(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02C 6/00 20060101AFI20221212BHJP
F04D 25/16 20060101ALI20221212BHJP
F02K 3/06 20060101ALI20221212BHJP
F02K 5/00 20060101ALI20221212BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20221212BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F02C6/00 B
F04D25/16
F02K3/06
F02K5/00
H02K7/14 A
H02K7/18 B
(21)【出願番号】P 2018188167
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】貴志 公博
(72)【発明者】
【氏名】水谷 孝治
(72)【発明者】
【氏名】野上 龍馬
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 徹也
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02554063(GB,A)
【文献】特開2006-205755(JP,A)
【文献】特開2018-132059(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013209388(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
F02K 1/00-99/00
H02K 7/00- 7/20
F04D 1/00-13/16;17/00-19/02;21/00-25/16;29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部で圧縮した空気を用いて燃料を燃焼し、燃焼ガスを生成する燃焼部と、
前記燃焼部で生成された燃焼ガスによって回転するタービンと、
前記タービンの回転力によって発電する発電部と、
前記圧縮部へ空気を供給する複数のファンと、
前記発電部で発電された電力によって、複数の前記ファンのうち少なくとも1つの前記ファンを回転させる電動機と、を備え、
複数の前記ファンは、空気の流れ方向に並んで配置されてい
て、
複数の前記ファンは、各々の回転軸が同方向となるように配置されるとともに、一方向に回転する第1ファンと、前記一方向とは反対方向である他方向に回転する第2ファンと、を含み、
前記第1ファンは、前記タービンの回転力によって回転し、
前記第2ファンは、前記電動機によって回転し、
前記一方向は、前記タービンの回転方向と同じ方向であり、
前記第1ファン及び前記第2ファンは、同一の筐体に収容されている内燃機関。
【請求項2】
前記第1ファンは、前記空気の流れ方向の最も上流側に配置される請求項
1に記載の内燃機関。
【請求項3】
航空機の推進に用いられる請求項
1または請求項
2に記載の内燃機関であって、
前記電動機は、前記航空機の作動状態に応じた回転数となるように前記第2ファンを駆動する内燃機関。
【請求項4】
航空機の推進に用いられる請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の内燃機関であって、
前記電動機を駆動するバッテリをさらに備え、
前記航空機の離陸時には、前記バッテリに蓄えられている電力によって前記電動機を駆動し、
前記航空機の巡航時には、前記発電部で発電された電力によって前記電動機を駆動する内燃機関。
【請求項5】
前記電動機は、前記ファンの外周部に設けられる外周駆動モータである請求項1から請求項
4のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項6】
前記電動機は、前記ファンの内周部に設けられる請求項1から請求項
4のいずれかに記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機に用いられるエンジンでは、エンジン内に空気を導入するファンが1つの軸で回転する構造であった。エンジンの高効率化及び低騒音化を図るためには、バイパス比を大きくする必要がある。バイパス比を大きくするためには、より多くの空気をエンジン内に導入する必要があるが、1つの軸で回転するファンでは限界があった。この問題を解決する方法として、複数の軸で回転するファンを空気流れ方向に並べて配置し、より多くの空気を内部に導入するエンジンが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4860537号明細書
【文献】欧州特許第1340903号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の装置は、燃焼部で生成された燃焼ガスで駆動するタービンによって、すべてのファンを回転させている。タービンによって回転させるファンの回転数は、タービンの回転数に依存するので、自由に調整することが難しい場合があった。したがって、供給先に搬送する空気の量を精密に調整することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、供給先へ供給する空気の量を精密に調整することができる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の内燃機関は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る内燃機関は、空気を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部で圧縮した空気を用いて燃料を燃焼し、燃焼ガスを生成する燃焼部と、前記燃焼部で生成された燃焼ガスによって回転するタービンと、前記タービンの回転力によって発電する発電部と、前記圧縮部へ空気を供給する複数のファンと、前記発電部で発電された電力によって、複数の前記ファンのうち少なくとも1つの前記ファンを回転させる電動機と、を備え、複数の前記ファンは、空気の流れ方向に並んで配置されている。
【0007】
上記構成では、複数のファンのうち少なくとも1つが電動機によって回転するファン(以下、「電動式ファン」という。)となっている。電動式ファンは、タービン等の回転機構によって回転されるファンと比較して、回転数を制御し易いので、搬送する空気の量を調整し易い。よって、電動式ファンを設けることで、すべてのファンが回転機構によって回転されるファンである構成と比較して、圧縮部へ供給する空気の量を精密に調整することができる。また、巡航速度に適した所要ファン圧力比が単段ファンよりも遅い回転周速で得られるとともに、初段ブレード翼面相対マッハ数を適正レベルに抑える範囲内で吸込空気の軸流速度を高く取ることができる。
【0008】
また、複数のファンを空気流れ方向に並んで配置しているので、ファンが一つだけの構成と比較して、各ファンの直径を小さくすることができる。これにより、ファンの前面投影面積(ファンを中心軸方向から見た時の面積)を小さくすることができる。したがって、例えば、ファンが移動装置に設けられている場合には、移動する際の抵抗を低減することができる。ファン直径が小さくできることにより、航空機の脚は高さを低くできるので、軽量化と強度向上ができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、複数の前記ファンは、各々の回転軸が同方向となるように配置されるとともに、一方向に回転する第1ファンと、一方向とは反対方向である他方向に回転する第2ファンと、を含んでいてもよい。
【0010】
上記構成では、複数のファンが、一方向に回転する第1ファンと、一方向とは反対方向である他方向に回転する第2ファンとを含んでいる。すなわち、異なる方向に回転するファンが設けられている。これにより、上流側のファンから排出された空気流れの周方向の成分が、反対方向に回転する下流側のファンによって解消される。したがって、圧縮部へ整流された空気を供給することができるので、圧縮部での空気の圧縮効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、前記第1ファンは、前記タービンの回転力によって回転し、前記第2ファンは、前記電動機によって回転し、前記一方向は、前記タービンの回転方向と同じ方向であってもよい。
【0012】
上記構成では、タービンの回転力によって回転するファン(以下、「機械式ファン」という。)が、タービンの回転方向と同方向に回転する。これにより、回転方向を変更する機構を設けることなく、機械式ファンを設けることができる。したがって、異なる方向に回転するファンを備える内燃機関の構造を簡素化することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、前記第1ファンは、前記空気の流れ方向の最も上流側に配置されてもよい。
【0014】
上記構成では、最も上流側に配置されるファンが、機械式ファンとなる。これにより、機械式ファンに導入される空気を、他のファンの影響を受けない空気とすることができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、航空機の推進に用いられる上記に記載の内燃機関であって、前記電動機は、前記航空機の作動状態に応じた回転数となるように前記第2ファンを駆動してもよい。
【0016】
上記構成では、航空機の作動状態に応じた回転数で第2ファンを回転させることができる。したがって、例えば、離陸時等の航空機の推進力が多く求められる際に、回転数が多くなるようにし、巡航時等の航空機の推進力がそれほど多くもめられない際に、回転数が少なくなるようにした場合には、常に航空機の推進力が多く求められる際に応じた回転数で回転する場合と比較して、低燃費化及び小型化することができる。また、圧縮部と燃焼部(以下、「高圧部」という)を小型化することができるので、バイパス比を増大することができるので、低騒音化を図ることができる。
なお、第2ファンの回転数には、回転数がゼロの場合(すなわち、第2ファンが停止している場合)が含まれる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、航空機の推進に用いられる上記に記載の内燃機関であって、前記電動機を駆動するバッテリをさらに備え、前記航空機の離陸時には、前記バッテリに蓄えられている電力によって前記電動機を駆動し、前記航空機の巡航時には、前記発電部で発電された電力によって前記電動機を駆動してもよい。
【0018】
上記構成では、推進力が多く求められる離陸時には、バッテリの電力によって電動機を駆動している。すなわち、離陸時には、タービンの回転力による発電を行っていない。これにより、離陸時には、タービンの回転力がすべて第1ファンの回転力となる。したがって、回転エネルギを電気エネルギに変換する際のエネルギ損失を発生させない。よって、離陸時に、より多くの推進力を得ることができる。
一方、多くの推進力を求められない巡航時には、バッテリに蓄えられている電力を使わない。よって、バッテリは、離陸時のみ電力を供給できる程度の容量であればよい。したがって、バッテリを小型化することができるので、内燃機関を軽量化することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、前記第1ファン及び前記第2ファンは、前記電動機によって回転してもよい。
【0020】
電動式ファンは、機械式ファンと比較して、回転数を制御し易いので、搬送する空気の量を調整し易い。上記構成では、すべてのファンを電動式ファンとしているので、機械式ファンを有する構成と比較して、圧縮部へ供給する空気の量を精密に調整することができる。
【0021】
また、電動式ファンは、回転方向を自由に設定することができる。これにより、異なる方向に回転するファンを備える内燃機関において、回転方向を設定するための特別な構造を設ける必要がない。したがって、異なる方向に回転するファンを備える内燃機関の構造を簡素化することができる。
【0022】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、航空機の推進に用いられる上記に記載した内燃機関であって、前記電動機は、前記航空機の作動状態に応じた回転数となるように前記第1ファン及び前記第2ファンを駆動してもよい。
【0023】
上記構成では、航空機の作動状態に応じた回転数で第1ファン及び第2ファンを回転させることができる。したがって、例えば、離陸時等の航空機の推進力が多く求められる際に、回転数が多くなるようにし、巡航時等の航空機の推進力がそれほど多くもめられない際に、回転数が少なくなるようにした場合には、常に航空機の推進力が多く求められる際に応じた回転数で回転する場合と比較して、低燃費化及び小型化することができる。また、高圧部を小型化することができるので、バイパス比を増大することができるので、低騒音化を図ることができる。
なお、第1ファン及び第2ファンの回転数には、回転数がゼロの場合(すなわち、第1ファンまたは第2ファンが停止している場合)が含まれる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、航空機の推進に用いられる上記に記載の内燃機関であって、前記電動機を駆動するバッテリをさらに備え、前記航空機の離陸時には、前記バッテリに蓄えられている電力及び前記発電部で発電された電力によって前記電動機を駆動し、前記航空機の巡航時には、前記発電部で発電された電力によって前記電動機を駆動してもよい。
【0025】
上記構成では、推進力が多く求められる離陸時には、バッテリの電力と発電部の電力とによって電動機を駆動している。よって、離陸時に、より多くの推進力を得ることができる。
一方、多くの推進力を求められない巡航時には、バッテリに蓄えられている電力を使わない。よって、バッテリは、離陸時のみ電力を供給できる程度の容量であればよい。したがって、バッテリを小型化することができるので、内燃機関を軽量化することができる。
【0026】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、前記電動機は、前記ファンの外周部に設けられる外周駆動モータであってもよい。
【0027】
上記構成では、ファンを回転させる電動機として、ファンの外周部に設けられる外周駆動モータを用いている。これにより、容易に電動機にアクセスすることができる。したがって、電動機のメンテナンスや修理を容易に行うことができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る内燃機関は、前記電動機は、前記ファンの内周部に設けられてもよい。
【0029】
上記構成では、電動機がファンの内周部に設けられている。これにより、ファンの外周部に電動機を設ける構成と比較して、電動機を小型化することができる。したがって、内燃機関を軽量化することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、供給先へ供給する空気の量を精密に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの概略構成図である。
【
図2】
図1の変形例に係るエンジンの概略構成図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るエンジンの概略構成図である。
【
図4】
図2の変形例に係るエンジンの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る内燃機関の一実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、
図1を用いて説明する。
本実施形態では、本発明に係る内燃機関を、航空機の推進用のエンジンに適用した例について説明する。
【0033】
エンジン1は、外殻を為す円筒状の外側筐体2と、外側筐体2の内部に設けられ筒状の内側筐体3と、を備えている。
【0034】
内側筐体3は、高圧圧縮機(圧縮部)4と、高圧圧縮機4の後方(後述する空気の流れの下流側方向)に設けられる燃焼器(燃焼部)5と、燃焼器5の後方に設けられる高圧タービン6と、高圧タービン6の後方に設けられる低圧タービン(タービン)7と、を内部に収容している。高圧タービン6と高圧圧縮機4とは高圧シャフト8によって連結されている。
【0035】
外側筐体2は、内側筐体3の前方(後述する空気の流れの上流側方向)に配置される発電機(発電部)9と、発電機9の前方に設けられる第2ファン(ファン)12と、第2ファン12の前方に設けられる第1ファン(ファン)11とを、内部に収容している。発電機9及び第1ファン11は、低圧シャフト10によって低圧タービン7と連結されている。なお、高圧シャフト8と低圧シャフト10とは、同軸となるように配置されている。
【0036】
高圧圧縮機4は、前後方向に延びる高圧シャフト8によって高圧タービン6と連結されており、高圧タービン6の回転駆動力によって供給された空気を圧縮する。
燃焼器5は、図示しない燃料供給装置から供給された燃料を、高圧圧縮機4で圧縮された空気とともに燃焼することで、燃焼ガスを生成する。
【0037】
高圧タービン6は、高圧シャフト8と連結する軸部(図示省略)と、軸部から放射状に延びる複数の翼部(図示省略)とを有する。高圧タービン6は、燃焼器5からの燃焼ガスによって、翼部が前後方向に延びる軸を中心に回転する。翼部が回転することで、軸部が回転し、軸部の回転に伴って高圧シャフト8が回転する。
低圧タービン7は、低圧シャフト10と連結する軸部(図示省略)と、軸部から放射状に延びる複数の翼部(図示省略)とを有する。低圧タービン7は、燃焼器5からの燃焼ガスによって、翼部が前後方向に延びる軸を中心に回転する。翼部が回転することで、軸部が回転し、軸部の回転に伴って低圧シャフト10が回転する。
【0038】
高圧シャフト8は、前後方向に延在していて、前端が高圧圧縮機4に連結し、後端が高圧タービン6に連結している。
【0039】
第1ファン11は、空気流れ方向の最も上流側に配置されるファンである。第1ファン11は、低圧シャフト10の前端部と連結されている。第1ファン11は、低圧シャフト10と連結する軸部(図示省略)と、軸部から放射状に延びる複数の翼部(図示省略)とを有する。第1ファン11は、低圧シャフト10を介して伝達される低圧タービン7の回転駆動力によって、前後方向に延びる回転軸を中心に翼部を回転させることで、外側筐体2内に空気を導入する。第1ファン11と低圧タービン7とは、回転方向を変換する機構などを介することなく連結されている。すなわち、第1ファン11と低圧タービン7とは同方向に回転する。なお、低圧タービン7と第1ファン11とは、低圧シャフト10の途中位置に設けられているファンドライブギア(図示省略)を介して連結されてもよい。ファンドライブギアは、低圧タービン7から伝達される回転駆動力を所望の回転数に変換して、第1ファン11に伝達する。
【0040】
発電機9は、高圧シャフト8の途中位置に設けられており、低圧タービン7の回転駆動力によって発電する。発電機9は、発電した電力で後述するモータ(電動機)13を駆動可能とされている。また、発電機9は、発電した電力をバッテリ15に蓄電可能とされている。なお、発電機9とファンドライブギアとは一体的に設けてもよい。また、バッテリ15は、外側筐体2の内部に配置されてもよく、外側筐体2の外部に配置されていてもよい。
【0041】
第2ファン12は、第1ファン11の空気の流れ方向の下流側に配置されている。また、第2ファン12は、モータ13によって駆動する電動式のファンである。第2ファン12は、軸部(図示省略)と、軸部から放射状に延びる複数の翼部(図示省略)とを有する。第2ファン12は、モータ13からの回転駆動力によって、前後方向に延びる回転軸を中心に翼部を回転させることで、外側筐体2内に空気を導入する。第2ファン12の回転軸は、第1ファン11の回転軸と同方向に延在している。
第2ファン12は、第1ファン11の回転方向と反対方向に回転する。
【0042】
モータ13は、第2ファン12の軸部に設けられているいわゆるインラインモータである。また、モータ13は、制御装置14(例えば、インバータ装置)によって、回転数を制御されている。すなわち、制御装置14によって、第2ファン12の回転数を調整することができる。モータ13は、発電機9及びバッテリ15からの電力を供給可能に構成されている。すなわち、モータ13は、バッテリ15または発電機9からの電力によって回転駆動する。
【0043】
制御装置14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0044】
制御装置14は、モータ13の回転数を制御することができる。また、制御装置14は、モータ13の駆動源を、バッテリ15とするか、発電機9とするかを切り替えることができる。
制御装置14は、航空機の作動状態に応じて、モータ13の回転数及びモータ13の駆動源を決定する。航空機の作動状態とは、例えば、離陸時の状態、巡航時の状態及び着陸時の状態等である。具体的には、制御装置14は、以下の制御を行う。
【0045】
制御装置14は、第2ファン12の回転数が、航空機の作動状態に応じた回転数となるようにモータ13の回転数を制御する。例えば、制御装置14は、航空機が離陸する際の第2ファン12の回転数が、航空機が巡航している際の第2ファン12の回転数よりも多くなるように、モータ13を制御してもよい。すなわち、離陸時等の航空機の推進力が多く求められる場合(換言すれば、エンジン1が大きな出力を発揮する必要がある場合)に、第2ファン12の回転数を多くし、巡航時等の航空機の推進力がそれほど多く求められない場合(換言すれば、エンジン1が大きな出力を発揮する必要のない場合)に、第2ファン12の回転数を少なくする。また、エンジン1が大きな出力を発揮する必要のない場合には、第2ファン12を停止するように、モータ13を制御してもよい。
【0046】
また、制御装置14は、航空機の離陸時には、バッテリ15に蓄えられている電力によってモータ13を駆動し、航空機の巡航時には、発電機9で発電された電力によってモータ13を駆動するように、モータ13の駆動源を切り替える。
【0047】
次に、エンジン1内の空気及び燃焼ガスの流れについて説明する。
第1ファン11及び第2ファン12が回転すると、外側筐体2の内部に空気が導入される。このとき、外側筐体2に導入される空気は、第1ファン11及び第2ファン12を順番に通過する。外側筐体2に導入された空気は、内側筐体3の内部に導入される一次空気と、内側筐体3の外側を流れる二次空気とに分流する。
【0048】
一次空気は、まず高圧圧縮機4に導入される。高圧圧縮機4に導入された一次空気は圧縮され、燃焼器5へ供給される。燃焼器5は、圧縮された空気に燃料を加え、圧縮された空気とともに燃料を燃焼させることで、燃焼ガスを生成する。生成された燃焼ガスは、燃焼器5から噴出し、高圧タービン6を回転させる。高圧タービン6が回転すると、高圧タービン6と高圧シャフト8を介して連結する高圧圧縮機4が回転する。高圧タービン6を回転させた燃焼ガスは、次に、低圧タービン7を回転させる。低圧タービン7が回転すると、低圧タービン7と低圧シャフト10を介して連結されている発電機9及び第1ファン11が駆動する。発電機9が駆動することで発電が行われる。発電された電力は、第2ファン12を回転させるか、もしくは、バッテリ15に蓄えられる。低圧タービン7を回転させた燃焼ガスは、内側筐体3から排出される。
二次空気は、高圧圧縮機4等を介することなく、内側筐体3が外周面と外側筐体2の内周面との間に形成された空間を流通する。
【0049】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0050】
本実施形態では、第2ファン12がモータ13によって回転するファン(以下、「電動式ファン」という。)となっている。電動式ファンは、タービン等の回転機構によって回転されるファンと比較して、回転数を制御し易いので、搬送する空気の量を調整し易い。よって、第2ファン12を電動式ファンとすることで、第1ファン11及び第2ファン12の両方のファンを、タービンによって回転する構成と比較して、外側筐体2内へ導入する空気の量を精密に調整することができる。また、巡航速度に適した所要ファン圧力比が単段ファンよりも遅い回転周速で得られるとともに、初段ブレード翼面相対マッハ数を適正レベルに抑える範囲内で吸込空気の軸流速度を高く取ることができる。
【0051】
また、第1ファン11及び第2ファン12を空気流れ方向に並んで配置しているので、ファンが一つだけの構成と比較して、各ファンの直径を小さくすることができる。これにより、ファンの前面投影面積(ファンを中心軸方向から見た時の面積)を小さくすることができる。したがって、航空機に対する空気抵抗を低減することができる。また、ファン直径が小さくできることにより、航空機の脚は高さを低くできるので、軽量化と強度向上ができる。
【0052】
本実施形態では、第1ファン11の回転方向と、第2ファン12の回転方向が異なっている。これにより、上流側の第1ファン11から排出された空気流れの周方向の成分が、後流側の第2ファン12によって解消される。したがって、高圧圧縮機4へ整流された空気を供給することができるので、高圧圧縮機4での圧縮効率を向上させることができる。
【0053】
回転方向が異なるファンを備えるエンジン1において、両方のファンをタービンの駆動力によって回転させる構造も考えられる。しかしながら、このような構造では、タービンの回転方向と異なる方向に回転するファンについては、タービンとファンとを、回転方向を変換する機構を介して連結する必要がある。もしくは、異なる方向に回転するタービンを両方備えるようにし、各タービンに対してファンを連結する必要がある。いずれの場合であっても、支持構造や軸受け構造が複雑化し、エンジン1全体の重量増加や整備性の悪化等の問題を招来する可能性がある。
【0054】
一方、本実施形態では、低圧タービン7の回転方向と反対方向に回転する第2ファン12をモータ13により回転させている。また、低圧タービン7の回転力によって回転する第1ファン11を低圧タービン7の回転方向と同方向に回転させている。よって、回転方向を変更する機構等を設ける必要がない。したがって、異なる方向に回転するファンを備えるエンジン1において、構造を簡素化し、エンジン1全体の軽量化を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、モータ13が第2ファン12の軸部に設けられるインラインモータである。これにより、ファンの外周部にモータを設ける構成と比較して、モータ13を小型化することができる。したがって、エンジン1全体の軽量化を図ることができる。
【0056】
本実施形態では、最も上流側に配置される第1ファン11が、低圧タービン7によって駆動するファンとなっている。これにより、第1ファン11に導入される空気を、他のファンの影響を受けない空気とすることができる。
【0057】
本実施形態では、航空機の作動状態に応じた回転数で第2ファン12を回転させている。したがって、例えば、離陸時等の航空機の推進力が多く求められる際に、第2ファン12の回転数が多くなるようにし、巡航時等の航空機の推進力がそれほど多く求められない際に、第2ファン12の回転数が少なくなるようにした場合には、常に航空機の推進力が多く求められる際に応じた回転数で回転する場合と比較して、低燃費化及び小型化することができる。また、高圧圧縮機4や燃焼器5を小型化することで、バイパス比(一次空気量に対する二次空気量の比率)を増大することができるので、低騒音化を図ることができる。
【0058】
本実施形態では、推進力が多く求められる離陸時には、バッテリ15の電力によってモータ13を駆動している。すなわち、離陸時には、低圧タービン7の回転力による発電を行っていない。これにより、離陸時には、低圧タービン7の回転力がすべて第1ファン11の回転力となる。したがって、回転エネルギを電気エネルギに変換する際のエネルギ損失を発生させない。よって、離陸時に、より多くの推進力を得ることができる。
一方、多くの推進力を求められない巡航時には、バッテリ15に蓄えられている電力を使わない。よって、バッテリ15は、離陸時のみ電力を供給できる程度の容量であればよい。したがって、バッテリ15を小型化することができるので、エンジン1を軽量化することができる。
【0059】
[変形例]
次に、第1実施形態の変形例について、
図2を用いて説明する。
本変形例では、第1実施形態に係る構成と、モータが異なっている。モータ以外の構成は、第1実施形態と同様であるので、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
本変形例に係るエンジン21は、モータ23が、
図2に示すように、第2ファン24の翼部の外周部に備えられる外周駆動モータである。
このように、外周駆動モータを用いることにより、容易にモータ23にアクセスすることができる。したがって、モータ23のメンテナンスや修理を容易に行うことができる。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、
図3を用いて説明する。
本実施形態では、第1ファンの駆動源及び制御装置が行う制御が、主に第1実施形態と異なっている。第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
本実施形態に係るエンジン31は、
図3に示すように、第1ファン41と低圧タービン7とが連結されていない。第1ファン41は、第2ファン42と同様に、モータによって回転する電動式のファンである。また、ファンドライブギアも設けられていない。したがって、低圧タービン7は、低圧シャフト40を介して、発電機9のみと連結している。なお、以下の説明では、第1ファン41を回転させるモータを第1モータ43といい、第2ファン42を回転させるモータを第2モータ44という。第2モータ44は、第1実施形態におけるモータ13と同様のものである。
【0063】
本実施形態に係る第1モータ43は、第1ファン41の軸部に設けられているいわゆるインラインモータである。また、第1モータ43は、制御装置45(例えば、インバータ装置)によって、回転数を制御されている。すなわち、制御装置45によって、第1ファン41の回転数を調整することができる。第1モータ43は、発電機9及びバッテリ15からの電力を供給可能に構成されている。すなわち、第1モータ43は、バッテリ15または発電機9からの電力によって回転駆動する。
また、本実施形態においても、第1ファン41の回転方向と、第2ファン42の回転方向は異なる方向とされている。
【0064】
本実施形態に係る制御装置45は、第1モータ43及び第2モータ44の回転数を制御することができる。また、制御装置45は、第1モータ43及び第2モータ44の駆動源を、バッテリ15とするか、発電機9とするかを切り替えることができる。
制御装置45は、航空機の作動状態に応じて、第1モータ43及び第2モータ44の回転数を決定する。また、制御装置45は、航空機の作動状態に応じて、第1モータ43及び第2モータ44の駆動源を決定する。航空機の作動状態とは、例えば、離陸時の状態、巡航時の状態及び着陸時の状態等である。具体的には、制御装置45は、以下の制御を行う。
【0065】
制御装置45は、第1ファン41及び第2ファン42の回転数が、航空機の作動状態に応じた回転数となるように第1モータ43及び第2モータ44の回転数を制御する。例えば、制御装置45は、各々のファンの回転数を、航空機が巡航している際よりも、航空機が離陸する際の方が多くなるように、第1モータ43及び第2モータ44を制御してもよい。すなわち、離陸時等の航空機の推進力が多く求められる場合(換言すれば、エンジン31が大きな出力を発揮する必要がある場合)に、第1ファン41及び第2ファン42の回転数を多くし、巡航時等の航空機の推進力がそれほど多く求められない場合(換言すれば、エンジン31が大きな出力を発揮する必要のない場合)に、第1ファン41及び第2ファン42の回転数を少なくする。また、エンジン31が大きな出力を発揮する必要のない場合には、第1ファン41及び/または第2ファン42を停止するように、第1モータ43及び第2モータ44を制御してもよい。
【0066】
また、制御装置45は、航空機の離陸時には、バッテリ15に蓄えられている電力及び発電機9からの電力によって第1モータ43及び第2モータ44を駆動し、航空機の巡航時には、発電機9で発電された電力によって第1モータ43及び第2モータ44を駆動するように、第1モータ43及び第2モータ44の駆動源を切り替える。
【0067】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0068】
本実施形態では、すべてのファンを電動式ファンとしているので、高圧圧縮機4へ供給する空気の量を精密に調整することができる。
【0069】
また、電動式ファンは、特別な構造を備えることなく、回転方向を自由に設定することができる。これにより、異なる方向に回転するファンを備えるエンジン31において、回転方向を設定するための特別な構造を設ける必要がない。したがって、異なる方向に回転するファンを備えるエンジン1の構造を簡素化することができる。
【0070】
本実施形態では、航空機の作動状態に応じた回転数で第1ファン41及び第2ファン42を回転させることができる。したがって、例えば、離陸時等の航空機の推進力が多く求められる際に、第1ファン41及び第2ファン42の回転数が多くなるようにし、巡航時等の航空機の推進力がそれほど多く求められない際に、第1ファン41及び第2ファン42の回転数が少なくなるようにした場合には、常に航空機の推進力が多く求められる際に応じた回転数で第1ファン41及び第2ファン42を回転する場合と比較して、低燃費化及び小型化することができる。また、高圧部(高圧圧縮機4や燃焼器5)を小型化することで、バイパス比(一次空気量に対する二次空気量の比率)を増大することができるので、低騒音化を図ることができる。
【0071】
本実施形態では、推進力が多く求められる離陸時には、バッテリ15の電力と発電機9の電力とによって第1モータ43及び第2モータ44を駆動している。よって、離陸時に、より多くの推進力を得ることができる。
一方、多くの推進力を求められない巡航時には、バッテリ15に蓄えられている電力を使わない。よって、バッテリ15は、離陸時のみ電力を供給できる程度の容量であればよい。したがって、バッテリ15を小型化することができるので、エンジン31を軽量化することができる。
【0072】
[変形例]
次に、第2実施形態の変形例について、
図4を用いて説明する。
本変形例では、第2実施形態に係る構成と、第1モータ53及び第2モータ54が異なっている。第1モータ43及び第2モータ44以外の構成は、第2実施形態と同様であるので、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0073】
本変形例に係るエンジン50は、
図4に示すように、第1モータ53及び第2モータ54が、各々、第1ファン51及び第2ファン52の翼部の外周部に備えられる外周駆動モータである。
このように、外周駆動モータを用いることにより、容易に第1モータ53及び第2モータ54にアクセスすることができる。したがって、第1モータ53及び第2モータ54のメンテナンスや修理を容易に行うことができる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
【0075】
例えば、上記第1実施形態では、第1ファン11を低圧タービン7の回転駆動力で回転させて、第2ファン12をモータで回転させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1ファン11を、モータで回転させ、第2ファン12を低圧タービン7の回転駆動力で回転させてもよい。
【0076】
また、上記各実施形態では、第1ファンと第2ファンとの回転方向を逆方向にする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1ファンと第2ファンとを同方向に回転させてもよい。
【0077】
また、上記各実施形態では、ファンを2つ設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ファンを3つ以上設けてもよい。ファンを3つ以上設ける場合には、前後方向に隣接するファンの回転方向を異なる回転方向にすると好適である。また、ファンを3つ以上設ける場合であっても、低圧タービン7の回転駆動力によって回転させるファンについては、すべて低圧タービン7の回転方向と同方向に回転するようにすれば、回転方向を変換する機構を設けることなく、エンジンを構成することができる。
【0078】
また、上記各実施形態では、制御装置によって、ファンの回転数及びモータの駆動源を設定したが、本発明はこれに限定されない。操作者によってファンの回転数及びモータの駆動源を設定してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 :エンジン(内燃機関)
2 :外側筐体
3 :内側筐体
4 :高圧圧縮機(圧縮部)
5 :燃焼器(燃焼部)
6 :高圧タービン
7 :低圧タービン(タービン)
8 :高圧シャフト
9 :発電機(発電部)
10 :低圧シャフト
11 :第1ファン(ファン)
12 :第2ファン(ファン)
13 :モータ(電動機)
14 :制御装置
15 :バッテリ
21 :エンジン
23 :モータ
24 :第2ファン
31 :エンジン
40 :低圧シャフト
41 :第1ファン
42 :第2ファン
43 :第1モータ
44 :第2モータ
45 :制御装置
50 :エンジン
51 :第1ファン
52 :第2ファン
53 :第1モータ
54 :第2モータ