(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3204 20160101AFI20221212BHJP
F16J 15/3284 20160101ALI20221212BHJP
【FI】
F16J15/3204 201
F16J15/3284
(21)【出願番号】P 2018191332
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】谷田 昌幸
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-073457(JP,U)
【文献】特開2014-142065(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10340802(DE,A1)
【文献】実開昭60-167263(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204-15/3236
F16J 15/324-15/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに接続された回転軸とハウジングとの間に配されて機内と機外とをシールする密封装置であって、
前記回転軸に摺動可能に接するリップを有し、
外周面が前記ハウジングに接すると共に、前記ハウジングとの間に配されて前記機外からの異物の侵入を抑えつつ前記機内に潤滑材をシールする導電性の弾性体部と、
前記弾性体部と一体に形成され、前記ハウジングの内周面に接する導通面を有する導電性の補強環と、
前記回転軸側で前記弾性体部に接する第1の導通面及び前記ハウジング側で前記補強環に接する第2の導通面を有し、前記第1の導通面と前記第2の導通面との間の導電性が前記弾性体部よりも高い導電用金属環とを備える密封装置。
【請求項2】
前記補強環は、前記弾性体部との間の面に接着剤が塗布されており、
前記導電用金属環は、前記第1の導通面において地金が露出しており、且つ、前記第2の導通面において前記地金が露出している、
請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
モータに接続された回転軸とハウジングとの間に配されて機内と機外とをシールする密封装置であって、
前記回転軸に摺動可能に接するリップを有し、前記回転軸と前記ハウジングとの間に配されて前記機外からの異物の侵入を抑えつつ前記機内に潤滑材をシールする導電性の弾性体部と、
前記弾性体部と一体に形成され、一端が前記ハウジングとの間にスペースを形成する補強環と、
一端が前記スペースにはめ込まれ、前記回転軸側で前記弾性体部に接する第1の導通面及び前記ハウジングに接する第2の導通面を有し、前記第1の導通面と前記第2の導通面との間の導電性が前記弾性体部よりも高い導電用金属環とを備える密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに接続された回転軸とハウジングとの間をシールする密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、EV(Electric Vehicle)及びHV(Hybrid Vehicle)において、モータの回転軸とハウジングとの間には、機内に密封されている潤滑材の機外への漏洩を防止するために、オイルシールである密封装置が設けられている。
このようなEV及びHVでは、モータに生じる誘起電流によって電磁ノイズが生じ、カーオーディオのAMラジオに影響を与えることがある。
【0003】
従来技術の一例である特許文献1には、電動機からの電磁ノイズの発生を低減させることを目的とし、電気自動車の動力伝達系において、金属製の電動機ハウジングと電動機内の回転軸とを電気的に導通させ、回転軸に誘起された電磁ノイズを金属製の電動機ハウジングに逃がす技術が開示されている。
特に、特許文献1の
図4には、電動機ハウジング(14)と電動機(10)内の回転軸(18)とを導電性ゴムから構成されたオイルシール(86)によって電気的に導通させることで、回転軸に誘起された電磁ノイズを金属製の電動機ハウジングに逃がす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術によれば、モータに接続された回転軸とハウジングとの間の電気的な導通を確保することは可能であるが、体積抵抗率については改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、モータに接続された回転軸とハウジングとの間の導通を低コスト且つ省スペースでスムーズに行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決して目的を達成する本発明は、モータに接続された回転軸とハウジングとの間に配されて機内と機外とをシールする密封装置であって、前記回転軸に摺動可能に接するリップを有し、前記回転軸と前記ハウジングとの間に配されて前記機外からの異物の侵入を抑えつつ前記機内に潤滑材をシールする導電性の弾性体部と、前記弾性体部と一体に形成され、前記ハウジングの内周面に接する導通面を有する導電性の補強環と、前記回転軸側で前記弾性体部に接する第1の導通面及び前記ハウジング側で前記補強環に接する第2の導通面を有し、前記第1の導通面と前記第2の導通面との間の導電性が前記弾性体部よりも高い導電用金属環とを備える密封装置である。
【0008】
又は、本発明は、モータに接続された回転軸とハウジングとの間に配されて機内と機外とをシールする密封装置であって、前記回転軸に摺動可能に接するリップを有し、前記回転軸と前記ハウジングとの間に配されて前記機外からの異物の侵入を抑えつつ前記機内に潤滑材をシールする導電性の弾性体部と、前記弾性体部と一体に形成され、一端が前記ハウジングとの間にスペースを形成する補強環と、一端が前記スペースにはめ込まれ、前記回転軸側で前記弾性体部に接する第1の導通面及び前記ハウジングに接する第2の導通面を有し、前記第1の導通面と前記第2の導通面との間の導電性が前記弾性体部よりも高い導電用金属環とを備える密封装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータに接続された回転軸とハウジングとの間の導通を低コスト且つ省スペースでスムーズに行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る密封装置であるオイルシールの装着状態を示す断面図である。
【
図2】実施形態1に係る密封装置であるオイルシールにおいて、回転軸からハウジングへの誘起電流の流れを説明する図である。
【
図3】実施形態2に係る密封装置であるオイルシールの装着状態を示す断面図である。
【
図4】実施形態2に係る密封装置であるオイルシールにおいて、回転軸からハウジングへの誘起電流の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
ただし、本発明は、以下の実施形態の記載によって限定解釈されるものではない。
【0012】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る密封装置であるオイルシール1の装着状態を示す断面図である。
図1に示すオイルシール1は、回転軸51とハウジング52との間に配されて機内Aと機外Bとをシールする密封装置である。
図1に示す回転軸51は、図示しないモータに接続されて回転し、ハウジング52は、接地されている。
また、
図1に示すオイルシール1は、シール部10と、導電用金属環40とを備え、機外Bから機内Aへの異物の侵入を抑えるとともに機内Aの潤滑材の機外Bへの漏洩を防止しつつ、回転軸51とハウジング52との間の導通をスムーズに行うことができる。
【0013】
シール部10は、補強環20と、弾性体部30とを備え、補強環20と弾性体部30とは、一体に形成されている。
また、シール部10は、ハウジング52の内周側(矢印d方向)の面である内周面52aに装着されている。
【0014】
補強環20は、回転軸51の軸線xを中心として金属により形成された導電性の金属環である。
補強環20の材料としては、ステンレス鋼及び冷間圧延鋼(SPCC)を例示することができる。
また、補強環20は、プレス加工又は鍛造によって成形することができる。
【0015】
弾性体部30は、回転軸51の軸線xを中心として弾性材料により形成された略環状の導電性の弾性体である。
弾性体部30の材料としては、合成ゴムを例示することができる。
ここで、合成ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)及びフッ素ゴム(FKM)を例示することができる。
【0016】
また、弾性体部30は、成形型を用いて架橋によって成形することができる。
より具体的には、弾性体部30は、成形型内に配された補強環20に未架橋のゴム材料を接して配し、この成形型により挟んだ状態で成形型内の閉空間を加熱及び加圧することで、架橋により補強環20と一体に形成される。
なお、補強環20と弾性体部30との間には接着材が塗布されている。
【0017】
補強環20は、円筒部20aと、外周側円盤部20bと、テーパー部20cと、内周側円盤部20dとを備え、円筒部20a、外周側円盤部20b、テーパー部20c及び内周側円盤部20dは、一体に形成されている。
また、外周側円盤部20b、テーパー部20c及び内周側円盤部20dは、全体が略S字状のフランジ部を形成している。
【0018】
円筒部20aは、軸線xに略平行な方向に延びる円筒状の部分であり、ハウジング52の内周面52aに接するように、はめ合わせられている。
外周側円盤部20bは、円筒部20aの外側(矢印a方向)の端部から内周側(矢印d方向)に向かって形成された中空円盤状の部分である。
テーパー部20cは、外周側円盤部20bの内周側(矢印d方向)の端部から更に内周側(矢印d方向)及び内側(矢印b方向)に向かって形成された中空円盤状の部分である。
内周側円盤部20dは、テーパー部20cの内周側(矢印d方向)の端部から更に内周側(矢印d方向)に向かって形成された中空円盤状の部分である。
なお、円筒部20aは、未装着状態では外周側(矢印c方向)に向かって膨らんだ形状であってもよい。
【0019】
また、補強環20の装着前には、機械的手段又は化学的手段により、円筒部20aの内周面20a1及び外周面20a2の地金を露出させ、補強環20とハウジング52との導通を確保する。
これは、補強環20と弾性体部30との間に塗布された接着材の一部が補強環20の外周面20a2にも残存しており、この接着材によって導通が阻害されるためである。
ここで、機械的手段としては、研磨及び切削を例示することができ、化学的手段としては、接着材を除去可能な溶液への浸漬を例示することができる。
このような接着材を除去可能な溶液としては、アルカリ洗浄剤又は溶剤を例示することができる。
【0020】
弾性体部30は、リップ被覆部30a,30b,30c,30d及びリップ腰部30eと、リップ31,32,33とを備え、補強環20を外側(矢印a方向)、外周側(矢印c方向)の一部及び内周側(矢印d方向)から覆って、補強環20に一体に形成されている。
【0021】
リップ被覆部30aは、補強環20の円筒部20aにおける外周側(矢印c方向)の一部を覆っている。
リップ被覆部30bは、補強環20の外周側円盤部20bを外側(矢印a方向)から覆っている。
リップ被覆部30cは、補強環20のテーパー部20cを覆い、リップ31の基部である。
リップ被覆部30dは、補強環20の内周側円盤部20dを外側(矢印a方向)から覆っている。
リップ腰部30eは、補強環20の内周側円盤部20dにおける内周側(矢印d方向)の端部の近傍に位置する、リップ32,33の基部である。
また、リップ31は、図示しない構成に摺動可能に接し、リップ32,33は、回転軸51に摺動可能に接し、リップ31,32は、機外Bから機内Aへの異物の侵入を抑えつつ、リップ33は、機内Aの潤滑材の機外Bへの漏洩を防止する。
なお、弾性体部30によって、機外Bから機内Aへの異物の侵入を抑えつつ、機内Aの潤滑材の機外Bへの漏洩を防止することが可能であれば、リップ31,32,33のすべてが設けられていなくてもよく、弾性体部30は、少なくとも一つのリップを備えていればよい。
【0022】
導電用金属環40は、回転軸51の軸線xを中心として金属により形成された導電性の金属環であり、シール部10の機内A側に形成されたスペースに、補強環20に沿ってはめられている。
導電用金属環40は、外周側円筒部40aと、外周側円盤部40bと、テーパー部40cと、内周側円盤部40dと、内周側円筒部40eとを備え、外周側円筒部40a、外周側円盤部40b、テーパー部40c、内周側円盤部40d及び内周側円筒部40eは、一体に形成されている。
【0023】
外周側円筒部40aは、補強環20の円筒部20aの内周側(矢印d方向)に接し、外周側円盤部40bは、補強環20の外周側円盤部20bの内側(矢印b方向)に接し、テーパー部40cは、補強環20のテーパー部20cの内側(矢印b方向)に接し、内周側円盤部40dは、補強環20の内周側円盤部20dの内側(矢印b方向)に接し、内周側円筒部40eは、弾性体部30のリップ腰部30eの外周側(矢印c方向)に接する。
なお、導電用金属環40の材料としては、補強環20と同様に、ステンレス鋼及び冷間圧延鋼(SPCC)を例示することができる。
また、導電用金属環40は、プレス加工又は鍛造によって成形することができる。
ただし、導電用金属環40は、回転軸51とハウジング52との間の導通を確保することが可能であればよく、その構造及び形成材料は特定のものに限定されないが、導電用金属環40の材料は、少なくとも弾性体部30よりも体積抵抗率が低い材料を用いる。
【0024】
なお、内周側円筒部40eの内周面40e1及び外周側円筒部40aの外周面40a1に対しては、上述の円筒部20aの内周面20a1及び外周面20a2と同様に、装着前に機械的手段又は化学的手段により導電用金属環40の地金を露出させることで補強環20と導電用金属環40との導通を確保するとよい。
これは、導電用金属環40の外周面が酸化被膜等の絶縁被膜により覆われていると、この絶縁被膜により導通が阻害されることがあるからである。
ここで、機械的手段としては、上述のように研磨及び切削を例示することができ、化学的手段としては、酸化被膜を除去可能な溶液への浸漬を例示することができる。
このような酸化被膜を除去可能な溶液としては、塩酸又は硫酸等の酸性溶液を例示することができる。
このように、装着前に導通面となる部分の地金を露出させると、導通をスムーズにすることができる。
【0025】
図2は、本実施形態に係る密封装置であるオイルシール1において、回転軸51からハウジング52への誘起電流の流れを説明する図である。
ここで、導電用金属環40とリップ腰部30eとが接した面を第1の導通面101とし、ハウジング52側の導電用金属環40と補強環20とが接した面を第2の導通面102とし、補強環20とハウジング52とが接した面を第3の導通面103とする。
図2に示すように、回転軸51に接続された図示しないモータで生じた誘起電流は、弾性体部30のリップ32,33からリップ腰部30eへ流れ、リップ腰部30eへ到達した電流は、第1の導通面101から弾性体部30よりも体積抵抗率の低い、すなわち導電性の高い導電用金属環40に流れ、導電用金属環40を流れた電流は、第2の導通面102から補強環20及び第3の導通面103を介してハウジング52へと流れる。
【0026】
従来の構成では、モータに生じる誘起電流は弾性体部30内を回転軸51からハウジング52へ流れるため、弾性体部30における体積抵抗率が大きいという問題があった。
そのため、この誘起電流によって電磁ノイズが生じ、カーオーディオのAMラジオが影響を受けるおそれがあった。
しかしながら、上述したように、導電用金属環40を経由する導通経路を設けることにより、誘起電流の体積抵抗率を低くすることができる。
導電用金属環40は、低コストであり占有スペースも小さいため、導電用金属環40によれば、低コスト且つ省スペースで導通経路を確保することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、機械的手段又は化学的手段により補強環20の地金を露出させているが、本発明はこれに限定されるものではない。
補強環20の地金が露出した部分を接着材の塗布前にマスキングテープにより覆い、その後の装着前にこのマスキングテープを剥がすことで導通を確保してもよい。
マスキングテープを用いることにより、機械的手段及び化学的手段を用いることなく導通を確保することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によればモータに接続された回転軸とハウジングとの間の導通を低コスト且つ省スペースでスムーズに行うことができる。
【0029】
<実施形態2>
実施形態1では補強環20に沿った形状の導電用金属環40によって電動機内のハウジング52と回転軸51との間を導通する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施形態では、実施形態1とは異なる形状の導電用金属環を設ける形態について説明する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る密封装置であるオイルシール2の装着状態を示す断面図である。
図3に示すオイルシール2は、
図1に示す補強環20に代えて補強環21を備え、
図1に示す導電用金属環40に代えて導電用金属環41を備える点が
図1に示すオイルシール1と異なり、その他の構成は同じである。
【0031】
補強環21は、外周側円筒部21aと、外周側円盤部21bと、テーパー部21cと、内周側円盤部21dと、外周側円筒部21aに連なって設けられた屈曲部21eと、屈曲部21eに連なって設けられた内周側円筒部21fとを備え、外周側円筒部21a、外周側円盤部21b、テーパー部21c、内周側円盤部21d、屈曲部21e及び内周側円筒部21fは、一体に形成されている。
外周側円筒部21a、外周側円盤部21b、テーパー部21c及び内周側円盤部21dの各々は、
図1に示す外周側円筒部20a、外周側円盤部20b、テーパー部20c及び内周側円盤部20dの各々と同じである。
【0032】
屈曲部21eは、外周側円筒部21aの内側(矢印b方向)の端部から更に内側(矢印b方向)及び内周側(矢印d方向)に向かって形成された中空円盤状の部分である。
内周側円筒部21fは、屈曲部21eの内側(矢印b方向)の端部から軸線xに略平行な方向に延びる円筒状の部分である。
屈曲部21e及び内周側円筒部21fによれば、補強環21とハウジング52との間には導電用金属環41の一端をはめ込むためのスペースが形成される。
【0033】
なお、補強環21の材料及び形成方法は、実施形態1の補強環20と同じである。
また、補強環21は回転軸51とハウジング52との導通経路ではないため、補強環21の装着前には、機械的手段又は化学的手段により地金を露出させることを要しない。
【0034】
導電用金属環41は、シール部11の機内A側に形成されたスペースにはめられている。
導電用金属環41は、外周側円筒部41aと、外周側円盤部41bと、テーパー部41cと、内周側円筒部41dとを備え、外周側円筒部41a、外周側円盤部41b、テーパー部41c及び内周側円筒部41dは、一体に形成されている。
【0035】
外周側円筒部41aは、軸線xに略平行な方向に延びる円筒状の部分であり、補強環21の屈曲部21e及び内周側円筒部21fにより形成されたスペースにはめ込まれてハウジング52の内周面52aに接する。
外周側円盤部41bは、外周側円筒部41aの内側(矢印b方向)の端部から内周側(矢印d方向)に向かって形成された中空円盤状の部分である。
テーパー部41cは、外周側円盤部41bの内周側(矢印d方向)の端部から更に内周側(矢印d方向)及び外側(矢印a方向)に向かって形成された中空円盤状の部分である。
内周側円筒部41dは、テーパー部41cの外側(矢印a方向)の端部から軸線xに略平行な方向に延び、弾性体部30のリップ腰部30eに接する。
なお、テーパー部41cは、
図3に示すように断面において直線状に延びる形状に限定されるものではなく、外周側円盤部41bの内周側(矢印d方向)の端部から内周側円筒部41dの内側(矢印b方向)の端部の間に設けられていればよい。
また、導電用金属環41の材料及び形成方法は、実施形態1の導電用金属環40と同じである。
【0036】
なお、内周側円筒部41dの内周面41d1及び外周側円筒部41aの外周面41a1に対しては、実施形態1と同様に、装着前に機械的手段又は化学的手段により導電用金属環41の地金を露出させることで導電用金属環41の導通を確保するとよい。
これは、導電用金属環41の外周面が酸化被膜等の絶縁被膜により覆われていると、この絶縁被膜により導通が阻害されることがあるからである。
ここで、機械的手段としては、上述のように研磨及び切削を例示することができ、化学的手段としては、上述のように、酸化被膜を除去可能な溶液への浸漬を例示することができる。
このような酸化被膜を除去可能な溶液としては、上述のように、塩酸又は硫酸等の酸性溶液を例示することができる。
このように、装着前に導通面となる部分の地金を露出させると、導通をスムーズにすることができる。
【0037】
図4は、本実施形態に係る密封装置であるオイルシール2において、回転軸51からハウジング52への誘起電流の流れを説明する図である。
ここで、導電用金属環41とリップ腰部30eとが接した面を第1の導通面111とし、導電用金属環41とハウジング52とが接した面を第2の導通面112とする。
図4に示すように、回転軸51に接続された図示しないモータで生じた誘起電流は、弾性体部30のリップ32,33からリップ腰部30eへ流れ、リップ腰部30eへ到達した電流は、弾性体部30と回転軸51側の導電用金属環41とが接する第1の導通面111から弾性体部30よりも体積抵抗率の低い、すなわち導電性の高い導電用金属環41に流れ、導電用金属環41を流れた電流は、ハウジング52と導電用金属環41とが接する第2の導通面112からハウジング52へと流れる。
このように、導電用金属環41は、第1の導通面111と第2の導通面112とを導通させる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によっても、モータに接続された回転軸とハウジングとの間の導通を低コスト且つ省スペースでスムーズに行うことができる。
【0039】
1,2 オイルシール
10,11 シール部
20 補強環
20a 円筒部
20a1 内周面
20a2 外周面
20b 外周側円盤部
20c テーパー部
20d 内周側円盤部
21 補強環
21a 外周側円筒部
21b 外周側円盤部
21c テーパー部
21d 内周側円盤部
21e 屈曲部
21f 内周側円筒部
30 弾性体部
30a,30b,30c,30d リップ被覆部
30e リップ腰部
31,32,33 リップ
40 導電用金属環
40a 外周側円筒部
40a1 外周面
40b 外周側円盤部
40c テーパー部
40d 内周側円盤部
40e 内周側円筒部
40e1 内周面
41 導電用金属環
41a 外周側円筒部
41a1 外周面
41b 外周側円盤部
41c テーパー部
41d 内周側円筒部
41d1 内周面
51 回転軸
52 ハウジング
52a 内周面
101,111 第1の導通面
102,112 第2の導通面
103 第3の導通面