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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒および光学機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20221212BHJP
   G03B 17/04 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G03B17/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018220451
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020086126
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸嘉
(72)【発明者】
【氏名】野田 豊人
【審査官】小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-057517(JP,A)
【文献】特開2017-151464(JP,A)
【文献】特開平11-194258(JP,A)
【文献】特開2017-102282(JP,A)
【文献】特開2011-027935(JP,A)
【文献】特開平11-218666(JP,A)
【文献】特開2001-324663(JP,A)
【文献】特開2012-063755(JP,A)
【文献】特開2005-077425(JP,A)
【文献】特開2006-235020(JP,A)
【文献】特開2010-197885(JP,A)
【文献】特開2001-042193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0327973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G03B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレンズユニットと、
前記第1のレンズユニットを保持する第1のレンズ保持部材と、
前記第1のレンズ保持部材に設けられた第1の係合部に係合する第1のカム部を有し、光軸回りで回転することにより前記第1のレンズ保持部材を光軸方向に移動させる第1のカム部材と、
第2のレンズユニットと、
前記第2のレンズユニットを保持する第2のレンズ保持部材と、
前記第2のレンズ保持部材に設けられた第2の係合部に係合する第2のカム部を有し、前記光軸回りで回転することにより前記第2のカム部を介して前記第2のレンズ保持部材を前記光軸方向に移動させる第2のカム部材と、
第3のレンズユニットを保持し、前記第1のカム部材に設けられた第4のカム部に係合する第4の係合部を有する第3のレンズ保持部材と、
第4のレンズユニットを保持する第4のレンズ保持部材とを有し、
前記第1のレンズ保持部材と前記第2のカム部材のうち一方に設けられた第3の係合部が他方に設けられた第3のカム部に係合しており、
前記第2のカム部材は、前記第1のカム部材の回転が伝達されて回転して前記第3のカム部により前記光軸方向に移動され、
前記第4のレンズ保持部材は、前記第1のレンズ保持部材と前記第3のレンズ保持部材とにより保持されたガイドバーによって前記光軸方向に移動可能に支持されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
記第1のカム部材を回転可能に支持するベース部材をさらに有し
記ベース部材は、前記レンズ鏡筒に外力が作用したときに、前記第2のカム部材に設けられた突起部が当接する受け部を有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
第1のレンズユニットと、
前記第1のレンズユニットを保持する第1のレンズ保持部材と、
前記第1のレンズ保持部材に設けられた第1の係合部に係合する第1のカム部を有し、光軸回りで回転することにより前記第1のレンズ保持部材を光軸方向に移動させる第1のカム部材と、
第2のレンズユニットと、
前記第2のレンズユニットを保持する第2のレンズ保持部材と、
前記第2のレンズ保持部材に設けられた第2の係合部に係合する第2のカム部を有し、前記光軸回りで回転することにより前記第2のカム部を介して前記第2のレンズ保持部材を前記光軸方向に移動させる第2のカム部材と、
第3のレンズユニットを保持し、前記第1のカム部材に設けられた第4のカム部に係合する第4の係合部を有する第3のレンズ保持部材と、
第4のレンズユニットを保持する第4のレンズ保持部材とを有するレンズ鏡筒を有する光学機器であって、
前記第1のレンズ保持部材と前記第2のカム部材のうち一方に設けられた第3の係合部が他方に設けられた第3のカム部に係合しており、
前記第2のカム部材は、前記第1のカム部材の回転が伝達されて回転して前記第3のカム部により前記光軸方向に移動され、
前記第4のレンズ保持部材は、前記第1のレンズ保持部材と前記第3のレンズ保持部材とにより保持されたガイドバーによって前記光軸方向に移動可能に支持されていることを特徴とする光学機器。
【請求項4】
前記レンズ鏡筒は、前記第1のカム部材を回転可能に支持するベース部材をさらにし、
記ベース部材は、前記レンズ鏡筒に外力が作用したときに、前記第2のカム部材に設けられた突起部が当接する受け部を有することを特徴とする請求項3に記載の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置や交換レンズ等の光学機器に用いられるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置(以下、カメラという)では、カメラ本体を薄型化しつつ、ズーム倍率を高倍率化することが望ましい。この場合、カメラ本体に設けられるレンズ鏡筒においてレンズユニットの移動ストロークをできるだけ大きくしながら、カメラ本体を薄型化する構造が求められる。
【0003】
変倍に応じて可動筒がカメラ本体に固定されるベース筒に対して伸縮するズームレンズ鏡筒では、可動筒を光軸方向に移動させるためのカム筒がベース筒により回転可能に支持される。特許文献1には、カム筒を回転させながら光軸方向に移動させるために回転駆動される駆動筒にもレンズユニットを光軸方向に移動させるためのカム部を形成して、より多くのレンズユニットを光軸方向に移動させるレンズ鏡筒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-57424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示されたレンズ鏡筒では、カム筒により保持されるレンズユニットと駆動筒により保持されるレンズユニットとが、これらが同一部材により保持される場合と比較して偏芯しやすい。
本発明は、光軸方向に移動するレンズユニット間の偏芯を抑えることができるようにしたレンズ鏡筒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのレンズ鏡筒は、第1のレンズユニットと、該第1のレンズユニットを保持する第1のレンズ保持部材と、該第1のレンズ保持部材に設けられた第1の係合部に係合する第1のカム部を有し、光軸回りで回転することにより第1のレンズ保持部材を光軸方向に移動させる第1のカム部材と、第2のレンズユニットと、該第2のレンズユニットを保持する第2のレンズ保持部材と、該第2のレンズ保持部材に設けられた第2の係合部に係合する第2のカム部を有し、光軸回りで回転することにより第2のカム部を介して第2のレンズ保持部材を光軸方向に移動させる第2のカム部材と、第3のレンズユニットを保持し、第1のカム部材に設けられた第4のカム部に係合する第4の係合部を有する第3のレンズ保持部材と、第4のレンズユニットを保持する第4のレンズ保持部材とを有する。第1のレンズ保持部材と第2のカム部材のうち一方に設けられた第3の係合部が他方に設けられた第3のカム部に係合している。第2のカム部材は、第1のカム部材の回転が伝達されて回転して第3のカム部により光軸方向に移動される。第4のレンズ保持部材は、第1のレンズ保持部材と第3のレンズ保持部材とにより保持されたガイドバーによって光軸方向に移動可能に支持されていることを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光軸方向に移動するレンズユニット間の偏芯を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例であるレンズ鏡筒の沈胴状態での断面図。
図2】実施例のレンズ鏡筒の突出(撮像可能)状態での断面図。
図3】実施例のレンズ鏡筒の分解図。
図4】実施例のレンズ鏡筒における4群保持枠、カム筒および駆動筒の係合関係を示す図。
図5】実施例のレンズ鏡筒における4群保持枠の斜視図。
図6】実施例のレンズ鏡筒におけるカム筒の内周部を示す展開図。
図7】実施例のレンズ鏡筒における駆動筒の内周部を示す展開図。
図8】実施例のレンズ鏡筒における固定筒の内周部を示す展開図。
図9】実施例のレンズ鏡筒の構成を示す模式図。
図10】従来のレンズ鏡筒の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1から図9は、本発明の実施例であるレンズ鏡筒の構成を示している。図1は、実施例のレンズ鏡筒がカメラ本体に対して沈胴した状態での断面を示し、図2はレンズ鏡筒がカメラ本体に対して突出した撮像可能状態での断面を示す。図3はレンズ鏡筒を分解して示している。図4は、レンズ鏡筒における後述する4群保持枠、カム筒および駆動筒の係合関係を示している。図5は、レンズ鏡筒における4群保持枠を示している。図6図7および図8はそれぞれ、レンズ鏡筒におけるカム筒、駆動筒および固定筒の内周部を周方向に展開して示している。図9は、レンズ鏡筒の構成を模式的に示している。
【0010】
本実施例のレンズ鏡筒は、光学機器(撮像装置)としてのデジタルカメラ100に用いられる。デジタルカメラ100は、本体(カメラ本体)101と、レンズ鏡筒内の後述する撮像光学系により形成される被写体像を撮像(光電変換)する撮像素子102とを有する。
【0011】
以下の説明において、レンズ鏡筒(撮像光学系)の光軸が延びる方向を光軸方向といい、光軸を中心とした円が延びる方向を周方向といい、光軸から上記円の半径が延びる方向を径方向という。また、被写体側を前側といい、像側を後側という。
【0012】
レンズ鏡筒は、前側から後側に順に配置された1群レンズL1、2群レンズL2、3群レンズL3、4群レンズL4、5群レンズL5および6群レンズL6により構成される6群レンズ光学系としての撮像光学系を保持している。4群レンズL4は第1のレンズユニットに相当し、1群レンズL1、2群レンズL2および3群レンズL3は第2のレンズユニットに相当する。6群レンズL6は第3のレンズユニットに相当し、5群レンズL5は第4のレンズユニットに相当する。
【0013】
4群レンズL4は、第1のレンズ保持部材としての4群保持枠4により保持されており、1群レンズL1、2群レンズL2および3群レンズL3はそれぞれ第2のレンズ保持部材としての1群筒1、2群筒2およびシフトレンズ保持枠3cにより保持されている。6群レンズL6および5群レンズL5はそれぞれ、第3のレンズ保持部材としての6群保持枠6および第4のレンズ保持部材としての5群保持枠5により保持されている。
【0014】
1群筒1は、その内周部における周方向6箇所にカムピン(第2の係合部)1aを有する。これらカムピン1aは、カム筒(第2のカム部材)10の外周部に形成された6つのカム溝部(第2のカム部)10aに係合している。また、1群筒1の内周部における周方向3箇所には、光軸方向に延びる不図示の直進溝部が形成されている。これら直進溝部には、直進筒11の外周部における3箇所に形成された直進キー11aが係合している。1群筒1の前端面には撮像光学系に被写体からの光束を取り込むための開口部が形成されている。1群筒1は、該開口部を開閉するレンズバリア機構105を有する。
【0015】
2群筒2は、その外周部3箇所にカムピン(第2の係合部)2aを有する。これらカムピン2aは、カム筒10の内周部に形成された3つのカム溝部(第2のカム部)10bに係合している。また、2群筒2における周方向にて3つのカムピン2aと同位相の3箇所には直進キー2bが形成されている。これら直進キー2bは、直進筒11における周方向3箇所に光軸方向に延びるように形成された直進溝部11bに係合している。
【0016】
防振ユニット3は、防振ベース部材と前述したシフトレンズ保持枠3cとを有し、手振れ等のカメラ振れに応じてシフトレンズ保持枠3cとこれに保持された3群レンズL3が防振ベース部材に対して光軸方向に直交する方向にシフトすることで像振れ補正を行う。
【0017】
防振ベース部材の外周部における周方向3箇所にはカムピン(第2の係合部)3aが設けられている。これらカムピン3aは、カム筒10の内周部に形成された3つのカム溝部(第2のカム部)10cに係合している。また、防振ベース部材の外周部における周方向にて3つのカムピン3aと同位相の3箇所には直進キー3bが形成されている。これら直進キー3bは、直進筒11における周方向3箇所に光軸方向に延びるように形成された直進溝部11cに係合している。
【0018】
4群保持枠4は、その外周部の3箇所にカムピン(第3の係合部)4aを有する。これらカムピン4aは、カム筒10の内周部に形成された3つのカム溝部(第3のカム部)10dに係合している。また、4群保持枠4における周方向にて3つのカムピン4aと同位相の3箇所には直進キー4bが形成されている。これら直進キー4bは、直進筒11の直進溝部11cに係合している。
【0019】
さらに4群保持枠4の外周部の周方向におけるカムピン4aとは異なる位相の3箇所にはカムピン(第1の係合部)4cが形成されている。これらカムピン4cは、駆動筒(第1のカム部材)14の内周部に形成された3つのカム溝部(第1のカム部)14aに係合している。また、4群保持枠4の外周部の周方向3箇所には光軸方向に延びる直進キー4dが形成されている。これら直進キー4dは、鏡筒ベース部材としての固定筒13における周方向3箇所に光軸方向に延びるように形成された直進溝部13dに係合している。
【0020】
固定筒13とその外周に配置された固定カバー筒15は、不図示のビスにより固定地板9に固定されている。固定地板9は、撮像素子102とその前面に配置された光学フィルタ103を保持している。
【0021】
5群保持枠5に形成された位置決め部5aと振れ止め部5bはそれぞれ、後述する6群保持枠6により保持されたガイドバー61,62に光軸方向に移動可能に係合している。4群保持枠4に形成された位置決め部4eと振れ止め部4fもそれぞれ、ガイドバー61,62に光軸方向に移動可能に係合している。
【0022】
また、5群保持枠5には不図示のラックが取り付けられている。ラックは、6群保持枠6により保持されたステッピングモータ63の出力軸に形成されたリードスクリュー64に噛み合っている。ステッピングモータ63が回転するとリードスクリュー64とラックとの噛み合いによって5群保持枠5に光軸方向への駆動力が作用する。5群保持枠5は、位置決め部5aと振れ止め部5bがガイドバー61,62に係合することで、回転することなく光軸方向に移動する。
【0023】
6群保持枠6は、その外周部における周方向3箇所にカムピン(第4の係合部)6aを有する。これらカムピン6aは、駆動筒14の内周部に形成された3つのカム溝部(第4のカム部)14bに係合している。また、6群保持枠6における周方向にて3つのカムピン6aと同位相の3箇所には直進キー6bが設けられている。これら直進キー6bは、固定筒13に形成された貫通溝部13eに係合している。
【0024】
絞りユニット7は、撮像素子102に到達する光量を調整し、その外周面における周方向3箇所にカムピン7aを有する。これらカムピン7aは、カム筒10の内周部に形成されたカム溝部10eに係合している。また、絞りユニット7における周方向にて3つのカムピン7aと同位相の3箇所には直進キー7bが形成されている。これら直進キー7bは、直進筒11に光軸方向に延びるように形成された直進溝部11dに係合している。
【0025】
シャッタNDユニット8は、撮像素子102の露光量を制御したりNDフィルタを挿抜したりするユニットであり、不図示のビスにより防振ユニット3に固定されている。
【0026】
カム筒10の外周部における周方向3箇所には外力吸収ピン(突起部)10fが設けられている。これら外力吸収ピン10fは、固定筒13の内周部に形成された3つの外力吸収溝部(受け部)13aに所定の隙間が形成されるように挿入されている。また、カム筒10の外周部における周方向3箇所には駆動ピン10gが設けられている。これら駆動ピン10gは、固定筒13に形成された3つの貫通溝部13cを径方向に貫通して、駆動筒14の内周部における周方向3箇所に光軸方向に延びるように形成された直進溝部14dに係合している。
【0027】
直進筒11の外周に配置されたカム筒10は、直進筒11の前端フランジ部と直進筒11の後端部に固定された直進板12との間に周方向に回転可能に挟持され、直進筒11および直進板12と一体で光軸方向に移動する。
【0028】
可動カバー筒16は、カム筒10の後端フランジ部にカム筒10の外周を覆うように固定されている。可動カバー筒16の外周部における周方向3箇所には外力吸収ピン16aが設けられている。これら外力吸収ピン16aは、固定筒13の内周部に形成された3つの外力吸収溝部13bと所定の隙間が形成されるように挿入されている。
【0029】
上記の構成により、固定筒13は、4群保持枠4および6群保持枠6を周方向に回転させずに光軸方向にガイドする。また4群保持枠4は、直進筒11を周方向での回転を阻止しつつ光軸方向にガイドする。さらに直進筒11は、1群筒1、2群筒2、防振ユニット3および絞りユニット7を周方向での回転を阻止しつつ光軸方向にガイドする。
【0030】
直進板12の外周部における周方向3箇所に設けられた直進キー12aは、固定筒13に光軸方向に延びるように形成された3つの直進溝部13f内に所定の隙間が形成されるように挿入されている。
【0031】
駆動筒14の内周部に形成された3つのカム溝部14cは、固定筒13の外周部に設けられた3つのカムピン13gと係合している。駆動筒14の外周部に周方向に延びるように形成されたギア部14eは、固定地板9により保持されたDCモータ91からの駆動力を伝達するギア列92の出力ギアに噛み合っている。
【0032】
DCモータ91からの駆動力によって駆動筒14が回転されると、4群保持枠4は、そのカムピン4cと駆動筒14のカム溝部14aとのカム作用と4群保持枠4の直進キー4dと固定筒13の直進溝部13dとの係合により周方向に回転することなく光軸方向に移動する。また、カム筒10は、その駆動ピン10gと駆動筒14の直進溝部14dとの係合により駆動筒14の回転を受けて周方向に回転する。回転するカム筒10は、そのカム溝部10dと4群保持枠4のカムピン4aとのカム作用により光軸方向に移動する。
【0033】
1群筒1は、そのカムピン1aとカム筒10のカム溝部10aとのカム作用および直進溝部1bと直進筒11の直進キー11aとの係合により周方向に回転することなく光軸方向に移動することができる。
【0034】
2群筒2は、そのカムピン2aとカム筒10のカム溝部10bとのカム作用および2群筒2の直進キー2bと直進筒11の直進溝部11bとの係合により周方向に回転することなく光軸方向に移動する。
【0035】
防振ユニット3は、そのカムピン3aとカム筒10のカム溝部10cとのカム作用および防振ユニット3の直進キー3bと直進筒11の直進溝部11cとの係合により、周方向に回転することなく光軸方向に移動する。
【0036】
6群保持枠6は、そのカムピン6aと駆動筒14のカム溝部14bとのカム作用および直進キー6bと固定筒13の貫通溝部13eとの係合により、光軸回りで回転することなく光軸方向に移動する。
【0037】
絞りユニット7は、そのカムピン7aとカム筒10のカム溝部10eとのカム作用および直進キー7bと直進筒11の直進溝部11dとの係合によって、光軸回りで回転することなく光軸方向に移動する。
【0038】
次に、図9を用いて、本実施例のレンズ鏡筒における各レンズ保持枠と鏡筒部材との係合関係を、図10に示す従来のレンズ鏡筒と比較しながら説明する。図10の従来のレンズ鏡筒のうち本実施例のレンズ鏡筒の構成要素と共通する構成要素には、本実施例における符号に200を加えた符号を付している。
【0039】
従来のレンズ鏡筒では、1群筒201、2群筒202および3群保持枠203を保持するカム筒210と4群保持枠204および6群保持枠206を保持する駆動筒214とが固定筒213を介して互いに関連付けられている。具体的には、固定筒213のカム溝部213aとカムピン213gのそれぞれにカム筒210のカムピン210fと駆動筒214のカム溝部214cが係合することで、カム筒210と駆動筒214とが間接的に接続されている。
【0040】
このようにカム筒210と駆動筒214とが固定筒213を介して間接的に接続される場合には、カム筒210に保持された1群筒201、2群筒202および3群保持枠203と駆動筒214に保持された4群保持枠4および6群保持枠6との同軸精度や向き合い(傾き)精度に固定筒213が影響する。すなわち、1群レンズL201、2群レンズL202および3群レンズL203を含む前群と4群レンズL204、5群レンズL205および6群レンズL206を含む後群との同軸精度や向き合い精度が出し難くなる。
【0041】
一方、本実施例のレンズ鏡筒では、1群筒1、2群筒2および3群保持枠3を保持するカム筒10のカム溝部10dと4群保持枠4のカムピン4aとが、固定筒13を介することなく直接係合している。このため、カム筒10に保持された1群筒1、2群筒2および3群保持枠3と4群保持枠4との同軸精度や向き合い精度に固定筒13が影響せず、同軸精度や向き合い精度を出し易い。
【0042】
また、4群保持枠4のカムピン4cが駆動筒14のカム溝部14aに係合し、6群保持枠6のカムピン6aが同じく駆動筒14のカム溝部14bに係合しており、さらに4群保持枠4と6群保持枠6とはこれらにより保持されたガイドバー61,62により一体化されている。言い換えれば、6群保持枠6に固定されたガイドバー61,62の先端を4群保持枠4が支持することでガイドバー61,62の先端の振れが抑えられる。従来のレンズ鏡筒では、ガイドバー261,262が6群保持枠206により片持ち支持されていると、ガイドバー261,262が光軸方向に対して傾き易く、その結果、5群保持枠205の光軸に対する倒れが生じ易い。しかも、この場合、4群保持枠204がガイドバー261,262を介して6群保持枠206と部品同士としての関連性を持たないため、4群保持枠204と3群保持枠206との同軸精度や向き合い精度を保証することができない。これに対して、本実施例では、4群保持枠4と6群保持枠6を同じ駆動筒14に係合させることでこれら2つの保持枠4,6の同軸精度を確保した上でガイドバー61,62を該2つの保持枠4,6で両持ち支持することで、4、5および6群保持枠4,5,6の同軸精度および向き合い精度を向上させることができる。
【0043】
そして、5群保持枠5は、ガイドバー61,62によって光軸方向に移動可能に支持されている。このような構成により、4群保持枠4、5群保持枠5および6群保持枠6間の偏芯が低減される。
【0044】
以上説明したように、本実施例では、4群保持枠4を基準として、カム筒10に保持された1群筒1、2群筒2および3群保持枠3と4群、5群および6群保持枠4~6との同軸精度や向き合い精度が出し易い。すなわち、1群レンズL1から6群レンズL6までの同軸精度や向き合い精度が出し易い。
【0045】
また、本実施例では、前述したようにカム筒10の外力吸収ピン10fを固定筒13の外力吸収溝部13a内に所定の隙間が生じるように挿入している。また、カム筒10に固定された可動カバー筒16の外力吸収ピン16aを固定筒13の外力吸収溝部13bに所定の隙間が形成されるように挿入している。これにより、一群筒1が光軸方向(後方)への外力を受けたときに、外力吸収ピン10f,16aが外力吸収溝部13a,13bの内面に当接してその外力を受け止め、該外力によってカム筒10dと4群保持枠4のカムピン4aとの係合が外れる等の不具合が発生し難いようにすることができる。
【0046】
さらに本実施例では、直進板12の直進キー12aを固定筒13の直進溝部13fに所定の隙間が生じるように挿入している。一群筒1に光軸方向の外力が加わると、カム溝部10aを介してカム筒10に回転方向の外力が加わり、一群筒1や直進筒11にカム筒10とは反対方向の周方向反力を受ける。こうして一群筒1が周方向の力を受けたとき、該一群筒11を直進ガイドする直進筒11に固定された直進板12の直進キー12aが直進溝部13fの内面に当接してその外力を受け止め、該外力が直進筒11を周方向に回転させることを防止している。
【0047】
上記実施例では、4群保持枠4に設けられたカムピン4aをカム筒10に設けられたカム溝部10dに係合させる場合について説明したが、カム筒に設けられたカムピンを4群保持枠に設けられたカム溝部に係合させてもよい。つまり、4群保持枠とカム筒のうち一方に設けたカムピンを他方に設けられたカム溝部に係合させればよい。
【0048】
また上記実施例では、1群筒とカム筒が固定筒に対して光軸方向に移動する2段伸縮型レンズ鏡筒について説明したが、3つ以上の可動筒が固定筒に対して、かつ相対的に光軸方向に移動する3段以上の伸縮型レンズ鏡筒も本発明の実施例に含まれる。
【0049】
また本実施例では、カム溝部とカムピンとが係合する場合について説明したが、突条として成形されたカム部にカム係合部が係合する構成を採用してもよい。
【0050】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
L1 1群レンズ
L2 2群レンズ
L3 3群レンズ
L4 4群レンズ
L5 5群レンズ
L6 6群レンズ
1 1群筒
2 2群筒
4 4群保持枠
4a,4c カムピン
5 5群保持枠
6 6群保持枠
10 カム筒
10d カム溝部
10f カムピン
13 固定筒
13a カム溝部
14 駆動筒
14a カム溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10