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特許7191609硬化性樹脂組成物、硬化物およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20221212BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221212BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20221212BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H05K3/28 D
G03F7/004 504
G03F7/075 521
G03F7/027 515
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018174176
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020047731
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】依田 健志
(72)【発明者】
【氏名】岡安 克起
(72)【発明者】
【氏名】滝井 庸二
(72)【発明者】
【氏名】北村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信人
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/010345(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/175196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
G03F 7/004
G03F 7/075
G03F 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)有機溶剤、および
(D)表面調整剤を含む組成物であって、
前記(D)表面調整剤が、(D-1)下記一般式(1)中のnが2~27の範囲であるポリジメチルシロキサンを、有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンと、(D-2)下記一般式(1)中のnが45~230の範囲であるポリジメチルシロキサンを、有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンを含むものであり、
前記(D-1)および(D-2)の表面調整剤の配合比率が、(D-1):(D-2)=1:4~4:1であることを特徴とするロールコート用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項3】
請求項2に記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物(以下、単に「組成物」とも称する)、硬化物およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板におけるソルダーレジスト等の永久被膜を露光、現像により形成する材料として、アルカリ水溶液により現像可能な硬化性樹脂組成物が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような硬化性樹脂組成物は、液状タイプとドライフィルムタイプとに分類され、特に液状タイプの硬化性樹脂組成物は、コストが安いというメリットがある。また、この液状タイプの硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、スクリーン印刷法やカーテンコート法、ロールコート法などの方法が挙げられ、特にロールコート法は、基板両面を同時に塗布、乾燥することが可能であるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-241977
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のソルダーレジスト樹脂組成物を、ロールコート法にて基板上に塗布する方法では、通常の消泡剤を配合したとしても、塗布ロールの溝に気泡をかみこむことがあるため、塗膜表面や塗膜内部に気泡が生じやすく、絶縁信頼性の悪化を招くという問題があった。また、かかる方法では、塗膜のハジキや塗膜表面の塗布ムラによる外観不良(平滑性の悪化)を招くという問題もあった。さらに、ダイレクトイメージ露光機(DI露光機)を用いた露光工程では、接触露光装置と比べて露光テーブルの基板吸着力が強く、露光テーブルに接触する乾燥塗膜表面に吸着痕(いわゆるタックマーク)が付きやすくなるという外観不良の問題があった。
特に、配線パターンがより高密度に互いに近接して形成されるパッケージ基板では、高精細化が進んでおり、ロールコート法に起因した気泡による絶縁信頼性の悪化が懸念されている。
以上説明したように、ロールコート用の硬化性樹脂組成物では、塗膜表面や塗膜内部への気泡の混入や平滑性の悪化などの外観不良の問題を確実に防止することが課題となっている。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的は、塗膜のハジキや塗膜表面の塗布ムラ、乾燥塗膜表面のタックマークがなく、塗膜表面や塗膜内部への気泡の混入もない、表面状態が良好で絶縁信頼性に優れた高品質なソルダーレジスト塗膜をロールコートにて形成し得る硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上述した硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物およびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した結果、表面調整剤として、ポリジメチルシロキサン構造の繰り返し単位数(n)が異なる少なくとも2種の変性ポリジメチルシロキサンを組み合わせて配合することにより、塗膜表面や塗膜内部への気泡の混入を防止しつつ、表面状態が良好で絶縁信頼性に優れた高品質な塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、ロールコート用の組成物であって、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)有機溶剤、および、(D)表面調整剤を含み、前記(D)表面調整剤は、(D-1)下記一般式(1)中のnが2~27の範囲であるポリジメチルシロキサンを、有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンと、(D-2)下記一般式(1)中のnが45~230の範囲であるポリジメチルシロキサンを、有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンであることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の硬化物は、上記硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明のプリント配線板は、上記硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗膜のハジキや塗膜表面の塗布ムラ、乾燥塗膜表面のタックマークがなく、塗膜表面や塗膜内部への気泡の混入もない、表面状態が良好で絶縁信頼性に優れた高品質なソルダーレジスト塗膜をロールコートにて形成し得る硬化性樹脂組成物、その硬化物およびプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
【0013】
(硬化性樹脂組成物)
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)有機溶剤、および(D)表面調整剤を含み、前記(D)表面調整剤は、(D-1)下記一般式(1)中のnが2~27の範囲であるポリジメチルシロキサンを、有機変性させた変性ポリジメチルシロキサン(以下、「(D-1)の表面調整剤」とも称する)と、(D-2)下記一般式(1)中のnが45~230の範囲であるポリジメチルシロキサンを、有機変性させた変性ポリジメチルシロキサン(以下、「(D-2)の表面調整剤」とも称する)とを含むものである。
【0014】
詳しいメカニズムは明らかではないが、ポリジメチルシロキサン構造の繰り返し単位数(n)が異なる(D-1)および(D-2)の表面調整剤を組み合わせて用いることにより、前記繰り返し単位数(n)が小さい(D-1)の表面調整剤が、塗膜内部の気泡の混入防止に寄与し、前記繰り返し単位数(n)が大きい(D-2)の表面調整剤が塗膜表面および塗膜表面の平滑性に寄与するものと考えられる。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ロールコート法に適した粘度に適宜調整することができ、好ましくは25℃における粘度を80dPa・s以下、より好ましくは、粘度を20dPa・s~60dPa・sの範囲に調整してから、塗布することが好ましい。粘度はコーンプレート型粘度計で測定すればよい。粘度の調整方法は特に限定されないが、例えば有機溶剤を配合して調整すればよい。
【0016】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用できる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸又はそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光重合性モノマーを併用する必要がある。
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0017】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0018】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0019】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0020】
(4)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0021】
(5)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0022】
(6)2官能又はそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0023】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0024】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0025】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0026】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0027】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0028】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0029】
前記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、30~150mgKOH/gの範囲が適当であり、より好ましくは50~120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が、30mgKOH/g以上であるとアルカリ現像が容易となり、一方、150mgKOH/g以下であると、露光部の現像液への耐性が十分に得られ、正常なレジストパターンを確実に描画できるものとなるので好ましい。
【0030】
また、前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上であると、露光部の被膜の耐現像性が向上し、解像性に優れる。一方、重量平均分子量が150,000以下であると、未露光部の溶解性が良好で解像性に優れるとともに、貯蔵安定性においても向上することがある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0031】
これらカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したものに限らず使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。中でも、前記カルボキシル基含有樹脂(10)、(11)のごときフェノール化合物を出発原料と使用して合成されるカルボキシル基含有樹脂はB-HAST耐性、PCT耐性に優れるため好適に用いることができる。
【0032】
[(B)光重合開始剤]
(B)光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。(B)光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(B)光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0034】
光重合開始剤の配合量は、不揮発成分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましい。0.01質量部以上の場合、樹脂組成物の光硬化性が良好となり、塗膜が剥離しにくく、耐薬品性等の塗膜特性も良好となる。一方、30質量部以下の場合、アウトガスの低減効果が得られ、さらにソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。より好ましくは0.5~15質量部である。
【0035】
[(C)有機溶剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物の調製や、基板等に塗布する際の粘度調整等の目的で、(C)有機溶剤を含む。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、樹脂成分の溶解性に優れ、作業時の揮発による増粘が生じ難いカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ソルベントナフサを用いることが好ましい。
【0036】
(C)有機溶剤の配合量は、組成物の調整においては、組成物全量に対して20~35%、基板等に塗布する際には、組成物全体に対して30~45%で配合することが好ましい。
【0037】
[(D)表面調整剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D)下表面調整剤として、(D-1)下記一般式(1)中のnが2~27の範囲であるポリジメチルシロキサンを有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンと、(D-2)下記一般式(1)中のnが45~230の範囲であるポリジメチルシロキサンを有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンを含む。(D-1)と(D-2)のポリジメチルシロキサンの有機変性としては、ポリエーテル変性、ポリエステル変性、アラルキル変性、アクリル変性が挙げられ、それぞれ1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
(D-1)のポリジメチルシロキサンを有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンとしては、市販品を用いてもよく、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-330、BYK-331等のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、BYK-313、BYK-315N等のポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、BYK-322等のアラルキル変性ポリジメチルシロキサンBYK-UV3530等のアクリル変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0039】
(D-2)のポリジメチルシロキサンを有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンとしては、市販品を用いてもよく、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK-333、BYK-377、BYK-378等のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、BYK-UV3510等のアクリル変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0040】
(D-1)のポリジメチルシロキサンを有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンの配合量は、不揮発成分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましい。0.5質量部以上の場合、塗膜表面や塗膜内部の気泡の発生が抑制される。一方、10質量部以下の場合、タック性に対する阻害効果が無く、塗布ムラが抑制される。より好ましくは1~5質量部である。
【0041】
(D-2)のポリジメチルシロキサンを有機変性させた変性ポリジメチルシロキサンの配合量は、不揮発成分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.5から10質量部であることが好ましい。0.5質量部以上の場合、乾燥塗膜表面のタック性が抑制され、塗膜表面の平滑性が得られる。一方、10質量部以下の場合、消泡性に対する阻害効果が抑制される。より好ましくは1~5質量部である。
【0042】
(D-1)および(D-2)の表面調整剤の配合比率は、(D-1):(D-2)=1:4~4:1であることが好ましい。このような配合比率とすることで、回路間への組成物の充填性が向上すると共に、回路間における気泡の混入が抑制され、優れたロールコート性が得られる。
【0043】
[光重合性モノマー]
本発明の硬化性樹脂組成物には、光重合性モノマーを配合することができる。光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。このような光重合性モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリジジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
光重合性モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合性モノマーの含有量は、不揮発成分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5~20質量部の割合である。配合量が、0.5質量部以上の場合、光硬化性が良好であり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像において、パターン形成がしやすい。一方、20質量部以下の場合、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られる。
【0045】
[熱硬化成分]
本発明の硬化性樹脂組成物には、熱硬化成分を配合することができる。熱硬化成分としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化成分を使用できる。公知のものをいずれも用いることができる。特に好ましいのは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基を有する熱硬化成分である。
【0046】
熱硬化成分は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化成分の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂に含有されるカルボキシル基1molあたりに対し、反応する熱硬化成分の官能基数が0.5~2.5molが好ましく、より好ましくは0.8~2.0molである。0.5mol以上の場合、耐熱性、機械強度、耐薬品性、絶縁信頼性に優れる。2.5mol以下の場合、保存安定性、現像性が向上する。
【0047】
[熱硬化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物には、熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
【0048】
熱硬化触媒は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化触媒の配合量は、不揮発成分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.5~10質量部であることが好ましく、1~8質量部であることがより好ましい。0.5質量部以上の場合、耐熱性に優れる。10質量部以下の場合、保存安定性向上につながる。
【0049】
[無機フィラー]
本発明の硬化性樹脂組成物には、無機フィラーを配合することができる。また、無機フィラーとして、表面処理された無機フィラーを配合してもよい。
【0050】
無機フィラーとしては、特に限定されず、公知慣用の充填剤、例えばシリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、水酸化アルミニウム、ガラス粉末、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、非繊維状ガラス、ハイドロタルサイト、ミネラルウール、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、亜鉛華等の無機フィラーを用いることができる。中でも、耐熱性やめっき耐性を向上させるためには、硫酸バリウムが好ましい。また、熱寸法安定性を向上させるためには、シリカが好ましく、表面積が小さく、応力が全体に分散するためクラックの起点になりにくいことから球状シリカであることがより好ましい。
【0051】
無機フィラーの配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり、不揮発成分換算で、40質量%以下、好ましくは5~35質量%である。
【0052】
[着色剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0053】
具体的には、カラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。
【0054】
赤色着色剤としては、モノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがある。青色着色剤としては、フタロシアニン系、アントラキノン系などがあり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物を使用することができる。これら以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系がある。これら以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等がある。白色着色剤としては、ルチル型またはアナターゼ型酸化チタンなどが挙げられる。黒色着色剤としては、カーボンブラック系、黒鉛系、酸化鉄系、チタンブラック、アンスラキノン系、酸化コバルト系、酸化銅系、マンガン系、酸化アンチモン系、酸化ニッケル系、ペリレン系、アニリン系、硫化モリブデン、硫化ビスマスなどがある。その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色などの着色剤を加えてもよい。
【0055】
着色剤の含有量は、硬化物の隠蔽性を向上させる観点から、硬化性樹脂組成物全量あたり、不揮発成分換算で、0.18~0.50質量%含有することが好ましい。不揮発成分換算で0.18質量%以上の場合、回路隠蔽性に優れ、0.50質量%以下の場合、より解像性に優れる。より好ましくは、0.20~0.40質量%である。
【0056】
[その他の任意成分]
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、光開始助剤、シアネート化合物、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、シラン系、チタン系、ジルコニウム系、アルミニウム系、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、ホスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0058】
本発明の硬化性樹脂組成物は、電子部品に硬化膜を形成するために、特にはプリント配線板上に硬化膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイを形成するために使用される。
【0059】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られるものである。
【0060】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、好ましくはロールコート法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。
【0061】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0063】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。
【0064】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0065】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例
【0066】
以下、実施例、比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例、比較例によって制限されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0067】
[カルボキシル基含有樹脂溶液A-1の調整]
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工社製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを添加し、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。
次に、上記アルキレンオキシド導入装置より、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。
その後、室温まで冷却した反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、固形分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に添加し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。
反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として留出し、12.6gであった。
その後、得られた反応溶液を室温まで冷却し、15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをカルビトールアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させた。固形物の酸価88mgKOH/g、固形分70%のカルボキシル基含有樹脂溶液(A-1)を得た。
【0068】
[カルボキシル基含有樹脂溶液A-2の調整]
カルビトールアセテート600gに、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一となるまで溶解した。
次いで、上記溶液にトリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応させた。その後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。
得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却後、固形分酸価89mgKOH/g、固形分65%のカルボキシル基含有樹脂溶液(A-2)を得た。
【0069】
[実施例1~9、比較例1~10]
下記の表1中に示す配合に従い、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで分散させ、混練して、それぞれ光硬化性樹脂組成物を調製した。表中の配合量は、質量部を示す。調整した実施例および比較例の光硬化性樹脂組成物を用いて下記のように評価を行った。
【0070】
<評価基板作製方法>
実施例1~9及び比較例1~10の樹脂組成物をそれぞれジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、コーンプレート型粘度計の粘度で50~60dPa・s(測定温度25℃)程度まで適宜希釈した。
希釈した組成物をL(ライン)/S(スペース)=100μm/100μm、厚み35μmのくし形回路が形成されたプリント配線板を化学研磨した後、ファーネス社製ロールコーターを用いて、500ピッチのロールを使用し、印刷速度2m/分で塗布した。
【0071】
<塗布時消泡性>
上記評価基板作製後、回路間における気泡の発生状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇:回路間に気泡が無い。
×:回路間に気泡が発生。
【0072】
<表面状態>
上記評価基板作製後、80℃、30分で乾燥し、未露光のソルダーレジスト層を有するプリント配線板の塗膜表面状態を目視で観察し、表面状態を以下基準で評価した。
〇:表面状態にムラが無い。
×:表面状態にムラが発生。
【0073】
<塗膜表面の気泡>
上記評価基板作製後、80℃、30分で乾燥し、この配線板に、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて、所定のネガパターンを用い、基準露光量で露光し、その後30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧2kg/cmの条件で60秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を、150℃で60分加熱して硬化した後、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した。
この基板の塗膜表面の気泡を実体顕微鏡(観察倍率10倍)で観察し、以下の基準で評価した。
〇:表面に気泡が無い。
×:表面に気泡が発生。
【0074】
<塗膜内部の気泡>
上記<塗膜表面の気泡評価>と同様の手法で得られた配線板の塗膜断面を電子顕微鏡で観察(観察倍率1000倍)し、塗膜内部の気泡を以下の基準で評価した。
〇:1000倍での観察を5カ所実施し、5カ所の観察で気泡の発生が5個未満。
×:1000倍での観察を5カ所実施し、5カ所の観察で気泡の発生が5個以上。
【0075】
<タック性評価>
上記評価基板作製後、80℃、30分で乾燥し、この配線板に、DI露光機(オーク製作所製 Mms-60)を用いて露光した後、露光テーブルへの貼り付きを以下の基準で評価した。
〇:露光テーブルへの貼り付きが無い。
×:露光テーブルへの貼り付きが確認された。
【0076】
これらの評価結果を、下記の表中に併せて示す。
【0077】
【表1】
*1)TPO(IGM社製、Omnirad TPO、アシルホスフィンオキサイド)
*2)ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
*3)BYK-322(ビックケミー・ジャパン(株)製)
*4)BYK-330(ビックケミー・ジャパン(株)製)
*5)BYK-331(ビックケミー・ジャパン(株)製)
*6)BYK-333(ビックケミー・ジャパン(株)製)
*7)BYK-377(ビックケミー・ジャパン(株)製)
*8)BYK-UV3510(ビックケミー・ジャパン(株)製)
*9)KS-66(信越化学工業(株)製)
*10)BYK-066N(ビックケミー・ジャパン(株)製、一般式(1)で表される構造を有するが、n=380~1500である表面調整剤)
*11)ポリフローNo.90(共栄社化学(株)製)
*12)N-770(DIC(株)製、フェノ-ルノボラック型エポキシ樹脂、軟化点65~75℃、エポキシ当量188)
*13)YX-4000(三菱ケミカル(株)製、ビフェニル型エポキシ樹脂、融点105℃、エポキシ当量190)
*14)SO-C2((株)アドマテックス製、球状シリカ、平均粒子径0.45~0.65μm)
*15)B-30(堺化学工業(株)製、硫酸バリウム)
*16)DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
上記表中に示す評価結果から明らかなように、各実施例においては、ロールコート法で塗布しても、塗膜表面および塗膜内部に気泡は確認されず、表面状態が良好な塗膜が得られる硬化性樹脂組成物が得られていることが確かめられた。また、塗膜表面および塗膜内部に気泡が確認されなかったので、絶縁性も良好であった。