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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】車両用サイドシル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019002635
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020111145
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-168594(JP,A)
【文献】特開2007-191008(JP,A)
【文献】特開2018-192939(JP,A)
【文献】特開2008-240969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向である車幅方向の外側部において、前後方向に延びて当該車体の下部を構成する車両用のサイドシルであって、
前後方向に延びる内側上フランジ部と当該内側上フランジ部の下方において前後方向に延びる内側下フランジ部と内側突出壁部とを有し、前記内側突出壁部は前記内側上フランジ部及び前記内側下フランジ部を接続しかつ前記内側上フランジ部及び前記内側下フランジ部から前記車幅方向の内側に向かって突出する鋼板製のサイドシルインナーと、
前記内側上フランジ部に対して車幅方向に対向する外側上フランジ部と前記内側下フランジ部に対して車幅方向に対向する外側下フランジ部と外側突出壁部とを有し、前記外側突出壁部は前記外側上フランジ部及び前記外側下フランジ部を接続しかつ前記外側上フランジ部及び前記外側下フランジ部から前記車幅方向の外側に突出する鋼板製のサイドシルアウターであって、前記サイドシルインナーと前記車幅方向に対向することにより前記内側突出壁部と前記外側突出壁部との間に内部空間を形成するサイドシルアウターと、
前記車幅方向の外側端部であって前記サイドシルアウターの前記外側突出壁部に接続される外側端部と前記車幅方向の内側端部であって前記サイドシルインナーの前記内側突出壁部に近接しまたは接続される内側端部とを有し、前記サイドシルアウターに対して車幅方向内方に向かう荷重が加わった際に圧壊することにより前記荷重によるエネルギーを吸収するように前記内部空間内に設けられた補強部材と、
単一の鋼板により構成され、前記内側上フランジ部及び前記外側上フランジ部と前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部とを上下方向に接続するように前記内部空間内に配置される接続部材と、を備え、
前記接続部材は、前記内側上フランジ部と前記外側上フランジ部とに挟み込まれて前記内側上フランジ部及び前記外側上フランジ部にそれぞれスポット溶接された上部接続部と、前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部に挟み込まれて前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部にそれぞれスポット溶接された下部接続部と、前記上部接続部と前記下部接続部とを相互に接続する中間接続部と、を有し、
前記補強部材は、前記接続部材よりも前記車幅方向の外側に配置されて前記接続部材に固定される外側補強部材を有し、当該外側補強部材は閉断面構造を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成され、当該外側補強部材が前記外側端部を有していて当該外側端部が接着剤を介して前記サイドシルアウターの前記外側突出壁部に接続されている、サイドシル。
【請求項2】
請求項1記載のサイドシルであって、前記中間接続部は、前記上部接続部及び前記下部接続部から前記内側突出壁部に向かって突出しかつ当該内側突出壁部に近接しまたは接続されることにより前記補強部材の一部を構成する中間突出壁部を含む、サイドシル。
【請求項3】
請求項記載のサイドシルであって、前記補強部材は、前記中間突出壁部の上側端部と下側端部とを上下方向に相互に接続する補強接続部を含む、サイドシル。
【請求項4】
請求項記載のサイドシルであって、前記補強接続部は、前記車幅方向に沿った横断面において上下方向に沿って直線状に延びる形状を有する、サイドシル。
【請求項5】
請求項記載のサイドシルであって、前記中間突出壁部及び前記押出形材は、前記車幅方向から見て前記中間突出壁部と前記押出形材の少なくとも一部とが上下方向に互いに重なるように配置されている、サイドシル。
【請求項6】
請求項1記載のサイドシルであって、前記接続部材を構成する前記鋼板は、前記上部接続部と前記中間接続部と前記下部接続部とを含む板状をなし
前記補強部材は、前記外側補強部材と独立した内側補強部材をさらに有し、前記内側補強部材が前記接続部材よりも前記車幅方向の内側に位置して前記接続部材に固定される、サイドシル。
【請求項7】
請求項記載のサイドシルであって、記内側補強部材が前記閉断面構造を有する押出形材により構成されている、サイドシル。
【請求項8】
請求項または記載のサイドシルであって、前記外側補強部材及び前記内側補強部材は、車幅方向から見て当該外側補強部材と当該内側補強部材の少なくとも一部とが互いに上下方向において重なるように配置されている、サイドシル。
【請求項9】
車体の幅方向である車幅方向の外側部において、前後方向に延びて当該車体の下部を構成する車両用のサイドシルであって、
前後方向に延びる内側上フランジ部と当該内側上フランジ部の下方において前後方向に延びる内側下フランジ部と内側突出壁部とを有し、前記内側突出壁部は前記内側上フランジ部及び前記内側下フランジ部を接続しかつ前記内側上フランジ部及び前記内側下フランジ部から前記車幅方向の内側に向かって突出する鋼板製のサイドシルインナーと、
前記内側上フランジ部に対して車幅方向に対向する外側上フランジ部と前記内側下フランジ部に対して車幅方向に対向する外側下フランジ部と外側突出壁部とを有し、前記外側突出壁部は前記外側上フランジ部及び前記外側下フランジ部を接続しかつ前記外側上フランジ部及び前記外側下フランジ部から前記車幅方向の外側に突出する鋼板製のサイドシルアウターであって、前記サイドシルインナーと前記車幅方向に対向することにより前記内側突出壁部と前記外側突出壁部との間に内部空間を形成するサイドシルアウターと、
前記車幅方向の外側端部であって前記サイドシルアウターの前記外側突出壁部に接続される外側端部と前記車幅方向の内側端部であって前記サイドシルインナーの前記内側突出壁部に近接しまたは接続される内側端部とを有し、前記サイドシルアウターに対して車幅方向内方に向かう荷重が加わった際に圧壊することにより前記荷重によるエネルギーを吸収するように前記内部空間内に設けられた補強部材と、
前記内側上フランジ部及び前記外側上フランジ部と前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部とを上下方向に接続するように前記内部空間内に配置される接続部材と、を備え、
前記接続部材は、前記内側上フランジ部と前記外側上フランジ部とに挟み込まれて前記内側上フランジ部及び前記外側上フランジ部にそれぞれスポット溶接された鋼板製の上部接続部と、前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部に挟み込まれて前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部にそれぞれスポット溶接された鋼板製の下部接続部と、前記上部接続部と前記下部接続部とを相互に接続する中間接続部と、を有し、
前記補強部材は、当該補強部材の前記外側端部から前記内側端部に至るまで一体に形成され、
前記補強部材は、閉断面構造を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成され、前記外側端部が接着剤を介して前記サイドシルアウターの前記外側突出壁部に接続され、
前記接続部材は、前記上部接続部と当該上部接続部から前記内部空間内で下方に延びて前記中間接続部の一部を構成している上側板状部とを含む上側接続部材と、前記下部接続部と当該下部接続部から前記内部空間内を上方に延びて前記中間接続部の一部を構成している下側板状部とを含む下側接続部材と、を有し、前記補強部材は前記上側接続部材と前記下側接続部材との間を車幅方向に貫通した状態で当該上側接続部材と当該下側接続部材とを上下方向に相互に接続し、
前記補強部材は、前記接続部材の一部を構成する補強中間接続部を含み、当該補強中間接続部は、前記上側接続部材と前記下側接続部材とを相互に接続することにより、前記サイドシルアウターに対して車幅方向内方に向かう荷重が加わった際に前記内側上フランジ部及び前記外側上フランジ部と前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部とが上下方向に離間することを規制し、
前記補強中間接続部は上下方向に沿って延びる平板状である、サイドシル。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載のサイドシルであって、前記補強部材は、車幅方向に沿って並ぶ複数の位置にそれぞれ前記閉断面構造を有する、サイドシル。
【請求項11】
請求項10記載のサイドシルであって、前記補強部材のうち前記接続部材よりも前記車幅方向の外側に位置する部分において前記車幅方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ前記閉断面構造が形成されている、サイドシル。
【請求項12】
請求項10または11記載のサイドシルであって、前記補強部材のうち前記接続部材よりも前記車幅方向の内側に位置する部分において前記車幅方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ前記閉断面構造が形成されている、サイドシル。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のサイドシルであって、前記補強部材の前記車幅方向の内側端部が前記サイドシルインナーに接続されている、サイドシル。
【請求項14】
車両のフロアパネルに接続されたサイドシルであって請求項1~13のいずれかに記載されたサイドシルを製造するための方法であって、
前記サイドシルインナーの前記内側突出壁部が車幅方向の内側に突出して当該サイドシルインナーの裏面が車幅方向の外側に向かって開放された姿勢で当該サイドシルインナーと前記フロアパネルとをスポット溶接により相互に接合する工程と、
前記補強部材と前記接続部材とを相互に接合することにより前記接続部材と前記補強部材とが組み合わされた内部組立体を作製する工程と、
前記内部組立体の前記上部接続部と前記サイドシルインナーの前記内側上フランジ部とをスポット溶接により相互に接合すると共に、前記内部組立体の前記下部接続部と前記サイドシルインナーの前記内側下フランジ部とをスポット溶接により相互に接合することにより、前記内部組立体と前記サイドシルインナーとを相互に接合する工程と、
前記内部組立体の前記上部接続部と前記サイドシルアウターの前記外側上フランジ部とをスポット溶接により相互に接合すると共に、前記内部組立体の前記下部接続部と前記サイドシルアウターの前記外側下フランジ部とをスポット溶接により相互に接合することにより、前記内部組立体と前記サイドシルアウターとを相互に接合する工程と、
前記内部組立体の前記外側端部を接着剤を介して前記サイドシルアウターの前記外側突出壁部に接続する工程と、を含む、サイドシルの製造方法。
【請求項15】
請求項14記載のサイドシルの製造方法であって、前記補強部材と前記接続部材とを機械的に接合する、サイドシルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の車体の下部を構成する部材であって、当該車幅方向両側において前後方向に延びる車両用のサイドシル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車体は、一般に、その下部を構成する部材であって、いわゆるサイドシル(またはロッカー)と呼ばれる部材を含む。サイドシルは、前記車幅方向の両側に配置され、サイドドアの下方において前後方向に延びる。
【0003】
例えば特許文献1には、以下のようなサイドシルが記載されている。すなわち、特許文献1に記載のサイドシルは、互いに接合されたアウタパネル及びインナパネルと、これらの間に挟み込まれた中間リブパネルと、当該中間リブパネルから前記アウタパネルに向かって突出する補強用アルミニウム合金中空形材と、により構成される。前記補強用アルミニウム合金中空形材の突出部分の頂部と前記アウタパネルの裏面との間には大きな隙間、具体的には当該補強用アルミニウム合金中空形材の車幅方向に沿った寸法の1/2以上の寸法の隙間、が形成されている。一方、前記中間リブパネルと前記インナパネルの裏面とは、間隔をおいて直接対向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-264476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用のサイドシルには、車両フレームに要求される剛性や強度に加え、側面衝突時の高い衝撃吸収性能が求められる。すなわち、前記車体に対して側方からの衝突、いわゆる側面衝突、があった場合、その衝撃エネルギーを前記サイドシルの変形によって有効に吸収し、これにより搭乗者の安全を確保することが望まれる。
【0006】
これに関し、特許文献1には、側面衝突があった場合の衝撃エネルギーを前記補強用アルミニウム合金中空形材によって吸収することが記載されているが、これにより吸収されるエネルギーには限りがあり、さらなる効果的な側面衝突のエネルギーの吸収が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することが可能な車両用のサイドシル及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
提供されるのは、車体の幅方向である車幅方向の外側部において、前後方向に延びて当該車体の下部を構成する車両用のサイドシルであって、前後方向に延びる内側上フランジ部と当該内側上フランジ部の下方において前後方向に延びる内側下フランジ部と内側突出壁部とを有し、前記内側突出壁部は前記内側上フランジ部及び前記内側下フランジ部を接続しかつ前記内側上フランジ部及び前記内側下フランジ部から前記車幅方向の内側に向かって突出する鋼板製のサイドシルインナーと、前記内側上フランジ部に対して車幅方向に対向する外側上フランジ部と前記内側下フランジ部に対して車幅方向に対向する外側下フランジ部と外側突出壁部とを有し、前記外側突出壁部は前記外側上フランジ部及び前記外側下フランジ部を接続しかつ前記外側上フランジ部及び前記外側下フランジ部から前記車幅方向の外側に突出する鋼板製のサイドシルアウターであって、前記サイドシルインナーと前記車幅方向に対向することにより前記内側突出壁部と前記外側突出壁部との間に内部空間を形成するサイドシルアウターと、前記車幅方向の外側端部であって前記サイドシルアウターの前記外側突出壁部に接続される外側端部と前記車幅方向の内側端部であって前記サイドシルインナーの前記内側突出壁部に近接しまたは接続される内側端部とを有し、前記サイドシルアウターに対して車幅方向内方に向かう荷重が加わった際に圧壊することにより前記荷重によるエネルギーを吸収するように前記内部空間内に設けられた補強部材と、前記内側上フランジ部及び前記外側上フランジ部と前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部とを上下方向に接続するように前記内部空間内に配置される接続部材と、を備える。前記接続部材は、前記内側上フランジ部と前記外側上フランジ部とに挟み込まれて前記内側上フランジ部及び前記外側上フランジ部にそれぞれスポット溶接された鋼板製の上部接続部と、前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部に挟み込まれて前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部にそれぞれスポット溶接された鋼板製の下部接続部と、前記上部接続部と前記下部接続部とを相互に接続する中間接続部と、を有し、前記補強部材の少なくとも一部が閉断面構造を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成されている。
【0009】
ここで、「前記車幅方向の外側端部が前記サイドシルアウターの前記外側突出壁部に接続される」及び「前記車幅方向の内側端部が前記サイドシルインナーの前記内側突出壁部に接続される」とは、直接的に接続されていることを限定する趣旨ではなく、例えば接着剤等により間接的に接続されていることを含む趣旨である。
【0010】
前記サイドシルでは、補強部材は、それ自身が圧壊することにより側面衝突時の衝突エネルギーを吸収しながら、衝突エネルギーをサイドシルアウターからサイドシルインナーまで効率的に伝える。これにより、側面衝突時のエネルギーが有効に吸収される。
【0011】
前記補強部材の圧壊を伴いながら前記内側突出壁部と前記外側突出壁部とが互いに車幅方向に近づき、これに伴い前記内側上フランジ部及び外側上フランジ部と内側下フランジ部及び外側下フランジ部とが互いに上下方向に離間する方向に変位しようとするが、当該内側上フランジ部及び外側上フランジ部と当該内側下フランジ部及び外側下フランジ部とを相互に接続する接続部材が上記変位を抑制する。このことは、前記内側上フランジ部及び外側上フランジ部と内側下フランジ部及び外側下フランジ部とが大きく離間することに起因する前記補強部材の断面潰れを抑制し、これにより圧壊強度の低下を有効に抑制する。
【0012】
また、前記サイドシルアウター、前記サイドシルインナー並びに前記接続部材の上部接続部及び下部接続部がすべて鋼板製であるため、スポット溶接によりサイドシルアウター、サイドシルインナーと、接続部材の上部接続部及び下部接続部とを容易に接合することができる。また、鋼板製である前記サイドシルインナーは、車両のボディにおいて同じく鋼板製の適当な部位、例えばフロアパネル、に対してスポット溶接により容易に取り付けられることができる。
【0013】
また、サイドシルの外壁を構成するサイドシルアウター及びサイドシルインナーが高い弾性率をもつ鋼板からなることにより当該サイドシル全体の剛性を効率的に高くすることができる一方、内部に設けられた補強部材の少なくとも一部がアルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成されているため、軽量でエネルギー吸収特性に優れたサイドシルを実現することができる。
【0014】
前記サイドシルの好ましい第1の態様として、前記接続部材の前記中間接続部は、前記上部接続部及び前記下部接続部から前記内側突出壁部に向かって突出しかつ当該内側突出壁部に近接しまたは接続されることにより前記補強部材の一部を構成する中間突出壁部を含んでいてもよい。このように接続部材の一部を構成している中間突出壁部が補強部材の一部を兼ねることは、サイドシル全体の部品数の低減を可能にする。
【0015】
前記上部接続部、前記中間接続部及び前記下部接続部は、単一の鋼板により構成されていることが好ましい。このことは、サイドシル全体の部品数の低減及び構造の簡素化を可能にするとともに、接続部材自体が高い剛性を有することを可能にする。
【0016】
前記第1の態様において、前記補強部材は、前記中間突出壁部の上側端部と下側端部とを上下方向に相互に接続する補強接続部を含むことが好ましい。当該補強接続部は、側面衝突時に前記中間突出壁部の上側及び下側端部が互いに上下方向に離間することをより効果的に抑制し、これにより、サイドシル全体の剛性の低下及び前記補強部材の圧壊強度の低下を効果的に抑制する。
【0017】
前記補強接続部は、前記車幅方向に沿った横断面において上下方向に沿って直線状に延びる形状を有することがより好ましい。このような形状は、前記補強接続部が前記中間突出壁部における上側端部と下側端部との上下方向の離間を抑制する効果をより確実に発揮することを可能にする。
【0018】
一方、前記補強部材のうち前記接続部材よりも前記車幅方向の外側に位置する部分は前記閉断面構造を有する前記押出形材により構成されていることが好ましい。このことは、側面衝突時の衝突エネルギーが前記閉断面構造を有する前記押出形材に直接的に伝わることを可能にし、これにより、当該押出形材が側面衝突時の衝突エネルギーを初期段階で大きく吸収することを可能にする。従って、衝突エネルギーの吸収特性がより向上する。
【0019】
前記接続部材における前記中間突出壁部及び前記補強部材における前記押出形材は、車幅方向から見て前記中間突出壁部と前記押出形材の少なくとも一部とが上下方向に互いに重なるように配置されていることが好ましい。この配置は、側面衝突時の衝突エネルギーがサイドシルアウターからサイドシルインナーまでより効率的に伝わることを可能にし、これにより、エネルギー吸収特性のさらなる向上を可能にする。
【0020】
前記サイドシルの好ましい第2の態様として、前記接続部材は、前記上部接続部と前記中間接続部と前記下部接続部とを含む板状の部材、好ましくは平板状の部材、により構成されているのがよい。前記接続部材は、前記平板状の部材により構成されることにより、側面衝突時に上下方向に伸びるようなサイドシルの変形を効果的に抑制して側面衝突時の衝突エネルギーの吸収特性をより向上させることができる。
【0021】
前記第2の態様において、前記補強部材は、互いに独立した部材である外側補強部材及び内側補強部材を有し、前記外側補強部材が前記接続部材よりも前記車幅方向の外側に位置して前記接続部材に固定され、前記内側補強部材が前記接続部材よりも前記車幅方向の内側に位置して前記接続部材に固定されるものであることが、好ましい。
【0022】
前記外側補強部材及び前記内側補強部材のそれぞれは前記閉断面構造を有する押出形材により構成されていることが好ましい。このようにして前記接続部材を挟んでその内側と外側の双方に閉断面構造が形成されることにより、当該閉断面構造の圧壊によるエネルギー吸収量が増大し、側面衝突時の衝突エネルギーの吸収特性がより向上する。
【0023】
前記外側補強部材及び前記内側補強部材は、車幅方向から見て当該外側補強部材と当該内側補強部材の少なくとも一部とが互いに上下方向において重なるように配置されていることが好ましい。この配置は、側面衝突時の衝突エネルギーがサイドシルアウターからサイドシルインナーまでより効率的に伝わることを可能にし、これにより、エネルギー吸収特性のさらなる向上を可能にする。
【0024】
前記サイドシルの好ましい第3の態様として、前記補強部材は、当該補強部材の前記外側端部から前記内側端部に至るまで一体に形成されており、前記接続部材は、前記上部接続部と当該上部接続部から前記内部空間内で下方に延びて前記中間接続部の一部を構成している上側板状部とを含む上側接続部材と、前記下部接続部と当該下部接続部から前記内部空間内を上方に延びて前記中間接続部の一部を構成している下側板状部とを含む下側接続部材と、を有し、前記補強部材は前記上側接続部材と前記下側接続部材との間を車幅方向に貫通した状態で当該上側接続部材と当該下側接続部材とを上下方向に相互に接続するものでもよい。この態様では、前記補強部材が前記上側接続部材と前記下側接続部材とに分割されて当該上側接続部材と当該下側接続部材との間を前記補強部材が貫通することを可能にし、これにより、当該補強部材がその外側端部が内側端部に至るまで一体に形成されることを可能にする。このことは、前記補強部材がその圧壊により側面衝突のエネルギーを効果的に吸収しながら前記サイドシルアウターから前記サイドシルインナーに伝えることを可能にする。また、前記補強部材は、前記上側接続部材と前記下側接続部材とを相互に接続することによって、前記接続部材の一部を構成することが可能である。
【0025】
より具体的に、前記補強部材は、前記接続部材の一部を構成する補強中間接続部を含み、当該補強中間接続部は、前記上側接続部材と前記下側接続部材とを相互に接続することにより、前記サイドシルアウターに対して車幅方向内方に向かう荷重が加わった際に前記内側上フランジ部及び前記外側上フランジ部と前記内側下フランジ部及び前記外側下フランジ部とが上下方向に離間することを規制することが、好ましい。当該補強中間接続部は、側面衝突時に前記サイドシルが上下方向に伸長する変形を効果的に抑制する。これにより、側面衝突時の衝突エネルギーの吸収特性がより向上する。
【0026】
前記補強中間接続部は上下方向に沿って延びる平板状であることが好ましい。当該平板状の補強中間接続部は、側面衝突時に内側上フランジ部及び外側上フランジ部と内側下フランジ部及び外側下フランジ部とが上下方向に離間することをより効果的に規制することができる。これにより、側面衝突時の衝突エネルギーの吸収特性がより向上する。
【0027】
前記第3の態様において、前記補強部材は、車幅方向に沿って並ぶ複数の位置にそれぞれ前記閉断面構造を有することが好ましい。このように複数の前記閉断面構造を有する補強部材は、それぞれの閉断面構造の圧壊によって高いエネルギー吸収効果を発揮することができる。
【0028】
前記補強部材のうち前記接続部材よりも前記車幅方向の外側に位置する部分において前記車幅方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ閉断面構造が形成されていることが好ましい。このように接続部材よりも外側に位置する複数の前記閉断面構造には側面衝突時の衝突エネルギーが直接的に伝わりやすい。このことは、側面衝突時の衝突エネルギーが初期段階で大きく吸収されることを可能にする。従って、衝突エネルギーの吸収特性がより向上する。
【0029】
また、前記補強部材のうち前記接続部材よりも前記車幅方向の内側に位置する部分において前記車幅方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ閉断面構造が形成されていることが好ましい。このことは、前記補強部材に含まれる圧壊可能な前記閉断面構造の数を増やすことを可能にする。これにより、側面衝突時の衝突エネルギーの吸収特性がより向上する。
【0030】
また、前記補強部材の前記車幅方向の内側端部は前記サイドシルインナーに接続されていることが好ましい。このことは、側面衝突時の衝突エネルギーが前記補強部材を媒介としてサイドシルアウターからサイドシルインナーまで効率的に伝わることを可能にする。これにより、衝突の初期段階において前記補強部材の圧壊変形が生じることになり、エネルギー吸収特性がより向上する。
【0031】
また、車両のフロアパネルに接続されたサイドシルであって当該サイドシルが上述のサイドシルからなるものを製造するための方法が提供される。この方法は、前記サイドシルインナーの前記内側突出壁部が車幅方向の内側に突出して当該サイドシルインナーの裏面が車幅方向の外側に向かって開放された姿勢で当該サイドシルインナーと前記フロアパネルとをスポット溶接により相互に接合する工程と、前記補強部材と前記接続部材とを相互に接合することにより前記接続部材と前記補強部材とが組み合わされた内部組立体を作製する工程と、前記内部組立体の前記上部接続部と前記サイドシルインナーの前記内側上フランジ部とをスポット溶接により相互に接合すると共に、前記内部組立体の前記下部接続部と前記サイドシルインナーの前記内側下フランジ部とをスポット溶接により相互に接合することにより、前記内部組立体と前記サイドシルインナーとを相互に接合する工程と、前記内部組立体の前記上部接続部と前記サイドシルアウターの前記外側上フランジ部とをスポット溶接により相互に接合すると共に、前記内部組立体の前記下部接続部と前記サイドシルアウターの前記外側下フランジ部とをスポット溶接により相互に接合することにより、前記内部組立体と前記サイドシルアウターとを相互に接合する工程と、を含む。
【0032】
この製造方法では、前記サイドシルインナーの裏面が車幅方向の外側に開放された姿勢で当該サイドシルインナーをフロアパネルに接合する工程(サイドシルインナー接合工程)と、前記接続部材と前記補強部材とが組み合わされた内部組立体を作製する工程(内部組立体作製工程)と、が予め行われ、その後に、前記内部組立体と前記サイドシルインナーとを相互に接合する工程(内部組立体内側接合工程)及び前記内部組立体と前記サイドシルアウターとを相互に接合する工程(内部組立体外側接合工程)が行われることにより、前記フロアパネルに接続された前記サイドシルを効率よく製造することができる。ここで、前記内部組立体内側接合工程及び前記内部組立体外側接合工程の順序は限定されない。また、サイドシルアウター、サイドシルインナー並びに接続部材の上部接続部及び下部接続部がすべて鋼板製であるため、スポット溶接によりサイドシルアウター、サイドシルインナーと、接続部材の上端部及び下端部を容易に接合することができる。また、サイドシルインナーが鋼板製であるため、前記サイドシルを、鋼板製のフロアパネル等に対してスポット溶接により容易に取り付けることができる。
【0033】
前記製造方法では、前記補強部材と前記接続部材とを機械的に接合してもよい。これにより、前記補強部材及び前記接続部材において互いに接合されるべき部分の素材が互いに異なる場合でも、当該接合を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することが可能な車両用のサイドシル及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1~第4の実施形態に係る車両用のサイドシルの配置の例を示す斜視図である。
図2図1に示される前記サイドシルの配置の例を示す側面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るサイドシルの横断面であって図1のIII-III線に沿った断面を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るサイドシルの製造方法においてフロアパネルにサイドシルインナーを接合する工程を示す横断面図である。
図5】前記製造方法において内部組立体を作製する工程を説明するための横断面図である。
図6】前記製造方法において前記内部組立体を前記サイドシルインナーに接合する工程を説明するための横断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るサイドシルの横断面を示す図である。
図8】前記第2の実施形態の変形例に係るサイドシルの横断面を示す図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るサイドシルの横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0037】
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る車両用のサイドシル1の配置の例を示す。この配置の例は、後述の第2及び第3の実施の形態に係るサイドシル1A,1Bにも同様に適用されることが可能である。
【0038】
図1に示される前記サイドシル1は、クロスメンバー3等とともに車体(ボディ)2の下部を構成するように配置される。当該サイドシル1は、車体2の幅方向である車幅方向W(図2では奥行き方向)の左右両側の外側部にそれぞれ配置され、図示されないサイドドアの下方の高さ位置において前後方向L(図2では左右方向)に延びる。クロスメンバー3はサイドシル1を相互に接続する。各サイドシル1のうち、前記前後方向Lの前側の部分にはAピラーの下端部が接続され、前記前後方向Lの後側の部分にはCピラーの下端部が接続され、前記前後方向Lの中間に位置する部分には上下方向Hに延びるBピラー4の下端部が接続される。
【0039】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るサイドシル1の横断面を示す。当該横断面は、当該サイドシル1を前記前後方向Lから見た断面であって、例えば図1に示されるIII-III線に沿った断面である。
【0040】
前記サイドシル1は、鋼板製のサイドシルインナー10と、鋼板製のサイドシルアウター20と、接続部材30と、補強部材40と、を備える。
【0041】
前記サイドシルインナー10及び前記サイドシルアウター20のそれぞれは、前記前後方向Lに延び、かつ当該前後方向Lに一様な断面を有する部材である。前記サイドシルインナー10及びサイドシルアウター20は前記車幅方向Wに並ぶように配置されている。前記サイドシルアウター20は、前記サイドシルインナー10よりも前記車幅方向Wの外側に配されている。
【0042】
サイドシルインナー10は、内側上フランジ部11と、内側下フランジ部12と、内側突出壁部13と、を備えている。
【0043】
前記内側上フランジ部11は、前後方向Lに延びる平板状をなし、その法線方向が前記車幅方向Wと合致するように配されている。前記内側下フランジ部12は、前記内側上フランジ部11の下方に位置している。前記内側下フランジ部12は、前後方向Lに延びる平板状をなし、その法線方向が前記車幅方向Wを向くように配されている。
【0044】
前記内側突出壁部13は、前記内側上フランジ部11の下端部と前記内側下フランジ部12の上端部とを相互に前記上下方向Hに接続するように当該内側上フランジ部11と当該内側下フランジ部12との間に介在する。
【0045】
内側突出壁部13は、前記内側上フランジ部11及び前記内側下フランジ部12よりも車幅方向Wの内側に向かって突出する形状を有する。前記内側突出壁部13は、その裏面が前記車幅方向Wの外側に開放される姿勢で配置されている。本実施形態では、前記内側突出壁部13は、頂部13aと内側上壁部13bと内側下壁部13cとを有する。前記頂部13aは前記横断面において前記上下方向Hに延びる平板状をなす。すなわち、前記頂部13aは、前記前後方向L及び前記上下方向Hのそれぞれに対して平行である。前記内側上壁部13bは前記頂部13aの上端と前記内側上フランジ部11の下端とを接続するように前記横断面において前記車幅方向Wに延びる平板状をなす。前記内側下壁部13cは、前記頂部13aの下端と前記内側下フランジ部12の上端とを接続するように前記横断面において前記車幅方向Wに延びる平板状をなす。
【0046】
サイドシルアウター20は、外側上フランジ部21と、外側下フランジ部22と、外側突出壁部23とを備えている。
【0047】
前記外側上フランジ部21は、前後方向Lに延びる平板状をなし、その法線方向が前記車幅方向Wと合致し、かつ、前記内側上フランジ部11に対して車幅方向Wに対向するように配置されている。前記外側下フランジ部22は、前記外側上フランジ部21の下方に位置している。前記外側下フランジ部22は、前後方向Lに延びる平板状をなし、その法線方向が前記車幅方向Wを向き、かつ、内側下フランジ部12に対して車幅方向Wに対向するように配置されている。
【0048】
前記外側突出壁部23は、外側上フランジ部21の下端部と、外側下フランジ部22の上端部と、を相互に前記上下方向Hに接続するように当該外側上フランジ部21と当該外側下フランジ部22との間に介在する。外側突出壁部23は、前記外側上フランジ部21及び前記外側下フランジ部22よりも車幅方向Wの外側に向かって突出する形状を有する。
【0049】
本実施形態では、外側突出壁部23は、頂部23aと外側上壁部23bと外側下壁部23cとを有する。前記頂部23aは前記横断面において前記上下方向Hに延びる平板状をなす。すなわち、前記頂部23aは、前記前後方向L及び前記上下方向Hのそれぞれに対して平行である。前記外側上壁部23bは前記頂部23aの上端と前記外側上フランジ部21の下端とを接続するように前記横断面において前記車幅方向Wに延びる(この実施の形態では車幅方向Wの外側に向かうに従って下向きに変位するような斜め向きに延びる)平板状をなす。前記外側下壁部23cは、前記頂部23aの下端と前記外側下フランジ部22の上端とを接続するように前記横断面において前記車幅方向Wに延びる(この実施の形態では車幅方向Wの外側に向かうに従って上向きに変位するような斜め向きに延びる)平板状をなす。
【0050】
前記サイドシルインナー10と前記サイドシルアウター20とは、前記内側上フランジ部11及び前記内側下フランジ部12がそれぞれ前記外側上フランジ部21及び前記外側下フランジ部22と前記車幅方向Wに対向するように互いに当該車幅方向Wに突き合わされる。このようなサイドシルインナー10とサイドシルアウター20の対向配置により、前記内側突出壁部13と前記外側突出壁部23との間に内部空間Sが形成される。
【0051】
前記サイドシルインナー10の内側端部、図3では前記内側突出壁部13の前記内側上壁部13b、はその上に前記車体2の鋼板製フロアパネル5の外側端部5aが載せられた状態で当該外側端部5aとスポット溶接、例えば抵抗スポット溶接(RSW)により上下方向に接合される。このスポット溶接により、前記長手方向Lに並ぶ複数の第1接合部W1が形成され、前記サイドシル1は車体に固定される。前記複数の第1接合部W1のそれぞれは前記フロアパネル5の外側端部5aと前記内側上壁部13bとを上下方向に貫通するように形成される。
【0052】
前記接続部材30は、内側上フランジ部11及び外側上フランジ部21と、内側下フランジ部12及び外側下フランジ部22と、を互いに上下方向に接続するように前記内部空間S内に配置されている。この実施の形態に係る接続部材30は、単一の鋼板により構成され、上部接続部31と、下部接続部32と、中間接続部33と、を一体に有する。
【0053】
前記上部接続部31は、前記接続部材30の上端部を構成し、前記内側上フランジ部11と外側上フランジ部21との間に前記車幅方向Wに挟み込まれている。前記内側上フランジ部11、前記上部接続部31及び前記外側上フランジ部21はその順に並ぶように前記車幅方向Wに重ね合わされた状態でスポット溶接による複数の第2接合部W2により互いに接合されている。前記複数の第2接合部W2は前記前後方向Lに並ぶ複数の位置にそれぞれ形成され、各第2接合部W2は前記前記内側上フランジ部11、前記上部接続部31及び前記外側上フランジ部21を前記車幅方向Wに貫通するように形成される。
【0054】
前記下部接続部32は、前記接続部材30の下端部を構成し、前記内側下フランジ部12と外側下フランジ部22との間に前記車幅方向Wに挟み込まれている。前記内側下フランジ部21、前記下部接続部32及び前記外側下フランジ部22はその順に並ぶように前記車幅方向Wに重ね合わされた状態でスポット溶接による複数の第3接合部W3により互いに接合されている。前記複数の第3接合部W3は前記前後方向Lに並ぶ複数の位置にそれぞれ形成され、各第3接合部W3は前記前記内側下フランジ部21、前記下部接続部32及び前記外側下フランジ部22を前記車幅方向Wに貫通するように形成される。
【0055】
前記中間接続部33は、前記内部空間S内に位置し、前記上部接続部31と前記下部接続部32とを互いに上下方向に接続するようにこれらの間に介在する。
【0056】
この実施の形態に係る前記中間接続部33は、上側垂直部34と、下側垂直部35と、中間突出壁部36と、を一体に有する。前記上側垂直部34は、前記上部接続部31の下端から垂直下方に延びる平板状をなす。前記下側垂直部35は、前記下部接続部32の上端から垂直上方に向かって延びる平板状をなす。前記中間突出壁部36は、前記上側垂直部34の下端と前記下側垂直部35の上端とを相互に上下方向に接続するように両者の間に介在する。
【0057】
前記中間突出壁部36は、前記上部接続部31及び前記下部接続部32から前記車幅方向Wの内側に突出する形状を有する。具体的に、前記突出壁部36は、前記上側垂直部34の下端から前記車幅方向Wの内側に延びる突出上壁部36aと、前記下側垂直部35の上端から前記車幅方向Wの内側に延びる突出下壁部36bと、前記突出上壁部36aの前記車幅方向Wの外側端と前記突出下壁部36bの車幅方向Wの外側端とを相互に上下方向Hに接続するように当該上下方向Hに延びる平板状の突出縦壁部36cと、を一体に有する。
【0058】
前記補強部材40は、前記サイドシルアウター20に対して車幅方向Wの内側に向かう荷重が加わった際に、当該サイドシルアウター20から前記サイドシルインナー10に前記荷重を伝達するとともに、当該補強部材40自身が当該荷重すなわち圧縮荷重を受けて圧壊することにより前記荷重によるエネルギーを吸収するように前記内部空間S内に設けられた部材である。前記補強部材40は、車幅方向Wの外側端部であって前記サイドシルアウター20の外側突出壁部23に接続される外側端部と、車幅方向Wの内側端部であって前記サイドシルインナー10の内側突出壁部13に近接しまたは接続される内側端部と、を有する。
【0059】
この実施の形態に係る前記補強部材40は、外側補強部材41と、前記中間突出壁部36と、により構成される。つまり、当該中間突出壁部36は、前記接続部材30の一部を構成すると同時に前記補強部材40の一部を構成する。このことは、サイドシル1全体の部品数の低減を可能にする。
【0060】
前記外側補強部材41は、前記接続部材30よりも車幅方向Wの外側に配されている。前記外側補強部材41は、閉断面構造を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成されている。つまり、この実施の形態に係る前記補強部材40のうち前記接続部材30よりも前記車幅方向Wの外側に位置する部分は、閉断面構造を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成されている。
【0061】
前記外側補強部材41は、上側横壁41aと、下側横壁41bと、外側縦壁41cと、内側縦壁41dと、中間縦壁41eと、上フランジ41f、下フランジ41gと、を一体に有する。
【0062】
前記上側横壁41a及び前記下側横壁41bは互いに上下方向に離間した位置で車幅方向Wに延びる。前記外側縦壁41cは、前記上側横壁41aの車幅方向Wの外側端と前記下側横壁41bの車幅方向Wの外側端とを上下方向Hに接続するように当該上下方向Hに延びる。前記内側縦壁41dは、前記上側横壁41aの車幅方向Wの内側端と前記下側横壁41bの車幅方向Wの内側端とを上下方向Hに接続するように当該上下方向Hに延びる。前記中間縦壁41eは、前記上側横壁41aの車幅方向Wの中間部と前記下側横壁41bの車幅方向Wの中間部とを上下方向Hに接続するように当該上下方向Hに延びる。従って、この実施の形態に係る前記外側補強部材41は、前記上側横壁41a、前記下側横壁41b、前記外側縦壁41c及び前記中間縦壁41eによって構成される外側の閉断面構造と、前記上側横壁41a、前記下側横壁41b、前記内側縦壁41d及び前記中間縦壁41eによって構成される内側の閉断面構造と、を含む。
【0063】
前記上フランジ41f及び前記下フランジ41gは前記接続部材30の中間接続部33に接合されるための部分である。前記上フランジ41fは、前記内側縦壁41dの上端からさらに上向きに延長された部分であり、前記上側横壁41aよりも上向きに突出する。前記下フランジ41gは、前記内側縦壁41dの下端からさらに下向きに延長された部分であり、前記下側横壁41bよりも下向きに突出する。前記上下フランジ41f,41gは、セルフピアシングリベット(SPR)等による接合部M1、M2により、前記中間接続部33の前記上側垂直部34及び前記下側垂直部35にそれぞれ機械的に接合されている。
【0064】
前記上フランジ41fは、前記接合部M1によって前記上側垂直部34に接合されることにより、当該上側垂直部34を介して前記中間突出壁部36の上端部に接続されている。同様に、前記下フランジ41gは、前記接合部M2によって前記下側垂直部35に接合されることにより、当該下側垂直部35を介して前記中間突出壁部36の下端部に接続されている。従って、前記上下フランジ41f,41g及びこれらの間に介在する前記内側縦壁41dは、前記中間突出壁部36の上側端部と下側端部とを上下方向Hに相互に接続する補強接続部を構成し、当該補強接続部は前記上下方向Hに延びる平板状をなす。
【0065】
前記外側補強部材41は、その少なくとも一部が前記車幅方向Wから見て前記中間突出壁部36と上下方向Hに重なるように配置されている。具体的に、本実施形態では、前記外側補強部材41の前記上側横壁41a及び前記下側横壁41bと前記中間突出壁部36の前記突出上壁部36a及び前記突出下壁部36bとが上下方向Hについて互いに同等の位置(つまり同じ高さ位置)に配されている。
【0066】
この実施の形態に係る前記補強部材40では、前記内側端部が前記サイドシルインナー10の前記内側突出壁部13に接続され、前記外側端部が前記サイドシルアウター20の前記外側突出壁部23に接続されている。具体的には、前記補強部材40の内側端部を構成する前記中間突出壁部36の前記突出縦壁部36cが前記内側突出壁部13の頂部13aの裏面に接着剤50を介して接続され、同様に、前記補強部材40の外側端部を構成する前記外側補強部材41の外側縦壁41cが前記外側突出壁部23の頂部23aの裏面に接着剤50を介して接続されている。
【0067】
本発明に係る補強部材の外側端部及び内側端部は、内側突出壁部及び外側突出壁部にそれぞれ直接接合されていてもよい。前記補強部材の内側端部は、あるいは、内側突出壁部に接合されずに近接していてもよい。ここでいう「近接」とは、前記補強部材の内側端部と前記内側突出壁部との間の前記車幅方向Wの距離が、走行中には当該内側端部と当該内側突出壁部とが互いに接触しないものの、側面衝突時にサイドシルアウター及び補強部材に加わった荷重が確実にサイドシルインナーに伝わることを可能にする程度に十分小さいことを意味する。前記距離は、例えば、3mm以上10mm以下であることが、好ましい。
【0068】
本実施形態に係る前記サイドシル1では、その外壁を構成するサイドシルアウター20及びサイドシルインナー10が高い弾性率を有する鋼板により構成されることにより、当該サイドシル1全体が高い剛性を有することを可能にする一方、少なくとも一部がアルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成されている補強部材40と、接続部材30と、の組合せが内部空間S内において好適に配置されることにより、軽量でエネルギー吸収特性に優れたサイドシル1の実現を可能にする。
【0069】
具体的に、本実施形態に係る前記補強部材40の車幅方向Wの外側端部がサイドシルアウター20の外側突出壁部23に接続される一方、その車幅方向Wの内側端部がサイドシルインナー10の内側突出壁部13に近接しまたは接続されており、サイドシルアウター20に対して車幅方向Wの内方に向かう荷重が加わった際に、衝突の初期段階において前記荷重を伝達し、前記補強部材40自身が圧縮荷重を受けて圧壊することによりエネルギーを吸収するように当該補強部材40が内部空間S内に設けられているため、サイドシルアウター20に対して車幅方向Wの内方に向かう荷重がサイドシルアウター20からサイドシルインナー10側に効率的に伝わる。しかも、前記補強部材40の少なくとも一部(この実施の形態では前記外側補強部材41)が閉断面構造を有する押出形材により構成されているため、サイドシルアウター20に対して車幅方向Wの内方に向かう荷重は、前記閉断面構造が圧壊することにより有効に吸収される。特に、本実施形態に係る前記補強部材40は、車幅方向Wに並ぶ複数の閉断面構造を有するため、側面衝突時の衝突エネルギーをより有効に吸収することができる。
【0070】
一方、前記接続部材30は、前記補強部材40に対して上下方向Hに交差しながら、前記内側上フランジ部11及び前記外側上フランジ部21と、前記内側下フランジ部12及び前記外側下フランジ部22とを当該上下方向Hに相互接続することにより、サイドシルアウター20に対して車幅方向Wの内方に向かう荷重が加わった際に、内側上フランジ部11及び外側上フランジ部21と内側下フランジ部12及び外側下フランジ部22とが前記上下方向Hに互いに離間するような前記サイドシル1の変形を有効に抑制する。このことは、前記サイドシル1の剛性の低下及び圧壊強度の低下を効果的に抑制し、当該サイドシル1が側面衝突時の衝突エネルギーを有効に吸収することを可能にする。
【0071】
本実施形態では、さらに、前記補強部材40における前記複数の閉断面構造が前記接続部材30よりも車幅方向Wの外側に位置するので、側面衝突時の衝突エネルギーが当該閉断面構造に直接的に伝わりやすい。このことは、前記補強部材40が側面衝突時の衝突エネルギーを初期段階で大きく吸収することを可能にする。これにより、衝突エネルギーの吸収特性がより向上する。
【0072】
さらに、本実施形態では、前記外側補強部材41の補強接続部(当該実施形態では前記内側縦壁41d及び上下フランジ41f,41gにより構成される部分)が前記中間突出壁部36の上側端部と下側端部とを上下方向Hに相互に接続することにより、当該中間突出壁部36を含む前記接続部材30の効果、つまり、前記サイドシルアウター20に対して前記車幅方向Wの内側に向かう荷重が加わった際に前記内側上フランジ部11及び前記外側上フランジ部21と前記内側下フランジ部12及び前記外側下フランジ部22とが上下方向Hに離間することを抑制する効果、を高く保つことを可能にする。つまり、前記接続部材30が前記中間突出壁部36を含むにもかかわらず、当該接続部材30が前記サイドシル1の剛性の低下及び圧壊強度の低下を抑止するという優れた効果を発揮することを可能にする。
【0073】
次に、図4図6も併せて参照しながら、前記フロアパネル5に接続された前記サイドシル1を効率よく製造するための方法の一例について説明する。この方法は、以下の(1)サイドシルインナー接合工程、(2)内部組立体作製工程、(3)内部組立体内側接合工程、及び(4)内部組立体外側接合工程を含む。
【0074】
(1)サイドシルインナー接合工程
この工程では、図4に示すように、前記フロアパネル5と前記サイドシルインナー10とが互いに接合される。具体的には、前記サイドシルインナー10の裏面が前記車幅方向Wの外側に向かって開放される姿勢、換言すれば、当該サイドシルインナー10の内側突出壁部13が車幅方向Wの内側に突出する姿勢、で当該内側突出壁部13の内側上壁部13bの上に前記フロアパネル5の車幅方向Wの外側端部5aが重ねられた状態で両者が長手方向Lに並ぶ複数の位置でスポット溶接されることにより、当該フロアパネル5と当該サイドシルインナー10とを接合する複数の第1接合部W1が形成される。
【0075】
(2)内部組立体作製工程
この工程では、図5に示すように、補強部材40と接続部材30とが互いに組み合わされた内部組立体6が作製される。具体的には、前記外側補強部材41の上下フランジ41f,41gと前記接続部材30の上側及び下側垂直部34,35とが互いに車幅方向Wに重ね合わされた状態で接合される。例えば、セルフピアシングリベット(SPR)等による接合部M1、M2により機械的に接合される。この接合により作製される前記内部組立体6では、車幅方向Wに延びる補強部材40と上下方向Hに延びる接続部材30とが図5に示される横断面において互いに交差しており、前記接続部材30の一部である中間突出壁部36が前記補強部材40の一部(車幅方向Wの内側部分)を兼ねている。
【0076】
なお、前記サイドシルインナー接合工程と前記内部組立体作製工程の前後は問わない。両工程は互いに並行して行われてもよい。
【0077】
(3)内部組立体内側接合工程
この工程では、前記のようにして作製された前記内部組立体6と前記サイドシルインナー10とが相互に接合される。具体的には、図6に示すように、前記内部組立体6における接続部材30の上部接続部31及び下部接続部32と、前記サイドシルインナー10の内側上フランジ部11及び内側下フランジ部12と、が互いに車幅方向Wに重ね合わされた状態で長手方向Lに並ぶ複数の位置においてスポット溶接されることにより、前記内部組立体6を前記サイドシルインナー10に接合するための複数の第2接合部W2及び複数の第3接合部W3がそれぞれ形成される。本実施形態では、このような接合と共に、補強部材40の内側端部と前記サイドシルインナー10の裏面との接続、具体的には、中間突出壁部36の突出縦壁部36cと内側突出壁部13の頂部13aの裏面との接着剤50による接着、が行われる。
【0078】
(4)内部組立体外側接合工程
この工程では、前記内部組立体6と前記サイドシルアウター20とが相互に接合される。具体的には、図3に示すように、前記内部組立体6における前記接続部材30の上部接続部31及び下部接続部32と前記サイドシルアウター20の外側上フランジ部21及び外側下フランジ部22とが前記車幅方向Wに重ね合わされた状態で前記第2及び第3接合部W2,W3でさらにスポット溶接されることにより、前記サイドシルアウター20を前記内部組立体6に接合するように前記第2及び第3接合部W2,W3が形成される。ここでのスポット溶接は前記内部組立体接合工程で行われたスポット溶接と異なる位置で行われてもよい。また、本実施形態では、補強部材40の外側端部と前記サイドシルアウター20の裏面との接続、具体的には、外側補強部材41の外側縦壁41cと外側突出壁部23の頂部23aの裏面との接着剤50による接着、が行われる。
【0079】
以上の工程(1)~(4)を含む方法により、図3に示されるように前記フロアパネル5に接続された前記サイドシル1を製造することができる。前記方法では、前記サイドシルインナー接合工程と前記内部組立体作製工程と、が予め行われ、その後に、前記内部組立体内側接合工程及び前記内部組立体外側接合工程が順に行われることにより、前記フロアパネル5に接続された前記サイドシル1を効率よく製造することができる。また、前記サイドシルアウター20、前記サイドシルインナー10並びに前記接続部材30の上部接続部31及び下部接続部32がすべて鋼板製であるため、スポット溶接によりサイドシルアウター20の外側上及び下フランジ部21,22、サイドシルインナー10の内側上及び下フランジ部11,12、並びに接続部材30の上部及び下部接続部31,32を容易に接合することができる。さらに、鋼板製の前記サイドシルインナー10は、同じく鋼板製のフロアパネル5等に対してスポット溶接により容易に接合されることが可能である。
【0080】
前記製造方法において、前記内部組立体内側接合工程と前記内部組立体外側接合工程の順序は逆であってもよい。すなわち、既に作製された前記内部組立体6をまずサイドシルアウター20に接合し、その後に当該内部組立体6を既にフロアパネル5に接続されているサイドシルインナー10に接続することによっても、最終的に前記フロアパネル5に接続された前記サイドシル1を効率よく製造することが可能である。
【0081】
次に、本発明の第2の実施形態について図7を参照しながら説明する。図7は、前記第2の実施形態に係る車両用のサイドシル1Aの横断面を示す図である。
【0082】
前記サイドシル1Aは、前記サイドシル1と同様に接続部材30A及び補強部材40Aを有するが、前記接続部材30Aは内部空間Sを車幅方向Wに区切る上下方向の平板状部材により構成され、前記補強部材40Aは、互いに独立した2つの部材である外側補強部材42及び内側補強部材43により構成されている。前記外側補強部材42は、前記接続部材30の車幅方向Wの外側に位置する。前記内側補強部材43は、前記接続部材30の車幅方向Wの内側に位置する。当該外側及び内側補強部材42,43はこれらの間を前記接続部材30Aが上下方向Hに貫通することを許容しながら当該接続部材30Aに固定されている。
【0083】
前記接続部材30Aは、単一の鋼板により構成されている。この実施形態に係る前記接続部材30Aは、図7に示される横断面において前記サイドシルインナー10及び前記サイドシルアウター20の前記内側及び外側上フランジ部11,21の間の位置から前記内側及び外側下フランジ部12,22の間の位置まで上下方向に延びる直線状をなす平板である。当該接続部材30Aのうち、前記内側及び外側上フランジ部11,21同士の間に挟み込まれる部分が上部接続部31、前記内側及び外側下フランジ部21,22同士の間に挟み込まれる部分が下部接続部32、前記上部接続部31と前記下部接続部32との間に介在して両者を上下方向に接続する部分が中間接続部33A、にそれぞれ該当する。
【0084】
前記補強部材40Aを構成する前記外側補強部材42及び前記内側補強部材43のそれぞれは、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成されていて、車幅方向Wに並ぶ複数の(この実施形態ではそれぞれ2つの)閉断面構造を有している。
【0085】
具体的に、前記外側補強部材42は、前記第1の実施形態に係る外側補強部材41と同様、互いに上下方向Hに間隔を置いて車幅方向Wに延びる上側横壁42a及び下側横壁42bと、上側横壁42a及び下側横壁42bの車幅方向Wの外側端同士、内側端同士及び中間部同士をそれぞれ上下方向Hに接続するように当該上下方向Hに延びる外側縦壁42c、内側縦壁42d及び中間縦壁42eを有し、前記上側横壁42a,前記下側横壁42b、前記外側縦壁42c及び前記中間縦壁42eが車幅方向Wの外側の閉断面構造を構成し、前記上側横壁42a、前記下側横壁42b、前記内側縦壁42d及び前記中間縦壁42eが車幅方向Wの内側の閉断面構造を構成している。さらに、前記外側補強部材42は、前記内側縦壁42dの上端及び下端からそれぞれ上下に延長された上フランジ42f及び下フランジ42gを有し、当該上フランジ42f及び下フランジ42gがそれぞれ接合部M3,M4によって前記接続部材30の中間接続部33Aに機械的に接合されている。
【0086】
同様に、前記内側補強部材43は、互いに上下方向Hに間隔を置いて車幅方向Wに延びる上側横壁43a及び下側横壁43bと、上側横壁43a及び下側横壁43bの車幅方向Wの内側端同士、外側端同士及び中間部同士をそれぞれ上下方向Hに接続するように当該上下方向Hに延びる内側縦壁43c、外側縦壁43d及び中間縦壁43eを有し、前記上側横壁43a、前記下側横壁43b、前記内側縦壁43c及び前記中間縦壁43eが車幅方向Wの内側の閉断面構造を構成し、前記上側横壁43a,前記下側横壁43b、前記外側縦壁43d及び前記中間縦壁43eが車幅方向Wの外側の閉断面構造を構成している。さらに、前記内側補強部材43は、前記車幅方向Wについて前記上側横壁43a及び前記下側横壁43bの外側端部からそれぞれ上下に延びて前記中間接続部33Aに至る形状の上フランジ43f及び下フランジ43gを有し、当該上フランジ43f及び下フランジ43gがそれぞれ前記接合部M3,M4よりも上下方向両外側の位置で接合部M5,M6によって前記中間接続部33Aに機械的に接合されている。
【0087】
前記第1の実施形態と同様、前記補強部材40Aは前記車幅方向Wについて外側端部及び内側端部を有し、これらが前記サイドシルアウター20及び前記サイドシルインナー10にそれぞれ接続されている。具体的に、この第2の実施形態では、前記外側補強部材42の前記外側縦壁42cが前記外側端部に相当し、当該外側縦壁42cが前記サイドシルアウター20における前記外側突出壁部23の頂部23aの裏面に接着剤50によって接続されている。同様に、前記内側補強部材23の前記内側縦壁43cが前記内側端部に相当し、当該内側縦壁43cが前記サイドシルインナー10における前記内側突出壁部13の頂部13aの裏面に接着剤50によって接続されている。
【0088】
以上説明した前記サイドシル1Aでは、前記接続部材30Aが、前記上部接続部31から前記下部接続部32に至るまで前記横断面において上下方向に直線状に延びる平板状の鋼板により構成されているので、当該接続部材30Aによる効果、すなわち、側面衝突時にサイドシル1Aが上下方向Hに伸長する変形を抑制する効果、がより確実に達成される。これにより、側面衝突時の衝突エネルギーの吸収特性がより向上する。
【0089】
一方、前記補強部材40Aでは、前記外側補強部材42及び前記内側補強部材43のそれぞれがアルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材により構成されており、複数の閉断面構造を有しており、このことは、前記サイドシル1Aの車幅方向Wについての圧壊強度をより大きくすることを可能にする。これにより、前記サイドシル1Aの衝撃吸収性がより向上する。
【0090】
この第2の実施形態において、前記外側及び内側補強部材42,43を前記接続部材30に接合するための具体的な構成やその接合が行われる部位は特に限定されない。例えば、図8に示されるように、前記内側補強部材43の外側縦壁43dの上下方向Hの中央部が前記接続部材30Aの中間接続部33Aに直接接合されてもよい。この接合は、例えば、図8に示されるようなフロードリルスクリュー(FDS)F1によって行われることが可能である。
【0091】
前記第2の実施形態及びその変形例において、前記外側補強部材42及び前記内側補強部材43は、好ましくは、前記内側補強部材43の少なくとも一部が前記車幅方向Wから見て前記外側補強部材42と上下方向Hにおいて重なるように配置される。詳細には、例えば図7及び図8に示されるように、前記外側補強部材42の上側及び下側横壁42a,42bと前記内側補強部材43の上側及び下側横壁43a,43bとが略同等の高さ位置に位置するように当該外側補強部材42及び当該内側補強43が配置される。この配置は、前記サイドシルアウター20に対して車幅方向Wの外側から内側に向かって加わった荷重が前記外側補強部材42及び前記内側補強部材43を経由して効率的にサイドシルインナー10に伝わることを可能にする。これにより、側面衝突時のエネルギーが有効に吸収される。
【0092】
次に、本発明の第3の実施形態について図9を参照しながら説明する。図9は、前記第3の実施形態に係る車両用のサイドシル1Bの横断面を示す図である。
【0093】
図9に示すように、本実施形態に係る車両用のサイドシル1Bは、前記第1及び第2の実施形態に係るサイドシル1,1Aと同様、接続部材30B及び補強部材40Bを有するが、前記接続部材30Bは互いに独立した鋼板からなる上側接続部材37及び下側接続部材38を有していてこれら上側及び下側接続部材37,38の間を前記補強部材40Bが車幅方向Wに貫通することを許容している。これにより、当該補強部材40Bは、車幅方向Wについて当該補強部材40Bの外側端部から内側端部に至るまで一体に形成されることが可能となっている。
【0094】
前記上側接続部材37は、サイドシルインナー10の内側上フランジ部11とサイドシルアウター20の外側上フランジ部21との間に挟み込まれる上部接続部37aと、当該上部接続部37aから内部空間Sを下方に延びる平板状の上側板状部37bと、を一体に有し、前記上側板状部37bは前記接続部材30Bの中間接続部の上側部分を構成している。同様に、前記下側接続部材38は、前記サイドシルインナー10の内側下フランジ部12と前記サイドシルアウター20の外側下フランジ部22との間に挟み込まれる下部接続部38aと、当該下部接続部38aから内部空間Sを上方に延びる平板状の下側板状部38bと、を一体に有し、前記下側板状部38bは前記接続部材30Bの中間接続部の下側部分を構成している。
【0095】
前記上側板状部37bの下端と前記下側板状部38bの上端との間には、前記補強部材40Bの車幅方向Wの貫通を許容する隙間が確保されている。当該上側板状部37bの下端及び当該下側板状部38bの上端はそれぞれ前記補強部材40Bに連結され、これにより、当該補強部材40Bを介して互いに上下方向Hに接続されている。換言すれば、前記補強部材40Bは、前記上側板状部37bと前記下側板状部38bとを互いに上下方向Hに接続することにより前記接続部材30における前記中間接続部の中間部分を構成する補強中間接続部を含む。
【0096】
本実施形態における前記補強部材40Bは、具体的には、全体が一体的に形成されたアルミニウム製またはアルミニウム合金製の単一の押出形材44により構成されている。さらに、当該押出形材44は、前記車幅方向Wに直列に並ぶ複数の閉断面構造を有する。具体的に、当該補強部材40Bは、互いに上下に間隔をおいて前記車幅方向Wに延びる上側横壁44a及び下側横壁44bと、これら上側横壁44aと下側横壁44bとを前記車幅方向Wに並ぶ複数の位置で上下方向に相互接続する複数(この実施の形態では6枚)の縦壁44c,44d,44e,44f,44g,44hと、を一体に有する。
【0097】
前記縦壁44c~44hは車幅方向Wの内側からこの順に並ぶ。このうち前記縦壁44cは、前記上側横壁44a及び前記下側横壁44bの前記車幅方向Wの内側端同士を連結し、これにより前記補強部材40Bの内側端部を構成するとともに、前記サイドシルインナー10における内側突出壁部13の頂部13aの裏面に例えば接着剤50によって接合される。同様に、前記縦壁44hは前記上側横壁44a及び前記下側横壁44bの外側端同士を連結し、これにより前記補強部材40Bの外側端部を構成するとともに、前記サイドシルアウター20における外側突出壁部23の頂部23aの裏面に例えば接着剤50によって接合される。
【0098】
前記押出形材44からなる前記補強部材40Bは、上フランジ44i及び下フランジ44jをさらに一体に有する。前記上フランジ44iは、前記上側板状部37bに接合されるための部分であって、前記上側横壁44aよりも上向きに突出するように前記縦壁44c~44hのうちの縦壁44eの上端からさらに上向きに延長された部分である。同様に、前記下フランジ44jは、前記下側板状部38bに接合されるための部分であって、前記下側横壁44baよりも下向きに突出するように前記縦壁44eの下端からさらに下向きに延長された部分である。
【0099】
前記上フランジ44i及び前記下フランジ44jはそれぞれ前記上側板状部37b及び前記下側板状部38bに対して車幅方向Wに重ね合わされた状態で例えば接合部M7,M8により当該上側板状部37b及び当該下側板状部38bに接続されることが可能である。換言すれば、前記上フランジ44i、前記下フランジ44j及び前記縦壁44eの前記車幅方向Wについての位置は、当該上下フランジ44i,44jが前記上側板状部37b及び前記下側板状部38bに接続された状態で前記縦壁44c(内側端部)及び前記縦壁44h(外側端部)がそれぞれ前記内側突出壁部13の頂部13a及び前記外側突出壁部23の頂部23aに接合可能となる位置に、設定されている。
【0100】
従って、前記上フランジ44i及び前記下フランジ44jは、その間に介在する前記縦壁44eとともに、前記上側板状部37bと前記下側板状部38bとを上下方向Hに相互に接続する部位、すなわち、前記補強中間接続部、を構成する。当該補強中間接続部は、前記補強部材40Bの一部であると同時に、前記接続部材30における中間接続部の一部を兼ねる。しかも、この実施形態に係る前記補強中間接続部は、図9に示される横断面において前記上フランジ44iから前記下フランジ44jに至るまで前記上下方向Hに直線状に延びる平板状をなす。
【0101】
この第3の実施形態に係るサイドシル1Bでは、前記接続部材30Bに含まれる上側接続部材37及び下側接続部材38が互いに上下方向Hに離間するように配置されてその間を前記補強部材40が車幅方向Wに貫通することを許容し、これにより、前記補強部材40Bの全体が一体に形成されること、具体的には単一の押出形材44により構成されること、を可能にする。このことは、前記補強部材40Bが高い剛性を有することを可能にし、また、当該補強部材40Bによる衝撃エネルギーの伝達効率を高くすることを可能にする。従って、当該補強部材40Bは車幅方向Wの外側からサイドシルアウター20に加わった衝突エネルギーを有効に吸収しながらサイドシルインナー10に伝えることが可能である。
【0102】
しかも、前記補強部材40Bを構成する前記押出形材44は車幅方向Wに沿って直列に並ぶ複数の閉断面構造を有するため、サイドシルアウター20に対して車幅方向Wの内方に向かう荷重が加わった際に前記複数の閉断面構造が外側から順に圧壊することにより、衝突エネルギーを高い効率で吸収することができる。
【0103】
また、前記補強部材40Bの車幅方向Wの貫通を許容するために前記上側接続部材37及び前記下側接続部材38が互いに上下方向Hに離間していても、前記補強部材40Bが当該上側接続部材37及び前記下側接続部材38を上下方向Hに相互に接続して接続部材30Bの一部を構成する補強中間接続部を含むため、前記接続部材30Bの全体をその上端から下端に至るまで連続させることができ、これにより、サイドシルインナー10及びサイドシルアウター20の上フランジ部11,21と下フランジ部12,22とを上下方向Hに相互に接続することによる上下離間抑制効果、すなわち、サイドシルアウター20に対して車幅方向Wの内方に向かう荷重が加わった際に上フランジ部11,21と下フランジ部12,22とが上下方向Hに互いに離間するのを抑制する効果、を担保することができる。しかも、この実施の形態に係る前記補強中間接続部、すなわち前記押出形材44における縦壁44e及び上下フランジ44i,44j、は前記横断面において上下方向Hに直線状に延びる平板状をなすため、前記上下離間抑制効果を高く維持することが可能である。
【0104】
本発明に係る接続部材及び補強部材は、サイドシルの長手方向の全域にわたって延びていてもよいし、当該長手方向の一部の領域においてのみ延びていてもよい。例えば、サイドシルの後側端部において前記接続部材30及び前記補強部材の少なくとも一方が省略されてもよい。また、サイドシルの前側部分と後側部分とで接続部材及び補強部材の少なくとも一方の形状が相互に異なっていてもよい。例えば、サイドシルのうち当該サイドシルと車両のBピラーとの接続部よりも前側部分と後側部分とで接続部材及び補強部材の少なくとも一方の形状が相互に異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0105】
S 内部空間
1,1A,1B サイドシル
5 フロアパネル
6 内部組立体
10 サイドシルアウター
11 内側上フランジ部
12 内側下フランジ部
13 内側突出壁部
20 サイドシルアウター
21 外側上フランジ部
22 外側下フランジ部
23 外側突出壁部
30,30A,30B 接続部材
31 上部接続部
32 下部接続部
33,33A 中間接続部
36 中間突出壁部
37 上側接続部材
37a 上部接続部
37b 上側板状部
38 下側接続部材
38a 下部接続部
38b 下側板状部
40,40A,40B 補強部材
41 外側補強部材
42 外側補強部材
43 内側補強部材
44 押出形材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9