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特許7191674エンドエフェクタとそれを備えたロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】エンドエフェクタとそれを備えたロボット
(51)【国際特許分類】
   B67B 3/20 20060101AFI20221212BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B67B3/20
B25J15/08 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018239928
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020099964
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友希男
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518090(JP,A)
【文献】特表2011-504856(JP,A)
【文献】特開昭59-142993(JP,A)
【文献】特開昭59-074094(JP,A)
【文献】特開2016-124057(JP,A)
【文献】特開2015-112704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67B 3/20
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと接続され且つ容器本体の開口部を塞ぐねじ込み式の蓋部を開閉するエンドエフェクタであって、
前記容器本体を把持する容器把持部と、
前記蓋部を把持し、前記蓋部のねじ込み軸線に沿って移動可能な蓋把持部と、
記蓋把持部の前記ねじ込み軸線に沿った移動をガイドするガイド部と、
前記蓋把持部が前記蓋部の開放位置又は閉鎖位置まで移動したことを検知する検知部と、を備え、
前記蓋把持部が、前記ロボットアームの回転可能な手首部と共に回転するように、前記ガイド部を介して前記手首部に接続され、
前記容器把持部が、前記手首部に回転可能に連結される前記ロボットアームのリンクに取り付けられる、ことを特徴とするエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記手首部に対する前記蓋把持部の相対回転は許容せず、前記手首部に対する前記蓋把持部の前記ねじ込み軸線に沿った移動は許容するガイドを有している、
請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記容器把持部は、前記容器本体を側方から把持する容器チャックを有し、
前記蓋把持部は、前記蓋部を上方から把持する蓋チャックを有している、
請求項1又は2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエンドエフェクタを備えている、
ことを特徴とするロボット。
【請求項5】
前記エンドエフェクタの前記容器把持部で前記容器本体を把持して移動させながら、該エンドエフェクタの前記蓋把持部で前記蓋部を開閉するよう構成されている、
請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記ロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記ロボットアームが、前記リンクと、前記手首部とを有し、
記制御装置は、前記蓋把持部が前記蓋部の開放位置又は閉鎖位置まで移動したことを前記検知部が検知すると前記手首部の回転を止めるよう構成されている、
請求項4又は5に記載のロボット。
【請求項7】
前記容器把持部は、前記制御装置の外部軸制御によってサーボ制御されている、
請求項6に記載のロボット。
【請求項8】
少なくとも2つの前記ロボットアームを備え、
2つの前記ロボットアームの少なくともいずれか一方に前記エンドエフェクタが備えられている、
請求項6又は7に記載のロボット。
【請求項9】
多関節型ロボットである、
請求項4~8のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項10】
双腕ロボットである、
請求項8又は9に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器のねじ込み式の蓋部(キャップ)を開閉するエンドエフェクタと、それを備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の蓋部を開閉するためにロボットを用いる場合がある。この容器として、例えば、飲料用容器などを含む食品関係、化粧品容器などを含む美容関係、塗料容器などを含む塗装関係などにおいて、樹脂、ガラス、金属などの様々な容器が用いられており、それらの容器にはねじ込み式の蓋部が用いられている物がある。
【0003】
このような容器の蓋部を開栓する先行技術として、例えば、ロボットシステムにおいて、容器であるコニカルチューブとそのキャップを別々のハンドで把持し、一方のハンドでキャップを回転させて開栓するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の先行技術として、一対の把持爪によって容器の硬質部と栓部とを把持し、これら硬質部と栓部とに相対的な捩りを加えることで栓部を離脱させるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-112704号公報
【文献】特開2016-64112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記したいずれの先行技術も、別々のハンドで容器本体と蓋部とをそれぞれ把持し、蓋部を開栓する方向にハンドを回転させるため、別々のハンドをそれぞれ制御する必要があり、動作時間を要する。また、複数のハンドとその制御のために費用と時間を要する。その上、蓋部の開栓をハンドの回転角度で判断しているため、蓋部とハンドとの間に滑りを生じた場合、蓋部を開栓できていない場合が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、容器本体を把持した状態でねじ込み式の蓋部を適切に開閉できるエンドエフェクタと、それを備えたロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るエンドエフェクタは、容器本体の開口部を塞ぐねじ込み式の蓋部を開閉するエンドエフェクタであって、前記容器本体を把持する容器把持部と、前記蓋部を把持し、前記蓋部のねじ込み軸線上で移動可能な蓋把持部と、前記蓋把持部を回転させる回転部と、前記回転部で回転させる前記蓋把持部の前記ねじ込み軸線上での移動をガイドするガイド部と、前記蓋把持部が前記蓋の開放位置又は閉鎖位置まで移動したことを検知する検知部と、を備えている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「エンドエフェクタ」は、ロボットアームの手首部を含む場合もある。また、回転部の回転は、「正転」及び「逆転」を含む。
【0009】
この構成により、エンドエフェクタに備えられた容器保持部で容器本体を保持した状態で、そのエンドエフェクタに備えられた蓋把持部によって蓋部を把持し、回転部で蓋把持部を回転させることで蓋部がねじ込み軸線上で移動して開閉することができる。よって、1つのエンドエフェクタによって容器の開口部を塞ぐねじ込み式の蓋部を適切に開閉することができる。
【0010】
また、前記ガイド部は、前記回転部に対する前記蓋把持部の相対回転は許容せず、前記回転部に対する前記蓋把持部の前記ねじ込み軸線上での移動は許容するガイドを有していてもよい。
【0011】
このように構成すれば、蓋把持部を回転部と一緒に回転させながら、ガイドに沿ってねじ込み軸線上でスムーズに移動させることができる。
【0012】
また、前記容器把持部は、前記容器本体を側方から把持する容器チャックを有し、前記蓋把持部は、前記蓋部を上方から把持する蓋チャックを有していてもよい。
【0013】
このように構成すれば、テーブルなどに置かれた容器本体を側方から容器チャックで把持し、その状態で蓋部を上方から蓋チャックで把持して適切に開閉することができる。
【0014】
一方、本発明に係るロボットは、前記いずれかのエンドエフェクタを備えている。
【0015】
この構成により、ロボットに備えさせたエンドエフェクタにより、容器保持部で容器本体を保持した状態で、そのエンドエフェクタに備えられた蓋把持部によって蓋部を把持し、回転部で蓋把持部を回転させることで蓋部をねじ込み軸線上で移動させて開閉することができる。
【0016】
また、前記エンドエフェクタの前記容器把持部で前記容器本体を把持して移動させながら、該エンドエフェクタの前記蓋把持部で前記蓋部を開閉するよう構成されていてもよい。
【0017】
このように構成すれば、エンドエフェクタの容器把持部で容器本体を把持して移動させながら、同時に蓋把持部で蓋部を把持して開閉することができる。よって、容器を移動させる作業を含む場合、一連の作業の時間短縮を図ることができる。
【0018】
また、ロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、を備え、前記ロボットアームが、リンクと、前記リンクの先端に回転可能に設けられた手首部とを有し、前記容器把持部は前記リンクに取り付けられており、前記手首部によって前記回転部が構成されており、前記制御装置は、前記蓋把持部が前記蓋部の開放位置又は閉鎖位置まで移動したことを前記検知部が検知すると前記回転部の回転を止めるように構成されていてもよい。
【0019】
このように構成すれば、リンクと手首部を有するロボットアームによってエンドエフェクタを容器の位置に適切に配置し、エンドエフェクタに備えられた容器把持部で容器を把持し、蓋把持部で蓋部を把持して適切に開閉することができる。
【0020】
また、前記容器把持部は、前記制御装置の外部軸制御によってサーボ制御されていてもよい。
【0021】
このように構成すれば、樹脂、ガラス、金属など、容器本体の硬さが異なっても容器把持部をサーボ制御の外部軸制御によって適切に制御して把持することができ、蓋把持部で蓋部を把持して開閉する動作と協調動作で制御することができる。
【0022】
また、少なくとも2つの前記ロボットアームを備え、2つの前記ロボットアームの少なくともいずれか一方に前記エンドエフェクタが備えられていてもよい。
【0023】
このように構成すれば、2つのロボットアームの少なくとも一方に備えられたエンドエフェクタにより、容器把持部で容器本体を把持して蓋把持部で蓋部を把持して開閉することができ、他方のロボットアームによる作業と並行して行わせることができる。よって、2つのロボットアームによる異なる作業を同時に行わせることができる。
【0024】
また、多関節型ロボットであってもよい。
【0025】
このように構成すれば、多関節型ロボットによって容器本体及び蓋部を3次元的に移動させて適切な位置に配置する動作が容易にできる。
【0026】
また、双腕ロボットであってもよい。
【0027】
このように構成すれば、1台の双腕ロボットによって、一方のロボットアームに備えさせたエンドエフェクタによる容器の蓋部の開閉作業と、他方のロボットアームによる他の作業を同時に行わせることが容易にできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、1つのエンドエフェクタによって容器本体を把持した状態でねじ込み式の蓋部を把持して適切に開閉することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエンドエフェクタを示す正面図である。
図2図2は、図1に示すエンドエフェクタの動作例を示す図面であり、(A)は正面図、(B)は(A)に示すII矢視図である。
図3図3は、図2に示すエンドエフェクタの次の状態を示す正面図である。
図4図4は、図3に示すエンドエフェクタの次の状態を示す正面図である。
図5図5は、図3に示すエンドエフェクタの他の動作例を示す正面図である。
図6図6は、図1に示すエンドエフェクタを備えたロボットによる動作例を示す正面図である。
図7図7は、図6に示すロボットと他のロボットによる協動作業例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、図6に示すロボット1のロボットアーム10に備えられたエンドエフェクタ20を例に説明する。エンドエフェクタ20の動作は、立てられた容器60に対して上方から開栓動作をする例を説明する。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における上下左右方向の概念は、図1に示す上下左右方向の概念と一致するものとする。
【0031】
(エンドエフェクタの構成)
図1は、一実施形態に係るエンドエフェクタ20を示す正面図である。このエンドエフェクタ20は、ロボットアーム10(図6)の先端部に備えられている。この実施形態では、ロボットアーム10の手首部16によってエンドエフェクタ20の回転部30が構成されており、回転部30である手首部16はエンドエフェクタ20に含まれる。回転部30(手首部16)は、手首回転軸Tを中心に回転可能となっている。エンドエフェクタ20には、容器本体61を把持する容器把持部21と、容器本体61にねじ込まれる蓋部62を把持し、蓋部62のねじ込み軸線X上に設けられた蓋把持部25と、蓋把持部25を回転させる上記回転部30とが備えられている。ねじ込み軸線Xは、手首回転軸Tと同一軸線上にある。よって、回転部30を、手首回転軸Tを中心に右回転又は左回転させることで、蓋把持部25によって蓋部62を容器本体61のねじ部63(図3)へねじ込む方向又は緩める方向(取り外し方向)に回転させることができる。
【0032】
回転部30には、蓋把持部25のガイド部31が設けられている。ガイド部31には、上下方向に延びるガイドが設けられている。この実施形態では、ガイドとしてリニアガイド32が設けられており、リニアガイド32の先端部に蓋把持部25が設けられている。リニアガイド32は、ガイド部31に対して上下方向(ねじ込み軸線方向)の変位(進退)は許容されているが、ガイド部31(回転部30)に対して相対回転は許容されていない。これにより、回転部30を回転させると、ガイド部31とリニアガイド32とが一緒に回転する。ガイドは、回転部30を回転させるとガイド部31に対する相対回転は許容せずに一緒に回転し、ねじ込み軸線X上での移動は許容するものであればよい。そして、リニアガイド32の先端部に設けられた蓋把持部25も一体的に回転する。蓋把持部25は、リニアガイド32によって蓋部62のねじ込み軸線X上で上下方向に移動可能なようにガイドされている。
【0033】
ガイド部31には、蓋把持部25が蓋部62のねじ込み軸線X上で所定位置まで後退(上昇)したことを検知する検知部たる第1リミットスイッチ33と、所定位置まで進出(下降)したことを検知する検知部たる第2リミットスイッチ34とが備えられている。リミットスイッチ33,34は、蓋把持部25と一体的に移動するリニアガイド32の検知部分(図示省略)が所定位置まで移動したことを検知するようになっている。これらのリミットスイッチ33,34により、蓋把持部25がねじ込み軸線X上で蓋部62の開放位置又は閉鎖位置まで移動したことが検知される。検知部は、リミットスイッチ33,34に限定されるものではなく、他の位置センサなどを用いることができる。リニアガイド32には、エアシリンダを用いることができる。エアシリンダを用いる場合、オートスイッチ付エアシリンダを用いることができる。オートスイッチ付エアシリンダの場合、内蔵されたスイッチが検知部となる。また、検知部としては、蓋把持部25(回転部30)の回転数(回転角を含む)を検知する構成にできる。例えば、蓋部62を三回転で取り外すことができる容器60の場合、蓋把持部25(回転部30)を三回転以上の回転数(把持部分に滑りを生じても問題ない回転数、例えば四回転、五回転など)で回転させたことを検知する構成にできる。回転数で検知する場合も、蓋把持部25は蓋部62と一緒に開放位置まで移動しているため、蓋把持部25が蓋部62の開放位置まで移動したことを検知することに含まれる。
【0034】
蓋把持部25には、蓋把持部本体26の下端に蓋チャック27が備えられている。図示する蓋チャック27は、容器60の上方から下向きに蓋部62の左右位置まで延び、蓋部62を左右方向から把持するようになっている。蓋チャック27は、駆動機28(例えば、モータ)によって左右方向から蓋部62を把持するようになっている。蓋チャック27の駆動機構は、対向する状態で開閉させる公知の機構を用いることができる。また、蓋チャック27は、例えば、蓋部62を左右方向から水平に把持するV字状のチャックや、上方から複数箇所(例えば、3箇所)を把持するチャックなどにできる。図示する状態は、蓋把持部25がガイド部31から垂れ下がった位置となった状態を示している。
【0035】
容器把持部21は、ロボットアーム10の先端部分(後述する、第5リンク15)から下方に延びる略L字状の容器把持部本体23を有し、容器把持部本体23の下端部に横方向に延びる容器チャック22が備えられている。容器把持部21は、ロボットアーム10の手首回転軸Tで回転しない部分に設けられている。容器チャック22は、容器把持部21に設けられた駆動機24(例えば、モータ)によって容器本体61を対向する側方から挟むようになっている。容器チャック22の駆動機構は、対向する状態で開閉させる公知の機構を用いることができる。容器チャック22は、開く方向(図の紙面直交方向)に広げた状態では、容器本体61に当接することなく上方から下方に向けて降ろすことができる。容器チャック22の把持面(内面)は、例えば、容器本体61の外面に沿う形状に形成される。例えば、容器本体61の外形が円形であれば、その外面に沿うように円弧状の把持面を有するように形成される。容器本体61の外形が矩形であれば、その外面に沿うように平行状の把持面を有するように形成される。容器チャック22は、ロボット1の外部軸制御によってサーボ制御すれば、容器本体61に応じて把持する力などの制御をより適切に行うことができる。これにより、樹脂、ガラス、金属などの硬さの異なる容器本体61でも適切に把持することができる。
【0036】
(エンドエフェクタの動作例)
図2は、図1に示すエンドエフェクタ20の動作例を示す図面であり、(A)は正面図、(B)は(A)に示すII矢視図である。図3は、図2に示すエンドエフェクタ20の次の状態を示す正面図である。図4は、図3に示すエンドエフェクタ20の次の状態を示す正面図である。これらの図に基づいて、容器60の上端部に設けられた開口部を塞いでいるねじ込み式の蓋部62を外して開栓する動作例を説明する。
【0037】
図2(A)、(B)に示すように、テーブル4に載置された容器60に対して、エンドエフェクタ20の容器チャック22が容器60の両側面に配置され、蓋チャック27が蓋部62を把持できる位置に配置される。そして、容器チャック22で容器本体61が把持され、蓋チャック27で蓋部62が把持される。
【0038】
その後、図3に示すように、回転部30によって蓋把持部25が蓋部62を開放する方向に回転させられて、蓋チャック27と蓋部62が一体的に回転する。ねじ込み式の蓋部62は、開放する方向に回転させることで容器本体61のねじ部63に沿って上方へ移動する。この移動時には、蓋把持部25は、回転部30との間に設けられたリニアガイド32が上方へ移動することで変位が許容される。リニアガイド32は、蓋部62が外れる所定位置まで移動すると第1リミットスイッチ33で検出され、これにより回転部30の回転が止められる。この状態では、蓋部62は容器本体61から外れている。蓋部62が容器本体61から外れたことを、蓋把持部25のねじ込み軸線X上における移動位置で検出しているため、蓋部62と蓋チャック27との間に滑りなどを生じても、適切に外れたことを検出することができる。
【0039】
その後、図4に示すように、容器本体61を把持している容器チャック22が開放されて、容器本体61の把持が開放される。容器本体61から外された蓋部62は、蓋チャック27に把持させた状態でエンドエフェクタ20によって所定の位置まで搬送することができる。
【0040】
この例では、エンドエフェクタ20によって容器本体61から蓋部62を取り外す開栓例を説明したが、逆の動作によって容器本体61に蓋部62を閉める閉栓も可能である。蓋部62を閉める場合、回転部30で蓋把持部25を逆方向に回転させることで、蓋部62が容器本体61のねじ部63にねじ込まれ、これにより蓋把持部25とガイド部31のリニアガイド32は下方に向けて移動する。そして、リニアガイド32が蓋部62を適切に閉めた位置まで移動したことが第2リミットスイッチ34で検知されると、回転部30の回転が止められる。このように、容器本体61の蓋部62を閉めるときは、上記開栓と反対の動作によってできる。
【0041】
(その他の動作例)
図5は、図3に示すエンドエフェクタ20の他の動作例を示す正面図である。この動作例は、容器60の容器本体61を容器把持部21で把持して移動させながら、空中で蓋把持部25によって蓋部62を取り外す例である。
【0042】
上記エンドエフェクタ20によれば、容器把持部21の容器チャック22で容器本体61を把持し、蓋把持部25の蓋チャック27で蓋部62を把持した状態で容器60を移動させる。そして、容器60を移動させながら回転部30で蓋把持部25を回転させることで、蓋部62を回転させて容器本体61から外すことができる。このようにすれば、例えば、蓋部62が閉められた状態の容器60から蓋部62を取り外して容器本体61を所定位置に配置するような作業を繰り返す場合、エンドエフェクタ20によって容器60を移動させながら、空中で蓋部62を取り外すことができる。よって、作業のサイクルタイムを短縮することができる。なお、容器60をテーブル4上に置いた状態で蓋部62を外し、その状態で容器本体61と蓋部62を把持した状態のまま移動させることもできる。
【0043】
(エンドエフェクタを備えたロボットの動作例)
図6は、図1に示すエンドエフェクタ20を備えたロボット1による動作例を示す正面図である。図7は、図6に示すロボット1(以下、「第1ロボット1」という)と他のロボット6(以下、「第2ロボット6」という)による協動作業例を示す正面図である。
【0044】
図6に示すロボット1は、6軸の垂直多関節型のロボット1の例である。但し、第1ロボット1はこの実施形態に限定されない。第1ロボット1は、用途に対応した、産業用ロボットであればよい。第1ロボット1として、垂直多関節型ロボットの他に、水平多関節型ロボットを採用することができる。また、同軸双腕ロボットを用いれば、1台のロボットで異なる作業を行わせることができる。
【0045】
第1ロボット1は、基台2にロボットアーム10が備えられている。ロボットアーム10は、基台2に旋回軸Sを介して旋回可能に連結された第1リンク11と、第1リンク11に下腕揺動軸Lを介して揺動可能に連結された第2リンク12と、第2リンク12に上腕揺動軸Uを介して揺動可能に連結された第3リンク13と、第3リンク13に手首旋回軸Rを介して旋回可能に連結された第4リンク14と、第4リンク14に手首揺動軸Bを介して揺動可能に連結された第5リンク15とを有している。第5リンク15に、手首回転軸Tを介して回転可能に手首部16が連結されている。上述したように、手首部16によって回転部30が構成されている。なお、第1ロボット1は、各軸につきアクチュエータとしてのサーボモータや回転角検出器などが設けられている(いずれも図示略)。第1ロボット1として、公知の構成の垂直多関節型ロボットを用いることができるため、第1ロボット1についてのこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0046】
上記第1ロボット1のロボットアーム10の先端部分に、エンドエフェクタ20が備えられている。エンドエフェクタ20は、上記したように、容器本体61を把持する容器把持部21と、容器本体61にねじ込まれる蓋部62を把持する蓋把持部25とを備えている。容器把持部21は、第5リンク15に取り付けられている。蓋把持部25は、回転部30に設けられたガイド部31のリニアガイド32の先端部に設けられている。
【0047】
ロボットアーム10によるエンドエフェクタ20の位置制御、エンドエフェクタ20の容器把持部21による容器本体61の把持、蓋把持部25による蓋部62の把持などは、制御装置3によって制御される。制御装置3は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。制御装置3は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで各部を制御する。制御装置3は、蓋把持部25と一体的に動くリニアガイド32の検知部分が所定位置まで上昇したことを第1リミットスイッチ33(図1)で検知し、またリニアガイド32が所定位置まで下降したことを第2リミットスイッチ34(図1)で検知して、手首部16の回転を停止させる。蓋把持部25の上昇位置は、容器60から蓋部62が外れる開放位置に設定されており、回転部30は容器60から蓋部62が外れた状態で停止する。蓋把持部25の下降位置は、容器60に蓋部62を所定位置までねじ込んだ閉鎖位置に設定される。蓋部62の開放位置及び閉鎖位置は、容器60に応じて設定される。
【0048】
そして、図6に示す例は、第1テーブル4の所定位置に置かれた容器60の容器本体61をエンドエフェクタ20の容器把持部21で把持して持ち上げ、他の第2テーブル5まで移動させる間(図の左方から右方に移動させる間)に、エンドエフェクタ20の蓋把持部25で蓋部62を取り外している。すなわち、第1ロボット1によれば、エンドエフェクタ20に備えられた容器把持部21の容器チャック22で容器本体61を把持し、蓋把持部25で蓋部62を把持して第1テーブル4から持ち上げる(二点鎖線で示す状態)。そして、ロボットアーム10によってエンドエフェクタ20を移動させながら蓋把持部25を回転部30で回転させる。これにより、蓋部62はねじ部63に沿って上昇し、蓋把持部25と一体的に移動するリニアガイド32が第1リミットスイッチ33で検知されることによって回転部30が止められる。この状態では、蓋部62が容器本体61から取り外されている(実線で示す状態)。第1ロボット1による容器60の把持と移動及び蓋部62の取り外しは、制御装置3によって制御される。
【0049】
したがって、例えば、蓋部62が閉められた状態の容器60から蓋部62を取り外して容器本体61を第2テーブル5などの所定位置に配置するような作業を繰り返す場合、その作業の一部を移動中の空中で行うことができる。よって、作業のサイクルタイムを短縮することができる。
【0050】
図7に示す例では、容器60を移動させながら蓋部62を取り外した容器本体61を第2テーブル5の所定位置に配置し、その容器本体61の内部に、他の第2ロボット6のロボットアーム10の先端部分に備えられた液体供給部50から所定量の塗料(液体)を注入する例である。液体供給部50は、所定量の塗料が入った容器と、その塗料を排出する開閉弁などを備えた公知の構成にできる。なお、液体供給部50によって容器本体61の内部から所定量の塗料(液体)を抽出することもできる。第2ロボット6は、第1ロボット1と同一の6軸の垂直多関節型ロボットであるため、同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。但し、第2ロボット6はこの実施形態に限定されない。第2ロボット6は、用途に対応した、産業用ロボットであればよい。
【0051】
この例のようにすれば、エンドエフェクタ20で容器60を移動させながら蓋部62を取り外す動作中に、他の第2ロボット6で容器本体61の内部に塗料を注入する液体供給部50を待機位置まで移動させることができ、一連の作業を迅速に行うことができる。特に、複数の塗料を混合して所望の色の塗料を作る場合など、複数の塗料を混合する作業を迅速に行うことができ、作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0052】
第1ロボット1による容器60の把持と移動及び蓋部62の取り外しは、制御装置3によって制御される。また、第2ロボット6による液体供給部50の移動及び塗料の注入動作も、制御装置3によって制御される。
【0053】
また、図7に示す例は第1ロボット1と第2ロボット6の2台構成の例であるが、例えば、1台の同軸双腕ロボットを用いることができる。双腕ロボットの場合、一方のロボットアーム10にエンドエフェクタ20を備えさせれば、他方のロボットアーム10によって液体の注入又は抽出などを行うことができ、1台のロボットによって一連の作業を効率良く行うことができる。
【0054】
また、他の作業として、例えば、蓋部62を取り外した容器本体61をケースなどの内部に配置する作業などがある。この場合には、一方のロボットアーム10に備えさせたエンドエフェクタ20で蓋部62を取り外しながらケースに向けて移動させ、他方のロボットアーム10によって適切なタイミングでケースの扉を開けることができる。よって、上記エンドエフェクタ20によれば、ねじ込み式の蓋部62を開閉する容器60に対する種々の作業時間を短縮することが可能となる。
【0055】
(総括)
以上のように、上記エンドエフェクタ20によれば、1つのエンドエフェクタ20によって容器本体61を把持して蓋部62を開閉することが可能となる。しかも、容器60の移動時に蓋部62を開閉することも可能となり、種々の作業において作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0056】
また、1つのエンドエフェクタ20で容器本体61の把持と蓋部62の把持と開閉ができるので、容器60の蓋部62を開閉する設備の費用を抑えてコスト低減を図ることが可能となる。
【0057】
(その他の変形例)
上記した実施形態では、テーブル4の上で容器60の蓋部62を開放する例と、容器60を移動させる動作中に蓋部62を開放する例とを説明したが、蓋部62を外した容器本体61を所定位置まで移動させる動作中に蓋部62を閉めることもでき、この場合も作業時間の短縮を図ることができる。
【0058】
また、上記した実施形態では、ロボットアーム10に備えさせたエンドエフェクタ20の構成をロボット1の制御装置3によって制御する例を説明したが、エンドエフェクタ20はロボット1の制御装置3以外の構成で制御することもできる。例えば、回転部30に相当する構成をエンドエフェクタ20が備え、その回転部をロボット1の制御装置3以外の構成で回転させて蓋把持部25を回転させるような構成にできる。
【0059】
さらに、上記した実施形態では、容器60を第1テーブル4又は第2テーブル5に直立配置した例を説明したが、容器60が傾斜配置されている場合でもロボットアーム10の動作制御によって傾斜した状態で作業をすることができ、容器60の配置状態は上記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
また、上記した実施形態は一例を示しており、容器60の種類、大きさ、蓋部62の形状、大きさ、ロボット1の種類など、本発明の要旨を損なわない範囲で種々の構成を変更することは可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
1 ロボット(第1ロボット)
3 制御装置
6 第2ロボット
10 ロボットアーム
16 手首部
20 エンドエフェクタ
21 容器把持部
22 容器チャック
23 容器把持部本体
25 蓋把持部
26 蓋把持部本体
27 蓋チャック
30 回転部
31 ガイド部
32 リニアガイド(ガイド)
33 第1リミットスイッチ(検知部)
34 第2リミットスイッチ(検知部)
50 液体供給部
60 容器
61 容器本体
62 蓋部
63 ねじ部
X ねじ込み軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7