(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】偏心量測定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G01M11/00 L
(21)【出願番号】P 2018192756
(22)【出願日】2018-10-11
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】古河 裕範
(72)【発明者】
【氏名】村田 安規
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-337978(JP,A)
【文献】特開2004-69594(JP,A)
【文献】特開2005-164267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-G01M 11/08
G01B 11/00-G01B 11/30
G02B 7/00-G02B 7/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検光学系
を構成する、それぞれが1つ以上のレンズを含む複数のレンズユニットの各レンズ面の偏心量を測定する方法であって、
前記複数のレンズユニットのうち隣り合うレンズユニットの間隔が異なることにより互いに異なる前記被検光学系の
複数の状態のそれぞれにおいて、対物光学系からの光を用いた測定により、前記
各レンズ面の偏心に関す
るデータを取得する
データ取得ステップと、
前記
データを用いて、
前記複数の状態のそれぞれにおける前記
各レンズ面の偏心量を取得する
偏心量取得ステップと
、を有
し、
前記データ取得ステップは、前記各レンズ面の前記データを、前記複数の状態のうち少なくとも一つの状態において取得し、
前記偏心量取得ステップは、前記複数の状態のうち第1の状態において前記データを取得しなかったレンズ面の前記第1の状態における前記データを、前記複数の状態のうち前記第1の状態を除いた少なくとも一つの状態である第2の状態において取得した前記レンズ面の前記データを用いて取得することを特徴とする偏心量測定方法。
【請求項2】
前記データ取得ステップは、所定の場合を満たすときに、レンズ面の前記データを取得しないことを特徴とする請求項1に記載の偏心量測定方法。
【請求項3】
前記所定の場合は、
前記対物光学系を駆動することができない場合、
前記対物光学系が前記被検光学系と干渉する場合、
レンズ面で反射した光を受光する受光センサの撮像視野外に該レンズ面からの反射像が結像する場合、
前記受光センサ上でのレンズ面からの反射像と該レンズ面との対応関係が不明な場合、
前記受光センサ上でのレンズ面からの反射像がボケる場合、
のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2に記載の偏心量測定方法。
【請求項4】
前記複数のレンズユニットのうちの一つである所定レンズユニット内のレンズ面の数をN、前記複数の状態の数をMとするとき、
前記偏心量取得ステップは、前記データ取得ステップにおいて取得された少なくとも(N+M-1)個の前記データから、前記複数の状態の全てについての前記所定レンズユニット内の前記各レンズ面の前記偏心量を取得することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の偏心量測定方法。
【請求項5】
前記
複数のレンズユニット
のうちの一つである所定レンズユニット内の
レンズ面の数をN、前記複数の
状態の数をMとするとき、
前記偏心量取得ステップは、前記
データ取得ステップにおいて
取得された少なくとも(N+2M-2)個の前
記データから、
前記複数の状態の全てについての前記所定レンズユニット内の前記各レンズ面の前記偏心量を取得することを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載の偏心量測定方法。
【請求項6】
前記
データ取得ステップは、前記
複数のレンズユニットごと
に少なくとも2つの
レンズ面についての前記
データを取得し、
前記
偏心量取得ステップは、前記
複数のレンズユニット
それぞれの平行偏心と傾き偏心を取得することを特徴とする請求項
1から5のいずれか一項に記載の偏心量測定方法。
【請求項7】
前
記データは、前記対物光学系からの光を用いたオートコリメーション法により測定した前記
各レンズ面で反射した光の受光センサ上での像の位置座標または前記被検光学系を回転させたときに前記
各レンズ面で反射した光の前記受光センサにおける像の軌跡の半径であることを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の偏心量測定方法。
【請求項8】
前
記データは、前記対物光学系からの光を用いたオートコリメーション法により測定した前記
各レンズ面で反射した光の受光センサ上での像の位置座標に応じて駆動した前記対物光学系の駆動量であることを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の偏心量測定方法。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の偏心量測定方法を用いて前記偏心量を測定することを特徴とする偏心量測定装置。
【請求項10】
それぞれ1つ以上のレンズを含む複数のレンズユニットにより構成される被検光学系における偏心量を測定する偏心測定装置のコンピュータに、請求項1から
8のいずれか一項に記載の偏心量測定方法に従う処理を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検光学系の偏心量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズにより構成される光学系では、いずれかのレンズが光軸からずれて配置されることで光学性能が低下する。このため、光軸からのレンズのずれ(偏心)を高精度に測定して、レンズの配置を再調整したり、レンズの製造工程を見直したりする必要がある。偏心を測定する方法としては、オートコリメーション法がある。この方法では、光学系の一部を光軸方向に駆動して指標を被検面の見かけの曲率中心位置に投影し、測定基準軸に対する被検面からの反射像の位置に基づいて被検面の偏心量を算出する。
【0003】
特許文献1には、光源からの光をその集光位置を調整する光学系を通して被検光学系の被検面に照射し、被検光学系を回転させた状態で反射像を撮像し、反射像の回転半径および回転方向を測定することで、被検面の偏心量を求める方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、被検光学系を回転させずに、被検光学系の一部を光軸に直交する方向に駆動し、被検面の反射像が基準位置に位置するときの駆動量から被検面の偏心量を測定する方法が開示されている。この方法では、光が垂直に照射されない(曲率中心位置に集光されない)面での反射光は発散して強度が弱くなり検出されず、光が垂直に照射される面からの反射光に応じた信号のみが得られる。また、被検面より前方の面偏心によって被検面からの反射像の位置が変化するため、被検面より前方の面偏心を考慮して、近軸の光線追跡計算により被検面の偏心量が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-112896号公報
【文献】特許第4474150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のレンズユニットを含む光学系には、レンズユニット間の間隔を変化させて光学倍率を変更するズーム機能を有するものがある。ただし、ズームによって、いずれかのレンズユニットを構成するレンズに偏心が生じるおそれがあるため、様々なズーム状態(例えば、ワイド、ミドル、テレ)で偏心測定を行う必要がある。
【0007】
しかしながら、偏心測定を行う被検面の数が多いと、測定に要する時間が長くなる。しかも、レンズ数が多いレンズユニットには、高精度な偏心測定が困難な被検面が存在する場合がある。
【0008】
本発明は、偏心測定に要する時間を短縮し、さらに測定が難しい被検面に対しても精度良く偏心測定を行えるようにした偏心量測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての偏心量測定方法は、被検光学系を構成する、それぞれが1つ以上のレンズを含む複数のレンズユニットの各レンズ面の偏心量を測定する方法である。該方法は、複数のレンズユニットのうち隣り合うレンズユニットの間隔が異なることにより互いに異なる被検光学系の複数の状態のそれぞれにおいて、対物光学系からの光を用いた測定により、各レンズ面の偏心に関するデータを取得するデータ取得ステップと、データを用いて、複数の状態のそれぞれにおける各レンズ面の偏心量を取得する偏心量取得ステップとを有する。データ取得ステップは、各レンズ面のデータを、複数の状態のうち少なくとも一つの状態において取得し、偏心量取得ステップは、複数の状態のうち第1の状態においてデータを取得しなかったレンズ面の第1の状態におけるデータを、複数の状態のうち第1の状態を除いた少なくとも一つの状態である第2の状態において取得したレンズ面のデータを用いて取得することを特徴とする。
【0011】
なお、上記方法を用いて被検光学系における偏心量を測定する装置および上記方法に従う処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムも、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、偏心測定に要する時間を短縮することができ、さらに測定が難しい被検面に対しても精度良く偏心測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1~3の偏心測定装置の構成を示す図。
【
図2】実施例1の偏心量測定処理を示すフローチャート。
【
図3】実施例3の偏心量測定装置を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1である偏心測定装置の構成を示している。
図1において、図の左右方向に延びる軸をX軸とし、後述する被検光学系(被検レンズ)6の第1面の頂点を原点とした左方向をマイナスで、右方向をプラスで表現する。また、図の上下方向に延びる軸をY軸とし、図の紙面に垂直に延びる軸をZ軸とする。
【0016】
照明光源1からの光は指標チャート2を照明する。指標チャート2を透過した光は、ハーフミラー(ビームスプリッター)3を透過し、コリメーター4により平行光に変換され、対物光学系(対物レンズ)5を通過して被検光学系6に照射される。被検光学系6の被検面6aで反射した光は、対物光学系5とコリメーター4を通過して結像面チャート7上に像(反射像)を形成する。反射像および結像面チャート7は、結像レンズ8を介して受光センサとしてのイメージセンサ9により撮像される。
【0017】
指標チャート2において透過部を形成する小径のアパーチャは、十字線、Y軸またはZ軸に対して非対称な形状を有する。結像面チャート7には、十字の点線が描画されており、点線が交差する座標を原点(光軸)としている。
【0018】
指標チャート2と結像面チャート7はハーフミラー3に対して等価な位置に配置されているため、指標チャート2の反射像は、結像面チャート7の位置に、反転した等倍像として形成される。
【0019】
対物光学系5は、駆動ステージ10上に配置され、駆動ステージ10によって光軸(X)方向に駆動される。被検光学系6は、回転ステージ11により保持されるとともに光軸を中心に回転される。
【0020】
イメージセンサ9は、CMOSカメラまたはCCDカメラであり、被検光学系6内の被検面6aで反射した指標チャート2の反射像の光強度を撮像する。コンピュータ12は、イメージセンサ9により撮像された反射像の位置座標を取得し、これを用いて被検面6aの偏心量を算出する。コンピュータ12は、駆動ステージ10および回転ステージ11の駆動を制御する。
【0021】
偏心測定時には、対物光学系5を駆動ステージ10によって光軸方向に移動させ、被検光学系6の各被検面の見かけの球心位置に指標チャート2の像を投影する。被検光学系6を回転ステージ11により光軸(X軸)回りで回転させると、被検面6aで反射した光が作る像は円弧を描く。円弧の半径は、被検面6aの偏心量に依存した値であり、近軸近似の光線追跡計算をすることで偏心量を取得する。
【0022】
被検光学系6は、光学倍率を変更するズームが可能なズームレンズであり、ズームに際して相互間の間隔が変化する複数のレンズユニットにより構成されている。それぞれのレンズユニットは、1つ以上のレンズにより構成されている。被検光学系6のズーム状態(第1および第2の状態:以下、ズームステートという)には、光学倍率が低いワイドや光学倍率が高いテレがある。
【0023】
本実施例および後述する他の実施例では、対物光学系5からの光を用いたオートコリメーション法により被検面の偏心量を測定する。ただし、前述したように、被検光学系6を構成するレンズ数が多くなると、偏心測定が難しい被検面が存在するおそれがある。具体的には、以下のような要因で偏心測定が難しくなる。
・見かけの球心位置が長すぎて対物光学系5を駆動することができない。
・見かけの球心位置が短すぎて対物光学系5が被検光学系6と干渉する。
・被検面の偏心量が大きいことによりイメージセンサ9の撮像視野外に反射像が結像する。
・複数の被検面の見かけの球心位置が互いに近いために反射像と被検面との対応関係が分からない。
・球面収差により、反射像がボケる。
【0024】
実施例1は、上記のような偏心測定が困難な被検面でも精度良くその被検面の偏心量を測定することができる偏心量測定方法を提供する。具体的には、偏心測定が困難な被検面については偏心測定を行わず、異なるズームステートで測定した反射像の回転半径または偏心量を用いて、当該被検面の偏心量を算出する。
【0025】
その前提として、ズームステートが変わる前後にレンズユニットの偏心は変化するが、レンズユニット内の相対的な偏心量は変わらないとして、被検光学系6を回転させながらレンズユニット内の1つの反射像の回転半径を測定する。そして、ズームステートが変わる前に測定した反射像の回転半径を用いて、ズームステートが変わる前後のレンズユニット内のその他の測定していない被検面の偏心量を求める。
【0026】
図2を用いて、本実施例の偏心量測定方法について具体的に説明する。図中のSはステップを意味する。
【0027】
ステップ1では、被検光学系6のズームステートの数をM個、被検光学系6を構成するレンズユニットの数をG個とする。ここでは例として、被検光学系6は3つのレンズユニットにより構成され(G=3)、それぞれのレンズユニットは3つのレンズにより構成されているものとする。偏心測定を行うべき被検面の数は、レンズの数が9枚であるので18枚である。また、被検光学系6における最も前側(
図1における最も左側)のレンズユニットを第1レンズユニットとし、後側に順に第2および第3レンズユニットとする。被検光学系6は、レンズユニット相互間の間隔を変えることでズームを行う。ここでは例として、ズームステートが3つあり(M=3)、それぞれのズームステートをj(=1,2,3)で表す。
【0028】
ズームステートjにおける第i面の曲率半径、面間隔および屈折率をそれぞれ、R(i),d(i,j)およびn(i)とする。iは、1から18の整数である。ズームステートjにおける第i面の偏心量をΔy(i,j)、イメージセンサ9における第i面からの反射光により形成される反射像の回転半径をr(i,j)とする。ここでは、Y方向の偏心のみについて説明する。なお、被検光学系6を回転させずに、反射像の回転半径の代わりにイメージセンサ9における反射像の位置座標と結像面チャート7の像の中心座標との差を用いてもよい。
【0029】
以下のステップの偏心量測定処理は、コンピュータ12がコンピュータプログラムに従って実行する。
【0030】
ステップ2では、コンピュータ12は、ズームステート1~3のそれぞれにおけるイメージセンサ9上での各被検面の反射像の回転半径(被検光学系6を回転させたときの反射像の軌跡の半径)を測定する。このステップ2が、第1のステップおよび第2のステップに相当する。また、ズームステート1~3で得られる反射像の回転半径が、複数のズームステートのそれぞれで得られる被検面の偏心に関する第1のデータおよび第2のデータに相当する。
【0031】
ここでの説明では、ズームステート1~3のそれぞれにおいて、第1レンズユニットの第1面から第6面の反射像の回転半径r(1~6,1~3)を全て測定できたものとする。また、第2レンズユニットについては、ズームステート1では第7面~第9面の反射像の回転半径r(7~9,1)のみを測定でき、ズームステート2では第9面~第11面の反射像の回転半径r(9~11,2)のみを測定できたものとする。さらに、ズームステート3では、第11面と第12面の反射像の回転半径r(11~12,3)のみを測定できたものとする。ズームステートごとに反射像の回転半径rが測定できる被検面が異なるのは、ズームによってレンズユニット間の間隔が変わることで、前述した5つの要因が変化し、反射像の回転半径rを測定できる被検面と測定できない被検面も変化するためである。
【0032】
次のステップ3以降が第3のステップに相当する。ステップ3では、コンピュータ12は、第pレンズユニットのpを1をセットする。
【0033】
ステップ4では、コンピュータ12は、ズームにより発生する第2レンズユニットの傾き誤差は小さいもして、ズームステート2,3におけるズームステート1に対する第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,2),Δv(2,3)を計算する。
【0034】
次にステップ5では、コンピュータ12は、上述したレンズユニットの相対平行偏心量を用いて、レンズユニット内の各被検面の偏心量を計算する。ステップ4とステップ5は、ステップ6にてpがGになるまでステップ7を介して繰り返される。ステップ7では、コンピュータ12はpを1つインクリメントしてステップ4に戻る。
【0035】
第1レンズユニットについては、各ズームステートで全ての被検面の反射像が測定できているので、相対平行偏心量を計算せずに、ズームステート1~3のそれぞれでの第1レンズユニット内の被検面の偏心量Δy(1~6,1~3)をステップ2で測定された反射像の回転半径r(1~6,1~3)から計算する。
【0036】
ズームステート1では、第7~9面の反射像の回転半径Δr(7~9)が測定できているので、それぞれの偏心量Δy(7~9,1)を計算できる。第7~9面の偏心量Δyの計算には、計算された第1~6面の偏心量Δy(1~6,1)を用いて近軸の光線追跡の演算を行う。
【0037】
次に、コンピュータ12は、ズームステート2におけるイメージセンサ9上での第9面の反射像の回転半径がr(9,2)となる第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,2)を計算する。ここでは、ズームステート2における第1~6面の偏心量Δy(1~6,2)と、ズームステート1における第7~9面の偏心量Δy(7~9,1)と、被検光学系6の設計値としての曲率半径R(1~9)、面間隔d(1~8,2)および屈折率n(1~8)とを用いて、近軸の光線追跡の演算を行う。ズームステート2における第7~9面の偏心量Δy(7~9,2)は、ズームステート1における第7~9面の偏心量Δy(7~9,1)とズームステート2における第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,2)とを用いて、式(1)により演算することができる。
【0038】
【0039】
次に、コンピュータ12は、測定されたズームステート2における第10面および第11面の反射像の回転半径r(10,2),r(11,2)と、ズームステート2における第1~9面の偏心量Δy(1~9,2)と、被検光学系6の設計値としての曲率半径R(1~11)、面間隔d(1~10,2)、屈折率n(1~10)から、第10面と11面の偏心量Δy(10,2),Δy(11,2)を計算する。
【0040】
次に、コンピュータ12は、ズームステート3におけるイメージセンサ9上での第11面の反射像の回転半径がr(11,3)となる第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,3)を計算する。ここでは、ズームステート2における第7~11面の偏心量Δy(7~11,2)と、ズームステート3における第1~6面の偏心量Δy(1~6,3)と、被検光学系6の設計値としての曲率半径R(1~11)、面間隔d(1~10,3)および屈折率n(1~10)とを用いて、近軸の光線追跡の演算を行う。ズームステート3における第7~11面の偏心量Δy(7~11,3)は、ズームステート2における第7~11面の偏心量Δy(7~11,2)と、ズームステート2における第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,2)と、ズームステート3における第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,3)とを用いて、式(2)により演算することができる。
【0041】
【0042】
また、コンピュータ12は、ズームステート3における第12面の偏心量Δy(12,3)は、測定されたズームステート3における第12面の反射像の回転半径r(12,3)とズームステート3における第1~11面の偏心量Δy(1~11,3)と、被検光学系6の設計値としての曲率半径R(1~12)、面間隔d(1~11,3)および屈折率n(1~11)とを用いて演算する。これで、ズームステート3における第2レンズユニット内の全ての面に対する測定が行われたことになる。
【0043】
さらにコンピュータ12は、ズームステート2における第12面の偏心量Δy(12,2)を、ズームステート3で測定および計算された第12面の偏心量Δy(12,3)と、ズームステート2における第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,2)と、ズームステート3における第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,3)とを用いて、式(3)により計算する。
【0044】
【0045】
これで、ズームステート2における第2レンズユニット内の全ての被検面に対する測定が行われたことになる。
【0046】
また、コンピュータ12は、ズームステート1における第10~12面の偏心量Δy(10~12,1)を、ズームステート2における第10~12面の偏心量Δy(10~12,2)とズームステート2における第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,2)とを用いて式(4)により、またはズームステート3における第10~12面の偏心量Δy(10~12,3)とズームステート3における第2レンズユニットの相対平行偏心量Δv(2,3)とを用いて式(5)により計算する。
【0047】
【0048】
ここで、iは10~12の整数である。これで、ズームステート1における第2レンズユニット内の全ての被検面に対する測定が行われたことになる。
【0049】
以上の方法により全てのズームステートにおける第2レンズユニット内の全ての被検面の偏心量を測定する。また、第3レンズユニットについても、第2レンズユニットの各被検面の偏心量を計算した方法と同様の方法で、全てのズームステートにおける全ての被検面の偏心量を計算する。
【0050】
以上説明したように、実施例1では、ズームステートごとに面番号の小さい被検面の偏心量Δyを反射像の回転半径rから順次計算する。異なるズームステートで同じ面番号の被検面の偏心量Δyが得られていると、その被検面を含むレンズユニットの相対的な偏心量Δvを計算することができる。このため、測定していない又は測定が難しい被検面であっても異なるズームステートで測定されていれば、その被検面を含むレンズユニットの相対偏心量Δvを用いてその被検面の偏心量を計算することができる。
【0051】
したがって、本実施例によれば、各ズームステートにおいて偏心測定ができない被検面があっても、全てのズームステートにおける全ての被検面の偏心量を得ることができる。また、測定する被検面の数が少ないため、測定時間を短くすることができる。
【0052】
なお、レンズユニット内の被検面の数をN、ズームステートの数(本実施例では3)をM個とするとき、全ズームステートにおける全てのレンズユニット内の全ての被検面の偏心を得るには、少なくとも(N+M-1)個の測定値が必要である。
【0053】
また、本実施例では、例として、ズームに伴うレンズユニットの傾き偏心は小さい場合について説明したが、レンズユニットの平行偏心は小さいものとして、レンズユニットの傾き偏心を算出して各被検面の偏心量を計算することもできる。レンズユニットの傾きの中心座標をそのレンズユニットのうち最も小さい面番号の被検面の頂点座標とすると、例えば、式(1)を式(6)のように変更すればよい。式(6)において、Δθ(2,2)はズームステート2におけるズームステート1に対する第2レンズユニットの傾き偏心量であり、d(k,2)はズームステート2における第k面と第k+1面の間の面間隔である。
【0054】
【0055】
ここで、iは7~9の整数である。他の式(2)~(5)も同様に変更すればよい。
【実施例2】
【0056】
実施例1ではレンズユニットの平行偏心量または傾き偏心量を計算したが、実施例2ではレンズユニット内の少なくとも2つの被検面の反射像の回転半径を測定し、該レンズユニットの平行偏心量と傾き偏心量の両方を計算することで、より高精度に被検面の偏心量を計算(測定)する。
【0057】
偏心量測定装置の構成と被検光学系6は実施例1と同じである。ここでは、ズームステート1(複数のズームステートの一部)で全ての被検面の偏心量Δy(1~18,1)が測定できたものとする。また、ズームステート2においてはイメージセンサ9上での第2面と第5面の反射像の回転半径r(2,2),r(5,2)が測定できたものとする。そして、ズームステート2におけるズームステート1に対する第1レンズユニットの相対平行偏心量をΔv(1,2)、傾き偏心量をθ(1,2)とする。
【0058】
コンピュータ12は、ズームステート1において測定した第1~5面の偏心量Δy(1,1)~Δy(5,1)と、被検光学系6の設計値としての曲率半径R(i=1~5)、面間隔d(1~4,2)および屈折率n(1~4)とを用いて、近軸近似の光線追跡の演算を行う。そして、コンピュータ12は、イメージセンサ9上での第2面と第5面の反射像の回転半径がそれぞれr(2,2),r(5,2)となるズームステート2における第1レンズユニットの平行偏心量Δv(1,2)と傾き偏心量θ(1,2)を計算する。この際、第1レンズユニットの傾きの回転中心は、第1面の頂点座標とする。コンピュータ12は、ズームステート2における第1レンズユニットの各被検面の偏心量Δy(1~6,2)を、ズームステート1における各被検面の偏心量Δy(1~6,1)、ズームステート2における第1レンズユニットの平行偏心量Δv(1,2)、傾き偏心量Δθ(1,2)および面間隔d(1~5,2)を用いて、式(7)により計算することができる。
【0059】
【0060】
ここで、iは1~6の整数である。以上の方法によって、ズームステート2における第1レンズユニットの全ての被検面の偏心量Δy(1~6,2)を、第1レンズユニット内の2つの被検面の反射像の回転半径を測定するだけで得ることができる。同様に、ズームステート2における第2レンズユニットおよび第3レンズユニットについても、ズームステート2における第7~12面と第8面~18面のうちそれぞれ2つの被検面の反射像の回転半径を測定するだけで、第7~12面と第8面~18面の偏心量Δy(7~18,2)を得ることができる。
【0061】
従来、ズームステート2では18回の偏心測定を行う必要があったが、本実施例の方法では6回の偏心測定を行えばよい。このため、測定時間を1/3に短縮することができる。また、ズーム時にレンズユニットに平行偏心や傾き偏心が生じても、レンズユニット内の被検面の偏心を高精度に測定することができる。
【0062】
なお、レンズユニット内の被検面の数をN、ズームステートの数(本実施例では3)をM個とするとき、全ズームステートにおける全てのレンズユニット内の全ての被検面の偏心を得るには、少なくとも(N+2M-2)個の測定値が必要である。
【0063】
本実施例の方法を実施例1にも適用することができる。例えば、ズームステート1で第7~10面、ズームステート2で第9~11面、ズームステート3で第10~12面の反射像の回転半径を測定すれば、ズームステート2と3における第2レンズユニットの相対平行偏心量v(2,2~3)と傾き偏心量θ(2,2~3)を計算することができる。このため、前述した計算と同様の計算により、各ズームステートにおける第2レンズユニット内の全ての被検面の偏心量を得ることができる。
【0064】
なお、測定する被検面は連続している必要はなく、測定する被検面間に測定しない被検面があってもよい。例えば、ズームステート1において第9,11,12面の反射像の回転半径を測定し、ズームステート2で第7~9,12面の反射像の回転半径を測定し、ズームステート3で第8,10,11面の反射像の回転半径を測定すれば、各ズームステートにおける第2レンズユニット内の全ての被検面の偏心量を得ることができる。
【実施例3】
【0065】
実施例1および実施例2では異なるズームステートにおける面偏心に起因する測定データを用いて被検面の偏心量を計算する方法について説明した。これに対して、実施例3では単独のレンズユニットにおいて得られた偏心測定データを用いて、被検光学系を組み上げた後の偏心量を計算する方法について説明する。
【0066】
偏心量測定装置の構成と被検光学系6は実施例1と同じである。
図3を用いて、本実施例の偏心量測定方法について具体的に説明する。ステップ11(第1のステップ)では、レンズユニットごとに単独で偏心量想定装置に設置する(第1の状態)。そして、コンピュータ12は、単独設置されたレンズユニットの各被検面のイメージセンサ9上での反射像の回転半径(第1のデータ)を測定し、該回転半径を用いて偏心量Δys(i)を計算する。iは1~18の整数である。本実施例では、一度に偏心測定を行うレンズ数が少なくなるので、偏心測定が容易になる。
【0067】
次にステップ12では、設計値に従ってレンズユニットを配置し、被検光学系6を組み立てる。
【0068】
次にステップ13では、組み立てられた被検光学系6を偏心量測定装置に設置し(第2の状態)、各レンズユニットにおける少なくとも2つの被検面の反射像の回転半径を測定する。ここでは、第2,6,8,12,13および16面のイメージセンサ9上での反射像の回転半径r(2),r(6),r(8),r(12),r(13)およびr(16)を測定するものとする。
【0069】
次にステップ14では、コンピュータ12は、レンズユニットの偏心量を計算する。まず、偏心量測定装置の光軸に対する第j(=1~3)レンズユニットの平行偏心量をΔv(j)、傾き偏心量をΔθ(j)とする。コンピュータ12は、レンズユニット単独で測定された各被検面の偏心量Δys(1~6)と被検光学系6の設計値としての曲率半径R(1~6)、面間隔d(1~5)および屈折率n(1~5)を用いて、近軸近似の光線追跡の演算を行う。この際、コンピュータ12は、第2面と第6面のイメージセンサ9上での反射像の回転半径がそれぞれr(2)とr(6)となる第1レンズユニットの平行偏心量Δv(1)と傾き偏心量Δθ(1)を計算する。
【0070】
次にステップ15では、コンピュータ12は、レンズユニット内の第i面(i=1~6)の偏心量Δy(i)を以下の式(8)により計算する。
【0071】
【0072】
ここで、iは1~6の整数である。コンピュータ12は、第2レンズユニットの各被検面の偏心量についても、ステップ14およびステップ15と同様に計算する。すなわち、コンピュータ12は、測定された各被検面の偏心量Δys(1~12)と設計値としての曲率半径R(1~12)、面間隔d(1~11)および屈折率n(1~11)を用いて、近軸近似の光線追跡の演算を行う。この際、コンピュータ12は、第8面と第12面のイメージセンサ9上での反射像の回転半径がそれぞれr(8)、r(12)となる第2レンズユニットの平行偏心量Δv(2)と傾き偏心量Δθ(2)を計算する。第2レンズユニット内の第i面(i=7~12)の偏心量Δy(i)は、以下の式(9)で計算することができる。
【0073】
【0074】
ここで、iは7~12の整数である。コンピュータ12は、第3レンズユニットの各被検面の偏心量についても、ステップ14およびステップ15と同様に計算する。すなわち、コンピュータ12は、測定された各被検面の偏心量Δys(1~16)と設計値としての曲率半径R(1~16)、面間隔d(1~15)および屈折率n(1~15)を用いて、近軸近似の光線追跡の演算を行う。この際、コンピュータ12は、第13面と第16面のイメージセンサ9上での反射像の回転半径がそれぞれr(13)、r(16)となる第3レンズユニットの平行偏心量Δv(3)と傾き偏心量Δθ(3)を計算する。第3レンズユニット内の第i面(i=13~18)の偏心量Δy(i)は、以下の式(10)で計算することができる。
【0075】
【0076】
ここで、iは13~18の整数である。以上の方法により、レンズユニット単独で取得した偏心測定データを用いて、被検光学系6を組み上げた後の偏心量を計算する。なお、被検光学系6の中で偏心敏感度の高いレンズユニットのみを選択して該レンズユニット単独で偏心測定を行い、被検光学系6を組み上げた後にその偏心測定を行ったレンズユニットのうち少なくとも2つの被検面の偏心測定を行って該レンズユニット内の各被検面の偏心量を求めてもよい。
【0077】
本実施例によれば、それぞれのレンズユニット単独で偏心測定を行うため、高精度な偏心測定を容易に行うことができる。
【実施例4】
【0078】
実施例1~3では、被検光学系6を回転させ、イメージセンサ9上での被検面の反射像の回転半径から該被検面の偏心量を計算した。これに対して、実施例4では、被検光学系6を回転させずに固定し、対物光学系5を光軸に直交する面内で駆動して、その駆動量から被検面の偏心量を計算する方法を説明する。
【0079】
図4は、実施例4である偏心測定装置の構成を示している。本実施例の偏心測定装置は、対物光学系5を光軸に直交する面(YZ面)内で駆動するためのYZステージ13が設けられている点と、被検光学系6を回転させる駆動機構がない点で実施例1(
図1)の偏心測定装置と異なる。
【0080】
本実施例における偏心量測定方法は以下の通りである。本実施例では、被検面6aの見かけの球心位置に光が集光するように対物光学系5をX方向に駆動する。このとき、被検面6aで反射した光により形成される指標チャート2の像(反射像)がイメージセンサ9により撮像される。被検面6aが偏心している場合には、反射像の座標が結像面チャート7の像の中心からずれる。
【0081】
このため、指標チャート2の像の中心が結像面チャート7の像の中心と一致するように、YZステージ13を用いて対物光学系5をYZ面内で駆動する。そのときの駆動量は、実施例1~3で説明したイメージセンサ9上での反射像の回転半径に相当する。このため、コンピュータ12は、各被検面における対物光学系5の駆動量を測定し、実施例1~3にて説明した方法によって各被検面の偏心量を計算する。対物光学系5を光軸に直交するYZ面内で駆動することで、反射像がイメージセンサ9の視野から外れても被検面の偏心量を測定することができる。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0082】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 光源
2 指標チャート
5 対物光学系
6 被検光学系
6a 被検面
7 結像面チャート
9 イメージセンサ
11 回転ステージ
12 コンピュータ