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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】粒子含有組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20221212BHJP
   C08K 7/16 20060101ALI20221212BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08L1/02
C08K7/16
C08J5/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018180290
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050737
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北野 結花
(72)【発明者】
【氏名】後居 洋介
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/066193(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)化学修飾セルロース繊維と、(B)粒子と、(C)水とを含み、
前記(A)化学修飾セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有し、セルロースの一部の水酸基が下記の一般式(1)で表される置換基によって置換され、前記(A)化学修飾セルロース繊維1gあたり0.01mmol~3.0mmolの前記置換基を有し、
前記(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度は、100~3000である、粒子含有組成物。
【化1】
ただし、一般式(1)において、Mは1~3価の陽イオンを表す。
【請求項2】
前記(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維幅は、3nm~5000nmである、請求項1に記載の粒子含有組成物。
【請求項3】
前記(B)粒子の平均粒子径は2500μm以下である、請求項1または請求項2に記載の粒子含有組成物。
【請求項4】
前記(B)粒子は、金属、金属化合物、粘土鉱物類、水不溶性固体有機化合物、水不溶性固体農薬有効成分および水不溶性固体生理活性物質、ならびに、顔料、難燃剤および充填剤からなる群から選択される1種類以上の粒子である、請求項1から3のいずれか1項に記載の粒子含有組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の粒子含有組成物を乾燥させて得られる粒子含有乾燥物。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の粒子含有組成物を乾燥させて得られる粒子含有膜。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の粒子含有組成物の製造方法であって、
セルロース繊維をスルファミン酸で処理することにより、前記セルロース繊維を硫酸エステル化する化学修飾工程を含む粒子含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維を化学修飾することにより、セルロース繊維の水等への分散が容易となる。このような化学修飾セルロース繊維は、水等に分散させると、高いチキソ性や粘性等の特徴的な機能を発現させるため、様々な用途に応用可能である。
【0003】
セルロースを化学修飾したものとして、硫酸エステル化セルロースが挙げられる。たとえば、特許文献1では、無水硫酸を硫酸エステル化試薬として用いて、セルロースを硫酸エステル化した粒子状の硫酸エステル化セルロースが開示されている。また、特許文献2では、硫酸水溶液を硫酸エステル化試薬として用いて、重合度が60以下のセルロースII型結晶構造を有する硫酸エステル化セルロースを製造する技術が開示されている。
【0004】
一方、特許文献3には、TEMPO酸化セルロースファイバーを用いて、粒子を液中に安定的に分散させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-92034号公報
【文献】特表2012-526156号公報
【文献】特開2013‐249448号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Cellulose (2017) 24: 1295-1305 “Complete nanofibrillation of cellulose prepared by phosphorylation”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3の技術では、反応時のpHの微調整等が必要であり、製造工程が複雑化するという問題があった。また、無水硫酸および高濃度硫酸水溶液をそれぞれ用いる特許文献1および特許文献2の技術では、セルロースにおけるグルコースの重合度が低くなる傾向がある。このような重合度が低いセルロースを用いて粒子を液中に分散させたとしても、粒子の分散安定性が悪く、粒子が液中で凝集して沈降してしまうという問題があった。
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、粒子を液中に安定的に分散した粒子含有組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係る粒子含有組成物は、(A)化学修飾セルロース繊維と、(B)粒子と、(C)水とを含み、前記(A)化学修飾セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有し、セルロースの一部の水酸基が下記の一般式(1)で表される置換基によって置換され、前記(A)化学修飾セルロース繊維1gあたり0.01mmol~3.0mmolの前記置換基を有し、前記(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度は、100~3000である。ただし、一般式(1)において、Mは1~3価の陽イオンを表す。
【化1】
【発明の効果】
【0010】
本発明では、粒子の分散安定性に優れる粒子含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(1)本発明の実施形態に係る粒子含有組成物は、(A)化学修飾セルロース繊維と、(B)粒子と、(C)水とを含み、前記(A)化学修飾セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有し、セルロースの一部の水酸基が下記の一般式(1)で表される置換基によって置換され、前記(A)化学修飾セルロース繊維1gあたり0.01mmol~3.0mmolの前記置換基を有し、前記(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度は、100~3000である。ただし、一般式(1)において、Mは1~3価の陽イオンを表す。
【化2】
【0013】
このような構成により、粒子の分散安定性に優れる粒子含有組成物を提供することができる。
【0014】
(2)好ましくは、前記(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維幅は、3nm~5000nmである。
【0015】
このような構成により、粒子の分散安定性により優れる粒子含有組成物を提供することができる。
【0016】
(3)好ましくは、前記(B)粒子の平均粒子径は2500μm以下である。
【0017】
このような構成により、粒子の分散安定性により優れる粒子含有組成物を提供することができる。
【0018】
(4)好ましくは、前記(B)粒子は、金属、金属化合物、粘土鉱物類、水不溶性固体有機化合物、水不溶性固体農薬有効成分および水不溶性固体生理活性物質、ならびに、顔料、難燃剤および充填剤からなる群から選択される1種類以上の粒子である。
【0019】
このような構成により、粒子の分散安定性により優れる粒子含有組成物を提供することができる。
【0020】
(5)本発明の実施形態に係る粒子含有乾燥物は、上記(1)~(4)のいずれかに記載の粒子含有組成物を乾燥させて得られる。
【0021】
このような構成により、(A)化学修飾セルロース繊維をバインダーとして用いた粒子の集積体を得ることができ、粒子の種類に応じた種々の用途に用いることができる。また、当該集積体を水等に浸漬して攪拌することにより、再度、上記の粒子含有組成物を得ることができるため、粒子含有組成物の保存および運搬当に係るコストを抑えることができる。
【0022】
(6)本発明の実施形態に係る粒子含有膜は、上記(1)~(4)のいずれかに記載の粒子含有組成物を乾燥させて得られる。
【0023】
このような構成により、水中での安定性に優れる粒子含有膜を得ることができる。
【0024】
(7)本発明の実施形態に係る粒子含有組成物の製造方法は、上記(1)~(4)のいずれかに記載の粒子含有組成物の製造方法であって、セルロース繊維をスルファミン酸で処理することにより、前記セルロース繊維を硫酸エステル化する化学修飾工程を含む。
【0025】
このような方法により、硫酸エステル化されたセルロース繊維でありながら、高い重合度を有するセルロース繊維を得ることができる。
【0026】
従来のセルロース繊維への硫酸基(たとえば一般式(1)に示す官能基)の導入方法においては、酸性度の高い無水硫酸等を硫酸化試薬として用いていた。しかし、この方法では、セルロースの重合度の低下や製造面での危険性が懸念される
【0027】
一方、セルロース繊維の他の化学修飾方法としては、TEMPO触媒を使用し繊維表面にカルボキシ基を導入する方法(例えば特許文献3)や、繊維表面にリン酸基を導入する方法(例えば非特許文献1)などが知られている。
【0028】
しかし、特許文献3に記載の方法では用いる触媒が高価であり、さらに反応工程も複雑である。また、非特許文献1に記載の方法では、165℃という高温で、かつ数秒~600秒の短時間で処理する必要があるため、反応条件の制御が困難であり、目的とする物性のセルロース繊維が得られにくいといった問題がある。
【0029】
それに対して、本発明の実施形態に係る化学修飾セルロース繊維の調製方法では、安価なスルファミン酸を用いており、反応条件も温和であるために危険性も低く、かつ物性の制御も容易である。さらに、温和な反応条件によって重合度の低下も抑制できるため、高重合度のセルロース繊維を得ることができる。また、導入される官能基は硫酸エステルであるため、他の手法で導入されるカルボキシ基やリン酸基に比べて酸解離定数が小さく、水中においてpH、ならびにイオン性物質の影響を受けにくいために安定性が高いといった特徴もある。
【0030】
以下、本発明の実施形態についてより具体的に説明する。
【0031】
[(A)化学修飾セルロース繊維]
(セルロースI型結晶化度)
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有する。具体的には、たとえば、(A)化学修飾セルロース繊維のセルロースI型結晶化度は50%以上であることが好ましい。セルロースI型結晶化度が50%以上であることにより、セルロース結晶構造に由来する特性を発現することができる。具体的には、増粘性を向上させることができるため、粒子の分散安定性を高めることができる。セルロースI型結晶化度は、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。セルロースI型結晶化度の上限は特に限定されないが、硫酸エステル化の際に反応効率を向上させる観点から、セルロースI型結晶化度は、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本開示において、セルロースI型結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、下記式(2)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100 …(2)
式(2)において、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース繊維全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
【0033】
(置換基)
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維は、たとえば後述のようにスルファミン酸を用いて、セルロース繊維を硫酸エステル化したものある。具体的には、(A)化学修飾セルロース繊維は、セルロースの有する一部の水酸基が下記の一般式(1)で表される置換基によって置換されている。言い換えれば、(A)化学修飾セルロース繊維は、たとえばセルロースが有する水酸基の酸素原子に水素原子に代わって-SO Mが結合した構造を有している。すわなち、(A)化学修飾セルロース繊維には、硫酸基が導入されている。ただし、一般式(1)において、Mは1~3価の陽イオンを表す。
【0034】
【化3】
【0035】
一般式(1)においてMで表される1~3価の陽イオンとしては、たとえば、水素イオン、金属イオン、アンモニウムイオンが挙げられる。なお、当該Mが2価または3価の陽イオンである場合、当該陽イオンは、たとえば、2つまたは3つの-OSO との間でイオン結合を形成する。
【0036】
金属イオンとしては、たとえば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、その他の金属イオンが挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウムが挙げられる。遷移金属としては、鉄、ニッケル、パラジウム、銅、銀が挙げられる。その他の金属としては、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられる。
【0037】
アンモニウムイオンとしては、NH だけでなく、NH の1つ以上の水素原子が有機基に置き換わってできる各種アミン由来のアンモニウムイオンが挙げられる。具体的には、アンモニウムイオンとしては、NH 、第四級アンモニウムカチオン、アルカノールアミンイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。
【0038】
一般式(1)においてMで表される陽イオンとしては、特に限定されないが、保存安定性の観点から、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、または第四級アンモニウムカチオンが好ましい。当該陽イオンは、いずれか1種でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0039】
(置換基の量)
(A)化学修飾セルロース繊維1gあたりが有する一般式(1)の置換基の量(以下、「導入量」とも称する。)は、0.01mmol~3.0mmolであることが好ましい。導入量が3.0mmol/g以下であることにより、セルロース結晶構造を維持することができるため、粒子の分散安定性を向上させることができる。導入量は、2.8mmol/g以下であることがより好ましく、2.5mmol/g以下であることがさらに好ましい。また、セルロース繊維の表面を全体的に置換基で覆うと、セルロース繊維の水中での分散性が向上することにより増粘性が発現し、これにより粒子の分散安定性を向上させることができるため、導入量は、0.01mmol以上/gであることが好ましく、0.05mmol/g以上であることがより好ましく、0.1mmol/g以上であることがさらに好ましい。
【0040】
本開示において、置換基の導入量は、電位差測定により算出される値である。たとえば、原料の未反応物や、それらの加水分解物等の副生成物を洗浄により除去した後、電位差測定の分析を行って算出することができる。具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0041】
(平均重合度)
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度(すなわちグルコースユニットの繰り返し数の平均値)は、100以上である。平均重合度が100以上であることにより、増粘性が向上するため、粒子の分散安定性が高い粒子含有組成物を得ることができる。平均重合度は、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上であり、より好ましくは400以上である。なお、(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度が高いほど、(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維長が大きくなる傾向がある。
【0042】
平均重合度の上限は特に限定されないが、平均重合度は、3000以下であることが好ましく、2500以下であることがより好ましく、2000以下であることがさらに好ましい。
【0043】
本開示において、平均重合度は、粘度法により測定される値である。具体的には、平均重合度は、JIS-P8215に準じて測定された極限粘度数[η]を用いて、下記式(3)により得られる。
平均重合度=(1/Km)×[η] …(3)
ただし、式(3)において、Kmは係数であり、セルロース固有の値である(1/Km=156)。
【0044】
(平均繊維長)
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維長は、粒子の分散安定性を向上させる観点から0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また。上限は特に限定されないが、500μm以下であることが好ましく、300μm以下でもよく、200μm以下でもよい。
【0045】
なお、本開示において、(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維長は、50本のセルロース繊維について顕微鏡観察により測定される各繊維長の平均値である。
【0046】
(平均繊維幅)
(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維幅は、粒子の分散安定性を向上させる観点から、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。また、平均繊維幅は、粒子の分散安定性を向上させる観点から、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.5μmであることがより好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
【0047】
なお、本開示において、(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維幅は、50本のセルロース繊維について顕微鏡観察により測定される各繊維幅の平均値である。
【0048】
[(A)化学修飾セルロース繊維の製造方法]
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、セルロース原料とスルファミン酸とを反応させて、セルロース繊維を硫酸エステル化する工程(化学修飾工程)を含む。
【0049】
(セルロース原料)
化学修飾工程で用いるセルロース原料の具体例としては、植物(たとえば木材、綿、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ、再生パルプ、古紙)、動物(たとえばホヤ類)、藻類、微生物(たとえば酢酸菌)、微生物産生物等を起源とするものが挙げられる。セルロース原料としては、植物由来のパルプが好ましい原材料として挙げられる。
【0050】
植物由来のパルプとしては、たとえば、木材チップ等を原料として得られるケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)が好ましいものとして挙げられる。
【0051】
また、セルロース原料として、本実施形態の目的を阻害しない範囲内で化学修飾された化学変性パルプを使用してもよい。具体的には、たとえば、使用するセルロース原料は、セルロース繊維表面に存在する一部の水酸基が、酢酸、硝酸エステル等のオキソ酸によりエステル化されたものであってもよいし、メチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル、シアノエチルエーテル等のようにエーテル化されたものであってもよい。また、使用するセルロース原料は、TEMPO酸化処理されたものであってもよい。
【0052】
セルロース原料としては、セルロースI型結晶を有し、セルロースI型結晶化度が50%以上であるものを用いることが好ましい。セルロース原料のセルロースI型結晶化度の値は、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。セルロース原料のセルロースI型結晶化度の上限は、特に限定されないが、たとえば98%以下でもよく、95%以下でもよく、90%以下でもよい。
【0053】
セルロース原料の形状は、特に限定されないが、取扱性を高める観点から繊維状、シート状、綿状、粉末状、チップ状、フレーク状が望ましい。
【0054】
(前処理工程)
嵩密度が高いセルロース原料を用いる場合は、化学修飾工程に先立って前処理を行うことにより、嵩密度を低下させてもよい。このような前処理を行うことにより、化学修飾工程において、より効率的に硫酸エステル化を行うことができる。
【0055】
前処理方法としては、特に限定されないが、たとえば機械処理を行うことにより、セルロース原料を適度な嵩密度にすることができる。使用する機械の種類や処理条件については特に限定されないが、使用する機械としては、たとえば、シュレッダー、ボールミル、振動ミル、石臼、グラインダー、ブレンダー、高速回転ミキサー、パルパー、カッターミル、ディスクリファイナー等が挙げられる。嵩密度は、特に限定されないが、たとえば、0.1~5.0kg/mであることが好ましく、0.1~3.0kg/mであることがより好ましく、0.1~1.0kg/mであることがさらに好ましい。
【0056】
(化学修飾工程)
化学修飾工程においては、セルロース原料をスルファミン酸で処理することにより、当該セルロース原料に含まれるセルロース繊維を硫酸エステル化する。具体的には、たとえば、スルファミン酸を含む薬液にセルロース原料を浸漬してセルロース繊維とスルファミン酸とを反応させることにより、セルロース繊維を硫酸エステル化することができる。
【0057】
硫酸エステル化反応を行う薬液は、たとえばスルファミン酸と溶媒とを含む。当該溶媒としては、特に限定されないが、水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール等の炭素数1~12の直鎖あるいは分岐のアルコール; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3~6のケトン; 直鎖または分岐状の炭素数1~6の飽和炭化水素または不飽和炭化水素; ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素; 塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素; 炭素数2~5の低級アルキルエーテル; ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ピリジン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
ここで、溶媒として極性有機溶媒を用いると、セルロース原料の膨潤が促進されて硫酸エステル化の反応速度を高めることができ、また、局所的な反応進行を抑制し繊維表面に均一に硫酸基を導入することができるため、粒子の分散安定性をより高めることができる。極性有機溶媒としては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ピリジン等を上げることができる。
【0059】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、たとえば、セルロース原料の乾燥質量に対して10~10000質量%であることが好ましく、20~5000質量%であることがより好ましく、50~2000質量%であることがさらに好ましい。
【0060】
上記薬液は、さらに触媒を含んでもよい。触媒としては、尿素,アミド類,三級アミン類等が挙げられるが、安価で取扱いが簡便という観点から尿素を用いることが好ましい。触媒の使用量は、特に限定されないが、たとえば、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり0.001~5モルが好ましく、0.005~2.5モルがより好ましく、0.01~2.0モルがさらに好ましい。触媒は、高濃度のものをそのまま用いてもよく、溶媒で希釈して用いてもよい。塩基性触媒の添加方法は、一括添加、分割添加、連続的添加、またはこれらの組合せで行うことができる。
【0061】
セルロース繊維を硫酸エステル化する際の薬液の温度は、0~100℃が好ましく、10~80℃がより好ましく、20~70℃がさらに好ましい。薬液の温度が高すぎるとセルロース分子内のグリコシド結合が切断してしまうことにより(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度が低下してしまう。一方、薬液の温度が低すぎると、反応に時間を要してしまう。硫酸エステル化に要する時間は、通常30分~5時間程度である。
【0062】
スルファミン酸の使用量は、セルロース繊維への置換基の導入量を考慮して適宜調整することができる。スルファミン酸は、たとえば、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり、0.01~50モル使用することが好ましく、0.1~30モル使用することがより好ましい。
【0063】
着色の少ない製品を得るために、硫酸エステル化反応の際に、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスや炭酸ガスを導入してもよい。これらの不活性ガス等の導入方法としては、不活性ガス等を反応槽に吹き込みながら反応を行う方法、反応前に反応槽内を不活性ガス等で置換した後、反応槽を密閉して反応を行う方法、およびその他の方法のいずれでもよい。
【0064】
スルファミン酸は、無水硫酸や硫酸水溶液等に比べて、酸解離定数(pKa)が大きく反応溶液中に存在する水素イオンが少ないため、セルロース中のグリコシド結合を切断することなくグルコースの重合状態を維持することが可能である。つまり、スルファミン酸を用いてセルロース繊維を硫酸エステル化することにより、平均重合度が高いままの(A)化学修飾セルロース繊維を得ることができる。
【0065】
また、スルファミン酸は、強酸性かつ高腐食性のある無水硫酸や硫酸水溶液等と異なり、取り扱いに関して制限がなく、また、大気汚染防止法の特定物質にも指定されていないことからも分かるように、環境に対する負荷が小さい。すなわち、スルファミン酸を用いてセルロース繊維を硫酸エステル化することにより、各種の管理コストを含む製造コストを抑制することができる。
【0066】
なお、化学修飾工程の後、必要に応じて別の化学修飾工程を設けてもよい。当該別の化学修飾工程としては、たとえば、硫酸エステル化されなかったセルロース繊維表面に存在する一部の水酸基を、酢酸、硝酸等のオキソ酸によりエステル化する工程であってもよいし、当該一部の水酸基をメチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル、シアノエチルエーテル等のようにエーテル化する工程であってもよいし、セルロース繊維をTEMPO酸化処理する工程であってもよい。
【0067】
(中和工程)
たとえば、化学修飾工程の後、ろ過等により、化学修飾セルロース繊維を溶媒から分離し、得られた膨潤状態の化学修飾セルロース繊維を水に分散させる。そして、セルロース繊維の分散液に塩基性化合物を添加することにより、当該分散液を中和する。これにより、化学修飾セルロース繊維の有する-OSO と塩基性化合物に由来する陽イオンとがイオン結合を形成する。
【0068】
このように分散液に塩基性化合物を添加してpH値を中性あるいはアルカリ性に調整することにより、化学修飾セルロース繊維自体の保存安定性を向上させることができる。具体的には、中和工程を行うことにより、(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度を高いまま維持することができる。
【0069】
中和に用いる塩基性化合物としては、特に限定されないが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、その他の無機塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、塩基性乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、アンモニア,メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミンが挙げられる。なお、中和には、一種類の塩基性化合物を単独で用いてもよいし、二種類以上の塩基性化合を併用してもよい。
【0070】
(洗浄工程)
たとえば、硫酸エステル化試薬残渣、残留触媒、溶媒などの除去の目的、あるいは反応停止の目的で、化学修飾セルロース繊維を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄工程においては、化学修飾セルロース繊維を、水を用いて洗浄することが好ましい。
【0071】
洗浄方法は、特に限定されないが、化学修飾セルロース繊維を分散媒である水からろ過等により分離し、得られた膨潤状態の化学修飾セルロース繊維を、別途用意した水に再度分散させる。このような工程を1回または複数回行うことにより、化学修飾セルロース繊維を洗浄することができる。なお、化学修飾セルロース繊維は、遠心沈降法、プレス処理等により分散媒から分離させてもよい。なお、ここでは、一例として化学修飾セルロース繊維を水で洗浄する方法について説明したが、有機溶媒等の他の液体で洗浄しても良い。
【0072】
(微細化処理工程)
セルロース原料は、セルロース繊維の繊維長が比較的小さい場合、化学修飾工程等を経ることにより、機械的な解繊処理を行わなくてもある程度解繊する。一方、セルロース原料は、セルロース繊維の繊維長が比較的大きい場合には、化学修飾工程等を経るだけではほとんど解繊しない。このような場合、たとえば、中和工程および洗浄工程を経たセルロース原料を脱水して水の量を調整した後、機械的な解繊処理(微細化処理工程)を行うことにより、解繊した化学修飾セルロース繊維を得ることができる。なお、本実施の形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維は、微細化処理工程を経たものであってもよいし、経ていないものであってもよい。
【0073】

微細化処理工程に用いる装置としては、たとえば、マイクロフルイタイザー、リファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル(具体的には、ロッキングミル、ボールミル、ビーズミル等)、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等が挙げられる。
【0074】
[(B)粒子]
本実施の形態に係る(B)粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、分散安定性が高い粒子含有組成物を得る観点から、2500μm以下であることが好ましく、2000μm以下であることがより好ましく、1500μm以下であることがさらに好ましい。
【0075】
本開示において、「平均粒子径」は、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。具体的には、平均粒子径は、下記の装置で測定することができる。
メーカー:株式会社島津製作所
装置名:レーザ回折式粒度分布測定装置 SALD-2300
【0076】
(B)粒子の形状は、球状、板状、針状等のいずれでもよく、また多孔質であってもよい。
【0077】
(B)粒子は、無機化合物または有機化合物を含む粒子である。具体的には、(B)粒子としては、たとえば、金属、金属化合物、粘土鉱物類、水不溶性固体有機化合物、水不溶性固体農薬有効成分および水不溶性固体生理活性物質、ならびに、顔料、難燃剤および充填剤があげられる。(B)粒子としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。なお、(B)粒子は、これらの粒子に撥水化処理を行ったものであってもよい
【0078】
(金属および金属化合物)
金属および金属化合物としては、たとえば、亜鉛末、アトマイズ青銅粉、アトマイズ鉄粉、アルミニウム粉、鋳物粉、インコニッケルパウダー、金属ベリリウム粉末、金粉、銀粉、タングステン粉末、鉱石還元鉄粉、酸化バナジウム、三酸化タングステン、錫粉、炭化タングステン、タンタル還元粉末、チタン粉末、鉄粉、電解銅粉、電解鉄粉、還元銅粉、ニッケルコートグラファイト、ニッケル球状粉末、ニオブ粉砕粉末、ニッケル粉、噴霧ステンレス鋼粉、噴霧銅粉、モリブデン、レニウム、アルミナ単結晶微粒、黄色酸化鉄、オキシイットリウム蛍光体、活性アルミナ、ガンマ酸化第二鉄、ガンマヘマタイト、硫化カドミウム、硫化亜鉛、酸化イットリウム、酸化イットリウム蛍光体、酸化カドミウム、酸化バナジウム、酸化マグネシウム、酸化ユーロピウム、バリウムフェライト磁性粉、ジルコン酸カルシウム、水酸化ニッケル、チタン酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、タンタルフレーク粉末、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、鉛粉、二酸化テルル、バリウムフェライト磁粉、バリウムフェライト、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、マンガンジンクフェライト磁粉、硫化亜鉛蛍光体、硫化亜鉛カドミウム蛍光体、二硫化モリブデン等が挙げられる。
【0079】
(粘土鉱物類)
粘土鉱物類としては、たとえば、蛙目粘土、カオリナイト、カオリン、カルシウムベントナイト、クロマイトサンド、けい砂、けい砂シリカ、珪酸ジルコニウム、けい石粉、珪藻土、窒化アルミニウム、炭酸バリウム、サポナイト、ダイヤモンド、コレマナイト、酸化ガドリニウム、酸化ランタン、シャモット、焼成珪藻土、シラス、シラスバルーン、シリコンカーバイド、ジルコン砂、ジルコン、ジルコンフラワー、水酸化アルミニウム、ゼオライト、石英ガラス粉、セリウム研磨剤、セリサイト、ソジウムベントナイト、ソジウムモンモリトナイト、タルク、炭化ホウ素、窒化珪素、長石粉、陶石、ハロサイト、硼砂、マグネシア、木節粘土、蝋石、パーライト、セメント等が挙げられる。
【0080】
(水不溶性固体有機化合物)
水不溶性固体有機化合物としては、たとえば、活性炭、アセチレンブラック、N-アシルリジン、フスマ、抹茶、融点が40℃以上のワックス類等が挙げられる。
【0081】
(水不溶性固体農薬有効成分)
水不溶性固体農薬有効成分としては、たとえば、水に対する溶解度が1%以下で固体である、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤、誘引剤、殺鼠剤、展着剤等があげられ、具体的には、社団法人日本植物防疫協会発行の農薬要覧(2008年版)に記載されている農薬有効成分のうち、水に対する溶解度が1%以下で固体である化合物等が挙げられる。上記殺虫剤としては、たとえば、水に対する溶解度が1%以下で固体である、有機リン系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、ネライストキシン系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤、昆虫成長制御剤、その他の合成殺虫剤、天然殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、くん蒸剤、生物由来の殺虫剤等が挙げられる。上記殺菌剤としては、たとえば、水に対する溶解度が1%以下で固体である、銅殺菌剤、無機殺菌剤、有機硫黄殺菌剤、有機リン系殺菌剤、メラニン生合成阻害剤、ベンゾイミダゾール系殺菌剤、ジカルボキシイミド系殺菌剤、酸アミド系殺菌剤、ステロール生合成阻害剤、メトキシアクリレート系殺菌剤、合成抗細菌剤、土壌殺菌剤、その他の合成殺菌剤、抗生物質殺菌剤、天然物殺菌剤、生物由来の殺菌剤等が挙げられる。上記除草剤としては、たとえば、水に対する溶解度が1%以下で固体である、フェノキシ酸系除草剤、カーバメート系除草剤、酸アミド系除草剤、尿素系除草剤、スルホニル尿素系除草剤、ピリミジルオキシ安息香酸系除草剤、トリアジン系除草剤、ダイアジン系除草剤、ダイアゾール系除草剤、ビピリジリウム系除草剤、ジニトリロアニリン系除草剤、芳香族カルボン酸系除草剤、脂肪酸系除草剤、有機リン系除草剤、アミノ酸系除草剤、その他の有機除草剤、無機除草剤、生物由来の除草剤等が挙げられる。
【0082】
(水不溶性固体生理活性物質)
水不溶性固体生理活性物質としては、たとえば、第15改正日本薬局方に収載の化合物のうち、日本薬局方溶解試験の水に対する溶解性試験結果が、「やや溶けにくい」、「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」、「ほとんど溶けない」に分類される固体化合物等が挙げられる。また、上記水不溶性固体生理活性物質は、「医薬部外品原料規格 2006年版」(薬事日報社刊行)に記載の化合物のうち、水に対する溶解度が1%未満の固体化合物も挙げられる。
【0083】
(充填剤、顔料)
充填剤、顔料としては、たとえば、亜鉛華、亜酸化銅、一酸化鉛、ウィスカー状炭酸カルシウム、ウォッチングレッド、マイカ、塩素法酸化チタン顔料、オイルファーネスブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、オキシサルファイド蛍光体、カオリンクレー、滑石、石筆石、石鹸石、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、燐酸カルシウム、ガラスビーズ、球状アルミナ、群青、硅灰石、ワラストナイト、蛍光顔料、軽質炭酸カルシウム、合成ハイドロタルサイト、合成マイカ、黒鉛、黒色酸化鉄、極微細炭酸カルシウム、コバルト青、コバルト緑、コバルト紫、胡粉、紺青、サーマルブラック、酸化クロム、酸化チタン(アタナース)、酸化チタン(ルチル)、酸化テルビウム、酸化銅、ジスアゾイエロー、重質炭酸カルシウム、焼成クレー、シルクパウダー、消石灰、赤色酸化鉄、セリナイト、造粒カーボンブラック、炭化ケイ素ウイスカー、炭酸カルシウム、炭素繊維(粉状)、窒化ケイ素ウイスカー、窒化ホウ素、茶色酸化鉄、超微粒アルミナ、超微粒酸化亜鉛、超微粒子状酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、鉄黒、天然黒鉛粉末、天然土状黒鉛、ドロマイト粉末、ナイロン粉体、表面処理硫酸バリウム、フッ化カーボン、ポリエチレンワックス、ベンガラ、ホワイトカーボン、モリブデンレッド等が挙げられる。
【0084】
充填剤、顔料としては、さらに、チャンネルブラック、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、バナデート蛍光体、微粒子酸化チタン、微粒子硫酸バリウム、微粒子水酸化アルミニウム、ファストイエロー10G、丸味状アルミナ、有機ベントナイト、溶融シリカ、ロウ石、六方晶窒化ホウ素等が挙げられる。
【0085】
(難燃剤)
難燃剤としては、たとえば、水酸化アルミニウム、アンチモン系難燃剤、水酸化マグネシウム、芳香族系リン酸エステル難燃剤、脂肪族系リン酸エステル難燃剤、脂肪族含ハロゲンリン酸エステル難燃剤、芳香族含ハロゲンリン酸エステル難燃剤、反応型リン酸エステル難燃剤等が挙げられる。
【0086】
本実施の形態に係る粒子含有組成物は、少なくとも(A)化学修飾セルロース繊維、(B)粒子、および(C)水を含んでいるが、それ以外の成分を含んでもよい。当該それ以外の成分としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤類;アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、芳香族類等の水と混和し得る溶剤および水と混和しない溶剤類;ジオール化合物、グリセリンとその誘導体、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、ショ糖、ブドウ糖、果糖等のグリコール類や糖類;天然水溶性高分子、合成水溶性高分子、セルロース誘導体、アクリル系ポリマー等の水溶性高分子類;シリコンオイル類、植物油、動物油、合成油等のオイル類;保湿剤、防腐剤・保存安定剤、無機塩類、紫外線遮蔽剤、ラテックス類、エマルジョン類、消泡剤、pH緩衝剤(pH調整剤)、香料類・消臭剤類、アミノ酸類・ビタミン類、生薬類等が挙げられる。
【0087】
(B)粒子の(C)水へ分散には、たとえば、真空乳化装置、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、湿式粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等を用いることができる。なお、粒子径等の(B)粒子の物性や、任意の添加剤の物理化学的性質に応じて、用いる装置の種類や操作条件を選択することが好ましい。
【0088】
本実施形態において、粒子含有組成物にの(A)化学修飾セルロース繊維(固形分)の含有比率は、粒子を安定的に均一に分散させる観点から、0.05~10.0質量%の範囲が好ましく、0.1~5.0質量%の範囲であることがより好ましく、0.1~3.0質量%の範囲であることがより好ましく、0.1~1.0質量%の範囲であることがさらに好ましく、0.1~0.5質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0089】
(A)化学修飾セルロース繊維の含有量を変更することにより本実施形態に係る粒子含有組成物の粘度を調整することができる。具体的には、(A)化学修飾セルロース繊維の量を増やせば粒子含有組成物の粘度を上げることができ、(A)化学修飾セルロース繊維の量を減らせば粒子含有組成物の粘度を下げることができる。
【0090】
また、粒子含有組成物の粘度は(B)粒子の含有比率によっても左右される。(B)粒子の含有比率は、粘度が高くなりすぎることを回避する観点から、粒子含有組成物全体の70質量%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。粒子含有組成物における(B)粒子の含有量の下限については、特に制約はない。たとえば、(B)粒子が生理活性物質等であって、当該生理活性物質等が極めて低濃度で効果を発揮する場合には、(B)粒子の含有割合を極めて小さくしても有用な粒子含有組成物が得られる。
【0091】
本実施形態に係る粒子含有組成物における(A)化学修飾セルロース繊維と(B)粒子との混合比(質量比)は、粒子の分散安定性の観点から、[(A)化学修飾セルロース繊維(固形分)]/[(B)粒子]=(1/10000)~1000の範囲が好ましく、(1/100)~100の範囲がより好ましい。
【0092】
本実施形態に係る粒子含有組成物は、配合する(B)粒子の種類に応じて、たとえば、化粧品、塗料、インキ、農薬、防疫薬剤、医薬品、電子材料、難燃剤、家庭雑貨、洗浄剤等の用途に用いることができる。
【0093】
(粒子含有乾燥物)
本実施形態に係る粒子含有組成物を乾燥させることにより、粒子含有乾燥物を得ることができる。つまり、本実施形態に係る粒子含有乾燥物は、(A)化学修飾セルロース繊維と(B)粒子とを含む。より具体的には、本実施形態に係る粒子含有乾燥物は、(A)化学修飾セルロース繊維をバインダーとした(B)粒子の集積体である。粒子含有組成物の乾燥方法としては、特に限定されないが、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、固定床乾燥、真空式、送風式等を挙げることができる。
【0094】
本実施形態に係る粒子含有乾燥物は、たとえば、ブロック状、フレーク状、顆粒状、粉末状および膜状等のうちのいずれかである。たとえば、粒子含有組成物の乾燥方法を選択したり、得られた粒子含有乾燥物に対して粉砕等の機械的な処理行ったりすることにより、所望の状態の粒子含有乾燥物を得ることができる。
【0095】
本実施形態に係る粒子含有乾燥物は、具体的には、口紅、ファンデーション、アイブロウ、チークカラー等のメイクアップ化粧料、塗装剤、インク釉薬等の材料に用いることができる。
【0096】
(粒子含有膜)
本実施形態に係る粒子含有組成物を乾燥させることにより、粒子含有膜を得ることができる。つまり、本実施形態に係る粒子含有膜は、(A)化学修飾セルロース繊維と(B)粒子とを含む。
【0097】
本実施形態に係る粒子含有膜は、上述の粒子含有乾燥物の1つの形態である。本実施形態に係る粒子含有膜としては、たとえば、粒子含有組成物が塗料である場合における塗膜が例示される。
【実施例
【0098】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[(A)化学修飾セルロース繊維の調製]
まず、実施例に用いる各(A)化学修飾セルロース繊維を下記の製造例1~3に従って調製する。
【0100】
(製造例1)
セパラブルフラスコにスルファミン酸52.8g、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)620gを投入し、30分間攪拌を行った。その後、室温下、セルロース原料として針葉樹クラフトパルプ(結晶化度85%)20.0gを投入した。ここで、硫酸エステル化試薬であるスルファミン酸の使用量は、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり4.4モルとした。55℃で4時間反応させた後、室温まで冷却した。次に繊維を取り出し水で洗浄した後、中和剤として2N水酸化ナトリウム水溶液に投入してpHを7.6にし、脱水を行った後、固形分濃度が1.0%になるように水で希釈した。その後、微細化処理工程としてマイクロフルイタイザーによる処理(150MPa、1パス)を行うことで、化学修飾セルロース繊維A1(表中では「A1」と表記する)の水分散体を得た。
【0101】
(製造例2)
スルファミン酸の仕込量を26.4gとしたこと以外は、製造例1と同様の手順により、化学修飾セルロース繊維A2(表中では「A2」と表記する)の水分散体を得た。
【0102】
(製造例3)
微細化処理工程を行わないこと以外は、製造例2と同様の手順により、固形分濃度が1.0%の水分散体を得た。この水分散体150gをセパラブルフラスコに移し、臭化ナトリウム0.25g、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)0.025gを加え攪拌した。pHが10-11となるよう0.5N水酸化ナトリウム水溶液を適量投入しながら、13%次亜塩素酸ナトリウム6.6gを滴下した。45分間酸化反応させ、pHに変化が見られなくなったことを確認した後、0.1N塩酸を加えてpH=7.0とした。脱水を行った後、固形分濃度が1.0%になるように水で希釈した。その後、微細化処理工程としてマイクロフルイタイザーによる処理(150MPa、1パス)を行うことで、化学修飾セルロース繊維A3(表中では「A3」と表記する)の水分散体を得た。
【0103】
製造例1~3により得られた各(A)化学修飾セルロース繊維について、
(1)(A)化学修飾セルロース繊維1gが有する硫酸基量、
(2)(A)化学修飾セルロース繊維1gが有するカルボキシ基量、
(3)平均重合度、
(4)平均繊維幅、および
(5)結晶化度を測定した。
測定結果を表1に示す。各測定の詳細については、以下に示す。
【0104】
(1)硫酸基量(mmol/g)
硫酸基量は電位差測定により算出した。詳細には、乾燥重量を精秤した硫酸エステル化セルロース繊維試料から固形分率0.5質量%に調製した硫酸エステル化セルロース繊維の水分散体を60ml調製し、0.1N塩酸水溶液によってpHを約1.5とした後、ろ過、水洗浄し、繊維を再び固形分率0.5質量%となるよう水に再分散させ、0.1N水酸化カリウム水溶液を滴下して電位差滴定を行った。0.1N水酸化カリウムの滴下量から硫酸基量を算出した。
【0105】
(2)カルボキシ基量(mmol/g)

カルボキシ基量は電位差測定により算出した。詳細は(1)硫酸基量の測定と同様の手法で行った。カルボキシ基量の算出は、TEMPO酸化を行った試料の0.1N水酸化カリウムの滴下量と、TEMPO酸化を行う前の試料(硫酸エステル化後)の0.1N水酸化カリウムの滴下量の差分で算出した。
【0106】
(3)平均重合度
(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度は粘度法により算出した。詳細には、JIS-P8215に準じて極限粘度数[η]を測定し、下記式(3)より平均重合度(DP)を求めた。ただし、式(3)において、Kmは係数であり、セルロース固有の値である(1/Km=156)。
DP=(1/Km)×[η] …(3)
【0107】
(4)平均繊維幅(nm)
(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維幅の測定は、電子顕微鏡(TEM)で行った。詳細には、親水化処理済みのカーボン膜被覆をグリット状にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:1000~10000倍)で観察した繊維50本の繊維幅の各平均値を算出し、平均繊維幅とした。
【0108】
(5)結晶化度(セルロースI型結晶化度)(%)
(A)化学修飾セルロース繊維のX線回折強度をX線回折法にて測定し、その測定結果からSegal法を用いて下記式(2)により算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100 …(2)
式(2)において、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。また、サンプルのX線回折強度の測定は、株式会社リガク製の「RINT2200」を用いて以下の条件にて実施した。
X線源:Cu/Kα-radiation
管電圧:40Kv
管電流:30mA
測定範囲:回折角2θ=5~35°
X線のスキャンスピード:10°/min
なお、上記のセルロース原料の結晶化度についても同様に測定した。
【0109】
【表1】
【0110】
[粒子分散組成物の調整]
(実施例1~13、比較例1,2)
次に、製造例1~3により得られた(A)化学修飾セルロース繊維の水分散体等を用いて粒子含有組成物を調整した。具体的には、表2および表3に示す配合量の割合となるように、(A)化学修飾セルロース繊維の水分散体またはセルロースナノクリスタルの水分散体、(B)粒子、および(C)水を混合し、ホモミキサーを用いて7000rpmで10分間分散処理を行うことにより、実施例1~13および比較例1,2の粒子含有組成物を調製した。
【0111】
表2および表3には、配合する各成分の粒子含有組成物全体に占める比率と、後述する各評価の結果も示す。比較例で使用したセルロースナノクリスタルについては、次の手順で調製した。
【0112】
(セルロースナノクリスタル)
セパラブルフラスコに64%硫酸100mL、針葉樹クラフトパルプ2gを投入し、50℃で1時間加熱した。十分に冷却した後、別の水1000mLの入ったセパラブルフラスコに反応液を少量ずつ投入した。遠心分離した後、1N水酸化ナトリウムで中和し、脱水した。粗大繊維を金属メッシュでろ過により取り除くことでセルロースナノクリスタルを得た。当該セルロースナノクリスタルのセルロースの平均重合度は90であり、平均繊維幅は40nmであった。当該平均重合度および当該平均繊維幅は、(A)化学修飾セルロース繊維と同様に測定した。
【0113】
[評価]
得られた各粒子含有組成物について、粘度および分散安定性を評価した。また、各粒子含有組成物を用いて作成した粒子含有膜について、水中での皮膜安定性を評価した。以下に評価方法および評価基準を示す。
【0114】
(粘度)
得られた粒子含有組成物を25℃環境下に24時間静置した後、BH型粘度計を用いて回転数6.0rpm、25℃、3分の条件で粘度[mPa・s]測定した。
【0115】
(分散安定性)
得られた粒子含有組成物を、直径3cm×30cm長の目盛付試験管に25mL投入し、25℃で7日間静置し、下式より分散安定性を測定した。ここでの分散相とは(A)化学修飾セルロース繊維と(B)粒子が分散している層のことを指す。
分散安定性(%)=分散相の体積(mL)/25×100
評価基準を以下に示す。
++:分散安定性が95%以上100%以下
+:分散安定性が90%以上95%未満
-:分散安定性が90%未満
【0116】
(皮膜安定性)
表面をコロナ処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、粒子含有組成物15gを10cm×10cmの正方形となるように塗布した。それを50℃のオーブンで3時間乾燥させることにより、粒子含有膜を形成した。冷却した後、PETフィルムが水平となるよう水中に浸漬させた。3分間経過時に、粒子含有膜全体のうちの皮膜が崩壊している面積の割合の測定を行った。具体的には、透明方眼シート(マス目が印刷された透明のシート)を皮膜上に配置し、当該透明方眼シートを介して粒子含有膜を目視しながら、皮膜が崩壊している部分の面積を測定した。
++:皮膜崩壊面積が5%未満
+:皮膜崩壊面積が5%以上10%未満
-:皮膜崩壊面積が10%以上
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
表2および表3を参照して、本実施の形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維を含む粒子含有組成物においては、粒子が長い期間にわたって安定的に分散していることが分かる。また、当該粒子含有組成物から得られた粒子含有膜組成物は、水中での皮膜安定性が高いことが分かる。ここで、実施例8は、他の実施例と比べて、分散安定性および皮膜安定性がわずかに劣っている。これは、実施例8で使用した化学修飾セルロース繊維A2が、化学修飾セルロース繊維A1または化学修飾セルロース繊維A3と比べて、硫酸基が少なく、かつ平均繊維幅が大きいためであると考えられる。
【0120】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。