成物に接触させることにより前記組成物のパターンを形成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項9】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形方法であって、
前記型を吸着保持し、外周領域が複数の領域に区分けされている型保持部の複数の領域それぞれ独立して駆動するように制御する工程を含み、
前記工程において、複数の駆動部をそれぞれ独立して前記基板の表面に交差する方向に駆動制御することで、前記領域で吸着保持された前記型の部分に前記方向の力を加え、当該型の部分から前記組成物から前記型を引き離す離型が前記基板の外周に沿って進行するように制御する、ことを特徴とする成形方法。
【請求項10】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形方法であって、
前記型を吸着保持し、外周領域が複数の領域に区分けされている型保持部の複数の領域をそれぞれ駆動するように制御する工程を含み、
前記工程において、複数の駆動部を制御することで、前記組成物から前記型を引き離す離型が前記基板の外周に沿って進行するように制御し、さらに
前記離型を開始する際に前記型保持部の各領域の一部の保持力を低減するように制御する、ことを特徴とする成形方法。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の成形装置を用いて基板上の組成物を成形する工程と、
前記工程で組成物が形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、を含む、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置、成形方法、及び、物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加えて、基板上の未硬化のインプリント材をモールド(型)で成形して硬化させ、基板上にインプリント材のパターンを形成する微細加工技術が注目されている。かかる技術は、インプリント技術と呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターンを形成することができる。
【0003】
インプリント技術の1つとして、例えば、光硬化法がある。光硬化法を採用したインプリント装置は、基板上(ショット領域)に供給された光硬化性のインプリント材をモールドで成形し、光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離すことで、基板上にパターンを形成する。
【0004】
また、近年では、インプリント装置を用いて基板を平坦化する技術が提案されている(特許文献1参照)。基板の平坦化技術に関しては、一般的には、既存の塗布装置(スピンコーター)を用いて基板上に塗布膜を形成することで基板の段差を平坦化する技術が知られているが、基板の段差をナノスケールで平坦化するには不十分である。一方、特許文献1に開示された技術は、基板の段差に基づいてインプリント材を滴下し、滴下したインプリント材にテンプレートを接触させた状態でインプリント材を硬化することで平坦化の精度向上を図るものである。
【0005】
このような技術において、テンプレートとインプリント材を引きはがす離型動作の際に、テンプレートと、インプリント材及び基板とが、互いに引き合う力が大きく働く。そのため、テンプレートとインプリント材とを引きはがすのに必要な離型力が大きくなる。離型力が大きいと、硬化したインプリント材から型を引き離すことができず、テンプレートや基板をそれぞれの保持部(チャック)で保持することができなくなる(脱離する)問題が発生しうる。
【0006】
また、インプリント材が基板側から剥がれてテンプレート側に付着したまま残ってしまう場合もある。特許文献2では、基板の裏面の基板端部を保持する第1保持部と、基板裏面のその他の部分を保持する第2保持部を備えて、第1保持部及び前記第2保持部を互いに相対的に移動させて離型を行うことで、離型力を低減する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2011-529626号公報
【文献】特開2010-269580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この方法では、基板端部においては、離型力を低減することができるが、基板の端部から中央部に向かって離型を行う際に離型力が大きくなる恐れがある。そのため、テンプレートや基板の保持部からの脱離やテンプレートへのインプリント材の残留を効果的に改善することが困難であった。
【0009】
本発明は、例えば、離型に有利な成形装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、型を吸着保持し、外周領域が複数の領域に区分けされている型保持部と、型保持部の複数の領域のそれぞれを駆動する複数の駆動部と、複数の駆動部を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の駆動部をそれぞれ独立して基板の表面に交差する方向に駆動制御して領域で吸着保持された型の部分に方向の力を加え、型の部分から組成物から型を引き離す離型が基板の外周に沿って進行するように制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、離型に有利な成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一側面としての平坦化装置の構成を示す概略図である。
図2】平坦化処理の概要を説明するための図である。
図3】第1実施形態に係る型保持部を示す図である。
図4】第1実施形態に係る平坦化処理の離型動作を示した図である。
図5】第2実施形態に係る型保持部を示す図である。
図6】物品の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
【0014】
図1は、本発明の一側面としての平坦化装置100の構成を示す概略図である。平坦化装置100は、型(モールド、テンプレート)を用いて基板上のインプリント材(組成物
)を成形する成形装置(所謂、インプリント装置)で具現化され、本実施形態では、基板上のインプリント材を平坦化する。平坦化装置100は、基板上のインプリント材と型とを接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことで基板上にインプリント材の平坦面を形成する。
【0015】
平坦化装置100は、図1に示すように、チャック2と、基板ステージ3と、ベース定盤4と、支柱5と、天板6と、ガイドバー8と、支柱10と、複数の型保持部122a~122lと、支持部13と、アライメント棚14とを有する。さらに、供給部20と、オフアクシスアライメント(OA)スコープ21と、基板搬送部22と、アライメントスコープ23と、光源24と、ステージ駆動部31と、型搬送部32と、洗浄部33と、入力部34と、制御部200とを有する。本実施形態において、チャック2及び基板ステージ3は、基板1を保持する基板保持部を構成する。ここでは、水平面(チャック2に保持された基板1に沿った面)をXY平面とし、鉛直方向をZ軸方向とするようにXYZ座標系が定義されている。
【0016】
図1を参照するに、基板1は、搬送ハンドなどを含む基板搬送部22によって、平坦化装置100の外部から搬入され、チャック2に保持される。基板ステージ3は、ベース定盤4に支持され、チャック2に保持された基板1を所定の位置に位置決めするために、X軸方向及びY軸方向に駆動される。ステージ駆動部31は、例えば、リニアモータやエアシリンダなどを含み、基板ステージ3を少なくともX軸方向及びY軸方向に駆動する(移動させる)が、基板ステージ3を2軸以上の方向(例えば、6軸方向)に駆動する機能を有していてもよい。また、ステージ駆動部31は、回転機構を含み、チャック2又は基板ステージ3をZ軸方向に平行な軸周りに回転駆動する(回転させる)。
【0017】
型11は、搬送ハンドなどを含む型搬送部32によって、平坦化装置100の外部から搬入され、複数の型保持部122a~122lに保持される。平坦化装置100で用いられる型11は、少なくとも基板上のインプリント材と接触する領域は凹凸パターンが形成されていない平坦部11aを有する。型11は、例えば、円形又は四角形の外形を有し、基板上のインプリント材に接触して基板1の表面形状に倣う平面部11aを含む平面テンプレートである。平面部11aの面積は、本実施形態では、基板1の表面と同じ大きさ、又は、基板1の表面よりも大きい。複数の型保持部122a~122lは、支持部13に支持され、型11のZ軸周りの傾きを補正する機能を有する。複数の型保持部122a~122l及び支持部13を総称して、インプリントヘッド12という。インプリントヘッド12は、光源24からコリメータレンズを介して照射される光(紫外線)を通過させる開口(不図示)を含む。また、複数の型保持部122a~122l又は支持部13には、基板上のインプリント材に対する型11の押し付け力(押印力)を計測するためのロードセルが配置されている。複数の型保持部122a~122lの詳細な構成については後述する。
【0018】
ベース定盤4には、天板6を支持する支柱5が配置されている。ガイドバー8は、天板6に懸架され、アライメント棚14を貫通し、支持部13に固定される。アライメント棚14は、支柱10を介して天板6に懸架される。アライメント棚14には、ガイドバー8が貫通している。また、アライメント棚14には、例えば、斜入射像ずれ方式を用いて、チャック2に保持された基板1の高さ(平坦度)を計測するための高さ計測系(不図示)が配置されている。
【0019】
アライメントスコープ23は、基板ステージ3に設けられた基準マークと、型11に設けられたアライメントマークとを観察するための光学系及び撮像系を含む。但し、型11にアライメントマークが設けられていない場合には、アライメントスコープ23がなくてもよい。アライメントスコープ23は、基板ステージ3に設けられた基準マークと、型11に設けられたアライメントマークとの相対的な位置を計測し、その位置ずれを補正するアライメントに用いられる。
【0020】
供給部20(ディスペンサとも呼ばれる)は、基板1に未硬化のインプリント材を吐出する吐出口(ノズル)を有し、基板上にインプリント材を供給(塗布)する。供給部20は、例えば、ピエゾジェット方式やマイクロソレノイド方式などを採用し、基板上に1pL(ピコリットル)程度の微小な容積のインプリント材を供給することができる。また、供給部20における吐出口の数は、限定されるものではなく、1つ(シングルノズル)であってもよいし、100を超えてもよい(即ち、リニアノズルアレイでもよいし、複数のリニアノズルアレイを組み合わせてもよい)。
【0021】
OAスコープ21は、アライメント棚14に支持される。OAスコープ21は、型11を介さずに基板1の複数のショット領域に設けられたアライメントマークを検出する。アライメントスコープ23によって型11と基板ステージ3との位置関係を求め、OAスコープ21によって基板ステージ3と基板1との位置関係を求めることで型11と基板1との相対的なアライメントを行うことができる。
【0022】
洗浄部33は、型11がインプリントヘッド12に保持された状態で、型11を洗浄する(クリーニングする)。洗浄部33は、本実施形態では、基板上の硬化したインプリント材から型11を引き離すことによって、型11、特に、平面部11aに付着したインプリント材を除去する。洗浄部33は、例えば、型11に付着したインプリント材を拭き取ってもよいし、UV照射、ウェット洗浄、ドライプラズマ洗浄などを用いて型11に付着したインプリント材を除去してもよい。
【0023】
制御部200は、CPUやメモリなどを含み、平坦化装置100の全体を制御する。制御部200は、平坦化装置100の各部を統括的に制御して平坦化処理を行う処理部として機能する。ここで、平坦化処理とは、型11の平面部11aを基板上のインプリント材に接触させて平面部11aを基板1の表面形状に倣わせることでインプリント材を平坦化する処理である。なお、平坦化処理は、一般的には、ロット単位で、即ち、同一のロットに含まれる複数の基板のそれぞれに対して行われる。
【0024】
図2(A)乃至図2(C)を参照して、平坦化処理について概要を説明する。まず、図2(A)に示すように、下地パターン1aが形成されている基板1に対して、供給部20からインプリント材IMを供給する。図2(A)は、基板上にインプリント材IMを供給し、型11を接触させる前の状態を示している。次いで、図2(B)に示すように、基板上のインプリント材IMと型11の平面部11aとを接触させる。図2(B)は、型11の平面部11aが基板上のインプリント材IMに完全に接触し、型11の平面部11aが基板1の表面形状に倣った状態を示している。そして、図2(B)に示す状態で、光源24から、型11を介して、基板上のインプリント材IMに光を照射してインプリント材IMを硬化させる。次に、図2(C)に示すように、基板上の硬化したインプリント材IMから型11を引き離す。これにより、基板1の全面で均一な厚みのインプリント材IMの層(平坦化層)を形成することができる。図2(C)は、基板上にインプリント材IMの平坦化層が形成された状態を示している。
【0025】
次に、本実施形態の複数の型保持部122a~122lの構成について説明する。図3は、第1実施形態に係る型保持部122a~122lを示す図である。図3は、複数の型保持部122a~122lを+Z方向から見た図及びその側面図である。複数の型保持部122a~122lは型11の外周の位置で型11を保持する。本実施形態においては、一例として円形の外形を有する型11を用いるため、複数の型保持部122a~122lも円形の外周に沿った位置に円状に配置されている。なお、例えば、四角形の外形を有する型11を用いる場合、複数の型保持部122a~122lは、四角形状に配置することができる。
【0026】
複数の型保持部122a~122lは、複数の型保持部122a~122lを基板1の面(XY面)に交差する方向であるZ方向に駆動可能な駆動部121a~121lをそれぞれ備える。なお、本明細書において、基板1の表面とは、インプリント材が供給される基板1の面である。駆動部121a~121lは、支持部13に固定される。駆動部121a~121lは、制御部200によってそれぞれ個別に制御され、独立して駆動可能である。これにより、複数の型保持部122a~122lは、それぞれ独立してZ方向に駆動することができる。
【0027】
次に、図4を参照して、第1実施形態による平坦化処理の離型動作について説明する。図4は、第1実施形態に係る平坦化処理の離型動作を示した図である。なお、以下、単に型保持部122という場合、複数の型保持部122a~122lのうち少なくとも1つの型保持部を指すものとする。また、単に駆動部121という場合、複数の駆動部121a~121lのうち型保持部122に対応する少なくとも1つの駆動部を指すものとする。本実施形態に係る離型動作は、制御部200による各部の制御により、実行される。図4(A)は基板1の上のインプリント材IMと型11が接触した状態でインプリント材IMを硬化させた状態を示している。図4(B)は複数の型保持部122a~122lのうち、矢印で示す型保持部122aを駆動部121aによって+Z方向に駆動させ、インプリント材IMの外周の一点から離型を開始した図である。なお、本図においては、一例として、離型動作の開始位置を型保持部122aの位置とするが、これに限られない。
【0028】
これに続いて図4(C)において、型保持部122aと隣り合う型保持部122bを対応する駆動部121bによって、+Z方向に駆動させる。また、これに続き、図4(D)において、型保持部122bと隣り合う型保持部122cを対応する駆動部121cによって、+Z方向に駆動させる。このように、+Z方向に駆動された型保持部122と隣り合う型保持部を対応する駆動部によって順次駆動することで、型保持部122aの位置から開始される離型は、基板1の外周に沿って時計周りの方向に連続的に進行していく。このように離型を進行させることで、型11全体を同時に引き上げて離型を行う場合よりも、小さい領域ずつ離型を進行させることができる為、離型力を低減することが可能となり、型や基板の保持部からの脱離や型へのインプリント材の残留を低減することができる。
【0029】
図4(E)は複数の型保持部122a~122lを時計周りに順次に+Z方向に駆動させて行き、矢印で示す型保持部122lの駆動部121lによる駆動が完了し、型保持部122a~122lの+Z方向への駆動が一周した状態を示している。基板1の外周に沿って進んだ離型により、インプリント材IMと型11の接触部は離型開始時よりも直径が小さくなっている。図4(F)はさらに離型を進めるために、型保持部122aを、図4(E)の位置からさらに+Z方向に駆動させた図を示している。これに続いて、先述と同様に、+Z方向に駆動させれた型保持部と隣り合う型保持部を時計周りに順次+Z方向に駆動させ、基板1の外周に沿って離型を進行させ、離型を完了させる。
【0030】
なお、図4においては、離型の進行方向を時計周りとしたが、これに限定されず、反時計周りでもかまわない。また、図4においては、離型の開始位置である型保持部122aと隣り合う型保持部122b及び型保持部122lのうち、一方の型保持部122bのみを駆動し、離型を一方向に進行させたが、これに限られない。隣り合う型保持部の両方(型保持部122b及び型保持部122l)を駆動してもよい。離型の動作を型保持部122b、122c、122dを時計回りに順次駆動させて離型を進行させる動作と、型保持部122l、122k、122jを半時計回りに順次駆動させて離型を進行させる動作を組み合わせることができる。時計回りと反時計回りの離型動作を並行して行うことにより、基板1の外周に沿った離型を倍の速度で進行させることができ、スループットを向上させることが可能となる。
【0031】
ここまでは、離型の開始位置がインプリント材IMの外周の1点である場合を説明したが、離型の開始時において+Z方向に駆動する型保持部を複数としても良い。離型の開始時において+Z方向に駆動する型保持部を増やすことで離型の開始位置を複数にすることができる。例えば、型保持部122aに加えて、対角に位置する型保持部122gも同時に+Z方向に駆動させる。このようにすることで、対向する2点から離型が開始され、それぞれ型保持部と隣り合う型保持部を順次駆動させることとなり、基板1の外周に沿った離型を倍の速度で進行させることができるため、スループットを向上させることが可能となる。離型の開始点が多くなれば離型力は増加することとなるため、離型力と離型速度を勘案して離型開始点の数を決定しても良い。
【0032】
<第2実施形態>
次に、図5に基づいて第2実施形態の平坦化装置について説明する。図5は、第2実施形態に係る型保持部を示す図である。図5(A)は、第2実施形態の型保持部222の拡大図である。本実施形態においても、単に型保持部222という場合、複数の型保持部222a~222lのうち少なくとも1つの型保持部を指すものとする。本図は、型保持部222を-Z方向から見た図である。型保持部222は、複数の保持領域40~43を備える。保持領域40~43は、真空吸着力や静電力によって引き付けることで型11を保持する。
【0033】
本実施形態に係る型保持部222は、保持領域が4つに分割されている例である。型保持部222は、型保持部222の中央部に配置される保持領域40と、型保持部222と隣り合う型保持部に対向する位置に配置される保持領域41及び保持領域42と、基板1の中心部に対向する位置に配置される保持領域43を備える。各保持領域の保持力切り替え(型11の着脱の切り替え)は制御部200によって制御される。
【0034】
図5(B)は、矢印で示す位置の型保持部222aを+Z上方向に駆動させて、離型を開始した図を示している。型11の一部のみを+Z方向に駆動させると、型11に湾曲させる力が加わる。型11の湾曲した部分は元の形状に戻ろうとするため、型保持部222aの保持力と対抗する力が型11に働く。この力が保持力を超えてしまうと、型保持部222から型11が脱離してしまう懸念がある。また、型11への保持力が十分大きく、脱離しない場合であっても、型11を湾曲させる力によって型11の破損などを引き起こす可能性もある。そのため、本実施形態では、制御部200は、離型時の型保持部222の駆動に連動して複数の保持領域40~43の保持力をそれぞれ制御する。具体的には、離型時において、型保持部222が+Z方向への駆動が開始される際に、制御部200によって一部の保持領域41、42、43の保持力を切る(保持力を小さくする)。これにより、離型が進行していない位置付近の型保持部222による保持力を低減させ、離型動作による型11の湾曲量を軽減しつつ、離型動作を進行させる。なお、本実施形態においては、一部の保持領域41、42、43の保持力を完全に切ることとしたが、一部の保持領域41、42、43の保持力を低減させても良い。
【0035】
同様の効果を持たせる手段として、隣り合う型保持部222同士を型11が緩やかな湾曲となるための所定の間隔をもって配置する方法もある。具体的には、例えば、型保持部222の大きさを小さくする、または、数を減らすことにより、間隔をもたせる。さらに、保持領域の面積を小さくしても良い。具体的には、例えば、型保持部222は、図5(A)に示す保持領域40のみを備える。なお、これらの場合は型保持部222の保持力の総量が減るため、平坦化処理の全行程を鑑みて十分な保持力が確保されていることを確認する必要がある。
【0036】
また、隣り合う型保持部122(型保持部222)同士を型11が緩やかな湾曲となるように、複数の型保持部122を同時に+方向に駆動させてもよい。具体的には、型保持部122aを+Z方向に駆動させる際に、隣接する型保持部122b(型保持部122l)を+Z方向に駆動させることができる。この時、型保持部122aの駆動量よりも型保持部122bの駆動量を小さくすることで、型11を緩やかに湾曲させて離型することができる。
【0037】
以上のような構成とすることで、離型による型の型保持部からの脱離を低減することが可能となる。
【0038】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0039】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0040】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図6(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0041】
図6(B)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図6(C)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0042】
図6(D)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0043】
図6(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図6(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0044】
なお、型4zとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型を用いた例について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有する型(平面テンプレート)であってもよい。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、本発明は、成形装置を平坦化装置に限定するものではなく、インプリント装置にも適用することができる。ここで、インプリント装置は、型として凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型を用いる。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材と凹凸パターンを備える型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0046】
さらの、上述の実施形態においては、型保持部が複数設けられる実施形態について説明したが、同様に基板保持部を複数設けることで、離型力を低減させても良い。
【符号の説明】
【0047】
40~43 保持領域
100 平坦化装置
121a~l 駆動部
122a~l 型保持部
200 制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6