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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】液化低温流体の荷役設備
(51)【国際特許分類】
   B67D 9/00 20100101AFI20221212BHJP
【FI】
B67D9/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018248466
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020104942
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田窪 舜
(72)【発明者】
【氏名】村田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】室 嘉浩
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/042004(WO,A1)
【文献】特開2017-019552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0181210(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0067434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化低温流体を水上で搬送する船舶との間において液化低温流体を荷役する液化低温流
体の荷役設備であって、
陸上において液化低温流体を貯留する陸側貯留部からの液化低温流体を前記船舶にて液
化低温流体を貯留する船舶側貯留部へ圧送する圧送手段と、前記陸側貯留部と前記船舶側
貯留部との間において液化低温流体又は液化低温流体が気化した気化流体を通流する流体
通流管とをコンテナ内に有して、前記船舶及び前記陸側貯留部との接続が解除された状態で移動可能な移動体を少なくとも1つ備え、
前記移動体の少なくとも1つは、前記流体通流管の接続端部に着脱自在な着脱機構を一
端に有すると共に、他端を前記船舶側貯留部に連通接続して液化低温流体を通流可能な可
撓性流体通流部を備える親移動体である、液化低温流体の荷役設備。
【請求項2】
前記移動体は複数設けられており、
前記移動体の夫々は、互いの前記流体通流管を連通接続する又は当該連通接続を解除す
る形態で、増減設置可能で且つ交換可能に設けられている請求項1に記載の液化低温流体
の荷役設備。
【請求項3】
複数の前記移動体のうち、少なくとも2つを前記親移動体として備え、
前記親移動体を離間した場所に配設した状態で、前記親移動体の夫々が各別に、異なる
前記船舶との間で液化低温流体の荷役を実行する請求項1又は2に記載の液化低温流体の
荷役設備。
【請求項4】
複数の前記移動体のうち、少なくとも2つを前記親移動体として備え、
前記親移動体の夫々は、前記親移動体以外の前記移動体である子移動体を含めて液化低
温流体の通流状態を制御可能な制御部を備えて構成され、
前記親移動体の前記制御部同士が、互いに通信して主従関係を構築可能に構成されてい
る請求項1~3の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項5】
前記親移動体以外の前記移動体である子移動体を備え、
前記子移動体が有する前記圧送手段による液化低温流体の最大圧送流量が、前記親移動
体が有する前記圧送手段による液化低温流体の最大圧送流量よりも少ないものであり、
少なくとも前記親移動体が有する前記圧送手段が、前記船舶側貯留部への液化低温流体
を荷役する荷役運転において稼働し、前記子移動体が有する前記圧送手段が、前記移動体
の少なくとも前記流体通流管及び前記圧送手段を予冷する予冷運転において稼働する請求
項1~4の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項6】
前記移動体に設けられる前記圧送手段は、インバータ式の流体ポンプである請求項1~
5の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項7】
前記親移動体は、前記流体通流管と前記船舶側貯留部との接続を緊急解除する緊急離脱
装置を有する請求項1~6の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項8】
液化低温流体を蒸発させ昇圧させて低温気体とする加圧蒸発器を前記圧送手段として備
え、
前記加圧蒸発器にて蒸発した低温気体を前記陸側貯留部へ導いて前記陸側貯留部を昇圧
可能に構成されている請求項1~7の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項9】
前記陸側貯留部は、陸上を移動自在なタンクローリーとして構成されている請求項1~
8の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項10】
前記移動体の夫々は、複数の前記陸側貯留部と連通接続可能に構成されている請求項1
~9の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化低温流体を水上で搬送する船舶との間において低温流体を荷役する液化低温流体の荷役設備に関する。
【背景技術】
【0002】
液化低温流体としてのLNGを荷役する荷役設備として、特許文献1に示すように、陸上に設けられるLNG貯留タンクから、圧送ポンプにて圧送されるLNGを液体通流管等を介して、水上の船舶に設けられる船舶側LNG貯留部へ圧送する設備が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-105507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に示されるLNGの荷役設備によるLNGの荷役は、LNG貯蔵タンクが地上に固設されるLNG基地等のように、LNGの荷役設備が常設できる場所において、限定的に実行されていた。
しかしながら、排ガス規制により排ガス中の窒素酸化物や二酸化炭素の低減を図る手段として、天然ガス燃料の需要が高まりつつあるため、LNG基地のない港等の広範な場所において、LNGの荷役が行われることが求められていた。更には、LNG基地のない港等においては、他の船舶の航行等に支障をきたすことがないよう、LNGの荷役を迅速に実行できることが求められており、新たな技術の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液化低温流体の荷役の際の地理的制約や時間的制約に係る自由度を向上し得る液化低温流体の荷役設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための液化低温流体の荷役設備は、
液化低温流体を水上で搬送する船舶との間において液化低温流体を荷役する液化低温流
体の荷役設備であって、その特徴構成は、
陸上において液化低温流体を貯留する陸側貯留部からの液化低温流体を前記船舶にて液
化低温流体を貯留する船舶側貯留部へ圧送する圧送手段と、前記陸側貯留部と前記船舶側
貯留部との間において液化低温流体又は液化低温流体が気化した気化流体を通流する流体
通流管とをコンテナ内に有して、前記船舶及び前記陸側貯留部との接続が解除された状態で移動可能な移動体を少なくとも1つ備え、
前記移動体の少なくとも1つは、前記流体通流管の接続端部に着脱自在な着脱機構を一
端に有すると共に、他端を前記船舶側貯留部に連通接続して液化低温流体を通流可能な可
撓性流体通流部を備える親移動体である点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、例えば、LNG基地がない港に停泊している船舶に対し、親移動体、又は親移動体とそれ以外の移動体を移動させ近接して配置すると共に、例えば液化低温流体を貯留するタンクローリーから成る陸側貯留部をその近傍に配備し、移動体と陸側貯留部とを連通接続することで、陸側貯留部と船舶側貯留部との間での液化低温流体の荷役を実行することができる。
即ち、上記特徴構成によれば、LNG基地以外の港等においても、船舶に対する液化低温流体の荷役を実行することができるから、荷役における地理的制約に係る自由度を向上させることができる。更に、複数の移動体から低温液化流体を荷役できるから、移動体の夫々が有する複数の圧送手段を働かせることにより、液化低温流体の荷役速度を向上させることができ、短時間で荷役を行うことができる。
以上より、液化低温流体の荷役の際の地理的制約や時間的制約に係る自由度を向上し得る液化低温流体の荷役設備を実現できる。
【0008】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記移動体は複数設けられており、
前記移動体の夫々は、互いの前記流体通流管を連通接続する又は当該連通接続を解除する形態で、増減設置可能で且つ交換可能に設けられている点にある。
【0009】
上記特徴構成の如く、移動体の夫々が、互いの前記流体通流管を連通接続する又は当該連通接続を解除する形態で、増減設置可能に構成されていることで、例えば、液化低温流体の荷役量や許容される荷役時間に応じて、移動体の数を増減することができ、状況に応じた荷役処理を実行することができる。
更に、移動体の夫々は、圧送手段を備えて構成されているが、当該圧送手段は、液化低温流体が気化することにより発生する気体を噛み込む等の原因により故障する場合がある。このような場合であっても、上記特徴構成によれば、移動体の夫々が交換可能に構成されているから、例えば、移動体の筐体をコンテナ等から構成することで、迅速に移動交換して、荷役処理を滞らせることなく進めることができる。
【0010】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
複数の前記移動体のうち、少なくとも2つを前記親移動体として備え、
前記親移動体を離間した場所に配設した状態で、前記親移動体の夫々が各別に、異なる前記船舶との間で液化低温流体の荷役を実行する点にある。
【0011】
上記特徴構成の如く、2つ以上の複数の親移動体を備えることで、液化低温流体の荷役を求める複数の船舶が同時に港に入港する場合等であっても、複数の親移動体を港において瞬時に離間した状態で配設することができ、更に離間した夫々の親移動体から同時に液化低温流体の荷役を実行することができる。
結果、従来の荷役設備に比して、より迅速でより自由度の高い荷役を実現することができる。
【0012】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
複数の前記移動体のうち、少なくとも2つを前記親移動体として備え、
前記親移動体の夫々は、前記親移動体以外の前記移動体である子移動体を含めて液化低温流体の通流状態を制御可能な制御部を備えて構成され、
前記親移動体の前記制御部同士が、互いに通信して主従関係を構築可能に構成されている点にある。
【0013】
これまで説明してきたような荷役設備においては、親移動体及び親移動体以外の子移動体の流体通流管における流体の通流状態を制御するため、少なくとも親移動体に制御部を備える構成をとることが通常である。
このような構成において、親移動体が複数設けられる場合、夫々の親移動体の制御部からの制御指令が干渉して適切な通流状態が維持できない虞がある。
上記特徴構成によれば、親移動体の制御部同士が、互いに通信して主従関係を構築可能に構成されているから、制御部の制御指令が干渉することを防止して、良好な流体の通流状態を実現できる。
【0014】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記親移動体以外の前記移動体である子移動体を備え、
前記子移動体が有する前記圧送手段による液化低温流体の最大圧送流量が、前記親移動体が有する前記圧送手段による液化低温流体の最大圧送流量よりも少ないものであり、
少なくとも前記親移動体が有する前記圧送手段が、前記船舶側貯留部への液化低温流体を荷役する荷役運転において稼働し、前記子移動体が有する前記圧送手段が、前記移動体の少なくとも前記流体通流管及び前記圧送手段を予冷する予冷運転において稼働する点にある。
【0015】
流体通流管及び圧送手段を予冷する予冷運転を実行する場合、金属部分の急激な冷却に伴う熱収縮による損傷を避けるため、比較的小流量の低温液化流体を通流させることが好ましい。しかしながら、圧送手段としてのポンプの吐出量の調整範囲には制限があり、特に、時短が求められる荷役の用に供する大流量ポンプにあっては、比較的多い最低流量までしか対応していないことが多い。
そこで、子移動体には比較的流量の少ない圧送手段を備え、予冷運転においては、当該子移動体に設けられる圧送手段を用いることで、比較的小流量の液化低温流体を通流して徐々に予冷を進めることで、金属部分の熱損傷を抑制することができる。更には、液化低温流体の船舶への荷役については、比較的大流量の親移動体の圧送手段を用いることで、迅速な荷役を実現できる。尚、荷役運転においては、親移動体の圧送手段に加え、子移動体の圧送手段も稼動させて荷役を行うことで、より一層迅速な荷役を実現することができる。
【0016】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記移動体に設けられる前記圧送手段は、インバータ式の流体ポンプである点にある。尚、圧送手段は、一般に使用される流体ポンプでも本発明の目的を良好に達成することができる。
【0017】
インバータ式の流体ポンプを用いることで、液化低温流体の流量を自在にコントロールすることができると共に、吐出側から吸入側へ液化低温流体を流すことなく、より自由度の高い液化低温流体の荷役を実現することができる。
【0018】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記親移動体は、前記流体通流管と前記船舶側貯留部との接続を緊急解除する緊急離脱装置を有する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、例えば、急な突風等に伴い船舶が移動する場合であっても、緊急離脱装置にて、船舶と荷役設備とを分離することができるから、より安全性を向上することができる。
【0020】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
液化低温流体を蒸発させ昇圧させて低温気体とする加圧蒸発器を前記圧送手段として備え、
前記加圧蒸発器にて蒸発した低温気体を前記陸側貯留部へ導いて前記陸側貯留部を昇圧可能に構成されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、加圧蒸発器により、液化低温流体を蒸発させて、蒸発した低温気体を陸側貯留部へ導いて陸側貯留部を昇圧することができるから、例えば、陸側貯留部からの液化低温流体の吐出圧を、船舶側貯留部の吐出圧よりも上昇させて、液化低温流体を荷役におけるポンプを省略させることができ、より一層、荷役の自由度の向上を図り得る荷役設備を実現できる。
【0022】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記陸側貯留部は、陸上を移動自在なタンクローリーとして構成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成の如く、陸側貯留部を陸上を移動自在なタンクローリーとして構成することで、移動体と共に陸側貯留部を、船舶の近傍の所望の位置へ移動させることができるので、場所に制約されない状態での液化低温流体の荷役を、より効果的に実行できる。
【0024】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記移動体の夫々は、複数の前記陸側貯留部と連通接続可能に構成されている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、一の移動体に対して複数の陸側貯留部を連通接続できるから、例えば、移動体に十分に大きい圧送手段を備えることで、一の移動体から荷役できる単位時間当たりの液化低温流体の流量の上限を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る液化低温流体の荷役設備の概略構成図
図2】空気パージ工程を実行している場合の流れを示す図
図3】気体導入工程を実行している場合の流れを示す図
図4】液導入工程を実行している場合の流れを示す図
図5】液抜き工程を実行している場合の流れを示す図
図6】パージ工程を実行している場合の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る液化低温流体(例えば、液化天然ガス:以下LNGと略称、LPGであっても良い)の荷役設備100は、液化低温流体の荷役の際の地理的制約や時間的制約に係る自由度を向上し得るものに関する。
以下、当該液化低温流体の荷役設備100を、図1~6に基づいて説明する。
【0028】
当該実施形態に係る液化低温流体の荷役設備100は、図1に示すように、液化低温流体を水上で搬送するLNGタンカー等の船舶Sとの間において低温液化流体を荷役する荷役設備であり、特に、陸上において液化低温流体を貯留する第1、2陸側貯留部LT1、LT2からの液化低温流体を船舶Sにて液化低温流体を貯留する船舶側貯留部STへ圧送するポンプ(圧送手段の一例)と、陸側貯留部と船舶側貯留部STとの間において液化低温流体又は液化低温流体が気化した気化流体(例えば、天然ガス:以下NTと略称)を通流する流体通流管とを有して、船舶S及び陸側貯留部との接続が解除された状態で移動可能な移動体を少なくとも1つ備えている。
尚、本明細書においては、陸側貯留部を上流側とし船舶側貯留部STを下流側として説明をする場合がある。
【0029】
ここで、移動体としては、流体通流管の接続端部に着脱自在な第1クイックカプラQC1(着脱機構の一例)を一端に有すると共に他端の第2クイックカプラQC2(着脱機構の一例)を船舶側貯留部STに連通接続して液化低温流体を通流可能なホース(可撓性流体通流部の一例)Hを備える親移動体PM(図1で一点鎖線内の構成)を少なくとも一つ備える。図1に示す親移動体PMは、流体通流管において船舶Sと荷役設備100との間の流体の通流を遮断する緊急遮断弁EVが備えられると共に、船舶Sの急な移動の際に船舶Sと荷役設備100とを切り離す緊急離脱装置EWがホースHに対して備えられている。更に、親移動体PMとしては、荷役設備100の全体の流体の通流状態を制御するべく、ポンプP1、P2、及び後述する各種弁体の開閉状態を制御する制御装置C(制御部の一例)が設けられている。尚、着脱機構としての第1クイックカプラQC1及び第2クイックカプラQC2は、フランジ等の構成を代用しても構わない。
また、図1に示す荷役設備100では、一の親移動体PMに加え、一の子移動体CMが設けられており、図示は省略するが、親移動体PM及び子移動体CMは、双方ともコンテナの内部に各構成機器を内設する形態で、移動可能に構成されている。また、夫々の移動体にはコンテナ内での各種機器の移動及び設置や陸側貯留部と移動体との間の流体通流管の移動及び設置等を担うハンドリングクレーンが設けられると共に、メタン等のガス濃度を検知するガス検知器が設けられている。
加えて、親移動体PMには、流体通流配管をパージするためのパージガス(例えば、窒素やメタン)を貯留するためのガス貯留部と、移動体に設けられる各種機器の駆動に用いる電力を発電する発電機と、荷役の際に発生した余剰の天然ガス等の低温流体を放散したり流体通流管の内圧が許容値を超えた場合に低温流体を放散したりする放散塔と、各種弁体を駆動するための圧力を蓄圧するアキュムレーターとが備えられている。ちなみに、上述した親移動体PMのみが備える各種構成については、子移動体CMの夫々にも備える構成を採用しても構わない。
【0030】
第1陸側貯留部LT1は、流入出端としての第5フランジF5と第10開閉弁V10とを有して液体を流入出する第1液体流入出部LE1を備えると共に、流入出端としての第6フランジF6と第11開閉弁V11とを有して気体を流入出する第1気体流入出部GE1を備える。
親移動体PMは、一端にて第5フランジF5を介して第1液体流入出部LE1と連通接続すると共に他端に第6開閉弁V6を有する第1液体通流路LF1と、一端に第6フランジF6を介して第1気体流入出部GE1と連通接続すると共に他端に第7開閉弁V7を有する第1気体通流路GF1とを備え、両者は、他端側にて接続して第1混合流路MF1に連通接続される。第1混合流路MF1には、上流側から、液化低温流体を上流側から下流側へ圧送すると共にその回転数を調整可能なインバータ式の第1ポンプP1、第2混合流路MF2を通流する流体の流量を調整する第1流量調整弁RV1、流体の下流側から上流側の逆流を禁止する第1逆止弁CV1が記載の順に設けられており、その下流端が、他の移動体からの流体が通流する合流流路JTLに接続されている。尚、第1混合流路MF1には、第1逆止弁CV1をバイパスする第1バイパス流路MF1aが設けられており、当該第1バイパス流路MF1aには、第4開閉弁V4が設けられている。
【0031】
第2陸側貯留部LT2及び子移動体CM(図1で二点鎖線内の構成)とは、液化低温流体及び低温気体が通流する流路に関し、上述した第1陸側貯留部LT1及び親移動体PMと同一の構成を有している。
即ち、第2陸側貯留部LT2は、流入出端としての第7フランジF7と第12開閉弁V12とを有して液体を流入出する第2液体流入出部LE2を備えると共に、流入出端としての第8フランジF8と第13開閉弁V13とを有して気体を流入出する第2気体流入出部GE2を備える。
子移動体CMは、一端にて第7フランジF7を介して第2液体流入出部LE2と連通接続すると共に他端に第8開閉弁V8を有する第2液体通流路LF2と、一端に第8フランジF8を介して第2気体流入出部GE2と連通接続すると共に他端に第9開閉弁V9を有する第2気体通流路GF2とを備え、両者は、他端側にて接続して第2混合流路MF2に連通接続される。第2混合流路MF2には、上流側から、液化低温流体を上流側から下流側へ圧送すると共にその回転数を調整可能なインバータ式の第2ポンプP2、第2混合流路MF2を通流する流体の流量を調整する第2流量調整弁RV2、流体の下流側から上流側の逆流を禁止する第2逆止弁CV2が記載の順に設けられており、その下流端が、他の移動体からの流体が通流する合流流路JTLに接続されている。尚、第2混合流路MF2には、第2逆止弁CV2をバイパスする第2バイパス流路MF2aが設けられており、当該第2バイパス流路MF2aには、第5開閉弁V5が設けられている。
【0032】
合流流路JTLは、複数の移動体に対して共通して形成される流路であり、移動体の間ではフランジを介して流路を連通接続する構成を採用しており、親移動体PMと子移動体CMとの間は、第1フランジF1を介して連通接続されている。当該合流流路JTLの上流側には、第3フランジF3が設けられ他の移動体の合流流路JTLが連通接続可能となっており、合流流路JTLの下流側には、緊急遮断弁EVが設けられると共にその下流端にホースHと迅速な接続が可能な第1クイックカプラQC1が設けられている。
ホースHには、緊急離脱装置EWが設けられ、その下流端が第2クイックカプラQC2を介して、船舶側流路SLに接続されている。
【0033】
船舶側流路SLは、その上流端に第3開閉弁V3が設けられると共に、その下流側に、主に天然ガス等の低温気体を通流する船舶側気体通流路SLaと、主にLNG等の液化低温流体を通流する船舶側液体通流路SLbとがパラレルに設けられている。両者の下流端は、船舶側貯留部STに連通接続されており、船舶側気体通流路SLaには第1開閉弁V1が、船舶側液体通流路SLbには第2開閉弁V2が夫々設けられている。尚、場合によっては、船舶側気体通流路SLaは、液化低温流体を通流するときもある。
【0034】
これまで説明してきた流体通流管には、内部をパージした際等に気体を外部へ放散する放散弁が複数設けられている。
説明を追加すると、合流流路JTLのうち、緊急遮断弁EVの下流側に第1放散弁HV1が上流側に第2放散弁HV2が夫々設けられている。更に、第1液体通流路LF1の第6開閉弁V6の上流側に第3放散弁HV3が、第2液体通流路LF2の第8開閉弁V8の上流側に第5放散弁HV5が、第1気体通流路GF1の第7開閉弁V7の上流側に第4放散弁HV4が、第2気体通流路GF2の第9開閉弁V9の上流側に第6放散弁HV6が、夫々設けられている。
【0035】
更に、流体通流管の内部に滞留した液化低温流体又は低温気体を、パージするパージガスを通流するパージガス通流路が設けられている。
具体的には、パージガス貯留部PTに連通接続される主パージガス通流路PL0、主パージガス通流路PL0に連通接続されると共に合流流路JTLで緊急遮断弁EVと第1放散弁EV1との間にその一端が接続される第1パージガス通流路PL1、一端が第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に他端が第1液体通流路LF1に連通接続される第2パージガス通流路PL2、一端が第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に他端が第1気体通流路GF1に連通接続される第3パージガス通流路PL3、一端が第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に他端が第2液体通流路LF2に連通接続される第4パージガス通流路PL4、一端が第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に他端が第2気体通流路GF2に連通接続される第5パージガス通流路PL5が設けられている。
また、主パージガス通流路PL0には第1パージ弁PV1が、第1パージガス通流路PL1には第2パージ弁PV2が、第2パージガス通流路PL2には第3パージ弁PV3が、第3パージガス通流路PL3には第4パージ弁PV4が、第4パージガス通流路PL4には第5パージ弁PV5が、第5パージガス通流路PL5には第6パージ弁PV6が、夫々設けられており、特に、第2パージ弁PV2は第1パージガス通流路PL1と合流流路JTLの接続部位の近傍に設けられている。
当該第1パージガス通流路PL1についても、合流流路JTLと同様に、複数の移動体に対して共通して形成される流路であり、移動体の間ではフランジを介して流路を連通接続する構成が採用されている。親移動体PMと子移動体CMとの間は、第2フランジF2を介して連通接続されており、他端の第4フランジF4には、他の移動体の第1パージガス通流路PL1が連通接続可能となっている。
このように、フランジを介する他の移動体の流体通流管と連通接続又は当該連通接続を解除する形で、移動体を増減設置可能で且つ交換可能となっている。
【0036】
尚、流体通流管は可撓性を有する配管から構成しても構わない。特に、複数の移動体の間の部分、及び陸側貯留部と移動体の間の部分を、可撓性を有する配管から構成することで、複数の移動体の間の位置決めの自由度を向上できる。
【0037】
さて、これまで説明してきた低温液化流体の荷役設備100は、以下の各工程を順次実行することにより、低温液化流体の荷役を行う。尚、図2~6において、太破線は気体の流れを示し、太実線は液体の流れを示すものとする。
荷役設備100は、図1に示す接続状態が維持された状態で、接続段階で流体通流管の内部に存在する空気をパージするパージ工程を実行する。当該パージ工程では、図2に示すように、パージガス貯留部PTから吹出されたパージガスが、すべてのパージガス通流路を介して、第1液体通流路LF1、第2液体通流路LF2、第1気体通流路GF1、第2気体通流路GF2及びホースHに導かれ、第2放散弁HV2を除いたすべての放散弁(第1放散弁HV1、第3放散弁HV3、第4放散弁HV4、第5放散弁HV5、第6放散弁HV6)を介して、空気を含むパージガスを大気へ放散する。当該パージ工程では、第2放散弁HV2を除くすべての放散弁及びすべてのパージ弁が開放状態となり、他の弁体は閉止状態となる。
【0038】
次に、天然ガス等の低温気体が、流体通流管に対して導入する気体導入工程が実行される。当該気体導入工程では、図3に示すように、船舶側貯留部STから低温気体を、船舶側気体通流路SLa、船舶側流路SL、ホースH、合流流路JTL、第1バイパス流路MF1a、第2バイパス流路MF2a、第1混合流路MF1、第2混合流路MF2、第1気体通流路GF1、第2気体通流路GF2、第1気体流入出部GE1及び第2気体流入出部GE2に導入する。即ち、第1開閉弁V1、第3開閉弁V3、緊急遮断弁EV、第4開閉弁V4、第5開閉弁V5、第1流量調整弁RV1、第2流量調整弁RV2、第7開閉弁V7、第9開閉弁V9、第11開閉弁V11、第13開閉弁V13が開放状態となり、それ以外の弁体が閉止状態となる。尚、第1ポンプP1及び第2ポンプP2が逆流ができないポンプである場合、図示しないバイパス流路を介してポンプをバイパスする形態で、低温気体を導入することになる。
尚、詳細な説明は割愛するが、第1、2陸側貯留部LT1、LT2の内部圧力が船舶側貯留部STの内部圧力よりも高い場合、低温気体が、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から船舶側貯留部STへ向かって導入される気体導入運転が実行される。
【0039】
その後、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から液化低温流体を吐出して船舶側貯留部STにて受け入れる液体導入工程が実行される。当該液体導入工程では、図4に示すように、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から液化低温流体を、第1液体流入出部LE1、第2液体流入出部LE2、第1液体通流路LF1、第2液体通流路LF2、第1混合流路MF1、第2混合流路MF2、合流流路JTL、ホースH、船舶側流路SL及び船舶側液体通流路SLbを介して、液化低温流体が船舶側貯留部STへ導入される。即ち、第10開閉弁V10、第12開閉弁V12、第6開閉弁V6、第8開閉弁V8、第1流量調整弁RV1、第2流量調整弁RV2、第1逆止弁CV1、第2逆止弁CV2、緊急遮断弁EV、第3開閉弁V3、第2開閉弁V2が開放状態となり、それ以外の弁体が閉止状態となる。
当該運転において、必要圧力を第1ポンプP1及び第2ポンプP2にて加圧する形態で、液化低温流体を圧送する。
【0040】
液化低温流体の船舶側貯留部STへの導入が完了すると、流体通流管の内部に存在する液化低温流体の液抜きを行う液抜き工程が実行される。当該液抜き工程では、図5に示すように、船舶側貯留部STに貯留される低温気体により流体通流管の内部の低温液化流体を圧送して第1、2陸側貯留部LT1、LT2へ圧送する形で、液抜きが実行される。即ち、船舶側貯留部STの低温気体が、船舶側気体通流路SLa、船舶側流路SL、ホースH、合流流路JTL、第1バイパス流路MF1a、第2バイパス流路MF2a、第1混合流路MF1、第2混合流路MF2、第1液体通流路LF1、第2液体通流路LF2、第1液体流入出部LE1及び第2液体流入出部LE2に導入する。即ち、第1開閉弁V1、第3開閉弁V3、緊急遮断弁EV、第4開閉弁V4、第5開閉弁V5、第1流量調整弁RV1、第2流量調整弁RV2、第6開閉弁V6、第8開閉弁V8、第10開閉弁V10、第12開閉弁V12が開放状態となり、それ以外の弁体が閉止状態となる。尚、第1ポンプP1及び第2ポンプP2が逆流ができないポンプである場合、図示しないバイパス流路を介してポンプをバイパスする形態で、低温気体を導入することになる。
【0041】
最後に、図6に示すように、パージガス貯留部PTに貯留されるパージガスを用いて、流体通流管の内部をパージするパージ工程を実行する。当該パージ工程では、第1、2陸側貯留部LT1、LT2及び船舶側貯留部STからの液体及び気体の流出を禁止するべく、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第10開閉弁V10、第11開閉弁V11、第12開閉弁V12、第13開閉弁V13を閉止状態とし、その他の弁体を開放状態として、流体通流管の内部にパージガスを通流させて、すべての放散弁から気体を放散する処理を実行する。
【0042】
〔別実施形態〕
(1)船舶との間で荷役される液化低温流体を貯留する貯留部として、上記実施形態では、タンクローリーを例示した。しかしながら、当該貯留部は、陸地に設けられる固定式の貯留タンクの他、水上に配置されたタンカーであっても構わない。
【0043】
(2)更に、図示は省略するが、移動体の夫々には、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から圧送されてきた液化低温流体を空気との熱交換により加熱する加熱蒸発器を第1ポンプP1及び第2ポンプP2に替えて圧送手段として備える共に、当該蒸発により昇圧した天然ガス等の低温気体を第1、2陸側貯留部LT1、LT2へ返送する返送路を備え、第1、2陸側貯留部LT1、LT2からの圧力を所望の圧力へ制御する構成を採用することができる。
尚、当該加熱蒸発器にて生成された天然ガス等の低温流体は、燃料として親移動体PMに備えられる発電機に供給することができる。
【0044】
(3)上記実施形態において、移動体の夫々は、単一の陸側貯留部に連通接続される構成を示したが、一の移動体に対して、複数の陸側貯留部を連通接続する構成を採用することもできる。
【0045】
(4)子移動体CMが有する第2ポンプP2による液化低温流体の最大圧送流量は、親移動体PMが有する第1ポンプP1による液化低温流体の最大圧送流量よりも少ないものを採用しても構わない。そして、親移動体PMの第1ポンプP1を船舶側貯留部STへの液化低温流体を荷役する荷役運転に稼働し、子移動体CMの第2ポンプP2のみを、流体通流管等を予冷する予冷運転に稼働する構成を採用しても構わない。
ただし、子移動体CMの第2ポンプP2は、荷役運転時に稼動させても構わない。このように各ポンプの役割を明確にすることで、ポンプに要求する吐出流量の範囲を限定することができ、設備コストの低減を図ることができる。
【0046】
(5)上記実施形態では、荷役設備100において、一の親移動体PMを備える構成を示した。しかしながら、二以上の親移動体PMを備える構成を採用しても構わない。
そして、親移動体PM同士を離間した場所に配設した状態で、親移動体PMの夫々が各別に、異なる船舶Sとの間で液化低温流体の荷役を実行するように構成しても構わない。
また、親移動体PMの制御装置C同士が、互いに通信して主従関係を構築可能に構成されていても構わない。
【0047】
(6)上記実施形態において、第1ポンプP1をバイパスするポンプバイパス流路を設ける構成を採用しても構わない。
当該構成を採用することで、第1ポンプP1が下流側から上流側への逆流が許容されないポンプである場合にも、ポンプバイパス流路を介して下流側から上流側へ流体を通流させることができる。
また、第1ポンプP1が、最低吐出量を下回る低流量を合流流路JTLへ流出する場合に、最低吐出量から最小流量を減算した残流量を、ポンプバイパス流路へ通流するミニフロー運転を実行することができる。
【0048】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の液化低温流体の荷役設備は、液化低温流体の荷役の際の地理的制約や時間的制約に係る自由度を向上し得る液化低温流体の荷役設備として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 :荷役設備
C :制御装置
CM :子移動体
EV :緊急遮断弁
EW :緊急離脱装置
H :ホース
JTL :合流流路
LF1 :第1液体通流路
LF2 :第2液体通流路
LT1 :第1陸側貯留部
LT2 :第2陸側貯留部
MF1 :第1混合流路
MF2 :第2混合流路
P1 :第1ポンプ
P2 :第2ポンプ
PL0 :主パージガス通流路
PL1 :第1パージガス通流路
PL2 :第2パージガス通流路
PL3 :第3パージガス通流路
PL4 :第4パージガス通流路
PL5 :第5パージガス通流路
PM :親移動体
PT :パージガス貯留部
QC1 :第1クイックカプラ
S :船舶
ST :船舶側貯留部
図1
図2
図3
図4
図5
図6