(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】把持装置、及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B25J15/06 E
(21)【出願番号】P 2018173595
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘章
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-108068(JP,A)
【文献】特開2003-332410(JP,A)
【文献】実公昭51-26861(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体内に設けられ
、真空引きに用いる外部流路部が接続される主流路部と、
前記本体内に設けられて前記主流路部に接続され、前記本体の外面に設けられた第1の開口部を通して外部に開口する第1の流路部と、
前記本体内に設けられて前記主流路部に接続され、前記第1の流路部の流路抵抗より大きな流路抵抗を有し、前記外面に設けられた第2の開口部を通して外部に開口する第2の流路部と、
前記主流路部に設けられ、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが連通する状態と、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが非連通となる状態と、を切り替える切替バルブと、
を具備する把持装置。
【請求項2】
前記切替バルブ及び前記主流路部に接続されたエジェクタを具備し、
前記外部流路部は、圧縮空気を送気し、
前記切替バルブは、前記外部流路部と前記エジェクタとが非連通となり、かつ、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが非連通となる第1の状態、前記外部流路部と前記エジェクタとが連通し、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが非連通となる第2の状態、及び前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部が連通し、かつ、前記外部流路
部と前記エジェクタとが非連通となる第3の状態を切り替え
る
請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記切替バルブは、三方弁に構成された電磁バルブである
請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第2の流路部は複数設けられ、
複数の前記第2の開口部は、前記第1の開口部を囲む位置に配置される
請求項1に記載の把持装置。
【請求項5】
前記第1の開口部は、前記外面の角部に配置される
請求項1に記載の把持装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載のいずれか1つの把持装置と、
前記把持装置を移動する移動装置と、
を具備する搬送装置。
【請求項7】
前記把持装置を複数備える請求項6に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、把持装置、及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、複数の吸着パッドを備えた把持装置により荷物を把持して搬送する搬送装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、構造を簡素化でき、かつ高コスト化を防止できる把持装置、及び搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、把持装置は、本体と、主流路部と、第1の流路部と、第2の流路部と、切替バルブと、を備える。前記主流路部は、前記本体内に設けられ、真空引きに用いる外部流路部が接続される。前記第1の流路部は、前記本体内に設けられて前記主流路部に接続され、前記本体の外面に設けられた第1の開口部を通して外部に開口する。前記第2の流路部は、前記本体内に設けられて前記主流路部に接続され、前記第1の流路部の流路抵抗より大きな流路抵抗を有し、前記外面に設けられた第2の開口部を通して外部に開口する。前記切替バルブは、前記主流路部に設けられ、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが連通する状態と、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが非連通となる状態と、を切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態に係る搬送装置の構成を示す斜視図。
【
図2】同搬送装置に用いられる把持装置の構成を模式的に示す断面図。
【
図6】同搬送装置の動作の一例を模式的に示す説明図。
【
図7】同把持装置が小型の荷物を把持した状態を模式的に示す断面図。
【
図8】同把持装置が凸面を有する荷物を把持した状態を模式的に示す断面図。
【
図9】同把持装置が、角がつぶれた荷物を把持した状態を模式的に示す断面図。
【
図10】第2の実施形態に係る把持装置の構成を模式的に示す断面図。
【
図11】同把持装置が荷物を吸着した状態を模式的に示す断面図。
【
図12】第3の実施形態に係る把持装置の構成を模式的に示す断面図。
【
図14】同把持装置が荷物を吸着した状態を模式的に示す断面図。
【
図15】第4の実施形態に係る把持装置の構成を模式的に示す断面図。
【
図18】
変形例に係る把持装置の構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1の実施形態に係る搬送装置10を、
図1乃至
図9を用いて説明する。
図1は、搬送装置10の構成を説明する斜視図である。
図2は、搬送装置10に用いられる把持装置40の構成を模式的に示す側面図である。
図3は、把持装置40の構成を模式的に示す下面図である。
図4は、把持装置40の構成を示すブロック図である。
図5は、搬送装置10の動作の一例を説明する流れ図である。
図6は、搬送装置の動作の一例を模式的に示す説明図である。
図7は、把持装置40が小型の荷物6を把持した状態を模式的に示す断面図である。
図8は、把持装置40が凸面を有する荷物6を把持した状態を模式的に示す断面図である。
図9は、把持装置40が、角がつぶれた荷物6を把持した状態を模式的に示す断面図である。
【0008】
図1乃至
図5に示すように、搬送装置10は、移動装置20と、物品検出装置30と、把持装置40と、圧力調整装置50と、制御装置60と、コントローラ70と、を備えている。
【0009】
搬送装置10は、圧力調整装置50によって真空引きされた把持装置40で配置部5の荷物6を吸着することで把持し、移動装置20によって移動することで、荷物6をベルトコンベア等の搬送先7に搬送する。配置部5は、一例として、複数の荷物6を収容可能な、上面に開口を有する容器である。配置部5は、作業者により、移動装置20の可動域内の所定位置に搬送される。なお、配置部5は、容器であることに限定されない。配置部5は、例えば机や棚であってもよい。
【0010】
移動装置20は、把持装置40を配置部5に移動可能に、かつ、配置部5で荷物6を吸着して保持した把持装置40を、搬送先7に移動可能に構成されている。また、移動装置20は、把持装置40を、荷物6の外面を吸着する姿勢にすることを可能に構成されている。このような移動装置20は、一例として、多軸のロボットアームにより構成されている。移動装置20は、一例として、搬送先7に隣接する位置に例えば固定されている。なお、移動装置20は、搬送装置10が設置される倉庫等の床に固定される構成に限定されない。移動装置20は、リニアステージや台車によって、移動可能に構成されてもよい。
【0011】
物品検出装置30は、配置部5に配置された荷物6を検出可能に構成される。物品検出装置30は、例えばRGBカメラである。物品検出装置30は、配置部5に配置された複数の荷物6の全体、または、複数の荷物6の一部を視野に収められるように配置されている。
物品検出装置30は、配置部5、移動装置20、または、把持装置40に固定されてもよい。または、物品検出装置30は、搬送装置10が設置される倉庫等の施設に固定されてもよい。
【0012】
把持装置40は、
図2に示すように、本体41と、主流路部42と、第1の流路部43と、第2の流路部44と、複数の吸着パッド45と、圧力センサ46と、を備えている。把持装置40が荷物6を把持した状態とは、複数の吸着パッド45の少なくとも1つが荷物6を吸着した状態である。
【0013】
本体41は、把持装置40の外観の一部を規定する。本体41は、一例として、外観が直方体状に構成されている。本体41は、6つの側面を有している。ここで、6つの側面のうち、複数の吸着パッド45が固定される面を、以降、下面41aとする。下面41aは、本体41の外面の一例である。本体41は、移動装置20に固定されている。本実施形態では、移動装置20が多軸のロボットアームであることから、本体41は、移動装置20の先端のアーム21に固定されている。
【0014】
主流路部42は、本体41内に設けられている。主流路部42の一端は、圧力調整装置50の一部を構成する配管52が接続される。主流路部42は、配管52または真空引き装置53から供給された圧縮空気を、第1の流路部43及び第2の流路部44に供給し、直接本体外へ排出しない。主流路部42は、一例として、本体41に設けられた、中空空間部により構成されている。主流路部42は、他の例では、本体41内に設けられた、配管により構成されてもよい。
【0015】
第1の流路部43は、主流路部42から分岐し、本体41の下面41aまで延びている。第1の流路部43は、下面41aに設けられた第1の開口部43aを通して外部に開口する。第1の開口部43aは、一例として、下面41aに形成された開口である。下面41aは、本体41の外面のうち、例えば、移動装置20に固定された側面に相対する側面である。第1の開口部43aは、一例として、下面41aの中央に配置されている。
第1の流路部43は、一例として、本体41に設けられた、中空空間部により構成されている。第1の流路部43は、他の例では、本体41内に設けられた、配管により構成されてもよい。
【0016】
第2の流路部44は、主流路部42から分岐し、下面41aまで延びている。第2の流路部44は、下面41aに設けられた第2の開口部44bを通して外部に開口する。第2の流路部44は、一例として、複数、さらに一例として4本設けられている。4本の第2の流路部44の第2の開口部44bは、下面41aの4つの角部のそれぞれに1つずつ、設けられている。すなわち、第2の流路部44の下面41aの第2の開口部44bは、第1の流路部43の下面41aの第1の開口部43aを囲む位置に配置されている。第2の流路部44は、一例として、本体41に設けられた、中空空間部により構成されている。第2の流路部44は、他の例では、本体41内に設けられた、配管により構成されてもよい。
第2の流路部44は、第1の流路部43に比較して、流路抵抗が大きく構成されている。第2の流路部44は、一例として、流量抑制機構44aが設けられており、この流量抑制機構44aにより、第1の流路部43に比較して、流路抵抗が大きく構成されている。流量抑制機構44aは、流路断面積を小さくすることで流路抵抗を大きくする。流量抑制機構44aは、一例として、スロットルバルブである。なお、流量抑制機構44aの流路断面積とそれ以外の部分の流路断面積の比は、例えば1:8~1:16である。
なお、本実施形態では、流量抑制機構44aは、一例として、一部が第2の流路部44の下面41aに設けられている。第2の流路部44は、一例として、流量抑制機構44aを介して、外部に開口する。本実施形態では、流量抑制機構44aは、第2の開口部44bを構成する。
【0017】
複数の吸着パッド45は、それぞれは、下面41aに設けられている。複数の吸着パッド45は、それぞれ、第1の開口部43aを通して第1の流路部43に連通し、または、第2の開口部44bを通して複数の第2の流路部44のそれぞれに連通している。ここで、第1の流路部43に連通する吸着パッド45を、以降、第1の吸着パッド47と称し、第2の流路部44に連通する吸着パッド45を、以降、第2の吸着パッド48と称して説明する。
【0018】
第1の吸着パッド47、及び第2の吸着パッド48は、一例として、円錐台形の筒状に構成されている。第1の吸着パッド47は、一例として、第2の吸着パッド48に比較して、大径に構成されている。
【0019】
第1の吸着パッド47、及び第2の吸着パッド48は、荷物6の表面形状に倣って変形可能に構成されている。第1の吸着パッド47、及び第2の吸着パッド48は、シリコンゴムやウレタン、ニトリルゴム等の剛性が比較的低い材料から形成されている。
第1の吸着パッド47の吸着面、及び第2の吸着パッド48の吸着面は、把持装置40が荷物6を吸着していない状態において、同一平面上に配置される。
【0020】
圧力センサ46は、主流路部42に設けられている。圧力センサ46は、主流路部42内の圧力に応じた信号を制御装置60に送信する。
【0021】
圧力調整装置50は、第1の吸着パッド47内、及び第2の吸着パッド48内の圧力を調整可能に構成されている。圧力調整装置50は、一例として、コンプレッサ51と、配管52と、真空引き装置53と、切替バルブ54と、を備えている。
【0022】
コンプレッサ51は、把持装置40外に設置されている。
配管52は、コンプレッサ51に接続されている。また、配管52は、例えば継手55を介して、主流路部42に接続されている。配管52は、コンプレッサ51からの圧縮空気を、真空引き装置53側に送気する外部流路部を構成する。配管52は、例えばチューブであり、移動装置20に這わせて配管されている。
【0023】
真空引き装置53は、一例として、エジェクタが用いられている。真空引き装置53は、圧縮空気が供給されることで駆動し、空気を吸い込む。真空引き装置53は、一例として、圧縮空気が供給される第1の口53aと、空気を吸い込む第2の口53bと、排気する第3の口と、を有している。真空引き装置53は、本体41内に収容されている。第1の口53aは、切替バルブ54に接続されている。第2の口53bは、主流路部42に接続されている。真空引き装置53の第3の口は、本体41の外に開口している。
【0024】
切替バルブ54は、主流路部42の、配管52及び真空引き装置53の間の部分に設けられている。また、切替バルブ54は、真空引き装置53に接続されている。
切替バルブ54は第1乃至第3の状態を切替え可能に構成されている。
【0025】
第1の状態は、閉状態である。第1の状態は、真空引き装置53及び配管52が非連通となり、かつ、配管52と、第1の流路部43及び第2の流路部44と、が非連通となる状態である。
本実施形態では、切替バルブ54は、配管52と、主流路部42の切替バルブ54に対して第1の流路部43及び第2の流路部44側と、を非連通とすることで、配管52と、第1の流路部43及び第2の流路部44と、を非連通とする。配管52と、第1の流路部43及び第2の流路部44とが非連通となる状態とは、配管52及び第1の流路部43が非連通となり、かつ、配管52及び第2の流路部44が非連通となる状態である。
【0026】
第2の状態は、配管52及び真空引き装置53を連通し、かつ、配管52と、第1の流路部43及び第2の流路部44と、を非連通とする状態である。第2の状態では、配管52からの圧縮空気は、第1の流路部43及び第2の流路部44には供給されず、真空引き装置53に供給される。
【0027】
第2の状態では、配管52からの圧縮空気が、第1の口53aから真空引き装置53に供給されて真空引き装置53が駆動される。駆動された真空引き装置53は、第2の口53bから空気を吸い込むことで、主流路部42、第1の流路部43、第2の流路部44、及び複数の吸着パッド45内を真空引きする。また、真空引き装置53は、第1の口53aを通して供給された圧縮空気、及び第2の口53bから吸い込んだ空気を、第3の口から本体41外へ排出する。
【0028】
第3の状態は、配管52及び真空引き装置53を非連通とし、かつ、配管52と、第1の流路部43及び第2の流路部44と、を連通する状態である。本実施形態では、切替バルブ54は、配管52と、主流路部42の切替バルブ54に対して第1の流路部43及び第2の流路部44側と、を連通することで、配管52と、第1の流路部43及び第2の流路部44とを連通する。配管52と、第1の流路部43及び第2の流路部44とが連通する状態とは、配管52及び第1の流路部43が連通し、かつ、配管52及び第2の流路部44が連通する状態である。第3の状態では、配管52からの圧縮空気は、主流路部42、第1の流路部43、第2の流路部44を通して、複数の吸着パッド45に供給される。
【0029】
このような切替バルブ54は、一例として、三方弁に構成された電磁弁である。切替バルブ54の3つのポートの1つが、主流路部42の一部、及び継手55を介して配管52に接続される。他の1のポートが、主流路部42に接続される。残りの1つのポートが真空引き装置53の第1の口53aに接続される。切替バルブ54は、制御装置60により制御される。なお、切替バルブ54は、他の例として、2つの開閉バルブを組み合わせて構成されてもよい。
【0030】
制御装置60は、認識部61と、計画制御部62と、を備えている。認識部61は、物品検出装置30からの情報に基づいて、荷物6の形状、位置、及び姿勢等の情報を得る。
計画制御部62は、物品検出装置30からの情報に基づいて、移動装置20の動作計画を立てる。動作計画は、把持装置40により荷物6を吸着するまでの移動経路、及び荷物6を吸着した把持装置40を搬送先7まで移動する移動経路を含む。また、計画制御部62は、圧力センサ46からの信号を受信する。また、計画制御部62は、切替バルブ54を制御する。
【0031】
このように構成された制御装置60は、例えば1台のパーソナルコンピュータにより構成される。換言すると、1台のパーソナルコンピュータが、認識部61、及び計画制御部62をかねてもよい。または、認識部61、及び計画制御部62は、それぞれ1台のパーソナルコンピュータにより構成されてもよい。
【0032】
コントローラ70は、計画制御部62が立てた動作計画に基づいて、移動装置20の駆動を制御する。
次に、搬送装置10の動作を説明する。
まず、
図1に示すように、物品検出装置30は、配置部5を撮影し、配置部5に配置された荷物6の画像を出力する(ステップST1)。物品検出装置30が撮影する画像は一枚に限定されず、焦点距離や撮影角度を変えながら撮影した複数枚の画像を撮影してもよい。撮影された画像は認識部61に送られる。
【0033】
次に、認識部61は、物品検出装置30からの画像を画像処理する(ステップST2)。荷物6が一つも検出されない場合は、処理を終了する(ステップST3のNo、及びEnd)。
【0034】
配置部5に一以上の荷物6があることを検出すると(ステップST3のYes)、認識部61は、画像を画像処理することで、画像内の荷物6を一つ一つに切り分ける(ステップST4)。
【0035】
次に、認識部61は、切り分けられた荷物6の中から、一定の基準に従って、次に搬送する一つの荷物6を選択する(ステップST5)。なお、選択に用いられる基準は限定されない。例えば、最も高い位置にある荷物、移動装置20から見て手前にある荷物、他の荷物6との間のすき間が大きい荷物、配置部5の中央に配置された荷物、データベース上で予め把持しやすいと規定されている荷物、又はそれらの条件を複数有する荷物が選択される。
【0036】
次に、認識部61は、画像処理により、選択された荷物6の形状、位置、及び姿勢を検出する(ステップST6)。
【0037】
次に、認識部61は、ステップST6で検出された、荷物6の形状、位置、及び姿勢の情報に基づいて、荷物6の目標把持点を検出し、かつ、目標把持点での把持装置40の姿勢となる目標把持姿勢を生成する(ステップST7)。目標把持点は、例えば、荷物6の被吸着面の中心の位置である。被吸着面は、荷物6の上面、または、荷物6の側面である。被吸着面は、例えば荷物6の姿勢に応じて決定される。目標把持姿勢は、吸着パッド45の軸方向が荷物6の上面に直交する姿勢である。
【0038】
この時点では、切替バルブ54は、
図6の(a)に示すように、第1の状態にあり、主流路部42、第1の流路部43、及び複数の第2の流路部44は、大気圧である。
【0039】
次に、計画制御部62は、把持装置40の把持基準点GPの位置が目標把持点と一致し、かつ把持装置40の姿勢が目標把持姿勢と一致するように、移動装置20の移動経路を計画する。把持装置40の把持基準点GPは任意に設定してよいが、本実施形態では、把持装置40の把持基準点GPは、一例として第1の吸着パッド47の吸着面の中心である。第1の吸着パッド47の吸着面は、第1の吸着パッド47の開口端面である。
【0040】
次に、計画制御部62は、切替バルブ54を、第2の状態にする(ステップST8)。切替バルブ54が第2の状態となることで、
図6の(b)に示すように、配管52からの圧縮空気が真空引き装置53に供給される。真空引き装置53に圧縮空気が供給されることで、主流路部42、第1の流路部43、及び複数の第2の流路部44が真空引きされる。
【0041】
第1の流路部43、及び複数の第2の流路部44が真空引きされることで、第1の吸着パッド47、及び複数の第2の吸着パッド48が、それぞれの吸着面を通して空気を吸い込む。1つの第2の吸着パッド48から吸い込む空気の流量は、第1の吸着パッド47から吸い込む空気の流量に比較して、小さい。
【0042】
次に、計画制御部62は、移動装置20を制御して、把持装置40が目標吸着位置で目標吸着姿勢となるよう、動作計画に基づいて把持装置40を荷物6に向けて移動させる(ステップST9)。
【0043】
計画制御部62は、移動装置20の駆動中、圧力センサ46からの信号に基づいて、主流路部42内の圧力が所定の閾値以下になるまで監視する(ステップST10のNo)。
図6の(c)に示すように、把持装置40の複数の吸着パッド45の少なくとも一部が荷物6に当接することで閉塞されると、吸着パッド45が閉塞される前の状態に比較して主流路部42内の圧力が低下する。閾値は、把持装置40により荷物6を吸着して保持したと判断に用いられる値であり、例えば、第1の吸着パッド47のみが閉塞されたときの圧力値である。
【0044】
なお、
図7及び
図8に示すように、第1の吸着パッド47のみを閉塞する比較的小さな荷物6の場合、または、袋物や、被吸着面が凸面に構成された荷物6の場合は、把持装置40は、第1の吸着パッド47のみが荷物6によって閉塞される。
【0045】
この場合、第2の吸着パッド48が閉塞されないことから、主流路部42内の圧力は、全ての第2の吸着パッド48が閉塞された状態に比較して、高くなる。さらに、荷物6が袋状である場合では、第1の吸着パッド47の吸着時に袋にしわが寄ることで、第1の吸着パッド47の吸着面、及び荷物6の被吸着面の間に隙間が生じる。この隙間を通して空気が第1の吸着パッド47に吸い込まれる。
【0046】
しかしながら、第2の流路部44は、第1の流路部43に比較して流路抵抗が高いことから、第2の流路部44を通して吸い込まれる空気の流量を小さく抑えられるので、第1の流路部43内の真空度を高く保つことができる。この為、第1の吸着パッド47のみで吸着する場合であっても、高い吸着力を維持できる。
【0047】
また、
図9に示すように、角がつぶれている荷物6等の場合では、1つ以上の第2の吸着パッド48が閉塞されない場合が生じえる。しかしながら、閉塞されていない第2の吸着パッド48があっても、第2の流路部44の流路抵抗が第1の流路部43の流路抵抗に比較して大きいことから、この閉塞されていない第2の吸着パッド48を通して吸い込まれる空気の流量を小さく抑えることが可能となる。
【0048】
なお、閾値は、使用環境に応じて任意に設定してよいが、例えば-20~-40kPaの間の任意の値である。また、閾値は一定値に限定されず、荷物の特徴(例えば大きさや形状、重量など)によって適切な値が選択されてもよい。
【0049】
計画制御部62は、圧力センサ46の検出値が所定の閾値以下となると、少なくとも第1の吸着パッド47が荷物6の上面を吸着したと判断して(ステップST10のYes)、移動装置20により把持装置40の荷物6の被吸着面へ向かう方向の移動を停止し、その後、移動装置20によって、把持装置40及び荷物6を搬送先7まで移動させる(ステップST11)。
【0050】
計画制御部62は、把持装置40及び荷物6を搬送先7の上方の位置まで移動すると、切替バルブ54を第3の状態に切り替える(ステップST12)。切替バルブ54が第3の状態になることで、配管52からの圧縮空気が、主流路部42、第1の流路部43、及び複数の第2の流路部44に供給される。
【0051】
図6の(d)に示すように、主流路部42、第1の流路部43、及び複数の第2の流路部44に、配管52からの圧縮空気を供給してこれら流路部内を正圧にすることで、荷物6の吸着力を消失させて荷物6をリリースする。
【0052】
次に、計画制御部62は、圧力センサ46の検出結果に基づいて、主流路部42内の圧力が大気圧以上になるまで(ステップST13のNo)、監視する。計画制御部62は、主流路部42内の圧力が大気圧以上なると、荷物6がリリースされたと判断する(ステップST13のYes)。リリースされた荷物6は、搬送先7上に載置される。
【0053】
次に、計画制御部62は、切替バルブ54を第1の状態にする(ステップST14)。切替バルブ54が第1の状態に切り替えられることで、第1の吸着パッド47内、及び第2の吸着パッド48内の圧力が大気圧に維持される。
【0054】
次に、計画制御部62は、移動装置20を動作させて、移動装置20を所定の待機位置に移動させ(ステップST15)、ステップST1から同様の処理を繰り返す。
【0055】
このように構成された把持装置40は、把持装置40のコストを低減し、かつ把持装置40の構造を簡素化できる。この効果について、具体的に説明する。
従前では、複数の吸着パッド内の真空度の低下を防止する為に、複数の吸着パッドのそれぞれに連通する流路部に開閉弁を設け、複数の吸着パッドのうち荷物に当接していない吸着パッドに連通する開閉弁を閉じることで、吸着パッドを通して空気が流路部に流入することを防止する構成が知られている。
【0056】
この構成の場合、複数の流路部のそれぞれに開閉弁を設けることから、把持装置の構成が複雑化し、かつ、把持装置のコストも高くなる。さらに、複数の開閉弁のそれぞれに接続された配線の取り回しが複雑になる。さらに、これらの配線により、移動装置20の可動域が制限される。
【0057】
これに対して、本実施形態の把持装置40は、主流路部42、第1の流路部43、及び第1の流路部43より流路抵抗が大きい第2の流路部44、第1の流路部43に設けられた第1の吸着パッド47と、第2の流路部44に設けられた第2の吸着パッド48と、を備えている。
【0058】
この為、荷物6の大きさ、または、荷物6の形状に起因して、第2の吸着パッド48が閉塞されない場合であっても、第2の吸着パッド48を介して流入する空気の流量を小さく抑えることが可能となるので、主流路部42、及び第1の流路部43内の真空度が高い状態が維持される。
【0059】
すなわち、第1の流路部43、及び第2の流路部44のそれぞれに開閉バルブに構成された電磁バルブを設けて、閉塞されてない吸着パッド45が設けられた流路部を閉じることが可能な構成がなくても、高い真空度を維持可能となる。この為、把持装置40は、コストを低減し、かつ構造を簡素化できる。
【0060】
さらに、第1の流路部43が、第2の流路部44に比較して流路抵抗が小さいことから、真空破壊の際に、第1の吸着パッド47の圧力は第2の吸着パッド48に比較して早く上昇し、併せて主流路部42内の圧力も上昇することで、吸着力を早く低下させることが可能となる。この為、荷物6を早くリリースすることが可能となる。
【0061】
さらに、圧力調整装置50は、コンプレッサ51、真空引き装置53、及び切替バルブ54を備えて、切替バルブ54を第3の状態にすることで配管52からの圧縮空気を利用して真空破壊を行う。この為、荷物6を早くリリースすることが可能となる。
【0062】
さらに、切替バルブ54が1つのバルブであることから、把持装置40のコストを低減し、かつ、把持装置40の構造を簡素化できる。
【0063】
さらに、本実施形態では、第1の流路部43は、把持装置40の本体41の下面41aの中央に開口し、第2の流路部44は、下面41aの角部のそれぞれに開口している。これら開口の配置により、複数の第2の吸着パッド48は、第1の吸着パッド47を囲む位置に配置されることとなるので、第1の吸着パッド47、及び第2の吸着パッド48が被吸着面に対してバランスよく配置される。この為、荷物6を移動する際の荷物6の姿勢を安定させることが可能となる。
【0064】
次に、第2の実施形態に係る搬送装置10Aを、
図10及び
図11を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図10は、把持装置40Aの構成を模式的に示す断面図である。
図11は、把持装置40Aが荷物6を把持した状態を模式的に示す断面図である。搬送装置10Aは、移動装置20と、物品検出装置30と、把持装置40Aと、圧力調整装置50と、制御装置60と、コントローラ70と、を備えている。なお、搬送装置10Aの把持装置40A以外の構成は、一例として第1の実施形態と同じであるので、
図10及び
図11には、図示していない。
【0065】
図10及び
図11に示すように、把持装置40Aは、本体41と、主流路部42と、第1の流路部43と、複数の第2の流路部44と、第1の吸着パッド47Aと、複数の第2の吸着パッド48Aと、圧力センサ46と、を備えている。
【0066】
第1の吸着パッド47Aは、下面41aに固定されており、第1の開口部43aを通して第1の流路部43に連通している。第2の吸着パッド48Aは、下面41aに固定されており、第2の開口部44bを通して第2の流路部44に連通している。下面41aでの第1の吸着パッド47A及び複数の第2の吸着パッド48Aの配置は、下面41aでの第1の吸着パッド47及び複数の第2の吸着パッド48の配置と同じである。
【0067】
第1の吸着パッド47A、及び複数の第2の吸着パッド48Aは、軸方向に伸縮可能に構成されている。第1の吸着パッド47A、及び複数の第2の吸着パッド48Aは、それぞれ、軸方向に伸縮可能な構成の一例として、蛇腹状の筒に構成されている。第1の吸着パッド47A、及び第2の吸着パッド48Aは、軸方向に伸縮可能に構成されることで、それぞれ、荷物6の上面の形状に応じて変形することが可能となる。
【0068】
第1の吸着パッド47Aは、一例として、第2の吸着パッド48Aに比較して、大径に構成されている。第1の吸着パッド47Aの吸着面、及び第2の吸着パッド48Aの吸着面は、把持装置40Aが荷物6を吸着していない状態において、同一平面上に配置される。
【0069】
図11に示すように、荷物6の被吸着面が凸面に構成された荷物6を吸着する場合では、中央に配置された第1の吸着パッド47Aが先に荷物6に当接することで収縮するので、その後、第2の吸着パッド48Aが荷物6に当接させることが可能となる。
【0070】
この為、把持装置40Aは、第1の実施形態と同様の効果に加えて、第1の吸着パッド47A、及び第2の吸着パッド48Aを凸面に吸着させることが可能となる。
【0071】
さらに、袋物の荷物等、把持装置40Aによって被吸着面を吸着することで被吸着面が凸面となる荷物6に対しては、第1の吸着パッド47A、及び第2の吸着パッド48Aは、被吸着面を吸着した後、被吸着面の変形に応じて伸縮するので、被吸着面を吸着した状態を維持することが可能となる。
【0072】
なお、本実施形態のように第1の吸着パッド47A、及び第2の吸着パッド48Aが、軸方向に伸縮可能に構成される場合、第1の吸着パッド47Aの剛性を、第2の吸着パッド48Aの剛性よりも小さくすることで、被吸着面が凸面である場合、または、被吸着面が第1の吸着パッド47A及び第2の吸着パッド48Aにより吸着された後に凸面となる場合においても、第1の吸着パッド47Aが、被吸着面に応じて変形しやすくなるので、第2の吸着パッド48Aを被吸着面に当接しやすくなる、または、第2の吸着パッド48Aが被吸着面を吸着した状態を維持しやすくなる。
【0073】
次に、第3の実施形態に係る搬送装置10Bを、
図12乃至
図14を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
図12は、搬送装置10Bに用いられる把持装置40Bを模式的に示す断面図である。
図13は、把持装置40Bを模式的に示す下面図である。
図14は、把持装置40Bが荷物6を吸着した状態を模式的に示す断面図である。
搬送装置10Bは、移動装置20と、物品検出装置30と、把持装置40Bと、圧力調整装置50と、制御装置60と、コントローラ70と、を備えている。なお、搬送装置10Bの把持装置40B以外の構成は、一例として第1の実施形態と同じであるので、
図12乃至
図14には、図示していない。
【0075】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、第2の吸着パッド48の数、並びに、下面41aでの第1の吸着パッド47及び第2の吸着パッド48の配置が、第1の実施形態と異なる。
【0076】
具体的には、
図12乃至
図14に示す変形例のように、第1の流路部43は、第1の吸着パッド47が下面41aの4つの角部の1つに配置される位置に開口し、第2の流路部44は、第2の吸着パッド48が残りの3つの角部のそれぞれに配置される位置に開口してもよい。この結果、第1の吸着パッド47は、下面41aの1つの角部に配置され、3つの第2の吸着パッド48は、下面41aの残りの3つの角部のそれぞれに配置されている。
【0077】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、把持装置40Bの構造を簡素化でき、かつ、把持装置40Bの高コスト化を防止できる。さらに、第1の吸着パッド47を、下面41aの中央ではなく角部に配置することで、第1の吸着パッド47を、配置部5の壁際に配置することが可能となる。この為、配置部5の壁際に配置された比較的小さな荷物6であっても、第1の吸着パッド47を用いて吸着して把持することが可能となる。ここで言う比較的小さな荷物6とは、その上面が被吸着面となり、被吸着面の面積が、第1の吸着パッド47の吸着面の面積より若干大きく、第2の吸着パッド48が吸着できない程度に小さい荷物である。
【0078】
次に、第4の実施形態に係る搬送装置10Cを、
図15及び
図16を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図15は、搬送装置10Cが有する把持ユニット80の構成を示す断面図である。
図16は、把持ユニット80の構成を模式的に示す下面図である。
図15及び
図16に示すように、搬送装置10Cは、移動装置20と、物品検出装置30と、把持ユニット80と、圧力調整装置50と、制御装置60と、コントローラ70と、を備えている。なお、把持ユニット80以外の構成は第1の実施形態と同じであるので、図
15及び図
16には、図示していない。
【0079】
把持ユニット80は、複数の把持装置40を備えている。把持ユニット80は、一例として、4つの把持装置40を備えている。これら4つの把持装置40は、それぞれの下面41aを同一平面に配置する姿勢で固定されている。また、これら4つの把持装置40は、例えば、直方体を構成するように、それぞれの角部を対向させた姿勢で固定されている。
【0080】
この構成の場合では、
図15に示すように、把持装置40のそれぞれに圧力調整装置50が設けられてもよい。または、圧力調整装置50は、コンプレッサ51が共通して1つが用いられ、この1つのコンプレッサに複数の配管52が接続され、これら複数の配管52のそれぞれが、把持装置40に接続されてもよい。
【0081】
図16に示すように、把持ユニット80の把持基準点GPは、把持ユニット80が備える複数の第1の吸着パッド47の凸包絡Lの平面視での重心とする。ここで言う平面視とは、第1の吸着パッド47の軸方向に沿って見た状態であり、本実施形態では、下面41aに直交する方向に見た状態である。
図16中、凸包絡Lは2点鎖線で示されている。
【0082】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
なお、把持ユニット80は、
図17に示すように、第3の実施形態で説明された把持装置40Bを複数、一例として4つ備える構成であってもよい。この構成の場合では、
図17に示すように、4つの把持装置40Bは、一例として、それぞれの下面41aを同一平面に配置し、かつ、4つの把持装置40Bの中央に第1の吸着パッド47が配置される姿勢で固定される。
【0084】
また、把持ユニット80は、複数の把持装置40のそれぞれの主流路部42の圧力に基づいて、把持ユニット80に対する荷物6の位置を検出することが可能となる。例えば、
図16に示すように、把持ユニット80が4つの把持装置40を備える場合、例えば1つの把持装置40の主流路部42の圧力が、把持の成功を判断する閾値より高い場合は、荷物6がこの把持装置40にずれていることが考えられる。
【0085】
把持装置40に対する荷物6に位置を検出することで、荷物6を吸着した把持装置40の移動速度を、把持装置40に対する荷物6の位置に応じて決定することが可能となる。この為、荷物6を安全に搬送することが可能となる。
【0086】
以上述べた少なくとも1つの実施形態の把持装置40、40A、40Bによれば、第1の流路部43、第1の流路部43より流路抵抗の大きい第2の流路部44、及びこれらのそれぞれに連通する吸着パッド45を備えることにより、把持装置40、40A、40Bの構造を簡素化でき、かつ、高コスト化を防止することが可能となる。
【0087】
なお、上述した実施形態においては、把持装置40、40A、40Bの、第1の吸着パッド47、47Aは、1つのみ設けられ、第2の吸着パッド48、48Aは、4つまたは3つ設けられた例が説明された。しかしながら、把持装置40、40A、40Bが備える、第1の吸着パッド47、47Aの数、及び第2の吸着パッド48、48Aの数は、限定されない。
【0088】
例えば、把持装置40について代表して説明すると、
図18に示す変形例のように、把持装置40は、第1の流路部43を複数、一例として2本備え、第2の流路部44を複数備えてもよい。さらに別の変形例としては、把持装置40は、4つの第1の吸着パッド47、及び12個の第2の吸着パッド48を備え、これら4つの第1の吸着パッド47、及び12個の第2の吸着パッド48が、第4の実施形態の
図16に示す把持ユニット80が有する4つの第1の吸着パッド47、及び12個の第2の吸着パッド48と同じに配置される構成を有してもよい。複数の第1の吸着パッド47を備える構成の場合は、把持基準点GPは、複数の第1の吸着パッド47の凸包絡Lの平面視での重心とする。または、把持装置40は、複数の第1の吸着パッド47、及び1つの第2の吸着パッド48を備える構成であってもよい。または、1つの第1の吸着パッド47及び1つの第2の吸着パッド48を備えてもよい。なお、把持装置40A、40Bにおいても同様である。
【0089】
また、上述した実施形態においては、圧力センサ46、並びに圧力調整装置50の一部である真空引き装置53及び切替バルブ54は、把持装置40の本体41内に収容された構成が説明されたがこれに限定されず、これらの構成の少なくとも1つは、本体41の外に設けられてもよい。
【0090】
また、上述した実施形態においては、真空引き装置53は、エジェクタである例を説明したがこれに限定されず、他の例では、真空ポンプであってもよい。真空ポンプが用いられる構成の一例は、真空ポンプがコンプレッサ51に置き換えられる。そして、切替バルブ54は、配管52及び主流路部42の連通状態及び非連通状態を切り替え可能な開閉弁に構成される。この構成では、配管52及び主流路部42が連通する状態で真空ポンプが駆動されることで、第1の吸着パッド47,47A、及び第2の吸着パッド48,48Aが真空引きされる。
この構成の変形例としては、3つのポートを有し、各ポートが、配管52、主流路部42、及び大気に接続された三方弁であってもよい。そして、切り替えバルブ54は、真空ポンプ及び主流路部42とを非連通とし、かつ、主流路部42及び大気を連通することにより、第1の吸着パッド47,47A内、及び第2の吸着パッド48,48A内を、真空破壊することが可能となる。
【0091】
また、上述した実施形態においては、流量抑制機構44aは、複数の第2の流路部44のそれぞれに設けられる例を説明したが、これに限定されない。流量抑制機構44aは、複数の第2の流路部44に共通して用いられる1つが設けられてもよい。この例としては、複数の第2の流路部44が主流路部42部側の合流部で合流し、この合流部が主流路部42に連通する構成の場合は、この合流部に流量抑制機構44aが設けられてもよい。
【0092】
また、上述した実施形態においては、荷物6の把持に成功したか否かを、圧力センサ46の検出結果に基づいて判断している例を説明したが、これに限定されない。例えば、主流路部42に流量センサを設けて、この流路センサの検出結果に基づいて、荷物6の把持を成功したことを判断してもよい。
【0093】
荷物6が把持されると、主流路部42内の空気の流れは、所定の流量以下となる。すなわち、第1の吸着パッド47、47A、及び全ての第2の吸着パッド48、48Aが閉塞されると、主流路部42内の空気の流れは、ゼロ、または、略ゼロとなる。また、1つ以上の第2の吸着パッド48、48Aが閉塞されていない状態であっても、第2の流路部44の流路抵抗が大きいことから、主流路部42の空気の流れを小さくできる。
【0094】
この為、第1の吸着パッド47のみが閉塞された状態での主流路部42内の空気の流れの流量を閾値として設定し、流量センサからの信号に基づいて主流路部42内の流量が閾値以下となると、第1の吸着パッド47、47Aが荷物6により閉塞され判断して、荷物6の把持の成功を判断してもよい。
【0095】
または、圧力センサ46及び流量センサを併用してもよい。併用する場合は、圧力センサ46からの信号に基づく把持の成功の判断、及び、流量センサからの信号に基づく把持の成功の判断の両方がそろったときに、把持が成功したと判断してもよい。
【0096】
または、他の光学的なセンサと組合せてもよい。例えば、本体41に光学距離センサを取付けて下面41aと吸着方向の荷物6との間の距離を検出し、その距離に基づいて、荷物6の把持の成功を判断してもよい。すなわち、荷物6を吸着した状態では、第1の吸着パッド47、及び第2の吸着パッド48は縮むので、下面41a及び荷物6の間の距離が、第1の吸着パッド47及び第2の吸着パッド48が荷物6に当接し、かつ、縮んでいない状態に比較して、短くなる。このように、荷物6の把持が成功したときの下面41a及び荷物6の間の距離を閾値とし、下面41a及び荷物6の間の距離が閾値以下となると、把持の成功を判断してもよい。
【0097】
また、上述した実施形態においては、制御装置60は、さらに記憶部を有し、この記憶部に、主流路部42内の圧力と、この圧力値から推定される荷物の重さの情報を記憶してもよい。
【0098】
例えば、1つ以上の第2の吸着パッド48が閉塞されない場合は、荷物6が比較的小さいことが想定され、それゆえ、荷物6の重さも軽いことが推定される。この場合では、1つ以上の第2の吸着パッド48が閉塞されないことから、主流路部42の圧力は、第1の吸着パッド47、及び全ての第2の吸着パッド48が閉塞される場合に比較して、高くなる。また、第1の吸着パッド47、及び全ての第2の吸着パッド48が閉塞される場合は、荷物6が比較的大きいことが想定され、それゆえ、荷物6の重さが比較的重いことが推定される。
【0099】
このように、主流路部42内の圧力に応じて推定される荷物6の重さの情報を、記憶部に記憶する。計画制御部62は、圧力センサ46の検出結果、及び記憶部に記憶された情報から荷物6の推定される重さを得る。そして、ここで得られた荷物6を考慮して、荷物6を吸着した把持装置40の移動速度を決定することが可能となる。この為、荷物6を安全に搬送することが可能となる。
【0100】
また、上述した実施形態においては、把持装置40は、荷物6を検出する複数の近接センサをさらに有してもよい。近接センサの検出結果に基づいて、把持装置40に対する荷物6の位置を検出することが可能となる。すなわち、近接センサを、例えば下面41aの複数個所に設置し、これら近接センサの検出結果から、下面41aに対する荷物6の位置を検出できる。
【0101】
また、上述した実施形態においては、物品検出装置30は、一例としてRGBカメラが用いられたが、他の例として、3Dカメラ、その他の光学センサ、または、これらの組合せが用いられてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態においては、第1の吸着パッド47及び第2の吸着パッド48は、同形状で異なる大きさに構成された例を説明したが、これに限定されない。第1の吸着パッド47、及び第2の吸着パッド48は、同形状で同じ大きさに構成されてもよい。同様に、第1の吸着パッド47A及び第2の吸着パッド48Aは、同形状で同じ大きさに構成されてもよい。
【0103】
第1の吸着パッド47、47Aは、最小の荷物6の寸法に応じた吸着面積を有する吸着パッドが選定され、第2の吸着パッド48、48Aは、最大の荷物6の寸法に応じて選定されればよい。
【0104】
また、上述した実施形態においては、流量抑制機構44aは、一例として、流路断面積を小さくすることで、流路抵抗を大きくする構成を有し、この一例として、流路断面積を可変するスロットルバルブが用いられる例を説明した。しかしながら、流量抑制機構44aは、流路断面積を可変とする構成に限定されない。他の例では、流量抑制機構44aは、所定の流路断面積を有する構成であってもよく、この一例としては、孔が形成されたフィルムが第2の流路部44に設けられることで構成されてもよい。
【0105】
または、流量抑制機構44aは、流量を手動で調整できる構成でも良いし、電気信号によって流路面積を可変制御できる構成であってもよい。手動で調整できる流量抑制機構44aの構成としては、一例として、調整する際に操作される操作部としてダイヤルを有するダイヤル式の流量抑制機構44aであってもよい。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、出願時の特許請求の範囲の記載を付記する。
[付記]
[1]
本体と、
前記本体内に設けられて外部流路部が接続される主流路部と、
前記本体内に設けられて前記主流路部に接続され、前記本体の外面に設けられた第1の開口部を通して外部に開口する第1の流路部と、
前記本体内に設けられて前記主流路部に接続され、前記第1の流路部の流路抵抗より大きな流路抵抗を有し、前記外面に設けられた第2の開口部を通して外部に開口する第2の流路部と、
前記主流路部に設けられ、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが連通する状態と、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが非連通となる状態と、を切り替える切替バルブと、
を具備する把持装置。
[2]
前記切替バルブ及び前記主流路部に接続されたエジェクタを具備し、
前記外部流路部は、圧縮空気を送気し、
前記切替バルブは、前記外部流路部と前記エジェクタとが非連通となり、かつ、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが非連通となる第1の状態、前記外部流路部と前記エジェクタとが連通し、前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部とが非連通となる第2の状態、及び前記外部流路部と、前記第1の流路部及び前記第2の流路部が連通し、かつ、前記外部流路部と前記エジェクタとが非連通となる第3の状態を切り替える
[1]に記載の把持装置。
[3]
前記切替バルブは、三方弁に構成された電磁バルブである
[2]に記載の把持装置。
[4]
前記第2の流路部は複数設けられ、
複数の前記第2の開口部は、前記第1の開口部を囲む位置に配置される
[1]に記載の把持装置。
[5]
前記第1の開口部は、前記外面の角部に配置される
[1]に記載の把持装置。
[6]
[1]乃至[5]に記載のいずれか1つの把持装置と、
前記把持装置を移動する移動装置と、
を具備する搬送装置。
[7]
前記把持装置を複数備える[6]に記載の搬送装置。
【符号の説明】
【0107】
5…配置部、6…荷物、7…搬送先、10…搬送装置、20…移動装置、30…物品検出装置、40…把持装置、41…本体、41a…下面、42…主流路部、43…第1の流路部、44…第2の流路部、44a…流量抑制機構、45…吸着パッド、46…圧力センサ、47…第1の吸着パッド、47A・・・第1の吸着パッド、48…第2の吸着パッド、48A…第2の吸着パッド、50…圧力調整装置、51…コンプレッサ、52…配管、53…真空引き装置、54…切替バルブ。