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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】送信システム及び送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20221212BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20221212BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H04B7/06 152
H04B7/06 952
H01Q3/26 Z
H01Q21/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019016841
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020127070
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】浅古 淳
【審査官】高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-032892(JP,A)
【文献】特開2003-032164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H01Q 3/26
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信する、送信アンテナ及び補助アンテナと、
前記補助アンテナよりも前記送信アンテナから離れた位置に配置されるモニタアンテナと、
前記送信アンテナ及び前記補助アンテナから送信された信号を前記モニタアンテナで受信したときの受信信号に基づいて、前記補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御する制御部と、
を備え、前記モニタアンテナは、前記送信アンテナによる送信の干渉を抑えたい方向に配置されている
送信システム。
【請求項2】
信号を送信する、送信アンテナ及び補助アンテナと、
前記補助アンテナよりも前記送信アンテナから離れた位置に配置されるモニタアンテナと、
前記送信アンテナ及び前記補助アンテナから送信された信号を前記モニタアンテナで受信したときの受信信号に基づいて、前記補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御する制御部と、
を備え、
前記モニタアンテナは、複数あり、
前記制御部は、複数の前記モニタアンテナで得られる前記受信信号のうち最大の振幅を有する受信信号に基づいて、前記補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御して、前記送信アンテナ及び前記補助アンテナから送信された信号を前記モニタアンテナで受信したときの受信信号を低下させる
送信システム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記モニタアンテナの近傍には、他の前記モニタアンテナが配置されている、
請求項の送信システム。
【請求項4】
少なくとも1つの前記モニタアンテナと前記送信アンテナとを結ぶ方向に他の前記モニタアンテナが配置されている、
請求項の送信システム。
【請求項5】
前記制御部は、複数の前記モニタアンテナで受信される受信信号に対する受信処理系を時分割で利用して各受信信号の振幅を順に測定し、測定結果に基づいて最大の振幅を有する受信信号を特定する、
請求項の送信システム。
【請求項6】
前記送信アンテナは、複数のアンテナ素子を有し、
前記送信アンテナと前記補助アンテナとは、アレイアンテナを形成する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の送信システム。
【請求項7】
信号を送信する送信アンテナ及び補助アンテナと、前記補助アンテナよりも前記送信アンテナから離れた位置に配置されるモニタアンテナと、を備える送信システムにおける送信方法であって、
前記送信アンテナ及び前記補助アンテナから送信された信号を前記モニタアンテナで受信したときの受信信号に基づいて、前記補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御する制御ステップ、
を有し、前記モニタアンテナは、前記送信アンテナによる送信の干渉を抑えたい方向に配置されている
送信方法。
【請求項8】
信号を送信する送信アンテナ及び補助アンテナと、前記補助アンテナよりも前記送信アンテナから離れた位置に配置されるモニタアンテナと、を備える送信システムにおける送信方法であって、
前記送信アンテナ及び前記補助アンテナから送信された信号を前記モニタアンテナで受信したときの受信信号に基づいて、前記補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御する制御ステップ、
を有し、
前記モニタアンテナは、複数あり、
前記制御ステップにおいて、複数の前記モニタアンテナで得られる前記受信信号のうち最大の振幅を有する受信信号に基づいて、前記補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御して、前記送信アンテナ及び前記補助アンテナから送信された信号を前記モニタアンテナで受信したときの受信信号を低下させる
送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送信システム及び送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送信された無線信号が他の装置又はシステムに与える干渉は小さいほど好ましく、他の装置又はシステムへの干渉を抑えるために、無線信号の伝播を抑制する電波障壁を設置したり、指向性を有するアンテナを送信に用いたりすることが行われている。しかし、電波障壁の設置には場所が必要であり、電波障壁を設置することが困難な場合がある。指向性を有するアンテナとしてアレイアンテナを用いる場合、アレイ素子指向性に応じて振幅及び位相の制御が行われる(非特許文献1)。しかし、無線信号の送信方向(メインローブ)を維持しつつ干渉を抑えることが困難な場合がある。また、アレイアンテナ以外のアンテナを送信に用いたとしても、サイドローブにより干渉が生じる場合がある。このように、無線信号の送信により生じる他の装置又はシステムへの干渉を充分に抑えることができない場合があり、干渉の低減には改善の余地がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】吉田、「改訂 レーダ技術」、電子情報通信学会、1996年、pp.124-125
【文献】菊間信良、「アレーアンテナによる適応信号処理」、科学技術出版社、2004、pp.67-78
【文献】Yasuo Suzuki and Taneaki Chiba, "Side Lobe Suppression with Phase Weight Only", The transactions of the IEICE, vol. E73, No. 2, pp.245-249, February 1990
【文献】Rovert A. Monzingo and Thomas W. Miller, "Introduction to Adaptive Arrays", Jhon Wiley & Sons inc., pp.390-404, 1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、無線信号の送信に伴い生じる他の装置又はシステムへの干渉を低減させることができる送信システム及び送信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の送信システムは、送信アンテナ及び補助アンテナと、モニタアンテナと、制御部と、を持つ。送信アンテナ及び補助アンテナは、信号を送信する。モニタアンテナは、補助アンテナよりも送信アンテナから離れた位置に配置される。制御部は、送信アンテナ及び補助アンテナから送信された信号をモニタアンテナで受信したときの受信信号に基づいて、補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御する。モニタアンテナは、送信アンテナによる送信の干渉を抑えたい方向に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】受信信号に含まれる不要波を抑圧する受信システムの構成例を示す図。
図2】実施形態の送信システムの構成例を示す図。
図3】第1の実施形態による送信システムの構成例を示すブロック図。
図4】第1の実施形態におけるモニタアンテナの配置例を示す図。
図5】第1の実施形態における送信アンテナと補助アンテナとの角度応答のレベル関係を示す図。
図6】第2の実施形態による送信システムの構成例を示すブロック図。
図7】第3の実施形態におけるモニタアンテナの配置例を示す図。
図8】第3の実施形態におけるモニタアンテナの他の配置例を示す図。
図9】第4の実施形態による送信システムの構成例を示すブロック図。
図10】第4の実施形態における切替器に対する切替制御の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の送信システム及び送信方法を、図面を参照して説明する。以下の実施形態では、同一の符号を付した構成要素は同様の動作を行うものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0008】
まず、実施形態の送信システムにおいて用いる信号処理とその概要について説明する。図1は、受信信号に含まれる不要波を抑圧する受信システムの構成例を示す図である。図1に示す受信システムは、受信アンテナ、受信機、補助アンテナ、補助受信機、ウェイト制御部及び相関算出部を備える。受信システムは、受信アンテナで受信する受信信号に含まれる不要波を、補助アンテナで受信する信号と受信信号とを合成することで抑圧する。受信システムは、補助アンテナの出力Xに複素ウェイトWを乗じた信号W・Xと、受信アンテナの出力Y0とを合成したビーム出力Y(=Y0-W・X)を生成する。
【0009】
受信システムが不要波を受信している場合において、ビーム出力Yに含まれる不要波を最小化するように、ウェイト制御部が信号Xとビーム出力Yとの相関に基づいてウェイトWを制御する。ビーム出力Yにおける不要波を最小化するウェイトWを算出するアダプティブ演算は、非特許文献2に記載されている手法を用いることができる。算出したウェイトWを補助アンテナの受信に用いることで、不要波が到来する方向(不要波方向)に対して受信システムは受信ヌルを形成できる。受信システムは、不要波方向に受信ヌルを向けることにより、不要波を低減した受信を行うことができる。実施形態の送信システムは、図1に示した受信システムにおいて用いられるアダプティブ演算を利用する。
【0010】
図2は、実施形態の送信システムの構成例を示す図である。図2に示す送信システムは、送信アンテナ、送信機、補助アンテナ、補助送信機、ウェイト制御部、相関算出部及びモニタアンテナを備える。送信システムは、補助アンテナから信号を送信することで、送信アンテナから送信する送信信号が他の装置又はシステムに与える干渉を低減させる。送信システムの補助アンテナは、送信アンテナから送信される送信信号の干渉を低減させたい方向に送信ヌルを形成するために用いられる。
【0011】
送信ヌルを形成する方向には、モニタアンテナが配置される。モニタアンテナは、送信アンテナから送信される送信信号Y0と、補助アンテナから送信される信号W・Xとを受信する。モニタアンテナで受信される信号は、送信アンテナと補助アンテナとのそれぞれから送信される信号の合成信号Y(=Y0-W・X)となる。すなわち、モニタアンテナの出力が、図1のビーム出力に相当する。なお、図1に示した受信システムに揃えて、信号W・Xの符号を負としている。合成信号Yのレベルが最小となるように、ウェイト制御部は、送信される信号Xと合成信号Yとの相関に基づいてウェイトWを制御する。モニタアンテナで受信される合成信号Yを最小にするウェイトWを算出する演算は、前述のアダプティブ演算と同様である。
【0012】
送信システムは、補助アンテナから送信する信号に対するウェイトを制御して、モニタアンテナが配置された方向に送信ヌルを形成することで、当該方向への干渉を低減することができる。送信システムによれば、電波障壁を設置する必要がなく、また所望の方向に送信ヌルが形成でき、他の装置又はシステムへの干渉を低減することができる。また、送信アンテナの指向性に変更を加えないため、送信アンテナのメインローブに与える影響を抑えることができる。送信システムは、モニタアンテナで受信される信号を用いたフィードバックにより、補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅をウェイトWで制御する。このような制御を用いることにより、送信システムは、各素子の温度変化や経年変化に伴い指向性に変動が生じても、安定した送信ヌルを形成できる。また、送信システムによれば、送信アンテナの指向性を正確に把握せずとも、所望の方向に送信ヌルを容易に形成できる。以下、送信システムのより具体的な構成例を第1から第4の実施形態として説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態による送信システム100の構成例を示すブロック図である。送信システム100は、送信ヌルを形成する上述の手法を特徴として有する。送信システム100は、信号生成器1、変調器2、周波数変換器3、パルス変調器4、分配器5、乗算器6、6a、高出力増幅器(HPA)7、7a、送信アンテナ8、補助アンテナ8a、カプラ9、モニタアンテナ10、低ノイズ増幅器(LNA)11、11a、周波数変換器12、12a、アナログ-ディジタル(AD)変換器13、13a、最大振幅選択器14及び制御部15を備える。
【0014】
送信システム100は、N個の送信アンテナ8(8-1,…,8-N)、M個の補助アンテナ8a(8a-1,…,8a-M)及びP個のモニタアンテナ10(10-1,…,10-P)を備える。N個の送信アンテナ8は、アレイアンテナを構成する。アレイアンテナは、送信アンテナ8が直線上に配置されるリニアアレイであってもよいし、送信アンテナ8が平面上に配置されるプラナアレイであってもよい。なお、アレイアンテナの一部のアンテナ素子を補助アンテナ8aとしてもよい。送信システム100は、送信アンテナ8ごとに乗算器6及びHPA7を備える。また、送信システム100は、補助アンテナ8aごとに乗算器6a、HPA7a及びカプラ9、LNA11a、周波数変換器12a、AD変換器13aを備える。また、送信システム100は、モニタアンテナ10(10-1,…,10-P)ごとにLNA11、周波数変換器12、AD変換器13を備える。
【0015】
信号生成器1は、所定の送信パルスを生成し、送信パルスを変調器2に供給する。変調器2は、送信パルスに含まれるパルスそれぞれを符号系列で変調して変調信号を生成し、変調信号を周波数変換器3に供給する。変調に用いられる符号系列には、例えば、PN(Pseudo random noise)系列や、Gold系列、M(Maximal length)系列などが用いられる。周波数変換器3は、変調信号をRF(Radio Frequency)帯の高周波信号に変換し、高周波信号をパルス変調器4に供給する。パルス変調器4は、高周波信号に含まれる各パルスの幅及び高さの一方又は両方を変化させる変調により、送信信号を生成する。パルス変調器4は、生成した送信信号を分配器5に供給する。
【0016】
分配器5は、N個の送信アンテナ8それぞれに対応する乗算器6(6-1,…,6-N)と、M個の補助アンテナ8aそれぞれに対応する乗算器6a(6a-1,…,6-M)とに送信信号を分配する。乗算器6それぞれは、送信アンテナ8で構成されるアレイアンテナの指向方向に応じたウェイトを送信信号に乗じ、ウェイトを乗じた送信信号をHPA7に供給する。HPA7それぞれは、乗算器6から供給される送信信号を増幅して送信アンテナ8から送信する。乗算器6aそれぞれは、制御部15から供給される送信ウェイトWを送信信号に乗じ、送信ウェイトWを乗じた送信信号をHPA7aに供給する。HPA7aそれぞれは、乗算器6aから供給される送信信号を高出力増幅して補助アンテナ8aから送信する。カプラ9それぞれは、HPA7aと補助アンテナ8aとを接続する伝送線路に取り付けられ、補助アンテナ8aから送信される送信信号を抽出してLNA11aに供給する。
【0017】
LNA11aそれぞれは、抽出された送信信号を増幅して周波数変換器12aに供給する。周波数変換器12aそれぞれは、周波数変換器12aから供給される送信信号を中間周波数信号に変換し、中間周波数信号をAD変換器13aに供給する。AD変換器13aは、中間周波数信号をディジタル信号に変換し、ディジタル信号を制御部15に供給する。
【0018】
モニタアンテナ10それぞれは、送信アンテナ8の周囲であって、補助アンテナ8aよりも送信アンテナ8から離れた位置に配置される。モニタアンテナ10は、送信アンテナ8で構成されるアレイアンテナの位相中心からみて、送信信号による干渉を低減させたい方向に配置される。換言すると、送信システムにおいて送信ヌルを形成したい方向にモニタアンテナ10が配置される。モニタアンテナ10それぞれで受信される受信信号は、LNA11に供給される。LNA11、周波数変換器12及びAD変換器13は、LNA11a、周波数変換器12a及びAD変換器13aと同様に動作する。
【0019】
最大振幅選択器14には、受信信号に対する増幅、周波数変換及びAD変換により得られたディジタル信号が供給される。最大振幅選択器14は、AD変換器13から供給されるディジタル信号のうち、最大の振幅を有するディジタル信号を選択し、選択したディジタル信号を最大振幅信号として制御部15に供給する。最大振幅選択器14によるディジタル信号の選択は、P個のモニタアンテナ10で受信される受信信号のうち、振幅が最大の受信信号を選択する動作に相当する。すなわち、P個のモニタアンテナ10それぞれに対応するLNA11、周波数変換器12及びAD変換器13の振幅特性が一致していることが好ましい。それらの振幅特性に差がある場合、最大振幅選択器14は、特性差に基づいて、P個の受信信号のうち最大の振幅を有する受信信号に対応するディジタル信号を最大振幅信号として選択してもよい。
【0020】
制御部15は、最大振幅選択器14により選択された最大振幅信号と、AD変換器13aそれぞれから供給されるディジタル信号との相関を算出する。制御部15は、算出した相関に基づいて、N個の送信アンテナ8から送信される送信信号の成分が最大振幅信号において最小となるように、乗算器6aそれぞれに供給する送信ウェイトWを算出する。制御部15は、乗算器6aごとに算出した送信ウェイトWを供給する。制御部15は、最大振幅選択器14により選択される最大振幅信号に基づいて、補助アンテナ8aそれぞれに対する送信ウェイトWを逐次算出する。すなわち、制御部15は、送信アンテナ8及び補助アンテナ8aから送信される信号がモニタアンテナ10で受信されたときの振幅(受信レベル)に基づいて送信ウェイトWを算出し、送信ウェイトWを介して補助アンテナ8aから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御する。制御部15は、モニタアンテナ10で受信される信号の振幅を低下させるように各送信ウェイトWを算出する。
【0021】
送信ウェイトWの更新により最大の振幅を有するディジタル信号が他のディジタル信号に変わる場合、最大振幅選択器14は、最大振幅信号として選択するディジタル信号を切り替える。送信ウェイトWの更新と最大振幅選択器14の選択とが繰り返されることで、各モニタアンテナ10における受信信号の受信レベルが次第に低くなる。これらの動作の繰り返しにより、送信システム100はモニタアンテナ10が配置されている方向に送信ヌルを形成でき、送信ヌルを形成した方向への送信信号の干渉を低減できる。
【0022】
送信システム100は、各モニタアンテナ10で受信される信号のうち最大の振幅を有する信号を最大振幅選択器14が選択する構成を有している。モニタアンテナ10で受信される信号は、送信アンテナ8及び補助アンテナ8aで送信される信号であるため、各モニタアンテナ10の出力は高い相関を有する。そのため、各モニタアンテナ10の出力をベクトル合成すると、出力が互いに打ち消し合う場合がある。このような場合、補助アンテナ8aに対応するディジタル信号との相関を得ることができず、送信ヌルを形成できない。送信システム100は、最大振幅選択器14を備えることで、送信ウェイトWの算出を安定して行い、送信ヌルを形成することができる。
【0023】
図4は、第1の実施形態におけるモニタアンテナ10の配置例を示す図である。図4では、プラナアレイアンテナを形成するアンテナ素子の一部を補助アンテナ8aとして用い、他のアンテナ素子を送信アンテナ8として用いる構成を示している。アレイアンテナのアンテナ素子の配置されている面の法線は天頂方向を向いており、アレイアンテナの周囲にモニタアンテナ10が配置されている。例えば、アレイアンテナの位相中心を中心とした同心円上に各モニタアンテナ10を配置してもよい。モニタアンテナ10は、アレイアンテナで所望の方向にメインローブを向けた際にサイドローブが生じる方向に配置されてもよい。アレイアンテナの名ローブを向ける方向に応じて、モニタアンテナ10を移動させてもよい。このようにモニタアンテナ10をアレイアンテナの周囲に配置することにより、送信システム100は、アレイアンテナの平面方向に生じる干渉を低減させることができる。
【0024】
モニタアンテナ10とLNA11とを有線ケーブルにて接続する構成を図3において説明した。しかし、モニタアンテナ10とLNA11と周波数変換器12とを一つのモジュールとして形成し、モジュールとAD変換器13とIFケーブルで接続してもよい。あるいは、AD変換器13をモジュールに加え、ディジタル信号を伝送してもよい。また、有線ケーブルを用いた伝送に代えて、ミリ波や光信号を用いた伝送を行ってもよい。
【0025】
図5は、第1の実施形態における送信アンテナ8と補助アンテナ8aとの角度応答のレベル関係を示す図である。図5において、横軸は送信アンテナ8の指向方向を示し、縦軸は送信される信号のレベルを示す。送信システム100において、送信アンテナ8から送信される信号のレベルと、補助アンテナ8aから送信される信号のレベルとは、次の関係を満たす必要がある。N個の送信アンテナ8で形成される指向方向(メインローブ領域)では、送信アンテナ8で送信される信号のレベルが補助アンテナ8aで送信される信号のレベルが大きい。すなわち、送信アンテナ8の送信出力Ptと送信角度応答Gtとの積PtGt(main)が、補助アンテナ8aの送信出力Ptと送信角度応答Gtとの積PtGt(aux)より大きい。一方、N個の送信アンテナ8で形成される指向方向以外の方向(サイドローブ領域)では、送信アンテナ8で送信される信号のレベル(積PtGt(main))が、補助アンテナ8aで送信される信号のレベル(積PtGt(aux))より小さい。これらの関係が満たされることで、送信アンテナ8のサイドローブが生じる方向において生じる干渉を補助アンテナ8aの送信にて低減することができる。なお、送信アンテナ8から送信される信号の振幅はPtGt(main)に比例し、補助アンテナ8aから送信される信号の振幅はPtGt(aux)に比例する。PtGtは電力を表し、その平方根は振幅を表す。
【0026】
次に、最大振幅選択器14により選択された最大振幅信号と、AD変換器13aそれぞれから供給されるディジタル信号との相関に基づいた補助アンテナ8aの送信ウェイトWの算出を定式化する。例えば、送信ウェイトWの算出に最急降下法を用いる場合、補助アンテナ8aに対する送信ウェイトW(アダプティブウエイトW)は、式(1)となる。
【0027】
【数1】
式(1)において、iterは反復回数を表す。W(iter)は、第iter回目に算出される各補助アンテナ8aに対するウェイトwmを要素とするベクトル[w1,w2,…,wM]である。ymax(iter)は、第iter回目におけるP個のモニタアンテナ10の出力のうち最大の振幅を有するディジタル信号を表す。X(iter)は、M個の補助アンテナ8aから送信される信号xmを要素とするベクトル[x1,x2,…,xM]である。μは、送信ウェイトWのステップサイズを表す。zeroは、要素数Mのゼロベクトルを表す。ベクトル[・]の右肩のtは、ベクトルの転置を表す。
【0028】
上記は、送信ウェイトWが複素数で表される場合を示すが、送信ウェイトで位相のみを制御する場合、送信ウェイトφは式(2)となる(非特許文献3)。
【0029】
【数2】
式(2)において、φ(iter)は、第iter回目に算出される各補助アンテナ8aに対するウェイトφmを要素とするベクトル[φ1,φ2,…,φM]である。Im[・]は、虚数部を表す。他の変数等については、式(1)と同様である。
【0030】
送信ウェイトを算出する手法としては、他に、RLS(Recursive Least Square)法がある(非特許文献2)。RLS法では、補助アンテナ8aの信号の相関行列の逆行列演算を漸化式で算出する手法であり、式(3)で表される。
【0031】
【数3】
式(3)におけるRxx-1(iter)は、式(4)で与えられる。
【0032】
【数4】
式(3)及び式(4)におけるRxxはベクトルXの相関行列を表し、Rxx-1はRxxの逆行列を表す。ベクトルXの右肩のHは、ベクトルXのエルミート転置(共役転置)を表す。aは忘却係数を表し、0<a<1を満たす実数である。他の変数等については、式(1)及び(2)と同様である。
【0033】
RLS法を用いることにより、複数の送信ヌルを形成する場合でも、制御部15は各補助アンテナ8aに対する送信ウェイトWを最急降下法などより高速に算出できる。
【0034】
送信ウェイトを算出する他の手法としては、ランダムサーチ法がある(非特許文献4)。ランダムサーチ法では、送信ウェイトにランダム変化分の変化を与え、モニタアンテナ10の出力の変化量を観測して、最適な送信ウェイトに近づける方法である。この場合、送信ウェイトで位相を制御してもよいし、位相及び振幅を制御してもよい。ランダムサーチ法を定式化すると、式(5)で表される。
【0035】
【数5】
式(5)において、ΔW(iter)は、送信ウェイトのランダム変化分を表す。他の変数等については、式(1)~(4)と同様である。
【0036】
第1の実施形態における送信システム100は、複数のモニタアンテナ10の出力のうち最大の振幅を有する信号に基づいた送信ウェイトWの算出を特徴の一つとしている。制御部15による送信ウェイトWの算出に適用できる手法を幾つか説明したが、これらに限ることなく、制御部15は他の手法を用いて送信ウェイトを算出してもよい。
【0037】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、補助アンテナ8aと送信アンテナ8とが同じアレイアンテナに含まれ、送信アンテナ8と補助アンテナ8aとに分配器5が送信信号を供給する構成について説明した。第1の実施形態において説明した構成に限ることなく、補助アンテナ8aに信号を供給する系統と、送信アンテナ8に信号を供給する系統が異なっていてもよい。例えば、送信アンテナ8が、アレイアンテナ以外のパラボラアンテナやホーンアンテナなどである場合に、補助アンテナ8aを送信アンテナ8に装着又は周囲に配置してもよい。すなわち、送信アンテナ8とは別に補助アンテナ8aを設けてもよい。第2の実施形態では、補助アンテナ8aが送信アンテナ8と別に設けられ、送信信号を供給する系統が送信アンテナ8及び補助アンテナ8aそれぞれに設けられる構成について説明する。
【0038】
図6は、第2の実施形態による送信システム200の構成例を示すブロック図である。送信システム200は、信号生成器1、1a、変調器2、2a、周波数変換器3、3a、パルス変調器4、4a、分配器5、5a、乗算器6、6a、高出力増幅器(HPA)7、7a、送信アンテナ8、補助アンテナ8a、カプラ9、モニタアンテナ10、低ノイズ増幅器(LNA)11、11a、周波数変換器12、12a、アナログ-ディジタル(AD)変換器13、13a、最大振幅選択器14及び制御部15を備える。送信システム200は、N個の送信アンテナ8に送信信号を供給する信号処理の系統と独立した信号処理の系統として、信号生成器1aから分配器5aをM個の補助アンテナ8aに対して備える。信号生成器1aから分配器5aまでの系統で生成される送信信号は、信号生成器1から分配器5までの系統で生成される送信信号と同じである。すなわち、送信アンテナ8と補助アンテナ8aとから送信される信号は、送信ウェイトWに応じた位相又は振幅の差があるものの同じ送信信号である。
【0039】
送信システム200は、M個の補助アンテナ8aに対して送信信号を供給する信号処理の系統を、送信アンテナ8への系統と独立して有する。これにより、送信アンテナ8がアレイアンテナ以外のパラボラアンテナやホーンアンテナである場合においても、モニタアンテナ10が配置された方向に送信ヌルを形成することができる。すなわち、送信アンテナ8として用いられるアンテナの種別や構造にかかわらず、送信システム200は、所望の方向(モニタアンテナ10を配置した方向)に送信ヌルを形成できる。
【0040】
なお、送信アンテナ8に供給される送信信号を分岐させて補助アンテナ8aに供給できる場合には、送信システム200は、信号生成器1aから分配器5aまでの構成を備えずともよい。また、既存の送信装置に対しても、アンテナの種別や構造にかかわらず、モニタアンテナ10で受信される受信信号に基づいたフィードバック・ループを適用する手法により、安定した送信ヌルを形成することができる。
【0041】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、送信ヌルを形成する位置又は方向にモニタアンテナ10を配置する構成について説明した。モニタアンテナ10を配置できる範囲が狭く、送信アンテナ8とモニタアンテナ10との間の距離が短いと、モニタアンテナ10の位置及びその近傍で受信レベルが低下するものの、モニタアンテナ10を配置した方向に送信ヌルが形成されない場合がある。このような場合、他の装置又はシステムの干渉を充分に低減できない。第3の実施形態では、送信ヌルをより確実に形成できる送信システムについて説明する。
【0042】
第3の実施形態による送信システムでは、モニタアンテナ10の配置に特徴がある。図7は、第3の実施形態におけるモニタアンテナ10の配置例を示す図である。図7に示す配置例では、送信ヌルを形成したい方向に対して一定の角度幅を定め、その角度幅に応じた領域に複数のモニタアンテナ10を配置する。送信ヌルを形成したい方向にモニタアンテナ10を配置するだけでなく、当該モニタアンテナ10の近傍にも他のモニタアンテナ10を配置する。例えば、送信ヌルを形成したい方向を含む角度幅に応じた領域に複数のモニタアンテナ10を配置することで、送信システムは、所望の方向に送信ヌルをより確実に形成しやすくなる。
【0043】
図8は、第3の実施形態におけるモニタアンテナ10の他の配置例を示す図である。図8に示す配置例では、送信ヌルを形成したい方向に沿って複数のモニタアンテナ10を配置する。換言すると、送信ヌルを形成したい方向に配置されたモニタアンテナ10と送信アンテナ8の位相中心とを結ぶ方向に他のモニタアンテナ10が配置される。このように複数のモニタアンテナ10を配置することにより、送信ヌルを形成したい方向に配置された一つのモニタアンテナ10において局所的に受信レベルが低減されることを防ぎ、送信システムは、所望の方向に送信ヌルをより確実に形成しやすくなる。
【0044】
図7及び図8においてモニタアンテナ10の配置例を示したが、これらの配置例に限らず、送信ヌルを形成したい方向に応じて定まる領域に複数のモニタアンテナ10を配置して、より確実に送信ヌルが形成されるようにしてもよい。また、複数のモニタアンテナ10を配置する場合のモニタアンテナ10の間隔は、送信アンテナ8のアンテナ開口長や、送信信号の周波数に基づいて定めてもよい。アンテナ開口長が大きく、周波数が高くなるほど、送信角度応答Gtの変化がより大きくなる。そのため、アンテナ開口長が大きくなるほど、又は周波数が高くなるほど、モニタアンテナ10の間隔を狭くすることにより、送信システムは、より確実に送信ヌルを所望の方向に形成できる。
【0045】
(第4の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、複数の補助アンテナ8a及び複数のモニタアンテナ10のそれぞれに対応した受信処理の系統(LNA11からAD変換器13までの系統)を送信システムが備える構成について説明した。この構成を用いる場合、モニタアンテナ10の増加に応じて受信処理の系統数が増えることになり、ハードウェア規模の増大につながる。第4の実施形態では、ハードウェア規模の増大を抑えつつ、送信ヌルを形成できる送信システムについて説明する。
【0046】
図9は、第4の実施形態による送信システム300の構成例を示すブロック図である。送信システム300は、信号生成器1、変調器2、周波数変換器3、パルス変調器4、分配器5、乗算器6、6a、高出力増幅器(HPA)7、7a、送信アンテナ8、補助アンテナ8a、カプラ9、モニタアンテナ10、切替器16、低ノイズ増幅器(LNA)11、周波数変換器12、アナログ-ディジタル(AD)変換器13、選択・切替器17及び制御部15を備える。送信システム300と第1の実施形態の送信システム100との違いは、LNA11、周波数変換器12及びAD変換器13それぞれの数と、最大振幅選択器14を備えないことと、切替器16及び選択・切替器17を備えることである。
【0047】
送信システム300における、LNA11、周波数変換器12及びAD変換器13それぞれの数は、補助アンテナ8aの数(M)より大きく、補助アンテナ8a及びモニタアンテナ10の数の和(M+P)より小さい数である。LNA11、周波数変換器12及びAD変換器13の数(L)は、(M+1)以上かつ(M+P)未満である。
【0048】
第1の実施形態の送信システム100では、補助アンテナ8a及びモニタアンテナ10ごとに、LNA11からAD変換器13までの受信処理の系統が設けられている。すなわち、(M+P)個の信号に対する受信処理が常に並列して行われている。これに対して、送信システム300は、各モニタアンテナ10で受信する受信信号に対する受信処理を時分割で行うことで、モニタアンテナ10ごとに受信処理の系統を備えずともよい構成を有する。モニタアンテナ10に係る受信処理を時分割で行うために、送信システム300は、切替器16及び選択・切替器17を備える。
【0049】
切替器16は、各補助アンテナ8aに対応するM個のカプラ9により抽出された送信信号と、P個のモニタアンテナ10で受信された受信信号とを入力する。切替器16は、選択・切替器17の制御に応じて、入力する(M+P)個の信号から選択した信号をLNA11へ出力する。切替器16で選択された信号は、LNA11、周波数変換器12及びAD変換器13による信号処理により、ディジタル信号に変換される。選択・切替器17は、AD変換器13から入力されるディジタル信号を制御部15へ出力する。また、選択・切替器17は、切替器16に入力される(M+P)個の信号からLNA11へ出力される信号を切り替える制御を切替器16に対して行う。
【0050】
図10は、第4の実施形態における切替器16に対する切替制御の一例を示す図である。図10において、横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示す。送信信号は、送信アンテナ8及び補助アンテナ8aにおける送信の振幅(有無)を示す。補助アンテナ#1~#Mと、モニタアンテナ#1~#Pとは、それぞれに対応する信号のうち切替器16が出力する信号の有無を示す。送信アンテナ8及び補助アンテナ8aから送信信号が送信されているときに設定される最大値選定期間において、選択・切替器17は、モニタアンテナ10の受信信号が1つずつ順に出力されるように切替器16を制御する。
【0051】
選択・切替器17は、最大値選定期間において入力されるディジタル信号のうち最大の振幅を有するディジタル信号を選択し、選択したディジタル信号に対応するモニタアンテナ10-p(1≦p≦P)を特定する。すなわち、選択・切替器17は、各モニタアンテナ10で受信される受信信号の振幅を順に測定し、測定結果に基づいて最大の振幅を有するディジタル信号(受信信号)を選択する。選択・切替器17は、最大値選定期間以降に特定したモニタアンテナ10の受信信号と、カプラ9により抽出された送信信号とを出力するように切替器16を制御する。このように、選択・切替器17は、第1の実施形態の最大振幅選択器14による最大振幅を有するディジタル信号の選択を、切替器16を制御することで行う。
【0052】
制御部15は、最大値選定期間以降に選択・切替器17から出力される(M+1)個のディジタル信号に基づいて、第1の実施形態と同様の手法により補助アンテナ8aそれぞれに対する送信ウェイトWを算出する。選択・切替器17は、送信ウェイトWが更新される都度、最大値選定期間を設定してモニタアンテナ10の選択を行ってもよい。なお、選択・切替器17が行う動作及び切替器16の制御を、制御部15が行ってもよい。
【0053】
図10に示した切替制御では、最大値選定期間において1つの受信信号を順に選択する動作を説明したが、2つ以上の受信信号を順に選択するようにしてもよい。最大値選定期間において2つ以上の受信信号を選択する場合であっても、M個のカプラ9からの送信信号に対する受信処理の系統をモニタアンテナ10の受信信号に対して使用するように切替器16を制御することで、送信システム300が備える受信処理の系統数Lを(M+1)としてもよい。最大値選定期間に切替器16から出力される受信信号を複数にすることにより、最大の振幅を有するディジタル信号の選択に要する時間を短縮できる。
【0054】
送信信号に含まれる送信パルス内での振幅の時間変化が大きい場合には、送信ウェイトWの算出精度が劣化することがある。しかし、ほとんどの場合は、送信信号の振幅はほぼ一定であるとみなせるため、受信信号を時分割でモニタしてもその影響は小さい。また、最大値選定期間において切替器16が受信信号それぞれを出力する時間を1送信パルス以上の長さとしてもよい。切替器16の出力時間を1送信パルス以上の長さとすることで、送信パルス内での振幅変化の影響を抑えることができる。
【0055】
なお、第4の実施形態では、第1の実施形態の送信システム100との対比にて送信システム300の構成を説明した。しかし、第2の実施形態の送信システム200に対して、第4の実施形態で説明した構成を適用してもよい。
【0056】
上記の実施形態における送信システムは、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、CPUがプログラムを実行することにより、受信信号を選択する処理や、送信ウェイトWを算出する処理を行ってもよい。CPUは、補助記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、送信システムにおける一部又はすべての動作を行ってもよい。また、送信システムにおける動作のすべて又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記憶媒体である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0057】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、送信アンテナ及び補助アンテナから送信された信号をモニタアンテナで受信したときの受信レベルに基づいて、補助アンテナから送信される信号の位相、又は位相及び振幅を制御する制御部を持つことにより、モニタアンテナが配置された方向に送信ヌルを形成することができ、無線信号の送信に伴い生じる他の装置又はシステムへの干渉を低減させることができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1,1a…信号生成器、2,2a…変調器、3,3a…周波数変換器、4,4a…パルス変調器、5,5a…分配器、6,6a…乗算器、7,7a…HPA、8…送信アンテナ、8a…補助アンテナ、9…カプラ、10…モニタアンテナ、11,11a…LNA、12,12a…周波数変換器、13,13a…AD変換器、14…最大振幅選択器、15…制御部、16…切替器、17…選択・切替器
図1
図2
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図10