(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】血液凝固分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/86 20060101AFI20221212BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20221212BHJP
G01N 21/51 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G01N33/86
G01N21/49 A
G01N21/51
(21)【出願番号】P 2018179729
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】飯田 晋
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173904(JP,A)
【文献】特開2009-244027(JP,A)
【文献】特表2011-523461(JP,A)
【文献】特表2012-524894(JP,A)
【文献】特開昭60-058555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0012603(US,A1)
【文献】特表平08-510908(JP,A)
【文献】特開2007-263907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検体に検査項目に対応する試薬を混合し、血液凝固測定を行う血液凝固分析装置であって、
第1の波長の光と、前記第1の波長の光と異なる第2の波長の光とを、血液検体及び試薬が混合された混合液を収容する反応容器に照射する光照射部と、
前記反応容器に照射され、前記反応容器内の混合液を透過する前記第1の波長の光の透過光を受光する透過光受光部と、
前記反応容器に照射され、前記反応容器内の混合液で散乱される前記第2の波長の光の散乱光を受光する散乱光受光部と
、
試薬の特性を取得し、前記取得した特性に基づき、前記光照射部が照射する光についての前記第1及び第2の波長を選択する測光制御部と、
前記取得した特性に基づき、前記散乱光受光部で受光した散乱光の強度変化、又は前記透過光受光部で受光した透過光の強度変化を解析する解析部と
を備える血液凝固分析装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記試薬がフィブリノゲン試薬
、または前記フィブリノゲン試薬よりも血液凝固反応が弱くて緩やかな試薬である場合、前記散乱光受光部で受光した散乱光の強度変化を解析する請求項
1に記載の血液凝固分析装置。
【請求項3】
前記解析部は、前記試薬がフィブリノゲン試薬よりも
血液凝固反応が強く早い
試薬である場合、前記透過光受光部で受光した透過光の強度変化を解析する請求項
1記載の血液凝固分析装置。
【請求項4】
前記解析部は、前記透過光受光部で受光した透過光の強度変化を解析した後、前記散乱光受光部で受光した散乱光の強度変化を解析する請求項
1又は
3に記載の血液凝固分析装置。
【請求項5】
前記散乱光受光部で受光した散乱光の強度変化が解析された後、前記散乱光受光部で受光した散乱光の強度変化と、前記透過光受光部で受光した透過光の強度変化とを解析する複合解析部を備える請求項
1、
2、又は
4に記載の血液凝固分析装置。
【請求項6】
血液検体に検査項目に対応する試薬を混合し、血液凝固測定を行う血液凝固分析装置であって、
第1の波長の光と、前記第1の波長の光と異なる第2の波長の光とを、血液検体及び試薬が混合された混合液を収容する反応容器に照射する光照射部と、
前記反応容器に照射され、前記反応容器内の混合液を透過する前記第1の波長の光の透過光を受光する透過光受光部と、
前記反応容器に照射され、前記反応容器内の混合液で散乱される前記第2の波長の光の散乱光を受光する散乱光受光部と
、
前記散乱光受光部で受光した散乱光の強度変化と、前記透過光受光部で受光した透過光の強度変化とを解析する複合解析部と、
試薬の特性を取得し、前記取得した特性に基づき、前記光照射部が照射する光についての前記第1及び第2の波長を選択する測光制御部を
を備え
、
前記複合解析部は、前記取得した特性に基づき、前記散乱光の強度変化と、前記透過光の強度変化とを解析する、血液凝固分析装置。
【請求項7】
前記複合解析部は、前記試薬がフィブリノゲン試薬
、または前記フィブリノゲン試薬よりも血液凝固反応が弱くて緩やかな試薬である場合、前記散乱光の強度変化と、前記透過光の強度変化とを解析する請求項
6記載の血液凝固分析装置。
【請求項8】
前記複合解析部は、前記透過光の強度変化と、前記散乱光の強度変化とのうち、いずれか一方を
透過光強度の最大値の半値を軸として上下反転し、当該上下反転した強度変化と、上下反転していない他方の強度変化との中間線を解析する請求項
5乃至
7のいずれかに記載の血液凝固分析装置。
【請求項9】
前記第2の波長は、前記第1の波長よりも短い請求項1乃至
8のいずれかに記載の血液凝固分析装置。
【請求項10】
前記第1の波長は、赤色の波長域に含まれ、
前記第2の波長は、紫から青色の波長域に含まれる請求項1乃至
9のいずれかに記載の血液凝固分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、血液凝固分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固分析装置は、血液検体と凝固試薬とを混合し、この混合液に光を当てて得られる透過光、又は散乱光の光量を測定する。一般的に、血液凝固分析装置は、透過光型、又は散乱光型のいずれかの方式を採用しており、採用している方式に合った透過光、又は散乱光の光量に基づき、凝固に掛かる時間等を測定する。
【0003】
ところで、血液凝固反応は、測定項目毎に用いられる試薬によって表れる反応の強さに違いがある。例えば、プロトロンビン時間(PT)の測定では、被検血漿に試薬としての組織トロンボプラスチン(以下、PT試薬と称する。)が添加される。一方、フィブリノゲン(Fbg)の測定では、被検血漿に試薬としてのトロンビン溶液(以下、Fbg試薬と称する。)が添加される。このとき、PT試薬が添加された後の凝固反応は、Fbg試薬が添加された後の凝固反応と比較して強くて早いことが一般に知られている。このことは、Fbg試薬が添加された後の凝固反応は、PT試薬が添加された後の凝固反応と比較して弱くて緩やかであると換言可能である。
【0004】
このため、例えば、透過光型の血液凝固分析装置を用いた場合、PT試薬を添加して実施するプロトロンビン時間の測定は問題ない。しかしながら、Fbg試薬を添加して実施するフィブリノゲンの測定については、被検血漿に含まれるフィブリノゲン濃度が低い場合、問題が生じ得る。すなわち、ダイナミックレンジが狭くなる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、高精度な測定を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、血液凝固分析装置は、血液検体に検査項目に対応する試薬を混合し、血液凝固測定を行う。血液凝固分析装置は、光照射部、透過光受光部、及び散乱光受光部を備える。光照射部は、第1の波長の光と、前記第1の波長の光と異なる第2の波長の光とを、血液検体及び試薬が混合された混合液を収容する反応容器に照射する。透過光受光部は、前記反応容器に照射され、前記反応容器内の混合液を透過する前記第1の波長の光の透過光を受光する。散乱光受光部は、前記反応容器に照射され、前記反応容器内の混合液で散乱される前記第2の波長の光の散乱光を受光する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る血液凝固分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される分析機構の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される測光ユニットを上面から見た構成図である。
【
図4】
図4は、
図1に示される測光ユニットを側面から見た構成図である。
【
図5】
図5は、
図3に示される測光ユニットのその他の構成例を表す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示される制御回路の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図1に示される解析回路の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、反応が弱い試薬を添加した混合液について取得される第1及び第2の反応曲線を表すグラフである。
【
図9】
図9は、
図8に示されるグラフに第3の反応曲線を追記したグラフである。
【
図10】
図10は、反応が弱い試薬を添加した混合液について取得される第2及び第3の反応曲線と、中心線とを表すグラフである。
【
図11】
図11は、
図8に示されるグラフに第4の反応曲線を追記したグラフである。
【
図12】
図12は、反応が弱い試薬を添加した混合液について取得される第1及び第4の反応曲線と、中心線とを表すグラフである。
【
図13】
図13は、反応が強い試薬を添加した混合液について取得される第1及び第2の反応曲線を表すグラフである。
【
図15】
図15は、反応が強い試薬を添加した混合液について取得される第2及び第3の反応曲線と、中心線とを表すグラフである。
【
図17】
図17は、反応が強い試薬を添加した混合液について取得される第1及び第4の反応曲線と、中心線とを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る血液凝固分析装置1の機能構成の例を示すブロック図である。
図1に示される血液凝固分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、及び制御回路9を備える。
【0011】
分析機構2は、血液検体と、各検査項目で用いられる試薬とを混合する。また、分析機構2は、検査項目によっては、所定の倍率で希釈した標準液と、この検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、血液検体、又は標準液と、試薬との混合液の光学的な物性値を連続的に測定する。この測定により、例えば、透過光強度、又は吸光度、及び散乱光強度等で表される標準データ、及び被検データが生成される。
【0012】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析することで、血液検体の凝固に関する検量データ、及び分析データを生成するプロセッサである。解析回路3は、例えば、記憶回路8から解析プログラムを読み出し、読み出した解析プログラムに従って標準データ、及び被検データを解析する。なお、解析回路3は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えても構わない。
【0013】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
【0014】
入力インタフェース5は、例えば、操作者から、又は病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された血液検体に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース5はマウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、血液凝固分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース5の例に含まれる。
【0015】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路、及び音声デバイス等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。音声デバイスは、例えば、スピーカ等を含む。なお、音声信号を外部へ出力する出力回路も音声デバイスに含まれる。
【0016】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
【0017】
記憶回路8は、磁気的、若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を含む。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現されても構わない。
【0018】
記憶回路8は、解析回路3で実行される解析プログラム、及び制御回路9に備わる機能を実現するための制御プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを血液検体毎に記憶する。記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、又は通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。
【0019】
制御回路9は、血液凝固分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されているプログラムを実行することで、実行したプログラムに対応する機能を実現する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えても構わない。
【0020】
図2は、
図1に示される分析機構2の構成の一例を示す模式図である。
図2に示される分析機構2は、反応ディスク201、恒温部202、ラックサンプラ203、及び試薬庫204を備える。
【0021】
反応ディスク201は、複数の反応容器(キュベット)2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、反応容器2011を所定の経路に沿って搬送する。具体的には、反応ディスク201は、駆動機構4により、既定の時間間隔で回動と停止とが交互に繰り返される。反応容器2011は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はアクリルにより形成されている。
【0022】
恒温部202は、所定の温度に設定された熱媒体を貯留し、貯留する熱媒体に反応容器2011を浸漬させることで、反応容器2011に収容される混合液を昇温する。
【0023】
ラックサンプラ203は、測定を依頼された血液検体を収容する複数の試料容器を保持可能な試料ラック2031を、移動可能に支持する。
図2に示す例では、5本の試料容器を並列して保持可能な試料ラック2031が示されている。
【0024】
ラックサンプラ203には、試料ラック2031が投入される投入位置から、測定が完了した試料ラック2031を回収する回収位置まで試料ラック2031を搬送する搬送領域が設けられている。搬送領域では、長手方向に整列された複数の試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D1へ移動される。
【0025】
また、ラックサンプラ203には、試料ラック2031で保持される試料容器を所定のサンプル吸引位置へ移動させるため、試料ラック2031を搬送領域から引き込む引き込み領域が設けられている。サンプル吸引位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、ラックサンプラ203で支持されて試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。引き込み領域では、搬送されてきた試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D2へ移動される。
【0026】
また、ラックサンプラ203には、試料が吸引された試料容器を保持する試料ラック2031を搬送領域へ戻すための戻し領域が設けられている。戻し領域では、試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D3へ移動される。
【0027】
試薬庫204は、標準液、及び血液検体に対して実施される各検査項目で用いられる試薬等を収容する試薬容器100を複数保冷する。試薬庫204内には、回転テーブルが回転自在に設けられている。回転テーブルは、複数の試薬容器100を円環状に載置して保持する。なお、本実施形態において、
図2では図示していないが、試薬庫204は、着脱自在な試薬カバーにより覆われている。
【0028】
また、
図2に示される分析機構2は、サンプル分注アーム206、サンプル分注プローブ207、試薬分注アーム208、試薬分注プローブ209、及び測光ユニット211を備える。
【0029】
サンプル分注アーム206は、反応ディスク201とラックサンプラ203との間に設けられている。サンプル分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。サンプル分注アーム206は、一端にサンプル分注プローブ207を保持する。
【0030】
サンプル分注プローブ207は、サンプル分注アーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器から試料を吸引するためのサンプル吸引位置が設けられている。また、サンプル分注プローブ207の回動軌道上には、サンプル分注プローブ207が吸引した試料を反応容器2011へ吐出するためのサンプル吐出位置が設けられている。サンプル吐出位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
【0031】
サンプル分注プローブ207は、駆動機構4によって駆動され、サンプル吸引位置、又はサンプル吐出位置において上下方向に移動する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、サンプル吸引位置の直下に位置する試料容器から試料を吸引する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
【0032】
試薬分注アーム208は、反応ディスク201と試薬庫204との間に設けられている。試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。試薬分注アーム208は、一端に試薬分注プローブ209を保持する。
【0033】
試薬分注プローブ209は、試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、試薬吸引位置が設けられている。試薬吸引位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、回転テーブルに円環状に載置される試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。また、試薬分注プローブ209の回動軌道上には、試薬分注プローブ209が吸引した試薬を反応容器2011へ吐出するための試薬吐出位置が設定されている。試薬吐出位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
【0034】
試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の試薬吸引位置、又は試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、試薬吸引位置で停止している試薬容器から試薬を吸引する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した試薬を、試薬吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
【0035】
測光ユニット211は、反応容器2011内に吐出された試料と試薬との混合液中の光学的な物性値を連続的に測定する。
図2では、1つの測光ユニット211が例示されているが、実際には、測光ユニット211は、複数設けられている。例えば、測光ユニット211は、反応ディスク201で保持可能な反応容器と同数だけ設けられている。それぞれの測光ユニット211の構成は同様であるため、以下では、1つの測光ユニットを代表して説明する。
【0036】
測光ユニット211は、例えば、光源2111、及び光検出器2112,2113を有する。
図3、及び
図4は、本実施形態に係る測光ユニット211の構成例を表す模式図である。
図3は測光ユニット211を、反応ディスク201の上方向から臨んだ際の各構成要素の位置関係の例を表す模式図である。
図4は測光ユニット211を、反応ディスク201の断面方向から臨んだ際の各構成要素の位置関係の例を表す模式図である。
【0037】
図3、及び
図4に示される測光ユニット211は、例えば、反応ディスク201で環状に保持される反応容器2011の環状中心側に光源2111を有する。光源2111は、反応容器2011が配列されている環の外側へ向けて光を照射するように設けられている。
【0038】
光源2111は、2種類の波長の光を発生する、光照射部の一例である。光源2111は、例えば、波長が長い第1の光と、波長が短い第2の光とを発生する。例えば、第1の光の波長は、620~750nmの赤色の波長域に含まれ、第2の光の波長は、380~495nmの紫から青色の波長域に含まれる。なお、第1及び第2の光の波長は、620~750nmの赤色の波長域にそれぞれ含まれていても構わない。光源2111は、例えば、複数の波長の光を発生可能な多波長LED、所定の波長の光をそれぞれ発生する2つのLED、及び広い波長域の光からフィルタによって所望の波長の光を透過させる光源ユニット等により実現される。
【0039】
光源2111は、制御回路9の制御に従い、第1及び第2の光を発生する。具体的には、例えば、光源2111は、所定の周期で第1及び第2の光を交互に発生する。このとき、光源2111は、例えば、第1及び第2の光を、凝固の最小測定単位である、例えば0.1秒の半分である0.05秒周期で交互に光を発生する。光源2111から照射された光は、反応容器2011へ入射される。
【0040】
なお、光源2111は、制御回路9により指定される一方の波長の光を発生するようにしてもよい。また、光源2111は、第1及び第2の光を同時に発生するようにしてもよい。ただし、このとき、不要な波長の光を除外するためのフィルタを光検出器2112,2113に設ける必要がある。
【0041】
図3、及び
図4に示される測光ユニット211は、反応容器2011を挟んで光源2111と対向する位置に光検出器2112を有する。光源2111から出射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。光検出器2112は、反応容器2011から出射された光を検出する。光検出器2112は、例えば、透過光受光部の一例である。
【0042】
具体的には、例えば、光検出器2112は、反応容器2011内の標準液と試薬との混合液を透過した光を検出する。光検出器2112は、検出した光を所定の時間間隔、例えば、0.1秒間隔でサンプリングし、透過光強度、又は吸光度等で表される標準データを生成する。所定の時間間隔は、例えば、第1の光の発生頻度と同期する。なお、光検出器2112は、例えば、第1の光の波長と対応した波長の光のみを検出するようにしてもよい。また、光検出器2112は、反応容器2011内の血液検体と試薬との混合液を透過した光を検出する。光検出器2112は、検出した光を所定の時間間隔でサンプリングし、透過光強度、又は吸光度等により表される被検データを生成する。光検出器2112は、生成した標準データ、及び被検データを解析回路3へ出力する。
【0043】
図3、及び
図4に示される測光ユニット211は、光源2111の光の照射軸と、光検出器2113の受光軸とが反応容器2011内において略90度で交わるように、光検出器2113が設けられている。光源2111から出射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、混合液内の粒子により散乱された後、第1側壁と90度隔てて隣接する第3側壁から出射される。光検出器2113は、反応容器2011から出射された光を検出する。光検出器2113は、例えば、散乱光受光部の一例である。
【0044】
具体的には、例えば、光検出器2113は、反応容器2011内の標準液と試薬との混合液で散乱された光を検出する。光検出器2113は、検出した光を所定の時間間隔、例えば、0.1秒間隔でサンプリングし、散乱光強度等で表される標準データを生成する。所定の時間間隔は、例えば、第2の光の発生頻度と同期する。なお、光検出器2113は、例えば、第2の光の波長と対応した波長の光のみを検出するようにしてもよい。また、光検出器2113は、反応容器2011内の血液検体と試薬との混合液で散乱された光を検出する。光検出器2113は、検出した光を所定の時間間隔でサンプリングし、散乱光強度等により表される被検データを生成する。光検出器2113は、生成した標準データ、及び被検データを解析回路3へ出力する。
【0045】
なお、光検出器2112,2113は、検出した光の強度を検出信号として解析回路3へ出力しても構わない。このとき、解析回路3が、所定の時間間隔、例えば、0.1秒間隔で検出信号をサンプリングし、標準データ、及び被検データを生成する。
【0046】
図5は、本実施形態に係る測光ユニット211aのその他の構成例を表す模式図である。
図5は、
図3と同様に、測光ユニット211aを、反応ディスク201の上方向から臨んだ際の各構成要素の位置関係の例を表している。
図5に示される測光ユニット211aは、光源2111aとしての2つのLED51,52を有している。
図5に示される例では、LED52の光の照射軸が、LED51の光の照射軸に対して所定の角度だけ傾けられている。また、LED52の光の照射軸と、光検出器2113aの受光軸とが反応容器2011内において略90度で交わるように、光検出器2113aが設けられている。
【0047】
図1に示される解析回路3は、記憶回路8に記憶されている解析プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、解析回路3は、解析プログラムを実行することで、解析機能31、及び複合解析機能32を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって解析機能31、及び複合解析機能32が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて解析回路を構成し、各プロセッサが解析プログラムを実行することにより解析機能31、及び複合解析機能32を実現しても構わない。
【0048】
解析機能31は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析する機能であり、解析部の一例である。具体的には、例えば、解析機能31において解析回路3は、標準データに基づいて凝固時間を算出し、算出した凝固時間から検量データを生成する。解析回路3は、生成した検量データを制御回路9へ出力する。
【0049】
また、解析機能31において解析回路3は、例えば、被検データを解析することで、混合液中の凝固の過程を測定する。具体的には、解析回路3は、例えば、反応が強い試薬が添加された混合液の解析については、透過光を検出して得られる被検データを解析する。解析回路3は、被検データに基づいて血液凝固反応についての受光強度変化を取得する。なお、以下では、受光強度変化を反応曲線として説明を進める。解析回路3は、反応曲線における変曲点、及び飽和到達点等を凝固終了点として検出する。このときの変曲点、及び飽和到達点等の検出は、数学的なアルゴリズム、例えば、反応曲線の1次微分、2次微分、又は他の演算法を用いて実施される。解析回路3は、検出した凝固終了点に基づき、凝固点と、凝固点に到達する時間である凝固時間を算出する。なお、解析回路3は、反応が強い試薬を添加した後、凝固が進まない異常検体に対しては、散乱光を検出して得られる被検データを解析しても構わない。
【0050】
また、解析回路3は、例えば、反応が弱くて遅い試薬を添加した混合液の解析については、散乱光を検出して得られる被検データを解析する。なお、本実施形態において、反応が弱くて遅い試薬について、反応が弱い試薬と記載する箇所もあるが、これらは同意のものとして扱うものとする。解析回路3は、被検データに基づいて反応曲線を取得し、取得した反応曲線から、血液検体の凝固に関する情報、例えば、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間を算出する。
【0051】
また、解析回路3は、検査項目によっては、算出した凝固時間と、この被検データに対応する検査項目の検量データとに基づき、濃度値等を算出する。解析回路3は、凝固終了点、凝固点、凝固時間、及び濃度値等を含む分析データを制御回路9へ出力する。
【0052】
複合解析機能32は、分析機構2により生成される2種類の被検データを複合して解析する機能であり、複合解析部の一例である。具体的には、複合解析機能32において解析回路3は、透過光を検出して得られる被検データと、散乱光を検出して得られる被検データとを取得する。解析回路3は、透過光についての被検データに基づく反応曲線、及び、散乱光についての被検データに基づく反応曲線から、血液検体の凝固に関する情報、例えば、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を算出する。なお、複合解析機能32での複合解析処理については後に詳述する。
【0053】
複合解析機能32は、例えば、制御回路9からの制御、及び解析機能31での解析結果に従って実施される。例えば、解析回路3は、制御回路9からの指示に応じ、複合解析機能32を実施する。また、解析回路3は、例えば、解析機能31において、反応が弱い試薬を添加した後、想定よりも反応が遅い等の場合、複合解析機能32を実施する。
【0054】
解析回路3は、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を含む分析データを制御回路9へ出力する。
【0055】
図1に示される制御回路9は、記憶回路8に記憶されている制御プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、制御プログラムを実行することで、システム制御機能91、及び測光制御機能92を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91、及び測光制御機能92が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが制御プログラムを実行することによりシステム制御機能91、及び測光制御機能92を実現しても構わない。
【0056】
システム制御機能91は、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、血液凝固分析装置1における各部を統括して制御する機能である。例えば、システム制御機能91において制御回路9は、検査項目に応じた解析を実施するように解析回路3を制御する。
【0057】
測光制御機能92は、測定に用いられる光の波長を制御する機能であり、測光制御部の一例である。具体的には、測光制御機能92において制御回路9は、例えば、記憶回路8に記憶されている検査オーダを参照し、次に測定される検査項目で用いられる試薬情報を取得する。制御回路9は、例えば、取得した試薬情報に含まれる検査項目名、試薬名、反応に関する情報、及び再検に関する情報等に基づき、次に使用される試薬の反応が弱いか否かを判断する。本実施形態において、反応に関する情報は、反応の強弱を表す情報であり、例えば、反応が弱い(強い)ことを表す識別子又はテキスト等により表される。また、再検に関する情報は、次に使用される試薬が再検対象となっている項目で用いられることを表す情報である。再検対象となっている項目は、例えば、先の検査での反応が弱かったと扱われる。再検に関する情報は、例えば、再検対象であることを表す識別子又はテキスト等により表される。次に使用される試薬の反応が弱いと判断する場合、制御回路9は、例えば、以下に記載するように測光ユニット211、及び解析回路3を制御する。
【0058】
1.試薬の特性に関わらず光源2111から第1及び第2の光が交互に発生される例
制御回路9は、通常の測定において、例えば、波長の長い第1の光と、波長の短い第2の光とが、最小測定単位である、例えば0.1秒の半分である0.05秒周期で交互に発生されるように光源2111を制御する。なお、本実施形態において通常の測定とは、例えば、次に使用される試薬の反応が弱いと判断されていない状態での測定を表す。このとき、制御回路9は、例えば、第1の光の透過光を検出して得られる被検データを解析するように解析回路3の解析機能31を制御する。なお、制御回路9は、第1の光の透過光を検出して得られる被検データ、及び第2の光の散乱光を検出して得られる被検データのうち少なくとも一方を解析するように解析機能31を制御しても構わない。
【0059】
次に使用される試薬の反応が弱いと判断する場合、制御回路9は、例えば、第2の光の散乱光を検出して得られる被検データを解析するように解析回路3の解析機能31を制御する。このとき、制御回路9は、複合解析処理を実施するように解析回路3の複合解析機能32を制御する。なお、複合解析処理の実施は、必須ではない。
【0060】
2.試薬の特性に応じて測光波長を切り替える例
制御回路9は、例えば、通常の測定において、波長の長い第1の光を発生するように光源2111を制御し、透過光を検出して得られる被検データを解析するように解析回路3の解析機能31を制御する。
【0061】
次に使用される試薬の反応が弱いと判断する場合、制御回路9は、例えば、第1及び第2の光が、最小測定単位の半分の周期で交互に発生されるように光源2111を制御する。そして、制御回路9は、例えば、第2の光の散乱光を検出して得られる被検データを解析するように解析回路3の解析機能31を制御する。このとき、制御回路9は、複合解析処理を実施するように解析回路3の複合解析機能32を制御しても構わない。
【0062】
なお、次に使用される試薬の反応が弱いと判断する場合、制御回路9は、例えば、第1の光の発生を停止し、第2の光を発生するように光源2111を制御してもよい。このとき、制御回路9は、散乱光を検出して得られる被検データを解析するように解析機能31を制御する。
【0063】
次に、血液検体と試薬との混合液における散乱光強度について説明する。
光の散乱には、レイリー散乱とミー散乱とがある。本実施形態において用いられる光源2111から照射される光の波長は620~750nm、及び380~495nmである。血液検体に含まれるフィブリノゲンの粒子径は、およそ9nmであるため、光の波長よりも小さい。そのため、初期反応時に混合液中で発生する光の散乱は、主として、レイリー散乱であると考えられる。レイリー散乱の散乱断面積σは、(1)式により表される。(1)式において、dは微粒子の粒子径、λは入射光の波長、nは微粒子の屈折率、Nは微粒子の数を表す。
【0064】
【0065】
(1)式から、レイリー散乱による散乱光強度は、波長λの4乗に反比例することが分かる。つまり、混合液に照射される光の波長が短いほど、散乱光強度が高くなる。なお、(1)式から、レイリー散乱による散乱光強度は、粒子径dの6乗に比例することも分かる。つまり、混合液中において凝固反応が進み、フィブリノゲンがフィブリンに変化すると、散乱光強度が高くなる。
【0066】
本実施形態においては、散乱光の測定に用いる第2の光の波長が、第1の光の波長よりも短く、好ましくは、紫から青色の波長域である380~495nmに含まれるように設定されている。そして、次に使用される試薬の反応が弱い場合には、第2の光の散乱光を検出して得られる被検データを解析し、被検血漿の凝固に関するデータを算出するようにしている。これにより、使用する試薬の反応が弱く、かつ、被検血漿に含まれるフィブリノゲン濃度が低い場合であっても、被検血漿の凝固に関するデータを良好に算出することが可能になる。
【0067】
次に、以上のように構成された血液凝固分析装置1による動作を、制御回路9の処理手順に従って説明する。
図6は、
図1に示される血液凝固分析装置1が、被検血漿についての凝固反応を測定する際の制御回路9の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図6の説明では、制御回路9が、試薬の特性に応じて測光波長の設定を切り替える場合を例に説明する。また、
図6の説明では、反応が弱い試薬としてFbg試薬、Fbg試薬を用いた検査項目としてフィブリノゲンを例に挙げる。なお、反応が弱い試薬はFbg試薬に限定されない。また、検査項目も反応が弱い試薬を用いる検査項目であればフィブリノゲンに限定されない。
【0068】
制御回路9は、例えば、予め設定される起動時刻になると、又は、操作者からの起動指示が入力されると、記憶回路8に記憶されている制御プログラムを読み出し、システム制御機能91、及び測光制御機能92を実施する。システム制御機能91において制御回路9は、血液凝固分析装置1における各部を統括して制御する。
【0069】
具体的には、例えば、制御回路9は、駆動機構4を制御し、ラックサンプラ203で支持されている試料ラック2031を移動させる(ステップS61)。試料ラック2031には、血液検体を収容した試料容器が保持されている。試料ラック2031に保持される試料容器がサンプル吸引位置に到達すると、制御回路9は、到達した試料容器内の血液検体が次の検査対象であることを、記憶回路8に記憶されている検査オーダを参照して確認する(ステップS62)。
【0070】
このとき、制御回路9は、測光制御機能92において、検査オーダを参照し、次に測定される検査項目で用いられる試薬情報を取得する(ステップS63)。制御回路9は、例えば、取得した試薬情報に含まれる検査項目名、試薬名、反応に関する情報、及び再検に関する情報等に基づき、次に使用される試薬の反応が弱いか否かを判断する(ステップS64)。取得した試薬情報に含まれる試薬名が「Fbg試薬」である場合、制御回路9は、次に使用される試薬の反応が弱いと判断し(ステップS64のYes)、測光制御機能92により、光源2111から発生される光の波長を設定する。例えば、制御回路9は、第1及び第2の光が、例えば、0.05秒周期で交互に発生されるように光源2111の波長を設定する。また、制御回路9は、第2の光の散乱光を検出して得られる被検データを解析する旨の指示を解析回路3へ出力する(ステップS65)。このとき、制御回路9は、複合解析処理を実施する旨の指示を解析回路3へ出力しても構わない。
【0071】
なお、次に使用される試薬の反応が弱いと判断した場合(ステップS64のYes)、制御回路9は、例えば、第1の光が発生されず、第2の光が発生されるように光源2111を設定し、散乱光を検出して得られる被検データを解析する旨の指示を解析回路3へ出力してもよい。また、制御回路9は、試薬情報に、例えば、検査項目:「フィブリノゲン」、又は、反応に関する情報:「反応弱い」等が含まれている場合にも、これらに基づき、次に使用される試薬の反応が弱いと判断してもよい。
【0072】
取得した試薬情報に含まれる試薬名が「Fbg試薬等の反応が弱い試薬」以外、例えば、「PT試薬」等である場合、制御回路9は、次に使用される試薬の反応が弱くないと判断し(ステップS64のNo)、第1の光のみが発生されるように光源2111を設定する。また、制御回路9は、透過光を検出して得られる被検データを解析する旨の指示を解析回路3へ出力する(ステップS66)。なお、反応が弱くない試薬は「PT試薬」の他に、例えば、活性化部分トロトンボンプラスチン時間(APTT)を測定する際に添加する試薬も含まれる。
【0073】
ステップS65、及びステップS66で、光源2111からの光の波長を設定し、解析回路3への指示を出力すると、制御回路9は、サンプル分注プローブ207がサンプル吸引位置上へ移動するように、サンプル分注アーム206を回動させる。サンプル分注プローブ207がサンプル吸引位置上へ到達すると、制御回路9は、サンプル分注プローブ207を下降させ、サンプル吸引位置の直下に位置する試料容器から血液検体を吸引する(ステップS67)。
【0074】
血液検体を試料容器から吸引すると、制御回路9は、サンプル分注プローブ207を上昇させ、サンプル分注プローブ207がサンプル吐出位置上へ移動するように、サンプル分注アーム206を回動させる。サンプル分注プローブ207がサンプル吐出位置上へ到達すると、制御回路9は、サンプル分注プローブ207を下降させ、サンプル吐出位置の直下に位置する空の反応容器2011へ血液検体を吐出する(ステップS68)。なお、制御回路9は、駆動機構4により反応ディスク201を回動させ、サンプル分注プローブ207が下降される前までに、空の反応容器2011をサンプル吐出位置に移送している。反応容器2011へ吐出された血液検体は、恒温部202により所定の温度(例えば、37℃)に昇温される。
【0075】
制御回路9は、例えば、反応容器2011へ血液検体を分注する動作のバックグラウンドで、試薬分注アーム208、試薬分注プローブ209、及び試薬庫204の回転テーブルを操作し、検査オーダで示される検査項目と対応する試薬を、試薬庫204内の試薬容器100から吸引する(ステップS69)。
【0076】
反応容器2011に血液検体が吐出されると、制御回路9は、駆動機構4により、反応ディスク201を回動させ、血液検体が吐出された反応容器2011を試薬吐出位置へ移動させる(ステップS610)。反応容器2011が試薬吐出位置に到達すると、制御回路9は、試薬分注アーム208、及び試薬分注プローブ209を操作し、試薬吐出位置に到達した反応容器2011へ試薬を吐出する(ステップS611)。
【0077】
反応容器2011へ試薬を吐出すると、制御回路9は、試薬を血液検体へ添加した旨を解析回路3へ通知し、測光ユニット211に反応容器2011の測光を開始させる(ステップS612)。これにより、設定された波長の光が光源2111から反応容器2011へ照射される。光源2111から照射された光は、反応容器2011内の混合液を経て、光検出器2112及び/又は光検出器2113で検出される。光検出器2112及び/又は光検出器2113は、検出した光に基づいて被検データを生成し、生成した被検データを解析回路3へ送信する。
【0078】
制御回路9は、記憶されている検査オーダを参照し、次の測定があるか否かを確認する(ステップS613)。次の測定がない場合、制御回路9は処理を終了する。一方、次の測定がある場合、制御回路9は、処理をステップS61へ移行させる。
【0079】
なお、
図6の説明では、制御回路9が、試薬の特性に応じて測光波長の設定を切り替える例について説明した。しかしながら、被検血漿についての凝固反応を測定する際の制御回路9の処理は、
図6に限定されない。例えば、制御回路9は、試薬の特性に関わらず、光源2111から第1及び第2の光が交互に発生されるようにしても構わない。
【0080】
具体的には、例えば、光源2111は、第1及び第2の光が、例えば、0.05秒周期で交互に発生されるように予め設定されている。そして、次に使用される試薬の反応が弱いと判断すると(ステップS64のYes)、制御回路9は、測光制御機能92により、第2の光の散乱光を検出して得られる被検データを解析する旨の指示を解析回路3へ出力する。このとき、制御回路9は、複合解析処理を実施する旨の指示を解析回路3へ出力しても構わない。
【0081】
次に使用される試薬の反応が弱くない場合(ステップS64のNo)、制御回路9は、第1の光の透過光を検出して得られる被検データを解析する旨の指示を解析回路3へ出力する。なお、制御回路9は、第1の光の透過光を検出して得られる被検データ、及び第2の光の散乱光を検出して得られる被検データのうち少なくとも一方を解析する旨の指示を解析回路3へ出力しても構わない。
【0082】
次に、解析回路3が被検データを解析する動作を説明する。
図7は、
図1に示される解析回路3が被検データを解析する際の手順の一例を示すフローチャートである。
【0083】
解析回路3は、例えば、制御回路9から添加通知を受けると(ステップS71)、記憶回路8に記憶されている解析プログラムを読み出し、解析機能31を開始する。解析機能31において解析回路3は、制御回路9から送信される指示に従い、分析機構から送信される被検データを解析する。具体的には、解析回路3は、制御回路9から受信した指示に基づき、散乱光を検出して得られる被検データが解析の対象であるか否かを判断する(ステップS72)。散乱光を検出して得られる被検データを解析する旨の指示を制御回路9から受信している場合、解析回路3は、解析の対象が散乱光を検出して得られる被検データであると判断する(ステップS72のYes)。一方、透過光を検出して得られる被検データを解析する旨の指示を制御回路9から受信している場合、解析回路3は、解析の対象が透過光を検出して得られる被検データであると判断する(ステップS72のNo)。
【0084】
解析の対象が散乱光を検出して得られる被検データである場合(ステップS72のYes)、解析回路3は、反応が弱い試薬を添加した混合液についての解析を実施する。反応が弱い試薬を添加した混合液についての解析において、解析回路3は、例えば、まず、複合解析処理を実施する旨の指示を制御回路9から受信しているか否かを判断する(ステップS73)。複合解析処理を実施する旨の指示を制御回路9から受信していない場合(ステップS73のNo)、解析回路3は、光検出器2113で生成される被検データを解析する(ステップS74)。
【0085】
具体的には、試薬が反応容器2011へ添加された後、血液凝固反応が始まると、血液の凝固により混合液の濁度が上昇し、次第に、散乱光強度が上昇する。解析回路3は、例えば、試薬添加後に散乱光強度が上昇してから一定値となるまでの間の所定の段階、例えば反応曲線の変曲点、及び/又は飽和到達点等を凝固終了点として検出する。凝固終了点の検出方法は、既知の方法を用いて構わない。例えば、散乱光強度を時間で1次微分、又は2次微分した値を利用することで凝固終了点を検出することが可能である。
【0086】
続いて、解析回路3は、例えば、検出した凝固終了点における散乱光強度が予め設定された閾値以上であるか否かを判定し、散乱光強度が閾値未満であった場合、改めて凝固終了点を探索する。検出した凝固終了点の散乱光強度が閾値以上である場合、解析回路3は、この凝固終了点における散乱光強度の1/N(Nは1より大きい所定の値)の強度に到達する時刻を凝固点として算出する。
【0087】
解析回路3は、散乱光についての被検データを解析すると、解析に異常が発生したか否かを判断する(ステップS75)。例えば、解析回路3は、予め定められた最大測定時間が経過するまでに、所定の閾値以上の散乱光強度の凝固終了点が検出されなかった場合には、解析に異常があったと判断する(ステップS75のYes)。なお、異常が発生したか否かの判断は、これに限定されず、その他の判断手法を採用しても構わない。解析に異常が発生せず、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等が算出された場合(ステップS75のNo)、解析回路3は、これらの解析結果を含む分析データを制御回路9へ出力し(ステップS76)、処理を終了させる。
【0088】
ステップS75において解析に異常があると判断すると、解析回路3は、散乱光を検出して得られる被検データと、透過光を検出して得られる被検データとの両方を解析する複合解析処理を実施する(ステップS77)。具体的には、第1及び第2の光が所定周期で光源2111から交互に発生されている場合、解析回路3は、光検出器2113で生成された被検データに加え、光検出器2112で生成された被検データも受信している。解析回路3は、光検出器2112からの被検データに基づき、透過光強度についての反応曲線(以下、第1の反応曲線と称する。)を取得する。なお、ステップS74の処理過程で取得された、散乱光強度についての反応曲線を以下では、第2の反応曲線と称する。
【0089】
図8は、反応が弱い試薬を添加した混合液について取得される第1及び第2の反応曲線の例を表すグラフである。
図8において、破線が透過光強度についての第1の反応曲線を表し、実線が散乱光強度についての第2の反応曲線を表す。また、
図8において、縦軸は光の強度を表し、横軸は経過時間を表す。なお、第1及び第2の反応曲線のダイナミックレンジが異なる場合、解析回路3は、例えば、ダイナミックレンジが大きい一方の曲線を、ダイナミックレンジが小さい他方の曲線に合わせるようにコンプレッションしてもよい。なお、コンプレッションとは、曲線の光強度を圧縮する処理である。これにより、第1及び第2の反応曲線のレンジが揃えられる。なお、反応曲線間のレンジを揃える処理は、コンプレッションに限定されない。
【0090】
第1の反応曲線を取得すると、解析回路3は、例えば、透過光強度の最大値の半値を軸として第1の反応曲線を上下反転する。以下では、第1の反応曲線を上下反転させた曲線を、第3の反応曲線と称する。
図9は、
図8に示されるグラフに第3の反応曲線を追記したグラフである。
図9において、太い破線が第3の反応曲線を表す。
【0091】
第3の反応曲線を取得すると、解析回路3は、散乱光強度についての第2の反応曲線と、第3の反応曲線との中心線を算出する。
図10は、反応が弱い試薬を添加した混合液について取得される第2及び第3の反応曲線と、中心線との例を表すグラフである。
図10において、細い実線が第2の反応曲線を表し、太い破線が第3の反応曲線を表し、太い実線が中心線を表す。
【0092】
中心線を算出すると、解析回路3は、中心線に基づき、例えば、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を算出する。具体的には、例えば、解析回路3は、試薬添加後に中心線が上昇してから一定値となるまでの間の所定の段階を凝固終了点として検出する。凝固終了点の検出方法は、既知の方法を用いて構わない。続いて、解析回路3は、例えば、検出した凝固終了点における光強度が予め設定された閾値以上であるか否かを判定し、光強度が閾値未満であった場合、改めて凝固終了点を探索する。検出した凝固終了点の光強度が閾値以上である場合、解析回路3は、この凝固終了点における光強度の1/Nの光強度に到達する時刻を凝固点として算出する。
【0093】
このように、散乱光強度についての反応曲線と、透過光強度についての反応曲線を反転させた反応曲線とに基づいて中心線を生成することで、経過時間当たりの光強度の増加がなだらかになる。これにより、凝固終了点等を高精度に検出することが可能となる。ところで、凝固反応が弱い場合、ゲインを切り替えて反応曲線を増幅することを試みることができる。ただし、この手法では、実際の信号と共にノイズも増幅されてしまう。中心線を生成する本実施形態に係る手法によれば、ノイズの増幅を抑え、実際の信号のみを抽出することが可能となる。
【0094】
解析回路3は、複合解析処理を実施すると、当該解析に異常が発生したか否かを判断する(ステップS78)。例えば、解析回路3は、予め定められた最大測定時間が経過するまでに、所定の閾値以上の光強度の凝固終了点が検出されなかった場合には、解析に異常があったと判断する(ステップS78のYes)。なお、異常が発生したか否かの判断は、これに限定されず、その他の判断手法を採用しても構わない。解析に異常があったと判断すると(ステップS78のYes)、解析回路3は、異常があった旨を制御回路9へ通知し(ステップS79)、処理を終了させる。解析に異常が発生していない場合(ステップS78のNo)、解析回路3は、処理をステップS76へ移行させる。
【0095】
制御回路9は、解析回路3から異常があった旨の通知を受けると、測定不能として測光ユニット211による測光を終了させ、異常があった旨を出力インタフェース6へ出力する。
【0096】
なお、複合解析処理の際に上下反転される反応曲線は第1の反応曲線に限定されない。例えば、透過光強度の最大値の半値を軸として第2の反応曲線を上下反転しても構わない。第2の反応曲線を上下反転させた曲線を、第4の反応曲線と称する。
図11は、
図8に示されるグラフに第4の反応曲線を追記したグラフである。
図11において、太い破線が第4の反応曲線を表す。
【0097】
第4の反応曲線を取得した場合、解析回路3は、透過光強度についての第1の反応曲線と、第4の反応曲線とから中心線を算出する。
図12は、反応が弱い試薬を添加した混合液について取得される第1及び第4の反応曲線と、中心線との例を表すグラフである。
図12において、細い破線が第1の反応曲線を表し、太い破線が第4の反応曲線を表し、太い実線が中心線を表す。解析回路3は、算出した中心線に基づき、例えば、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を算出する。
【0098】
このとき解析回路3は、透過光強度についての第1の反応曲線を基準として中心線を算出している。このため、中心線に基づいて凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を算出する処理は、ステップS77での処理と少々異なる。具体的には、例えば、解析回路3は、試薬添加後に中心線が低下してから一定値となるまでの間の所定の段階を凝固終了点として検出する。続いて、解析回路3は、例えば、検出した凝固終了点における光強度が予め設定された閾値以下であるか否かを判定し、光強度が閾値を超える場合、改めて凝固終了点を探索する。検出した凝固終了点の光強度が閾値以下である場合、解析回路3は、この凝固終了点における光強度の1/Nの光強度に到達する時刻を凝固点として算出する。
【0099】
ステップS73において、複合解析処理を実施する旨の指示を制御回路9から受信している場合(ステップS73のYes)、解析回路3は、散乱光についての被検データの解析と、散乱光及び透過光についての被検データの複合解析とを実施する(ステップS710)。なお、解析回路3は、散乱光についての被検データの解析は実施せずに、散乱光及び透過光についての被検データの複合解析のみを実施するようにしても構わない。ステップS710の解析を実施すると、解析回路3は、処理をステップS78へ移行させる。
【0100】
ステップS72において、解析の対象が透過光を検出して得られる被検データである場合(ステップS72のNo)、解析回路3は、反応が強い試薬を添加した混合液についての解析を実施する。反応が強い試薬を添加した混合液についての解析において、解析回路3は、光検出器2112で生成される被検データを解析する(ステップS711)。
【0101】
具体的には、試薬が反応容器2011へ添加された後、血液凝固反応が始まると、次第に透過光強度が低下する。解析回路3は、例えば、試薬添加後に透過光強度が低下してから一定値となるまでの間の所定の段階、例えば反応曲線の変曲点、及び/又は飽和到達点等を凝固終了点として検出する。
【0102】
続いて、解析回路3は、例えば、検出した凝固終了点の適否を判断する。解析回路3は、例えば、検出した凝固終了点における透過光強度が予め設定された閾値以下であるか否かを判定し、透過光強度が閾値を超える場合、改めて凝固終了点を探索する。検出した凝固終了点の透過光強度が閾値以下である場合、解析回路3は、この凝固終了点における透過光強度の1/Nの強度に到達する時刻を凝固点として算出する。
【0103】
解析回路3は、透過光についての被検データを解析すると、解析に異常が発生したか否かを判断する(ステップS712)。例えば、解析回路3は、予め定められた最大測定時間が経過するまでに、所定の閾値以下の透過光強度の凝固終了点が検出されなかった場合には、解析に異常があったと判断する(ステップS712のYes)。なお、異常が発生したか否かの判断は、これに限定されず、その他の判断手法を採用しても構わない。解析に異常が発生せず、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等が算出された場合(ステップS712のNo)、解析回路3は、処理をステップS76へ移行させる。
【0104】
ステップS712において解析に異常があると判断すると、解析回路3は、散乱光を検出して得られる被検データを、例えば、ステップS74と同様の手順で解析する(ステップS713)。なお、反応が強い試薬を添加した混合液について散乱光による被検データを解析する場合には、光源2111から、第1の光と第2の光とが所定周期で交互に発生されている必要がある。
【0105】
解析回路3は、散乱光についての被検データを解析すると、解析に異常が発生したか否かを判断する(ステップS714)。解析に異常があったと判断すると(ステップS714のYes)、解析回路3は、処理をステップS79へ移行させる。解析に異常が発生していない場合(ステップS714のNo)、解析回路3は、処理をステップS76へ移行させる。
【0106】
なお、解析回路3は、例えば、ステップS714で解析に異常があった場合、散乱光を検出して得られる被検データと、透過光を検出して得られる被検データとの両方を解析する複合解析処理を実施してもよい。解析回路3は、例えば、ステップS711で取得された、透過光強度についての第1の反応曲線と、ステップS713で取得された、散乱光強度についての第2の反応曲線を参照して複合解析処理を実施する。
【0107】
図13は、反応が強い試薬を添加した混合液について取得される第1及び第2の反応曲線の例を表すグラフである。
図13において、破線が透過光強度についての第1の反応曲線を表し、実線が散乱光強度についての第2の反応曲線を表す。また、
図13において、縦軸は光の強度を表し、横軸は経過時間を表す。
【0108】
解析回路3は、例えば、
図13に示される第1の反応曲線を、透過光強度の最大値の半値を軸として上下反転する。
図14は、第1の反応曲線を上下反転させた第3の反応曲線を
図13に追記したグラフである。
図14において、太い破線が第3の反応曲線を表す。
【0109】
第3の反応曲線を取得すると、解析回路3は、散乱光強度についての第2の反応曲線と、第3の反応曲線との中心線を算出する。
図15は、反応が強い試薬を添加した混合液について取得される第2及び第3の反応曲線と、中心線との例を表すグラフである。
図15において、細い実線が第2の反応曲線を表し、太い破線が第3の反応曲線を表し、太い実線が中心線を表す。
【0110】
中心線を算出すると、解析回路3は、中心線に基づき、例えば、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を算出する。解析回路3は、複合解析処理を実施すると、当該解析に異常が発生したか否かを判断する。解析に異常があった場合、解析回路3は、異常があった旨を制御回路9へ通知する。一方、解析に異常が発生していない場合、解析回路3は、解析結果を含む分析データを制御回路9へ出力する。
【0111】
なお、複合解析処理の際に上下反転される反応曲線は第1の反応曲線に限定されない。例えば、透過光強度の最大値の半値を軸として第2の反応曲線を上下反転しても構わない。
図16は、第2の反応曲線を上下反転させた第4の反応曲線を
図13に追記したグラフである。
図16において、太い破線が第4の反応曲線を表す。
【0112】
第4の反応曲線を取得した場合、解析回路3は、透過光強度についての第1の反応曲線と、第4の反応曲線とから中心線を算出する。
図17は、反応が強い試薬を添加した混合液について取得される第1及び第4の反応曲線と、中心線との例を表すグラフである。
図17において、細い破線が第1の反応曲線を表し、太い破線が第4の反応曲線を表し、太い実線が中心線を表す。解析回路3は、算出した中心線に基づき、例えば、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を算出する。
【0113】
また、解析回路3が複合解析処理を実施するタイミングは、散乱光についての被検データの解析後に限定されない。透過光についての被検データの解析に代えて複合解析処理を実施しても構わない。
【0114】
以上のように、本実施形態では、光源2111は、第1の波長の光と、第1の波長の光と異なる第2の波長の光とを発生する。光源2111は、発生した光を反応容器2011に収容される混合液へ照射する。光検出器2112は、反応容器に照射され、反応容器内の混合液を透過する第1の波長の光の透過光を受光する。そして、光検出器2113は、反応容器に照射され、反応容器内の混合液で散乱される第2の波長の光の散乱光を受光するようにしている。これにより、血液凝固分析装置1は、透過光の受光結果、及び散乱光の受光結果の少なくともいずれかを用いて血液検体を分析することが可能となる。
【0115】
また、本実施形態では、制御回路9は、測光制御機能92により、測定に用いられる試薬の特性を取得する。制御回路9は、取得した特性に基づき、光源2111が照射する光の波長を選択する。そして、解析回路3は、解析機能31により、制御回路9で取得された特性に基づき、光検出器2112で受光した透過光の強度変化、又は光検出器2113で受光した散乱光の強度変化を解析するようにしている。これにより、血液検体に添加される試薬の反応の強弱に応じ、解析に用いる光を透過光及び散乱光から選択することが可能となる。
【0116】
また、本実施形態では、第2の波長は、第1の波長よりも短くなるようにしている。つまり、散乱光の強度変化を解析する際の光の波長は、透過光の強度変化を解析する際の光の波長よりも短い。混合液に照射される光の波長が短いほど、散乱光強度が高くなることが知られている。このため、波長の短い光を用いて散乱光の強度変化を解析することで、添加する試薬の反応が弱い場合であっても、血液検体を良好に測定することが可能となる。
【0117】
異常な反応、例えば全く凝固しない等が発生したか否かの判断は慎重に行う必要があるため、異常な反応が疑われる反応容器は、異常な反応の発生が確定するまで反応容器を反応ディスク201に保持しておく必要がある。一方で、異常な反応が疑われる反応容器をいつまで反応ディスク201に保持しておくかは、全体のスループットに大きく影響を与える。本実施形態によれば、反応が弱い試薬を添加した血液検体を良好に測定することが可能となるため、反応容器内で異常な反応が起きているか否かの判別が容易となり、スループットの向上が期待できる。
【0118】
また、本実施形態では、解析回路3は、解析機能31により、添加される試薬がフィブリノゲン試薬等の反応の弱い試薬である場合、光検出器2113で受光した散乱光の強度変化を解析するようにしている。これにより、反応の弱い試薬を添加した場合であっても、散乱光の強度変化を解析するため、血液検体を測定することが可能となる。
【0119】
また、本実施形態では、解析回路3は、解析機能31により、添加された試薬がフィブリノゲン試薬等よりも反応が強くて早い場合、光検出器2112で受光した透過光の強度変化を解析するようにしている。これにより、反応が弱くない試薬については、通常と同じ処理を実施することが可能となる。
【0120】
また、本実施形態では、解析回路3は、解析機能31により、光検出器2112で受光した透過光の強度変化を解析した後、光検出器2113で受光した散乱光の強度変化を解析するようにしている。これにより、例えば、反応の強い試薬を添加した混合液において、血液凝固反応の進みが遅い場合には、散乱光を用いた解析に切り替えることが可能となる。
【0121】
また、本実施形態において、解析回路3は、複合解析機能32により、光検出器2113で受光した散乱光の強度変化と、光検出器2112で受光した透過光の強度変化とを複合的に解析するようにしている。これにより、血液検体が高精度に測定されることになる。
【0122】
また、本実施形態では、解析回路3は、複合解析機能32により、光検出器2113で受光した散乱光の強度変化が解析された後、2種の強度変化を用いた複合解析処理を実施するようにしている。これにより、例えば、反応の弱い試薬を添加した混合液において、血液凝固反応の進みが遅い場合、複合解析に切り替えることが可能となる。
【0123】
また、本実施形態では、制御回路9は、測光制御機能92により、測定に用いられる試薬の特性を取得する。制御回路9は、取得した特性に基づき、光源2111が照射する光の波長を選択する。そして、解析回路3は、複合解析機能32により、取得した特性に基づき、複合解析処理を実施するようにしている。これにより、例えば、添加される試薬に応じて、複合解析処理を実施するか否かを設定することが可能となる。すなわち、例えば、反応の弱い試薬を添加した混合液について、複合解析処理を実施することが可能となる。
【0124】
また、本実施形態では、解析回路3は、複合解析機能32により、透過光の強度変化と、散乱光の強度変化とのうち、いずれか一方を上下反転し、当該上下反転した強度変化と、上下反転していない他方の強度変化との中間線を解析するようにしている。これにより、経過時間当たりの光強度の増加がなだらかになり、血液検体を高精度に測定することが可能となる。反応が弱くて遅い検体において、試薬投入後の初期変化は、凝固時間を算出するために非常に重要なデータである。中間線を解析することで、試薬投入後の初期変化を高精度に捉えることが可能となる。
【0125】
また、本実施形態では、第1の波長は、赤色の波長域に含まれ、第2の波長は、紫から青色の波長域に含まれるようにしている。これにより、第2の波長の光による散乱光強度は、第1の波長の光による散乱光強度よりも十分に大きくなり、反応が弱くて遅いFbg試薬等を添加した血液検体、及び異常検体について良好な測定結果を取得することが可能となる。また、赤色の波長域は濁度の高い対象において透過性が高くなるため、第1の波長の光を用いた測定は、濁度の高くなる試薬系において適することになる。
【0126】
なお、上記実施形態では、反応の弱い試薬が添加された混合液について、例えば、ステップS74で説明したように、散乱光の光強度についての被検データを解析している。しかしながら、これに限定されない。解析回路3は、解析機能31により、例えば、経過時間に応じ、散乱光の光強度についての被検データの解析と、透過光の光強度についての被検データの解析とを切り替えても構わない。具体的には、例えば、解析回路3は、試薬を添加してから所定の時間が経過するまでは散乱光の光強度についての被検データを解析する。そして、解析回路3は、試薬を添加してから所定の時間が経過した後は、透過光の光強度についての被検データを解析する。なお、所定の時間とは、例えば、散乱光強度についての反応曲線において、凝固時間を判定できる程度の時間である。
【0127】
また、上記実施形態では、複数の測光ユニット211のそれぞれに光検出器2112,2113が設けられている場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。設けられる測光ユニット211のうち、いくつかの測光ユニット211では、光検出器2112,2113が設けられ、その他の測光ユニットでは、透過光を検出する光検出器2112のみが設けられていても構わない。これにより、反応ディスク201のレイアウトに余裕がない場合であっても対応可能となる。
【0128】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、血液凝固分析装置1は、高精度な測定を実現することができる。
【0129】
実施形態の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサ毎に単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0130】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0131】
1…血液凝固分析装置
2…分析機構
201…反応ディスク
202…恒温部
203…ラックサンプラ
204…試薬庫
206…サンプル分注アーム
207…サンプル分注プローブ
208…試薬分注アーム
209…試薬分注プローブ
211,211a…測光ユニット
2011…反応容器
2031…試料ラック
2111,2111a…光源
2112…光検出器
2113,2113a…光検出器
51,52…LED
3…解析回路
31…解析機能
32…複合解析機能
4…駆動機構
5…入力インタフェース
6…出力インタフェース
7…通信インタフェース
8…記憶回路
9…制御回路
91…システム制御機能
92…測光制御機能
100…試薬容器