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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20221212BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221212BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221212BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20221212BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20221212BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20221212BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20221212BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08L9/06
B60C1/00 A
C08K3/36
C08L7/00
C08L15/00
C08L23/02
C08L25/08
C08L53/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018231991
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020094112
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 悟士
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/186367(WO,A1)
【文献】特開2015-110704(JP,A)
【文献】特開2018-087286(JP,A)
【文献】特開2008-255168(JP,A)
【文献】特開2013-035892(JP,A)
【文献】特表2012-531486(JP,A)
【文献】特開2018-030933(JP,A)
【文献】特開2018-001632(JP,A)
【文献】特開2007-154132(JP,A)
【文献】特開平03-296545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00- 21/02
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム成分と、スチレン・アルキレンブロック共重合体と、ポリオレフィン系軟化剤と、補強性充填剤とを含み、
前記スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量が、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体の総質量に対して、30質量%以上であり、
前記ポリオレフィン系軟化剤が、アルケン重合体および水素化ジエン重合体からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、前記補強性充填剤を50質量部以上含む、ゴム組成物。
【請求項2】
前記スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックが、-(CH2-CH(C25))-単位(A)と-(CH2-CH2)-単位(B)とを有し、単位(A)の合計含量が、単位(A)および単位(B)の総質量に対して、40質量%以上である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、前記ポリオレフィン系軟化剤を5~25質量部含む、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴム成分が、当該ジエン系ゴム成分100質量部当たり、天然ゴムを40質量部以上含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
さらに、前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、熱可塑性樹脂を1~70質量部含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記補強性充填剤が、シリカとシリカ以外の白色充填剤とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
タイヤ用である、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
タイヤのトレッド用である、請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いた、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求が強まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。従来、タイヤの転がり抵抗を低減させる手法として、タイヤ構造を最適化する手法も検討されてきたが、タイヤに適用するゴム組成物について、tanδが低く(以下、「低ロス性」という)、低発熱性の優れたものを用いることも、現在一般的な手法として行われている。
【0003】
また、従来、スチレンブタジエンゴムとシリカを使いこなすことで、WET性能と低ロス性を両立したタイヤが主流であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/079703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、天然ゴムをベースに、熱可塑性樹脂や軟化剤を従来よりも多量に配合することで、更に高いWET性能を発揮できることが分かった(例えば、特許文献1参照)。しかし、その場合、低ロス性と操縦安定性に改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせたゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム成分と、スチレン・アルキレンブロック共重合体と、ポリオレフィン系軟化剤と、補強性充填剤とを含み、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量が、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体の総質量に対して、30質量%以上であり、前記ポリオレフィン系軟化剤が、アルケン重合体および水素化ジエン重合体からなる群より選択される1種以上を含み、前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、前記補強性充填剤を45質量部以上含む、ゴム組成物である。
これにより、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせることができる。
【0008】
本発明に係るゴム組成物は、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックが、-(CH2-CH(C25))-単位(A)と-(CH2-CH2)-単位(B)とを有し、単位(A)の合計含量が、単位(A)および単位(B)の総質量に対して、40質量%以上であることが好ましい。
これにより、操縦安定性に優れながら、WET性能と低ロス性とを両立することができる。
【0009】
本発明に係るゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、前記ポリオレフィン系軟化剤を5~25質量部含むことが好ましい。
これにより、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とをより高度にバランスさせることができる。
【0010】
本発明に係るゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分が、当該ジエン系ゴム成分100質量部当たり、天然ゴムを40質量部以上含むことが好ましい。
これにより、耐寒性を向上させることができる。
【0011】
本発明に係るゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、熱可塑性樹脂を1~70質量部含むことが好ましい。
これにより、WET性能をさらに高めることができる。
【0012】
本発明に係るゴム組成物は、前記補強性充填剤が、シリカとシリカ以外の白色充填剤とを含むことが好ましい。
これにより、WET性能をさらに高めることができる。
【0013】
本発明に係るゴム組成物は、タイヤ用であることが好ましい。
これにより、タイヤのWET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせることができる。
【0014】
本発明に係るゴム組成物は、より好適には、タイヤのトレッド用である。
【0015】
本発明に係るタイヤは、上記いずれかに記載のゴム組成物を用いた、タイヤである。
これにより、タイヤのWET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせたゴム組成物を提供することができる。本発明によれば、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0018】
(ゴム組成物)
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム成分と、スチレン・アルキレンブロック共重合体と、ポリオレフィン系軟化剤と、補強性充填剤とを含み、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量が、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体の総質量に対して、30質量%以上であり、前記ポリオレフィン系軟化剤が、アルケン重合体および水素化ジエン重合体からなる群より選択される1種以上を含み、前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、前記補強性充填剤を45質量部以上含む、ゴム組成物である。
これにより、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせることができる。
【0019】
<ジエン系ゴム成分>
ジエン系ゴム成分としては、公知のゴム組成物において用いられるジエン系ゴム成分を用いることができる。ジエン系ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、合成ポリイソプレンゴム、これらの変性体などが挙げられる。ジエン系ゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明に係るゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分として天然ゴムを含むことが好ましい。
これにより、耐寒性を向上させることができる。
【0021】
本発明に係るゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分が、当該ジエン系ゴム成分100質量部当たり、天然ゴムを40質量部以上含むことが好ましい。
これにより、耐寒性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム成分として、未変性SBRおよび変性SBRからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0023】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム成分として、変性SBRなどの変性共役ジエン系重合体を含むことが好ましい。
【0024】
変性共役ジエン系重合体としては、例えば、国際公開第2016/133154号に記載の、重量平均分子量が20×104以上300×104以下であって、変性共役ジエン系重合体の総量に対して、分子量が200×104以上500×104以下である変性共役ジエン系重合体を、0.25質量%以上30質量%以下含み、収縮因子(g’)が0.64未満である、変性共役ジエン系重合体などが挙げられる。
【0025】
本発明のジエン系ゴム成分は、上記国際公開第2016/133154号に記載以外の変性SBRでもよいし、未変性SBRでもよい。例えば、その他の変性SBRとしては、国際公開第2017/077712号のポリマー成分P2としての変性(共)重合体および実施例に記載の変性重合体C、変性重合体Dなどが挙げられる。
【0026】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム成分を含めばよく、ジエン系ゴム成分に加えて、非ジエン系ゴム成分を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0027】
非ジエン系ゴム成分としては、例えば、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。EPDMはジエンの量が極少量であるため、非ジエン系ゴム成分とする。非ジエン系ゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
非ジエン系ゴム成分を含む場合、ゴム成分全体におけるジエン系ゴム成分の割合は、例えば、70質量%以上100質量%未満とすればよい。
【0029】
<スチレン・アルキレンブロック共重合体>
スチレン・アルキレンブロック共重合体は、スチレン系モノマー由来のブロックと、アルキレンブロックとを有する共重合体である。本発明に係るゴム組成物におけるスチレン・アルキレンブロック共重合体は、当該スチレン・アルキレンブロック共重合体の総質量に対して、当該スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量が30質量%以上である。合計スチレン含量が30質量%以上であることにより、操縦安定性が高まる。スチレン・アルキレンブロック共重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量(スチレン系モノマー由来のブロックの合計含量)は、30質量%以上の範囲で適宜調節すればよいが、例えば、30~60質量%である。
【0031】
本発明に係るゴム組成物は、前記合計スチレン含量が、50質量%以上であることが好ましい。これにより、操縦安定性をさらに高めることができる。
【0032】
本発明において、スチレン・アルキレンブロック共重合体のスチレン含量と、後述するアルキレン単位の含量は、1H-NMRの積分比により求める。
【0033】
スチレン・アルキレンブロック共重合体のスチレンブロックは、スチレン系モノマーに由来する(スチレン系モノマーを重合した)単位を有する。このようなスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。この中でも、スチレン系モノマーとしては、スチレンが好ましい。
【0034】
スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックは、アルキレン(二価の飽和炭化水素基)単位を有する。このようなアルキレン単位としては、例えば、炭素数1~20のアルキレン基が挙げられる。アルキレン単位は、直鎖構造でもよいし、分岐構造でもよいし、これらの組み合わせでもよい。直鎖構造のアルキレン単位としては、例えば、-(CH2-CH2)-単位(エチレン単位)、-(CH2-CH2-CH2-CH2)-単位(ブチレン単位)などが挙げられる。分岐構造のアルキレン単位としては、例えば、-(CH2-CH(C25))-単位(ブチレン単位)などが挙げられる。これらのうち、アルキレン単位としては、-(CH2-CH(C25))-単位を有することが好ましい。
【0035】
アルキレン単位の合計含量は適宜調節すればよいが、例えば、スチレン・アルキレンブロック共重合体の総質量に対して、40~70質量%である。
【0036】
本発明に係るゴム組成物は、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックが、-(CH2-CH(C25))-単位(A)と-(CH2-CH2)-単位(B)を有し、単位(A)の合計含量が、全アルキレンブロックの総質量に対して、40質量%以上であることが好ましい。これにより、操縦安定性に優れながら、WET性能と低ロス性とを両立することができる。
【0037】
本発明に係るゴム組成物は、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックが、-(CH2-CH(C25))-単位(A)と-(CH2-CH2)-単位(B)を有し、単位(A)の合計含量が、単位(A)および単位(B)の総質量に対して、40質量%以上であることが好ましい。
これにより、操縦安定性に優れながら、WET性能と低ロス性とを両立することができる。
【0038】
好適な実施形態では、スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックが、-(CH2-CH(C25))-単位(A)と-(CH2-CH2)-単位(B)を有し、単位(A)の合計含量が、単位(A)および単位(B)の総質量に対して、50質量%以上、60質量%以上、または65質量%以上であり、90質量%以下、85質量%以下、または80質量%以下である。
【0039】
本発明に係るゴム組成物の一例では、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体が、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン・エチレン-エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体(SEEPS)からなる群より選択される1種以上である。
【0040】
本発明に係るゴム組成物は、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体が、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体であることが好ましい。
これにより、操縦安定性に優れながら、WET性能と低ロス性とを両立することができる。このスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体のエチレンブチレンブロックは、上述したエチレン単位とブチレン単位を有するブロックである。
【0041】
スチレン・アルキレンブロック共重合体は、上記スチレンブロックとアルキレンブロック以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。このようなその他の構成単位としては、例えば、-(CH2-CH(CH=CH2))-単位などの不飽和結合を有する構成単位などが挙げられる。
【0042】
スチレン・アルキレンブロック共重合体の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スチレンなどのスチレン系モノマーと、1,3-ブタジエンなどの共役ジエン化合物またはブテンなどのオレフィンとを共重合させ、前駆共重合体を得て、この前駆共重合体を水素添加することによって、スチレン・アルキレンブロック共重合体を得ることができる。
【0043】
スチレン・アルキレンブロック共重合体は、市販品を用いてもよい。このような市販品としては、例えば、JSR社のJSR DYNARON(登録商標)8903P、9901Pなどが挙げられる。
【0044】
ゴム組成物におけるスチレン・アルキレンブロック共重合体の配合量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、スチレン・アルキレンブロック共重合体の配合量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、4~30質量部である。WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とをより高度にバランスさせる観点から、スチレン・アルキレンブロック共重合体の配合量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、8.5~30質量部であることが好ましく、10~30質量部であることがより好ましく、12.5~30質量部であることがさらに好ましい。
【0045】
<ポリオレフィン系軟化剤>
本発明において、ポリオレフィン系軟化剤は、アルケン重合体および水素化ジエン重合体からなる群より選択される1種以上を含む軟化剤である。ポリオレフィン系軟化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アルケン重合体は、例えば、化学式Cn2n(nは、例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,10などの2以上の整数)で表されるアルケンの重合体が挙げられる。このようなアルケンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、2-メチルプロペン(イソブテン)、1-ペンテン、シス-2-ペンテン、トランス-2-ペンテンなどが挙げられる。
【0047】
アルケン重合体は、ポリブテン(イソブテンの重合体)、ポリヘキセン、ポリオクテン、ポリヘキセン/エチレン、ポリスチレン/エチレンが好ましい。
【0048】
水素化ジエン重合体は、ジエンの重合体の水素添加物である。ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエンなどの共役ジエン;1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。
【0049】
水素化ジエン重合体は、水素化されなかった二重結合を有していてもよいし、有さなくてもよい。水素化ジエン重合体の水素添加の程度の指標として、ヨウ素価(Ig/100g)は、例えば、50以下、30以下、25以下、20以下または15以下である。
【0050】
アルケン重合体および水素化ジエン重合体の数平均分子量は、例えば、1,000以上、または1,500以上、100,000以下、10,000以下、9,000以下、8,000以下、7,000以下、6,000以下、5,000以下、4,000以下、または3,000以下などでもよい。
【0051】
ポリオレフィン系軟化剤は、重合体末端にヒドロキシ基を有していてもよいし、有さなくてもよい。ゴム組成物のWET性能向上の観点から、ポリオレフィン系軟化剤は、重合体末端にヒドロキシ基を有さないことが好ましい。
【0052】
ポリオレフィン系軟化剤は、市販品を用いてもよい。アルケン重合体の市販品としては、例えば、JXTGエネルギー社製のポリブテンである商品名日石ポリブテンのLV-7、LV-50、LV-100、HV-15、HV-35、HV-50、HV-100、HV-300、HV-1900、SV-7000などが挙げられる。水素化ジエン重合体の市販品は、例えば、日本曹達社製の水素化ポリブタジエンである商品名BI-2000、BI-3000、GI-1000、GI-2000、GI-3000、出光興産社製のポリオレフィンである商品名EPOLなどが挙げられる。
【0053】
一実施形態では、ポリオレフィン系軟化剤は、アルケン重合体および水素化ジエン重合体からなる群より選択される1種以上のみである。
【0054】
ゴム組成物におけるポリオレフィン系軟化剤の配合量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、ポリオレフィン系軟化剤の配合量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、5~30質量部である。
【0055】
本発明に係るゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、前記ポリオレフィン系軟化剤を5~25質量部含むことが好ましい。
これにより、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とをより高度にバランスさせることができる。
【0056】
<補強性充填剤>
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100質量部当たり、補強性充填剤を45質量部以上含む。45質量部未満では、摩耗性能が低下する。
【0057】
補強性充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。補強性充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
補強性と低ロス性の観点から、補強性充填剤はシリカを含むことが好ましい。
【0059】
シリカとしては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0060】
シリカのBET比表面積は、特に限定されず、例えば、40~350m2/g、または80~300m2/gであり、150~280m2/gが好ましい。
【0061】
補強性充填剤中のシリカの量は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節することができるが、補強性充填剤の総質量に対して、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることが特に好ましい。
【0062】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば高、中または低ストラクチャーのSAF、ISAF、ISAF-HS、IISAF、N339、HAF、FEF、GPF、SRFグレードなどのカーボンブラックが挙げられる。
【0063】
シリカ以外の白色充填剤としては、例えば、タルク、水酸化アルミニウム、クレー、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0064】
本発明に係るゴム組成物は、前記補強性充填剤が、シリカとシリカ以外の白色充填剤とを含むことが好ましい。
これにより、WET性能をさらに高めることができる。
【0065】
補強性充填剤の配合量としては、45質量部以上の範囲で適宜調節すればよいが、例えば、ジエン系ゴム成分100質量部に対して45~120質量部である。補強性充填剤の配合量は、低ロス性とWET性能の観点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して50~100質量部であることが好ましく、70~100質量部であることがより好ましい。
【0066】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム成分、スチレン・アルキレンブロック共重合体、ポリオレフィン系軟化剤および補強性充填剤に加えて、熱可塑性樹脂、加硫促進剤、シランカップリング剤、加硫剤およびポリエチレングリコール系化合物やグリセリン脂肪酸エステル等の加工性改良剤からなる群より選択される1種以上をさらに含んでいてもよい。
【0067】
<熱可塑性樹脂>
本発明に係るゴム組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、C5系樹脂、C5~C9系樹脂、C9系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、アルキルフェノール系樹脂およびこれらを一部水素添加したものなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
-C5系樹脂-
5系樹脂は、C5系合成石油樹脂を指し、C5留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる樹脂を意味する。具体的には、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3-ペンタジエン及び1-ペンテンなどを主成分とする共重合体、2-ペンテンとジシクロペンタジエンとの共重合体、1,3-ペンタジエンを主体とする重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
-C5~C9系樹脂-
5~C9系樹脂は、C5~C9系合成石油樹脂を指し、C5~C11留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる樹脂を意味する。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン等を主成分とする共重合体などが挙げられる。これらの中でも、C9以上の成分の少ないC5~C9系樹脂は、ジエン系ゴム成分との相溶性が優れるため好ましい。具体的には、C5~C9系樹脂におけるC9以上の成分の割合が50質量%未満の樹脂が好ましく、40質量%以下の樹脂がより好ましい。また、これらを一部水添したもの(例えば、荒川化学工業社製のアルコン(登録商標))なども挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
-C9系樹脂-
9系樹脂は、C9系合成石油樹脂を指し、C9留分をAlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる樹脂を意味する。例えば、インデン、メチルインデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどを主成分とする共重合体などが挙げられる。また、これらを一部水添したもの(例えば、荒川化学工業社製のアルコン(登録商標))なども挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
-テルペン系樹脂-
テルペン系樹脂は、松属の木からロジンを得る際に同時に得られるテレビン油またはこれから分離した重合成分を配合し、フリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得ることができる。例えば、β-ピネン樹脂、α-ピネン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
-テルペン-芳香族化合物系樹脂-
テルペン-芳香族化合物系樹脂は、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、あるいはさらにホルマリンで縮合することで得ることができる。例えば、テルペン-フェノール樹脂などが挙げられる。前記テルペン-フェノール樹脂のなかでも、テルペン-フェノール樹脂中のフェノール成分が50質量%未満の樹脂が好ましく、40質量%以下の樹脂がより好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
原料のテルペン類としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α-ピネン、リモネンなどのモノテルペン炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、α-ピネンを含むものが好ましく、α-ピネンがより好ましい。
【0074】
-ロジン系樹脂-
ロジン系樹脂としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油レジン、ウッドロジンなどの天然樹脂ロジン;変性ロジン;変性ロジン誘導体などが挙げられる。前記変性ロジン誘導体は、具体的には、重合ロジン、その部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
-ジシクロペンタジエン樹脂-
ジシクロペンタジエン樹脂は、ジシクロペンタジエンを、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒などを用いて重合して得ることができる。ジシクロペンタジエン樹脂の市販品の具体例としては、クイントン1920(日本ゼオン社製)、クイントン1105(日本ゼオン社製)、マルカレッツM-890A(丸善石油化学社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
-アルキルフェノール系樹脂-
アルキルフェノール系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂、低重合度のアルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
熱可塑性樹脂の配合量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0078】
本発明に係るゴム組成物は、さらに、前記ジエン系ゴム成分100質量部当たり、熱可塑性樹脂を1~70質量部含むことが好ましく、5~30質量部がより好ましく、5~20質量部がさらに好ましい。
これにより、WET性能をさらに高めることができる。
【0079】
<加硫促進剤>
本発明に係るゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤は、例えば、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チオウレアおよびジエチルチオウレアの中から選ばれる少なくとも1種である。これらは、それぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
加硫促進剤の配合量としては、特に限定されず、目的に応じて適宜調節することができ、例えば、ジエン系ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部である。0.1質量部以上であると、加硫の効果が得られやすく、20質量部以下であると、加硫の過度の進行を抑制することができる。
【0081】
-グアニジン類-
グアニジン類としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジンなどが挙げられる。これらの中でも、反応性が高い点で、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジンおよび1-o-トリルビグアニドが好ましく、1,3-ジフェニルグアニジンがより好ましい。
【0082】
-スルフェンアミド類-
スルフェンアミド類としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどが挙げられる。これらの中でも、反応性が高い点で、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミドおよびN-tert-ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミドが好ましい。
【0083】
-チアゾール類-
チアゾール類としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2-メルカプト-6-ニトロベンゾチアゾール、2-メルカプト-ナフト[1,2-d]チアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。これらの中でも、反応性が高い点で、2-メルカプトベンゾチアゾールおよびジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0084】
-チオウレア-
チオウレアは、NH2CSNH2で表される化合物である。
【0085】
-ジエチルチオウレア-
ジエチルチオウレアは、C25NHCSNHC25で表される化合物である。
【0086】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤を用いることによって、例えば、ゴム加工時の作業性が更に優れると共に、耐摩耗性がより良好なタイヤを得ることができる。シランカップリング剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、式(I):(R1O)3-p(R2pSi-R3-Sa-R3-Si(OR13-r(R2rで表わされる化合物、式(II):(R4O)3-s(R5sSi-R6-Sk-R7-Sk-R6-Si(OR43-t(R5tで表わされる化合物などが挙げられる。
【0088】
式(I)中、R1はそれぞれ独立して、炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基、炭素数2~8の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル基または水素原子であり、R2はそれぞれ独立して、炭素数1~8の直鎖、環状または分岐のアルキル基であり、R3はそれぞれ独立して炭素数1~8の直鎖または分岐のアルキレン基である。aは平均値として2~6であり、pおよびrは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として0~3である。ただし、pおよびrの双方が3であることはない。
【0089】
式(II)中、R4はそれぞれ独立して炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基、炭素数2~8の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル基または水素原子であり、R5はそれぞれ独立して炭素数1~8の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基であり、R6はそれぞれ独立して炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキレン基である。R7は一般式(-S-R8-S-)、(-R9-Sm1-R10-)および(-R11-Sm2-R12-Sm3-R13-)のいずれかの二価の基(R8~R13は各々炭素数1~20の二価の炭化水素基、二価の芳香族基、または硫黄および酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であり、m1、m2およびm3は同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1以上4未満である。)であり、kはそれぞれ独立して平均値として1~6であり、sおよびtは各々平均値として0~3である。ただし、sおよびtの双方が3であることはない。
【0090】
式(I)で表わされるシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィドなどが挙げられる。
【0091】
式(II)で表わされるシランカップリング剤としては、例えば、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S2-(CH26-S2-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S2-(CH210-S2-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S3-(CH26-S3-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S4-(CH26-S4-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S-(CH26-S2-(CH26-S-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S-(CH26-S2.5-(CH26-S-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S-(CH26-S3-(CH26-S-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S-(CH26-S4-(CH26-S-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S-(CH210-S2-(CH210-S-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S4-(CH26-S4-(CH26-S4-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S2-(CH26-S2-(CH26-S2-(CH23-Si(OCH2CH33、平均組成式(CH3CH2O)3Si-(CH23-S-(CH26-S2-(CH26-S2-(CH26-S-(CH23-Si(OCH2CH33を有するものなどが挙げられる。
【0092】
シランカップリング剤としては、例えば、エボニック・デグサ社製Si363(エトキシ(3-メルカプトプロピル)ビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シラン、[C1327O(CH2CH2O)52(CH3CH2O)Si(CH23SH)などが挙げられる。
【0093】
シランカップリング剤の配合量としては、適宜調節すればよいが、例えば、ジエン系ゴム成分100質量部に対して2質量部以上である。シリカの反応性向上の観点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して2~20質量部であることが好ましく、4~12質量部であることがより好ましい。
【0094】
シリカの配合量(質量)に対するシランカップリング剤の配合量(質量)の割合(シランカップリング剤の配合量/シリカの配合量)としては、特に限定されず、目的に応じて適宜調節することができるが、0.01~0.20が好ましく、0.03~0.20がより好ましく、0.04~0.10が特に好ましい。この割合が、0.01以上であると、ゴム組成物の低ロス性の向上の効果を得られやすく、0.20以下であると、ゴム組成物の製造コストが低減し、経済性を向上させることができる。
【0095】
<加硫剤>
加硫剤としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄などが挙げられる。加硫剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
加硫剤の配合量としては、特に限定されず、目的に応じて適宜調節することができ、例えば、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、0.1~2.0質量部であり、1.0~2.0質量部がより好ましく、1.2~1.8質量部が特に好ましい。
【0097】
<グリセリン脂肪酸エステル>
本発明のゴム組成物は、補強性充填剤としてシリカを含む場合、更に、特開2016-160424号公報および特開2016-160423号公報などに記載のグリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。グリセリン脂肪酸エステルを含む場合、ゴム組成物の加工性が向上し、また、ゴム組成物をタイヤに適用することで、タイヤの低ロス性を更に向上することができる。
【0098】
本発明のゴム組成物において、前記グリセリン脂肪酸エステルの配合量は、ゴム組成物の加工性の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、また、ゴム組成物の破壊特性の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0099】
<その他の成分>
本発明に係るゴム組成物は、上述した成分以外に、ゴム工業界で通常使用される成分、例えば、老化防止剤、加硫促進助剤、有機酸化合物などを、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜選択して含有することができる。
【0100】
(ゴム組成物の調製方法)
本発明に係るゴム組成物の調製方法は特に限定されず、公知の混練方法を用いて、ジエン系ゴム成分、スチレン・アルキレンブロック共重合体、ポリオレフィン系軟化剤、補強性充填剤などの成分を混練すればよい。
【0101】
本発明に係るゴム組成物の用途は、特に限定されないが、例えば、タイヤなどに用いることができる。
【0102】
本発明に係るゴム組成物は、タイヤ用であることが好ましい。
これにより、タイヤのWET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせることができる。
【0103】
本発明に係るゴム組成物は、より好適には、タイヤのトレッド用である。
【0104】
(タイヤ)
本発明に係るタイヤは、上記いずれかに記載のゴム組成物を用いた、タイヤである。
これにより、タイヤのWET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせることができる。
【0105】
タイヤにおけるゴム組成物の適用部位は特に限定されないが、タイヤのトレッドゴムに用いることが好ましい。
【実施例
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0107】
実施例における材料は以下のとおりである。
天然ゴム(NR):RSS#3
スチレンブタジエンゴム(低TgSBR):後述する方法で合成する
スチレンブタジエンゴム(高TgSBR):後述する方法で合成する、ゴム成分100質量部に対してオイル分37.5質量部を含む、重量平均分子量(Mw)=85.2×104、分子量200×104以上500×104以下の割合=4.6%、収縮因子(g’)=0.57、ガラス転移温度(Tg)=-24℃
スチレン・アルキレンブロック共重合体(合計スチレン含量15質量%):JSR社製のDYNARON(登録商標)8600P、単位(A)および単位(B)の総質量に対する単位(A)の割合=68質量%
スチレン・アルキレンブロック共重合体(合計スチレン含量35質量%):JSR社製のDYNARON(登録商標)8903P、単位(A)および単位(B)の総質量に対する単位(A)の割合=70質量%
シリカ:東ソー・シリカ社製の商品名NipSil(登録商標) AQ
カーボンブラック:旭カーボン社製の商品名#80
シランカップリング剤:エトキシ(3-メルカプトプロピル)ビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シラン、エボニック・デグサ社製の商品名Si363
5~C9系樹脂(C5-C9樹脂):JXTGエネルギー社製の商品名T-REZ RD104
9系樹脂(C9樹脂):JXTGエネルギー社製の商品名日石ネオポリマー140
ワックス:マイクロクリスタリンワックス、日本精蝋社製の商品名オゾエース0701
老化防止剤(6PPD):N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製の商品名ノクラック 6C
加硫促進剤(DPG):1,3-ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業社製の商品名ノクセラーD
加硫促進剤(MBTS):ベンゾチアゾールジスルフィド、大内新興化学工業社製の商品名ノクセラーDM
加硫促進剤(CBS):N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、三新化学工業社製の商品名サンセラーCM-G
【0108】
変性SBR(低TgSBR)の合成
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液およびスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5gおよびスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行う。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミンを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行う。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBRを得る。変性SBRのミクロ構造は、結合スチレン量が10質量%、ブタジエン部分のビニル結合量が40%、ピーク分子量が200,000である。
【0109】
変性SBR(高TgSBR1)の合成
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、撹拌機付槽型反応器である撹拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器とする。予め水分除去した、1,3-ブタジエンを17.9g/分、スチレンを9.8g/分、n-ヘキサンを145.3g/分の条件で混合する。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.117mmol/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給する。更に、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.0194g/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.242mmol/分の速度で、撹拌機で激しく混合する重合反応器の底部へ供給し、連続的に重合反応を継続する。反応器頂部出口における重合溶液の温度が75℃となるように温度を制御する。重合が十分に安定したところで、反応器頂部出口より、カップリング剤添加前の重合体溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニー粘度及び各種の分子量を測定する。次に、反応器の出口より流出した重合体溶液に、カップリング剤として2.74mmol/Lに希釈したテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.0302mmol/分(水分5.2ppm含有n-ヘキサン溶液)の速度で連続的に添加し、カップリング剤を添加された重合体溶液はスタティックミキサーを通ることで混合されカップリング反応する。このとき、反応器の出口より流出した重合溶液にカップリング剤が添加されるまでの時間は4.8分、温度は68℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は7℃である。カップリング反応した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n-ヘキサン溶液)で連続的に添加し、カップリング反応を終了する。酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)が37.5gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合する。スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性SBRを得る。
【0110】
<実施例1~5、7~10、参考例1および比較例1~6>
表1~2に示す配合処方(質量部)に従って、ゴム組成物を調製する。そのゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従ってサイズ:195/65R15の乗用車用ラジアルタイヤを作製する。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
(性能評価)
<WET性能>
各供試タイヤにつき、湿潤路のコース上において、テストドライバーが、様々な走行を行い、走行中のタイヤの走行性能についてフィーリング評価を行う。比較例1のWET性能を100として指数表示する。評価を表2に示す。指数値が大きいほどタイヤのWET性能に優れることを示す。
【0114】
<低ロス性>
各ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得られた加硫ゴムについて、損失正接(tanδ)を、上島製作所製スペクトロメーター、温度50℃、初期歪2%、動歪1%、周波数52Hzの条件で測定する。比較例1のtanδの逆数を100として指数表示する。評価を表2に示す。指数値が大きいほど低ロス性に優れる。
【0115】
<操縦安定性>
各供試タイヤにつき、乾燥路面での実車試験にて、テストドライバーによるフィーリングに基づき、操縦安定性を評価する。比較例1の操縦安定性を100として指数表示する。評価を表2に示す。指数値が大きいほどタイヤの操縦安定性に優れることを示す。
【0116】
表2に示すように、本発明に係るゴム組成物によって、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせたゴム組成物を提供することができる。本発明によれば、WET性能と、低ロス性と、操縦安定性とを高度にバランスさせたタイヤを提供することができる。