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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221212BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221212BHJP
   G03B 13/02 20210101ALI20221212BHJP
   G03B 17/00 20210101ALI20221212BHJP
   G03B 17/04 20210101ALI20221212BHJP
   G03B 17/18 20210101ALI20221212BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
H04N5/232 930
H04N5/225 450
G03B13/02
G03B17/00 Q
G03B17/04
G03B17/18 Z
G03B17/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018180670
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020053806
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】長田 陽一
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-023723(JP,A)
【文献】特開2000-050117(JP,A)
【文献】特開2005-101779(JP,A)
【文献】国際公開第2017/081927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
H04N 5/225
G03B 13/02
G03B 17/00
G03B 17/04
G03B 17/18
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の本体の背面に設けられ、第1の回転軸を中心として上方へ回転可能な第1の表示部と、
収納位置と使用位置との間で移動可能な接眼部を有する第2の表示部と、
前記接眼部が前記使用位置にあるか否かを検知する第1の検知手段と、
前記接眼部への物体の近接を検知する第2の検知手段と、
前記第1の検知手段による検知結果と前記第2の検知手段による検知結果に基づいて前記第1の表示部と前記第2の表示部での表示を制御する制御手段と、を備え、
前記接眼部が前記使用位置にある場合に前記第1の表示部の回転角度が所定の角度に達すると前記第1の表示部は前記接眼部に当接し、
前記第1の表示部を前記所定の角度を超えて回転させると前記第1の表示部によって前記接眼部が前記使用位置から前記収納位置へ向けて押し込まれることにより、前記第1の検知手段は前記接眼部が前記使用位置にないことを検知し、
前記制御手段は、前記第2の検知手段が前記接眼部へ物体の近接の有無を検知した結果に対して設定された所定の制御を、前記接眼部が前記使用位置にあることを前記第1の検知手段が検知している状態では有効とし、前記接眼部が前記使用位置にないことを前記第1の検知手段が検知している状態では無効とすることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記所定の制御は、前記第2の検知手段が物体の近接を検知している場合に前記第1の表示部での表示を行わずに前記第2の表示部での表示を行い、前記第2の検知手段が物体の近接を検知していない場合に前記第2の表示部での表示を行わずに前記第1の表示部での表示を行う制御であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の表示部は、前記第1の回転軸と略平行な第2の回転軸を中心として下方へ回転可能に配置され、
前記第2の回転軸まわりの回転に必要な摺動トルクは、前記第1の表示部を回転させることによって前記接眼部を前記収納位置へ向けて押し込む動作に必要とする力の反力によって生じる前記第2の回転軸まわりの回転トルクよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の表示部は、前記第1の表示部の回転角度が所定の角度に達したときに前記接眼部に当接するリブを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第2の検知手段は、前記第1の表示部の上枠部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第2の検知手段は、前記撮像装置の本体の背面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第2の検知手段は、前記接眼部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像装置の本体の背面に設けられ、第1の回転軸を中心として上方へ回転可能な第1の表示部と、
収納位置と使用位置との間で移動可能な接眼部を有する第2の表示部と、
前記接眼部が前記使用位置にあるか否かを検知する第1の検知手段と、
前記接眼部への物体の近接を検知する第2の検知手段と、
前記第1の検知手段による検知結果と前記第2の検知手段による検知結果に基づいて前記第1の表示部と前記第2の表示部での表示を制御する制御手段と、を備え、
前記第2の表示部は、前記接眼部が収納位置にある状態で、前記撮像装置の本体の内部へ更に収納可能であり、
前記制御手段は、前記第2の検知手段が前記接眼部へ物体の近接の有無を検知した結果に対して設定された所定の制御を、前記接眼部が前記使用位置にあることを前記第1の検知手段が検知している状態では有効とし、前記接眼部が前記使用位置にないことを前記第1の検知手段が検知している状態では無効とすることを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
前記第1の表示部は、略180°回転が可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表示装置を備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子から出力される画像信号(画像情報)をデータファイルとして記憶するデジタルカメラ等の撮像装置が広く普及している。一般的にこのような撮像装置は、撮像時の被写体像確認や撮影画像の再生表示等に用いられる液晶ディスプレイ等の表示装置が撮像装置本体の背面に配置された構造を有している。そして、撮像装置本体の背面に配置された表示装置が撮像装置本体に対してヒンジ装置によって回転可能に配置されたものが知られている。例えば、被写体に対する撮像装置の位置や向きを変化させた際に撮像装置本体の背面に設けられた表示装置を回転させて表示装置の表示面を撮影者へ向けることにより、撮影者は表示面と正対した状態で被写体を確認することができる。
【0003】
また、回転可能な表示装置を備える撮像装置の中には、表示装置を上方へ略180°回転可能に構成されたものがある。なお、表示装置を上方へ略180°回転させるとは、表示装置の上辺を回転軸として、下辺が円弧を描くように略180°回転させることを指す。表示装置が上方へ略180°回転操作された状態では、表示装置の表示面は被写体側に向けられる。これにより、撮影者が自身を被写体として被写体像を確認しながら撮影を行う、いわゆる自分撮り撮影(自撮り)に適した撮影ポジションの提供が可能となる。
【0004】
一方、撮像装置本体の背面に設けられる表示装置とは別に、小型ディスプレイ、レンズ及び接眼窓を内蔵し、接眼窓を覗き込むことで被写体像や再生画像の確認(視認)を可能とする電子ビューファインダを備える撮像装置が知られている。例えば、特許文献1には、非使用時には撮像装置本体内に収納され、使用時には撮像装置本体から突出することで電子ビューファインダとして使用可能になる撮像装置が開示されている。特許文献1に開示された撮像装置では、撮像装置本体の背面に設けられた表示装置が前述したように略180°上方へ回転可能であり、撮像装置本体の背面側上部に物体の近接を検知する検知センサが設けられている。そして、この検知センサが顔の近接を検知すると電子ビューファインダへの画像表示を開始し、撮像装置本体の背面に設けられた表示装置での情報表示を停止する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-227901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、表示装置を上方へ所定角度回転させた際に表示装置が検知センサの検知範囲内に入ってしまうことで、撮像装置本体の背面に配置された表示装置での表示が予期せずオフして(消えて)しまうことがある。
【0007】
本発明は、回転可能に配置された表示装置を含む複数の表示装置を備える撮像装置において、回転可能な表示装置での回転角度に応じて、情報を表示する表示装置を適切に切り替えることが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る撮像装置は、撮像装置の本体の背面に設けられ、第1の回転軸を中心として上方へ回転可能な第1の表示部と、収納位置と使用位置との間で移動可能な接眼部を有する第2の表示部と、前記接眼部が前記使用位置にあるか否かを検知する第1の検知手段と、前記接眼部への物体の近接を検知する第2の検知手段と、前記第1の検知手段による検知結果と前記第2の検知手段による検知結果に基づいて前記第1の表示部と前記第2の表示部での表示を制御する制御手段と、を備え、前記接眼部が前記使用位置にある場合に前記第1の表示部の回転角度が所定の角度に達すると前記第1の表示部は前記接眼部に当接し、前記第1の表示部を前記所定の角度を超えて回転させると前記第1の表示部によって前記接眼部が前記使用位置から前記収納位置へ向けて押し込まれることにより、前記第1の検知手段は前記接眼部が前記使用位置にないことを検知し、前記制御手段は、前記第2の検知手段が前記接眼部へ物体の近接の有無を検知した結果に対して設定された所定の制御を、前記接眼部が前記使用位置にあることを前記第1の検知手段が検知している状態では有効とし、前記接眼部が前記使用位置にないことを前記第1の検知手段が検知している状態では無効とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転可能に配置された表示装置を含む複数の表示装置を備える撮像装置において、回転可能な表示装置での回転角度に応じて、情報を表示する表示装置を適切に切り替えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の斜視図である。
図2】撮像装置が備える表示装置の分解斜視図である。
図3】撮像装置の本体と表示装置とを連結するヒンジ装置の分解斜視図である。
図4】撮像装置の分解斜視図である。
図5】表示装置が取り得る姿勢の典型例を説明する斜視図である。
図6】撮像装置が備える電子ビューファインダ装置の分解斜視図である。
図7】電子ビューファインダ装置を構成するベースユニットの分解斜視図と矢視A-A断面図である。
図8】電子ビューファインダ装置の動作を説明する側面図である。
図9】表示装置の姿勢と近接センサの検知範囲の関係を説明する側面図である。
図10】電子ビューファインダ装置が使用可能な状態、且つ、表示装置を所定の角度へ回転させた状態での撮像装置の側面図である。
図11】参考例に係る撮像装置の側面図である。
図12】表示装置にリブを設けた構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1(a)は、第1実施形態に係る撮像装置1を略正面側から見た斜視図である。図1(b)は、撮像装置1を略背面側から見た斜視図である。なお、図1(b)に示す部位や部品であって、図1(a)に符号で示した部位や部品との対応が明らかなものについては、図1(b)での符号の記載を省略している。また、以下の説明で、上下方向及び左右方向を指す表現は、その都度説明する場合を除いて、撮像装置1が図1に示すように正姿勢にある状態を前提とする。
【0013】
撮像装置1の本体内には光学像を光電変換して画像データを生成するCCDやCMOS等の不図示の撮像素子(イメージセンサ)が配置されており、撮像装置1の前面には被写体像を撮像素子に結像させる撮影レンズを有する鏡筒ユニット2が配置されている。なお、撮像装置1の本体とは、撮像装置1から鏡筒ユニット2と後述する表示装置及びヒンジ装置を除いた略直方体形状を有する部分(筐体)を指す。
【0014】
鏡筒ユニット2は沈胴式で、撮影時には撮像装置1から繰り出され、非撮影時(収納時)には図1に示すように撮像装置1の本体内部へ沈胴している。なお、撮像装置1の本体内には、撮像素子から出力される電気信号(画像信号)をデジタル情報からなる画像データに変換する処理回路が実装されている不図示の主基板や補助基板等が配置されている。
【0015】
撮像装置1の上面には、ストロボ装置3、ストロボボタン4、レリーズボタン5、ズームレバー6、電源ボタン7、マイク穴8、モード設定ダイヤル9及び電子ビューファインダ装置10(第2の表示部、以下「EVF10」と記す)が設けられている。撮像装置1の一方の側面には操作レバー11が設けられており、撮像装置1の他方の側面にはジャックカバー12が設けられている。撮像装置1の背面には、操作ボタン群13、近接センサ窓部14及び表示装置20(第1の表示部)が設けられている。
【0016】
ストロボ装置3は、図1に示した状態では撮像装置1の本体内に収納されている。被写体の明るさが足りない撮影時等にストロボボタン4を押下することで、被写体側を向いた発光窓を撮像装置1から突出させることができる。ストロボ装置3の発光部(不図示)を発光させることにより、閃光照射による被写体撮影(ストロボ撮影)を行うことができる。撮像装置1から突出したストロボ装置3は、その天面を撮像装置1へ押し込むように操作することにより、撮像装置1の本体内に収納された状態へ戻すことができる。
【0017】
レリーズボタン5は、2段階の押圧操作が可能な構成となっている。レリーズボタン5の1段目の半押し操作により撮影準備動作(測光動作(AE)や測距動作(AF)等)が開始され、レリーズボタン5の2段目の全押し操作により被写体撮影、被写体像の画像データの記憶媒体(不図示)への記憶が行われる。
【0018】
ズームレバー6は、レリーズボタン5の外周に回転可能に保持された回転操作型の部材である。ズームレバー6が一方の方向に回転操作されると、鏡筒ユニット2において望遠側(画角が狭くなる方向)へのズーム動作が行われ、他方の方向に回転操作されると鏡筒ユニット2において広角側(画角が広がる方向)へのズーム動作が行われる。電源ボタン7の押下により、撮像装置1の使用不可状態(オフ状態)と使用可能状態(オン状態)とが切り替わる。なお、撮像装置1の本体内には、電源となる電池(不図示)や画像データを記憶する記憶媒体が格納されている。
【0019】
マイク穴8は、撮像装置1の本体に内蔵されたマイクユニット(不図示)へ音声を取り込むために収音性を考慮して撮像装置1の上面に設けられており、ステレオ録音を可能とするために撮像装置1の幅方向に所定の間隔を空けて2つ設けられている。モード設定ダイヤル9は、所定の撮影モードを設定するための回転操作部材である。モード設定ダイヤル9の天面には各種の撮影モードに対応した複数のアイコン(不図示)が印刷されており、撮像装置1に設けられた指標(不図示)に所望のモードのアイコンを合わせることで、撮像装置1を所望の撮影モードで動作させることが可能になる。
【0020】
EVF10は、図1に示した状態では撮像装置1の本体内に収納されている。撮像装置1の側面に設けられた操作レバー11を下方へスライドさせることにより、EVF10の表示ユニット110及びカバーユニット140(図6乃至図8参照)を上方へ突出させることができる。これにより、詳細は後述するが、表示ユニット110に含まれる接眼窓131(図6参照)を撮像装置1の背面側へ向けて露出させることが可能になる。EVF10の構成の詳細については後述するが、EVF10は、有機ELパネル121やレンズ122(図6参照)を備える。撮影者は接眼窓131を介してEVF10の内部を覗くことによって、被写体像や撮影画像(再生画像)を確認(視認)ことができる。
【0021】
撮像装置1の側面に設けられたジャックカバー12を開けると、電源や信号の入出力用ジャックが露出し、入出力用ジャックに対する各種ケーブルの挿抜が可能になる。操作ボタン群13は、単独のボタンや十字ボタン等の複数のボタンを含む。操作ボタン群13を構成する各ボタンには所定の機能が割り当てられており、例えば、撮影条件の変更、再生画面への切り換え等の各種指示の入力が可能となっている。
【0022】
表示装置20は、例えば、表示画面となる液晶ディスプレイ21を有しており、被写体像(ライブ画像)や撮影画像、撮像装置1の設定メニュー等を表示する。表示装置20は、ヒンジ装置30(図3乃至図5参照)を介して上下方向へ回転可能に撮像装置1の本体に取り付けられており、その詳細については後述する。
【0023】
近接センサ窓部14は、表示装置20の上枠部に設けられている。近接センサ窓部14は、可視光線領域の透過率が小さく、波長が800nm以上の赤外線領域での透過率が大きい特徴を有する樹脂で形成されている。また、近接センサ窓部14の内側には発光部と受光部を備えた近接センサ14a(第2の検知手段)(図2参照)が配置されている。近接センサ14aは、発光部から赤外光を投射し、設定された閾値を超えた反射光の受光部への入射の有無に応じて物体の近接の有無を検知する。近接センサ14aは、撮影者がEVF10の接眼窓131を覗き込んでいるか否かを判定するために用いられる。
【0024】
図2は表示装置20の分解斜視図であり、図2(a)と図2(b)とでは表示装置20を見る方向が異なっている。表示装置20は、大略的に、液晶ディスプレイ21、ディスプレイカバー22、両面テープ23及びスペーサ24により構成されている。
【0025】
液晶ディスプレイ21は、液晶パネルと、液晶パネルを外圧や傷、汚れから保護する保護窓と、撮影者が触れることで入力操作が行われる静電容量方式等のタッチパネルとが一体となった構造を有する。液晶ディスプレイ21は、保護窓の外形に沿って形成された矩形枠型の両面テープ23によってディスプレイカバー22の前面(液晶ディスプレイ21の表示面側からディスプレイカバー22を見たときに前となる面)に接着される。両面テープ23には、接着強度が大きく、且つ、衝撃に強いものを用いることが望ましい。これは、撮像装置1が落下等した場合に作用する衝撃に起因して液晶ディスプレイ21に浮き上がりや剥離が発生するのを抑制し、液晶ディスプレイ21がディスプレイカバー22の外に飛び出すことによる破損の発生を抑制するためである。
【0026】
ディスプレイカバー22は液晶ディスプレイ21の周囲を覆う枠体であり、液晶ディスプレイ21を支持する外観部品でもある。そのため、ディスプレイカバー22において外観に露出する面には、所定の塗装が施されている。ディスプレイカバー22において表示装置20の上枠部に相当する位置には、近接センサ窓部14が接着固定されている。
【0027】
液晶ディスプレイ21は、フレキシブル配線基板21a及びフレキシブル配線基板41を有する。フレキシブル配線基板41は、表示装置20の表示制御を担う基板であり、液晶ディスプレイ21の背面(液晶ディスプレイ21の表示面側から液晶ディスプレイ21を見たときに後となる側)に両面テープ(不図示)で貼り付けられて固定されている。フレキシブル配線基板41にはコネクタ43が実装されている。フレキシブル配線基板21aの一端はコネクタ43に接続され、他端は液晶パネルを構成する透明電極やバックライトと電気的に接続されている。近接センサ14aはフレキシブル配線基板41上に実装されており、近接センサ窓部14と対向するように位置決めされ、固定されている。
【0028】
フレキシブル配線基板41上に実装されたコネクタ44には、フレキシブル配線基板42の一端が接続される。フレキシブル配線基板42の他端は、撮像装置1の本体内に配置された制御基板(メイン基板不図示)に接続される。こうして、撮像装置1の本体内に設けられた制御基板からの各種の電気信号が、フレキシブル配線基板42を介してフレキシブル配線基板41へ伝達され、液晶ディスプレイ21での表示制御が行われる。なお、表示装置20に接続された配線の一部は、差動伝送方式で電気信号を伝送する。フレキシブル配線基板42に形成された信号パターン(不図示)では、差動信号用の配線パターンが、フレキシブル配線基板42の幅方向の略中央付近に所定の差動インピーダンス仕様を満たすようにインピーダンスのマッチングを行って形成されている。
【0029】
スペーサ24は、ディスプレイカバー22とヒンジ装置30との隙間を封止する部材(モールド樹脂部材)である。スペーサ24は、ディスプレイカバー22に対して液晶ディスプレイ21の組み付け方向の逆方向から組み付けられ、ディスプレイカバー22とヒンジ装置30とで挟まれた状態で固定される。
【0030】
ディスプレイカバー22には凹部が形成されており、この凹部に磁石25が収納され、接着固定されている。磁石25が発生する磁場(磁束)は磁気センサ(磁気検出素子(不図示))によって検出され、磁場の検出結果は表示装置20での表示方向の切り替えスイッチとして機能する。磁気センサには、巨大磁気抵抗(GMR)素子や半導体ホール素子等が用いられる。GMR素子は、磁気抵抗効果を利用して主面に平行な磁場を検出し、磁場が強くなると電気抵抗が増加する性質を有する合金(具体的には、ニッケル、鉄、コバルトを主成分とする)からなる。GMR素子を判定回路に組み込むことでGMRセンサが構成される。本実施形態では、撮像装置1の本体内に配置されたフレキシブル配線基板(不図示)にGMRセンサが実装されている。そして、GMRセンサの検出値に閾値が設定されており、磁石25の位置に応じて変化する磁束の大きさをGMRセンサで検出し、検出した磁束の大きさを閾値と比較した結果に基づいて表示装置20での表示切り替えを行っている。具体的には、表示装置20を図1(b)の基本姿勢の状態から下辺部が上方へ移動するように回転させると、閾値を超えた磁束の大きさをGMRセンサが検出した時点で、表示装置20での画面表示が通常状態から上下左右で反転した表示に切り替わる。
【0031】
次に、表示装置20を撮像装置1の本体に対して回転可能に連結するヒンジ装置30の構成について、図3を参照して説明する。図3(a)は、ヒンジ装置30の分解斜視図である。図3(b)は、図3(a)中の領域C(回転軸Aの一端)の拡大図である。図3(c)は、図3(a)中の領域D(回転軸Aの他端)の拡大図である。
【0032】
回転軸A(第1の回転軸)は、ヒンジ装置30の上側に設けられ、表示装置20を上方へ回転させる際の中心軸となる回転軸である。また、ヒンジ装置30の下側に設けられ、表示装置20を下方へ回転させる際の中心軸となる回転軸を回転軸B(第2の回転軸)と定義する。回転軸Aと回転軸Bとは略平行となっている。表示装置20を上方へ回転させるとは、前述したが、表示装置20の上辺を回転軸として、下辺が円弧を描くように回転させることを指し、換言すれば、表示装置20の下辺部を撮像装置1の本体から引き出して回転させる操作を示す。表示装置20を下方へ回転させるとは、表示装置20の下辺を回転軸として、上辺が円弧を描くように回転させることを指し、換言すれば、表示装置20の上辺部を撮像装置1の本体から引き出して回転させる操作を示す。
【0033】
ヒンジ装置30は、スタンドプレート31,32、ベースプレート33、アームプレート34、加締めピン35A1,35A2,35B1,35B2、皿バネ36A,36B1,36B2を有する。
【0034】
スタンドプレート31,32はヒンジ装置30の左右に配置され、スタンドプレート31は孔部31bが形成された立曲げ部31cを有し、スタンドプレート32は孔部32bが形成された立曲げ部32cを有する。ベースプレート33は左右に立曲げ部33cを有し、立曲げ部33cの上側には孔部33aが形成され、立曲げ部33cの下側には孔部33bが形成されている。ベースプレート33の孔部33bとスタンドプレート31,32の孔部31b、32bは同軸に配置されて、回転軸Bが形成される。ベースプレート33の左右下部にはストッパ33dが形成されている。表示装置20を下方へ略45°回転させると、ストッパ33dがスタンドプレート31,32の立曲げ部31c,32cに当接することで、表示装置20の下方への回転角度が規制される。
【0035】
アームプレート34は左右に立曲げ部34cを有し、立曲げ部34cの上側には孔部34aが形成されている。アームプレート34の孔部34aとベースプレート33の孔部33aは同軸に配置されて、回転軸Aが形成される。アームプレート34の左右上部にはストッパ34dが設けられている。表示装置20を上方へ略180°回転させると、ストッパ34dがベースプレート33の立曲げ部33cに当接することで、表示装置20の上方への回転角度が規制される。
【0036】
加締めピン35A1は、ベースプレート33の孔部33aとアームプレート34の孔部34aに挿通した状態で加締められる。また、加締めピン35A2は、ベースプレート33の孔部33a、アームプレート34の孔部34a及び皿バネ36Aの孔部36aに挿通した状態で加締められる。これにより、ベースプレート33とアームプレート34は同軸上に回転可能に連結されると共に、加締めピン35A1,35A2の脱落が防止される。皿バネ36Aは回転軸方向に撓ませた状態で固定され、これにより回転軸Aまわりに表示装置20を回転させる際の回転トルクが付与される。
【0037】
加締めピン35B1は、スタンドプレート31の孔部31b、ベースプレート33の孔部33b及び皿バネ36B1の孔部36b1に挿通した状態で加締められる。また、加締めピン35B2は、スタンドプレート32の孔部32b、ベースプレート33の下側の孔部33b及び皿バネ36B2の孔部36b2に挿通した状態で加締められる。これにより、スタンドプレート31,32とベースプレート33とが同軸上に回転可能に結合されると共に、加締めピン35B1,35B2の脱落が防止される。皿バネ36B1,36B2は回転軸方向に撓ませた状態で固定され、これにより、回転軸Bまわりに表示装置20を回転させる際の回転トルクが付与される。
【0038】
なお、スタンドプレート31,32、ベースプレート33及びアームプレート34はそれぞれ、金属材料をプレス加工して製造された部品であり、回転動作に対して高い強度を有する。本実施形態では、回転軸Aの片側(右側)にのみ皿バネ36Aを配置しているが、回転軸Bの構成と同様に、回転軸Aの左右両側に皿バネを配置しても構わない。皿バネ36A,36B1,36B2により、回転軸A,Bに回転負荷となる摺動トルクが付与される。これにより、ベースプレート33はスタンドプレート31,32に対して、アームプレート34はベースプレート33に対してそれぞれ、任意の回転位置で保持することが可能となる。
【0039】
続いて、撮像装置1の本体、表示装置20及びヒンジ装置30の関係について説明する。図4は、撮像装置1の分解斜視図である。ヒンジ装置30のスタンドプレート31,32(図3参照)は、撮像装置1の本体の背面へビス26a,26bにより固定される。また、ヒンジ装置30のアームプレート34はディスプレイカバー22の背面へビス27a,27bにより固定され、且つ、ディスプレイカバー22の底面へビス28a,28b,28cにより固定される。こうして、ヒンジ装置30によって表示装置20と撮像装置1の本体とが連結される。
【0040】
図5(a)は、表示装置20の基本姿勢を示す斜視図である。基本姿勢では、表示装置20は撮像装置1の本体の背面側に収納されている。基本姿勢は、撮影者が撮像装置1の背面側にいて、鏡筒ユニットの正面の被写体撮影や撮影画像の再生表示等を行う際に用いられる姿勢である。
【0041】
図5(b)は、表示装置20を上方へ180°回転させた姿勢(以下「反転姿勢」という)を示す斜視図である。反転姿勢は、例えば、自分撮り撮影の際に用いられる。前述した摺動トルクにより、表示装置20を基本姿勢と反転姿勢との間の任意の角度で保持することができる。表示装置20の表示面が上方へ向くように所定角度回転させた姿勢は、例えば、撮像装置1を低く構えた状態で被写体を撮影する際に用いられる。
【0042】
図5(c)は、表示装置20を下方へ45°回転させた姿勢(以下「下向き姿勢」という)を示す斜視図である。下向き姿勢は、例えば、撮像装置1を高く構えて撮影する際に用いられる姿勢である。なお、前述した摺動トルクにより、表示装置20を基本姿勢と下向き姿勢との間の任意の角度で保持することができる。このように、表示装置20は、ヒンジ装置30によって撮像装置1の本体に対して様々な形態(角度)に調整可能であり、様々な撮影方法や撮影状況に適応することが可能となっている。
【0043】
次に、EVF10の構成について説明する。図6は、EVF10の分解斜視図である。EVF10は、ベースユニット100、表示ユニット110、カバーユニット140、配線基板150及びフレキシブル配線基板151を有する。表示ユニット110は、本体部120と接眼部130を有する。本体部120は、映像や情報を表示する表示手段である有機ELパネル121、レンズ122、接眼部130の引き出しを検知する検知スイッチ123(第1の検知手段)を有する。接眼部130は、接眼窓131、接眼窓枠部132、視度調整に用いられる視度調整レバー133、接眼部130を本体部120(カバーユニット140)から引き出すための把持部134を有する。
【0044】
表示ユニット110は、ベースユニット100に対して位置決めされて3本のビス111,112,113によってベースユニット100に固定される。カバーユニット140は、接着によって一体化された天面カバー141と側面カバー142を有する。カバーユニット140は、表示ユニット110の周囲を覆い、EVF10が撮像装置1の本体に収納された状態で撮像装置1の天面の一部を構成する(図1参照)。カバーユニット140は、ベースユニット100に対して位置決めされた状態で、ビス143,144と表示ユニット110との共締めビスであるビス113によってベースユニット100に固定される。配線基板150は、各種の電子部品を実装しており、EVF10の表示制御を行う。配線基板150は、表示ユニット110に対し位置決めされてビス153によって表示ユニット110に固定される。フレキシブル配線基板151は、撮像装置1の本体内に配置された制御基板(不図示)との接続に用いられ、コネクタ152を介して配線基板150に接続される。
【0045】
図7(a)は、ベースユニット100の分解斜視図である。図7(b)は、図7(a)に示す矢視A-Aの断面図である。ベースユニット100は、ベース101、シャーシ102、シャフト103、シャフトバネ104、シャフトクッション105、ベースプレート106、ロックレバー107、ロックレバーシャフト108及びロックバネ109を有する。
【0046】
ベース101には、シャフト103が挿通される2つの孔部101aが設けられ、2つの孔部101aのそれぞれに段差部101bが設けられている。シャーシ102にはロックピン102aが固定されている。また、シャーシ102には腕部102bが設けられ、腕部102bの先端には係合部102cが形成されている。シャーシ102にはビス111,112,113,143,144が締結されるビス締め部が設けられており、表示ユニット110及びカバーユニット140はシャーシ102に固定される。
【0047】
シャフト103には凸部103aが設けられ、凸部103aはベース101に設けられた段差部101bに当接して位置決めされる。凸部103aにはシャフトクッション105が貼られており、これにより、EVF10を撮像装置1の本体から上方へ突出させる際の衝撃を緩和することができる。シャフト103は、ベース101の孔部101aに挿通された状態で、シャーシ102に対して加締められる。これによりシャフト103の軸方向端がシャーシ102とベース101の凸部103aとで抜け止めされることで、シャフト103のベース101の孔部101aからの脱落が防止される。
【0048】
ベース101の2つの孔部101aのそれぞれにシャフトバネ104が挿入されている。2つの孔部101aを塞ぐようにベースプレート106が組み付けられると、シャフトバネ104の一方の端はシャフト103に設けられた凸部103aに当接し、他方の端がベースプレート106に当接し、シャフト103を上方へ付勢する。つまり、表示ユニット110及びカバーユニット140はシャフトバネ104によって上方へ付勢された状態となっている。ベースプレート106は、引っ掛け爪とビスによってベース101に固定されている。
【0049】
ベースプレート106の側面上方には、ロックレバー107がロックレバーシャフト108を回転軸としてベースプレート106に対して回転可能に取り付けられている。ロックレバーシャフト108は、ベースプレート106に固定されている。ロックバネ109は、ベースプレート106に設けられた引っ掛け部106aとロックレバー107に設けられた引っ掛け部107aに引っ掛けられている。ロックバネ109の付勢力によって、ロックレバー107がロックレバーシャフト108を回転軸としてベースプレート106に対して反時計まわり方向(矢印R方向)に付勢される。ロックレバー107には、当接部107bが設けられている。詳細は後述するが、操作レバー11(図1(a)参照)が操作されると、操作レバー11が当接部107bに当接し、ロックバネ109の付勢力に抗してロックレバー107が時計まわり方向に回転する。
【0050】
EVF10が収納状態(図1参照)にある場合にシャーシ102に固定されたロックピン102aと係合する係合部107cがロックレバー107に設けられている。また、ロックレバー107にもロックピン107dが設けられている。詳細は後述するが、ロックピン107dは、EVF10が上方へ突出している状態でシャーシ102の係合部102cと係合する。
【0051】
図8は、EVF10が取り得る各状態を説明する側面図である。図8(a)は、EVF10の表示ユニット110及びカバーユニット140が撮像装置1の本体内に収納された状態を示す側面図である。図8(b)は、EVF10が撮像装置1に収納された状態で、ロックレバー107が時計まわり方向(矢印S方向)に回転した状態を示す側面図である。図8(c)は、EVF10の表示ユニット110及びカバーユニット140が撮像装置1の本体上面から上方へ突出した状態を示す側面図である。図8(d)は、図8(c)の状態から接眼部130が引き出され、EVF10が使用可能となった状態を示す側面図である。なお、図8(a)~(d)では、ベースプレート106とカバーユニット140を構成する側面カバー142を非表示としている。
【0052】
前述の通り、EVF10において、表示ユニット110とカバーユニット140はシャフトバネ104によって常に上方へ付勢されている。しかし、表示ユニット110とカバーユニット140が撮像装置1の本体内に収納された図8(a)の状態では、シャーシ102に設けられたロックピン102aがロックレバー107に設けられた係合部107cと係合している。この状態では、表示ユニット110とカバーユニット140は上方へ突出することができない。
【0053】
図8(a)の収納状態から操作レバー11(図1(a)参照)が下方へスライド操作されると、操作レバー11がロックレバー107に設けられた当接部107bに当接して、図8(b)に示す状態となる。そして、ロックレバー107がロックレバーシャフト108を回転軸として時計まわり方向(矢印S方向)に回転する。これにより、シャーシ102のロックピン102aとロックレバー107の係合部107cとの係合が解除される。その結果、シャフトバネ104の付勢によってシャーシ102及びシャフト103と共に表示ユニット110とカバーユニット140が上方へ突出し、図8(c)の状態となる。
【0054】
図8(c)の状態では、ロックレバー107のロックピン107dがシャーシ102の係合部102cと係合することで、表示ユニット110とカバーユニット140は上方へ突出した所定位置で係止され、静止した状態となる。なお、ロックバネ109によるロックレバー107に対する付勢力を超えた荷重でカバーユニット140の天面を撮像装置1の本体内部へ向けて押下すると、ロックレバー107のロックピン107dがシャーシ102に設けられた係合部102cの斜面を滑り出す。すると、ロックレバー107が時計まわり方向に回転して、ロックレバー107のロックピン107dがシャーシ102の係合部102cから外れ、表示ユニット110とカバーユニット140を撮像装置1の本体内部へ収納することができる。このように、EVF10では、操作レバー11の操作を必要とせず、カバーユニット140の天面の押下操作のみにより、表示ユニット110とカバーユニット140を撮像装置1の本体内へ収納することが可能となっている。
【0055】
接眼部130には把持部134が設けられており、撮影者は把持部134を把持して、接眼部130をカバーユニット140内の収納位置から使用位置へ引き出すことができる。接眼部130は収納位置と使用位置との間で移動可能であり、よって、撮影者は把持部134を把持して使用位置にある接眼部130をカバーユニット140へ向けて押し込むことにより接眼部130を収納位置へ戻すことができる。
【0056】
撮影者によって接眼部130が使用位置まで引き出された図8(d)の状態で、EVF10は使用可能な状態、つまり、表示ユニット110で画像表示が行われる状態、となる。EVF10が使用可能な状態では、接眼部130に設けられた当接部135が検知スイッチ123に設けられたスイッチノブ123aから退避し、検知スイッチ123がオフの状態となる。これに対して、図8(a)~(c)の状態では、接眼部130の当接部135によってスイッチノブ123aが押下され、検知スイッチ123がオンの状態となっている。
【0057】
撮像装置1は、近接センサ14aによる撮影者の顔等の物体の近接を検知しない間は表示装置20での表示を行い、EVF10での表示を行わないように制御される。一方、近接センサ14aが物体の近接を検知すると、表示装置20での表示をオフ(停止)し、EVF10での表示をオン(開始)するように制御される。
【0058】
示装置20とEVF10に対する前述の表示制御は、検知スイッチ123の状態によって有効/無効が切り替わるように構成されている。つまり、接眼部130が引き出されて検知スイッチ123がオフとなっている状態では、前述の表示制御が行われる。これに対して、検知スイッチ123がオン(接眼部130が引き出されていない)状態の場合、近接センサ14aが物体の近接を検知しても前述の表示制御は行われず、表示装置20での表示がオン、EVF10での表示はオフの状態に制御される。このような表示制御は、撮像装置1の本体内に配置された制御基板に実装されたマイクロコンピュータ(MPU(制御手段))により実行される。
【0059】
このような制御を行う1つの理由は、EVF10は、接眼部130が引き出された状態でのみ有機ELパネル121へレンズ122の焦点が合うように設計されているためである。換言すれば、図8(c)に示すように表示ユニット110とカバーユニット140が撮像装置1の本体から上方へ突出していても接眼部130が引き出されていない状態では、EVF10の表示が行われないことが望ましいからである。また、このような構成とすることで、EVF10の非使用時に、表示装置20での表示が予期せずオフ(停止)してしまうことを防止することができる。
【0060】
図1(b)及び図5(a)に示したように近接センサ窓部14は表示装置20の上枠部に設けられているため、表示装置20の回転動作に連動して近接センサ窓部14の向きが変わる。また、前述の通り、接眼部130が引き出されていない状態では、近接センサ14aの検知結果に基づく表示制御は行われないため、表示装置20を回転させても表示制御に影響はない。しかし、EVF10が使用可能な状態で表示装置20を回転させた場合、表示装置20の角度によっては近接センサ14aが撮像装置1の本体又は接眼部130を検知し、近接センサ14aの検知結果に基づく表示制御が行われるおそれがある。そこで次に、このような問題が生じないようにするための構成について説明する。
【0061】
図9(a)~(d)は、表示装置20の姿勢と近接センサ14aの検知範囲14bの関係を説明する側面図である。図9(a)は、表示装置20を上方へ略45°回転させた状態を示している。図9(b)は、表示装置20を下方に略45°回転させた状態を示している。図9(c)は、表示装置20を上方へ略90°回転させた状態を示している。図9(d)は、表示装置20を上方へ略150°回転させた状態を示している。
【0062】
なお、図9の各図には、EVF10を撮像装置1の本体から突出させた状態を示すことが望ましいが、表示装置20の姿勢と近接センサ14aによる物体の検知範囲14bの変化をわかり易く説明する必要もある。また、表示装置20の姿勢が変化した場合に、近接センサ14aは撮像装置1の本体を検知することはあっても、EVF10を検知することはない。そこで、図9には撮像装置1の本体内に収納した状態を示している。
【0063】
表示装置20が図9(a)又は図9(b)の姿勢となっている場合、撮像装置1の背面側が近接センサ14aによる物体の検知範囲14bとなる。これらの状態では、撮影者が表示ユニット110を撮像装置1の本体から突出させて接眼部130を引き出せば(又は引き出していれば)、撮像装置1の背面に顔を近接させることで、EVF10をオンにする制御を実行させることができる。
【0064】
一方、表示装置20が図9(c)又は図9(d)に示す姿勢となっている場合、近接センサ14aによる物体の検知範囲14bは、撮像装置1の背面側から外れる。そのため、表示ユニット110が使用可能状態で、且つ、表示装置20が図9(c)又は図9(d)の姿勢となっている状態で撮影者が撮像装置1の背面に顔を近接させても、EVF10での表示はオンにならない可能性がある。
【0065】
しかし、表示装置20が図9(c)の姿勢となっている場合、撮影者は撮像装置1を低く構えて被写体を撮影することが多いために接眼部130を覗いて撮影する可能性は低い。また、表示装置20が図9(d)の姿勢となっている場合、接眼部130は引き出されていても、表示装置20によって覆われてしまうため、物理的に接眼部130から表示ユニット110に表示される映像等を視認することはできない。よって、図9(c),(d)の状態で、EVF10での表示がオンにならないことは実用的に問題とならない。
【0066】
一方、EVF10が使用可能状態で、且つ、表示装置20が図9(d)の姿勢となっている場合には、EVF10での表示がオンして、表示装置20の表示がオフになる表示制御が行われてしまう可能性がある。これは、撮像装置1の本体が近接センサ14aによる物体の検知範囲14b内に入ってしまうからである。前述の通り、図9(d)のような表示装置20の姿勢は、自分撮りに多く用いられるため、表示装置20の表示が予期せずオフしてしまうのを防止する必要がある。
【0067】
次に、表示装置20を上方へ回転させた際に表示装置20での表示が予期せずオフしてしまうのを防止するための構成について、図10を参照して説明する。図10(a)~(c)は、EVF10が使用可能、且つ、表示装置20を所定の角度へ回転させた状態での撮像装置1の側面図である。具体的には、図10(a)は、表示装置20を上方へ略90°回転させた状態を示している。図10(b)は、表示装置20を上方へ略150°回転させた状態を示している。図10(c)は、表示装置20を上方へ略180°回転させた反転状態を示している。図10(d)は、図10(b)に示す領域Eの拡大図であり、カバーユニット140を非表示としている。
【0068】
図10(a)の状態では、図9(c)の状態と同様に、撮像装置1の本体が近接センサ14aによる物体の検知範囲14b内に入っていないため、近接センサ14aは撮像装置1の本体を検知していない。図10(a)の状態から図10(c)の状態へと表示装置20を回転させた途中で図10(b)の状態となった際に、図9(d)(表示装置20の角度が図10(b)と同じ状態)に示したように、撮像装置1の本体が近接センサ14aの検知範囲14bに入り始める。そして、接眼部130が表示装置20によって表示ユニット110側へ押され始める。その結果、図10(d)に示すように、EVF10の本体部120に設けられた検知スイッチ123のスイッチノブ123aが接眼部130によって押下されて、検知スイッチ123がオン状態となる。こうして、EVF10が使用不可の状態となるため、近接センサ14aが物体(撮像装置1の本体)を検知しても、近接センサ14aの検知結果に基づく表示制御は行われない状態となる。よって、表示装置20を上方へ回転させる過程で表示装置20での表示が予期せずにオフしてしまうことが防止される。
【0069】
表示装置20を図10(b)の角度よりも大きく上方へ回転させた状態(例えば、図10(c)の状態)では、検知スイッチ123がオンの状態が維持される。よって、図10(c)に示す状態でも、近接センサ14aは物体の近接を検知しているが、近接センサ14aによる検知結果に基づく表示制御は行われない。
【0070】
以上の説明の通り、本実施形態に係る撮像装置1では、表示装置20の回転動作によって撮像装置1の本体が近接センサ14aによる物体の検知範囲14bに入った場合に、近接センサ14aの検知結果に基づく表示制御を停止させることができる。これにより、意図しない表示装置20での表示停止を防止することが可能となる。
【0071】
次に、表示装置20により接眼部130を表示ユニット110へ向けて押し込むために必要とされる荷重とヒンジ装置30の回転部に掛かるトルクとの関係について、図11を参照して説明する。図11(a)は、表示装置20を上方へ略165°回転させた状態での撮像装置1´の側面図である。図11(b)は、表示装置20を上方へ略180°回転させた反転状態での撮像装置1´の側面図である。以下に説明する通り、撮像装置1´は、表示装置20の回転させたときの力によって接眼部130を表示ユニット110へ向けて押し込むことができない参考例である。撮像装置1´が本実施形態に係る撮像装置1と異なる点は、回転軸Bまわりの表示装置20の回転に必要な摺動トルクのみであるため、撮像装置1´の構成要素には、撮像装置1の構成要素を同じ符号を付して説明を行う。
【0072】
上述したように、表示装置20を回転させたときに表示装置20が予期せずにオフすることを容易に回避可能とする構成としては、表示装置20を回転させる力で接眼部130が表示ユニット110へ押し込まれる構成が望ましい。ここで、ヒンジ装置30の回転軸Bまわりに表示装置20を回転させるために必要な摺動トルクが接眼部130の押し込みに必要な荷重よりも小さい場合、図11(a)に示すように、接眼部130が押し込まれずにヒンジ装置30が回転軸Bまわりに回転し始める。そして、図11(a)の状態から図11(b)の状態まで表示装置20を回転させても、接眼部130は表示ユニット110側へ押し込まれず、図11(b)の状態で表示装置20がオフになってしまう。
【0073】
このような問題が生じないように、撮像装置1では、接眼部130の押し込みに必要な荷重に対する反力によって回転軸Bに作用する回転トルクよりも、回転軸Bの回転に必要な摺動トルクが大きくなるように設計されている。これにより、表示装置20を回転させたときに、図11(a),(b)に示した状態とはならず、図10(b),(c)に示した状態とすることが可能となっている。
【0074】
ここまで、表示装置20には液晶ディスプレイ21が、EVF10には有機ELパネル121がそれぞれ用いられている構成で説明したが、これに限定されず、映像や情報の表示が可能な他の表示手段が用いられていてもよい。また、ヒンジ装置30として回転軸A,Bの2軸を上下に有し、各軸まわりに回転可能な構成について説明したが、回転軸Aのみを有する構成であってもよい。この場合、表示装置20を下方へ回転させることができなくなるが、表示装置20を上方へ180°近くまで回転させることは可能である。よって、上述のEVF10を用いて表示装置20を上方へ回転させた際の近接センサ14aによる検知結果に基づいて表示制御の有効/無効の切り換える構成は、回転軸Aのみを有する撮像装置にも適用可能である。
【0075】
更に、撮像装置1では近接センサ14a及び近接センサ窓部14が表示装置20の上枠部に設けられているが、近接センサ14aの及び近接センサ窓部14は、これに限定されず、表示装置20内で撮影者の顔等の接近を検知可能な範囲に配置することができる。但し、近接センサ窓部14を表示装置20の上枠部に設ける場合、近接センサ窓部14をEVF10の接眼部130の直下に配置しないことが望ましい。これは、近接センサ窓部14を接眼部130の直下に配置した場合には、図10(a)の状態で近接センサ14aが接眼部130を検知することで、表示装置20の表示がオフになってしまう可能性があるからである。
【0076】
近接センサ14a及び近接センサ窓部14は、表示装置20ではなく撮像装置1の本体の背面や接眼部130に配置してもよい。その場合の近接センサ窓部14の配設位置は、表示装置20が図1(b)の基本姿勢にあるときに表示装置20によって覆われない位置とすればよい。この場合も、表示装置20を上方への回転角度に応じて近接センサ14aによる検知結果に基づく表示制御の有効/無効の切り換える構成を採用することで、表示装置20が予期せずにオフとなるのを防止することができる。
【0077】
なお、撮像装置1では、引き出された接眼部130(接眼窓枠部132)に表示装置20を当接させることで接眼部130をカバーユニット140側へ押し込む構成とした。これに対して、図12に示すように、液晶ディスプレイ21と接眼窓131とが直接当接しない構成としてもよい。図12(a)は、撮像装置1の部分背面図であり、表示装置20のディスプレイカバー22に当接用のリブ22aを設けた構成を示している。図12(b)は、表示装置20を上方へ略180°回転させることで、リブ22aが接眼窓枠部132に当接した状態を示す側面図である。リブ22aを設けることで、接眼部130と液晶ディスプレイ21を保護することが可能となる。
【0078】
<第2実施形態>
第1実施形態に係る撮像装置1では、近接センサ14a及び近接センサ窓部14が表示装置20の上枠部に設けられた構成となっている。これに対して、第2実施形態に係る撮像装置として、近接センサ14a及び近接センサ窓部14を備えていない構成について説明する。
【0079】
第2実施形態に係る撮像装置の本体、EVF10及びヒンジ装置30の構成は、第1実施形態に係る撮像装置1と同じであるため、それらについての説明は省略する。また、第2実施形態に係る撮像装置が備える表示装置についても、近接センサ14a及び近接センサ窓部14が備えない点を除いて、第1実施形態に係る撮像装置1の表示装置20と同じであるため、詳細な説明を省略する。説明の便宜上、第2実施形態に係る撮像装置を構成する各部について、第1実施形態に係る撮像装置1について用いている符号と同じ符号を用いる。
【0080】
第2実施形態に係る撮像装置は、近接センサ14a及び近接センサ窓部14を備えていないが、第1実施形態に係る撮像装置1と同様に、EVF10を構成する表示ユニット110の本体部120には検知スイッチ123が配置されている。接眼部130が引き出されていない状態では検知スイッチ123がオン状態となり、接眼部130が引き出されると検知スイッチ123はオフ状態となる。
【0081】
第2実施形態に係る撮像装置でも、第1実施形態に係る撮像装置1と同様に、検知スイッチ123がオン状態では表示装置20での表示を行い、EVF10での表示を行わない表示制御を行う。また、検知スイッチ123がオフ状態になると表示装置20での表示をオフにして、EVF10での表示をオンにするように制御される。つまり、EVF10が使用可能な状態となっている場合にのみEVF10での表示が行われ、これにより省電力化を図っている。
【0082】
表示装置20を上方へ略180°回転させた状態での表示制御方法について、図10を参照して説明する。なお、図10は第1実施形態の説明に用いた図であるが、第2実施形態と第1実施形態との相違点は、近接センサ14a及び近接センサ窓部14(図10には不図示)の有無のみであるため、便宜的に図10を参照することとする。
【0083】
表示装置20を上方へ略90°回転させ、接眼部130が引き出された状態(図10(a))では、検知スイッチ123はオフの状態となっているため、表示装置20への表示がオフとなり、EVF10での表示がオンになっている。表示装置20を上方へ略150°回転させると(図10(b))、接眼部130が表示装置20に押されてスイッチノブ123aを押すことで、検知スイッチ123がオンの状態となる。その結果、表示装置20での表示がオンとなり、EVF10での表示はオフになる。更に表示装置20を回転させて上方へ略180°回転させても(図10(c))、検知スイッチ123はオンの状態で維持されるため、EVF10での表示はオフで、表示装置20での表示がオンの状態が維持される。
【0084】
このように第2実施形態では、EVF10の接眼部130が引き出されている状態で表示装置20の回転させた場合、回転角度に応じてEVF10と表示装置20とで表示先が切り替わる。よって、近接センサ14aを備えていなくとも、簡単な操作で表示先の切り替え行うことができる。
【0085】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0086】
例えば、撮像装置が近接センサ14aを備えている場合に、近接センサ14aによる制御の有効/無効を切り替える切り替え手段を有する構成としてもよい。その場合、近接センサ14aによる制御を無効にしている状態では、第2実施形態と同様の制御が行われることになる。
【符号の説明】
【0087】
1 撮像装置
10 電子ビューファインダ装置(第2の表示部)
11 操作レバー
14 近接センサ窓部
14a 近接センサ(第2の検知手段)
20 表示装置(第1の表示部)
22a リブ
30 ヒンジ装置
110 表示ユニット
123 検知スイッチ(第1の検知手段)
130 接眼部
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