IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社加藤製作所の特許一覧

<>
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図1
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図2
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図3
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図4
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図5
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図6
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図7
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図8
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図9
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図10
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図11
  • 特許-ジブ張出し装置及び建設機械 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ジブ張出し装置及び建設機械
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/70 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B66C23/70 C
B66C23/70 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018241286
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020100497
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】丸山 幸治
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-131975(JP,A)
【文献】特開2000-318979(JP,A)
【文献】特開2005-015108(JP,A)
【文献】特開平07-187574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 - 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム上面及びブーム下面を有し、長手方向に沿って延設されるブームであって、起伏可能であるとともに、水平方向に対して俯角になるまで伏せることが可能なブームと、
前記ブームの前端部に連結可能であるとともに、前記ブームの前記前端部への連結位置を中心として前記ブームに対して回動することにより、前記ブームに対して起きる又は伏せるジブであって、前記ブーム下面に前記ブームの前記長手方向に沿って配置可能なジブと、
一端が前記ジブに接続されるテンションロッドと、
一端が前記テンションロッドの他端に接続可能であるとともに、前記ジブの前記連結位置に対して前記ブーム上面に近い側で他端が前記ブームの前記前端部に接続されるブーム側リンクであって、前記ブームの前記前端部への接続位置を中心として前記ブームに対して回動可能であるとともに、前記接続位置を中心とする回動によって、前記ブームの前記前端部に対して前方側から近づく又は前記前方側へ離れるブーム側リンクと、
を具備し、
前記ブーム側リンクは、前記ブームの前記前端部に最も近づいた状態において、前記ブームの起伏方向に対して所定の角度になり、
前記ブームは、前記水平方向に対する前記俯角が前記所定の角度より大きい最大俯角になるまで伏せることが可能であり、
前記水平方向に対する前記ブームの前記俯角が前記所定の角度より大きくなるまで前記ブームが伏せることにより、前記ブーム側リンクは、前記ブームの前記前端部への前記接続位置から垂下する状態になる、
ジブ張出し装置。
【請求項2】
前記ジブが前記ブーム下面に前記長手方向に沿って配置された状態では、前記テンションロッドは、前記ジブに対して前記ブームが位置する側とは反対側に配置され、
前記ジブが前記ブーム下面に前記長手方向に沿って配置され、かつ、前記テンションロッドが前記ブーム側リンクに接続された状態では、前記俯角が前記所定の角度より大きくなるまで前記ブームが伏せ、かつ、前記ブーム側リンクが前記ブームの前記前端部から垂下する状態になることに対応して、前記テンションロッドは、前記ブームが水平な状態に比べて、前記ジブに対して近づく、
請求項1のジブ張出し装置。
【請求項3】
請求項1又は2のジブ張出し装置と、
走行車体と、
前記ブームが起伏可能に連結されるとともに、前記ジブ張出し装置と一緒に前記走行車体に対して旋回可能に前記走行車体に連結される旋回台と、
を具備する建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブ張出し装置、及び、そのジブ張出し装置を備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ジブ張出し装置が搭載されたクレーンが開示されている。このクレーンのジブ張出し装置では、起伏可能なブームとともに、ジブが設けられる。ジブの不使用時には、ジブは、ブーム下面にブームの長手方向に沿って配置される。ジブを使用する際には、ブームの前端部に設けられるブームヘッドにジブを連結し、ブームヘッド以外の部位でのジブのブームに対する連結を解除する。これにより、ジブは、ブームヘッドへの連結位置を中心として、ブームに対して回動可能になる。また、ジブ張出し装置には、一端(前端)がジブに接続されるテンションロッドが、設けられる。ジブの使用時には、テンションロッドの他端(後端)をブームヘッドに接続し、ブームヘッドとジブとの間にテンションロッドを張る。そして、ジブの使用時には、ブームヘッドからジブが垂下する状態に対してジブがブームの前方側へ張出された状態で、ジブをブームヘッドへの連結位置を中心として回動させる。これにより、ジブが、ブームに対して起きる又は伏せる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-116888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1等のジブ張出し装置が設けられる建設機械では、ジブの使用時において、テンションロッドをブームヘッド等のブームの前端部に接続する必要がある。また、ジブの使用後においてジブを格納する際には、ブームの前端部へのテンションロッドの接続を解除する必要がある。ジブ張出し装置では、ブームの前端部へのテンションロッドの接続及び接続解除が容易かつ安全に行われることが、求められている。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ブームの前端部へのテンションロッドの接続及び接続解除が容易かつ安全に行われるジブ張出し装置、及び、そのジブ張出し装置を備える建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様のジブ張出し装置は、ブーム上面及びブーム下面を有し、長手方向に沿って延設されるブームであって、起伏可能であるとともに、水平方向に対して俯角になるまで伏せることが可能なブームと、前記ブームの前端部に連結可能であるとともに、前記ブームの前記前端部への連結位置を中心として前記ブームに対して回動することにより、前記ブームに対して起きる又は伏せるジブであって、前記ブーム下面に前記ブームの前記長手方向に沿って配置可能なジブと、一端が前記ジブに接続されるテンションロッドと、一端が前記テンションロッドの他端に接続可能であるとともに、前記ジブの前記連結位置に対して前記ブーム上面に近い側で他端が前記ブームの前記前端部に接続されるブーム側リンクであって、前記ブームの前記前端部への接続位置を中心として前記ブームに対して回動可能であるとともに、前記接続位置を中心とする回動によって、前記ブームの前記前端部に対して前方側から近づく又は前記前方側へ離れるブーム側リンクと、を備え、前記ブーム側リンクは、前記ブームの前記前端部に最も近づいた状態において、前記ブームの起伏方向に対して所定の角度になり、前記ブームは、前記水平方向に対する前記俯角が前記所定の角度より大きい最大俯角になるまで伏せることが可能であり、前記水平方向に対する前記ブームの前記俯角が前記所定の角度より大きくなるまで前記ブームが伏せることにより、前記ブーム側リンクは、前記ブームの前記前端部への前記接続位置から垂下する状態になる
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テンションロッドのブームヘッドへの接続及び接続解除が容易かつ安全に行われるジブ張出し装置、及び、そのジブ張出し装置を備える建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るクレーンを、ジブがブーム下面に配置された状態で示す概略図である。
図2図2は、図1の状態から、テンションロッドをブーム側リンクに接続し、最起状位置又は最起状位置に近い仰角までブームを起こした状態を示す概略図である。
図3図3は、図2の状態から、ブームを長手方向について伸長させることにより、ブームヘッドからジブが垂下する状態を示す概略図である。
図4図4は、図3の状態から、ブームを伏せた後、ブームを長手方向について最収縮状態まで収縮した状態を示す概略図である。
図5図5は、図4の状態から、ジブの前端部が地面の近傍に位置するまでブームをさらに伏せた状態を示す概略図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るクレーンを、ブームヘッドから垂下する状態に対してジブがブームの前方側に張出された状態で示す概略図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るクレーンにおいて、ブームの前端部、ジブ、テンションロッド、及び、ブーム側リンクの構成を示す斜視図である。
図8図8は、第1の実施形態に係るクレーンにおいて、ブームヘッド及びジブの後端部の構成を示す斜視図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るジブ張出し装置において、水平方向に対する俯角が所定の角度より大きくなるまでブームが伏せた状態を示す概略図である。
図10図10は、図9の状態から、ブーム側リンクのストッパーに対する係合を解除し、ブーム側リンクを回動可能にした状態を示す概略図である。
図11図11は、図9の状態から、テンションロッドをブーム側リンクに接続した状態を示す概略図である。
図12図12は、図11の状態から、ブーム側リンクのストッパーに対する係合を解除し、ブーム側リンクを回動可能にした状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図1乃至図12を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1乃至図6は、第1の実施形態に係る建設機械であるクレーン1を示す。図1乃至図6に示すように、クレーン1は、走行車体2と、走行車体2上に設置される旋回体3と、を備える。旋回体3は、鉛直方向に平行又は略平行な旋回軸を中心として、走行車体2に対して旋回可能である。旋回体3は、旋回台5、運転室6及びジブ張出し装置7を備える。旋回台5、運転室6及びジブ張出し装置7は、走行車体2に対して、一緒に旋回する。運転室6では、作業者によってクレーン1の操作等が行われる。また、走行車体2には、前方側の部位に一対のアウトリガ8Aが設けられ、後方側の部位に一対のアウトリガ8Bが設けられる。
【0011】
ジブ張出し装置7は、ブーム11、ジブ12、一対のテンションロッド13A,13B、及び、一対のブーム側リンク15A,15Bを備える。したがって、本実施形態のクレーン1は、ジブ12が設けられるジブ付きクレーンである。本実施形態では、ジブ12を用いて作業を行う際(ジブ12の使用時)において、後述のように、図1図2図3図4図5及び図6の順に、クレーン1の状態を変化させる。また、ジブ12の使用後にジブ12を格納する際において、図6図5図4図3図2及び図1の順に、クレーンの状態を変化させる。
【0012】
ブーム11は、後端(基端)及び前端(先端)を有し、後端から前端まで長手方向(前後方向)に沿って延設される。旋回台5には、ブーム11の後端部が連結され、ブーム11は、旋回台5に対して起伏可能である。なお、クレーン1には、伸縮可能なブーム起伏シリンダー(図示しない)が設けられる。ブーム起伏シリンダーは、一端がブーム11に連結され、他端が旋回台5に連結される。ブーム起伏シリンダーを伸長又は収縮することにより、ブーム11が旋回台5に対して起きる又は伏せる。
【0013】
図7は、ブーム11の前端部、ジブ12、テンションロッド13A,13B、及び、ブーム側リンク15A,15Bの構成を示す。ブーム11では、長手方向の一方側が前方側(矢印C1側)として規定され、前方側とは反対側が後方側(矢印C2側)として規定される。また、ブーム11では、長手方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)幅方向(矢印W1及び矢印W2で示す方向)、及び、長手方向及び幅方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)厚さ方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)が規定される。ブーム11の厚さ方向は、ブーム11の起伏方向と一致又は略一致する。
【0014】
図7等に示すように、ブーム11の外表面は、ブーム上面21、ブーム下面22、ブーム側面23A,23B及びブーム前端面(ブーム先端面)25を有する。ブーム11では、ブーム上面21、ブーム下面22及びブーム側面23A,23Bのそれぞれは、後端から前端まで長手方向に沿って延設される。また、ブーム前端面25によって、ブーム11の前端が形成され、ブーム前端面25は、ブーム11の前方側を向く。ブーム上面21は、ブーム11の厚さ方向の一方側を向き、ブーム11が起きる側(矢印Y1側)を向く。ブーム下面22は、ブーム11の厚さ方向についてブーム上面21とは反対側を向き、ブーム11が伏せる側(矢印Y2側)を向く。なお、ブーム11が水平な状態、すなわち、ブーム11の長手方向が水平方向と一致する状態では、ブーム上面21は、鉛直上側を向き、ブーム下面22は、鉛直下側を向く。
【0015】
また、ブーム側面23A,23Bのそれぞれは、ブーム11の幅方向について外側を向き、ブーム側面23A,23Bは、ブーム11の幅方向について互いに対して反対側を向く。なお、ある一例では、ブーム側面23Aがブーム11の左方側を向き、ブーム側面23Bがブーム11の右方側を向く。ブーム上面21、ブーム下面22及びブーム前端面25のそれぞれは、ブーム側面23A,23Bの間にブーム11の幅方向に沿って延設される。また、ブーム側面23A,23B及びブーム前端面25のそれぞれは、ブーム上面21とブーム下面22との間にブーム11の厚さ方向(ブーム11の起伏方向)に沿って延設される。ブーム11の前端部(先端部)には、ブームヘッド17が設けられる。ブーム11では、ブームヘッド17によって、ブーム11の前端及びブーム前端面25が形成される。
【0016】
また、本実施形態では、ブーム11は、長手方向について伸縮可能である。そして、ブーム11は、ベースブーム16と、ベースブーム16に対してブーム11の長手方向に沿って移動可能な1つ以上の可動ブーム18と、を備える。本実施形態では、5つ可動ブーム18がブーム11に設けられる。また、本実施形態では、ベースブーム16によって、ブーム11の後端が形成され、最も前方側の可動ブーム18によって、ブーム11の前端及びブームヘッド17が形成される。ブーム11の内部には、ブーム伸縮シリンダー(図示しない)が設けられる。ブーム伸縮シリンダーを伸長又は収縮することにより、可動ブーム18のいずれか1つが、ベースブーム16に対して、ブーム11の長手方向に沿って移動する。これにより、ブーム11においてベースブーム16から前方側への可動ブーム18の突出長さが変化し、ブーム11が長手方向について伸長又は収縮する。
【0017】
ブーム11は、最も起きた最起状位置と最も伏せた最伏状位置との間で、旋回台5に対して起伏可能である。最起状位置のブーム11では、長手方向について前方側(先端側)の部位ほど鉛直上側に位置する。すなわち、最起状位置では、ブーム11の長手方向は、水平方向に対して仰角を形成する。ある一例では、最起状位置において、ブーム11の仰角が、80°以上90°未満のいずれかの角度になる。また、最伏状位置のブーム11では、長手方向について前方側の部位ほど鉛直下側に位置する。すなわち、最伏状位置では、ブーム11の長手方向は、水平方向に対して俯角を形成する。したがって、本実施形態では、ブーム11は、水平方向に対して俯角になるまで、水平な状態を超えて伏せることが可能である。すなわち、本実施形態のブーム11は、いわゆるスラントブームである。クレーン1の走行時等では、ブーム11は、水平方向に対して俯角になるまで伏せた状態になり、例えば、最伏状位置まで伏せた状態になる。
【0018】
また、ブーム11には、ブーム側カップリング26が設けられる。ブーム11では、ブーム側カップリング26は、ブームヘッド17に対して後方側に配置される。本実施形態では、ブーム側カップリング26は、ベースブーム16に設けられ、ブーム11の長手方向についてベースブーム16の中間部に設けられる。
【0019】
ブームヘッド17には、ガイドシーブ31,32、トップシーブ(ブームトップシーブ)33、及び、ルースターシーブ35が取付けられる。ガイドシーブ32は、シャフト(ガイドシーブ用のシャフト)36を介してブームヘッド17(ブーム11の前端部)に取付けられ、トップシーブ33は、シャフト(トップシーブ用のシャフト)37を介してブームヘッド17(ブーム11の前端部)に取付けられる。シャフト36,37のそれぞれは、ブーム11の幅方向に沿って延設される。ガイドシーブ31,32及びシャフト36は、トップシーブ33、ルースターシーブ35及びシャフト37に対して、ブーム上面21に近い側、すなわち、ブーム11が起きる側に配置される。そして、ガイドシーブ32、ルースターシーブ35及びシャフト36は、ガイドシーブ31、トップシーブ33及びシャフト37に対して、前方側に配置される。また、ブーム側面23A,23Bのそれぞれの前端部では、シャフト36,37のそれぞれは、ブーム11の幅方向について外側へ突出する。
【0020】
本実施形態では、旋回台5の主ウィンチ(図示しない)から主巻ロープ41が延出され、主巻ロープ41は、ブーム上面21において後方側から前方側に向かって延設される。そして、主巻ロープ41は、ガイドシーブ31及びトップシーブ33に掛けられ、主フック42は、トップシーブ33から主巻ロープ41を介して吊下げられる。また、本実施形態では、旋回台5の補ウィンチ(図示しない)から補巻ロープ43が延出され、補巻ロープ43は、ブーム上面21において後方側から前方側に向かって延設される。そして、ジブ12が使用されていない状態(ジブ12の不使用時)では、補巻ロープ43は、ガイドシーブ32及びルースターシーブ35に掛けられ、補フック45は、ルースターシーブ35から補巻ロープ43を介して吊下げられる。また、本実施形態では、ブームヘッド17に、フックインブラケット27,28が、取付けられる。フックインブラケット27には、主フック42を格納可能であり、フックインブラケット28には、補フック45を格納可能である。
【0021】
ジブ12は、後端(基端)及び前端(先端)を有し、後端から前端まで長手方向(前後方向)に沿って延設される。ジブ12では、長手方向の一方側が前方側(矢印C3側)として規定され、前方側とは反対側が後方側(矢印C4側)として規定される。また、ジブ12では、長手方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)幅方向(矢印W3及び矢印W4で示す方向)、及び、長手方向及び幅方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)厚さ方向(矢印Y3及び矢印Y4で示す方向)が規定される。クレーン1では、ジブ12の幅方向は、ブーム11の幅方向と一致又は略一致する。
【0022】
ジブ12の外表面は、ジブ上面46、ジブ下面47及びジブ側面48A,48Bを有する。ジブ12では、ジブ上面46、ジブ下面47及びジブ側面48A,48Bのそれぞれは、後端から前端まで長手方向に沿って延設される。ジブ上面46は、ジブ12の厚さ方向の一方側(矢印Y3側)を向き、ジブ下面47は、ジブ12の厚さ方向についてジブ上面46とは反対側(矢印Y4側)を向く。また、ジブ側面48A,48Bのそれぞれは、ジブ12の幅方向について外側を向き、ジブ側面48A,48Bは、ジブ12の幅方向について互いに対して反対側を向く。なお、ある一例では、ジブ側面48Aがジブ12の左方側を向き、ジブ側面48Bがジブ12の右方側を向く。ジブ上面46及びジブ下面47のそれぞれは、ジブ側面48A,48Bの間にジブ12の幅方向に沿って延設される。また、ジブ側面48A,48Bのそれぞれは、ジブ上面46とジブ下面47との間にジブ12の厚さ方向に沿って延設される。
【0023】
本実施形態では、ジブ12は、長手方向について伸縮可能である。ジブ12は、ベースジブ51と、ベースジブ51に対してジブ12の長手方向に沿って移動可能な可動ジブ52と、を備える。本実施形態では、ベースジブ51によってジブ12の後端が形成され、可動ジブ52によってジブ12の前端が形成される。可動ジブ52がベースジブ51に対してジブ12の長手方向に沿って移動することにより、ジブ12においてベースジブ51から前方側への可動ジブ52の突出長さが変化し、ジブ12が長手方向について伸長又は収縮する。また、本実施形態では、ジブ伸縮シリンダー等は設けられず、例えば、手動で可動ジブ52を移動させ、ジブ12を伸長又は収縮させる。なお、本実施形態では、可動ジブ52が1つのみ設けられるが、複数の可動ジブ52が設けられてもよい。この場合、最も前方側の可動ジブ52が、ジブ12の前端を形成する。また、ある一例では、ジブ12に可動ジブ52が設けられず、ジブ12がベースジブ51のみから形成されてもよい。この場合、ジブ12は、長手方向について伸縮不可能である。
【0024】
図8は、ブームヘッド17及びジブ12の後端部(基端部)の構成を示す図である。図7及び図8等に示すように、ジブ12のベースジブ51の後端部には、一対のジブフート53A,53Bが設けられ、ジブフート53A,53Bは、ジブ12の幅方向について、互いに対して離れて配置される。このため、ベースジブ51の後端部は、二股形状に形成され、ジブ12の幅方向についてジブフート53A,53Bの間には、空間が形成される。本実施形態では、ジブフート53A,53Bのそれぞれは、ジブ12の後端を形成する。ジブフート(ジブ側係合部)53A,53Bのそれぞれの後端は、トップシーブ33用のシャフト(ブーム側係合部)37に係合可能である。本実施形態では、ジブフート53Aは、ブーム側面23Aから外側へのシャフト37の突出部分に係合可能であり、ジブフート53Bは、ブーム側面23Bから外側へのシャフト37の突出部分に係合可能である。
【0025】
ジブフート53A,53Bのそれぞれには、フートピン55を取付け可能である。ジブフート53A,53Bのそれぞれでは、取付けられたフートピン55によって、シャフト37との係合が解除されることが、防止される。このため、ジブフート53A,53Bがシャフト37と係合した状態で、ジブフート53A,53Bのそれぞれにフートピン55が取付けられることにより、ジブ12がブームヘッド17(ブーム11の前端部)に連結される。本実施形態では、トップシーブ33用のシャフト37が、ジブ12のブームヘッド17への連結位置となる。ジブ12が連結位置(シャフト37)でブームヘッド17に連結された状態では、ブーム11の長手方向についての伸長又は収縮に連動して、ジブ12が移動する。一方、ジブ12が連結位置(シャフト37)においてブームヘッド17に連結されていない状態では、ブーム11が長手方向についての伸長又は収縮しても、ジブ12は移動しない。また、ジブ12のベースジブ51には、ジブ側カップリング56(図7参照)が設けられる。ジブ側カップリング56は、ブーム側カップリング26に連結可能である。
【0026】
また、ベースジブ51の外表面には、スライドブラケット60が取付けられる。スライドブラケット60は、ベースジブ51に対して、ジブ12の長手方向に沿って移動可能である。また、ジブ12のベースジブ51には、一対のジブ起伏シリンダー61A,61Bが取付けられる。ジブ起伏シリンダー61Aは、ジブ側面48A上に配置され、ジブ起伏シリンダー61Bは、ジブ側面48B上に配置される。ジブ起伏シリンダー61A,61Bのそれぞれは、ジブ12の長手方向に沿って互いに対して並列に延設され、ジブ12の長手方向について伸縮可能である。ジブ起伏シリンダー61A,61Bのそれぞれの一端(前端)は、スライドブラケット60に接続される。また、ジブ起伏シリンダー61A,61Bのそれぞれの他端(後端)は、ベースジブ51に接続される。なお、ベースジブ51へのジブ起伏シリンダー61A,61Bのそれぞれの接続位置は、スライドブラケット60に対してジブ12の後方側に位置し、ジブフート53A,53Bに対してジブ12の前方側に位置する。
【0027】
スライドブラケット60は、ジブ起伏シリンダー61A,61Bが最も収縮した状態において、最も後方側の最後方位置に位置する。そして、スライドブラケット60は、ジブ起伏シリンダー61A,61Bが最も伸長した状態において、最も前方側の最前方位置に位置する。したがって、スライドブラケット60は、最後方位置と最前方位置との間で、ジブ12の長手方向に沿って移動可能である。なお、スライドブラケット60が最後方位置に位置する状態でも、スライドブラケット60は、ジブフート53A,53Bに対してジブ12の前方側に位置する。また、スライドブラケット60が最前方位置に位置する状態でも、スライドブラケット60は、ベースジブ51の外表面上に位置し、スライドブラケット60は、可動ジブ52の外表面上に位置することはない。
【0028】
一対のテンションロッド13A,13Bは、互いに対して並列に延設され、ジブ12に対してジブ上面46が向く側に配置される。また、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、前端(一端)から後端(他端)まで軸方向に沿って延設され、ジブ12の後方側からジブ12の前方側へ延設される。テンションロッド13A,13Bは、ジブ12の幅方向について、互いに対して離れて配置される。テンションロッド13A,13Bのそれぞれの前端は、スライドブラケット60に接続される。したがって、テンションロッド13A,13Bのそれぞれの前端は、スライドブラケット60を介して、ジブ12のベースジブ51に接続される。
【0029】
テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、ロッド本体62及びエクステンション63を備える。テンションロッド13A,13Bのそれぞれでは、エクステンション63によって前端(一端)が形成され、ロッド本体62によって後端(他端)が形成される。また、テンションロッド13A,13Bのそれぞれでは、エクステンション63が、スライドブラケット60に接続される。そして、テンションロッド13A,13Bのそれぞれでは、ロッド本体62は、エクステンション63に対して軸方向に沿って移動可能である。このため、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、軸方向について伸縮可能である。テンションロッド13A,13Bのそれぞれでは、セットピン(図示しない)によって、エクステンション63に対するロッド本体62の軸方向に沿う移動を、規制可能である。セットピンによってエクステンション63に対するロッド本体62の移動が規制されることにより、テンションロッド13A,13Bのそれぞれでは、伸縮が規制され、軸方向についての長さが維持される。本実施形態では、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、セットピンによって、少なくとも所定の基準長さで、軸方向についての寸法を維持可能である。
【0030】
また、ジブ12のベースジブ51には、一対のロッド受け65A,65Bが設けられる。ロッド受け65A,65Bは、ジブ上面46に形成され、ベースジブ51においてジブ上面46が向く側へ突出する。また、ロッド受け65A,65Bは、ジブ側カップリング56に対してジブ12の後方側に配置され、ジブ12の幅方向について互いに対して離れて配置される。ロッド受け65Aは、テンションロッド13Aと係合可能であり、テンションロッド13Aを支持可能である。また、ロッド受け65Bは、テンションロッド13Bと係合可能であり、テンションロッド13Bを支持可能である。
【0031】
ジブ12の可動ジブ52には、トップシーブ(ジブトップシーブ)66が取付けられる。トップシーブ66は、ジブ12の前端部に配置される。ジブ12を用いて作業している状態(ジブ12の使用時)では、補巻ロープ43は、ブーム11の前端部のガイドシーブ32からジブ上面46に延出される。そして、補巻ロープ43は、ジブ上面46において後方側から前方側に向かって延設される。そして、補巻ロープ43は、トップシーブ66に掛けられ、補フック45は、トップシーブ66から補巻ロープ43を介して吊下げられる。
【0032】
一対のブーム側リンク15A,15Bは、ブームヘッド17に取付けられ、互いに対して並列に延設される。また、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、前端(一端)から後端(他端)まで軸方向に沿って延設される。ブーム側リンク15A,15Bは、ジブ12の幅方向について、互いに対して離れて配置される。ブーム側リンク15Aの前端は、テンションロッド13Aの後端に接続可能であり、ブーム側リンク15Bの前端は、テンションロッド13Bの後端に接続可能である。したがって、一対のテンションロッド13A,13Bのそれぞれは、一対のブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に接続可能である。
【0033】
ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれの後端(他端)は、ブームヘッド17(ブーム11の前端部)に接続される。本実施形態では、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれの後端は、ガイドシーブ32用のシャフト(ブーム側接続部)36に接続される。本実施形態では、ブーム側リンク15Aは、ブーム側面23Aから外側へのシャフト36の突出部分に接続され、ブーム側リンク15Bは、ブーム側面23Bから外側へのシャフト36の突出部分に接続される。このため、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれの後端は、ブームヘッド17へのジブ12の連結位置(シャフト37)に対してブーム上面21に近い側で、ブームヘッド17に接続される。すなわち、ブームヘッド17へのブーム側リンク15A,15Bの接続位置(シャフト36)は、ブームヘッド17へのジブ12の連結位置(シャフト37)に対して、ブーム11が起きる側(矢印Y1側)に位置する。また、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ブームヘッド17への接続位置(シャフト36)に対して、ブーム下面22が向く側の領域で、テンションロッド13A,13Bの対応する一方へ接続可能である。
【0034】
ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ブームヘッド17への接続位置(シャフト36)を中心として、ブーム11に対して回動可能である。ブーム側リンク15A,15Bは、ブームヘッド17に対してブーム11の前方側に配置され、ブーム前端面25に対してブーム11の前方側に配置される。ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ブームヘッド17への接続位置を中心として回動することにより、ブームヘッド17に対して、ブーム11の前方側から近づく、又は、ブーム11の前方側へ離れる。したがって、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ブームヘッド17への接続位置を中心として回動することにより、ブーム前端面25に対して開く又は閉じる。
【0035】
また、ブームヘッド17への接続位置を中心とする回動によって、ブーム11の起伏方向(ブーム11の厚さ方向)に対するブーム側リンク15A,15Bのそれぞれの軸方向の角度(鋭角)が、変化する。例えば、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、回動によってブームヘッド17に前方側から近づくことにより、ブーム11の起伏方向に対する角度が小さくなる。一方、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、回動によってブームヘッド17から前方側へ離れることにより、ブーム11の起伏方向に対する角度が大きくなる。
【0036】
また、ブーム11のブームヘッド17には、一対のストッパー67A,67Bが設けられる。ストッパー67A,67Bは、ブーム側リンク15A,15Bのブームヘッド17への接続位置(シャフト36)に対して、ブーム下面22に近い側、すなわち、ブーム11が伏せる側に位置する。ストッパー67Aは、ブームヘッド17に最も近づいた状態のブーム側リンク15Aと係合可能であり、ストッパー67Bは、ブームヘッド17に最も近づいた状態のブーム側リンク15Bと係合可能である。ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ストッパー67A,67Bの対応する一方と係合することより、ブームヘッド17への接続位置を中心とする回動が、規制される。このため、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ストッパー67A,67Bの対応する一方と係合することより、ブームヘッド17(ブーム前端面25)に最も近づいた状態で維持され、ブーム11の起伏方向に対する角度が最小角度で維持される。なお、ストッパー67A,67Bは、ブームヘッド17から取外し可能であってもよい。
【0037】
ここで、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ブームヘッド17(ブーム前端面25)に最も近づいた状態において、ブーム11の起伏方向に対して所定の角度αになる。すなわち、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれの軸方向がブーム11の起伏方向に対して形成する最小角度は、所定の角度αとなる。また、ブーム11が水平な状態を超えて伏せた状態での、ブーム11の長手方向の水平方向に対する俯角βを規定する。ブーム11が最も伏せた最伏状位置では、ブーム11の俯角βは、最大俯角β0となる。本実施形態では、最大俯角β0は、前述の所定の角度αより大きい。
【0038】
次に、ジブ12を用いた作業について説明する。本実施形態では、図1に示すように、クレーン1の走行時等のジブ12の不使用時には、ジブ側カップリング56は、ブーム側カップリング26に連結される。そして、ジブ12の不使用時には、ジブ12は、ブーム11のブーム下面22上にブーム11の長手方向に沿って格納される。したがって、ジブ12は、ブーム下面22にブーム11の長手方向に沿って配置可能である。ブーム下面22上にジブ12が配置された状態では、ジブ12のジブ下面47がブーム下面22と対向する。そして、ジブ12の先端側がブーム11の基端側と一致又は略一致し、かつ、ジブ12の基端側がブーム11の先端側と一致又は略一致する状態で、ジブ12が配置される。
【0039】
ブーム側カップリング26及びジブ側カップリング56等によってブーム下面22上にブーム11が配置された状態では、ブーム11を最も収縮した最収縮状態まで収縮することにより、ジブフート(ジブ側係合部)53A,53Bのそれぞれが、シャフト(ブーム側係合部)37と係合する。また、ジブ12の不使用時には、ジブ起伏シリンダー61A,61Bのそれぞれは、最も収縮した状態になり、スライドブラケット60は、最も後方側の最後方位置に位置する。
【0040】
また、前述のように、テンションロッド13A,13Bは、ジブ12に対してジブ上面46が向く側に配置される。このため、ジブ12がブーム下面22に長手方向に沿って配置された状態では、テンションロッド13A,13Bは、ジブ12に対してブーム11が位置する側とは反対側に、配置される。また、走行時等のジブ12の不使用時には、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、軸方向についての長さが短い状態で格納され、ブーム側リンク15A,15Bに接続不可能である。また、ジブ12の不使用時には、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、ロッド受け65A,65Bの対応する一方と係合し、ロッド受け65A,65Bの対応する一方によって支持される。
【0041】
また、走行時等のジブ12の不使用時には、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ストッパー67A,67Bの対応する一方と係合する。このため、ジブ12の不使用時には、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ブームヘッド17への接続位置(シャフト36)を中心とする回動が規制され、ブームヘッド17(ブーム前端面25)に最も近づいた状態で維持される。また、走行時等では、主フック42は、フックインブラケット27に格納され、補フック45は、フックインブラケット28に格納される。
【0042】
ジブ12を用いて作業を行う際には、図1に示すように、アウトリガ8A,8Bを地面に設置し、走行車体2を安定化させる。また、ブーム11を、水平方向に対して俯角βになるまで伏せた状態にする。この際、ブーム11は、水平方向に対する俯角βが前述の所定の角度αより大きくなる状態まで伏せられることが、好ましい。また、ブーム11を最収縮状態にし、ジブフート53A,53Bのそれぞれがシャフト37に係合した状態にする。この状態で、ジブフート53A,53Bのそれぞれにフートピン55を取付け、ジブ12の後端部(後端)をブームヘッド17(ブーム11の前端部)に連結する。
【0043】
そして、図2等に示すように、テンションロッド13A,13Bのそれぞれを、格納された状態から伸長し、ブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に接続する。そして、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれのストッパー67A,67Bの対応する一方との係合を解除し、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれをブームヘッド17への接続位置(シャフト36)を中心として回動可能にする。なお、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれのストッパー67A,67Bの対応する一方との係合が解除された状態で、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれに、テンションロッド13A,13Bの対応する一方が接続されてもよい。また、前述の図8では、ブーム下面22に配置されたジブ12がブームヘッド17のシャフト37(連結位置)に連結され、かつ、テンションロッド13A,13Bのそれぞれがブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に接続された状態が、示される。
【0044】
ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれに、テンションロッド13A,13Bの対応する一方を接続すると、ジブ起伏シリンダー61A,61Bに油圧を供給するホース等を、ブーム11に取付ける。また、テンションロッド13A,13Bのそれぞれのロッド受け65A,65Bの対応する一方との係合を解除し、テンションロッド13A,13Bを解放する。
【0045】
前述の作業を行った後は、図2に示すように、最起状位置又は最起状位置に近い仰角までブーム11を起こす。そして、図3に示すように、ブーム11を最収縮状態から伸長させる。ブーム11が伸長することにより、ジブ側カップリング56のブーム側カップリング26との連結等が解除される。すなわち、ブームヘッド17への連結位置(シャフト37)以外の部位でのブーム11に対するジブ12の連結が、解除される。そして、ジブ12は、ブームヘッド17(ブーム11の前端部)のシャフト37でのみブーム11に連結された状態になり、ブームヘッド17への連結位置(シャフト37)を中心としてブーム11に対して回動可能になる。また、前述のようにブーム側カップリング26への連結等が解除されることにより、ジブ12はブームヘッド17への連結位置から垂下する又は略垂下する状態になる。ジブ12が垂下する又は略垂下する状態では、ジブ12の長手方向が鉛直方向と一致又は略一致する。そして、ジブ12の前方側が鉛直下側と一致又は略一致し、ジブ12の後方側が鉛直上側と一致又は略一致する。
【0046】
そして、図4に示すように、最起状位置又は最起状位置に近い仰角からブーム11を伏せた後、ブーム11を収縮して最収縮状態にする。この際、仰角が40°程度になるまで、ブーム11を伏せる。そして、図5に示すように、ジブ12の前端部が地面の近傍に位置する状態まで、ブーム11をさらに伏せる。ここで、ジブ12の前端部が地面の近傍に位置するまでブーム11を伏せた状態でも、ブーム11は、水平方向に対して仰角となり、例えば、仰角が32°程度になるまでブーム11が伏せる。また、ジブ12の前端部が地面の近傍に位置するまでブーム11を伏せている際は、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、軸方向について伸縮可能である。このため、ジブ12の前端部が地面の近傍に位置するまでブーム11を伏せている際は、ブーム11の長手方向に対してジブ12の長手方向が成す角度が、変化する。したがって、ジブ12の前端部が地面の近傍に位置するまでブーム11を伏せた状態でも、ジブ12は、ブームヘッド17から垂下する又は略垂下する状態で維持される。
【0047】
また、ジブ12の前端部が地面の近傍に位置する状態では、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、軸方向についての長さが、前述の所定の基準長さ又は所定の基準長さに近い値になる。そして、ジブ12の前端部が地面の近傍に位置する状態で、テンションロッド13A,13Bのそれぞれにセットピンを取付ける。これにより、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、セットピンによって、軸方向についての長さが所定の基準長さで維持される。また、ジブ12の前端部が地面の近傍に位置する状態で、補巻ロープ43をトップシーブ66に掛ける。
【0048】
そして、テンションロッド13A,13Bのそれぞれの軸方向についての長さを所定の基準長さで維持した後、図6に示すように、最起状位置又は最起状位置に近い仰角までブーム11を起こす。この際、テンションロッド13A,13Bのそれぞれが所定の基準長さで維持されているため、ブーム11を起こしても、ブーム11の長手方向に対してジブ12の長手方向が成す角度は、変化しない。このため、最起状位置又は最起状位置に近い仰角までブーム11を起こすことにより、ジブ12は、ブームヘッド17から垂下する状態に対して、ブーム11の前方側に張出された状態になる。そして、ブームヘッド17から垂下する状態に対してジブ12がブーム11の前方側に張出された状態において、ジブ起伏シリンダー61A,61Bを伸長又は収縮し、スライドブラケット60をベースジブ51に対して移動させる。これにより、ブームヘッド17への連結位置(シャフト37)を中心としてジブ12がブーム11に対して回動し、ジブ12がブーム11に対して起きる又は伏せる。
【0049】
本実施形態では、ジブ起伏シリンダー61A,61Bが最も収縮し、スライドブラケット60が最後方位置に位置する状態で、ジブ12がブーム11に対して最も伏せた状態になる。一方、ジブ起伏シリンダー61A,61Bが最も伸長し、スライドブラケット60が最前方位置に位置する状態で、ジブ12がブーム11に対して最も起きた状態になる。なお、ジブ12がブーム11に対して最も伏せた状態でも、ジブ12は、ブームヘッド17から垂下する状態に対して、ブーム11の前方側に張出される。また、ジブ12の起伏方向は、ジブ12の厚さ方向に対して、一致又は略一致する。そして、ジブ上面46が向く側(矢印Y3側)が、ジブ12が起きる側と一致又は略一致し、ジブ下面47が向く側が(矢印Y4側)が、ジブ12が伏せる側と一致又は略一致する。
【0050】
ここで、図6では、状態A1が、ジブ12がブーム11に対して最も伏せた状態を示し、状態A2が、ジブ12がブーム11に対して最も起きた状態を示す。そして、状態A3は、状態A1と状態A2との間の状態を示す。また、図7では、図6と同様に、ブームヘッド17から垂下する状態に対して、ブーム11の前方側にジブ12が張出された状態が、示される。
【0051】
ジブ12を用いた作業が終了すると、前述した手順とほぼ逆の手順を行うことにより、ジブ12を前述のようにブーム11のブーム下面22にブーム11の長手方向に沿って配置し、ジブ12を格納する。この際、ジブフート53A,53Bのそれぞれからフートピン55を取外し、ジブ12のブームヘッド17への連結を解除する。また、ブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に対するテンションロッド13A,13Bのそれぞれの接続を、解除する。また、テンションロッド13A,13Bのそれぞれを、ロッド受け65A,65Bの対応する一方に係合させるとともに、ブーム側リンク15A,15Bに接続不可能な長さになる程度まで軸方向について収縮させる。そして、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれを、ストッパー67A,67Bの対応する一方と係合させる。
【0052】
図9乃至図12は、水平方向に対する俯角βが前述の所定の角度αより大きくなるまでブーム11が伏せた状態を示す。図9及び図10の状態では、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、ブーム側リンク15A,15Bに接続されていない。また、図11及び図12の状態では、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、ブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に接続されている。そして、図9及び図11の状態では、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ストッパー67A,67Bの対応する一方と係合し、ブームヘッド17への接続位置を中心とする回動が規制されている。また、図10及び図12の状態では、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ストッパー67A,67Bの対応する一方に対する係合が解除され、ブームヘッド17への接続位置を中心として回動可能である。また、図9乃至図12のいずれの状態でも、ジブ12は、ブーム下面22上にブーム11の長手方向に沿って配置され、テンションロッド13A,13Bのそれぞれがロッド受け65A,65Bの対応する一方に係合している。
【0053】
図9乃至図12等に示すように、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、ブーム側リンク15A,15Bの対応する一方を介して、ブームヘッド17(ブーム11の前端部)に接続される。そして、テンションロッド13A,13Bのそれぞれのブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に対する接続及び接続解除は、ブーム下面22上にジブ12が配置され、かつ、テンションロッド13A,13Bのそれぞれがロッド受け65A,65Bの対応する一方に支持された状態で、行われる。また、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ブームヘッド17への接続位置(シャフト36)に対して、ブーム下面22が向く側の領域で、テンションロッド13A,13Bの対応する一方へ接続される。なお、テンションロッド13A,13Bの対応する一方をブーム側リンク15A,15Bに対して接続又は接続解除する際には、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ストッパー67A,67Bの対応する一方に対して、係合していてもよく、係合が解除されていてもよい。前述のように、ブーム側リンク15A,15Bの対応する一方を介してテンションロッド13A,13Bのそれぞれがブームヘッド17に接続されるため、テンションロッド13A,13Bのブームヘッド17(ブーム11の前端部)への接続及び接続解除が容易かつ安全に行われる。
【0054】
本実施形態では、ブーム11は、水平方向に対して俯角βになるまで、水平な状態を超えて伏せることが可能である。このため、テンションロッド13A,13Bのそれぞれのブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に対する接続及び接続解除を、水平方向に対して俯角βになるまでブーム11が伏せた状態で、行うことが可能である。水平方向に対して俯角βになるまでブーム11が伏せた状態では、ブーム11が水平な状態に比べて、テンションロッド13A,13Bのそれぞれのブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に対する接続及び接続解除における作業位置が、地面に近くなる。このため、テンションロッド13A,13Bのブームヘッド17(ブーム11の前端部)への接続及び接続解除において、作業性及び安全性が向上する。
【0055】
また、水平方向に対して俯角βになるまでブーム11が伏せることにより、テンションロッド13A,13Bのそれぞれのロッド受け65A,65Bの対応する一方に対する係合及び係合解除における作業位置も、地面に近くなる。このため、テンションロッド13A,13Bのそれぞれのロッド受け65A,65Bの対応する一方に対する係合及び係合解除においても、作業性及び安全性が向上する。また、水平方向に対して俯角βになるまでブーム11が伏せることにより、ジブ起伏シリンダー61A,61Bに油圧を供給するホース等をブーム11に対して取付ける作業等も、容易かつ安全に行われる。
【0056】
また、本実施形態では、フックインブラケット27,28が、ブームヘッド17に取付けられる。このため、水平方向に対して俯角βになるまでブーム11を伏せても、フックインブラケット27に主フック42を格納し、かつ、フックインブラケット28に補フック45を格納することにより、主フック42及び補フック45の地面への接触が、有効に防止される。
【0057】
また、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれがブームヘッド17への接続位置を中心として回動可能な状態では、水平方向に対する俯角βが前述の所定の角度αより大きくなるまでブーム11が伏せることにより、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、自重によって、ブームヘッド17への接続位置(シャフト36)から垂下又は略垂下する状態になる(図10及び図12参照)。この際、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ストッパー67A,67Bの対応する一方と係合した状態に比べて、ブームヘッド17に対してブーム11の前方側へ離れる。そして、ブームヘッド17への接続位置(シャフト36)からブーム側リンク15A,15Bのそれぞれが垂下又は略垂下する状態では、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれのブーム11の起伏方向に対する角度は、ブーム11の俯角βと同一又は略同一になる。ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれが垂下する又は略垂下する状態では、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれの軸方向が鉛直方向と一致又は略一致する。そして、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれは、ブームヘッド17への接続位置から鉛直下側へ、延設される。
【0058】
ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれにテンションロッド13A,13Bの対応する一方が接続された状態では、ブーム側リンク15A,15Bのそれぞれが回動することにより、テンションロッド13A,13Bの対応する一方が移動する。そして、俯角βが所定の角度αより大きくなるまでブーム11が伏せ、かつ、ブーム側リンク15A,15Bの対応する一方がブームヘッド17から垂下する又は略垂下する状態になることに対応して、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、ブーム11が水平な状態に比べて、ジブ12に近づく。すなわち、ブーム11が水平な状態に比べて、俯角βが所定の角度αより大きくなるまでブーム11が伏せた状態では、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、ジブ上面46に対して近づく。
【0059】
テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、特にロッド受け65A,65Bによって支持されていない状態において、撓み易い。ただし、本実施形態では、前述のように、俯角βが所定の角度αより大きくなるまでブーム11を伏せると、ブーム11が水平な状態に比べて、テンションロッド13A,13Bがジブ12に対して近づく。このため、俯角βが所定の角度αより大きくなるまでブーム11を伏せても、テンションロッド13A,13Bのそれぞれの走行車体2に対するクリアランスが確保される。これにより、テンションロッド13A,13Bのそれぞれの走行車体2への干渉が有効に防止される。
【0060】
また、俯角βが所定の角度αより大きくなるまでブーム11を伏せた状態では、ブーム11が水平な状態に比べてテンションロッド13A,13Bがジブ12に対して近づくため、テンションロッド13A,13Bのそれぞれをロッド受け65A,65Bの対応する一方に対して係合させ易い。したがって、テンションロッド13A,13Bのそれぞれのロッド受け65A,65Bの対応する一方に対する係合において、作業性及び安全性が向上する。
【0061】
また、前述のようにブーム11が水平な状態に比べてテンションロッド13A,13Bがジブ12に対して近づくため、俯角βが所定の角度αより大きくなる状態でテンションロッド13A,13Bのそれぞれをブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に接続した後、さらにブーム11を伏せることが可能になる。これにより、テンションロッド13A,13Bのそれぞれをブーム側リンク15A,15Bの対応する一方に接続した状態から、さらに俯角βが大きくなった状態で、ブーム11へのホースの取付け等の作業を行うことが、可能になる。
【0062】
(変形例)
なお、前述の実施形態では、ジブ12にスライドブラケット60が取付けられるが、ある変形例では、スライドブラケット60が設けられず、ジブ12の内部にジブ起伏シリンダーが設けられてもよい。この場合、ジブ起伏シリンダーを伸長又は収縮することにより、ジブ12において可動ジブ52のいずれか1つが長手方向に沿って移動し、ジブ12が長手方向について伸長又は収縮する。そして、テンションロッド13A,13Bのそれぞれの一端(前端)は、ジブ起伏シリンダーの作動に対応して移動する可動ジブ52に、接続される。本変形例では、ブームヘッド17から垂下する状態に対してジブ12がブーム11の前方側に張出された状態において、ジブ起伏シリンダーを伸長又は収縮し、ジブ12を長手方向について伸長又は収縮する。これにより、ジブ12は、ブーム11に対して起きる又は伏せる。この際、例えば、ジブ12を伸長することにより、ジブ12がブーム11に対して起きる。そして、ジブ12を収縮することにより、ジブ12がブーム11に対して伏せる。
【0063】
また、別のある変形例では、一対のジブ起伏シリンダーが設けられ、テンションロッド13A,13Bのそれぞれの一端(前端)は、ジブ起伏シリンダーの対応する一方に接続される。そして、テンションロッド13A,13Bのそれぞれは、ジブ起伏シリンダーの対応する一方を介して、ベースジブ51に接続される。本変形例では、ブームヘッド17から垂下する状態に対してジブ12がブーム11の前方側に張出された状態において、ジブ起伏シリンダーのそれぞれを伸長又は収縮し、ブームヘッド17とジブ12との間に張られる部分の長さを変化させる。これにより、ジブ12は、ブーム11に対して起きる又は伏せる。この際、例えば、ジブ起伏シリンダーのそれぞれを収縮することにより、ジブ12がブーム11に対して起きる。そして、ジブ起伏シリンダーのそれぞれを伸長することにより、ジブ12がブーム11に対して伏せる。
【0064】
また、ある変形例では、走行時等において、ジブ12は、ブーム側面23A,23Bの一方にブーム11の長手方向に配置され、ブーム側面23A,23Bの一方に沿って格納される。この場合、ブーム側面23A,23Bの一方にブーム11の長手方向に配置される状態とブーム下面22にブーム11の長手方向に配置される状態との間でジブ12を移動させる機構が、ブーム11等に設けられる。ジブ12の使用時には、ブーム側面23A,23Bの一方に配置される状態からブーム下面22に配置される状態に、ジブ12を移動させる。そして、前述の実施形態等と同様にしてジブ12を用いて作業を行う。また、ジブ12を格納する際には、前述の実施形態等と同様にして、ブーム下面22にジブ12を配置する。そして、ブーム側面23A,23Bの一方に配置される状態にブーム下面22に配置される状態から、ジブ12を移動させる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0066】
1…クレーン、2…走行車体、3…旋回体、5…旋回台、7…ジブ張出し装置、11…ブーム、12…ジブ、13A,13B…テンションロッド、15A,15B…ブーム側リンク、17…ブームヘッド、21…ブーム上面、22…ブーム下面、α…所定の角度、β…俯角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12