(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】輸送容器、およびその利用
(51)【国際特許分類】
B65D 5/50 20060101AFI20221212BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20221212BHJP
F25D 3/00 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
B65D5/50 D
B65D77/00 C
F25D3/00 E
(21)【出願番号】P 2018175080
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】梅原 将
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-295327(JP,A)
【文献】特開2009-184698(JP,A)
【文献】特開2016-011146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0034548(US,A1)
【文献】特開2003-065667(JP,A)
【文献】特開2005-280798(JP,A)
【文献】特開平05-229572(JP,A)
【文献】実開平04-001126(JP,U)
【文献】特開2013-018531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00-5/76
B65D 77/00
F25D 3/00
B65D 81/18
B65D 71/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱材を輸送するための輸送容器であって、
側壁部と底面部とから構成される、潜熱蓄熱材を収納する収納部と、
当該収納部内の複数の潜熱蓄熱材同士の隙間に存在し、複数の潜熱蓄熱材を互いに離間した状態で固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、前記潜熱蓄熱材同士の対向方向に延びる空洞を有し、
前記空洞を構成する壁は、前記対向方向に延在した薄板部材により構成されている、輸送容器。
【請求項2】
前記側壁部および前記底面部の少なくとも一方に形成された通気口を備えた、請求項1に記載の輸送容器。
【請求項3】
少なくとも前記収納部は、前記側壁部、前記底面部及び前記固定部が互いに折り曲げ可能に連結された、組み立て可能な構造であり、展開された状態では、平板状であり、
前記固定部は、前記側壁部の折り曲げ形成に伴って形成される、請求項1または2に輸送容器。
【請求項4】
前記展開された状態では、前記固定部を構成する矩形片は、前記側壁部から、前記側壁部と前記底面部との折り線を越えて、前記底面部まで伸びて形成されている、請求項3に記載の輸送容器。
【請求項5】
請求項3または4に記載の輸送容器を展開した状態で、潜熱蓄熱材とともに輸送する工程と、
輸送後に、前記輸送容器を組み立てて、潜熱蓄熱材を収納する工程と、を有する潜熱蓄熱材を輸送する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送容器、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潜熱蓄熱材(PCM)は、段ボール箱等の輸送容器に隙間なく並べて詰め込んだ状態で工場から出荷される。そして、出荷後、PCMは、実使用の前処理として、所定の温度帯で使用するために、恒温槽や冷蔵庫等の調温装置を用いた調温作業が必要とされる。このため、PCMは工場出荷時の輸送容器から一つずつ取り出され、調温装置内へ移される。そして、所定の温度となるまで保管された後(調温作業の後)、定温輸送用途に使用されることになる。
【0003】
上述した従来のPCMの調温作業は、PCMを輸送容器から一つずつ取り出し行うことから、時間がかかり、また作業者の肉体的にも負荷が多いという問題がある。この問題を解決する方策として、例えば、特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、蓄冷剤を充填した蓄冷体が互いに間隔を置いて配置され、周面に空気流通部が形成された蓄冷剤収納籠が開示されている。これにより、蓄冷剤を充填した蓄冷体を上記蓄冷剤収納籠に纏めて冷却コンテナに収納できるので、冷却コンテナ内の蓄冷体の載置作業が簡単になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術は、潜熱蓄熱材の温度ムラという点で改善の余地がある。
【0007】
まず、特許文献1の
図5に示されるような、収納籠がワイヤで縦横に組み込んだ網籠で構成されているとともに、蓄冷体を保持するホルダーが、側面のワイヤを内側に向かって突出するように四角く折り曲げることにより構成されている場合、次の問題が生じる。すなわち、特許文献1の
図5に示す構成の収納籠に蓄冷体を収納すると、蓄冷体間の間隔がワイヤの直径に略同じであり、極めて小さくなる。このため、蓄冷体間の通気が不完全であり、冷却のムラが生じる。
【0008】
また、特許文献1の
図3に示されるような、蓄冷体を保持するホルダーが、収納籠の側面が内側へ延在する2つの保持片で構成されている場合も、蓄冷体の温度ムラの問題が生じる。すなわち、特許文献1の
図3に示す構成の収納籠では、蓄冷体は、2つの保持片間に挿入されて縦置きされる。蓄冷体における保持片と接触する部分には空気が接触しない。このため、蓄冷体において、2つの保持片間に挿入された部分と、空気と接触している部分との間で冷却のムラが生じる。
【0009】
本発明の一態様は、潜熱蓄熱材の調温作業を簡便に行うことが可能であり、かつ潜熱蓄熱材間の温度ムラが低減された輸送容器、およびその利用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る輸送容器は、潜熱蓄熱材を輸送するための輸送容器であって、側壁部と底面部とから構成される、潜熱蓄熱材を収納する収納部と、当該収納部内の複数の潜熱蓄熱材同士の隙間に存在し、複数の潜熱蓄熱材を互いに離間した状態で固定する固定部と、を備え、前記固定部は、前記潜熱蓄熱材同士の対向方向に延びる空洞を有し、前記空洞を構成する壁は、前記対向方向に延在した薄板部材により構成されている構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、潜熱蓄熱材の調温作業を簡便に行うことができ、かつ潜熱蓄熱材間の温度ムラを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1に係る輸送容器における収容部としての容器本体の展開図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る輸送容器の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す容器本体の構成を示す上面図である。
【
図4】
図2に示す容器本体のI-I線断面図である。
【
図5】容器本体の組立に伴って固定部が形成される様子を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る輸送容器における固定部の構成を示し、(a)は、容器本体の展開シートにおける固定部近傍の構成を示す展開図であり、(b)は、組立てられた容器本体における固定部近傍の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5を参照にして、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る輸送容器100における容器本体10の展開図である。
図2は、本実施形態に係る輸送容器100の概略構成を示す斜視図である。
図3は、本実施形態に係る輸送容器100における容器本体10の構成を示す上面図である。
図4は、
図2に示す容器本体10のI-I線断面図である。
【0014】
図1~
図4に示されるように、本実施形態に係る輸送容器100は、偏平状の潜熱蓄熱材を収容する容器本体10(収納部)と、容器本体10を閉塞する蓋体20と、を備えている。容器本体10は、矩形の箱形状であり、第1側壁部11Aおよび11Bと、第2側壁部12Aおよび12Bと、底面部13と、によって構成されている。第1側壁部11Aおよび11Bは、互いに対向している。また、第2側壁部12Aおよび12Bは、互いに対向している。ここで、底面部13を構成する底面に対して垂直な方向を高さ方向とし、容器本体10を構成する4つの側壁部(第1側壁部11Aおよび11B、並びに第2側壁部12Aおよび12B)のうち、矩形の長辺を構成する第2側壁部12Aおよび12Bが延びる方向を長手方向とする。そして、矩形の短辺を構成する第1側壁部11Aおよび11Bが延びる方向を幅方向とする。
【0015】
容器本体10を構成する側壁部のうち、第1側壁部11Aおよび11Bには、通気口10Aが設けられている。底面部13にも、通気口10Bが設けられている。容器本体10の内部は、通気口10Aおよび通気口10Bを介して外部と連通している。なお、容器本体10においては、第2側壁部12Aおよび12Bには、通気口が設けられていない。
【0016】
本実施形態に係る輸送容器100では、容器本体10の第2側壁部12Aおよび12Bそれぞれに、固定部14が設けられている。固定部14は、第2側壁部12Aおよび12Bそれぞれから内側へ突出するように設けられている。固定部14は、第2側壁部12Aおよび12Bそれぞれが延在する方向、すなわち長手方向に、等間隔で複数配置されている。また、長手方向において、第2側壁部12Aに設けられた固定部14と、第2側壁部12Bに設けられた固定部14とは、同じ位置に配置されている。
【0017】
また、固定部14は、底面部13に設けられた台座部15から内側へ突出するように設けられている。台座部15は、底面部13に積層した薄板部材から構成されている。それゆえ、底面部13における固定部14の設置部分は、台座部15により2層構造となっており、底面部13における他の部分と比較して強度が強化されている。
【0018】
固定部14は、容器本体10に収納される複数の潜熱蓄熱材を互いに離間した状態で位置固定する機能を有する。容器本体10に潜熱蓄熱材が収納された状態では、固定部14は、潜熱蓄熱材同士の隙間に存在する。容器本体10に複数の潜熱蓄熱材を収納するときには、潜熱蓄熱材は、容器本体10内の固定部14同士の隙間に挿入されて固定される。それゆえ、固定部14により、複数の潜熱蓄熱材は、容器本体10内で、長手方向に互いに対向して並んで配置される。
【0019】
本実施形態に係る輸送容器100によれば、固定部14により、複数の潜熱蓄熱材は、容器本体10内で互いに離間した状態で固定される。このような輸送容器100を用いると、輸送後の調温作業において、輸送容器100をそのまま、恒温槽や冷蔵庫等の調温装置に搬入・保管・搬出することができる。その結果、潜熱蓄熱材を一つずつ取り扱う作業が不要となり、効率的に調温作業を行うことができる。
【0020】
ここで、輸送容器100を調温装置にて保管するとき、容器本体10内で潜熱蓄熱材が互いに離間した状態で固定されているので、潜熱蓄熱材を隙間なく並べて詰め込んだ場合と比較して通気性が向上する。このため、潜熱蓄熱材間の温度ムラは、ある程度低減される。
【0021】
しかし、潜熱蓄熱材は、固定部14に接触した状態で固定されているため、潜熱蓄熱材における固定部14との接触部分には空気が接触しないおそれがある。潜熱蓄熱材間の温度ムラをなくす点で、改善の余地が残されている。
【0022】
本願発明者は、上述の技術的な課題を解消すべく、鋭意検討した結果、複数の潜熱蓄熱材を互いに離間し、かつ、冷却効率が良好な状態で運搬可能な構成を見出し、本願発明を完成させた。
【0023】
より具体的には、本実施形態に係る輸送容器100では、固定部14は、潜熱蓄熱材同士の対向方向、すなわち、長手方向に延びる空洞18を有する。さらに、空洞18を構成する壁16および17は、その表面および裏面が長手方向に延在する薄板部材により構成されている。
【0024】
輸送容器100によれば、固定部14の空洞18を介して、対向する潜熱蓄熱材に空気が接触するので、通気性がさらに向上する。このため、輸送容器100を調温装置に搬入・保管したとき、潜熱蓄熱材間の温度ムラはさらに低減され、潜熱蓄熱材の冷却効率が良好になる。その結果、潜熱蓄熱材の調温作業を簡便に行うことが可能であり、かつ潜熱蓄熱材間の温度ムラが低減された輸送容器100を実現できる。
【0025】
さらに、空洞18を構成する壁16および17は、長手方向に延在する薄板部材により構成されているので、例えば、固定部がワイヤで構成された特許文献1に記載の収納籠と比較して、潜熱蓄熱材同士の離間距離を大きくとることが可能である。このため、輸送容器100によれば、潜熱蓄熱材間の通気のための離間距離を十分に確保することができるので、潜熱蓄熱材間の温度ムラを低減できる。
【0026】
長手方向に延在する薄板部材の長さ(潜熱蓄熱材の離間距離に対応)は、潜熱蓄熱材同士を十分に離間可能であれば特に限定されない。長手方向に延在する薄板部材の長さとして、約10mm以上、約20mm以上を例示できる。長手方向に延在する薄板部材の長さの上限は、収容される潜熱蓄熱材の厚さ、および容器本体10の寸法に応じて設定され得る。本実施形態に係る輸送容器100では、少なくとも2つの潜熱蓄熱材が容器本体10に収容可能である。容器本体10の構成では、2つの潜熱蓄熱材が収容され、当該2つの潜熱蓄熱材がそれぞれ、第1側壁部11Aおよび11Bに接するように配置された場合が、潜熱蓄熱材の離間距離の上限となる。それゆえ、潜熱蓄熱材の厚さをtmmとし、容器本体10の長手方向の長さをLmmとしたとき、長手方向に延在する薄板部材の長さの上限は、約(L-2×t)mmである。
【0027】
また、輸送容器100では、第1側壁部11Aおよび11Bおよび底面部13に、通気口10Aおよび10Bが設けられている。これにより、通気口10Aおよび10Bを介して、調温装置内の空気(冷蔵庫内の冷気等)が容器本体10内の潜熱蓄熱材周囲に流れる。このため、潜熱蓄熱材と調温装置内との間で空気が循環し易くなり、効率的に調温作業を行うことができる。なお、輸送容器100は、側壁部(第1側壁部11Aおよび11B、並びに第2側壁部12Aおよび12B)、および底面部13の少なくとも一方に通気口が設けられていればよい。また、通気口10Aおよび10Bの数、配置等は、容器本体10の寸法や調温温度等に応じて、適宜設定可能である。
【0028】
また、固定部がワイヤで構成された特許文献1に記載の収納籠では、固定部の強度に課題がある。潜熱蓄熱材が多数収納されたとき、特許文献1に記載の収納籠では、ワイヤから構成される固定部が変形するおそれがある。一方、輸送容器100では、潜熱蓄熱材は、長手方向に延在する薄板部材により構成された壁16および17により支持される。このため、潜熱蓄熱材が多数収納されても固定部14が変形することなく、固定部14の強度を十分確保できる。
【0029】
ここで、本実施形態では、輸送容器100は、調温装置に搬入・保管・搬出した後、定温輸送用途に使用されることになる。輸送容器100を定温輸送用途に使用するに際し、輸送容器100に収容された潜熱蓄熱材を定温輸送用の断熱容器に移して定温輸送容器を構成してもよい。
【0030】
より好ましくは、輸送容器100をそのまま断熱容器に収容して定温輸送容器を構成する。これにより、輸送容器100を断熱容器に収容するだけの作業で済むため、低温輸送用の断熱容器に潜熱蓄熱材を収容する作業も簡単になる。それゆえ、本実施形態にて使用される定温輸送容器は、定温輸送用の断熱容器と、輸送容器100と、を備え、輸送容器100が前記断熱容器に収容された構成であることが好ましい。
【0031】
また、本実施形態に係る輸送容器100によれば、調温作業後に改めて潜熱蓄熱材を取り出すという手間が必要ない。さらに、調温作業後の潜熱蓄熱材を直ぐに定温輸送用の断熱容器に設置しない場合、輸送容器100を、そのまま潜熱蓄熱材を一時的に置くスペースとして利用することもできる。これにより、潜熱蓄熱材は輸送容器100の固定部14により固定された状態で設置されるので、単に潜熱蓄熱材を積み上げて置いた場合と比較して、潜熱蓄熱材が崩れて損傷することを防止できる。
【0032】
さらに、前記断熱容器は、輸送容器100が収容された状態で、内壁が輸送容器100の外壁と接するように構成されていることが好ましい。これにより、輸送容器100を定温輸送用の断熱容器に収容した際、断熱容器内で輸送容器100が移動することないので、低温輸送容器の組立作業が簡単になる。
【0033】
ここで、輸送容器100においては、容器本体10は、第1側壁部11Aおよび11B、第2側壁部12Aおよび12B、並びに底面部13が互いに折り曲げ可能に連結された、組立て可能な構造である。容器本体10は、展開された状態では、平板状である。
【0034】
図1の展開図に示されるように、容器本体10は、段ボールを打ち抜き加工および切込み加工したものから構成されている。容器本体10の展開シートAは、第1側壁部11Aと底面部13との間、および第1側壁部11Bと底面部13との間にそれぞれ、折り線11D・11Cが形成されている。また、第2側壁部12Aと底面部13との間、および第2側壁部12Bと底面部13との間にそれぞれ、折り線12D・12Cが形成されている。
【0035】
また、展開シートAは、第2側壁部12Aおよび12Bの長手方向の両端には、第2側壁部12Aおよび12Bに対して内側(
図1の紙面において上側)に折り曲げ可能なフラップ部19Aが形成されている。さらに、第1側壁部11Aおよび11Bの幅方向の両端には、第1側壁部11Aおよび11Bに対して内側に折り曲げ可能なフラップ部19Bが形成されている。また、フラップ部19Bには、フラップ突起部19Cが形成されている。そして、折り線12Cおよび12Dには、フラップ突起部19Cが挿入されるフラップ挿入孔19Dが形成される。
【0036】
また、展開シートAでは、固定部14を構成する矩形片は、第2側壁部12Aおよび12Bにおける折り線12Dおよび12Cと反対側の端部から底面部13側へ向けて折り曲げられて幅方向に伸びている。また、底面部13には、台座部15を構成する帯状体が、長手方向に2本伸びて積層されている。第2側壁部12Aおよび12Bそれぞれから折れ曲がって形成された固定部14の矩形片は、折り線12Dおよび12Cを横切って、台座部15を構成する帯状体に連結している。
【0037】
また、固定部14の矩形片には、長手方向に伸びる折り線14aおよび14bが形成されている。折り線14aは、第2側壁部12Aおよび12B側の端部と離間して設けられている。また、折り線14bは、固定部14の矩形片における台座部15側の端部を規定する折り線である。展開シートAでは、第2側壁部12Aおよび12Bにおける折り線12Dおよび12Cと反対側の端部と折り線14aとの離間距離は、折り線12Dおよび12Cと折り線14bとの離間距離と同じになっている。このため、固定部14の折り線14bは、台座部15内に形成されている。そして、固定部14の矩形片における台座部15側の端部を規定するため、台座部15には、切込み14cが形成されている。この切込み14cは、折り線14bの長手方向の両端から折り線12Dおよび12Cへ向かって幅方向に伸びている。
【0038】
ここで、
図1に示す展開シートAから容器本体10を組立てる方法について、説明する。まず、展開シートAのフラップ部19Aを、第2側壁部12Aおよび12Bに対して内側に折り曲げる。次いで、折り線12Dおよび12Cを介して、第2側壁部12Aおよび12Bを底面部13に対して内側に折り曲げる。次いで、折り線11Dおよび11Cを介して、第1側壁部11Aおよび11Bを底面部13に対して内側に折り曲げる。これらの操作を行うことにより、底面部13に対して第1側壁部11Aおよび11B、並びに第2側壁部12Aおよび12Bが立設した容器状の構造体が形成される。そして、この容器状の構造体が形成された状態で、第2側壁部12Aおよび12Bを覆うように、フラップ部19Bを第1側壁部11Aおよび11Bに対して折り曲げる。その後、フラップ突起部19Cをフラップ挿入孔19Dに挿入することにより、底面部13に対して第1側壁部11Aおよび11B、並びに第2側壁部12Aおよび12Bが立設した構造が維持され、容器本体10が組立てられる。
【0039】
図1に示す展開シートAにおいては、固定部14は、底面部13に対する第2側壁部12Aおよび12Bの折り曲げに伴って形成されるようになっている。
図5は、容器本体10の組立に伴って固定部14が形成される様子を示す断面図である。
【0040】
図5に示されるように、固定部14を形成する矩形片が折り線12Cを超えて設けられている。すなわち、矩形片の底面部13側の端部を規定する折り線14bが折り線12Cよりも底面部13側に配される。そして、固定部14および台座部15を構成する薄板部材は、第2側壁部12Bおよび底面部13を構成する薄板部材に連結している。そして、折り曲げによって、固定部14および台座部15が第2側壁部12Bおよび底面部13に積層した構成となっている。このため、折り線12Cを介して、底面部13に対して第2側壁部12Bを折り曲げると、固定部14を構成する矩形片は、折り線14aおよび14bにて折り曲がり、第2側壁部12Bと矩形片との間に隙間が生じる。そして、容器本体10が組立てられたときには、矩形片は、壁16および17からなる固定部14となる。壁16および17により空洞18が形成される。
【0041】
本実施形態に係る輸送容器100の容器本体10は、
図1に示すように展開された状態では、平板状の展開シートAである。そして、第1側壁部11Aおよび11B、並びに第2側壁部12Aおよび12Bを底面部13に対して折り曲げることにより、固定部14が形成された容器本体10を組立てることができる。
【0042】
なお、展開シートAでは、第2側壁部12Aおよび12Bにおける折り線12Dおよび12Cと反対側の端部と折り線14aとの離間距離は、折り線12Dおよび12Cと折り線14bとの離間距離と同じになっていた。しかし、折り線14aおよび14bの位置は、折り曲げ時に、空洞18を構成する壁16および17が形成されるような位置であれば、特に限定されない。また、必要に応じて、折り線14aおよび14bに加え他の折り線を追加することによって、空洞18を構成する壁を2つ以上とすることもできる。
【0043】
(潜熱蓄熱材を輸送する方法)
上述のように、容器本体10を組立て可能な構成とすることにより、輸送容器100の利便性が向上する。本実施形態に係る潜熱蓄熱材を輸送する方法は、
図1~
図3に示す輸送容器100を展開した状態で、潜熱蓄熱材とともに輸送する工程と、輸送後に、輸送容器100を組み立てて、潜熱蓄熱材を収納する工程と、を有する構成である。より具体的には、当該方法は、出荷時には、容器本体10を展開シートAの状態で潜熱蓄熱材とともに輸送する工程と、輸送後に展開シートAから容器本体10を組立てて、潜熱蓄熱材を収納する工程と、を含む。これによって、輸送時の潜熱蓄熱材の積載効率の向上と、潜熱蓄熱材の保管時の省スペース化とを同時に達成することができる。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
本実施形態に係る輸送容器は、固定部の構成が、前記実施形態1と異なり、
図1~
図3に示されるような固定部14の台座部15を備えていない。
図6は、本実施形態に係る輸送容器における固定部14Aの構成を示す。
図6の(a)は、容器本体の展開シートにおける固定部14A近傍の構成を示す展開図であり、
図6の(b)は、組立てられた容器本体における固定部14A近傍の構成を示す斜視図である。
【0046】
前記実施形態1では、展開シートAにおいて、固定部14を構成する矩形片は、第2側壁部12Bおよび底面部13を構成する段ボールシートに積層された構成であった。しかし、固定部14を構成する矩形片は、第2側壁部12Bから、第2側壁部12Bと底面部13との折り線12Cを超えて、底面部13まで伸びた構成であればよい。当該矩形片は、切込み加工等によって第2側壁部12Bおよび底面部13を構成する段ボールシートに形成されていてもよい。
【0047】
図6の(a)に示されるように、固定部14Aを構成する矩形片は、切込み14dおよび14eと、折り線14f、14g、および14hと、から構成されている。切込み14dおよび14eは、第2側壁部12Bと底面部13との折り線12Cを横切るように幅方向に伸びて形成されている。折り線14fは、折り線12Cと同一直線となるように形成されている。そして、折り線14gは、切込み14dおよび14eにおける幅方向の一方の端部同士を連結するように形成されている。また、折り線14hは、切込み14dおよび14eにおける幅方向の他方の端部同士を連結するように形成されている。固定部14Aを構成する矩形片は、折り線14fを軸として線対称の形状となっている。すなわち、折り線14fと折り線14gとの距離は、折り線14fと折り線14hとの距離は同じである。
【0048】
図6の(a)に示す展開シートについて、折り線12Cを介して、底面部13に対して第2側壁部12Bを折り曲げると、固定部14Aを構成する矩形片は、切込み14dおよび14eが形成されているので、折り線14f、14g、および14hにて折り曲がり、第2側壁部12Bおよび底面部13から離間する(
図6の(b))。そして、容器本体が組立てられたときには、矩形片は、壁16および17からなる固定部14Aとなる。壁16および17により空洞18が形成される。また、矩形片の折曲りにより、第2側壁部12Bおよび底面部13に亘って、通気口13Aが形成される。
【0049】
このような構成であっても、潜熱蓄熱材間の通気のための離間距離を十分に確保することができるので、潜熱蓄熱材間の温度ムラを低減できる。
【0050】
なお、上記の構成では、折り線14fと折り線14gとの距離は、折り線14fと折り線14hとの距離は同じであった。しかし、折り線14f、14g、および14hの位置は、折り曲げ時に、空洞18を構成する壁16および17が形成されるような位置であれば、特に限定されない。また、必要に応じて、折り線14f、14g、および14hに加え他の折り線を追加することによって、空洞18を構成する壁を2つ以上とすることもできる。
【0051】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る輸送容器100は、潜熱蓄熱材を輸送するための輸送容器であって、側壁部(第1側壁部11Aおよび11B、第2側壁部12Aおよび12B)と底面部13とから構成される、潜熱蓄熱材を収納する収納部(容器本体10)と、当該収納部内の複数の潜熱蓄熱材同士の隙間に存在し、複数の潜熱蓄熱材を互いに離間した状態で固定する固定部14と、を備え、前記固定部14は、前記潜熱蓄熱材同士の対向方向に延びる空洞18を有し、前記空洞18を構成する壁16および17は、前記対向方向に延在した薄板部材により構成されている構成である。
【0053】
本発明の態様2に係る輸送容器100は、態様1において、前記側壁部(第1側壁部11Aおよび11B)および前記底面部13の少なくとも一方に形成された通気口10A、10Bを備えた構成である。
【0054】
本発明の態様3に係る輸送容器100は、態様1または2において、少なくとも前記収納部(容器本体10)は、前記側壁部(第1側壁部11Aおよび11B、第2側壁部12Aおよび12B)、前記底面部13及び前記固定部14が互いに折り曲げ可能に連結された、組み立て可能な構造であり、展開された状態では、平板状であり、前記固定部14は、前記側壁部(第2側壁部12Aおよび12B)の折り曲げ形成に伴って形成される構成である。
【0055】
本発明の態様4に係る輸送容器100は、態様3において、前記展開された状態では、前記固定部14を構成する矩形片は、前記側壁部(第2側壁部12Aおよび12B)から、前記側壁部(第2側壁部12Aおよび12B)と前記底面部13との折り線12Cを越えて、前記底面部13まで伸びて形成されている構成である。
【0056】
本発明の態様5に係る潜熱蓄熱材を輸送する方法は、態様3または4の輸送容器100を展開した状態で、潜熱蓄熱材とともに輸送する工程と、輸送後に、前記輸送容器100を組み立てて、潜熱蓄熱材を収納する工程と、を有する構成である。
【符号の説明】
【0057】
10 容器本体(収納部)
10A、10B、13A 通気口
11A、11B 第1側壁部
12A、12B 第2側壁部
12C、12D 折り線(側壁部と底面部との折り線)
13 底面部
14、14A 固定部
16、17 壁
18 空洞
100 輸送容器
A 展開シート