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特許7191636組織近接指標のためのベースラインインピーダンスマップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】組織近接指標のためのベースラインインピーダンスマップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/367 20210101AFI20221212BHJP
   A61B 5/0538 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/0538
A61B5/367 100
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018196443
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2019076709
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】15/788,286
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・オサドチー
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】リロン・シュムエル・ミズラヒ
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502556(JP,A)
【文献】特表2009-518130(JP,A)
【文献】特開2017-142788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的インタフェースと、
プロセッサであって、
被験者の心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築することであって、該3次元セルのそれぞれが、該心臓内のそれぞれの体積に対応しており、
該セルの少なくともいくつかが、ベースラインインピーダンスセルとして指定されており、該ベースラインインピーダンスセルのそれぞれについて、該BIMがそれぞれのベースラインインピーダンスを特定する、こと、
該電気的インタフェースを介して受信された信号に基づいて、該心臓内にあるカテーテル電極と、該被験者に外部接続される外部電極との間のインピーダンスを確認すること、
該ベースラインインピーダンスセルのうち1つを参照セルとして特定すること、
該確認されたインピーダンスを、該参照セルについて特定された該ベースラインインピーダンスと比較することにより、該カテーテル電極が該心臓の組織の閾値距離内にあることを確認すること、及び、
該カテーテル電極が該組織の該閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織のマップを更新すること、を行うよう構成されている、プロセッサと、
を含む、装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記カテーテル電極が前記組織の前記閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織の前記マップを更新して該カテーテル電極の位置を組み込むよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記カテーテル電極が前記組織の前記閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織の前記マップを更新して、該電極により取得された心電図信号に含まれる情報を組み込むよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記ベースラインインピーダンスセルのうち1つの中心が、該ベースラインインピーダンスセルの他のいずれか1つの中心が対応する他のどの位置よりも前記カテーテル電極の位置に近い位置に対応することに応じて、該ベースラインインピーダンスセルの該1つを前記参照セルとして特定するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記カテーテル電極の前記位置が前記ベースラインインピーダンスセルの前記1つが対応する前記体積内に含まれることに応じて、該ベースラインインピーダンスセルの該1つを前記参照セルとして特定するよう構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記確認されたインピーダンスと、前記参照セルに対して特定された前記ベースラインインピーダンスとを比較するよう構成されており、これは、
該確認されたインピーダンスの実部と、該ベースラインインピーダンスの実部との間の比を計算することと、
該比を、比閾値と比較することと、
によって行われる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記確認されたインピーダンスと、前記参照セルに対して特定された前記ベースラインインピーダンスとを比較するよう構成されており、これは、
前記確認されたインピーダンスの位相と、前記ベースラインインピーダンスの位相との差を計算することと、
該差を、位相差閾値と比較することと、
によって行われる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
電気的インタフェースと、
プロセッサであって、
被験者の心臓内の複数の異なる体積のうち体積毎に、該電気的インタフェースを介して受信した信号に基づいて、該体積内のカテーテル電極と、該被験者に外部接続された外部電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを確認すること、
該心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築することであって、該3次元セルのそれぞれが、該体積のそれぞれの1つに対応しており、この構築は、
該セルの第1のサブセットの各セルについて、該セルが対応する該体積に関して確認された該1つ又は2つ以上のインピーダンスに基づいて、それぞれの代表的インピーダンスを計算することと、
該セルの該第1のサブセットの中のサブセットである、該セルの第2のサブセットをベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
により行われ、該ベースラインインピーダンスセルの各セルは、それぞれのベースラインインピーダンスとして、該セルの該代表的インピーダンスを有する、こと、
該BIMを構築することに続いて、該ベースラインインピーダンスセルのうち1つの該ベースラインインピーダンスに基づいて、該カテーテル電極が該心臓の組織の閾値距離内にあることを確認すること、及び、
該カテーテル電極が該閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織のマップを更新すること、を行うよう構成されている、プロセッサと、
を含む、装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記セルが対応する前記体積について確認された前記インピーダンスの少なくともいくつかを平均することによって、該セルの前記代表的インピーダンスを計算するよう構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記閾値距離が第1の閾値距離であり、前記プロセッサは、前記セルの前記第2のサブセットを、前記ベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、該第2のサブセットの少なくとも1つのセルについて、
該セルから第2の閾値距離内にある、前記第1のサブセットの他のセルを、該セルの第3のサブセットとして特定することと、
該セルの該第3のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、該セルを、潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
該セルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定した後に、やはり潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定されかつ該セルから第3の閾値距離内にある該第1サブセットの他のセルを、該セルの第4のサブセットとして特定することと、
該セルの該第4のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、該セルを、該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記セルを、潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、
該セルの前記代表的インピーダンスと、該セルの前記第3のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスとの間の、類似性の少なくとも1つの尺度を計算することと、
該セルの該第3のサブセットの該それぞれの代表的インピーダンスの、ばらつきの少なくとも1つの尺度を計算することと、
該類似性の尺度及び該ばらつきの尺度に応じて、該セルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
によって行われる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記セルを、前記ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定するよう構成されており、この指定は、
該セルの前記代表的インピーダンスと、該セルの前記第4のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスとの間の、類似性の少なくとも1つの尺度を計算することと、
該類似性の尺度に応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記セルを、前記ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定するよう構成されており、この指定は、
該セルの前記第4のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスに、線をフィッティングすることと、
該セルの該代表的インピーダンスと該線との間の距離が第4の閾値距離未満であることに応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記閾値距離が第1の閾値距離であり、前記プロセッサは、前記セルの前記第2のサブセットを、前記ベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、該第2のサブセットの少なくとも1つのセルについて、
該第2のサブセットに属し、かつ、既に該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定されている、シードセルを選択することと、
既に該ベースラインインピーダンスセルのそれぞれの1つとして指定されており、かつ該シードセルから第2の閾値距離内にある、該第2のサブセットの他のセルを、該セルの第3のサブセットとして特定することと、
該セルの該第3のサブセット及び該選択されたシードセルのそれぞれのベースラインインピーダンスに、線をフィッティングすることと、
該セルと該シードセルとの間の距離が第3の閾値距離未満であることに基づいて、該セルを選択することと、
該セルを選択した後、該セルの該代表的インピーダンスと該線との間の距離が第4の閾値距離未満であることに応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる、請求項8に記載の装置。
【請求項15】
前記プロセッサは更に、前記線の勾配強度が、勾配強度閾値よりも小さいことを確認するよう構成されており、該プロセッサは、該勾配強度が該勾配強度閾値よりも小さいことに応じて該セルを選択するように構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記プロセッサが更に、
前記BIMを構築した後に、前記カテーテル電極と前記外部電極との間の少なくとも1つの他のインピーダンスを確認すること、及び、
該他のインピーダンスに基づいて、該BIMを再構築すること、を行うよう構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサは更に、
前記カテーテル電極が、前記BIMの再構築の前に前記心臓の組織の前記閾値距離内にあったことを、該再構築されたBIMを用いて確認すること、及び、
該カテーテル電極が該閾値距離内にあったことの確認に応じて、該組織の前記マップを更新すること、を行うよう構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記カテーテル電極が第1のカテーテル電極であり、前記BIMが第1のBIMであり、前記インピーダンスが第1のインピーダンスであり、
前記プロセッサは更に、
前記異なる体積のうち少なくともいくつかの各体積について、該体積内にある第2のカテーテル電極と、前記外部電極との間の、1つ又は2つ以上の第2のインピーダンスを確認すること、
該確認された第2のインピーダンスに基づいて、該第1のBIMに少なくとも部分的に重なる第2のBIMを計算することであって、
該第2のBIMの該ベースラインインピーダンスセルの少なくともいくつかのそれぞれが、該第1のBIMの該ベースラインインピーダンスセルの対応する1つの該ベースラインインピーダンスとは異なるベースラインインピーダンスを有する、こと、
該第1のBIMの該ベースラインインピーダンスと該第2のBIMの該ベースラインインピーダンスとの間を尺度化する、少なくとも1つのスケール因子を確認すること、
該確認されたスケール因子を用いて、該第1のBIMと該第2のBIMとを統合することにより、統合されたBIMを構築すること、
該統合されたBIMを用いて、該第1のカテーテル電極が該組織の前記閾値距離内にあることを確認すること、及び、
該統合されたBIMを用いて、該第2のカテーテル電極が該組織の該閾値距離内にあることを確認すること、を行うよう構成されている、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置の分野に関し、特に、電気解剖学的マッピング用カテーテルなどの心腔内カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの用途で、1つ又はそれ以上の電極を含むカテーテルが、被験者の心臓に挿入され、これは次に、心臓の組織の電気解剖学的マッピングを実行する、及び/又は他の機能を実行するのに使用される。
【0003】
米国特許出願公開第2010/0286550号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、一方法を記述しており、この方法は、3つ以上の電極を備えるカテーテルを心臓内に挿入することと、これらの電極のうち少なくともいくつかの電極間に電流を流すことと、この電流に応じて、1つ又は2つ以上の電極の各々での電気信号を測定することとを含む。この方法は更に、測定された電気信号に基づいて心臓の少なくとも一部の境界を決定することと、心臓の境界全体よりも少ない一部分を表示することとを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のいくつかの実施形態に従い、電気的インタフェース及びプロセッサを備える装置が提供される。このプロセッサは、被験者の心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築するよう構成され、この3次元セルのそれぞれは、心臓内のそれぞれの体積に対応しており、これらセルの少なくともいくつかが、ベースラインインピーダンスセルとして指定されており、ベースラインインピーダンスセルのそれぞれについて、BIMがそれぞれのベースラインインピーダンスを特定する。このプロセッサは更に、電気的インタフェースを介して受信された信号に基づいて、心臓内にあるカテーテル電極と、被験者に外部接続される外部電極との間のインピーダンスを確認するように構成されている。このプロセッサは更に、ベースラインインピーダンスセルのうち1つを参照セルとして特定すること、確認されたインピーダンスを、参照セルについて特定されたベースラインインピーダンスと比較することにより、カテーテル電極が心臓の組織の閾値距離内にあることを確認すること、及び、カテーテル電極が組織の閾値距離内にあることの確認に応じて、組織のマップを更新すること、を行うよう構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、カテーテル電極が組織の閾値距離内にあることの確認に応じて、組織のマップを更新してカテーテル電極の位置を組み込むよう構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、カテーテル電極が組織の閾値距離内にあることの確認に応じて、組織のマップを更新して、電極により取得された心電図信号に含まれる情報を組み込むよう構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、ベースラインインピーダンスセルの1つの中心が、ベースラインインピーダンスセルの他のいずれか1つの中心が対応する他のどの位置よりもカテーテル電極の位置に近い位置に対応することに応じて、ベースラインインピーダンスセルの1つを参照セルとして特定するよう構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、カテーテル電極の位置がベースラインインピーダンスセルの1つが対応する体積内に含まれることに応じて、ベースラインインピーダンスセルの1つを参照セルとして特定するよう構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、確認されたインピーダンスと、参照セルに対して特定されたベースラインインピーダンスとを比較するよう構成されており、これは、
確認されたインピーダンスの実部と、ベースラインインピーダンスの実部との間の比を計算することと、
この比を、比閾値と比較することと、によって行われる。
【0010】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、確認されたインピーダンスと、参照セルに対して特定されたベースラインインピーダンスとを比較するよう構成されており、これは、
確認されたインピーダンスの位相と、ベースラインインピーダンスの位相との差を計算することと、
この差を、位相差閾値と比較することと、によって行われる。
【0011】
更に、本発明のいくつかの実施形態により、電気的インタフェース及びプロセッサを含む装置が提供される。このプロセッサは、被験者の心臓内の複数の異なる体積のうち体積毎に、電気的インタフェースを介して受信した信号に基づいて、その体積内のカテーテル電極と、被験者に外部接続された外部電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを確認するように構成されている。このプロセッサは更に、心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築するよう構成され、この3次元セルのそれぞれが、体積のそれぞれ1つに対応しており、この構築は、セルの第1のサブセットの各セルについて、セルが対応する体積に関して確認された1つ又は2つ以上のインピーダンスに基づいて、それぞれの代表的インピーダンスを計算することと、セルの第1のサブセットの中のサブセットである、セルの第2のサブセットをベースラインインピーダンスセルとして指定することと、により行われ、ベースラインインピーダンスセルの各セルは、それぞれのベースラインインピーダンスとして、そのセルの代表的インピーダンスを有する。このプロセッサは更に、BIMを構築することに続いて、ベースラインインピーダンスセルのうち1つのベースラインインピーダンスに基づいて、カテーテル電極が心臓の組織の閾値距離内にあることを確認すること、及び、そのカテーテル電極が閾値距離内にあることの確認に応じて、組織のマップを更新すること、を行うように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、セルが対応する体積について確認された、インピーダンスの少なくともいくつかを平均することによって、セルの代表的インピーダンスを計算するよう構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、この閾値距離は第1の閾値距離であり、このプロセッサは、セルの第2のサブセットを、ベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、第2のサブセットの少なくとも1つのセルについて、
そのセルから第2の閾値距離内にある、第1のサブセットの他のセルを、セルの第3のサブセットとして特定することと、
そのセルの第3のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、そのセルを、潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
そのセルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定した後に、やはり潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定されかつセルから第3の閾値距離内にある第1サブセットの他のセルを、セルの第4のサブセットとして特定することと、
そのセルの第4のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、そのセルを、ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、によって行われる。
【0014】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、セルを、潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、
セルの代表的インピーダンスと、そのセルの第3のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスとの間の、類似性の少なくとも1つの尺度を計算することと、
セルの第3のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスの、ばらつきの少なくとも1つの尺度を計算することと、
類似性の尺度及びばらつきの尺度に応じて、セルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
によって行われる。
【0015】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、セルを、ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定するよう構成されており、この指定は、
セルの代表的インピーダンスと、そのセルの第4のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスとの間の、類似性の少なくとも1つの尺度を計算することと、
類似性の尺度に応じて、セルをベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる。
【0016】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、セルを、ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定するよう構成されており、この指定は、
セルの第4のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに、線をフィッティングすることと、
セルの代表的インピーダンスとこの線との間の距離が第4の閾値距離未満であることに応じて、セルをベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる。
【0017】
いくつかの実施形態において、この閾値距離は第1の閾値距離であり、このプロセッサは、セルの第2のサブセットを、ベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、第2のサブセットの少なくとも1つのセルについて、
第2のサブセットに属し、かつ、既にベースラインインピーダンスセルの1つとして指定されている、シードセルを選択することと、
既にベースラインインピーダンスセルのそれぞれの1つとして指定されており、かつシードセルから第2の閾値距離内にある、第2のサブセットの他のセルを、セルの第3のサブセットとして特定することと、
セルの第3のサブセット及び選択されたシードセルのそれぞれのベースラインインピーダンスに、線をフィッティングすることと、
そのセルとシードセルとの間の距離が第3の閾値距離未満であることに基づいて、セルを選択することと、
セルを選択した後、セルの代表的インピーダンスとこの線との間の距離が第4の閾値距離未満であることに応じて、セルをベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる。
【0018】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは更に、線の勾配強度が、勾配強度閾値よりも小さいことを確認するよう構成されており、プロセッサは、この勾配強度が勾配強度閾値よりも小さいことに応じてセルを選択するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは更に、
BIMを構築した後に、カテーテル電極と外部電極との間の少なくとも1つの他のインピーダンスを確認すること、及び、
他のインピーダンスに基づいて、BIMを再構築すること、を行うよう構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは更に、
カテーテル電極が、BIMの再構築の前に心臓の組織の閾値距離内にあったことを、再構築されたBIMを用いて確認すること、及び、
カテーテル電極が閾値距離内にあったことの確認に応じて、組織のマップを更新すること、を行うよう構成されている。
【0021】
いくつかの実施形態において、
カテーテル電極は第1のカテーテル電極であり、BIMは第1のBIMであり、インピーダンスは第1のインピーダンスであり、
このプロセッサは更に、
異なる体積のうち少なくともいくつかの各体積について、その体積内にある第2のカテーテル電極と、外部電極との間の、1つ又は2つ以上の第2のインピーダンスを確認すること、
その確認された第2のインピーダンスに基づいて、第1のBIMに少なくとも部分的に重なる第2のBIMを計算することであって、
第2のBIMのベースラインインピーダンスセルの少なくともいくつかのそれぞれが、
第1のBIMのベースラインインピーダンスセルの対応する1つのベースラインインピーダンスとは異なるベースラインインピーダンスを有する、こと、
第1のBIMのベースラインインピーダンスと第2のBIMのベースラインインピーダンスとの間を尺度化する、少なくとも1つのスケール因子を確認すること、
確認されたスケール因子を用いて、第1のBIMと第2のBIMとを統合することにより、統合されたBIMを構築すること、
統合されたBIMを用いて、第1の電極が組織の閾値距離内にあることを確認すること、及び、
統合されたBIMを用いて、第2の電極が組織の閾値距離内にあることを確認すること、を行うよう構成されている。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態により更に、一方法が提供され、この方法は、被験者の心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築することを含み、この3次元セルのそれぞれは、心臓内のそれぞれの体積に対応しており、これらセルの少なくともいくつかは、ベースラインインピーダンスセルとして指定されており、ベースラインインピーダンスセルのそれぞれについて、BIMがそれぞれのベースラインインピーダンスを特定する。この方法は更に、プロセッサにより、心臓内にあるカテーテル電極と、被験者に外部接続される外部電極との間のインピーダンスを確認することを含む。この方法は更に、ベースラインインピーダンスセルのうち1つを参照セルとして特定することと、確認されたインピーダンスを、参照セルについて特定されたベースラインインピーダンスと比較することにより、カテーテル電極が心臓の組織の閾値距離内にあることを確認することと、カテーテル電極が組織の閾値距離内にあることの確認に応じて、組織のマップを更新することと、を含む、方法。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態により更に、一方法が提供され、この方法は、被験者の心臓内の複数の異なる体積のうち体積毎に、プロセッサにより、その体積内のカテーテル電極と、被験者に外部接続された外部電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを確認することを含む。この方法は更に、心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築することを含み、この3次元セルのそれぞれが、体積のそれぞれ1つに対応しており、この構築は、セルの第1のサブセットの各セルについて、セルが対応する体積に関して確認された1つ又は2つ以上のインピーダンスに基づいて、それぞれの代表的インピーダンスを計算することと、セルの第1のサブセットの中のサブセットである、セルの第2のサブセットをベースラインインピーダンスセルとして指定することと、により行われ、ベースラインインピーダンスセルの各セルは、それぞれのベースラインインピーダンスとして、そのセルのそれぞれのインピーダンスを有する。この方法は更に、BIMを構築することに続いて、ベースラインインピーダンスセルのうち1つのベースラインインピーダンスに基づいて、カテーテル電極が心臓の組織の閾値距離内にあることを確認することと、カテーテル電極が閾値距離内にあることの確認に応じて、組織のマップを更新することと、を含む、方法。
【0024】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明を図面と併せ読むことによってより深い理解がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のいくつかの実施形態による、電気解剖学的マッピング用のシステムの概略図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態による、ベースラインインピーダンスマップ(BIM)の概略図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態による、代表的インピーダンスセルをベースラインインピーダンスセルとして指定するための方法の概略図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による、ベースラインインピーダンスセルの更なる指定のための方法の概略図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態による、複数のBIMを統合するための技法の概略図である。
図6】本発明のいくつかの実施形態による、BIMを用いて電気解剖学的マッピングを行うための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
概説
心臓内カテーテルを用いて被験者に処置を行う場合、カテーテルが組織に接触しているかどうか、又は少なくとも組織の所与の閾値距離内であるかどうかを知ることが、しばしば役に立つ。仮説的に、カテーテルを操作する医師は、触覚フィードバックに基づいて、及び/又は、カテーテルの遠位端の1つ又は2つ以上の電極により取得された心電図(ECG)信号の強度に基づいて、そのカテーテルの組織に対する近接性の程度を確認するよう試みることができる。しかしながらこの方法は、実施が困難であり得、特に、カテーテルが複数の電極を含む場合、医師は、各電極の近接性に関する判定を別々に行う必要が生じ得る。更に、電極によって取得されたECG信号が自動的に近接性を確認するよう処理できる場合であっても、一部の組織は電気的に不活性であるため、ECG信号の取得ができなくなる。
【0027】
したがって、本発明の実施形態は、カテーテル電極の組織に対する近接性の指標として、カテーテル電極と、被験者に外部接続された他の電極との間のインピーダンスを使用する。一般に、血液は組織より電気抵抗が低いため、カテーテル電極が組織に近づくにつれて、カテーテル電極と外部電極との間のインピーダンス「Z」の実部「Re(Z)」が増加する。更に、カテーテル電極が組織に近づくにつれて、インピーダンスの位相「Arg(Z)」が減少する。ゆえに、血液に対するベースラインRe(Z)値よりも十分に大きいRe(Z)値、及び/又はベースラインArg(Z)値よりも十分に小さいArg(Z)値とを登録することによって、カテーテル電極が組織の閾値距離内にあることを確認することが可能になる。
【0028】
しかしながら、この方法を用いても、ベースライン値が、組織への近接に伴って生じる変化と同様の規模で、位置に応じて変化する可能性があるという点で、課題が生じる。例えば、いくつかの位置において、組織への近接性によりRe(Z)は95オームのベースライン値から100オームの値へと増加し得るが、別の位置において、これらの値はそれぞれ90オーム、95オームであり得る。そのような場合、90オームから95オームへの増加を登録すると、カテーテルが組織の近くにあるのか、それとも、心臓の腔内のベースライン値が95オームである別の場所に単に移動したのかを確認することが困難になり得る。
【0029】
この課題に対処するために、本発明の実施形態は、カテーテルを使用してベースラインインピーダンスマップ(BIM)を構築し、次にこのBIMを使用して、組織の近接性を確認する。BIMは、被験者の心臓内の空間を3次元セル(例えば立方体セル)の集合としてモデル化し、これらセル(本明細書において「ベースラインインピーダンスセル」と呼ばれる)の少なくともいくつかについて、それぞれのベースラインインピーダンスを特定する。次いで、カテーテルを用いて心臓内の任意の処置(例えば電気解剖学的マッピング)を実行する際に、BIMを繰り返し使用して、カテーテル上のいずれかの電極が組織の閾値距離内にあるかどうかを確認する。具体的には、各カテーテル電極と外部電極との間のインピーダンスが、電極の現在位置に最も近いベースラインインピーダンスセルのベースラインインピーダンスと比較される。この比較に基づいて、電極の組織に対する近接性が確認される。
【0030】
本明細書に記載の実施形態は更に、BIMを構築するための様々な技術を含む。例えば、本明細書に記載の実施形態は、ベースラインインピーダンスセルの効果的な指定のための技法を含み、これにより、任意の所与のベースラインインピーダンスセルのベースラインインピーダンスは、血液インピーダンス値のみから誘導された(すなわち、電極が心臓の組織の近傍にないときに測定されたインピーダンス値のみから誘導された)ものである可能性が高くなる。
【0031】
カテーテル電極は、様々な特性(例えば、サイズ)を有し得、かつこれらの特性の関数として電極間のインピーダンスが変化し得るため、各カテーテル電極について、別個のBIMが構築され得る。(ゆえに例えば、複数の電極を有する1つのカテーテルに対して、複数のBIMが構築され得る。)いくつかの実施形態において、複数のBIMのベースラインインピーダンスを変換するための好適なスケール因子が求められ、これらのスケール因子を使用して、BIMから得たインピーダンスが、単一のBIMに統合され、これが電極のいずれかに使用され得る。
【0032】
システムの説明
ここで図1を参照し、この図は、本発明のいくつかの実施形態による、電気解剖学的マッピング用のシステム20の概略図である。
【0033】
図1は、被験者25の心臓24内でカテーテル29を操作している医師27を示す。心臓24の組織30に沿った様々な位置において、カテーテル29の遠位端の1つ又は2つ以上の電極32が、組織30からのECG信号を記録する。これらの信号は、カテーテル29及び電気的インタフェース23(例えばポート又はソケット)を介して、プロセッサ(PROC)28に渡される。これらの信号に基づいて、プロセッサ28は、組織の解剖学的特徴をマッピングする組織の電気解剖学的マップ22を構築し、更に、ECG信号から誘導される局所興奮時間(LAT)などの電気的特性を、組織上の各位置に関連付ける。例えば、プロセッサは、組織の異なる領域に呈される異なるLATに対応して、様々な異なる色でマップ22を色付けすることができる。マッピング手技中に、及び/又はマッピング手技に続いて、プロセッサ28は、ディスプレイ26上にマップ22を表示することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、図1に示すように、カテーテル29は、カテーテル電極32のバスケット31を遠位端に有する、バスケットカテーテルである。あるいは、カテーテル29は、任意の好適な構成に配置された電極32を備えた、任意の他の好適な形態を有してもよい。カテーテル29は典型的に、1つ又は2つ以上の位置センサ(図示なし)を含み、これによりプロセッサは、各電極32の位置を追跡することが可能になる。例えば、カテーテル29は、1つ又は2つ以上の電磁位置センサを含み得、これは外部磁場の存在下で、センサの位置によって変化する信号を生成する。あるいは、各電極32の位置を追跡するために、プロセッサは、電極と、被験者25に外部接続された複数の外部電極との間のそれぞれのインピーダンスを、様々な異なる場所で確認した後、これらのインピーダンス間の比を計算することができる。更に別の代替として、プロセッサは、例えば米国特許8,456,182号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のように、電磁追跡及びインピーダンス式追跡の両方を使用してもよい。
【0035】
上述のインピーダンス式追跡技術を容易にするため、及び/又は、下記のようなBIMを構築しこれを使用するために、1つ又は2つ以上の外部電極33が被験者に外部接続される。
【0036】
概して、プロセッサ28は、単一のプロセッサとして具現されてもよいし、又は連携してネットワーク化若しくはクラスター化されたプロセッサ群として具現されてもよい。プロセッサ28は、通常、プログラムされたデジタルコンピューティングデバイスであり、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性の二次記憶装置、例えばハードドライブ若しくはCD ROMドライブ、ネットワークインタフェース、及び/又は周辺デバイスを備える。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、当該技術分野で知られているように、CPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信、又は格納のために結果が生成される。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを通じて電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に又は付加的に、磁気、光学、若しくは電子メモリなどの非一時的な有形の媒体上に提供及び/又は格納されてもよい。かかるプログラムコード及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載するタスクを行うように構成された、機械若しくは専用コンピュータを与える。
【0037】
BIMの構築及び使用
ここで図2を参照し、この図は、本発明のいくつかの実施形態による、BIM 34の概略図である。
【0038】
図1に示す電気解剖学的マッピング手順、又は心臓24上で実行される任意の他の関連するタイプの手順の性能を促進するために、プロセッサ28はBIM 34を構築する。BIM 34は、心臓24の一部分(例えば1つ又は2つ以上の心房及び/又は心室)を、3次元セル36の集合としてモデル化する。各セル36は、心臓内のそれぞれの体積に対応する。例えば、図2に示すように、各セル36は、心臓内の立方体体積に対応していてもよい。そのような場合に、プロセッサは、立方体体積のそれぞれの角を構成する8つの3次元座標の集合で、コンピュータメモリ内にセルを表現することができる。代替的に又は追加的に、プロセッサは、セルの中心の座標と、立方体体積の長さ(又は長さの半分)とで、セルを表現することができる。代替的に、プロセッサは、任意の他の好適な表現を使用することができる。
【0039】
BIM 34を構築することに加えて、電極が、BIMによりモデル化されている心臓部分内にある場合は、プロセッサは、任意の所与の電極位置をBIMにマッピングすることができる(例えば、図1を参照して上記に記載のいずれかの技術を用いて)。換言すれば、プロセッサは、セルが対応する体積内にその位置が含まれていることを確認することによって、その位置が特定のセル36に対応することを確認することができる。例えば、システム20の追跡システムにより、(100、100、100)に位置する電極は、(99.5、100、100)を中心とし、半分の長さが1である立方体セルにマッピングされる。(典型的には、電極の中心の位置が、電極の位置として使用されるが、代替的に他の規定を用いてもよい。)
【0040】
特定の電極32に対してBIM 34を構築するため、カテーテル29が心臓内であちこちに移動される。電極が位置する心臓内の複数の異なる体積のそれぞれについて、プロセッサ28は、電極32と外部電極33との間の1つ又は2つ以上の(複素)インピーダンスを確認する。例えば、特定の体積について各インピーダンスを確定するために、プロセッサは、電極32がその体積中にあるときに2つの電極間に所定の電圧を印加し、次に、電気的インタフェース23を介して、外部電極33に結合された電流センサからの、外部電極33を流れる電流を示す信号を受け取ることができる。プロセッサは次に、測定された電流及び所定の電圧から、インピーダンスの大きさ及び位相を計算することができる。又は、プロセッサは、2つの電極間に所定の電流を印加し、電気的インタフェース23を介して、電極間の電圧を示す信号を受け取り、次に、測定された電圧と所定の電流からインピーダンスを計算することができる。
【0041】
特定の体積に対して確認されたインピーダンスZ、...、Zのそれぞれは、その体積に対応するセルと関連付けられて、プロセッサにより格納される。プロセッサは、インピーダンスZ、...、Zに基づいて、そのセルの代表的インピーダンスZを計算することができる。この「代表的インピーダンス」又は「特徴的インピーダンス」は、確認されたインピーダンスZ、...、Zから好適に誘導されることにより、その体積を特徴付ける、単一の(複素)数である。例えば、特定範囲外のインピーダンス値を除去した後、プロセッサは、残りのインピーダンスを平均することによって、そのセルの代表的インピーダンスを計算することができる。アウトライアを除去するために、プロセッサは、例えば、インピーダンスを、その実部及び虚部の両方で並べ替えた後、並べ替えられたリストのいずれかのうち、所与の上位又は下位パーセンタイル内になる任意のインピーダンスを除去することができる。
【0042】
典型的には、プロセッサは、セルに対するZを計算するために、そのセルに対する所定の最低数の(非アウトライア)インピーダンスを必要とする。この最低数の観察を有するセルのインピーダンス、すなわち、プロセッサにより計算された代表的インピーダンスは、本明細書において「代表的インピーダンスセル」と呼ばれる。(代表的インピーダンスセルは、BIM 34におけるセルのサブセットを構成する。すなわち、BIM 34にあるセルの少なくともいくつかは、代表的インピーダンスセルである。)
【0043】
下記に詳しく記述されるように、代表的インピーダンスセルの少なくともいくつかは、ベースラインインピーダンスセルとして使用することができる。これは、これらのベースラインインピーダンスセルのうち1つの代表的インピーダンスとは異なる、測定されたインピーダンスに応じて、組織近接性が確認され得るからである。例えば、図3を参照して下記で記述される技法の任意のものを用いて、プロセッサは、比較的高い信頼度で、血液のインピーダンス値のみから誘導される代表的インピーダンスを有するとプロセッサが想定する、代表的インピーダンスセルのサブセットを特定することができる。これらのセルは、BIM 34によって「ベースラインインピーダンスセル」36aとして指定される。各ベースラインインピーダンスセル36aは、それぞれのベースラインインピーダンスZとして、そのセルの代表的インピーダンスを有する。
【0044】
(単に図解のために、図2は、セル内に球体を表示することにより、各ベースラインインピーダンスセル36aを示す。具体的には、各ベースラインインピーダンスセルを示すのに、より大きな球体38aが使用され、残りの代表的インピーダンスセル36bそれぞれを示すのに、より小さい球体38bが使用されている。代表的インピーダンスセルではないセルについては、マーカーなしで描かれている。)
【0045】
心臓の拍動により、大半の時間にわたって血液のみを含むいくつかの体積は、時に組織を含むことがあり、これによって、それらの体積について得られたインピーダンス値のいくつかは、組織インピーダンス値であり得ることが着目される。ただし、これらの組織インピーダンス値は、上述のアウトライア除去技法を使用して除去することができ、これによって、そのような体積に対応するセルであっても、ベースラインインピーダンスセルとして指定することができる。代替的に又は追加的に、これらの体積のいずれかについてインピーダンス値を記録している最中に、プロセッサは、ある閾値を超えて大幅に、前の値よりも大きくなっているインピーダンス値を、無視することができる。そのようなインピーダンスの急変は、組織接触を示すからである。(換言すれば、例えば、これらのアウトライアを後で除去する必要性をなくすために、プロセッサは、特定のアウトライアを最初からBIMデータに加えないようにすることができる。)
【0046】
BIM 34を構築することに続いて、例えば、電気解剖学的マッピングの手順中に、プロセッサは、このBIMを使用して、電極32のいずれかが、心臓の組織の閾値距離内にあるか否かを確認することができる。この確認を行うために、プロセッサは、(その位置を含む体積に対応させることにより)電極の現在位置に対応するベースラインインピーダンスセル36aを、又は、少なくとも、ベースラインインピーダンスセルの任意の他のものが対応する任意の他の体積よりもその位置により近い体積に対応するベースラインインピーダンスセル36aを、参照セルとして特定する。(この対応は、図2において、心臓24内の特定の電極から、BIM 34の特定のベースラインインピーダンスセルまでを指す、矢印で示されている。)プロセッサは更に、電極と外部電極33との間のインピーダンスZを確認し、次に、Zを、その参照セルに対して特定されているベースラインインピーダンスZと比較する。組織近接性を示すような様相でZがZとは異なる場合、プロセッサは、その電極が心臓の組織と接触しているか、又は少なくとも閾値距離内にあることを確認することができる。
【0047】
好適な参照セルを見出すために、プロセッサは、電極の位置と、ベースラインインピーダンスセルのそれぞれの中心との間の距離(すなわち、電極の位置と、ベースラインインピーダンスセルの中心が対応するそれぞれの位置との間の距離)を計算することができる。次に、プロセッサは、これらの距離の最小値を求めることができ、もしこの最小距離が好適な閾値距離よりも小さい場合は、対応するベースラインインピーダンスセル(その中心が他の中心よりもその電極の位置により近いもの)を、参照セルとして特定することができる。プロセッサは次に、Zと、参照セルのZとを比較することができる(例えば、比Re(Z)/Re(Z)を計算し、この比を第1の閾値と比較することによって、及び/又は、位相差Arg(Z)-Arg(Z)を計算し、この差を第2の閾値と比較することによって)。(第1の閾値は、例えば、1.03~1.05の範囲であってよく、第2の閾値は、例えば、1~2度の範囲であってよい。)この比が第1の閾値よりも大きい場合には、及び/又は、この差が第2の閾値よりも小さい場合には、プロセッサは、電極が心臓の組織に近接している(すなわち、接触しているか、又は少なくとも閾値距離内にある)ことを確認することができる。
【0048】
電極が心臓の組織に近接していることを確認したら、次に、プロセッサは、マップ22を更新して、電極の位置を組み込む、及び/又は、電極によって取得されたECG信号に含まれる情報を組み込むことができる。代替的に又は追加的に、プロセッサは、例えば、組織に近接する電極が他の電極とは異なる色に着色されている、カテーテルの遠位端を表すアイコンを表示することによって、その電極が組織に近接していることを示す指標を、ディスプレイ26上に表示することができる。代替的に又は追加的に、プロセッサは、任意の他の関連機能を実行することができる。
【0049】
典型的には、BIMを初期化した後、手順の進行中に、プロセッサは、新たに確認されたインピーダンスをそれまで収集された測定値に追加し、次いで、新たに確認されたインピーダンスを含む測定値すべてに基づいてBIMを再構築することによって、繰り返しBIMを更新することができる。例えば、1つ又は2つ以上のインピーダンスを、収集された測定値に追加した後、プロセッサは、新たなインピーダンス値を有する任意のセルについて、Zを計算することができ、次に、その新たなZ値に基づいて、BIM内のベースラインインピーダンスセルのセットを指定し直すことができる。
【0050】
代替的に又は追加的に、プロセッサは、新たに取得されたインピーダンスを取り込むために、定期的に(例えば、1秒に1回)、BIM全体を再構築することができる。換言すれば、プロセッサは定期的に、(i)セル36の集合を定義し、(ii)セル36の全集合を処理し、十分な個数の非アウトライアのインピーダンス測定値を有するセルのそれぞれについて、Zを計算し、(iii)その代表的インピーダンスセルの少なくともいくつかを、ベースラインインピーダンスセルとして指定する、ことができる。セルの集合を定義する際に、プロセッサは、それまでBIMの一部ではなかったけれども、カテーテルが心臓のいくつかの体積を初めて通過した結果として追加されたいくつかのセルを、含めることができる。同様に、ベースラインインピーダンスセルを指定する際に、プロセッサは、それまでベースラインインピーダンスセルとして指定されていなかったいくつかのセルを含めることができる、及び/又は、それまでベースラインインピーダンスセルとして指定されていたいくつかのセルを除去することができる。
【0051】
ベースラインインピーダンスセルの指定
ここで図3を参照すると、図3は、本発明のいくつかの実施形態による、代表的インピーダンスセルをベースラインインピーダンスセルとして指定するための方法の概略図である。
【0052】
図2を参照して上述したように、これらのセルについて代表的インピーダンスZを計算することによって代表的インピーダンスセル36bを指定した後、プロセッサは、代表的インピーダンスセルのうち少なくともいくつかを、ベースラインインピーダンスセルとして指定する。図3は、代表的インピーダンスZR0を有する特定の仮想の代表的インピーダンスセル36b_0について、この後者の指定を実行するのに使用できる1つの可能な技法を示す。この技法に関して、図3の左側に示すように、プロセッサは、セル36b_0から閾値距離D0内にある、近隣の代表的インピーダンスセルを特定する。(2つのセルの間の距離は、典型的に、セルのそれぞれの中心間で測定される。)図3に示す例において、このセル36のサブセットは、代表的インピーダンスZR1を有する第1の近隣セル36b_1、第2の近隣セル36b_2(ZR2)、第3の近隣セル36b_3(ZR3)、第4の近隣セルセル36b_4(ZR4)、及び第5の近隣セル36b_5(ZR5)、の5つのセルからなる。(単純化のため、図3はセル36b_0の近隣を2次元で図示しているが、実際には、セル36b_0の近隣は3次元であることが着目される。)
【0053】
次に、プロセッサは、近隣セルのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、セル36b_0を潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定する。一般に、「潜在的ベースラインインピーダンスセル」は、血液インピーダンス値のみから誘導される可能性が高い、Z値を有するセルである。これに関する1つの指標は、セルの代表的インピーダンスは、その近隣にあるものの代表的インピーダンスと同様であるということである。もう1つの指標は、そのセルの近隣セルは、同様の代表的インピーダンスを有するということである。プロセッサは、セル36b_0を潜在的なベースラインインピーダンスセルとしてラベル付けする前に、これらの指標の一方又は両方を探すことができる。すなわち、プロセッサは、ZR0とZR1、...、ZR5との間の類似性の少なくとも1つの尺度、及び/又は、ZR1、...、ZR5のばらつきの少なくとも1つの尺度を計算することができる。プロセッサは次に、類似性の尺度及びばらつきの尺度に応じて、セル36b_0を潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定することができる。
【0054】
例えばプロセッサは、ZR0とZR1、...、ZR5の間の類似性の下記の2つの尺度を計算することができ:
MR=|Re(ZR0)-mr|、及び
MI=|Im(ZR0)-mi|
式中、Re(Z)及びIm(Z)はそれぞれ、任意のインピーダンスZの実部及び虚部、mr=Median(Re(ZR1)、...、Re(ZR5))、及びmi=Median(Im(ZR1)、...、Im(ZR5))である。プロセッサはまた、ZR1、...、ZR5のばらつきの下記の2つの尺度を計算することができる:
VR=Median(|Re(ZR1)-mr|、...、|Re(ZR5)-mr|)及び
VI=Median(|Im(ZR1)-mi|、...、|Im(ZR5)-mi|)。
【0055】
プロセッサは次に、MR、MI、VR、及びVIのそれぞれを、異なるそれぞれの閾値と比較し、次に、これらの4つの値のそれぞれがその対応する閾値より小さい場合に限り、セル36b_0を潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定することができる。(MRの閾値は、所定の値であってもよく、又はVRから誘導されてもよい。同様に、MIの閾値は、所定の値であってもよく、又はVIから誘導されてもよい。)
【0056】
プロセッサは、すべての代表的インピーダンスセルを処理し、これらのセルの少なくともいくつかを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定した後、潜在的ベースラインインピーダンスセルを処理し、これらのセルの少なくともいくつかをベースラインインピーダンスセルとして指定する。例えば、図3を参照して、セル36b_0は、チェックマークで同様にマークされたセル36b_1、...、36b_5と共に、潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定されている。これらのセルを潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定した後、プロセッサは、後述するように、セル36b_0をベースラインインピーダンスセルとして指定すべきかどうかを決定することができる。
【0057】
導入のため、一般的なレベルでは、所与のセルをベースラインインピーダンスセルとして指定するための基準は、そのセルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定する基準と同様であり、すなわち、近隣に対するセルの類似性、及び/又は近隣間のばらつきが低いことである。しかしながら、以下に説明されるように、プロセッサが高類似性と低ばらつきに関する検証を実行し得る具体的な技法は、上述の技法とは異なっていてもよい。更に、プロセッサは、従来考慮されていたよりも大きな近隣範囲を考慮することができる、及び/又は、同様に潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定されているそれら近隣セルのみを考慮することができる。
【0058】
例えば、図3の右側に示すように、プロセッサは、やはり潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定されており、かつセル36b_0から閾値距離D1以内にある、他の代表的インピーダンスセルからなる、セル36の別のサブセットを特定することができる。(上記に示唆されているように、D1はD0よりも大きくてよい。)図3に示す具体的な事例において、このサブセットはセル36b_1、...、36b_3と、別のセル36b_6(代表的インピーダンスZR6を有する)、及び別のセル36b_7(代表的インピーダンスZR7を有する)からなる。近隣のインピーダンスZR1、...、ZR3、ZR6、及びZR7に基づいて、プロセッサは、セル36b_0をベースラインインピーダンスセルとして指定し得る。例えば、プロセッサは、ZR0と近隣のインピーダンスとの間の類似性の少なくとも1つの尺度を計算することができ(例えば、上述のMR尺度及びMI尺度の一方又は両方)、次に、この尺度に応じて(例えば、MR及び/又はMIが閾値より小さいことに応じて)、セル36b_0をベースラインインピーダンスセルとして指定することができる。
【0059】
代替的に又は追加的に、プロセッサは、近隣のインピーダンスに線38をフィットさせることができる。典型的に、線38は、式Z=Ax+By+Cz+Dで定義され、式中、Zは代表的インピーダンス、(x、y、z)はセルの中心の座標である。代表的インピーダンスと近隣セルの中心座標とが与えられるとき、プロセッサは、観測値に最もフィットするA、B、C、及びDの値を求める。(図3では、図示のため、3つの独立変数x、y、及びzは、単一の「位置」変数に換算されている。)プロセッサは次に、ZR0と線38の間の距離D2を、閾値距離と比較する。D2がこの閾値よりも小さい場合、プロセッサは、セル36b_0をベースラインインピーダンスセルとして指定することができる。
【0060】
ここで図4を参照すると、図4は、本発明のいくつかの実施形態による、ベースラインインピーダンスセルの更なる指定のための方法の概略図である。
【0061】
図3を参照して上記のようにベースラインインピーダンスセルの初期プールを指定した後、プロセッサは、「領域成長」手順を実行することができる。これによりプロセッサは、「シード」のベースラインインピーダンスセルをプールから除去し、次にそのシードセルの好適な近隣セル(まだベースラインインピーダンスセルとして指定されていなかったもの)をプールに追加することを繰り返す。これは、プール中に残っているベースラインインピーダンスセルがなくなるまで、繰り返し行われる。プロセッサはこのように、追加のベースラインインピーダンスセルを指定することができる。
【0062】
領域成長の技法の一例が、図4に示される。図4は、プロセッサが、特定のシードセル36a_0(これは既にベースラインインピーダンスセルとして指定されている)を、ベースラインインピーダンスセルのプールから選択したと仮定している。プロセッサは次いで、シードセル36a_0を使用して、他の近隣セルを、追加のベースラインインピーダンスとして指定することができる。これを行うために、プロセッサは最初に、セル36のサブセットを特定することができ、これらは既にベースラインインピーダンスセルとして指定されており、かつ、シードセル36a_0から閾値距離D3以内にあるものである。次に、プロセッサは、セルの特定されたサブセット及びシードセルのベースラインインピーダンスに、線をフィットさせることができる。(このフィッティングは、例えば、図3の線38を参照して上述したように実施することができる。)図4はこのようにして、複数のベースラインインピーダンスZB0(これはシードセル36a_0に属する)、並びにZB1、ZB2、ZB3、及びZB4(これらはそれぞれ、近隣のベースラインインピーダンスセル36a_1、36a_2、36a_3、及び36a_4に属する)に線40がフィットされていることを示す。
【0063】
プロセッサはまた、ベースラインインピーダンスセルとしてまだ指定されておらず、かつシードセルからの距離が、閾値距離D4(これはD3より小さくてもよい)より小さい、「候補」の代表的インピーダンスセルを選択することができる。(候補の代表的インピーダンスセルは、必ずしも潜在的ベースラインインピーダンスセルではない。)図4は、そのような選択された一候補である、代表的インピーダンスZRCを有する候補セル36b_0を示す。セル36b_0を選択した後、プロセッサは、ZRCと線40の間の距離D5を、閾値と比較する。この距離が閾値より小さい場合、プロセッサは、セル36b_0を新たなベースラインインピーダンスセルとして指定し、次に、この新たなベースラインインピーダンスセルをプールに追加する。プロセッサは次に、プールから次のシードセルを選択する。
【0064】
線40の大きな勾配は、典型的に、シードセルの近傍が比較的組織に近いことを示すため、プロセッサは典型的に、線40の勾配の大きさが閾値未満でない場合、所与のシードセルに対する候補セルは選択しない。換言すれば、候補セルを選択する際に、プロセッサは典型的には、最初にフィット線の勾配の大きさが閾値未満であることを確認し、それからこれに応じて候補セルを選択する。
【0065】
複数のBIMの統合
ここで図5を参照すると、図5は、本発明のいくつかの実施形態による、複数のBIMを統合するための技法の概略図である。
【0066】
概説において上述されたように、所与のカテーテル電極32と外部電極33との間のインピーダンスは、電極32のサイズ、及び/又はその他の特性の関数であり得る。したがって、プロセッサは典型的には、上記のBIM構築技法を用いて、各電極32について別個のBIMを構築する。例えば、図5は、第1の電極32aに対して構成された第1のBIM 34aと、第1の電極32aとは異なる特性を有する第2の電極32bに対して構成された第2のBIM 34bとを示している。BIM 34a及び34bは少なくとも部分的に重なり合っている。すなわち、第1のBIM 34aによってモデル化された心臓の部分は、少なくとも部分的に、第2のBIM 34bによってモデル化された心臓の部分と重なり合っており、これにより、BIM 34aの少なくともいくつかのセルは、BIM 34bのいくつかのセルが対応するのと同じそれぞれの体積に対応する。しかしながら、電極間の差異により、プロセッサにより測定されたインピーダンス、及びしたがってプロセッサにより計算されたベースラインインピーダンスは、重なり合う領域の2つのBIMの間で異なっており、これによって、第2のBIM 24bのベースラインインピーダンスセルの少なくともいくつかのそれぞれは、第1のBIM 24aの対応するベースラインインピーダンスセルのベースラインインピーダンスZ とは異なるベースラインインピーダンスZ を有する。(この文脈では、2つのセルが心臓の同じ体積に対応する場合には、2つのセルは互いに対応する、と表現される。)
【0067】
プロセッサは、電極毎に異なるそれぞれのBIMの使用(及び更新)を継続することができるが、典型的には、BIMを可能な限り統合する。統合されたBIMは、構築の元となった、個々のBIMのいずれか1つよりも多くの情報を含むため、統合されたBIMは典型的に、元のBIMのいずれか1つだけよりも、組織近接性を評価するのに役立つ。
【0068】
例えば、電気解剖学的マッピング手順が進むにつれて、プロセッサは、それまでに構築されていた様々なペアのBIM間のオーバーラップを繰り返し評価することができる。プロセッサは、所与の2つのBIMが少なくとも閾値数のベースラインインピーダンスセルで重なっていることを特定すると、下記の技法を用いて、その2つのBIMを統合することができる。このようにして、プロセッサは、異なるペアのBIMを繰り返し統合することができ、最終的に、すべての電極からのインピーダンスを組み入れた、単一の統合されたBIMを計算する。
【0069】
所与の2つのBIMを統合するには、プロセッサは最初に、BIMのベースラインインピーダンス間を尺度化する少なくとも1つのスケール因子42を確認し、次に、そのスケール因子を用いてBIMを統合する。例えば、図5を参照して、プロセッサは、関数
【0070】
【数1】
を最小にする変数「c」の値c^を求めることができ、式中、Gは、BIM 34a及び34bにおける同じ体積に対応するすべてのベースラインインピーダンスセルのセットであり(すなわち、Gは2つのBIMが重なり合う領域であり)、
【0071】
【数2】
は第1のBIM 34aにおけるGのi番目のセルのベースラインインピーダンスであり、
【0072】
【数3】
は第2のBIM 34bにおけるGのi番目のセルのベースラインインピーダンスである。プロセッサは次に、第2のBIM34bのインピーダンスにc^を掛け、次いでこれらの尺度化されたインピーダンスを第1のBIM34aに組み込むことができる。あるいは、プロセッサは、適切な条件下で(例えばc+c=2)、関数
【0073】
【数4】
を最小化することにより、ベースラインインピーダンス間を集合的に尺度化する2つのスケール因子c^及びc^を確認することができる。プロセッサは次に、2つのBIMを統合することができる。これは、第1のBIM34aのインピーダンスにc^を掛け、第2のBIM 34bのインピーダンスにc^を掛けて、これらの尺度化されたインピーダンスすべてを、統合されたBIMに組み込むことにより行われる。
【0074】
統合されたBIMを計算した後、プロセッサは、この統合されたBIMを使用して、その統合されたBIMに寄与した電極のいずれか1つの組織近接性を確認することができる。例えば、上述のように、統合されたBIMが、c^により尺度化された第1のBIM 34aと、c^により尺度化された第2のBIM 34bとを含むと想定すると、プロセッサは、第1の電極32aと外部電極との間で測定された任意のインピーダンス「Z」にc^を掛け、次に、その結果の積Z ^を、統合されたBIM中の関連するベースラインインピーダンスと比較することができる。同様に、第2の電極32bについて、プロセッサは任意の測定されたインピーダンス「Z」にc^を掛け、次にその結果の積Z ^を、関連するベースラインインピーダンスと比較することができる。
【0075】
電気解剖学的マッピングの実施
ここで図6を参照すると、図6は、本発明のいくつかの実施形態による、BIMを用いて電気解剖学的マッピングを行うための方法57のフロー図である。方法57は、医師がカテーテルを被験者の心臓内であちこちに移動させる際に、カテーテル電極毎にプロセッサ28によって実行される。
【0076】
方法57は、最初に、ECG信号取得工程58を行い、ここでカテーテル電極がECG信号を取得する。次に、プロセッサは、インピーダンス確認工程60で、カテーテル電極と外部電極との間の電極間インピーダンスを確認する。(インピーダンス確認工程60は、代替的に、ECG信号取得工程58の前又は最中に行ってもよい。)次に、インピーダンス追加工程61で、プロセッサは。確認されたインピーダンスを、適切なBIMセルと関連付けて格納することにより、新たに確認されたインピーダンスをBIMデータ(すなわち、これまでに収集された測定値)に追加する。
【0077】
次に、確認された電極間インピーダンスを用いて、プロセッサは、カテーテル電極が組織の閾値距離内にあることをBIMが示しているかどうかをチェックする。具体的には、参照セル探索工程62で、プロセッサは最初に、好適な参照ベースラインインピーダンスセルを探す。好適な参照セルが発見されると、次に、プロセッサは、インピーダンス比較工程64で、確認されたインピーダンスが参照セルのベースラインインピーダンスと十分に異なるかどうかをチェックして、これにより電極が組織に近接していると見なせるかどうかを判断することができる。「はい」の場合、プロセッサは、マップ更新工程66で、電気解剖学的マップを更新して、取得されたECG信号及び/又は電極の位置を組み込む。
【0078】
マップ更新工程66の後、プロセッサは、チェック工程70で、BIMデータからBIMが再構築されるべきかどうかをチェックする。例えば、プロセッサは、所定の最小数の新たに確認されたインピーダンスがBIMデータに追加されたかどうか、及び/又は、最後のBIM構築以来、所定の時間が過ぎたかどうかをチェックすることができる。プロセッサが、BIMを再構築すべきだと判断した場合、プロセッサは、BIM再構築工程50でBIMを再構築する。これは最初に、代表的インピーダンスを計算するサブ工程52で代表的インピーダンスを計算し、次に、ベースラインインピーダンスセルを指定するサブ工程54で、ベースラインインピーダンスセルを指定することによって行われる。
【0079】
カテーテル電極が閾値距離内にあることをBIMが示していないとプロセッサが確認した場合(これは、確認されたインピーダンスが、参照セルのベースラインインピーダンスから十分に異なっていないことにより、あるいは、好適な参照セルが見つからないことにより、確認される)、プロセッサは、電気解剖学的マップを更新せず、代わりに、チェック工程70に直接進む。
【0080】
BIM再構築工程50に続いて、又は、チェック工程70の後にBIM再構築が行われていない場合、プロセッサは、ECG信号獲得工程58に戻り、次に、上記の一連の工程を繰り返す。
【0081】
いくつかの実施形態において、BIM再構築工程50の後、プロセッサは、予め取得されてBIMに組み込まれていた少なくともいくつかのインピーダンス値を反復し、参照セル探索工程62及びインピーダンス比較工程64を実行することによって、再構築されたBIMを考慮して、組織への近接性を示すこれらの値のうちいずれかを特定する。換言すれば、再構築されたBIMを用いることにより、プロセッサは、BIMが再構築される前にカテーテル電極が組織に近接していたことを確認することができるが、しかしながら、以前にはBIMの状態が十分包括的でなかったことにより、この近接性は特定できていなかった。カテーテル電極が組織に近接していることを確認したことに応じて、プロセッサは、インピーダンス値が取得された時点での電極の位置を組み込むよう、及び/又は、その位置で電極によって取得されたECG信号を組み込むよう、組織のマップを更新することができ、更に、BIMから関連するセルを除去することができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、BIMがまだ初期化されていない場合、又は各カテーテル電極が最寄りのベースラインインピーダンスセルから特定の距離を超えている場合、プロセッサはそのことを医師に示し、これにより医師は、組織近接の指標が期待できないことを知る。例えば、プロセッサは、BIMがまだ初期化されていないこと、又は、カテーテルがBIMから遠すぎることを示すメッセージを、ディスプレイ26に表示してもよい。
【0083】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術には見られない特徴の変更例及び改変例をも含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0084】
〔実施の態様〕
(1) 電気的インタフェースと、
プロセッサであって、
被験者の心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築することであって、該3次元セルのそれぞれが、該心臓内のそれぞれの体積に対応しており、
該セルの少なくともいくつかが、ベースラインインピーダンスセルとして指定されており、該ベースラインインピーダンスセルのそれぞれについて、該BIMがそれぞれのベースラインインピーダンスを特定する、こと、
該電気的インタフェースを介して受信された信号に基づいて、該心臓内にあるカテーテル電極と、該被験者に外部接続される外部電極との間のインピーダンスを確認すること、
該ベースラインインピーダンスセルのうち1つを参照セルとして特定すること、
該確認されたインピーダンスを、該参照セルについて特定された該ベースラインインピーダンスと比較することにより、該カテーテル電極が該心臓の組織の閾値距離内にあることを確認すること、及び、
該カテーテル電極が該組織の該閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織のマップを更新すること、を行うよう構成されている、プロセッサと、
を含む、装置。
(2) 前記プロセッサは、前記カテーテル電極が前記組織の前記閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織の前記マップを更新して該カテーテル電極の位置を組み込むよう構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記プロセッサは、前記カテーテル電極が前記組織の前記閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織の前記マップを更新して、該電極により取得された心電図信号に含まれる情報を組み込むよう構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記プロセッサは、前記ベースラインインピーダンスセルの前記1つの中心が、該ベースラインインピーダンスセルの他のいずれか1つの中心が対応する他のどの位置よりも前記カテーテル電極の位置に近い位置に対応することに応じて、該ベースラインインピーダンスセルの該1つを前記参照セルとして特定するよう構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記プロセッサは、前記カテーテル電極の前記位置が前記ベースラインインピーダンスセルの前記1つが対応する前記体積内に含まれることに応じて、該ベースラインインピーダンスセルの該1つを前記参照セルとして特定するよう構成されている、実施態様4に記載の装置。
【0085】
(6) 前記プロセッサが、前記確認されたインピーダンスと、前記参照セルに対して特定された前記ベースラインインピーダンスとを比較するよう構成されており、これは、
該確認されたインピーダンスの実部と、該ベースラインインピーダンスの実部との間の比を計算することと、
該比を、比閾値と比較することと、
によって行われる、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記プロセッサが、前記確認されたインピーダンスと、前記参照セルに対して特定された前記ベースラインインピーダンスとを比較するよう構成されており、これは、
前記確認されたインピーダンスの位相と、前記ベースラインインピーダンスの位相との差を計算することと、
該差を、位相差閾値と比較することと、
によって行われる、実施態様1に記載の装置。
(8) 電気的インタフェースと、
プロセッサであって、
被験者の心臓内の複数の異なる体積のうち体積毎に、該電気的インタフェースを介して受信した信号に基づいて、該体積内のカテーテル電極と、該被験者に外部接続された外部電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを確認すること、
該心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築することであって、該3次元セルのそれぞれが、該体積のそれぞれの1つに対応しており、この構築は、
該セルの第1のサブセットの各セルについて、該セルが対応する該体積に関して確認された該1つ又は2つ以上のインピーダンスに基づいて、それぞれの代表的インピーダンスを計算することと、
該セルの該第1のサブセットの中のサブセットである、該セルの第2のサブセットをベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
により行われ、該ベースラインインピーダンスセルの各セルは、それぞれのベースラインインピーダンスとして、該セルの該代表的インピーダンスを有する、こと、
該BIMを構築することに続いて、該ベースラインインピーダンスセルのうち1つの該ベースラインインピーダンスに基づいて、該カテーテル電極が該心臓の組織の閾値距離内にあることを確認すること、及び、
該カテーテル電極が該閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織のマップを更新すること、を行うよう構成されている、プロセッサと、
を含む、装置。
(9) 前記プロセッサは、前記セルが対応する前記体積について確認された前記インピーダンスの少なくともいくつかを平均することによって、該セルの前記代表的インピーダンスを計算するよう構成されている、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記閾値距離が第1の閾値距離であり、前記プロセッサは、前記セルの前記第2のサブセットを、前記ベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、該第2のサブセットの少なくとも1つのセルについて、
該セルから第2の閾値距離内にある、前記第1のサブセットの他のセルを、該セルの第3のサブセットとして特定することと、
該セルの該第3のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、該セルを、潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
該セルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定した後に、やはり潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定されかつ該セルから第3の閾値距離内にある該第1サブセットの他のセルを、該セルの第4のサブセットとして特定することと、
該セルの該第4のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、該セルを、該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる、実施態様8に記載の装置。
【0086】
(11) 前記プロセッサが、前記セルを、潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、
該セルの前記代表的インピーダンスと、該セルの前記第3のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスとの間の、類似性の少なくとも1つの尺度を計算することと、
該セルの該第3のサブセットの該それぞれの代表的インピーダンスの、ばらつきの少なくとも1つの尺度を計算することと、
該類似性の尺度及び該ばらつきの尺度に応じて、該セルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
によって行われる、実施態様10に記載の装置。
(12) 前記プロセッサが、前記セルを、前記ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定するよう構成されており、この指定は、
該セルの前記代表的インピーダンスと、該セルの前記第4のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスとの間の、類似性の少なくとも1つの尺度を計算することと、
該類似性の尺度に応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる、実施態様10に記載の装置。
(13) 前記プロセッサが、前記セルを、前記ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定するよう構成されており、この指定は、
該セルの前記第4のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスに、線をフィッティングすることと、
該セルの該代表的インピーダンスと該線との間の距離が第4の閾値距離未満であることに応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる、実施態様10に記載の装置。
(14) 前記閾値距離が第1の閾値距離であり、前記プロセッサは、前記セルの前記第2のサブセットを、前記ベースラインインピーダンスセルとして指定するよう構成されており、この指定は、該第2のサブセットの少なくとも1つのセルについて、
該第2のサブセットに属し、かつ、既に該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定されている、シードセルを選択することと、
既に該ベースラインインピーダンスセルのそれぞれの1つとして指定されており、かつ該シードセルから第2の閾値距離内にある、該第2のサブセットの他のセルを、該セルの第3のサブセットとして特定することと、
該セルの該第3のサブセット及び該選択されたシードセルのそれぞれのベースラインインピーダンスに、線をフィッティングすることと、
該セルと該シードセルとの間の距離が第3の閾値距離未満であることに基づいて、該セルを選択することと、
該セルを選択した後、該セルの該代表的インピーダンスと該線との間の距離が第4の閾値距離未満であることに応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
によって行われる、実施態様8に記載の装置。
(15) 前記プロセッサは更に、前記線の勾配強度が、勾配強度閾値よりも小さいことを確認するよう構成されており、該プロセッサは、該勾配強度が該勾配強度閾値よりも小さいことに応じて該セルを選択するように構成されている、実施態様14に記載の装置。
【0087】
(16) 前記プロセッサが更に、
前記BIMを構築した後に、前記カテーテル電極と前記外部電極との間の少なくとも1つの他のインピーダンスを確認すること、及び、
該他のインピーダンスに基づいて、該BIMを再構築すること、を行うよう構成されている、実施態様8に記載の装置。
(17) 前記プロセッサは更に、
前記カテーテル電極が、前記BIMの再構築の前に前記心臓の組織の前記閾値距離内にあったことを、該再構築されたBIMを用いて確認すること、及び、
該カテーテル電極が該閾値距離内にあったことの確認に応じて、該組織の前記マップを更新すること、を行うよう構成されている、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記カテーテル電極が第1のカテーテル電極であり、前記BIMが第1のBIMであり、前記インピーダンスが第1のインピーダンスであり、
前記プロセッサは更に、
前記異なる体積のうち少なくともいくつかの各体積について、該体積内にある第2のカテーテル電極と、前記外部電極との間の、1つ又は2つ以上の第2のインピーダンスを確認すること、
該確認された第2のインピーダンスに基づいて、該第1のBIMに少なくとも部分的に重なる第2のBIMを計算することであって、
該第2のBIMの該ベースラインインピーダンスセルの少なくともいくつかのそれぞれが、該第1のBIMの該ベースラインインピーダンスセルの対応する1つの該ベースラインインピーダンスとは異なるベースラインインピーダンスを有する、こと、
該第1のBIMの該ベースラインインピーダンスと該第2のBIMの該ベースラインインピーダンスとの間を尺度化する、少なくとも1つのスケール因子を確認すること、
該確認されたスケール因子を用いて、該第1のBIMと該第2のBIMとを統合することにより、統合されたBIMを構築すること、
該統合されたBIMを用いて、該第1の電極が該組織の前記閾値距離内にあることを確認すること、及び、
該統合されたBIMを用いて、該第2の電極が該組織の該閾値距離内にあることを確認すること、を行うよう構成されている、実施態様8に記載の装置。
(19) 被験者の心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築することであって、該3次元セルのそれぞれが、該心臓内のそれぞれの体積に対応しており、
該セルの少なくともいくつかが、ベースラインインピーダンスセルとして指定されており、該ベースラインインピーダンスセルのそれぞれについて、該BIMがそれぞれのベースラインインピーダンスを特定する、ことと、
プロセッサにより、該心臓内にあるカテーテル電極と、該被験者に外部接続される外部電極との間のインピーダンスを確認することと、
該ベースラインインピーダンスセルのうち1つを参照セルとして特定することと、
該確認されたインピーダンスを、該参照セルについて特定された該ベースラインインピーダンスと比較することにより、該カテーテル電極が該心臓の組織の閾値距離内にあることを確認することと、
該カテーテル電極が該組織の該閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織のマップを更新することと、
を含む、方法。
(20) 前記組織の前記マップを更新することが、該組織の該マップを更新して前記カテーテル電極の位置を組み込むことを含む、実施態様19に記載の方法。
【0088】
(21) 前記組織の前記マップを更新することが、該組織の該マップを更新して、前記電極により取得された心電図信号に含まれる情報を組み込むことを含む、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記ベースラインインピーダンスセルのうち前記1つを前記参照セルとして特定することは、該ベースラインインピーダンスセルのうち該1つの中心が、該ベースラインインピーダンスセルの他のいずれか1つの中心が対応する他のどの位置よりも前記カテーテル電極の位置に近い位置に対応することに応じて、該ベースラインインピーダンスセルの該1つを前記参照セルとして特定することを含む、実施態様19に記載の方法。
(23) 前記ベースラインインピーダンスセルのうち前記1つを前記参照セルとして特定することは、前記カテーテル電極の前記位置が、該ベースラインインピーダンスセルの該1つが対応する前記体積内に含まれることに応じて、該ベースラインインピーダンスセルの該1つを前記参照セルとして特定することを含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記確認されたインピーダンスと、前記参照セルに対して特定された前記ベースラインインピーダンスとを比較することが、該確認されたインピーダンスと該ベースラインインピーダンスとを比較することを含み、これは、
該確認されたインピーダンスの実部と、該ベースラインインピーダンスの実部との間の比を計算することと、
該比を、比閾値と比較することと、
によって行われる、実施態様19に記載の方法。
(25) 前記確認されたインピーダンスと、前記参照セルに対して特定された前記ベースラインインピーダンスとを比較することが、該確認されたインピーダンスと該ベースラインインピーダンスとを比較することを含み、これは、
前記確認されたインピーダンスの位相と、前記ベースラインインピーダンスの位相との差を計算することと、
該差を、位相差閾値と比較することと、
によって行われる、実施態様19に記載の方法。
【0089】
(26) 被験者の心臓内の複数の異なる体積のうち体積毎に、プロセッサにより、該体積内のカテーテル電極と、該被験者に外部接続された外部電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを確認することと、
該心臓の一部分を3次元セルの集合としてモデル化するベースラインインピーダンスモデル(BIM)を構築することであって、該3次元セルのそれぞれが、該体積のそれぞれの1つに対応しており、この構築は、
該セルの第1のサブセットの各セルについて、該セルが対応する該体積に関して確認された該1つ又は2つ以上のインピーダンスに基づいて、それぞれの代表的インピーダンスを計算することと、
該セルの該第1のサブセットの中のサブセットである、該セルの第2のサブセットをベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
により行われ、該ベースラインインピーダンスセルの各セルは、それぞれのベースラインインピーダンスとして、該セルの該代表的インピーダンスを有する、ことと、
該BIMを構築することに続いて、該ベースラインインピーダンスセルのうち1つの該ベースラインインピーダンスに基づいて、該カテーテル電極が該心臓の組織の閾値距離内にあることを確認することと、
該カテーテル電極が該閾値距離内にあることの確認に応じて、該組織のマップを更新することと、
を含む、方法。
(27) 前記セルの前記代表的インピーダンスを計算することは、該セルが対応する前記体積について確認された前記インピーダンスの少なくともいくつかを平均することによって、該代表的インピーダンスを計算することを含む、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記閾値距離が第1の閾値距離であり、前記セルの前記第2のサブセットを、前記ベースラインインピーダンスセルとして指定することは、該第2のサブセットの少なくとも1つのセルについて、
該セルから第2の閾値距離内にある、前記第1のサブセットの他のセルを、該セルの第3のサブセットとして特定することと、
該セルの該第3のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、該セルを、潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
該セルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定した後に、やはり潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定されかつ該セルから第3の閾値距離内にある該第1サブセットの他のセルを、該セルの第4のサブセットとして特定することと、
該セルの該第4のサブセットのそれぞれの代表的インピーダンスに基づいて、該セルを、該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
を含む、実施態様26に記載の方法。
(29) 前記セルを潜在的なベースラインインピーダンスセルとして指定することが、
該セルの前記代表的インピーダンスと、該セルの前記第3のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスとの間の、類似性の少なくとも1つの尺度を計算することと、
該セルの該第3のサブセットの該それぞれの代表的インピーダンスの、ばらつきの少なくとも1つの尺度を計算することと、
該類似性の尺度及び該ばらつきの尺度に応じて、該セルを潜在的ベースラインインピーダンスセルとして指定することと、
を含む、実施態様28に記載の方法。
(30) 前記セルを前記ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することが、
該セルの前記代表的インピーダンスと、該セルの前記第4のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスとの間の、類似性の少なくとも1つの尺度を計算することと、
該類似性の尺度に応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
を含む、実施態様28に記載の方法。
【0090】
(31) 前記セルを前記ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することが、
該セルの前記第4のサブセットの前記それぞれの代表的インピーダンスに、線をフィッティングすることと、
該セルの該代表的インピーダンスと該線との間の距離が第4の閾値距離未満であることに応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
を含む、実施態様28に記載の方法。
(32) 前記閾値距離が第1の閾値距離であり、前記セルの前記第2のサブセットを、前記ベースラインインピーダンスセルとして指定することは、該第2のサブセットの少なくとも1つのセルについて、
該第2のサブセットに属し、かつ、既に該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定されている、シードセルを選択することと、
既に該ベースラインインピーダンスセルのそれぞれの1つとして指定されており、かつ該シードセルから第2の閾値距離内にある、該第2のサブセットの他のセルを、該セルの第3のサブセットとして特定することと、
該セルの該第3のサブセット及び該選択されたシードセルのそれぞれのベースラインインピーダンスに、線をフィッティングすることと、
該セルと該シードセルとの間の距離が第3の閾値距離未満であることに基づいて、該セルを選択することと、
該セルを選択した後、該セルの該代表的インピーダンスと該線との間の距離が第4の閾値距離未満であることに応じて、該セルを該ベースラインインピーダンスセルの1つとして指定することと、
を含む、実施態様26に記載の方法。
(33) 前記線の勾配強度が、勾配強度閾値よりも小さいことを確認することを更に含み、前記セルを選択することは、該勾配強度が該勾配強度閾値よりも小さいことに応じて該セルを選択することを含む、実施態様32に記載の方法。
(34) 前記BIMを構築した後に、前記カテーテル電極と前記外部電極との間の少なくとも1つの他のインピーダンスを確認することと、
該他のインピーダンスに基づいて、該BIMを再構築することと、
を更に含む、実施態様26に記載の方法。
(35) 前記カテーテル電極が、前記BIMの再構築の前に前記心臓の組織の前記閾値距離内にあったことを、該再構築されたBIMを用いて確認することと、
該カテーテル電極が該閾値距離内にあったことの確認に応じて、該組織の前記マップを更新することと、
を更に含む、実施態様34に記載の方法。
【0091】
(36) 前記カテーテル電極が第1のカテーテル電極であり、前記BIMが第1のBIMであり、前記インピーダンスが第1のインピーダンスであり、
前記方法が、
前記異なる体積のうち少なくともいくつかの各体積について、該体積内にある第2のカテーテル電極と、前記外部電極との間の、1つ又は2つ以上の第2のインピーダンスを確認することと、
該確認された第2のインピーダンスに基づいて、該第1のBIMに少なくとも部分的に重なる第2のBIMを計算することであって、
該第2のBIMの該ベースラインインピーダンスセルの少なくともいくつかのそれぞれが、該第1のBIMの該ベースラインインピーダンスセルの対応する1つの該ベースラインインピーダンスとは異なるベースラインインピーダンスを有する、ことと、
該第1のBIMの該ベースラインインピーダンスと該第2のBIMの該ベースラインインピーダンスとの間を尺度化する、少なくとも1つのスケール因子を確認することと、
該確認されたスケール因子を用いて、該第1のBIMと該第2のBIMとを統合することにより、統合されたBIMを構築することと、
該統合されたBIMを用いて、該第1の電極が該組織の前記閾値距離内にあることを確認することと、
該統合されたBIMを用いて、該第2の電極が該組織の該閾値距離内にあることを確認することと、
を更に含む、実施態様26に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6