(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G01C15/00 103D
G01C15/00 103E
(21)【出願番号】P 2018201339
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054530(JP,A)
【文献】特開2017-106813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量装置本体を具備し、該測量装置本体は、測定対象物に向って測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光し、受光信号を発する受光部と、前記受光信号に基づき測距を行う測距部と、測距光軸上に設けられ、該測距光軸を2次元に偏向可能な光軸偏向部と、前記測距光軸の偏角を検出し、測角を行う射出方向検出部と、前記光軸偏向部の偏向作用及び前記測距部の測距作用を制御する演算制御部と、該演算制御部による演算結果を表示する表示部とを具備し、
前記演算制御部は、前記光軸偏向部により所定のスキャンパターンで前記測定対象物の
隣接する2面に掛渡る様測距光を少なくとも一周期スキャンし、スキャンの軌跡に沿って得られた点群データの
うち連続する4点の内の2組の連続する3点の測定点に基づき
2本の法線ベクトルを演算し、
前記演算制御部は、前記4点の測定点から得られる2本の法線ベクトルが平行となった場合に前記4点の測定点が同一面に存在すると判断し、平行な法線ベクトルを有する面毎に
法線ベクトルに基づき面を演算し、演算結果に基づき前記2面のパラメータを演算し、
演算された
2面のパラメータを
測定対象物のパラメータとして前記表示部に表示させる様構成された測量装置。
【請求項2】
前記演算制御部は、前記4点の測定点で得られる2本の法線ベクトルが平行でない4点の測定点に基づき前記2面の交線の位置を検出する請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記演算制御部は、前記2面の演算結果に基づき前記2面の交線を演算し、更に該交線のパラメータを演算する請求項1に記載の測量装置。
【請求項4】
前記面のパラメータは、少なくとも面の傾き及び傾き方向の情報を含む請求項1
に記載の測量装置。
【請求項5】
前記交線のパラメータは、少なくとも線の傾き及び傾き方向の情報を含む
請求項3に記載の測量装置。
【請求項6】
前記演算制御部は、前記
交線のパラメータと予め設定された基準位置との差分を演算し、該差分に基づき前記測定対象物を前記基準位置迄誘導する様構成された
請求項3に記載の測量装置。
【請求項7】
2つの測定対象物が、共に前記光軸偏向部の偏向範囲に位置し、前記演算制御部は、前記2つの測定対象
物をそれぞれ交互にスキャンさせ、スキャン結果に基づき前記2つの
各測定対象物の
2面のパラメータ
、交線のパラメータをそれぞれ演算し、
前記2つの測定対象物のパラメータの差分に基づき前記2つの測定対象物が所定の位置関係となる様
、該2つの測定対象物を誘導する様構成された
請求項3に記載の測量装置。
【請求項8】
前記光軸偏向部は、回転可能な一対の光学プリズムと、該光学プリズムを個々に独立して回転させるモータとを具備し、前記演算制御部は、前記モータの駆動制御により、前記一対の光学プリズムの回転方向、回転速度、回転比を制御し、前記光軸偏向部による測距光軸の偏向を制御し、前記測距光を2次元スキャンさせる
請求項1~請求項7のうちいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項9】
前記測量装置本体を上下方向及び左右方向に回転可能に支持する支持部と、前記測量装置本体を上下方向及び左右方向に回転する回転駆動部と、前記測量装置本体の上下角及び左右角を検出する角度検出器とを更に具備する
請求項1~請求項7のうちいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項10】
前記光軸偏向部により偏向されない状態の前記測距光軸である基準光軸と平行な撮像光軸を有する撮像部を更に具備し、前記演算制御部は、前記撮像部により取得された画像に基づき測定する前記測定対象物を選択する
請求項1~請求項7のうちいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項11】
前記演算制御部は、前記撮像部で撮像された画像に基づき前記測定対象物を追尾する
請求項10に記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物を測定可能な測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場に於いて、柱等の部材を所定の位置に設置する場合、或は所定の部材を別の部材に取付ける場合、各部材は正しい位置、正しい姿勢で設置する必要がある。従来では、2箇所以上から部材を観察し、目視により部材を所定の位置に誘導していた。この為、部材の誘導の為に複数の作業者が必要となり、効率が悪かった。
【0003】
又、部材を所定の位置に誘導する為に、トータルステーションを用いる場合がある。この場合、既知の点に設置したトータルステーションにより部材を測定しつつ追尾し、測定結果と設計図データを比較することで、部材を所定の位置に誘導している。
【0004】
然し乍ら、トータルステーションは、所定の測定点の測量を行う測量装置である為、点のデータしか得られない。この為、測定結果からは全体の位置や姿勢等のパラメータを判断することができず、正確な誘導が困難であった。
【0005】
又、部材を所定の位置に誘導する為に、3次元レーザスキャナを用いる場合もある。この場合、3次元レーザスキャナを用いて部材の点群データを取得することで、部材の全体の位置や姿勢等のパラメータも検出でき、部材の正確な誘導が可能となる。
【0006】
然し乍ら、レーザスキャナの場合、全周囲の点群データを取得する為、データ数が大量となると共に、点群データの取得に時間を要する。更に、全ての点群データを取得した後に、後処理により部材の位置と姿勢を検出する必要があり、リアルタイムで施工することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-151422号公報
【文献】特開2016-151423号公報
【文献】特開2016-161411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、測定対象物のパラメータをリアルタイムで取得可能とする測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、測量装置本体を具備し、該測量装置本体は、測定対象物に向って測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光し、受光信号を発する受光部と、前記受光信号に基づき測距を行う測距部と、測距光軸上に設けられ、該測距光軸を2次元に偏向可能な光軸偏向部と、前記測距光軸の偏角を検出し、測角を行う射出方向検出部と、前記光軸偏向部の偏向作用及び前記測距部の測距作用を制御する演算制御部と、該演算制御部による演算結果を表示する表示部とを具備し、前記演算制御部は、前記光軸偏向部により所定のスキャンパターンで前記測定対象物の少なくとも1面を少なくとも1周期スキャンし、スキャンの軌跡に沿って得られた点群データの測定結果に基づき面のパラメータを演算し、演算されたパラメータを前記表示部に表示させる様構成された測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記面のパラメータは、少なくとも面の傾き及び傾き方向の情報を含む測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記演算制御部は、前記点群データのうち連続する3点の測定点に基づき該3点の測定点が存在する面の法線ベクトルを演算し、該法線ベクトルに基づき面を演算し、演算結果に基づき前記面のパラメータを演算する測量装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記演算制御部は、前記測定対象物の隣接する2面に掛渡る様測距光をスキャンさせ、スキャン結果に基づき前記2面と該2面が交差する交線のパラメータを演算し、該パラメータと予め設定された基準位置との差分を演算し、該差分に基づき前記測定対象物を前記基準位置迄誘導する様構成された測量装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、2つの測定対象物が、共に前記光軸偏向部の偏向範囲に位置し、前記演算制御部は、前記2つの測定対象物の少なくとも1面をそれぞれ交互にスキャンさせ、スキャン結果に基づき前記2つの測定対象物の面のパラメータをそれぞれ演算し、各パラメータの差分に基づき前記2つの測定対象物が所定の位置関係となる様該2つの測定対象物を誘導する様構成された測量装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記光軸偏向部は、回転可能な一対の光学プリズムと、該光学プリズムを個々に独立して回転させるモータとを具備し、前記演算制御部は、前記モータの駆動制御により、前記一対の光学プリズムの回転方向、回転速度、回転比を制御し、前記光軸偏向部による測距光軸の偏向を制御し、前記測距光を2次元スキャンさせる測量装置に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記測量装置本体を上下方向及び左右方向に回転可能に支持する支持部と、前記測量装置本体を上下方向及び左右方向に回転する回転駆動部と、前記測量装置本体の上下角及び左右角を検出する角度検出器とを更に具備する測量装置に係るものである。
【0016】
又本発明は、前記光軸偏向部により偏向されない状態の前記測距光軸である基準光軸と平行な撮像光軸を有する撮像部を更に具備し、前記演算制御部は、前記撮像部により取得された画像に基づき測定する前記測定対象物を選択する測量装置に係るものである。
【0017】
更に又本発明は、前記演算制御部は、前記撮像部で撮像された画像に基づき前記測定対象物を追尾する測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測量装置本体を具備し、該測量装置本体は、測定対象物に向って測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光し、受光信号を発する受光部と、前記受光信号に基づき測距を行う測距部と、測距光軸上に設けられ、該測距光軸を2次元に偏向可能な光軸偏向部と、前記測距光軸の偏角を検出し、測角を行う射出方向検出部と、前記光軸偏向部の偏向作用及び前記測距部の測距作用を制御する演算制御部と、該演算制御部による演算結果を表示する表示部とを具備し、前記演算制御部は、前記光軸偏向部により所定のスキャンパターンで前記測定対象物の少なくとも1面を少なくとも1周期スキャンし、スキャンの軌跡に沿って得られた点群データの測定結果に基づき面のパラメータを演算し、演算されたパラメータを前記表示部に表示させる様構成されたので、知りたい情報をリアルタイムで直接得ることができ、作業性を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る測量装置を示す正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る測量装置の概略構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施例に係る測量装置本体の概略構成図である。
【
図4】該測量装置本体に於ける光軸偏向部の概略図である。
【
図5】(A)~(C)は、該光軸偏向部の作用説明図である。
【
図6】(A)~(D)は、本発明の第1の実施例に係る面の演算方法を示す説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施例に係る測量装置を用いた測定の一例を示す説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施例に係る測量装置を用いた誘導処理を説明するフローチャートである。
【
図9】本発明の第2の実施例に係る測量装置を用いた測定の一例を示す説明図である。
【
図10】(A)(B)は、本発明の第2の実施例に係る2つの測定対象物間の面のパラメータについて説明する説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施例に係る測量装置を用いた誘導処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0021】
図1~
図3により、本発明の第1の実施例に係る測量装置について説明する。
【0022】
図1中、1は測量装置を示している。該測量装置1は、主に支持装置としての三脚(図示せず)、測量装置本体3、支持部である設置台ユニット4から構成されている。該設置台ユニット4は、前記三脚の上端に取付けられる。前記測量装置本体3は、前記設置台ユニット4によって上下方向、左右方向にそれぞれ回転可能に支持される。
【0023】
前記測量装置本体3は、測距部30、姿勢検出部5、通信部6、演算制御部22、記憶部23、表示部34、操作部35を内蔵している(
図2参照)。前記測距部30は測距光を測定対象物、或は測定範囲(以下、測定対象物7と称す)に射出し、反射測距光を受光して測距を行う。又、前記姿勢検出部5は、前記測量装置本体3の鉛直(又は水平)に対する姿勢を高精度に検出可能である。更に、前記通信部6は、遠隔操作装置としてのスマートフォンやタブレット等の外部端末装置、或は後述するクレーン等の誘導装置と有線、無線等所要の接続手段で接続されている。前記通信部6を介して、前記遠隔操作装置を付加することで、前記測量装置本体3を遠隔操作可能に構成することもできる。又、前記通信部6を介して、前記測量装置本体3と前記遠隔操作装置、前記誘導装置との間でデータの送受信が可能となっている。
【0024】
図1に示される様に、前記設置台ユニット4は、托架部8、台座9を有している。前記托架部8の下面からは、左右回転軸11が突設され、該左右回転軸11は軸受(図示せず)を介して前記台座9に回転自在に嵌合している。前記托架部8は、前記左右回転軸11を中心に左右方向に回転自在となっている。
【0025】
又、該左右回転軸11と前記台座9との間には、左右角(前記左右回転軸11を中心とした回転方向の角度)を検出する左右角検出器12(例えばエンコーダ)が設けられている。該左右角検出器12によって、前記托架部8の前記台座9に対する左右方向の相対回転角が検出される。
【0026】
前記台座9に左右回転ギア13が前記左右回転軸11と同心に固定され、該左右回転ギア13には左右ピニオンギア14が噛合している。前記托架部8には、左右モータ15が設けられ、前記左右ピニオンギア14は前記左右モータ15の出力軸に固着されている。
【0027】
該左右モータ15の駆動により、前記左右ピニオンギア14が回転し、該左右ピニオンギア14が前記左右回転ギア13の回りを公転する。更に、前記托架部8と前記測量装置本体3とが一体に回転する。而して、前記左右モータ15によって、前記測量装置本体3が左右方向に回転される。
【0028】
前記托架部8は凹部を有する凹形状であり、凹部に前記測量装置本体3が収納されている。該測量装置本体3は、上下回転軸16を介して前記托架部8に支持され、前記上下回転軸16を中心に上下方向に回転自在となっている。
【0029】
前記上下回転軸16の一端には、上下回転ギア17が嵌合、固着されている。該上下回転ギア17には、上下ピニオンギア18が噛合している。該上下ピニオンギア18は前記托架部8に設けられた上下モータ19の出力軸に固着されている。該上下モータ19が駆動されることで、前記上下ピニオンギア18が回転され、更に前記上下回転ギア17、前記上下回転軸16を介して前記測量装置本体3が回転される。而して、前記上下モータ19によって、前記測量装置本体3が上下方向に回転される。
【0030】
又、前記上下回転軸16の一端には、上下角(前記上下回転軸16を中心とした回転方向の角度)を検出する上下角検出器21(例えばエンコーダ)が設けられている。該上下角検出器21により、前記測量装置本体3の前記托架部8に対する上下方向の相対回転角が検出される。
【0031】
前記左右モータ15と前記上下モータ19との協働により、前記測量装置本体3を所望の方向へと向けることができる。尚、前記托架部8と前記台座9とにより、前記測量装置本体3の支持部が構成される。又、前記左右モータ15と前記上下モータ19とにより、前記測量装置本体3の回転駆動部が構成される。更に、前記左右角検出器12と前記上下角検出器21とにより、前記測量装置本体3の左右角及び上下角を検出する角度検出器が構成される。
【0032】
前記左右モータ15と前記上下モータ19は、前記測量装置本体3の前記演算制御部22によって駆動が制御される。前記左右角検出器12、前記上下角検出器21によって検出された左右角と上下角は、前記演算制御部22に入力される。前記測量装置本体3が取得したデータ、即ち左右角、上下角のデータ及び後述する測距データ、後述する画像データ、後述するパラメータデータ等は、前記記憶部23に保存される。又、前記測量装置本体3が取得した各種データは、前記通信部6を介して端末装置やPC等に送信される。
【0033】
尚、前記測量装置1による測定範囲が、光軸偏向部24(後述)による偏角の範囲内である場合は、或は該光軸偏向部24の基準光軸Oの方向初期設定を手動で行う場合は、前記左右モータ15、前記左右角検出器12、前記上下モータ19、前記上下角検出器21等については省略することができる。
【0034】
次に、前記測量装置本体3について、
図3を参照して具体的に説明する。
【0035】
該測量装置本体3は、測距光射出部25、受光部26、測距演算部27、撮像部28、射出方向検出部29、モータドライバ31、前記姿勢検出部5、前記通信部6、前記演算制御部22、前記記憶部23、撮像制御部32、画像処理部33、前記表示部34、前記操作部35等を具備している。これらは筐体36に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部25、前記受光部26、前記測距演算部27等は、前記測距部30を構成する。該測距部30は光波距離計として機能する。
【0036】
前記測距光射出部25は、射出光軸37を有し、該射出光軸37上に発光素子38、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸37上に投光レンズ39が設けられている。更に、前記射出光軸37上に設けられた偏光光学部材としての第1反射鏡41と、受光光軸42(後述)上に設けられた偏光光学部材としての第2反射鏡43とによって、前記射出光軸37は、前記受光光軸42と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡41と前記第2反射鏡43とで射出光軸偏向部が構成される。
【0037】
前記発光素子38はパルスレーザ光線を発する。前記測距光射出部25は、前記発光素子38から発せられたパルスレーザ光線を測距光44として射出する。
【0038】
前記受光部26について説明する。該受光部26には、測定対象物からの反射測距光45が入射する。前記受光部26は、前記受光光軸42を有し、該受光光軸42には、前記第1反射鏡41、前記第2反射鏡43によって偏向された前記射出光軸37が合致する。尚、該射出光軸37と前記受光光軸42とが合致した状態を測距光軸46とする(後述)。
【0039】
偏向された前記射出光軸37上に、即ち前記受光光軸42上に前記光軸偏向部24が配設される。該光軸偏向部24の中心を透過する真直な光軸は、基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部24によって偏向されなかった時の前記射出光軸37又は前記受光光軸42又は前記測距光軸46と合致する。
【0040】
前記反射測距光45が前記光軸偏向部24を透過し、入射した前記受光光軸42上に結像レンズ47が配設される。又、前記受光光軸42上に受光素子48、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)が設けられている。前記結像レンズ47は、前記反射測距光45を前記受光素子48に結像する。該受光素子48は、前記反射測距光45を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部27に入力され、該測距演算部27は受光信号に基づき測定対象物迄の測距を行う。
【0041】
前記記憶部23は、HDD、FD等の磁気記憶装置、CD、DVD、MO等の光学記憶装置、メモリカード等の半導体メモリ等が用いられる。前記記憶部23には、撮像の制御プログラム、画像処理プログラム、測距プログラム、表示プログラム、通信プログラム、操作コマンド作成プログラム、前記姿勢検出部5からの姿勢検出結果に基づき前記測量装置本体3の傾斜角、傾斜方向を演算する傾斜角演算プログラム、測距を実行する為の測定プログラム、前記光軸偏向部24の偏向作動を制御する為の偏向制御プログラム、前記測定対象物7を追尾する為の追尾プログラム、測定結果に基づき前記測定対象物7の位置や姿勢、方向等のパラメータを演算する為のパラメータ演算プログラム、撮像された画像に基づき前記測定対象物7を検出或は該測定対象物7の角部を検出する検出プログラム、前記測定対象物7の稜線や角部を演算する為の演算プログラム、測定結果と設計図面データとの比較に基づき誘導情報を演算する誘導プログラム、各種演算を実行する演算プログラム等の各種プログラムが格納される。又、測距データ、測角データ、画像データ、設計図面データ等の各種データが格納される。
【0042】
前記演算制御部22は、前記測量装置本体3の作動状態に応じて、前記各種プログラムを展開、実行して前記測量装置本体3による前記測距光射出部25の制御、前記測距演算部27の制御、前記撮像部28の制御等を行い、測距を実行する。尚、前記演算制御部22としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。
【0043】
図4を参照して、前記光軸偏向部24について説明する。
【0044】
該光軸偏向部24は、一対の光学プリズム49,51から構成される。該光学プリズム49,51は、それぞれ同径の円板形であり、前記受光光軸42上に該受光光軸42と直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。前記光学プリズム49は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズム52a,52b,52cを有している。前記光学プリズム51は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズム53a,53b,53cを有している。尚、前記三角プリズム52a,52b,52cと前記三角プリズム53a,53b,53cは、全て同一偏角の光学特性を有している。
【0045】
各三角プリズムの幅、形状は全て同じでもよく、或は異なっていてもよい。尚、中心に位置する前記三角プリズム52a,53aの幅は、前記測距光44のビーム径よりも大きくなっている。従って、該測距光44は、前記三角プリズム52a,53aのみを透過する様になっている。尚、中心以外に位置する三角プリズムについては、多数の小さい三角プリズムで構成してもよい。
【0046】
更に、中心の前記三角プリズム52a,53aについては光学ガラス製とし、中心以外の前記三角プリズム52b,52c、前記三角プリズム53b,53cについては光学プラスチック製としてもよい。これは、前記光軸偏向部24から前記測定対象物7迄の距離は大きい為、前記三角プリズム52a,53aの光学特性については精度が要求される。一方、前記三角プリズム52b,52c、前記三角プリズム53b,53cから前記受光素子48迄の距離は小さく、高精度の光学特性は必要ないという理由による。
【0047】
前記光軸偏向部24の中央部(前記三角プリズム52a,53aの中央部)は、前記測距光44が透過し、射出される測距光偏向部(第1光軸偏向部)となっている。前記光軸偏向部24の中央部を除く部分(前記三角プリズム52a,53aの両端部及び前記三角プリズム52b,52c、前記三角プリズム53b,53c)は、前記反射測距光45が入射し、透過する反射測距光偏向部(第2光軸偏向部)となっている。
【0048】
前記光学プリズム49,51は、それぞれ前記受光光軸42を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム49,51は、回転方向、回転量、回転速度が独立して制御されることで、射出される前記測距光44の前記射出光軸37を任意の方向に偏向し、又受光される前記反射測距光45の前記受光光軸42を前記射出光軸37と平行に偏向する。
【0049】
前記光学プリズム49,51の外形形状は、それぞれ前記受光光軸42(基準光軸O)を中心とする円形であり、前記反射測距光45の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム49,51の直径が設定されている。
【0050】
前記光学プリズム49の外周には、リングギア54が嵌設される。前記光学プリズム51の外周には、リングギア55が嵌設される。
【0051】
前記リングギア54には駆動ギア56が噛合している。該駆動ギア56はモータ57の出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア55には駆動ギア58が噛合している。該駆動ギア58はモータ59の出力軸に固着されている。前記モータ57,59は、前記モータドライバ31に電気的に接続されている。
【0052】
前記モータ57,59は、回転角を検出できるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角を)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いて前記モータ57,59の回転量を検出してもよい。該モータ57,59の回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ31により前記モータ57,59が個別に制御される。尚、エンコーダを直接リングギア54,55にそれぞれ取付けてもよい。この場合、エンコーダにより前記リングギア54,55の回転角が直接検出される。
【0053】
ここで、前記光軸偏向部24の偏向角は、前記光学プリズム49,51の回転角に対して小さい為(例えば、偏向角±10°させる為の回転角が±40°)、高精度に変更させることができる。
【0054】
前記駆動ギア56,58、前記モータ57,59は、前記測距光射出部25と干渉しない位置、例えば前記リングギア54,55の下側に設けられている。
【0055】
前記投光レンズ39、前記第1反射鏡41、前記第2反射鏡43、前記測距光偏向部等は、投光光学系を構成する。又、前記反射測距光偏向部、前記結像レンズ47等は、受光光学系を構成する。
【0056】
前記測距演算部27としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。前記測距演算部27は、前記発光素子38を制御し、前記測距光44としてレーザ光線をパルス発光又はバースト発光(断続発光)させる。該測距光44が前記三角プリズム52a,53a(測距光偏向部)により、前記測定対象物7に向う様前記射出光軸37が偏向される。前記測距光軸46が前記測定対象物7を視準した状態で、測距が行われる。尚、前記測距演算部27については、前記演算制御部22の一部の機能を割当ててもよい。
【0057】
前記測定対象物7から反射された前記反射測距光45は、前記三角プリズム52aの一部と前記三角プリズム52b,52c、前記三角プリズム53aの一部と前記三角プリズム53b,53c(反射測距光偏向部)、前記結像レンズ47を介して入射し、前記受光素子48に受光される。該受光素子48は、受光信号を前記測距演算部27に送出する。該測距演算部27は、前記受光素子48からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行う。測距データは、前記記憶部23に格納される。
【0058】
前記射出方向検出部29は、前記モータ57,59に入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ57,59の回転角を検出する。或は、前記射出方向検出部29は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ57,59の回転角を検出する。又、前記射出方向検出部29は、前記モータ57,59の回転角に基づき、前記光学プリズム49,51の回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部29は、前記光学プリズム49,51の屈折率と回転位置とに基づき、各パルス光毎の前記測距光44の偏角、射出方向を検出する。演算結果(測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部22に入力される。尚、前記測距光44がバースト発光される場合は、断続測距光毎に測距が実行される。
【0059】
前記演算制御部22は、前記モータ57,59の回転方向、回転速度、前記モータ57,59間の回転比を制御することで、前記光軸偏向部24による偏向作用を制御する。又、前記測距光44の偏角、射出方向から、前記基準光軸に対する測定点の水平角、鉛直角を演算する。更に、測定点についての水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、前記演算制御部22は、前記測定対象物7の3次元データを演算することができる。而して、前記測量装置1は、トータルステーションとしても機能する。
【0060】
次に、前記姿勢検出部5について説明する。尚、該姿勢検出部5としては、特許文献2に開示された姿勢検出部を使用することができる。
【0061】
該姿勢検出部5について簡単に説明する。該姿勢検出部5は、フレーム61を有している。該フレーム61は、前記筐体36に固定され、或は構造部材に固定され、前記測量装置本体3と一体となっている。
【0062】
前記フレーム61には、ジンバルを介してセンサブロック62が取付けられている。該センサブロック62は、直交する2軸を中心に2方向にそれぞれ360°回転自在となっている。
【0063】
該センサブロック62には、第1傾斜センサ63、第2傾斜センサ64が取付けられている。前記第1傾斜センサ63は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ、反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器である。或は、前記第1傾斜センサ63は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、前記第2傾斜センサ64は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
【0064】
前記センサブロック62の、前記フレーム61に対する2軸についての相対回転角は、エンコーダ65,66によって検出される様になっている。
【0065】
又、前記センサブロック62を回転させ、水平に維持するモータ(図示せず)が前記2軸に関してそれぞれ設けられている。該モータは、前記第1傾斜センサ63、前記第2傾斜センサ64からの検出結果に基づき、前記センサブロック62を水平に維持する様に前記演算制御部22によって制御される。
【0066】
前記センサブロック62が傾斜していた場合(前記測量装置本体3が傾斜していた場合)、前記センサブロック62(水平)に対する前記フレーム61の相対回転角が前記エンコーダ65,66によって検出される。該エンコーダ65,66の検出結果に基づき、前記測量装置本体3の傾斜角、傾斜方向が検出される。
【0067】
前記センサブロック62は、2軸について360°回転自在であるので、前記姿勢検出部5がどの様な姿勢となろうとも、例えば該姿勢検出部5の天地が逆になった場合であっても、全方向での姿勢検出が可能である。
【0068】
姿勢検出に於いて、高応答性を要求する場合は、前記第2傾斜センサ64の検出結果に基づき姿勢検出と姿勢制御が行われるが、該第2傾斜センサ64は前記第1傾斜センサ63に比べ検出精度が悪いのが一般的である。
【0069】
前記姿勢検出部5では、高精度の前記第1傾斜センサ63と高応答性の前記第2傾斜センサ64を具備することで、該第2傾斜センサ64の検出結果に基づき姿勢制御を行い、前記第1傾斜センサ63により高精度の姿勢検出を可能とする。
【0070】
該第1傾斜センサ63の検出結果で、前記第2傾斜センサ64の検出結果を較正することができる。前記第1傾斜センサ63が水平を検出した時の前記エンコーダ65,66の値、即ち実際の傾斜角と前記第2傾斜センサ64が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、該偏差に基づき前記第2傾斜センサ64の傾斜角を較正することができる。
【0071】
従って、予め、該第2傾斜センサ64の検出傾斜角と、前記第1傾斜センサ63による水平検出と前記エンコーダ65,66の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、前記第2傾斜センサ64に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、該第2傾斜センサ64による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。
【0072】
前記演算制御部22は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が早い時は、前記第2傾斜センサ64からの信号に基づき、前記モータを制御する。又、前記演算制御部22は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち前記第1傾斜センサ63が追従可能な状態では、該第1傾斜センサ63からの信号に基づき、前記モータを制御する。
【0073】
尚、前記記憶部23には、前記第1傾斜センサ63の検出結果と前記第2傾斜センサ64の検出結果との比較結果を示す対比データが格納されている。前記第1傾斜センサ63からの信号に基づき、前記第2傾斜センサ64による検出結果を較正する。この較正により、該第2傾斜センサ64による検出結果を前記第1傾斜センサ63の検出精度迄高めることができる。よって、前記姿勢検出部5による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
【0074】
前記撮像部28は、前記測量装置本体3の前記基準光軸Oと平行な撮像光軸67と、該撮像光軸67に配置された撮像レンズ68と、前記撮像光軸67に配置された撮像素子69とを有している。前記撮像部28は、前記光学プリズム49,51による最大偏角θ/2(例えば±30°)と略等しいか、或は最大偏角よりも大きい画角を有するカメラである。前記撮像部28は、例えば50°~60°の画角を有し、前記測量装置本体3のスキャン範囲(スキャン可能な範囲)を含む画像データを取得する。前記撮像光軸67と前記射出光軸37及び前記基準光軸Oとの関係は既知である。即ち、前記撮像光軸67と前記射出光軸37及び基準光軸Oとは平行であり、又各光軸間の距離は既知の値となっている。
【0075】
又、前記撮像部28は、静止画像又は連続画像或は動画像がリアルタイムで取得可能である。前記撮像部28で取得された画像の中心は、前記撮像光軸67と合致する。従って、前記基準光軸Oは前記撮像光軸67との既知の関係に基づき、画像の中心に対して所定の画角ずれた位置となる。
【0076】
前記撮像制御部32は、前記撮像部28の撮像を制御する。前記撮像制御部32は、前記撮像部28が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、動画像又は連続画像を較正するフレーム画像を取得するタイミングと、前記測量装置本体3でスキャンするタイミングとの同期を取っている。前記演算制御部22は、画像と測定データ(測距データ、測角データ)との関連付けも実行する。
【0077】
前記撮像素子69は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸67を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。又、前記撮像光軸67と前記基準光軸Oとの関係(距離)が既知であるので、測距部による測定位置と、前記撮像素子69上での位置(画素)との相互関連付けが可能である。前記撮像素子69から出力される画像信号は、前記撮像制御部32を介して前記画像処理部33に入力される。
【0078】
前記画像処理部33は、前記撮像部28で取得した画像データについて、エッジ抽出処理等の画像処理を行い、前記測定対象物7の稜線や中心線の抽出を行う。
【0079】
前記表示部34は、前記撮像部28により取得した画像や前記測定対象物7のパラメータ等を表示する。又、前記操作部35は、測定条件の設定や前記測定対象物7の選択等を入力する。尚、前記表示部34をタッチパネルとしてもよい。この場合、該表示部34が操作部も兼ねるので、前記操作部35を省略することができる。又、前記表示部34及び前記操作部35をユニット化し、該ユニットを前記測量装置本体3に対して着脱可能としてもよい。この場合、前記ユニットには別途通信部が設けられる。更に、スマートフォンやタブレット等の端末装置を前記表示部34及び前記操作部35として用いてもよい。この場合、前記端末装置は遠隔操作装置として機能し、前記通信部6を介して前記測量装置本体3の遠隔操作が可能となっている。
【0080】
前記光軸偏向部24の偏向作用、スキャン作用について、
図5(A)~
図5(C)を参照して説明する。
【0081】
尚、
図5(A)では、説明を簡略化する為、前記光学プリズム49,51について、前記三角プリズム52a,53aと、前記三角プリズム52b,52c,53b,53cとを分離して示している。又、
図5(A)は、前記三角プリズム52a,53a、前記三角プリズム52b,52c,53b,53cが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角(例えば、±30°)が得られる。又、前記光学プリズム49,51のいずれか一方が他方に対して180°回転した位置にある状態では、該光学プリズム49,51の相互の光学作用が相殺され、最小の偏角(0°)となる。従って、前記光学プリズム49,51を経て射出、受光されるレーザ光線の光軸(前記測距光軸46)は、前記基準光軸Oと合致する。
【0082】
前記発光素子38から前記測距光44が発せられ、該測距光44は前記投光レンズ39で平行光束とされ、前記測距光偏向部(前記三角プリズム52a,53a)を透過して前記測定対象物7に向けて射出される。ここで、前記測距光偏向部を透過することで、前記測距光44は前記三角プリズム52a,53aによって所要の方向に偏向されて射出される(
図5(A))。
【0083】
前記測定対象物7で反射された前記反射測距光45は、前記反射測距光偏向部を透過して入射され、前記結像レンズ47により前記受光素子48に集光される。
【0084】
前記反射測距光45が前記反射測距光偏向部を透過することで、前記反射測距光45の光軸は、前記受光光軸42と合致する様に前記三角プリズム52b,52c及び前記三角プリズム53b,53cによって偏向される(
図5(A))。
【0085】
前記光学プリズム49と前記光学プリズム51との回転位置の組合わせにより、射出する前記測距光44の偏光方向、偏角を任意に変更することができる。
【0086】
又、前記光学プリズム49と前記光学プリズム51との位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム49と前記光学プリズム51とで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ57,59により、前記光学プリズム49と前記光学プリズム51とを一体に回転すると、前記測距光偏向部を透過した前記測距光44が描く軌跡は前記基準光軸Oを中心とした円となる。
【0087】
従って、前記発光素子38よりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部24を回転させれば、前記測距光44を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記反射測距光偏向部は、前記測距光偏向部と一体に回転していることは言う迄もない。
【0088】
図5(B)は、前記光学プリズム49と前記光学プリズム51とを相対回転させた場合を示している。前記光学プリズム49により偏向された光軸の偏光方向を偏向Aとし、前記光学プリズム51により偏向された光軸の偏光方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム49,51による光軸の偏向は、該光学プリズム49,51間の角度差をθとして、合成偏向Cとなる。
【0089】
従って、前記光学プリズム49と前記光学プリズム51とを逆向きに等速度で回転させることで、前記測距光44を合成偏向C方向に直線71の軌跡で往復スキャンさせることができる。
【0090】
更に、
図5(C)に示される様に、前記光学プリズム49の回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム51を回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ前記測距光44が回転される。従って、該測距光44のスキャン軌跡はスパイラル状となる。
【0091】
又、前記光学プリズム49、前記光学プリズム51の回転方向、回転速度を個々に制御することで、前記測距光44のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした種々の2次元のスキャンパターンとすることができる。
【0092】
次に、
図6(A)~
図6(D)を参照して、前記測量装置1を用いた前記測定対象物7のパラメータの取得について説明する。尚、以下の説明では、前記測定対象物7は断面が矩形の柱である場合を示している。
【0093】
該測定対象物7のパラメータを演算する場合、先ず前記操作部35を介して前記測距光44のスキャンパターンを設定し、該スキャンパターンの軌跡が前記測定対象物7の中の少なくとも1つの面を含む様、基準光軸Oを前記測定対象物7へと向ける。
図6(A)は、円状のスキャンパターン72を用い、該スキャンパターン72が前記測定対象物7の2面7a,7bに掛渡る様に前記測距光44をスキャンさせた場合を示している。該測距光44をスキャンさせることで、前記スキャンパターン72の軌跡に沿った点群データが取得される。
【0094】
点群データは、前記スキャンパターン72の軌跡に沿って所定角度ピッチ毎に測定した測定点73の集合である。
図6(B)は、点群データから抽出した4つの連続する測定点73a~73dと、前記測定点73aと前記測定点73bを結ぶベクトル74、前記測定点73bと前記測定点73cを結ぶベクトル75、前記測定点73cと前記測定点73dを結ぶベクトル76を示している。本実施例では、連続する3点の測定点の測定結果に基づき、法線ベクトルを演算することができる。
【0095】
図6(C)に示される様に、前記ベクトル74と前記ベクトル75の外積を演算することで、法線ベクトル77を求めることができる。該法線ベクトル77は、前記測定点73a~73cの3点が存在する面に対して直交するベクトルとなっている。従って、前記法線ベクトル77に基づき、前記測定点73a~73cが存在する面が演算される。更に、この面が前記測定対象物7を構成していることから、面の演算結果に基づき、前記測定対象物7の傾きや傾き方向等を演算することができる。ここで、面の状態、姿勢を表す傾き、傾き方向、前記測量装置本体3に対する距離や方向等をパラメータと定義する。
【0096】
同様に、
図6(D)に示される様に、前記ベクトル75と前記ベクトル76の外積を演算することで、法線ベクトル78を求めることができる。該法線ベクトル78は、前記測定点73b~73dの3点が存在する面に対して直交するベクトルとなっている。従って、前記法線ベクトル78に基づき、前記測定点73b~73dが存在する面が演算される。又、面の演算結果に基づき、前記測定対象物7を構成する面のパラメータを演算することができる。
【0097】
ここで、前記法線ベクトル77と前記法線ベクトル78が平行であった場合、即ち、前記測定点73a~73cが存在する面と、前記測定点73b~73dが存在する面とが一致した場合には、前記測定点73a~73cが存在する面と前記測定点73b~73dが存在する面とが同一面であると判断することができる。
【0098】
又、前記法線ベクトル77と前記法線ベクトル78が平行ではなかった場合、即ち、前記測定点73a~73cが存在する面と、前記測定点73b~73dが存在する面とが一致しなかった場合には、前記測定点73a~73cが存在する面と前記測定点73b~73dが存在する面とが異なる面であると判断することができる。
【0099】
点群データの残りの前記測定点73についても、上記と同様の処理を行う。これにより、多数の平行な法線ベクトルを有する前記2つの面7a,7bと、該2つの面7a,7bのどちらとも直交しない法線ベクトルを有する面を演算することができる。
【0100】
ここで、前記2つの面7a,7bのどちらとも直交しない法線ベクトルが求められるのは、3つの測定点のうちの1点が異なる面に存在することを示す。従って、前記2つの面7a,7bのどちらとも直交しない法線ベクトルを演算する為に用いた3つの測定点の間に、前記2つの面7a,7bの交差位置(交線)7cが存在すると見なすことができる。或は、前記撮像部28で取得された画像を前記画像処理部33にて画像処理し、前記測定対象物7のエッジ検出を行ってもよい。
【0101】
前記測定対象物7の2面7a,7bが演算されることで、前記演算制御部22により前記2面7a,7bのパラメータが演算される。又、前記交線7c(直線の式)が演算されることで、前記演算制御部22により前記交線7cのパラメータが演算される。ここで、交線のパラメータとは、例えば交線の位置、交線の傾き及び傾き方向を示す。演算された前記2面7a,7bのパラメータ、前記交線7cのパラメータは、前記表示部34に表示される。
【0102】
次に、
図7及び
図8のフローチャートを参照し、前記測量装置1を用いた前記測定対象物7の誘導処理について説明する。尚、
図7では、例えばクレーン79で吊下げた角柱状の測定対象物(鉄骨)7を基準位置81へ誘導する例を示している。
【0103】
STEP:01 先ず始めに、前記操作部35より前記基準位置81を設定する。該基準位置81は、前記測定対象物7の設置位置である。前記基準位置81は、例えば前記記憶部23に格納された設計図面データに基づき設定される。尚、前記基準位置81は、前記撮像部28で取得された画像内に位置するのが望ましい。
【0104】
STEP:02 次に、作業者は、前記撮像部28で取得され、前記表示部34に表示された画像に基づき前記測定対象物7を選択する。或は、予め記憶された該測定対象物7の形状に基づき、前記演算制御部22が前記測定対象物7を画像から自動で検出する様にしてもよい。
【0105】
STEP:03 該測定対象物7が選択されると、前記演算制御部22は、任意の位置に設置した前記測量装置1により前記基準位置81を測定させる。該基準位置81を測定させることで、前記測量装置1の設置位置を基準とした前記基準位置81の3次元座標を測定する。尚、設計図面データの座標系に於ける既知の点に前記測量装置1を設置する場合には、STEP:03は省略してもよい。
【0106】
STEP:04 前記測定対象物7の測定後、前記演算制御部22は、所定の2次元の閉ループのスキャンパターンで前記測定対象物7をスキャンさせる。本実施例では、2次元閉ループのスキャンパターンとして、円状の前記スキャンパターン72を用い、前記2つの面7a,7bに掛渡る様に前記測定対象物7を1周期スキャンする。該測定対象物7をスキャンすることで、前記スキャンパターン72の軌跡に沿って点群データが取得される。
【0107】
又、前記演算制御部22は、前記測定対象物7のスキャンと並行して、該測定対象物7を追尾させる。該測定対象物7の追尾は、例えば該測定対象物7が画像の所定位置に位置する様、前記左右モータ15、前記上下モータ19、前記モータ57,59を駆動させる。
【0108】
STEP:05 点群データが取得されると、前記演算制御部22は、上記した様に、連続する4つの測定点73a~73dに基づき、前記2つの面7a,7b及び前記交線7cを演算する。又、前記演算制御部22は、演算した前記2つの面7a,7bに基づき、前記2つの面7a,7bのパラメータを演算する。更に、前記演算制御部22は、演算した前記交線7cに基づき、該交線7cのパラメータを演算する。
【0109】
STEP:06 パラメータの演算後、前記演算制御部22は、前記2つの面7a,7bのパラメータ、前記交線7cのパラメータの演算結果と、前記基準位置81の3次元座標に基づき、前記測定対象物7と前記基準位置81との差分を演算する。ここで、演算された差分とは、前記基準位置81に対する前記2つの面7a,7b(或は前記交線7c)の水平2方向の差分、前記交線7c(或は軸心)の鉛直に対する傾斜角及び傾斜方向、前記基準位置81に対する前記2つの面7a,7b(或は前記交線7c)の回転角を示す。
【0110】
STEP:07 演算された差分は、前記表示部34に表示されると共に、前記通信部6を介して前記クレーン79に送信される。作業者は、該クレーン79に送信された差分情報に基づき、前記測定対象物7を前記基準位置81に誘導する。尚、前記2つの面7a,7bと前記交線7cから、既知のサイズの前記測定対象物(鉄骨)7の中心軸を求め、該中心軸を前記基準位置81に誘導してもよい。
【0111】
STEP:08 前記測定対象物7のスキャン及び前記2つの面7a,7b(或は前記交線7c)のパラメータの演算は、前記測定対象物7と前記基準位置81との差分が0となる迄繰返し実行される。該差分が0となると、前記測定対象物7が前記基準位置81迄誘導されたと判断され、前記測定対象物7の誘導処理を終了する。
【0112】
上述の様に、第1の実施例では、前記測定対象物7を所定のスキャンパターン72でスキャンし、スキャン結果に基づき前記測定対象物7の面7a,7bのパラメータを演算し、演算した面のパラメータに基づき測定対象物7の誘導処理を行っている。或は、前記測定対象物7の前記交線7cのパラメータを演算し、演算した前記交線7cのパラメータに基づき前記測定対象物7の誘導処理を行っている。
【0113】
従って、前記測量装置1により全周囲の点群データを取得する必要がないので、取得されるデータ数を大幅に低減でき、演算量も低減させることができる。又、演算量が低減することで、リアルタイムでの誘導が可能となり、作業性を向上させることができる。
【0114】
又、第1の実施例では、測定結果ではなく、面及び交線のパラメータを表示させ、パラメータに基づき前記測定対象物7を誘導するので、作業者はリアルタイムで知りたい情報を直接得ることができる。更に、誘導処理は1人で実行可能であるので、作業性をより向上させることができる。
【0115】
尚、第1の実施例では、前記測定対象物7を角柱状としているが、該測定対象物7は円柱状でもよい。この場合、該測定対象物7の半径方向両端が軌跡内に含まれる様前記スキャンパターン72を設定し、点群データに基づき半径方向両端を検出する。更に、検出した半径方向両端に基づき前記測定対象物7の中心軸を検出し、該中心軸の鉛直に対する傾斜角及び傾斜方向、該中心軸と前記基準位置81との水平2方向の差分に基づき前記測定対象物7を誘導することができる。或は、円柱状の該測定対象物7から得られた全ての点群データに基づき、径が既知の円柱をマッチングさせ、マッチング結果に基づき前記測定対象物7の中心軸を求めてもよい。
【0116】
又、第1の実施例では、連続する4つの測定点73a~73dに基づき、前記2つの面7a,7b及び前記交線7cを演算し、演算結果に基づき前記2つの面7a,7b及び前記交線7cのパラメータを演算している。一方で、前記スキャンパターン72の軌跡に沿った点群データの3次元座標に基づく平面フィッティングにより前記2つの面7a,7bを演算してもよい。この場合、平面フィッティングされた前記2つの面7a,7bの交差位置が交線7cとなる。
【0117】
又、第1の実施例では、前記2つの面7a,7bに掛渡って前記測距光44をスキャンさせている。一方で、演算するのが面の傾斜や方向のみでよい場合には、1つの面のみの測定でもよい。
【0118】
更に、第1の実施例では、前記スキャンパターン72として、円状のスキャンパターンを例示しているが、8の字状、トロコイド状等、種々の2次元閉ループのスキャンパターンが適用可能であることは言う迄もない。
【0119】
次に、
図9、
図10及び
図11のフローチャートを参照して、本発明の第2の実施例について説明する。尚、
図9中、
図7中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0120】
第2の実施例では、角柱状の第1測定対象物82と第2測定対象物83のうち、一方に対して他方を誘導処理し、前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83とが所定の位置関係となる様調整を行う。
【0121】
STEP:11 作業者は、前記測量装置1を任意の姿勢で保持した状態で、前記撮像部28で取得された画像に基づき、前記第1測定対象物82と第2測定対象物83とを選択する。或は、予め記憶された前記第1測定対象物82と第2測定対象物83の形状に基づき、前記演算制御部22が前記第1測定対象物82と第2測定対象物83を画像から自動で検出する様にしてもよい。
【0122】
STEP:12 次に、前記演算制御部22は、所定のスキャンパターン72で前記第1測定対象物82をスキャンさせる。
図9中では、円状の前記スキャンパターン72を用い、前記第1測定対象物82の2つの面82a,82bに掛渡る様に前記第1測定対象物82を1周期スキャンする。該第1測定対象物82をスキャンすることで、前記スキャンパターン72の軌跡に沿って点群データが取得される。
【0123】
STEP:13 点群データが取得されると、前記演算制御部22は、連続する4つの測定点73a~73dに基づき、前記2つの面82a,82b及び交線82cを演算する。又、前記演算制御部22は、演算した前記2つの面82a,82b及び前記交線82cに基づき、前記2つの面82a,82b及び前記交線82cのパラメータを演算する。
【0124】
STEP:14 次に、前記演算制御部22は、STEP:12と同様の前記スキャンパターン72で前記第2測定対象物83をスキャンさせる。
図9中では、前記第2測定対象物83の2つ面83a,83bに掛渡る様に前記第2測定対象物83に対して円スキャンを所要回数、少なくとも1周期スキャンする。該第2測定対象物83をスキャンすることで、前記スキャンパターン72の軌跡に沿って点群データが取得される。
【0125】
ここで、前記第1測定対象物82と第2測定対象物83は、共に画像内に位置している。又、前記撮像部28は、前記光軸偏向部24による偏向範囲と略同等の画角を有している。従って、前記測距光軸46を前記第1測定対象物82から前記第2測定対象物83に移動させる際には、前記光軸偏向部24を駆動させるだけでよく、前記測量装置本体3を回転させる必要がない。
【0126】
STEP:15 点群データが取得されると、前記演算制御部22は、連続する4つの測定点73a~73dに基づき、前記2つの面83a,83b及び交線83cを演算する。又、前記演算制御部22は、演算した前記2つの面83a,83b及び前記交線83cに基づき、前記2つの面83a,83b及び前記交線83cのパラメータを演算する。
【0127】
STEP:16 前記2つの面82a,82bと前記交線82cのパラメータ、前記2つの面83a,83bと前記交線83cのパラメータがそれぞれ演算されると、設計図面データ等に基づき、前記2つの面82a,82bと前記2つの面83a,83bとの間のパラメータの差分、或は前記交線82cと前記交線83cとの間のパラメータの差分を演算する。
【0128】
ここで、演算された差分とは、例えば設計図面データで前記面82bと前記面83bが対向すると設定されていた場合、前記面82bと前記面83bとの距離、前記面82bに対する前記面83bの傾斜角、前記面82bに対する前記面83bの回転角等を示す。
【0129】
図10(A)、
図10(B)は前記面82bと前記面83bとの関係を簡略化して示したものである。
図10(A)に示される様に、前記面82bと前記面83bとの距離とは、前記面82bと前記面83bとの最短距離を示す。又、
図10(B)に示される様に、前記面82bに対する前記83bの傾斜角や回転角とは、例えば前記面82bの法線ベクトル84と前記面83bの法線ベクトル85との成す角度を示す。
【0130】
STEP:17 演算された差分は、前記表示部34に表示される。作業者は、演算された差分が設計図面データに基づいた所定の値となる様、前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83を手動或は前記クレーン79にて移動させる。
【0131】
STEP:18 前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83のスキャン及び面や交線のパラメータの演算は、差分が設計図面データに基づいた所定の値となる迄1周期ずつ交互に実行される。前記差分が設計図面データに基づいた所定の値となると、前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83とが所定の位置関係となる様誘導されたと判断され、前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83の誘導処理を終了する。尚、設計図面データに基づいた所定の値を0とし、差分が0となる迄繰返し実行されてもよい。
【0132】
上述の様に、第2の実施例では、2つの前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83との間のパラメータの差分に基づき誘導を行っている。即ち、ここで演算されるパラメータは、一方の測定対象物に対するパラメータであり、水平或は垂直に対するパラメータは必要としない。従って、前記測量装置本体3を整準する必要がなく、更に前記姿勢検出部5も不要である。この為、例えば作業者が該測量装置本体3を任意の姿勢で保持した状態でも誘導処理を行うことができる。
【0133】
又、前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83とは同一の画像内で選択されているので、前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83を交互に測定させる際には前記光軸偏向部24を駆動させるだけでよい。従って、前記測量装置本体3を回転させる為の前記左右モータ15及び前記上下モータ19が不要となり、装置構成を簡略化することができる。
【0134】
又、第2の実施例でも、前記測量装置1により全周囲の点群データを取得する必要がないので、取得されるデータ数を大幅に低減でき、演算量も低減させることができる。更に、演算量が低減することで、リアルタイムでの誘導が可能となり、作業性を向上させることができる。
【0135】
尚、第2の実施例では、前記第1測定対象物82と前記第2測定対象物83に対して、隣接する2面に掛渡る様に測距光44をスキャンしている。一方で、面と面との距離、一方の面に対する他方の面の角度等を求める場合には、1面と1面のみの測定でよい。更に、プリズムと面との距離(最短距離)を求める場合には、
図10(A)に示される様に1点と1面の測定でよい。
【0136】
又、第2の実施例では、前記姿勢検出部5を設けていないが、該姿勢検出部5を設けてもよいのは言う迄もない。該姿勢検出部5を設けることで、求められるパラメータの種類が増加するので、用途に応じて前記姿勢検出部5を着脱することができる。
【0137】
尚、第1の実施例及び第2の実施例では、2面に掛渡る様に測定対象物をスキャンしている。一方で、例えば隣接する2つの側面の交線、一方の側面と下面との交線、他方の側面と下面との交線を含む様に測定対象物をスキャンしてもよい。
【0138】
この場合、隣接する2つの側面のパラメータが演算できると共に、測定対象物の下端も検出可能であるので、隣接する2つの側面の交線の下端、即ち測定対象物の角部も演算することができる。角部が演算されることで、基準位置等に対する高さ方向の差分も演算可能となるので、誘導処理をより高精度に行うことができる。
【0139】
又、第1の実施例及び第2の実施例では、前記光軸偏向部24を用いた前記測量装置1を用いて面を測定し、面のパラメータを演算していたが、通常のレーザスキャナを用いてもよい。
【0140】
この場合、設計図面データに基づき、或は前記撮像部28で撮像された画像に基づき、測定対象物のみが測定される様測定範囲を限定する。限定された測定範囲に向って測距光を偏向させると共に、測距光を走査させ点群データを取得する。点群データ取得後の面の演算、面のパラメータの演算については、第1の実施例及び第2の実施例と同様である。
【0141】
測定範囲が限定されることで、全周囲の点群データを取得する必要がなくなるので、取得される点群データのデータ数を低減させることができる。従って、前記演算制御部22の演算負担が低減されるので、リアルタイムでのパラメータの演算が可能となり、リアルタイムでの誘導処理が可能となる。
【符号の説明】
【0142】
1 測量装置
3 測量装置本体
7 測定対象物
22 演算制御部
24 光軸偏向部
25 測距光射出部
26 受光部
28 撮像部
29 射出方向検出部
34 表示部
44 測距光
45 反射測距光
73 測定点
74 ベクトル
75 ベクトル
76 ベクトル
77 法線ベクトル
78 法線ベクトル
81 基準位置
82 第1測定対象物
83 第2測定対象物