(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】運搬車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20221212BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B62B3/00 A
B62B5/00 K
B62B3/00 B
(21)【出願番号】P 2018216025
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 美徳
(72)【発明者】
【氏名】梨本 知伸
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-083842(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105346573(CN,A)
【文献】特開平07-187586(JP,A)
【文献】特開平09-271219(JP,A)
【文献】特開2001-206264(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02354078(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006014338(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
B62B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの前輪、又は、一つの後輪を含む車輪を有し、前記車輪を含む3点で接地可能な運搬車であって、
前記車輪が回転可能に配置される車体フレームと、
前記車体フレームに配置され、作業者が把持可能な左右のハンドル部と、
前記車体フレームの上方に設けられ、荷物を載置するための荷台と、
前記一つの前輪、又は、前記一つの後輪の左右両側に配置される補助輪と、
前記補助輪の地面からの高さを調整する高さ調整機構と、
を備え、前記高さ調整機構は、前記補助輪の最低の調整高さにおいて、前記補助輪が地面に接地しないように構成されている、運搬車。
【請求項2】
前記高さ調整機構は、前記補助輪の最高の調整高さにおいて、前記補助輪の回転軸が、前記一つの前輪、又は、前記一つの後輪の回転軸よりも地面に近くなるように構成されている、
請求項1に記載の運搬車。
【請求項3】
前記高さ調整機構は、前記補助輪の地面からの高さを段階的に調整可能に構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の運搬車。
【請求項4】
一つの前輪、又は、一つの後輪を含む車輪を有し、前記車輪を含む3点で接地可能な運搬車であって、
前記車輪が回転可能に配置される車体フレームと、
前記車体フレームに配置され、作業者が把持可能な左右のハンドル部と、
前記車体フレームの上方に設けられ、荷物を載置するための荷台と、
前記一つの前輪、又は、前記一つの後輪の左右両側に配置される補助輪と、
前記補助輪の地面からの高さを調整する高さ調整機構と、
を備え、前記高さ調整機構は、前記補助輪の最高の調整高さにおいて、前記補助輪の回転軸が、前記一つの前輪、又は、前記一つの後輪の回転軸よりも地面に近くなるように構成されている、運搬車。
【請求項5】
一つの前輪、又は、一つの後輪を含む車輪を有し、前記車輪を含む3点で接地可能な運搬車であって、
前記車輪が回転可能に配置される車体フレームと、
前記車体フレームに配置され、作業者が把持可能な左右のハンドル部と、
前記車体フレームの上方に設けられ、荷物を載置するための荷台と、
前記一つの前輪、又は、前記一つの後輪の左右両側に配置される補助輪と、
前記補助輪の地面からの高さを調整する高さ調整機構と、
を備え、前記高さ調整機構は、前記補助輪の地面からの高さを段階的に調整可能に構成されている、運搬車。
【請求項6】
バッテリと、
前記バッテリから電力供給を受けて回転するモータとを備え、
前記車輪の少なくとも1つは、前記モータにより回転駆動される駆動輪である、請求項1~
請求項5の何れか一項に記載の運搬車。
【請求項7】
前記駆動輪は、前記一つの前輪である、
請求項6に記載の運搬車。
【請求項8】
前記一つの前輪を備え、
前記車体フレームは、前記一つの前輪を進行方向前方側から囲むようにU字状に屈曲されて、前記前輪の回転中心部分を左右両側から回転可能に支持しており、
前記左右のハンドル部は、前記車体フレームが前記前輪を支持する支持部分から後方側に延びている、請求項1~
請求項7の何れか一項に記載の運搬車。
【請求項9】
前記補助輪は、前記車体フレームの前記進行方向前方のU字部分に取り付けられる取付部材を介して、前記前輪の左右両側に配置される、
請求項8に記載の運搬車。
【請求項10】
一つの前輪を含む車輪を有し、前記車輪を含む3点で接地可能な運搬車であって、
前記車輪が回転可能に配置される車体フレームと、
前記車体フレームに配置され、作業者が把持可能な左右のハンドル部と、
前記車体フレームの上方に設けられ、荷物を載置するための荷台と、
前記一つの前輪の左右両側に配置される補助輪と、
前記補助輪の地面からの高さを調整する高さ調整機構と、
を備え、
前記車体フレームは、前記一つの前輪を進行方向前方側から囲むようにU字状に屈曲されて、前記前輪の回転中心部分を左右両側から回転可能に支持しており、
前記左右のハンドル部は、前記車体フレームが前記前輪を支持する支持部分から後方側に延びており、
前記補助輪は、前記車体フレームの前記進行方向前方のU字部分に取り付けられる取付部材を介して、前記前輪の左右両側に配置されている、運搬車。
【請求項11】
前記高さ調整機構は、前記左右両側に配置される補助輪を、それぞれ独立して高さ調整可能に構成されている、請求項1~
請求項10の何れか一項に記載の運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体の傾きを抑制する補助輪を備えた運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
手押し式の運搬車として、一つの前輪と左右の後輪を備えた三輪のものや、左右の後輪に代えて接地用の足部を備えた一輪のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この運搬車は、一つの前輪の回転中心部分を挟持し、後方に向けて左右に広がり、その下方に左右の後輪或いは足部が設けられる車体フレームを備える。
【0003】
車体フレームは、左右の後輪若しくは左右の足部よりも後方側で上方に立ち上げられ、更に後方側が、作業者が左右の手で把持し得る左右のハンドル部として、略水平方向に屈曲されている。
【0004】
そして、車体フレームには、左右のハンドル部よりも前方位置に、荷物を載せるための荷台が設けられる。
このため、作業者は、荷台に荷物を載せた状態で、左右のハンドル部を把持して、運搬車を押すことで、荷物を運搬することができる。
【0005】
また、前輪の左右両側には補助輪が配置されている。従って、この補助輪により、運搬車の左右の傾きを所定位置で規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国公開特許公報 CN105346573A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の運搬車では、砂地などで車輪が地面にめり込んでしまう場合や地面に凹凸がある場合に、運搬時に補助輪が地面に当たって抵抗となり、運搬車の移動に費やすエネルギが増加してしまうという問題があった。
【0008】
本開示の一局面は、車体の傾きを抑制する補助輪を備えた運搬車において、運搬時に補助輪が地面に当たって抵抗となるのを抑制できるようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一局面の運搬車は、一つの前輪、又は、一つの後輪を含む車輪を有し、前記車輪を含む3点で接地可能な運搬車である。
この運搬車には、車輪が回転可能に配置される車体フレームと、車体フレームに配置され、作業者が把持可能な左右のハンドル部と、車体フレームの上方に設けられ、荷物を載置するための荷台と、が備えられている。そして、一つの前輪、又は、一つの後輪の左右両側には、補助輪が配置されており、この補助輪の地面からの高さを調整する高さ調整機構も備えられている。
【0010】
このため、本開示の運搬車によれば、上述した従来の運搬車と同様、作業者は、荷台に荷物を載せた状態で、左右のハンドル部を把持して、運搬車を押すことで、荷物を運搬することができ、補助輪により、運搬車が左右に大きく傾くのを抑制することもできる。
【0011】
また、高さ調整機構により、補助輪の地面からの高さを調整できることから、作業者は路面状況等に応じて補助輪の高さを変更できるようになり、運搬時に補助輪が地面に当たって抵抗となるのを抑制することが可能となる。
【0012】
従って、運搬車の移動に費やす無駄なエネルギを低減することができ、作業者による運搬時の作業性を改善できる。
ここで、補助輪は、運搬車が傾いたときに、路面に当たって、運搬車の左右の傾きを規制するためのものであることから、高さ調整時には地面に接地しないようにする必要がある。また、補助輪の地面からの高さは、補助輪が左右に配置される車輪(つまり、一つの前輪又は一つの後輪)の回転軸よりも高くする必要はない。
【0013】
このため、高さ調整機構は、補助輪の最低の調整高さにおいて、補助輪が地面に接地しないように構成されていてもよい。また、高さ調整機構は、補助輪の最高の調整高さにおいて、補助輪の回転軸が、一つの前輪、又は、前記一つの後輪の回転軸よりも地面に近くなるように構成されていてもよい。
【0014】
また、高さ調整機構は、補助輪の地面からの高さを段階的に調整可能に構成されていてもよい。このようにすれば、補助輪の路面からの高さを、路面状況に応じて段階的に切り替えることができる。また、無段階に調整できるようにした場合に比べて、補助輪をしっかりと固定することができるようになり、補助輪が路面に当たって、高さが変化するのを抑制できる。
【0015】
一方、本開示の運搬車は、バッテリと、バッテリから電力供給を受けて回転するモータとを備え、車輪の少なくとも1つは、モータにより回転駆動される駆動輪であってもよい。つまり、本開示の運搬車は、バッテリ駆動の電動運搬車であってもよい。
【0016】
バッテリ駆動の電動運搬車では、運搬車の移動時に補助輪が路面に当たって抵抗になると、バッテリの電力が無駄に消費されることになるが、本開示の技術を適用することで、無駄な電力消費を抑制し、バッテリ電力を有効に利用することができるようになる。
【0017】
なお、この場合、モータにより回転駆動される駆動輪は、一つの前輪であってもよい。
次に、運搬車が、一つの前輪を備えている場合、車体フレームは、その前輪を進行方向前方側から囲むようにU字状に屈曲されて、前輪の回転中心部分を左右両側から回転可能に支持するように構成されていてもよい。また、左右のハンドル部は、車体フレームが前輪を支持する支持部分から後方側に延びていてもよい。
【0018】
そして、この場合、補助輪は、車体フレームの進行方向前方のU字部分に取り付けられる取付部材を介して、前輪の左右両側に配置されるようにしてもよい。このようにすれば、運搬車に対し、取付部材を介して、補助輪を着脱できるようになるため、補助輪が不要なときに補助輪を取り外し、補助輪が必要なときに補助輪を装着する、といったことができるようになり、運搬車の使い勝手を向上できる。
【0019】
また、高さ調整機構は、左右両側に配置される補助輪を、それぞれ独立して高さ調整可能に構成されていてもよい。
このようにすれば、左右両側の補助輪毎に高さ調整機構を設けることで、高さ調整機構を、左右の補助輪の間に配置される前輪若しくは後輪の回転を妨げることのないように構成する必要がないため、高さ調整機構の構成を簡単にすることができる。
【0020】
また、例えば、運搬車の左右の路面高さが異なる場合、路面高さに応じて、左右の補助輪の高さを異なる高さに調整することができるようになり、各補助輪の高さを路面状況に応じてより最適に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態の電動運搬車の本体部分の構成を表す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電動運搬車に荷台を装着した状態を表す斜視図であり、
図2Aは、パイプにて構成された荷台を装着した状態を表し、
図2Bは、金属板をプレス成形することにより構成された荷台を装着した状態を表す。
【
図3】
図2Aに示す電動運搬車に補助輪を装着した状態を表す斜視図である。
【
図4】電動運搬車に装着される補助輪全体の構成を表す斜視図である。
【
図5】
図3における運搬車への補助輪の装着部分を表し、
図5Aは運搬車の前方から見た装着部分の正面図であり、
図5Bは運搬車の上方から見た装着部分の平面図である。
【
図6】
図4に示す補助輪の三面図であり、
図6Aは補助輪の正面図であり、
図6Bは補助輪の平面図であり、
図6Cは補助輪の側面図である。
【
図7】
図5Aに示す補助輪の装着部分の断面図であり、
図7AはVA-VA線断面図、
図7BはVB-VB線断面図、
図7CはVC-VC線断面図、
図7DはVD-VD線断面図である。
【
図8】高さ調整機構による補助輪の高さ調整を説明する説明図であり、
図8Aは高さ調整機構がロック状態であるときの斜視図、
図8Bは高さ調整機構がアンロック状態であるときの斜視図である。
【
図9】高さ調整機構により切り替えられる補助輪の高さを説明する説明図であり、
図9Aは補助輪が最低の高さ位置にある状態を表し、
図9Bは補助輪が中間の高さ位置にある状態を表し、
図9Cは補助輪が最高の高さ位置にある状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動運搬車1は、駆動輪となる1つの前輪3と、従動輪となる左右の後輪5L,5Rを備える三輪車として構成されている。
【0023】
なお、後輪5に対する添え字Lは、電動運搬車1の前方に向かって左側に配置されていることを表し、添え字Rは、電動運搬車1の前方に向かって右側に配置されていることを表している。そして、以下の説明において符号に付与した添え字L,Rも同様である。
【0024】
電動運搬車1は、これら各車輪3,5L,5Rを回転可能に支持する車体フレーム10と、荷物を載せる荷台を車体フレーム10の上に固定するための荷台フレーム20とを備える。
【0025】
荷台フレーム20は、
図2Aに示すように複数のパイプを連結することで構成される荷台20Aや、
図2Bに示すように鋼板をプレス成形することで構成される荷台20B等、荷物を載置可能な各種荷台を固定できるように構成されている。このため、運搬作業を行う作業者は、作業内容に応じて、使用する荷台を選択できる。
【0026】
車体フレーム10及び荷台フレーム20は、金属製のパイプ材にて構成されており、前輪3を挟んで左右対称となるよう、パイプを屈曲させた形状になっている。
すなわち、車体フレーム10は、電動運搬車1の前方先端部分で、進行方向前方側から前輪3を囲むようにU字状に屈曲されている。そして、その屈曲されたU字部分10Aの後方には、前輪3の回転中心部分を左右から挟み、前輪3の回転中心部分に組み付けられたモータ9を挟持する前輪支持部11L,11R(
図1は左側の前輪支持部11Lを示す)が設けられている。このため、前輪3は、前輪支持部11L,11Rに回転可能に固定され、モータ9への通電により回転駆動されることになる。
【0027】
また、車体フレーム10において、前輪支持部11L,11Rから後方は、前輪3を中心として左右に広がり、且つ、斜め上方に立ち上がるように延びた傾斜部12L,12Rとなっている。
【0028】
そして、この傾斜部12L,12Rよりも更に後方は、略水平となって、荷台フレーム20を載置するための載置部13L,13Rとなっている。
この左右の載置部13L,13Rの間には、荷台フレーム20を載置すると共に、左右の後輪5L,5Rを支持するための後輪フレーム30が設けられている。
【0029】
後輪フレーム30は、左右の後輪5L,5Rが回転自在に固定される後輪支持部7L,7Rを、それぞれ、左右方向に摺動可能に固定するためのフレーム本体32と、フレーム本体32に対し後輪支持部7L,7Rを位置決め固定するための固定部材34L,34Rを備える。このため、作業者は、後輪5L,5Rの間隔を任意に設定することができる。
【0030】
また、車体フレーム10において、後輪フレーム30が取り付けられる載置部13L,13Rよりも更に後方は、作業者が手押し操作可能な高さ位置まで斜め上方に立ち上がった傾斜部14L,14Rとなっている。そして、その傾斜部14L,14Rよりも更に後方は、略水平となって、後端側に作業者が把持するためのグリップ15L,15Rが装着されるハンドル部16L,16Rとなっている。
【0031】
なお、車体フレーム10において、左側の前輪支持部11Lには、前輪3に制動力を与えるブレーキ装置17が設けられている。そして、左側のハンドル部16Lには、ブレーキ装置17を手動で動作させるためのブレーキレバー18が設けられている。
【0032】
また、車体フレーム10において、荷台フレーム20を載置するための左右の載置部13L,13Rには、それぞれ、電動運搬車1の左右両側から前方を照射するための照明装置40L,40Rが設けられている。なお、照明装置40L,40Rは、光源としてLEDを備えた所謂LEDライトである。
【0033】
また、車体フレーム10の傾斜部14L,14Rの間には、バッテリボックス80を固定するための固定フレーム19が設けられている。バッテリボックス80は、直流電源である2つのバッテリパックを収納可能であり、その2つのバッテリパックの一方から電力供給を受けてモータ9を駆動したり照明装置40L,40Rを点灯したりするための制御回路基板が設けられている。
【0034】
なお、バッテリパックは、電動工具等、他の電動装置でも利用可能であり、バッテリボックス80内には、このバッテリパックを着脱可能に装着するための装着部が設けられている。
【0035】
また、バッテリボックス80には、バッテリ切換用の切替スイッチやバッテリ残量表示用の表示スイッチ、バッテリ残量の表示部が設けられた操作パネルが設けられている。そして、固定フレーム19は、電動運搬車1の作業者がこの操作パネルのスイッチを操作したり表示内容を確認し易いように、操作パネルを上方に向けた状態でバッテリボックス80を左右のハンドル部16L,16Rの中央に配置するよう構成されている。
【0036】
また、車体フレーム10の右側のハンドル部16Rには、主電源スイッチや、モータ9の駆動を指令する駆動レバー、モータ9駆動時の回転速度の上限や回転方向(換言すれば、走行速度の上下や進行方向)を設定する設定部、等が設けられた操作装置90が設けられている。
【0037】
そして、バッテリボックス80内の制御回路基板には、バッテリボックス80の操作パネルや、モータ9、照明装置40L,40R及び操作装置90が接続されている。また、制御回路基板には、操作パネルや操作装置90からの指令に従いモータ9や照明装置40L,40Rを駆動制御するための制御回路が組み付けられている。
【0038】
次に、荷台フレーム20は、電動運搬車1の前方側端部が、車体フレーム10の前輪支持部11L,11Rに固定された固定部材21L,21R(
図1には左側の固定部材21Lを示す)を介して、前輪3の回転中心よりも下方の位置で回動可能に固定されている。
【0039】
また、荷台フレーム20は、車体フレーム10に載置された状態で、固定部材21L,21Rへ固定される先端部分から、前輪3よりも高く、車体フレーム10の載置部13L,13Rに載置可能な高さ位置まで略鉛直方向に立ち上がる連結部22L,22Rを備える。
【0040】
そして、この連結部22L,23Rの上端は、車体フレーム10の載置部13L,13Rに向けて略直角に屈曲されて、車体フレーム10の載置部13L,13Rに載置可能な荷台固定部23L,23Rとなっている。
【0041】
また、この荷台固定部23L,23Rは、車体フレーム10の傾斜部14L,14Rの手前で上方に真っ直ぐ立ち上げられており、その立上がり部24L,24Rの上端は、バッテリボックス80と略同じ高さ位置で連結部25にて連結されている。
【0042】
また、立上がり部24L,24Rの間には、上端の連結部25よりも下方の位置で、荷台20A,20Bに載せられた荷物がバッテリボックス80に当たるのを防止するための板状の保護カバー26が設けられている。
【0043】
また、荷台フレーム20は、固定部材21L,21Rを介して、前輪3周りに回動可能に固定されることから、作業者は、上端の連結部25を上方に持ち上げ、荷台固定部23L,23Rに固定された荷台を前方に傾斜させることができる。
【0044】
このため、作業者は、必要に応じて、搬送対象物を電動運搬車1の前方に落とすことができることになるが、車体フレーム10に対し荷台フレーム20が固定されていないと、電動運搬車1の移動時に荷台フレーム20が上下に変位することがある。
【0045】
そこで、車体フレーム10においてバッテリボックス80が固定される固定フレーム19には、荷台フレーム20の左側の立上がり部24Lに設けられたフック27に係合して、荷台フレーム20を固定するための係合部材28が設けられている。なお、この係合部材28には、作業者が手動で係合・解除するための操作レバーが設けられている。
【0046】
このように構成された本実施形態の電動運搬車1によれば、操作装置90の主電源スイッチや駆動レバーがオフ状態であるとき、モータ9はフリー状態となる。従って、一般的な手押し車と同様、作業者は左右のグリップ15L,15Rを握って押すことで、荷物を自力で運搬することができる。
【0047】
また、作業者は、左右のグリップ15L,15Rを握って電動運搬車1を手押しする際、操作装置90の主電源スイッチをオン状態にし、駆動レバーを操作することで、その操作量に応じたトルクをモータ9に発生させて、荷物を軽い力で運搬することもできる。
【0048】
ところで、本実施形態の電動運搬車1は、前輪3が一つであるので、荷物の運搬時など、電動運搬車1を移動させる際に、路面の凹凸や荷物の荷重バランス等によって、車体が左右に傾くことがある。
【0049】
そこで、本実施形態の電動運搬車1は、
図3に示すように、前輪3の左右両側に、車体の傾きを規制する補助輪50L、50Rを配置できるようにされている。
図5に示すように、補助輪50L、50Rは、取付部材60を介して、車体フレーム10の前方先端部分のU字部分10Aに取り付けられる。
【0050】
図4~
図6に示すように、取付部材60は、車体フレーム10のU字部分10Aの左右方向の長さよりも長い長尺形状で、左右両端に補助輪50L、50Rが取り付けられる取付部材本体62を備える。
【0051】
そして、取付部材60は、取付部材本体62と、これに対応する取付板64との間に車体フレーム10のU字部分10Aを挟み、これら各部の間を複数のボルト63で締め付けることで、車体フレーム10のU字部分10Aに取り付けられる。
【0052】
取付部材本体62の両端には、板面が取付部材本体62の長手方向と直交するように、補助輪50L、50Rの固定部として、円板形状の固定板66L、66Rが設けられている。
【0053】
そして 補助輪50L、50Rは、固定板66L、66Rの取付部材60とは反対側の外面に、固定金具52L、52Rを介して、補助輪50L、50Rの回転中心軸51L,51Rが前輪3の回転中心軸と平行になるように取り付けられている。
【0054】
固定金具52L、52Rは、補助輪50L、50Rを回転自在に支持する支持部53L、53Rが、固定板66L、66Rへの取付部54L、54Rよりも外側に位置するように、屈曲されている。
【0055】
また、固定金具52L、52Rの固定板66L、66Rへの取付部54L、54Rは、固定板66L、66Rに対応した円板形状になっており、その円板の中心部分が、ボルト55L、55Rを介して、固定板66L、66Rの中心部分に固定されている。
【0056】
このため、固定金具52L、52Rは、取付部材60の左右に固定した際、ボルト55L、55Rを中心として、固定板66L、66Rの板面に沿って回動可能となる。
そして、補助輪50L、50Rの支持部53L、53Rは、取付部54L、54Rから屈曲されているので、補助輪50L、50Rの回転中心軸51L,51Rは、ボルト55L、55Rの中心軸から偏心した位置となる。
【0057】
従って、固定金具52L、52Rを、ボルト55L、55Rを中心として回動することにより、補助輪50L、50Rの路面からの高さを変化させることができる。そして、本実施形態の電動運搬車1には、補助輪50L、50Rの地面からの高さを、
図9A、
図9B、
図9Cに示す高さH1、H2、H3へと三段階に切り換え、補助輪50L、50Rをその高さ位置に固定するための高さ調整機構70L、70Rが設けられている。
【0058】
なお、この高さ調整機構70L、70Rは、左右の補助輪50L、50Rに対しそれぞれ設けられるが、左右の高さ調整機構70L、70Rは、構成が同じである。そこで、以下の説明では、高さ調整機構70L、70Rの構成について、添え字L,Rを付与することなく説明する。
【0059】
図6Cに示すように、補助輪50L、50Rが取り付けられる固定金具52L、52Rの取付部54L、54Rには、高さ調整機構70L、70Rとして、ボルト55L、55Rを中心とする円弧形状の長孔71が設けられている。
【0060】
そして、この長孔71には、取付部材60の固定板66L、66Rに螺合されたボルト72が挿通されている。このため、このボルト72を締め付けることで、固定板66L、66Rに対し固定金具52L、52Rを回動不能となるよう固定することができる。
【0061】
また、ボルト72の締め付けを緩めることで、固定金具52L、52Rを、ボルト55L、55Rを中心として固定板66L、66Rの板面に沿って回動できるようになる。そして、その回動範囲、換言すれば、補助輪50L、50Rの高さの調整範囲は、長孔71の円弧の長さによって規制される。
【0062】
また、固定金具52L、52Rの取付部54L、54Rの外周の3カ所に、取付部材60の固定板66L、66Rに設けられた固定用のピン74を挿入可能な凹部73が設けられている。
【0063】
この凹部73は、ピン74が挿入されることによって、固定金具52L、52Rの回動位置、換言すれば、補助輪50L、50Rの高さの高さ位置、を位置決め固定するためのものである。
【0064】
そして、各凹部73は、長孔71の円弧の長さによって規制される調整範囲内で、補助輪50L、50Rの高さが、
図9A~
図9Cに示す最低高さH1、中間高さH2、最大高さH3となる高さ位置で、固定金具52L、52Rを固定できるように配置されている。
【0065】
一方、
図7A~
図7Dに示すように、取付部材60の固定板66L、66Rには、固定金具52L、52Rとは反対側の内面に、一端側にピン74が取り付けられたリンク部材75が設けられている。このリンク部材75は、ピン74とは反対側が固定板66L、66Rに回動可能に固定されている。
【0066】
また、リンク部材75は、ばね78を介して、固定板66L、66Rに設けられたリブ76に固定されている。ばね78は、リンク部材75をボルト55L、55R側に付勢することで、ピン74を、固定板66L、66Rの外周に当接させるためのものである。
【0067】
そして、固定板66L、66Rの外周には、ピン74が固定金具52L、52Rの取付部54L、54Rの外周に設けられた凹部73に挿入された位置で、ピン74が当接されて、ピン74を位置決めできるように、凹部79が形成されている。
【0068】
このため、ピン74は、通常は、ばね78の付勢力により、固定金具52L、52Rの取付部54L、54Rの外周に当接される。従って、作業者は、補助輪50L、50Rを持って、固定金具52L、52Hを回動させることにより、
図8Aに示すように、ピン74を固定金具52L、52Rの凹部73に挿入させることができる。
【0069】
また、作業者は、
図8Bに示すように、ばね78の付勢力に抗して、ピン74を固定板66L、66Rの外側に移動させ、ピン74を凹部73から外すことで、固定金具52L、52Rを回動できるようになり、補助輪50L、50Rの高さ調整が可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の電動運搬車1によれば、高さ調整機構70L、70Rにより、補助輪51L、51Rの地面からの高さを、三段階に調整できる。従って、作業者は路面状況等に応じて補助輪の高さを調整して、運搬作業時に補助輪51L、51Rが地面に当たって抵抗となるのを抑制することができる。このため、電動運搬車1の移動に費やす無駄なエネルギを低減することができ、バッテリの電力消費を抑制できる。
【0071】
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、一つの前輪3と、二つの後輪5L、5Rを備えた電動運搬車1について説明したが、二つの前輪と一つの後輪を備える電動運搬車であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、接地する3点が全て車輪の例を示したが、一つの前輪又は一つの後輪を除いた残りの接地部分が接地用の足部であってもよい。
また、上記実施形態では、駆動輪である前輪に補助輪を取付けた例を示したが、前輪が従動輪、後輪が駆動輪の運搬車であってもよい。つまり、補助輪は、前輪が一つであれば、前輪が駆動輪であっても従動輪であっても、前輪の左右に配置すればよく、後輪が一つでえあれば、後輪が駆動輪であっても従動輪であっても、後輪の左右に配置すればよい。
【0073】
また、上記実施形態では、駆動輪を駆動源としての電動モータで駆動する電動運搬車の例を示したが、本開示の技術は、駆動源の無い単なる手押し式の運搬車に適用しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、高さ調整機構が、左右の補助輪にそれぞれ設けられていて、各補助輪の高さを個々に調整できるものとして説明したが、左右の補助輪の高さを一つの高さ調整機構で調整するように構成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、高さ調整機構は、補助輪の高さを三段階に調整可能であるとして説明したが、四段階以上に高さ調整できるように構成してもよく、或いは、無段階に連続的に調整できるように構成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…電動運搬車、3…前輪、5L,5R…後輪、9…モータ、10…車体フレーム、10A…U字部分、16L,16R…ハンドル部、20A,20B…荷台、50L,50R…補助輪、60…取付部材、70L,70B…高さ調整機構、80…バッテリボックス。