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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】撮像装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H04N5/232 060
H04N5/232 990
H04N5/232 960
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018227325
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020092308
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】本庄 風斗
【審査官】大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-033151(JP,A)
【文献】特開2017-204838(JP,A)
【文献】特開2015-019145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
前記撮像装置の制御において参照されるプロファイルであって、制御対象となる撮像画像の領域種別を含む前記プロファイルを記憶する記憶手段と、
前記撮像画像の領域の変更処理に係る設定値であって、前記変更処理のための方法に依存しない前記設定値と、前記設定値を識別する識別子を外部装置に送信する送信手段と、
前記外部装置から、前記設定値の前記識別子と共に、前記プロファイルへの前記設定値の追加指示を受信する受信手段と、
前記プロファイルに対し、前記追加指示に示される前記設定値を追加する追加手段と
前記プロファイルを指定した前記領域の変更指示を受信した場合に、前記変更指示に係る前記プロファイルに含まれる前記領域種別に基づいて、前記変更処理のための方法を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された方法で、前記変更処理を行う変更手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記変更指示に係る前記プロファイルに示される前記領域種別が全体画像の場合に、パンチルトズームの少なくとも一つの駆動手段を駆動することで、前記領域の位置及び範囲の少なくとも一方を変更する第1の方法を前記変更処理の方法として決定し、前記変更指示に係る前記プロファイルに示される前記領域種別が切出画像の場合には、デジタル処理により前記領域の位置及び範囲の少なくとも一方を変更する第2の方法を前記変更処理の方法として決定することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項3】
撮像装置であって、
前記撮像装置の制御において参照されるプロファイルであって、制御対象となる撮像画像の領域種別を含む前記プロファイルを記憶する記憶手段と、
前記撮像画像の領域の変更処理に係る設定値であって、前記変更処理のための方法に依存しない前記設定値と、前記設定値を識別する識別子を外部装置に送信する送信手段と、
前記外部装置から、前記設定値の前記識別子と共に、前記プロファイルへの前記設定値の追加指示を受信する受信手段と、
前記プロファイルに対し、前記追加指示に示される前記設定値を追加する追加手段と、
前記プロファイルを指定した、前記領域の位置の取得要求を受信した場合に、前記取得要求に係る前記プロファイルに含まれる前記領域種別に基づいて前記領域の位置を特定する特定手段と、を有し、
前記送信手段は、前記特定手段により特定された前記位置を前記外部装置に送信することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
撮像装置であって、
前記撮像装置の制御において参照されるプロファイルであって、制御対象となる撮像画像の領域種別を含む前記プロファイルを記憶する記憶手段と、
前記撮像画像の領域の変更処理に係る設定値であって、前記変更処理のための方法に依存しない前記設定値と、前記設定値を識別する識別子を外部装置に送信する送信手段と、
前記外部装置から、前記設定値の前記識別子と共に、前記プロファイルへの前記設定値の追加指示を受信する受信手段と、
前記プロファイルに対し、前記追加指示に示される前記設定値を追加する追加手段と、
前記プロファイルを指定した、前記領域のプリセット位置の登録指示を受信した場合に、前記登録指示に係る前記プロファイルに含まれる前記領域種別に基づいて、登録対象の領域を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記領域のプリセット位置を登録する登録手段と
有することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
前記登録指示は、プリセットの識別子を含み、
前記登録手段は、前記プリセット位置を前記プリセットの識別子に対応付けて登録することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記登録手段は、1つのプリセットの識別子に対し複数のプリセット位置の登録指示を受信した場合に、1つのプリセットの識別子に対し複数のプリセット位置を対応付けて登録することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記プリセットの識別子を指定した、前記プリセット位置への移動指示を受信した場合に、前記記憶手段に記憶されている前記プロファイルに対応した前記領域を前記プリセットの識別子に対応付けられている前記プリセット位置に移動する移動手段をさらに有することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記移動指示を受信したタイミングにおいて、配信中の前記領域を前記プリセットの識別子に対応する前記プリセット位置に移動することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
撮像装置が実行する制御方法であって、
撮像画像の領域の変更処理に係る設定値であって、前記変更処理のための方法に依存しない前記設定値と、前記設定値を識別する識別子を外部装置に送信する送信ステップと、
前記外部装置から、前記設定値の前記識別子と共に、前記撮像装置の制御において参照されるプロファイルへの前記設定値の追加指示を受信する受信ステップと、
記憶手段に記憶されている、制御対象となる撮像画像の領域種別を含む前記プロファイルに対し、前記追加指示に示される前記設定値を追加する追加ステップと、
前記プロファイルを指定した前記領域の変更指示を受信した場合に、前記変更指示に係る前記プロファイルに含まれる前記領域種別に基づいて、前記変更処理のための方法を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにおいて決定された方法で、前記変更処理を行う変更ステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
撮像装置が実行する制御方法であって、
前記撮像装置の制御において参照されるプロファイルであって、制御対象となる撮像画像の領域種別を含む前記プロファイルを記憶する記憶ステップと、
前記撮像画像の領域の変更処理に係る設定値であって、前記変更処理のための方法に依存しない前記設定値と、前記設定値を識別する識別子を外部装置に送信する送信ステップと、
前記外部装置から、前記設定値の前記識別子と共に、前記プロファイルへの前記設定値の追加指示を受信する受信ステップと、
前記プロファイルに対し、前記追加指示に示される前記設定値を追加する追加ステップと、
前記プロファイルを指定した、前記領域の位置の取得要求を受信した場合に、前記取得要求に係る前記プロファイルに含まれる前記領域種別に基づいて前記領域の位置を特定する特定ステップと、を含み、
前記送信ステップは、前記特定ステップにおいて特定された前記位置を前記外部装置に送信することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
撮像装置が実行する制御方法であって、
前記撮像装置の制御において参照されるプロファイルであって、制御対象となる撮像画像の領域種別を含む前記プロファイルを記憶する記憶ステップと、
前記撮像画像の領域の変更処理に係る設定値であって、前記変更処理のための方法に依存しない前記設定値と、前記設定値を識別する識別子を外部装置に送信する送信ステップと、
前記外部装置から、前記設定値の前記識別子と共に、前記プロファイルへの前記設定値の追加指示を受信する受信ステップと、
前記プロファイルに対し、前記追加指示に示される前記設定値を追加する追加ステップと、
前記プロファイルを指定した、前記領域のプリセット位置の登録指示を受信した場合に、前記登録指示に係る前記プロファイルに含まれる前記領域種別に基づいて、登録対象の領域を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて特定された前記領域のプリセット位置を登録する登録ステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の撮像装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視カメラにおいては、カメラが有するパン機構、チルト機構及びズーム機構(以下適宜PTZと称する)の操作により撮像領域を変更することが行われている。ネットワークカメラとクライアント機器の接続に係る共通規格である、Open Network Video Interface Forum(以下ONVIFと称す)では、PTZ_Serviceが標準化されている。PTZ_Serviceは、撮像領域の変更や、取得などのコマンド群である。
【0003】
ONVIFにおいては、監視カメラの設定値として、PTZ設定(PTZConfiguration)が定義されている。ここで、PTZ設定は、監視カメラのPTZ制御の設定である。ONVIFにおいてはさらに、ビデオソース設定(Video Source Configuration)、ビデオエンコーダ設定(Video Encoder Configuration)が定義されている。ここで、ビデオソース設定は、切り出し領域の有無や種類の情報や、センサーが出力可能な解像度の設定である。また、ビデオオンコーダ設定は、画像の符号化のエンコード種別や解像度の設定である。これらの設定値は、監視カメラの制御時に指定するプロファイル(Profile)に追加され、監視カメラはそのプロファイルに追加された設定値に応じて、映像の配信や撮像領域の制御を行う。
【0004】
図8は、ONVIF規格における、設定値のプロファイルへの追加を表している。1つ以上のビデオソース設定、ビデオエンコーダ設定、PTZ設定からそれぞれ1つ選択され、プロファイルに追加される。このように、1つのプロファイルには、複数の設定が含まれるが、これらの一の設定が他の設定と依存関係を持つ場合がある。これに対し、特許文献1には、画像データの解像度と圧縮符号化された配信画像の解像度のうち一方のみが変更された場合に不整合が生じるのを防ぐべく、ビデオソース設定とビデオエンコーダ設定との設定値を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-107590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
全方位カメラをはじめとした高画素カメラにおいては、カメラが撮像できる画像より一部を切り出し、切り出した領域の画像をクライアント装置に送信することがある。この場合、撮像画像の全体画像の変更は、メカ的なパンチルトズーム(PTZ)制御により実現されるのに対し、切出画像の変更は、デジタルPTZの機能により実現される。このように、監視カメラがメカ的なPTZ機構とデジタルPTZ機能とを有する場合には、プロファイルには、PTZ設定(PTZConfiguration)として、メカ的なPTZ機構制御用とデジタルPTZ機能用のいずれかが設定される。この場合、ビデオソース設定とPTZ設定は依存関係を有する。全体画像のビデオソース設定には、PTZ機構制御用のPTZ設定を追加する必要があり、切出画像のビデオソース設定には、デジタルPTZ機能用のPTZ設定を追加する必要がある。
【0007】
しかしながら、ユーザは、ビデオソース設定とPTZ設定の依存関係を把握できないため、ユーザが、対応しないビデオソース設定とPTZ設定の組み合わせをプロファイルに追加してしまう可能性がある。この場合、監視カメラにおいて、画像に紐付かないPTZ制御が行われるという問題があった。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、ユーザがビデオソース設定とPTZ設定の依存関係を意識することなく、プロファイルに対し適切な設定を追加することができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、撮像装置であって、前記撮像装置の制御において参照されるプロファイルであって、制御対象となる撮像画像の領域種別を含む前記プロファイルを記憶する記憶手段と、前記撮像画像の領域の変更処理に係る設定値であって、前記変更処理のための方法に依存しない前記設定値と、前記設定値を識別する識別子を外部装置に送信する送信手段と、前記外部装置から、前記設定値の前記識別子と共に、前記プロファイルへの前記設定値の追加指示を受信する受信手段と、前記プロファイルに対し、前記追加指示に示される前記設定値を追加する追加手段と、前記プロファイルを指定した前記領域の変更指示を受信した場合に、前記変更指示に係る前記プロファイルに含まれる前記領域種別に基づいて、前記変更処理のための方法を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された方法で、前記変更処理を行う変更手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザがビデオソース設定とPTZ設定の依存関係を意識することなく、プロファイルに対し適切な設定を追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】撮像システムの全体図である。
図2】カメラのハードウェア構成図である。
図3】クライアント装置のハードウェア構成図である。
図4】PTZ設定処理を示すフローチャートである。
図5】PTZ制御処理を示すフローチャートである。
図6】プリセット登録処理を示すフローチャートである。
図7】プリセット読出処理を示すフローチャートである。
図8】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、撮像システム10の全体図である。撮像システム10は、カメラ100と、クライアント装置200とを有している。ここで、カメラ100は、撮像装置の一例である。また、クライアント装置200は、外部装置の一例である。カメラ100とクライアント装置200は、ネットワーク300を介して互いに通信可能な状態に接続されている。
【0013】
また、カメラ100は、パン機構111と、チルト機構112と、ズーム機構113とを有している。パン機構111、チルト機構112及びズーム機構113はそれぞれ、レンズの向きをパン方向、チルト方向、ズーム方向に変更するための機構である。カメラ100は、クライアント装置200に対しPTZ制御等の各種コマンド等を送信し、カメラ100は、クライアント装置200に対し、コマンドに対するレスポンスや、撮影された画像等を送信する。
【0014】
図2は、カメラ100のハードウェア構成図である。カメラ100は、制御部101と、記憶部102と、撮像部103と、撮像機構104と、撮像機構制御部105と、画像切出部106と、通信部107とを有している。制御部101は、カメラ100の全体の制御を行う。制御部101は例えばCPUで構成される。記憶部102は、主に制御部101が実行するプログラムの格納領域、プログラム実行中のワーク領域として使用される。記憶部102はまた、後述する撮像部103が生成する撮像画像データや、後述する画像切出部106が生成する切出画像データの格納及び一時保存領域としても使用される。記憶部102はまた、後述する撮像機構制御部105で制御される、撮像機構104の方向や、後述する画像切出部106で制御される切出画像の切り出し領域の設定値等、様々なデータの格納領域として使用される。なお、後述するカメラ100の機能や処理は、制御部101が記憶部102に格納されているプログラムを読み出し、このプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0015】
撮像部103は、後述する撮像機構104により結像された、被写体の像を撮像して取得したアナログ信号をデジタルデータに変換し、撮像画像として記憶部102に出力する。撮像機構104は、レンズや撮像素子等からなる撮像光学系を有している。撮像機構104はさらに、パン機構111、チルト機構112及びズーム機構113を有している。撮像機構制御部105は、パン機構111、チルト機構112及びズーム機構113を制御する。撮像機構制御部105は、メカPTZ制御を行った後、制御により変更された撮像領域に係る位置や範囲等の値を記憶部102に出力する。
【0016】
画像切出部106は、CPU又はGPUである。画像切出部106は、撮像部103により得られた撮像画像から、一部領域の切り出しを行い、記憶部102に出力する。撮像画像より切り出す領域は、クライアント装置200より通信部107を介して受信する撮像領域を制御するコマンドによって指定される。画像切出部106は、画像の切り出し後、切り出した領域に係る位置や範囲等の値を記憶部102に出力する。通信部107は、ネットワーク300を介し、クライアント装置200と各種情報の送受信を行う。
【0017】
また、他の例としては、カメラ100の機能や処理の少なくとも一部は、例えば複数のCPU、RAM、ROM、及びストレージを協働させることにより実現してもよい。また、他の例としては、カメラ100の機能や処理の少なくとも一部は、ハードウェア回路を用いて実現してもよい。また、他の例としては、撮像機構制御部105の処理は、制御部101が行うこととしてもよい。また、他の例としては、画像切出部106の処理は、制御部101が行うこととしてもよい。また、カメラ100は、これ以外にも、映像解析部、音声入力部、音声出力部を有してもよい。
【0018】
図3は、クライアント装置200のハードウェア構成図である。クライアント装置200は、制御部201と、記憶部202と、表示部203と、入力部204と、通信部205とを有している。制御部201は、例えばCPUで構成され、クライアント装置200の全体の制御を行う。記憶部202は、主に制御部201が実行するプログラム格納領域、プログラム実行中のワーク領域、現在ネットワーク300上に存在する接続可能なカメラ情報等、様々なデータの格納領域として使用される。
【0019】
表示部203は、例えばLCD、有機ELディスプレイ等で構成され、クライアント装置200のユーザに対して、様々な設定画面や、データ取得・表示画面、カメラ100から受信する映像のビューワ、各種メッセージ等を表示する。入力部204は、例えばボタン、十字キー、タッチパネル、マウス等で構成され、ユーザによる画面操作の内容を制御部201に通知する。通信部205は、ネットワーク300を介してカメラ100と各種情報の送受信を行う。なお、クライアント装置200はさらに、画像解析部や映像蓄積部等を備えてもよい。
【0020】
次に、カメラ100によるPTZの制御について説明する。本実施形態のカメラ100は、撮像部103により得られた撮像画像だけでなく、撮像画像の一部の領域を切り出した画像をクライアント装置200に送信することができる。以下、撮像部103により得られた撮像画像を全体画像と称し、撮像画像の一部を切り出した画像を切出画像と称する。したがって、カメラ100によるPTZ制御の対象は、全体画像だけでなく、切出画像の場合もある。
【0021】
制御対象が全体画像の場合には、そのPTZ制御は、撮像機構制御部105が、パン機構111、チルト機構112及びズーム機構113を制御する処理により実現される。以下、撮像機構制御部105が、パン機構111、チルト機構112及びズーム機構113を制御する処理をメカPTZ制御と称する。一方で、制御対象が切出画像の場合には、そのPTZ制御は、画像切出部106が切り出す領域の大きさや位置を変更する処理により実現される。以下、画像切出部106が切り出す領域の大きさや位置を変更する処理をデジタルPTZ制御と称する。なお、メカPTZ制御は、パンチルトズームの少なくとも1つの駆動部を駆動することで、領域の位置及び範囲のうち少なくとも一方を変更する方法の一例である。また、デジタルPTZ制御は、デジタル処理により領域の位置及び範囲の少なくとも一方を変更する方法の一例である。
【0022】
このように、制御対象の領域が撮像画像の全体の領域であるか、一部の領域(切り出した領域)であるか、に応じて、PTZ制御を実現するための処理が異なる。本実施形態のカメラ100は、このような制御対象の領域の種別に適したPTZ制御を実現できるようなPTZの制御値を設定する。なお、メカPTZ制御及びデジタルPTZ制御は、いずれも撮像画像の領域の大きさ及び位置を変更する変更処理のための方法の一例である。
【0023】
図4は、カメラ100による、PTZ設定処理を示すフローチャートである。PTZ設定処理においては、ONVIFコマンドを用いてPTZの設定が行われる。なお、PTZ設定処理における、カメラ100及びクライアント装置200の処理は、それぞれ制御部101及び制御部201が主体となって実行される。S401において、クライアント装置200は、通信部205を介して、カメラ100に対し、GetProfileコマンドを送信する。ここで、GetProfileコマンドは、カメラ100が保有するProfileを要求するコマンドである。なお、カメラ100の記憶部102には、カメラ100の制御時に参照される、複数のProfileが記憶されているものとする。また、各Profileには、制御対象となる領域の種別(領域種別)を示すVideo Source Configurationが含まれている。ここで、領域種別は、全体画像と切出画像のいずれかを示す情報である。さらに、各Profieには、Profileを識別するTokenが紐付けられている。
【0024】
制御部101は、通信部107を介してGetProfileを受信すると、S402において、保有するProfileを識別するTokenを応答として、通信部107を介してクライアント装置200に送信する。次に、S403において、クライアント装置200は、カメラ100にGetPTZConfigurationコマンドを送信する。GetPTZConfigurationコマンドは、カメラ100が保有するPTZConfigurationを問い合わせるコマンドである。また、PTZConfigurationは、制御対象の領域の位置や範囲を変更する変更処理に係る設定値である。ただし、変更に係る設定値は、制御時の基本作動速度(DefaultSpeed)、対象画像の作動域(Range)等であり、対象領域の位置や大きさの情報は含まれない。このように、本実施形態においては、PTZConfigurationの設定値は、変更処理のための方法がメカPTZ制御で及びデジタルPTZ制御のいずれであるかに依存しない値である。ここで、PTZConfigurationは、領域の変更処理に係る設定値であって、変更処理のための方法に依存しない設定値の一例である。なお、本実施形態のカメラ100は、1つのPTZConfigurationのみを記憶している。
【0025】
次に、S404において、カメラ100は、応答として、記憶部102に記憶されている、PTZConfigurationの設定値とPTZConfigurationの識別子としてのTokenをクライアント装置200に送信する。なお、上述の通り、カメラ100が記憶するPTZConfigurationは1つのみであり、したがって、S404において送信されるPTZConfigurationの設定値とTokenのセットは1種類のみである。
【0026】
なお、クライアント装置200のユーザは、PTZConfigurationの設定値を変更したい場合には、SetPTZConfigurationコマンドを用いて、設定値を変更することができる。設定値が変更されると、カメラ100は、設定値が変更されたPTZConfigurationを記憶する。
【0027】
続いて、S405において、クライアント装置200は、AddPTZConfigurationコマンドを送信する。ここで、AddPTZConfigurationコマンドは、ProfileへのPTZConfigurationの追加を要求するコマンドである。すなわち、AddPTZConfigurationコマンドは、追加指示の一例である。クライアント装置200は、ユーザ操作に応じて、S402において取得したProfileのうち所望のProfileを選択する。そして、クライアント装置200は、選択したProfileのTokenと、S404において受信したPTZConfigurationのTokenと、をパラメータとして、AddPTZConfigurationコマンドに付与するものとする。
【0028】
カメラ100は、AddConfigurationコマンドを受信すると、処理をS406へ進める。S406において、カメラ100は、AddConfigurationコマンドにおいて指定されるProfileにAddConfigurationコマンドにおいて指定されるPTZConfigurationを追加する。クライアント装置200は、追加が正常に完了すると、S407において、正常完了応答をクライアント装置200に送信する。以上で、PTZ設定処理が完了する。なお、前述の通り、カメラ100がS404においてクライアント装置200に送信するPTZConfigurationのTokenは1種類のみである。このため、これ以外のTokenを含んだPTZConfigurationのTokenが付与されたAddPTZCongigurationコマンドを受信した場合には、制御部101は、クライアント装置200にエラー応答を送信する。
【0029】
図5は、カメラ100による、PTZ制御処理を示すフローチャートである。PTZ制御処理は、図4を参照しつつ説明したPTZ設定処理においてPTZConfigurationが設定されたProfileに従ったPTZ制御を行う処理である。S501において、カメラ100の制御部101は、PTZMoveコマンドをクライアント装置200から受信する。ここで、PTZMoveコマンドは、制御対象の領域の位置及び範囲のうち少なくとも一方の変更を要求するコマンドである。PTZMoveコマンドおいては、制御対象の領域を全体画像又は切出画像に限定する情報は含まれておらず、いずれの領域についてもPTZMoveコマンドを使用することができる。クライアント装置200は、実行したいProfileを指すTokenをパラメータとしてPTZMoveコマンドに付与し、カメラ100に送信する。なお、Moveコマンドは、変更指示の一例である。
【0030】
次に、S502において、カメラ100の制御部101は、受信したPTZMoveコマンドに付与されたTokenが指すProfileに含まれるVideoSourceConfiguration(以下、VSCと称する)を特定する。前述した通り、ProfileにはPTZConfigurationの他に、領域種別を示すVSCが含まれる。
【0031】
次に、S503において、制御部101は、特定したVSCに示される領域種別が切出画像であるか全体画像であるかを判定する。制御部101は、切出画像でない場合、すなわち全体画像の場合には(S503でNO)、処理をS504へ進める。制御部101は、領域種別が切出画像の場合には(S503でYES)、処理をS505へ進める。
【0032】
S504において、制御部101は、PTZConfigurationのための制御をメカPTZ制御に決定し、メカPTZ制御を行う。具体的には、制御部101は、PTZConfigurationにしたがってパン機構111、チルト機構112及びズーム機構113のうち少なくとも1つを駆動するよう撮像機構制御部105に対して指示を出す。これに応じて、パン機構111、チルト機構112及びズーム機構113のうち少なくとも1つが駆動し、全体画像が変更される。ここで、全体画像の変更は、全体画像の範囲の移動、範囲の拡大縮小(ズーム)を含む。
【0033】
一方、S505において、制御部101は、PTZConfigurationのための制御をデジタルPTZ制御に決定し、デジタルPTZ制御を行う。具体的には、制御部101は、PTZConfigurationにしたがって、画像の切出を行うよう画像切出部106に指示を出す。これに応じて、画像切出部106は、PTZConfiguartionに応じた切出画像を得る。これにより、切出画像の移動及び範囲の拡大縮小が実現される。画像の変更が完了すると、S506において、制御部101は、変更後の画像の領域に関する情報を記憶部102に格納し、正常完了応答をクライアント装置200に送信する。以上で、PTZ制御処理が完了する。
【0034】
次に、カメラ100の制御部101がGetPTZPositionコマンドを受信した場合について説明する。ここで、GetPTZPositionコマンドは、撮像領域の位置の取得を要求するコマンドである。すなわち、GetPTZPositionコマンドは、領域の位置の取得要求である。GetPTZPositionコマンドには、位置の取得を行いたいProfileを示すTokenがパラメータとして付与されている。カメラ100は、GetPTZPositionコマンドを受信すると、GetPTZPositionコマンドに付与されたProfileに含まれるVSCを特定する。そして、制御部101は、特定したVSCに示される領域種別が全体画像の場合には、全体画像の位置を返す。ここで、全体画像の位置は、PTZの値から特定される。また、制御部101は、特定したVSCに示される領域種別が切出画像の場合には、切出画像の位置を返す。ここで、切出画像の位置は、PTZの値と、画像内における切り出し位置(相対位置)とにより特定される。
【0035】
以上のように、カメラ100が記憶するプロファイルには、領域種別が含まれている。そして、カメラ100は、クライアント装置200に対し、PTZ制御に係る、制御の種別(変更処理の方法)を区別しない、単一の設定値と識別子を送信する。クライアント装置200のユーザは、単一の設定値を指定することで、PTZ制御の方法を指定することなく、ProfileにPTZConfigurationを追加することができる。すなわち、ユーザは、領域種別とPTZ設定の依存関係を意識することなくProfieにPTZ設定を追加することができる。
【0036】
さらに、Profileには、PTZ制御の方法(メカPTZ制御又はデジタルPTZ制御)を識別する情報は含まれていないが、領域種別が含まれている。したがって、カメラ100は、領域種別が全体画像であるか切出画像であるかに応じて、PTZ制御の方法を特定することができる。
【0037】
図6は、カメラ100による、プリセット登録処理を示すフローチャートである。プリセット登録処理は、ONVIFコマンドを用いて、処理時点において撮像対象となっている領域をプリセット位置として登録する処理である。S601において、カメラ100の制御部101は、通信部107を介してクライアント装置200からSetPresetコマンドを受信する。ここで、SetPresetコマンドは、処理時点における制御対象の領域をプリセット位置として登録することを要求するコマンドである。クライアント装置200は、撮像領域を登録したいProfileを指すTokenと、登録したいPresetを指すPresetのTokenをコマンドに付与したSetPresetコマンドをカメラ100に送信する。ここで、SetPresetコマンドは、プリセット位置の登録指示の一例である。
【0038】
次に、S602において、制御部101は、受信したSetPresetコマンドに含まれるProfileのTokenで指定されるProfileに含まれるVSCを特定する。次に、S603において、制御部101は、特定したVSCに示される領域種別が切出画像であるか全体画像であるかを判定する。制御部101は、切出画像でない場合、すなわち全体画像の場合には(S603でNO)、処理をS604へ進める。制御部101は、領域種別が切出画像の場合には(S603でYES)、処理をS605へ進める。
【0039】
S604において、制御部101は、全体画像の位置をプリセット位置としてPresetのTokenに対応付けて登録する。一方、S605において、制御部101は、切出画像の位置をプリセット位置としてPresetのTokenに対応付けて登録する。なお、全体画像の位置がプリセット位置として登録される場合には、プリセット位置は、PTZの値により特定される。また、切出画像の位置がプリセット位置として登録される場合には、プリセット位置は、PTZの値と、画像内における切り出し位置(相対位置)とにより特定される。なお、S604及びS605において、制御部101は、プリセット位置と共に、領域種別をPresetに登録する。
【0040】
なお、S601において受信したSetPresetにおいて指定されたPresetに既に、プリセット位置が登録されている場合がある。この場合において、既に登録されているプリセット位置に対応する領域種別が、新たに登録されるプリセット位置と等しい場合には、制御部101は、既に登録されているプリセット位置を新たに登録されたプリセット位置で更新する。一方、制御部101は、既に登録されているプリセット位置に対応する領域種別と、新たに登録されるプリセット位置の領域種別と異なる場合には、同一のPresetに対し、新たなプリセット位置を追加で登録する。S604又はS605において登録が正常に完了すると、S606において、正常完了応答をクライアント装置200に送信する。以上でプリセット登録処理が完了する。
【0041】
図7は、カメラ100による、プリセット読出処理を示すフローチャートである。プリセット読出処理は、図6を参照しつつ説明したプリセット登録処理において設定されたプリセット位置を読み出す処理である。S701において、カメラ100の制御部101は、クライアント装置200からGotoPresetコマンドを受信する。ここで、GotoPresetコマンドは、前述したSetPresetコマンドで登録したプリセット位置を読み出し、撮像領域を登録された撮像領域に移動することを要求するコマンドである。すなわち、GotoPresetコマンドは、プリセット位置への移動指示の一例である。クライアント装置200は読み出したいプリセット位置を示すPresetを識別するTokenをGotoPresetコマンドに付与し、カメラ100に送信する。
【0042】
次に、S702において、制御部101は、S702の処理のタイミングにおいて配信中の映像に係るProfieを特定し、このProfileに含まれるVSCを特定する。次に、S703において、制御部101は、VSCの領域種別に基づいて、登録された撮像領域に紐づく映像が全て配信中かどうかを判定する。制御部101は、登録された撮像領域に紐づく映像が全て配信中の場合には(S703でYES)、処理をS704へ進める。制御部101は、登録された撮像領域に紐付く映像のうち少なくとも一部が配信中でない場合には(S703でNO)、処理をS705へ進める。
【0043】
S704において、制御部101は、すべての撮像領域を読み出す。そして、制御部101は、S704の処理時点における撮像領域の位置及び範囲を、GotoPresetコマンドに付与されたPresetのTokenにより特定されるPresetに対応付けられている撮像領域に更新する。一方、S705においては、制御部101は、S705の処理時点において配信が行われている映像に紐付く撮像領域のみ読み出し、S705の処理時点における撮像領域の位置及び範囲を、読み出した撮像領域に更新する。なお、配信中の映像がない場合には、制御部101は、すべての撮像領域を更新することとしてもよい。S704又はS705の処理が完了すると、S706において、制御部101は、更新後の撮像領域を記憶部102に格納し、正常完了応答をクライアント装置200に送信する。
【0044】
なお、他の例としては、カメラ100は、GotoPresetコマンドを受信した場合に、S703の処理を行うことなく、プリセット登録されているすべての撮像領域を更新することとしてもよい。
【0045】
以上のように、カメラ100は、プリセットの登録時には、プロファイルに含まれる領域種別によって登録対象の画像を特定し、プリセットの読み出し時には、配信中の領域種別により読み出す撮像領域を決定する。このように、クライアント装置200のユーザは、領域種別とPTZ設定の依存関係を意識することなくプリセットの登録と読み出しを行うことができる。
【0046】
以上の通り、実施形態に係るカメラ100によれば、ユーザがビデオソース設定とPTZ設定の依存関係を意識することなく、プロファイルに対し適切な設定を追加することができる仕組みを提供することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、カメラ100が、全体画像に係るProfileと切出画像に係るProfileとを記憶している場合を例に説明したが、他の例としては、カメラ100は、切出画像に係るProfileを複数記憶してもよい。さらに、この場合には、各ProfileのVSCには、領域種別だけでなく、各画像を識別可能な情報が含まれるものとする。
【0048】
また、上記において説明したプリセット登録及び読み出しの処理においては、プリセットの対象を画像の位置としたが、これに限定されるものではない。他の例としては、プリセットの対象は、ズームに対応した範囲を含んだ領域(プリセット領域)であってもよい。なお、この場合も、プリセットの登録及び読み出しを行う処理は、上記において説明したのと同様である。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0050】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 撮像システム
100 カメラ
200 クライアント装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8