(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】フォーカス制御装置、撮像装置およびフォーカス制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20221212BHJP
G02B 7/36 20210101ALI20221212BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20221212BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20221212BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G02B7/36
G03B13/36
G03B17/14
H04N5/232
(21)【出願番号】P 2018198490
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】川崎 諒
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124527(JP,A)
【文献】特開2005-077435(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109847(WO,A1)
【文献】特開2011-248181(JP,A)
【文献】特開2012-128314(JP,A)
【文献】特開平09-211312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28-7/40
G03B 13/36
G03B 17/14
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系のフォーカス位置を制御するためのフォーカス制御装置であって、
温度を
取得する
取得手段と、
前記
取得手段が
取得した温度
の変化量が所定値以上である場合に、
所定の範囲
内で前記フォーカス位置を変更するフォーカス制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記フォーカス制御による
前記フォーカス
位置の変化量に応じて、前記
所定値を変更
し、
前記制御手段は、前記フォーカス制御が行われた際の温度の変化量と前記フォーカス位置の変化量と前記所定の範囲とに基づいて、ピントずれが発生する温度の変化量を示す値を算出し、算出された前記値が所定の下限値未満である場合、前記所定値を前記所定の下限値に変更する、
ことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項2】
撮像光学系のフォーカス位置を制御するためのフォーカス制御装置であって、
温度を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した温度の変化量が所定値以上である場合に、所定の範囲内で前記フォーカス位置を変更するフォーカス制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記フォーカス制御による前記フォーカス位置の変化量に応じて、前記所定値を変更し、
前記制御手段は、前記フォーカス制御が行われた際の温度の変化量と前記フォーカス位置の変化量と前記所定の範囲とに基づいて、ピントずれが発生する温度の変化量を示す値を算出し、算出された前記値が所定の上限値を超える場合、前記所定値を前記所定の上限値に変更する、
ことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記フォーカス
位置の変化量が大きくなるに応じて、前記
所定値を小さくする変更を行う、
ことを特徴とする請求項1
又は2記載のフォーカス制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記フォーカス
位置の変化量が小さくなるに応じて、前記
所定値を大きくする変更を行う、
ことを特徴とする請求項1
又は2記載のフォーカス制御装置。
【請求項5】
前記
所定値は、ピント位置が固定されたときの温度と前記フォーカス制御が行われた後の温度との変化量である、
ことを特徴とする請求項1乃至
4のうち何れか1項に記載のフォーカス制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
算出された前記値が前記所定の下限値未満である場合、前記
所定の範囲を拡大する、
ことを特徴とする請求項
1記載のフォーカス制御装置。
【請求項7】
前記
撮像光学系に含
まれるレンズ鏡筒が交換された場合、またはズームレンズの位置が変化した場合、前記フォーカス制御に用いられる情報を初期化する、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のうち何れか1項に記載のフォーカス制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記
所定値を変更していない場合、取得された映像信号のコントラストの変化をトリガとして、前記フォーカス制御を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至
7のうち何れか1項に記載のフォーカス制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8のうち何れか1項に記載のフォーカス制御装置を備える、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
撮像光学系のフォーカス位置を制御するためのフォーカス制御方法であって、
温度を
取得する
取得手段が
取得した温度
の変化量が所定値以上である場合に、
所定の範囲
内で前記フォーカス位置を変更するフォーカス制御を行う工程と、
前記フォーカス制御による
前記フォーカス
位置の変化量に応じて、前記
所定値を変更する工程と、
前記フォーカス制御が行われた際の温度の変化量と前記フォーカス位置の変化量と前記所定の範囲とに基づいて、ピントずれが発生する温度の変化量を示す値を算出し、算出された前記値が所定の下限値未満である場合、前記所定値を前記所定の下限値に変更する工程と、
を備えることを特徴とするフォーカス制御方法。
【請求項11】
撮像光学系のフォーカス位置を制御するためのフォーカス制御方法であって、
温度を取得する取得手段が取得した温度の変化量が所定値以上である場合に、所定の範囲内で前記フォーカス位置を変更するフォーカス制御を行う工程と、
前記フォーカス制御による前記フォーカス位置の変化量に応じて、前記所定値を変更する工程と、
前記フォーカス制御が行われた際の温度の変化量と前記フォーカス位置の変化量と前記所定の範囲とに基づいて、ピントずれが発生する温度の変化量を示す値を算出し、算出された前記値が所定の上限値を超える場合、前記所定値を前記所定の上限値に変更する工程と、
を備えることを特徴とするフォーカス制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーチ範囲を制限したフォーカス制御を行うフォーカス制御装置、撮像装置およびフォーカス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体に対して撮像光学系のピントが合うフォーカスレンズの位置を制御するAF(オートフォーカス)制御を行う撮像装置が用いられている。撮像装置は、フォーカスレンズの位置を制御するズームトラッキングを行う機能を有している場合がある。ズームトラッキングが行われることで、ズーム位置が変化しても、同じ距離の被写体に対してピントが合わせ続けられる。これにより、ピント位置を固定することができる。
【0003】
ただし、ピント位置が固定されたとしても、温度変化による撮像光学系または撮像装置の膨張や収縮によってぼけが発生する(以下、温度ピントずれと称する)。温度ピントずれを補正するためには、温度ピントずれ量に応じてフォーカスレンズの位置を補正する必要がある。ここで、温度ピントずれ量は、撮像光学系や撮像装置の個体、姿勢等によって異なるため、一律の補正量を用いたフォーカスレンズの位置の補正では、フォーカスレンズの位置を良好に補正することができない場合がある。
【0004】
関連する技術として、特許文献1および特許文献2の技術が提案されている。特許文献1の技術では、現在温度が所定の範囲を超えている場合、所定のフォーカスレンズ駆動範囲でピント調整のためのオートフォーカス制御に遷移する制御が行われている。特許文献2の技術では、実際に装着したレンズの特性を温度補償データに反映させることにより、個々のレンズの特性のばらつきに影響されずに、温度変化によるピント位置ずれを補正する動作が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許2012-128314号公報
【文献】特開2011-248181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の撮像装置では、現在温度が所定の範囲を超えている場合に、温度ピントずれを補正するAF(温度ピント補正AF)が実行される。このため、事前にレンズの温度ピントずれ情報を得ておく必要がある。しかしながら、レンズ交換式の撮像装置では、交換され得る全てのレンズの温度ピントずれ情報を予め得ておくことは困難である。従って、温度ピントずれ情報が得られていないレンズに交換された場合、温度ピントずれを適正に補正することができなくなる。特許文献2の撮像装置では、温度ピント補正AFを実行した時点での環境を基準に補正係数が算出される。従って、補正係数が算出された後に、温度ピントずれ量に影響を与える環境変化(絶対温度、姿勢、温度変化勾配等)が発生すると、補正誤差が生じ、温度ピントずれを適正に補正することができなくなる。
【0007】
本発明の目的は、レンズの個体や環境にかかわらず、温度ピントずれの補正を適正に行うことができるフォーカス制御装置、撮像装置およびフォーカス制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のフォーカス制御装置は、撮像光学系のフォーカス位置を制御するためのフォーカス制御装置であって、温度を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した温度の変化量が所定値以上である場合に、所定の範囲内で前記フォーカス位置を変更するフォーカス制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記フォーカス制御による前記フォーカス位置の変化量に応じて、前記所定値を変更し、前記制御手段は、前記フォーカス制御が行われた際の温度の変化量と前記フォーカス位置の変化量と前記所定の範囲とに基づいて、ピントずれが発生する温度の変化量を示す値を算出し、算出された前記値が所定の下限値未満である場合、前記所定値を前記所定の下限値に変更する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レンズの個体や環境にかかわらず、温度ピントずれの補正を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】第1実施形態のフォーカス制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】変更処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】温度ピントずれによってぼけが発生した例を示した図である。
【
図6】ぼけの発生を抑制する方法を説明する図である。
【
図7】第2実施形態のフォーカス制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の各実施形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は各実施形態に記載されている構成によって限定されることはない。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の撮像装置100の構成例を示す図である。撮像装置100は、撮像光学系101および本体部102を有する。撮像光学系101は、レンズ鏡筒を含む。撮像装置100の撮像光学系101(レンズ鏡筒を含む撮像光学系101)は交換可能なレンズ交換型撮像装置である。ただし、撮像装置100は、撮像光学系101を一体的に有するレンズ一体型撮像装置であってもよい。第2実施形態も同様である。撮像光学系101は、ズームレンズ1、フォーカスレンズ2、絞りユニット3、フォーカス駆動部14およびレンズ情報保持部15を有する。本体部102は、バンドパスフィルタ4、カラーフィルタ5、AGC7、A/D変換器8、カメラ信号処理部9、通信部10、フォーカスモード保持部11、温度検出部12、フォーカス制御部13および初期設定保持部16を有する。フォーカス制御部13は、フォーカス制御装置に対応する。例えば、フォーカス制御部13を有する本体部102が、フォーカス制御装置であってもよい。
【0013】
ズームレンズ1は、光軸方向に移動して焦点距離を変更する変倍レンズである。フォーカスレンズ2は、光軸方向に移動して焦点調節を行うレンズである。絞りユニット3は、光量を調整する(絞り制御を行う)ユニットである。撮像光学系101を通過した光は、本体部102のバンドパスフィルタ4およびカラーフィルタ5を介して撮像素子6上に光学像としての被写体像を形成する。バンドパスフィルタ4は、撮像光学系101の光路に対し進退可能である。以下、バンドパスフィルタを「BPF」と表記することがある。上述した被写体像は、撮像素子6により光電変換される。AGC(オートゲインコントロール)7は、撮像素子6から出力されたアナログ電気信号(撮像信号)のゲイン調整を行う。A/D変換器8は、ゲイン調整されたアナログ電気信号をデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、カメラ信号処理部9に入力される。カメラ信号処理部9は、デジタル信号に対して各種画像処理を行って映像信号を生成する。
【0014】
カメラ信号処理部9が生成した映像信号は、通信部10を介して、有線または無線により監視モニタ装置18に出力されるとともに、本体部102のフォーカス制御部13に出力される。フォーカスモード保持部11には、ユーザが選択したフォーカスモード情報を保持する。モード情報は、ピント位置を固定するMFモード、およびピント位置を自動で調節するAFモードがある。AFモードは、フォーカス制御部13の制御によるモードである。「MF」はマニュアルフォーカスであり、「AF」はオートフォーカスである。
【0015】
例えば、モード情報は、ユーザが操作する監視モニタ装置18からの通信によって通信部10およびフォーカス制御部13を介して、フォーカスモード保持部11に書き込まれる。モード情報は、ユーザが、撮像装置100を操作することにより、フォーカスモード保持部11に書き込まれてもよい。フォーカス制御部13は、レンズの種別、ズームレンズ1の位置、フォーカスレンズ2の位置および絞りユニット3の状態を含むレンズ情報をレンズ情報保持部15から取得可能である。フォーカス制御部13は、フォーカス駆動部14を介して、フォーカス制御を行う制御手段である。フォーカス制御部13は、例えば、CPU、RAMおよびROMを有し、ROMに記憶されたプログラムがRAMに展開され、展開されたプログラムをCPUが実行することにより、フォーカス制御部13の機能が実現されてもよい。
【0016】
フォーカス制御には、ユーザ操作に基づくMF制御、映像信号から算出された映像信号のコントラスト状態を示すコントラスト評価値に基づくAF制御、温度ピントずれを補正するための温度ピント補正AF制御等がある。温度ピント補正AFは、温度を計測する計測手段ととしての温度検出部12で検出される撮像装置100の温度変化をトリガとして、サーチ範囲を制限したAFを行うものである。サーチ範囲を制限したAFは、サイレントAFと呼ばれることもある。サーチ範囲は、フォーカスレンズ2の移動範囲である。初期設定保持部16は、トリガ温度およびサーチ範囲(制限されるサーチ範囲)の初期値を保持する。フォーカス制御部13は、温度ピント補正AFが実行されるごとに、トリガ温度およびサーチ範囲を最適値に変更(更新)する。フォーカス制御部13は、トリガ温度およびサーチ範囲を学習し、学習結果に基づいて、トリガ温度およびサーチ範囲を最適値に変更してもよい。トリガ温度およびサーチ範囲の情報は、フォーカス制御に用いられる情報である。
【0017】
図2は、フォーカス制御部13による温度ピント補正AFを行う際のトリガ温度の変更の概要を示す図である。ユーザがピント位置を固定した時点での温度をtp1、フォーカス位置をFP1とする。また、温度ピント補正AFが実行された時点での温度をTP2、フォーカス位置をFP2とする。
図2において上下の矢印で示されるサーチ範囲201は、温度ピント補正AFのサーチ範囲を示す。サーチ範囲201は、FP1を中心とした被写界深度(Fδ)分の範囲である。サーチ範囲201が上記の範囲に設定されることで、ぼけを目立たせずに温度ピント補正を行うことができる。
図2(A)は、温度ピント補正AFを実行した結果、フォーカス位置がサーチ範囲201の中心付近となった例である。
【0018】
図2(A)の場合、温度ピント補正AFが実行されたことにより変化したフォーカス位置の変化量であるフォーカス変化量(FP2-FP1)は小さい。この場合、温度ピントずれ量が小さい個体や姿勢、あるいはレンズであることが想定できる。従って、フォーカス制御部13は、トリガ温度を大きく設定する。トリガ温度は、ピント位置を固定した時点での温度tp1を基準とした場合における温度ピント補正AFを実行するトリガとなる相対的な温度である。このため、トリガ温度は、上記温度tp1と上記トリガを出力するときの温度との差分でもある。トリガ温度が大きく設定されることにより、温度ピント補正AFの実行頻度を削減することができる。その結果、過度に温度ピント補正AFが行われることに起因して、レンズの耐久性が損なわれることを回避できる。つまり、レンズの耐久性が向上する。
【0019】
図2(B)は、温度ピント補正AFを実行した結果、フォーカス位置がサーチ範囲201の端付近(中心から遠い位置)となった例を示す。
図2(B)の場合、温度ピント補正AFが実行されたことにより変化したフォーカス位置の変化量であるフォーカス変化量(FP2-FP1)は大きい。この場合、温度ピントずれ量が大きい個体や姿勢、あるいはレンズであることが想定できる。従って、トリガ温度を小さく設定して、温度ピント補正AFの実行頻度を多くする。これにより、温度ピント補正の実行頻度が不足することが防止され、温度ピントずれに起因して、ぼけが目立つことが抑制される。
【0020】
従って、フォーカス制御部13は、フォーカス変化量が大きくなるに応じて、トリガ温度が小さくなるような変更(第1の変更)を行い、フォーカス変化量が小さくなるに応じて、トリガ温度が大きくなるような変更(第2の変更)を行う。これにより、温度ピント補正AFが過度に行われることが回避されるととともに、温度ピント補正AFの実行頻度が不足することが回避される。ここで、フォーカス制御部13は、第1の変更と第2の変更とのうち、何れか一方のみを行ってもよいし、両方を行ってもよい。
【0021】
図3は、フォーカス制御部13が行うフォーカス制御処理の流れを示すフローチャートである。フォーカス制御部13は、レンズが交換されたか否かを判定する(S301)。フォーカス制御部13は、フォーカスレンズ2が取り付けられているレンズ鏡筒が交換されたか否か、または撮像光学系101の全体が交換された否かに基づいて、S301の判定を行ってもよい。フォーカス制御部13は、ズームレンズ1の位置(ズーム位置)が変化したか否かを判定する(S302)。S301でYesと判定された場合、またはS302でYesと判定された場合、フォーカス制御部13は、温度ピント補正AFに用いられた情報(変更後のトリガ温度およびサーチ範囲の情報)をリセットする(S303)。これにより、変更後のトリガ温度およびサーチ範囲の値は、初期設定保持部16が保持する初期値に戻される。レンズが交換された場合やズーム位置に変化が生じた場合には、温度ピントずれ量が変化し、温度ピントずれ量が変化する前の値のままでは適正な温度ピント補正が行われない。このため、S303の処理が行われる。フォーカス制御部13は、温度検出部12から現在の温度tp1を取得し、取得された温度tp1の情報を記憶する(S304)。以下、取得された各種の温度の情報やフォーカス位置の情報は、例えば、フォーカス制御部13のRAMに記憶される。
【0022】
S302でNoと判定された場合、またはS304の処理が行われた後、フォーカス制御部13は、MFモードが設定されているか否かを判定する(S305)。MFモードが設定されていれば、S305でYesと判定される。この場合、フォーカス制御部13は、ピント調節されたか否かを判定する(S306)。ピント調節がされたか否かは、例えば、監視モニタ装置18を通じてユーザがピントを調節する操作を行ったか否かに基づいて判定されてもよい。ピント調節がされたか否かは、撮像装置100に対して、ピント調節操作がされたか否かに基づいて判定されてもよい。S305において、MFモードに設定されていないと判定された場合、フォーカス制御部13は、MFモードに切り替わったか否かを判定する(S307)。例えば、監視モニタ装置18を通じてユーザからMFモードの設定が指示された場合、S307の判定がYesになる。S307でNoと判定された場合、処理が終了する。従って、撮像装置100がMFモードになっているか、またはMFモードの設定の指示がされるまで、S307以降の処理は行われない。
【0023】
S306でYesと判定された場合、またはS307でYesと判定された場合、フォーカス制御部13は、温度検出部12から現在の温度tp1を取得し、取得された温度tp1の情報を記憶する(S308)。START時点(処理開始時)でMFモードに設定されている場合、温度tp1の情報は撮像装置100が起動した時点での温度で初期化される。S306でNoと判定された場合、またはS308の処理が行われた後、フォーカス制御部13は、温度検出部12から現在の温度tp2を取得する(S309)。そして、フォーカス制御部13は、記憶された温度tp1(S304またはS308で取得されて記憶された温度tp1)と温度tp2との差である温度変化量が、所定のトリガ温度以上であるか否かを判定する(S310)。図面において、トリガ温度は「Tr」として示される。
【0024】
温度変化量がトリガ温度未満である場合、S310でNoと判定される。この場合、温度変化量がトリガ温度以上になるまで、S311~S315の処理は行われない。一方、温度変化量がトリガ温度以上である場合、S310でYesと判定される。この場合、フォーカス制御部13は、現在のフォーカス位置をFP1として取得し、取得したFP1の情報を記憶する(S311)。ここでのフォーカス位置FP1は、温度ピント補正AF実行前のフォーカス位置となる。そして、フォーカス制御部13は、所定のサーチ範囲でAFを行う温度ピント補正AFを実行する(S312)。
【0025】
上述したように、所定のサーチ範囲は、FP1を中心に被写界深度(Fδ)分の範囲であるが、サーチ範囲は、後述する314の処理により変更される場合もある。S312の温度ピント補正AFの終了後、フォーカス制御部13は、再度現在のフォーカス位置を取得し、取得されたフォーカス位置をフォーカス位置FP2として記憶する(S313)。ここでのフォーカス位置FP2は温度ピント補正AF実行後のフォーカス位置となる。そして、フォーカス制御部13は、S312の温度ピント補正AFの実行結果に基づいて、トリガ温度およびサーチ範囲を最適値に変更する(S314)。S314の詳細については後述する。フォーカス制御部13は、温度検出部12から現在の温度を再度取得し、取得された温度をtp1に変更する(S315)。以上により、フォーカス制御処理が終了する。
【0026】
図4は、上述したS314の温度ピント補正の変更処理の流れを示すフローチャートである。フォーカス制御部13は、温度ピントずれ係数Kを算出する(S401)。温度ピントずれ係数Kは、温度ピント補正AF実行時の温度変化量とフォーカス変化量とを用いて、以下の式1から算出できる。フォーカス変化量は「FP2-FP1」であり、温度変化量は「tp2-tp1」である。
K=(FP2-FP1)/(tp2-tp1)・・・(式1)
【0027】
そして、フォーカス制御部13は、温度ピントずれ係数Kを用いて、トリガ温度の暫定値を算出する(S402)。ここでは、フォーカス制御部13は、S312において温度ピント補正AFが実行されたことに応じて、所定の温度ピントずれ量が発生するような温度を算出する。所定の温度ピントずれ量は、例えば、温度ピント補正AFのサーチ範囲であり、被写界深度(Fδ)に割合R(0<R<1)を乗じた値とする。フォーカス制御部13は、温度ピントずれ係数K、被写界深度(Fδ)および割合Rを用いて、以下の式(2)により、トリガ温度暫定値を算出する。トリガ温度暫定値は、所定のピントずれが発生する温度を示す値である。
トリガ温度暫定値=(被写界深度(Fδ)×R)/K・・・(式2)
【0028】
フォーカス制御部13は、上記トリガ温度暫定値が所定の下限値未満であるか否かを判定する(S403)。所定の下限値は、任意の値に設定可能である。トリガ温度暫定値が下限値未満である場合、S403でYesと判定される。この場合、フォーカス制御部13は、トリガ温度を下限値に設定する(S404)。これにより、トリガ温度が小さくなり過ぎて、温度ピント補正AFが過剰に実行されてしまうことを防止できる。ただし、温度ピントずれ係数Kから算出された暫定値(トリガ温度暫定値)よりもトリガ温度の方が大きく設定されることになるため、温度ピント補正AF実行時の温度ピントずれ量がサーチ範囲よりも大きくなる。このため、補正不足になる可能性がある。そこで、フォーカス制御部13は、温度ピント補正AFのサーチ範囲を拡大する処理を行う(S405)。サーチ範囲は、以下の式(3)の演算を行うことにより、拡大することができる。なお、S405の処理が行われる際の、以下の式(3)におけるトリガ温度は、下限値となる。
サーチ範囲=トリガ温度×K/R・・・(式3)
【0029】
フォーカス制御部13は、温度ピント補正AFのサーチ範囲を広げる前に、温度ピント補正AF実行時に発生させるピントずれ量を大きく(すなわち、Rを大きく)して、トリガ温度の暫定値を再度算出しなおす処理を行ってもよい。
【0030】
S402で算出されたトリガ温度暫定値が下限値以上である場合、S403でNoと判定される。この場合、フォーカス制御部13は、トリガ温度暫定値が所定の上限値を超えるか否かを判定する(S406)。トリガ温度暫定値が上限値を超える場合、S406でYesと判定されるこの場合、フォーカス制御部13は、トリガ温度を上限値に設定する。例えば、上限値はトリガ温度のN倍(1<N)に設定される。これにより、トリガ温度が急激に大きくなり、以降、温度ピント補正が一切実行されなくなることを防止できる。トリガ温度暫定値が上限値以下である場合、フォーカス制御部13は、トリガ温度暫定値をトリガ温度に設定する(S408)。
図4のS405、S407またはS408により、トリガ温度が変更される。
【0031】
従って、フォーカス制御部13は、温度ピントずれを補正するAF(温度ピント補正AF)により変化したフォーカス変化量が大きい場合には、温度ピント補正AFのトリガとなるトリガ温度(温度変化量)を小さくするように変更を行う。また、フォーカス制御部13は、温度ピント補正AFにより変化したフォーカス変化量が小さい場合には、トリガ温度を大きくするように変更を行う。以上の変更処理により、温度ピント補正AFの実行頻度が少なくなり過ぎることに起因した補正不足が生じることを抑制できる。また、温度ピント補正AFの実行頻度が多くなり過ぎることに起因した耐久性の低下を抑制できる。撮像装置100の実際のフォーカス変化量およびトリガ温度に基づいて、上記の変更が行われることから、フォーカス制御部13は、レンズの個体や環境にかかわらず、温度ピントずれの補正を適正に行うことができる。
【0032】
<第2実施形態>
第2実施形態では、温度ピント補正AFが初期状態であっても、温度ピントずれを適正に補正できるようにしたフォーカス制御処理について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
図5は、温度ピント補正AFが初期状態である場合に、温度ピントずれによってぼけが発生した例を示した図である。直線501は、レンズの温度ピントずれの遷移例を示している。また、初期設定保持部16には、トリガ温度の初期値が設定されている。このとき、トリガ温度の温度変化が発生するよりも前に、温度ピントずれが被写界深度(Fδ)を超えると、ぼけが発生してしまう。トリガ温度の初期値として小さな値が設定されれば、ぼけの発生を回避することができる。ただし、温度検出部12の誤差等によって温度ピント補正AFが実行され、トリガ温度およびサーチ範囲が誤った値として算出される可能性がある。また、極端に温度ピントずれが大きいレンズに対しては、トリガ温度の初期値を小さく設定してもぼけが発生する可能性がある。
【0033】
以上のような温度ピント補正AF初期状態における課題(ぼけの発生)を抑制する方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、映像信号から算出したコントラスト評価値601、および温度検出部12から得られる温度602の遷移図である。T0はユーザがピント合わせをした時間であり、この時点での温度をtp1、コントラスト評価値をev1とする。上述したように、tp1に対してトリガ温度分の温度変化があったことを条件(第1の条件)として、温度ピント補正AFが実行される。第2実施形態では、温度ピント補正AFを実行するための第2の条件が追加されている。第2の条件は、コントラスト評価値ev1に対して、コントラスト評価値601が、トリガ評価値分低くなることである。
【0034】
図6の例では、時刻TP1において、第1の条件は満たしていないが、第2の条件を満たす。この場合、フォーカス制御部13は、温度ピント補正AFを実行する。これにより、温度変化がトリガ温度に達する前であっても、ぼけを検出して温度ピント補正AFを実行することができる。なお、第2の条件に使用するコントラスト評価値は、例えば時間平均を用いる等によって、平滑化された値を用いることとする。これにより、瞬間的なコントラストの変化によって、温度ピント補正AFが実行されることを防止する。
【0035】
図7のフローチャートは、第2の実施形態においてフォーカス制御部13が行うフォーカス制御処理の流れを示している。
図7のフローチャートは、
図3のフローチャートに対して、S701~S706の処理が追加されている。S701~S706以外の処理は、
図3のフローチャートと同様であるため、説明を省略する。
【0036】
S301でYesと判定された場合、またはS302でYesと判定された場合、S303およびS304の処理が行われる。第2実施形態では、フォーカス制御部13は、さらにフラグを落とす(S701)。フラグは、温度ピント補正AFによる変更処理(S314の処理)が実施済か否かの判断に用いるフラグである。S701の処理が行われると、フラグが落とされるため、温度ピント補正AFによる変更処理が行われていないことになる。そして、フォーカス制御部13は、現在のコントラスト評価値ev1を取得し、記憶する(S702)。
【0037】
S306でYesと判定された場合(ピント調節がされた場合)、またはS307でYesと判定された場合(MFモードの設定が指示された場合)、フォーカス制御部13は、S308の処理を行う。そして、フォーカス制御部13は、現在のコントラスト評価値ev1を取得し、記憶する(S703)。そして、フォーカス制御部13は、S309において現在の温度tp2を取得し、現在のコントラスト評価値ev2を併せて取得する(S704)。そして、温度tp1と温度tp2との温度変化量が所定のトリガ温度以上である場合(S310でYes)、フォーカス制御部13は、温度ピント補正AFによる変更処理が実施済であるか否かを判定する(S705)。S705の判定を行うに際して、フォーカス制御部13は、フラグを参照する。例えば、フラグが落とされている場合、S705でNoと判定される。一方、フラグが落とされていない場合(例えば、フラグが立てられている場合)、S705でYesと判定される。
【0038】
S705でYesと判定された場合、処理は終了する。この場合、S311からS707の処理は行われない。S705でNoと判定された場合、フォーカス制御部13は、S702またはS703で取得されたコントラスト評価値ev1とS704で取得したコントラスト評価値ev2との差分を取得する。そして、フォーカス制御部13は、取得された差分が所定のトリガ評価値(評価値)以上であるか否かを判定する(S706)。トリガ評価値は任意に設定可能である。S704でYesと判定された場合、つまり取得された差分がトリガ評価値以上である場合、温度ピントぼけが発生したと想定される。このため、温度ピント補正を実行するために、フローは、S311に移行する。S311からS315までの各処理が行われた後、フォーカス制御部13は、フラグを立てる(S707)。S706でNoと判定された場合、つまり上記差分がトリガ評価値未満である場合には、処理は終了する。この場合、温度変化量がトリガ温度以上になるか、または上記差分がトリガ評価値以上になるまで、S311からS707の処理は行われない。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。本発明は、上述の各実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が実行することによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ズームレンズ
2 フォーカスレンズ
12 温度検出部
13 フォーカス制御部
100 撮像装置