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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】画像処理装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221212BHJP
   G02B 7/34 20210101ALI20221212BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20221212BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
H04N5/232 220
G02B7/34
G03B13/36
G03B15/00 M
H04N5/232 300
G03B15/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018245479
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020108024
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健悟
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-229127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G02B 7/34
G03B 13/36
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続撮像により生成された複数の撮像画像のそれぞれに対する合焦領域に関する第1の評価値を得る第1の評価手段と、
前記複数の撮像画像のそれぞれに対して、該複数の撮像画像に対して得られた前記第1の評価値およびそれらの差分に応じた第2の評価値を与える第2の評価手段と、
前記第2の評価値を用いて、前記複数の撮像画像に対する相対評価を行う第3の評価手段とを有し、
前記第2の評価手段は、
前記第1の評価値が一様な分布を有する場合は、前記撮像画像に対して、該撮像画像の前記第1の評価値と前記複数の撮像画像における前記第1の評価値の統計量との差に応じた前記第2の評価値を与え、
前記第1の評価値が一様な分布を有しない場合は、分布数がより多い前記第1の評価値が得られた前記撮像画像により高い前記第2の評価値を与えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の評価手段は、前記複数の撮像画像のそれぞれに対して生成されたデフォーカスマップ情報を用いて前記合焦領域を特定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の評価値は、前記合焦領域の面積であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の評価値は、前記合焦領域の重心位置であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の評価値は、前記合焦領域が前記撮像画像の端にかかる比率であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2の評価手段は、
前記差分が所定量より大きい場合は、前記第2の評価値を増加または減少させることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
被写体像を撮像する撮像素子と、
請求項1からのいずれか一項に記載の画像処理装置とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
連続撮像により生成された複数の撮像画像のそれぞれに対する合焦領域に関する第1の評価値を得るステップと、
前記複数の撮像画像のそれぞれに対して、該複数の撮像画像に対して得られた前記第1の評価値およびそれらの差分に応じた第2の評価値を与えるステップと、
前記第2の評価値を用いて、前記複数の撮像画像に対する相対評価を行うステップとを有し、
前記第2の評価値を与えるステップにおいて、
前記第1の評価値が一様な分布を有する場合は、前記撮像画像に対して、該撮像画像の前記第1の評価値と前記複数の撮像画像における前記第1の評価値の統計量との差に応じた前記第2の評価値を与え、
前記第1の評価値が一様な分布を有しない場合は、分布数がより多い前記第1の評価値が得られた前記撮像画像により高い前記第2の評価値を与えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項に記載の画像処理方法に従う画像処理を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像画像を評価する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ等の撮像装置には、移動する被写体等を連続撮像(連写)して得られる複数の撮像画像のそれぞれを焦点状態等の画質の観点から評価する処理を行えるものがある。このような処理を行うことで、連写により得られる多数の撮像画像のうち保存すべきものと消去すべきものとを分類することができ、保存する撮像画像データの増大を抑えることができる。
【0003】
特許文献1には、連写により得られた複数の撮像画像のそれぞれから得た焦点評価値を用いて、保存用と消去用の撮像画像を判定する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-320487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示された撮像装置では、複数の撮像画像のうち最も焦点評価値が高い撮像画像を保存用として他の撮像画像を全て消去用とするにすぎず、個々の撮像画像を評価して保存するか否かを判定するわけではない。また、移動する被写体を追って撮像装置が動くと、焦点評価値が変動して、判定精度が低くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、連続撮像により得られた複数の撮像画像のそれぞれを高精度で評価しつつ、複数の撮像画像の相対評価を行えるようにした画像処理装置および撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての画像処理装置は、連続撮像により生成された複数の撮像画像のそれぞれに対する合焦領域に関する第1の評価値を得る第1の評価手段と、複数の撮像画像のそれぞれに対して、該複数の撮像画像に対して得られた第1の評価値およびそれらの差分に応じた第2の評価値を与える第2の評価手段と、第2の評価値を用いて、複数の撮像画像に対する相対評価を行う第3の評価手段とを有し、第2の評価手段は、第1の評価値が一様な分布を有する場合は、撮像画像に対して、該撮像画像の第1の評価値と複数の撮像画像における第1の評価値の統計量との差に応じた第2の評価値を与え、第1の評価値が一様な分布を有しない場合は、分布数がより多い第1の評価値が得られた撮像画像により高い第2の評価値を与えることを特徴とする。
【0008】
なお、上記画像処理装置を含む撮像装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【0009】
また、本発明の他の一側面としての画像処理方法は、撮像により生成された複数の撮像画像のそれぞれに対する合焦領域に関する第1の評価値を得るステップと、複数の撮像画像のそれぞれに対して、該複数の撮像画像に対して得られた第1の評価値およびそれらの差分に応じた第2の評価値を与えるステップと、第2の評価値を用いて、複数の撮像画像に対する相対評価を行うステップとを有し、第2の評価値を与えるステップにおいて、第1の評価値が一様な分布を有する場合は、撮像画像に対して、該撮像画像の第1の評価値と複数の撮像画像における第1の評価値の統計量との差に応じた第2の評価値を与え、第1の評価値が一様な分布を有しない場合は、分布数がより多い第1の評価値が得られた撮像画像により高い第2の評価値を与えることを特徴とする。
【0010】
なお、コンピュータに、上記画像処理方法に従う画像処理を実行させるコンピュータプログラムも、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連続撮像により得られた複数の撮像画像のそれぞれを高精度で評価しつつ、複数の撮像画像の相対評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例であるカメラの構成を示すブロック図。
図2】カメラにおける撮像素子の構成を示す図。
図3】実施例における画像評価処理を示すフローチャート。
図4】実施例における各種画像の例を示す図。
図5】実施例におけるデフォーカスマップ画像を用いた画像評価を説明する図。
図6】実施例における重心ベクトルを説明する図。
図7】実施例における合焦面積の変化を示す図。
図8】実施例において合焦領域の画像端へのかかり率の変化を示す図。
図9】実施例における連写画像評価値を示す表図。
図10】実施例における画像評価処理を示すフローチャート。
図11】実施例における重心評価処理を示すフローチャート。
図12】実施例における合焦面積評価処理を示すフローチャート。
図13】実施例における画像端かかり率評価処理を示すフローチャート。
図14】実施例における被写体出入り評価処理を示すフローチャート。
図15】実施例における各評価値のヒストグラムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例である撮像装置としてのカメラの構成を示している。交換型またはカメラ一体型のレンズユニット100は、不図示のフォーカスレンズ、ズームレンズ、絞り等を含む撮像光学系を有する。撮像センサ(撮像素子)101は、CMOSセンサ等により構成され、撮像光学系により形成された被写体像を撮像(光電変換)する。2像生成部102は、撮像センサ101の複数の画素のそれぞれから出力された対のサブ画素信号を用いて、焦点検出用の対の位相差像信号(以下、2像信号という)を生成する。
【0015】
デフォーカス検出部103は、2像信号に対して光学的な歪み成分を補正する処理を行い、該2像信号に対して相関演算を行ってこれら2像信号間の位相差を検出し、該位相差からデフォーカス量を算出(検出)する処理を行う。さらにデフォーカス検出部103は、算出したデフォーカス量を用いて撮像範囲(撮像画像)内のデフォーカス量の分布を示すデフォーカスマップ画像(デフォーカスマップ情報)を生成し、これを一時的に画像メモリ107に保持する。
【0016】
画像処理装置(第1の評価手段、第2の評価手段および第3の評価手段)としての画像評価部111は、入力されたデフォーカスマップ画像等を用いて撮像画像を評価する処理を行う。この画像評価部111が行う処理の詳細については後述する。
【0017】
撮像信号処理部104は、撮像センサ101から出力された撮像信号に対して各種信号処理を行って映像データを生成し、これを一時的に画像メモリ107に保持する。映像データ処理部105は、映像データに対して、動画や静止画としてのデータフォーマットに変換する処理や、映像データ内の顔や目等の位置を検出する処理や、映像データ内の被写体像の輪郭を抽出して該輪郭のみを含む輪郭画像を生成する処理等を行う。記録部106は、映像データや静止画データを半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
【0018】
CPU109は、上述した各部の動作を制御する。またCPU109は、合焦動作や絞り動作のためにレンズ駆動部110を介してレンズユニット100内のフォーカスレンズや絞りの駆動を制御する。メモリ108は、CPU109が扱うコンピュータプログラムやデータを保持する。
【0019】
次に、撮像センサ101の構成について図2を用いて説明する。図2は、撮像センサ101の全体を示すとともに、その一部を拡大して示している。撮像センサ101には、ベイヤー配列でR、GおよびBの画素がそれぞれ複数配置されている。各画素には、1つのマイクロレンズ201と、2分割された光電変換部(サブ画素)202,203が設けられている。光電変換部202,203には、マイクロレンズ201を介して、撮像光学系の射出瞳のうち互いに異なる領域を通過した光束が入射する。すなわち、瞳分割が行われる。
【0020】
光電変換部202,203はそれぞれ、入射した光束を光電変換してAサブ画素信号とBサブ画素信号を出力する。2像生成部102は、複数の画素における光電変換部202からのAサブ画素信号を合成してA像信号を生成し、光電変換部203からのBサブ画素信号を合成してB像信号を生成する。A像信号とB像信号は、前述した2像信号として、デフォーカス検出部103による位相差検出方式の焦点検出に用いられる。デフォーカス検出部103は、撮像センサ101における複数の画素領域のそれぞれでの焦点検出により得られたデフォーカス量を用いて前述したデフォーカスマップ画像を生成する。
【0021】
また、Aサブ画素信号とBサブ画素信号が加算されることで1つの画素から出力される画素信号が生成され、複数の画素からの画素信号が合成されることで画像生成用の撮像信号が生成される。撮像信号は、前述したように撮像信号処理部104に入力される。
【0022】
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施例のカメラにおいて静止画の連続撮像(連写)時に行われる処理について説明する。コンピュータとしてのCPU109と画像評価部111は、コンピュータプログラムに従って本処理を実行する。
【0023】
ステップS300において、レリーズスイッチのユーザ操作により連写の開始が指示されると、CPU109は、オートフォーカス(AF)動作を行いつつ連写を開始する。
【0024】
連写における1回目の撮像が行われて撮像画像が生成されると、CPU109は、ステップS301においてデフォーカス検出回路103に焦点検出を行わせて撮像画像全体に対するデフォーカスマップ画像を生成させる。また、画像評価部111は、映像データ処理部105に前述した輪郭画像を生成させる。デフォーカスマップ画像と輪郭画像は画像メモリ107に保存される。
【0025】
次にステップS302では、画像評価部111は、デフォーカスマップ画像と輪郭画像から主たる合焦領域を特定し、該合焦領域の面積を算出する。具体的には、画像評価部111は、撮像光学系の絞り値や許容錯乱円径を用いて焦点深度を算出し、デフォーカスマップ画像におけるデフォーカス量が焦点深度内にある領域を抽出する。さらに画像評価部111は、抽出した領域のうち主被写体の領域である合焦領域を輪郭画像から切り出して、合焦領域のみを含む合焦領域画像を生成する。画像評価部111は、合焦領域画像から合焦領域の面積を算出し、これをメモリ108に保存する。
【0026】
このステップS302での処理を図4(a)~(d)を用いて説明する。図4(a)は撮像画像を示し、図4(b)は撮像画像に対応するデフォーカスマップ画像を示している。デフォーカスマップ画像内において模様が同じ領域はデフォーカス量が同じ領域である。このデフォーカスマップ画像では、車とその車が走っている道路の領域(黒塗り領域)が合焦領域であり、手前の地面や遠くの木や家の領域(斜め線やドットの領域)がそれぞれ異なるデフォーカス量を有するデフォーカス領域である。
【0027】
図4(c)は撮像画像から生成された輪郭画像を示している。図4(d)は、デフォーカスマップ画像における車と道路を含む領域のうち主被写体である車の領域である合焦領域を図4(c)の輪郭画像から切り出した合焦領域画像であり、画像評価部111はこの車の領域の面積を算出する。
【0028】
次にステップS303では、画像評価部111は、合焦領域画像における合焦領域の重心位置を算出し、これをメモリ108に保持する。
【0029】
次にステップS304では、画像評価部111は、合焦領域のうち撮像画像の端(以下、画像端という)にかかっている部分の長さの画像端の全長に対する比率(以下、画像端かかり率という)を算出し、これをメモリ108に保持する。
【0030】
図5(a)~(d)を用いて、ステップS303およびS304での処理について説明する。図5(a),(c)は、連写体中の別々の撮像により得られた撮像画像から生成された合焦領域画像を示す。図5(b),(d)はそれぞれ、説明のために図5(a),(c)に示した合焦領域画像を白黒反転した画像を示しており、図中の白い領域が合焦領域501,502である。合焦領域501,502の面積は、デフォーカスマップ画像の解像度の単位でカウントされる。この理由については後述する。また、図5(b)中の×印502が合焦領域の重心位置である。重心位置の座標は、デフォーカスマップ画像の左上の頂点を原点(0,0)として定義される。
【0031】
一方、図5(d)において、合焦領域502のうち右画像端にかかっている部分の長さ503は、該右画像端の全長に対して65%である。この場合、合焦領域の画像端かかり率が65%となる。
【0032】
デフォーカスマップ画像の解像度について説明する。撮像画像の解像度は、20メガピクセル等、非常に高い。しかし、デフォーカスマップ画像の解像度は、撮像画像の解像度以下でもよい。例えば、デフォーカスマップ画像の水平対垂直のアスペクト比が3:2である場合は、デフォーカスマップ画像の解像度は33画素×22画素であればよい。また、上記アスペクト比が4:3や16:9であればそれぞれ、デフォーカスマップ画像の解像度は32画素×24画素や32画素×18画素であればよい。
【0033】
以上説明したステップS302~S304の処理(第1の評価)で得られた合焦領域の面積、重心位置および画像端かかり率は、合焦領域に関する第1の評価値(以下、合焦領域評価値ともいう)として以下の処理で用いられる。
【0034】
次にステップS305において、画像評価部111は、連写における撮像回数Nが2回以上であるか否かを判定する。画像評価部111は、撮像回数Nが1回である場合はステップS301に戻り、2回目の撮像を行うとともに、その撮像より得られた撮像画像に対してステップS302~S304の処理を行う。
【0035】
一方、撮像回数が2回目以上である場合は、画像評価部111はステップS306に進み、前回と今回の撮像によりそれぞれ得られた合焦領域画像における合焦領域評価値の差分(変化量)を算出する。詳しくは後述するが、画像評価部111は、この合焦領域評価値の差分を撮像画像を評価するために用いるため、該合焦領域評価値の差分をメモリ108に保存する。
【0036】
次にステップS307では、CPU109は、レリーズスイッチのユーザ操作が無くなって連写が終了したか否かを判定する。CPU109は、連写が終了していない場合は再度ステップS301に戻って、画像評価部111とともにステップS301~S306の処理を繰り返す。このように、本実施例では、撮像画像を連続して生成する連写を行いながら、各撮像画像の合焦領域評価値を算出し、さらに前後の撮像画像間の合焦領域評価値の差分も算出する。
【0037】
連写が終了すると、画像評価部111はステップS308に進み、連写により得られた全ての撮像画像に対する第3の評価値としての合焦領域評価値の平均値を算出し、これをメモリ108に保存する。なお、本実施例では、合焦領域評価値の平均値を用いるが、合焦領域評価値の平均値以外の統計量(中央値や最頻値等)を用いてもよい。
【0038】
次にステップS309では、画像評価部111は、ここまでで得られた合焦領域評価値とそれらの差分、さらには合焦領域評価値の平均値を用いて各撮像画像に対する評価(評価点付け)を行う。評価点が高いほど、良好な撮像画像であることを示す。
【0039】
さらに次にステップS310では、画像評価部111は、各撮像画像に対する評価点を各撮像画像の付加情報(Exif情報等)として画像メモリ107に記録する。なお、評価点を撮像画像のファイルとは別のファイルに記録するようにしてもよい。そして、CPU109は連写を終了する。
【0040】
次に前述した合焦領域評価値その他の評価値の詳細について具体的に説明する。図6(a)~(d)は、右から左に走行する車を連写して得られた1枚目から4枚目の撮像画像のそれぞれから生成された合焦領域画像を示している。各合焦領域画像において合焦領域は車の形状を有し、白い×印は合焦領域の重心位置である。図6(a)に示す合焦領域の重心位置と図6(b)に示す合焦領域の重心位置との差分を、図6(e)に重心位置の移動量と移動方向を示すベクトル(以下、重心ベクトルという)601として矢印で示している。同様に、図6(b)に示す合焦領域の重心位置と図6(c)に示す合焦領域の重心位置との差分を、図6(f)に重心ベクトル602として矢印で示している。さらに、図6(c)に示す合焦領域の重心位置と図6(d)に示す合焦領域の重心位置との差分を、図6(g)に重心ベクトル603として矢印で示している。
【0041】
図6(g)において、重心ベクトル603が図6(e),(f)に示した重心ベクトル601,602に比べて小さくなっている。これは、図6(c)において合焦領域が画像端にかかり、図6(d)において画像端から大きくはみ出したことで、合焦領域の面積が小さくなり、重心位置の移動量が少なくなったことによるものである。
【0042】
図7は、図6(a)~(g)に示した例における連写枚数(撮像回数)Nに対する合焦領域の面積の変化をグラフにより示している。横軸が連写枚数を、縦軸が合焦領域の面積を示している。グラフの線の傾きが合焦領域の面積の変化を示す。連写1枚目から2枚目においては合焦領域の面積は変化せず、3枚目で少し減少し、4枚目で大きく減少している。
【0043】
図8(a),(b)は、連写枚数Nに対する画像端かかり率をグラフにより示している。横軸が礼者枚数を、縦軸が画像端かかり率を示している。グラフの線の傾きが合焦領域の面積の変化を示す。図8(a)は矩形の合焦領域画像の4つの画像端(辺)のうち上画像端、下画像端および右画像端に対する画像端かかり率を、図8(b)は左画像端に対する画像端かかり率を示している。図8(a)では、連写枚数Nによらず合焦領域が上画像端、下画像端および右画像端にかからないため、画像端かかり率はすべて0であり、その差分も0である。
【0044】
一方、図8(b)では、連写1枚目および2枚目では合焦領域が左画像端にかかっていないために画像端かかり率は0であるが、3枚目で合焦領域が左画像端にかかって画像端かかり率が増加し、4枚目でさらに増加している。このときの画像端かかり率の差分(増加量)は、連写2枚目から3枚目の差分より3枚目から4枚目の方が大きい。
【0045】
図9(a)は、図3のステップS302~S304において算出される連写1枚目の撮像画像(N1)から4枚目の撮像画像(N4)までの撮像画像ごとの合焦領域評価値(面積、重心位置および画像端かかり率)をまとめて示している。図9(b)は、連続する撮像画像間の合焦領域評価値の差分(変化量)をまとめて示している。また、図9(a),(b)の最下段には、図3のステップS308において算出される合焦領域評価値の平均値を示している。
【0046】
画像評価部111は、図9(a),(b)に示した合焦領域評価値に関するデータを用いてステップS309で撮像画像の評価(第2の評価)を行う。図10は、ステップS309で行われる画像評価処理を示すフローチャートである。
【0047】
ステップS1001において画像評価処理を開始した画像評価部111は、ステップS1002にて合焦領域の重心位置(以下、合焦重心位置という)と重心ベクトルを用いた評価処理を行う。この合焦重心位置評価処理を図11のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
ステップS1101において本処理を開始した画像評価部111は、ステップS1102において、連写により得られた全ての撮像画像を合焦重心位置で分類したヒストグラムを作成する。すなわち、合焦重心位置(階級)ごとの撮像画像の枚数(度数)を示すヒストグラムを作成する。
【0049】
図15(a)は、図6(a)~(d)に示した4枚の撮像画像を合焦重心位置で分類したヒストグラムを示す。この例では、図9(b)に示したように、撮像画像N1~N4間の重心ベクトルの大きさが所定値(例えば、3)より大きく、該撮像画像間で合焦重心位置が明確に移動していることが分かるため、これらの合焦重心位置は別々の階級に分類される。この結果、4枚の撮像画像における合焦重心位置が一様に分布するヒストグラムが作成される。一方、重心ベクトルの大きさが所定値より小さい場合は、撮像画像間で合焦重心位置の移動が小さいので、それらの合焦重心位置は同じ階級に分類される。
【0050】
図11における次のステップS1103では、画像評価部111は、ヒストグラムにおいて合焦重心位置が一様な分布(特定の分布)を有するか否かを判定する。画像評価部111は、合焦重心位置が一様な分布を有すると判定した場合はステップS1104に進み、各撮像画像に対して、全ての撮像画像における合焦重心位置の平均値との差に応じた評価点(第2の評価値)を与える。一方、画像評価部111は、合焦重心位置が一様な分布を有していないと判定した場合はステップS1105に進み、合焦重心位置ごとの撮像画像枚数(分布数)がより多い撮像画像に対してより高い評価点を与える。
【0051】
こうして合焦重心位置評価処理を終了した画像評価部111は、図10のS1003に進み、合焦領域の面積(以下、合焦領域面積という)およびそれらの差分による評価処理を行う。この合焦領域面積評価処理を図12のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
ステップS1201において本処理を開始した画像評価部111は、ステップS1202において、連写により得られた全ての撮像画像を合焦領域面積で分類したヒストグラムを作成する。すなわち、合焦領域面積(階級)ごとの撮像画像の枚数(度数)を示すヒストグラムを作成する。図15(b)は、図6(a)~(d)に示した4枚の撮像画像を合焦領域面積で分類したヒストグラムを示す。
【0053】
この例では、図9(b)に示したように、3枚の撮像画像N1~N3の合焦領域面積間の差分が所定量(例えば、30)より少ないために該合焦領域面積は同じ階級に分類される。一方、撮像画像N4の合焦領域面積の撮像画像N3の合焦領域面積に対する差分が所定量より多いために、撮像画像N4の合焦領域面積は、N1~N3の合焦領域面積とは別の階級に分類される。この結果、4枚の撮像画像における合焦領域面積が一様に分布しないヒストグラムが作成される。
【0054】
次に図12のステップS1203において、画像評価部111は、ヒストグラムにおいて合焦領域面積が一様な分布を有するか否かを判定する。画像評価部111は、図15(b)に示したように合焦領域面積が一様な分布を有さないと判定した場合はステップS1205に進み、合焦領域面積ごとの撮像画像枚数がより多い撮像画像に対してより高い評価点(第2の評価値)を与える。一方、画像評価部111は、合焦領域面積が一様な分布を有すると判定した場合はステップS1204に進み、各撮像画像に対して、全ての撮像画像における合焦領域面積の平均値との差に応じた評価点を与える。
【0055】
こうして合焦領域面積評価処理を終了した画像評価部111は、図10のS1004に進み、画像端かかり率およびそれらの差分による評価処理を行う。この画像端かかり率評価処理を図13のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
ステップS1301において本処理を開始した画像評価部111は、ステップS1302において、連写により得られた全ての撮像画像における合焦領域の画像端かかり率のヒストグラムを作成する。すなわち、画像端かかり率(階級)ごとの撮像画像の枚数(度数)を示すヒストグラムを作成する。図15(c),(d)は、図6(a)~(d)に示した4枚の撮像画像を画像端かかり率で分類したヒストグラムを示す。図15(c)は、上、下および右画像端に対する画像端かかり率を示し、図15(d)は、左画像端に対する画像端かかり率を示す。図15(c)では、図9(a)に示したように、4枚の撮像画像(N1~N4)の画像端かかり率は全て0%であり、局所的な分布を有する。
【0057】
一方、図15(d)では、図9(a)に示したように、2枚の撮像画像N1,N2の画像端かかり率は0%であり、撮像画像N3,N4の画像端かかり率はそれぞれ20%と60%である。図9(b)に示したように、0%、20%および60%間の差分が所定量(例えば、5%)より多いため、4枚の撮像画像における合焦領域の画像端かかり率が一様な分布を有するヒストグラムが作成される。
【0058】
次に図13のステップS1303において、画像評価部111は、ヒストグラムにおいて画像端かかり率が一様な分布を有するか否かを判定する。画像評価部111は、「一様な分布」に該当するか否かを、統計的処理によって分散や平均値等を計算することで判別する。画像評価部111は、画像端かかり率が合焦領域面積が一様な分布を有すると判定した場合はステップS1304に進み、各撮像画像に対して、全ての撮像画像における画像端かかり率の平均値との差に応じた評価点(第2の評価値)を与える。
【0059】
一方、画像評価部111は、画像端かかり率が一様な分布を有さないと判定した場合はステップS1305に進み、画像端かかり率ごとの撮像画像枚数がより多い撮像画像に対してより高い評価点を与える。こうして画像端かかり率評価処理を終了した画像評価部111は、図10のS1005に進む。
【0060】
ここで、ステップS1104,S1204およびS1304において合焦領域評価値とその平均値との差に応じて撮像画像に評価点を与える処理について説明する。ここでは、ステップS1104において合焦重心位置とその平均値との差に応じて評価点を与える場合を例として説明する。合焦領域面積および画像端かかり率とその平均値との差に応じて評価点を与える場合も同様である。
【0061】
図9(a)には、合焦重心位置の平均値として(13,12)が示され、撮像画像N1の合焦重心位置として(24,12)が示されている。これらの差分は(11,0)である。同様に、撮像画像N2についての差分は(3,0)、撮像画像N3についての差分は(-4,0)、撮像画像N4についての差分は(-9,0)である。
【0062】
画像評価部111は、合焦重心位置の絶対値と平均値とを比較し、平均値により近い合焦重心位置の絶対値を有する撮像画像に対してより高い評価点を与える。すなわち、評価点が高い順に、N2,N3,N4およびN1となる。具体的な評価点はどのようなものでもよいが、例えば、連写により得られた撮像画像枚数に相当する値を最高評価点とすると、N2に4点、N3に3点、N4に2点、N1に1点を与える。
【0063】
次に、ステップS1105,S1205およびS1305において合焦領域評価値ごとの撮像画像枚数がより多い撮像画像に対してより高い評価点を与える処理について説明する。ここでは、ステップS1205において合焦領域面積ごとの撮像画像枚数がより多い撮像画像に対してより高い評価点を与える場合を例として説明する。合焦重心位置および画像端かかり率ごとの撮像画像枚数がより多い撮像画像に対してより高い評価点を与える場合も同様である。
【0064】
図15(b)に示したように3枚の撮像画像の合焦領域面積が互いに同じであり、これらとは異なる面積に1枚の撮像画像の合焦領域面積がある。このような場合、例えば、連写により得られた撮像画像枚数に相当する値を最高評価点とすると、3枚の撮像画像に対して4点を与え、1枚の撮像画像に対して1点を与える。
【0065】
より多数の撮像画像があり、合焦領域面積の分布が広がる場合等においても、合焦領域面積ごとの撮像画像枚数がより多い撮像画像に対してより高い評価点を与える。
【0066】
図10のステップS1005では、画像評価部111は、被写体出入りによる評価処理を行う。この被写体出入り価処理を図14のフローチャートを用いて説明する。
【0067】
ステップS1401において本処理を開始した画像評価部111は、ステップS1402において、連写により得られた撮像画像間での合焦領域面積の差分が所定量より大きいか否かを判定する。画像評価部111は、差分が所定量以下である(すなわち合焦領域面積の変化が少ない)場合はステップS1404に進み、被写体出入りが小さいと認定して本処理を終了する。
【0068】
一方、画像評価部111は、合焦領域面積の差分が所定量より大きい場合はステップS1403に進み、画像端かかり率が所定率より大きいか否かを判定する。例えば1枚目と2枚目の撮像画像間で合焦領域面積が大きく異なっているが、合焦領域が画像端にかかっていない場合は、画像評価部111はステップS1408に進む。ステップS1408では、画像評価部111は、フォーカスボケによる合焦領域面積の変化であるとみなしてステップS1409に進む。ステップS1409では、画像評価部111は、ステップS1003で算出した合焦領域面積による評価点を2倍に増加させる処理を行う。そして本処理を終了する。
【0069】
またステップS1403において合焦領域が画像端にかかっている場合には、画像評価部111はステップS1406に進み、合焦領域面積の変化が被写体出入りが大きいことによるものであるとみなしてステップS1407に進む。ステップS14017では、画像評価部111は、合焦領域面積による評価点を0倍として減少させ、画像端かかり率による評価点を2倍に増加させる処理を行う。そして本処理を終了する。なお、ここに挙げた評価点の倍率は例に過ぎず、他の倍率を設定してもよい。
【0070】
図10のステップS1006では、画像評価部111は、撮像画像ごとにステップS1002からS1005までの評価の結果である評価点を合算した合計評価点を算出する。さらに画像評価部111は、全ての撮像画像を合計評価点で分類したヒストグラムを作成する。
【0071】
そして次にステップS1007において、画像評価部111は、4枚の撮像画像を合計評価点が高い順に順位付け(ランク付け)する相対評価を行う。具体的には、4枚の撮像画像に対して、上位からA,B,CおよびDとランク付けする。以上により、画像評価部111は画像評価処理を終了する。
【0072】
本実施例によれば、連写により得られた複数の撮像画像のそれぞれを高精度で評価しつつ、複数の撮像画像の相対評価を行うことができる。
【0073】
なお、上記実施例では、合焦領域に関する評価値を用いて画像評価を行う場合について説明したが、他の要素に関する評価値を併せ用いてもよい。例えば、被写体である人物の目が開いている撮像画像に対しては評価点を高くし、目が閉じている撮像画像に対しては評価点を低くしてもよい。このように合焦領域に関する評価値以外の評価値を併せ用いることで、より高精度な画像評価を行うことができる。
【0074】
また上記実施例では、撮像装置に搭載されたコンピュータとしての画像評価部111が画像評価処理としての画像処理を行う場合について説明したが、撮像装置とは別のパーソナルコンピュータが撮像装置から取り込んだ撮像画像に対して画像評価部111と同様な画像処理を行ってもよい。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する部(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0075】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
100 レンズユニット
101 撮像センサ
103 デフォーカス検出部
109 CPU
111 画像評価部
図1
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