(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ドレン中和器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/16 20220101AFI20221212BHJP
F24H 9/00 20220101ALN20221212BHJP
【FI】
F24H9/16 A
F24H9/00 B
(21)【出願番号】P 2019031736
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】小島 輝明
(72)【発明者】
【氏名】星野 健太
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-175301(JP,A)
【文献】特開2016-056566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
C02F 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中和剤を収容する容器の上面にドレン導入口と、一対の満水電極を有し、
前記容器にドレン排出口を有し、
前記満水電極は前記ドレン導入口に近い第1電極と、該第1電極よりも遠い第
2電極を、前記上面に略垂直に貫通して前記容器内に延設し、
前記ドレン導入口と前記第1電極との間に前記上面から前記容器内に向かって第1壁面を立設し、
前記第1電極と前記第2電極との間に前記上面から前記容器内に向かって第2壁面を立設し、
前記第1壁面の端部と、前記第2壁面の端部には
前記容器の側壁との間に隙間を備えることを特徴とするドレン中和器。
【請求項2】
前記ドレン導入口は前記第1壁面で区画される前記上面の一端側に、
前記第2電極を前記第2壁面で区画される前記上面の他端側に、
前記第1電極を前記第1壁面と前記第2壁面で区画される前記上面に配置し、
前記第1壁面の第1隙間と、前記第2壁面の第2隙間は、前記ドレン導入口と前記第1電極と前記第2電極の並び方向と略垂直な
水平方向で離れた位置に配置し、
前記第1電極と前記第2電極も、前記並び方向と略垂直な
水平方向で離れた位置に配置することを特徴とする請求項1に記載のドレン中和器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱回収型給湯機に組み込まれるドレン中和器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来例として、熱交換器で発生した強酸性のドレンの中和処理を行うドレン中和器において、その容器内の水位の異常な上昇を検知するための水位検知用の満水電極を備えたものが知られている。このドレン中和器では、容器内に中和剤を備え、この中和剤の中をドレンが通過することで中和され安全に排水できる。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、従来例のドレン中和器内を
図5の縦断面図と
図6のBーB断面図で説明する。ドレン中和器の容器aの上面bにドレン導入口cと満水電極dを、容器aの側壁にドレン排水口eを有し、容器a内に中和剤fを備え、ドレン導入口cからのドレンの液垂れが上面bの内面を伝わることで満水電極dが導通し、給湯機の誤作動を防止するために、ドレン導入口cと満水電極dの間と、2本の満水電極dの間にそれぞれ上面bから下方に向かって壁面gを立設することで、ドレン導入口cからのドレンの液垂れを壁面gで遮断して給湯機の誤作動を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなドレン中和器ではドレン排水口eのゴミ詰まり等で満水が発生したとき、
図5で示すように満水電極dの周囲に空気溜まりhが発生し、この空気溜まりhによって満水電極d周囲のドレンの水面が変動することで満水電極d間の抵抗が変動し、満水電極dの作動が安定しない問題がある。また、これを解消するために満水電極dを下側に長くすればコストアップを招くだけでなく、ドレンの通常の水位(
図5の一点鎖線)との距離を充分に確保する必要があり、容器aが大きくなることでコストアップが発生するものだった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、中和剤を収容する容器の上面にドレン導入口と、一対の満水電極を有し、
前記容器にドレン排出口を有し、
前記満水電極は前記ドレン導入口に近い第1電極と、該第1電極よりも遠い第2電極を、前記上面に略垂直に貫通して前記容器内に延設し、
前記ドレン導入口と前記第1電極との間に前記上面から前記容器内に向かって第1壁面を立設し、
前記第1電極と前記第2電極との間に前記上面から前記容器内に向かって第2壁面を立設し、
前記第1壁面の端部と、前記第2壁面の端部には前記容器の側壁との間に隙間を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ドレン導入口からのドレンの液垂れで満水電極の誤検知が発生することを防止すると共に、満水電極の周囲に空気溜まりが発生することを防止することで満水電極の作動を安定させることができる。また、コンパクトで廉価なドレン中和器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態のドレン中和器を図面に基づいて説明する。
1は本実施形態の潜熱回収型熱源機としての潜熱回収型給湯機、2は石油等の燃料を燃焼させるバーナ、3はバーナ2に燃焼用の空気を供給する送風機、4はバーナ2の上方に備えられた燃焼室、5は燃焼室4内に収容された熱交換部である。
【0010】
前記熱交換部5は、バーナ2の燃焼により発生した燃焼ガスから顕熱を回収し一次受熱管6を流通する被加熱流体としての水を加熱するフィンチューブ式の一次熱交換器7と、一次熱交換器7を通過した燃焼ガスから潜熱を回収し二次受熱管8を流通する被加熱流体としての水を加熱する二次熱交換器9とから構成されており、一次熱交換器7、二次熱交換器9の順に通過した燃焼ガスは排気口10より潜熱回収型給湯機1外に排気される。
【0011】
11は燃焼ガス中の水蒸気が二次熱交換器9の二次受熱管8を流通する水と熱交換して露点以下の温度となることにより生成される強酸性のドレンを回収するドレン受けで、二次熱交換器9の下方に配置されているものである。また、12はドレン受け11で回収されたドレンを中和器13に導くドレン導入管である。
【0012】
14は内部に炭酸カルシウムからなる中和剤15を充填して収容する略直方体の容器で、この容器14の上面16には筒状のドレン導入口17と一対の満水電極18を有している。この満水電極18はドレン導入口17に近い第1電極19と、第1電極19よりも遠い第2電極20を、上面16に略垂直に貫通して容器14内に延設することで、容器14内のドレンの水位を検知し、ドレンが所定の水位に到達したときに容器14から溢れること防止するために潜熱回収型給湯機1を停止する。
【0013】
21はドレン導入口17と第1電極19との間に上面16から容器14内に向かって立設した第1壁面、22は第1電極19と第2電極20との間に上面16から容器14内に向かって立設した第2壁面で、ドレン導入口17からのドレンの液垂れが上面16の内面を伝わることで第1電極19と第2電極20が導通し、給湯機1が誤って停止することを防止する。また、第1壁面21の端部と、容器14の側壁23との間に隙間21aを形成する。また、第2壁面22の端部と側壁23との間に隙間22aを形成する。これらの隙間21a・22aを備えることで、ドレンの満水時でも第1壁面21と第2壁面22の周囲に空気溜まりが発生することを防止することで、満水電極18の作動を安定させることができる。
【0014】
24は容器14の一側壁23に水平方向に延設された筒状のドレン排出口で、容器14内に貯留され中和されたドレンを中和器13外に排出させる。
【0015】
32はドレン排出口24に接続され中和器13から排出される中和後のドレンを外部に排水するドレン排水管、33は給水源から供給される水を熱交換器5に流通させる給水管、34は熱交換器5で加熱された湯を流通させ、所定箇所に設けられた給湯栓(図示せず)に湯を供給する給湯管、35は給水管33から分岐した給水バイパス管である。
【0016】
36は給湯管34と給水バイパス管35との接続部に設けられ、給湯管34からの湯と給水バイパス管35からの水とを混合し、その混合比を可変できる混合弁、37は給水管33に設けられ給水温度を検出する給水温度センサ、38は給水管33に設けられ流量を検出する流量センサ、39は給湯管34に設けられ熱交換器5で加熱された湯の温度を検出する熱交出口温度センサ、40は混合弁36より下流側の給湯管34に設けられ混合弁36で混合された湯の温度を検出する給湯温度センサである。
【0017】
41は潜熱回収型給湯機1の操作指示を行うリモコンで、リモコン41には、潜熱回収型給湯機1の運転のオンオフを指示する運転スイッチ42と、給湯温度を設定するための給湯温度設定スイッチなどの操作部43と、潜熱回収型給湯機1の状態や給湯設定温度などを表示する表示部44を備えている。
【0018】
45はマイクロコンピュータを主体として、この潜熱回収型給湯機1の満水電極18、給水温度センサ37、流量センサ38、熱交出口温度センサ39、給湯温度センサ40の信号とリモコン41からの信号を受け、送風機3、混合弁36等の各アクチュエータの駆動を制御する制御手段であり、この制御手段45は、潜熱回収型給湯機1の運転時間を積算して記憶するタイマ46を有している。このタイマ46が所定積算時間をカウントすることで、中和剤15が消耗して無くなる前に表示部44に中和剤15の補充を促す表示を実施する。
【0019】
次に、この一実施形態の潜熱回収型給湯機1の動作について説明する。
前記リモコン41の運転スイッチ42がオン状態のときに、所定箇所に設けられた給湯栓(図示せず)が開栓され、流量センサ38が最低作動流量以上の流量を検出して燃焼要求が発生したと制御手段45が判断すると、送風機3および燃料ポンプ(図示せず)を駆動させバーナ2での燃焼を開始させるものである。
【0020】
前記バーナ2の燃焼により発生した燃焼ガスは、一次熱交換器7を流通し、一次熱交換器7を通過した後、二次熱交換器9を流通し、二次熱交換器9を通過した後、排気口10から潜熱回収型給湯機1外へ排出されるものである。また、給水源から供給された水は、給水管33から供給され、給水管33から二次受熱管8に導かれ、二次受熱管8から一次受熱管6へと順に流通して、二次熱交換器9および一次熱交換器7にて燃焼ガスとの熱交換により加熱される。そして、一次受熱管6から給湯管34へ導かれ、混合弁36の開度調整によって給湯設定温度に温調された湯が最終的に給湯栓から給湯される。
【0021】
この時、二次熱交換器9において、二次受熱管8を流通する水と燃焼ガスとが熱交換され、燃焼ガス中の水蒸気が露点以下となることにより生成されたドレンは、ドレン受け11で回収されてドレン導入管12を介して中和器13のドレン導入口17に流入する。ドレンはドレン導入口21から容器14内に落下し、容器14内に備える中和剤15によって中和され、容器14の側壁23に有するドレン排出口24から中和器13外に排出され、所定箇所の下水に排水される。また、ドレン中和器13の中和剤15はドレンの通過量に応じて徐々にドレンと反応して減少する。中和剤15は給湯機1の使用状態によって数年から10数年かけて減少し、無くなる前に補給するものである。
【0022】
前記中和器13内のドレンの水位は、通常時には
図2の一点鎖線で示したドレン排出口24の水位を維持し、給湯機1の運転で新たに発生し、ドレン導入口21から追加されたドレンの分量がドレン排出口24から順次排水される。しかし、ドレンには燃焼空気に含まれる不純物が混入する、長年給湯機1が使用されることで、前記不純物の堆積等のゴミ25がドレン排出口24を塞いだときには、ドレンの水位が上昇する。ドレンの水位が上昇して満水電極18まで到達した後、制御手段45は第1電極19と第2電極20の間の抵抗値が所定値以下を検出すると給湯機1の運転を停止すると共に、表示部44に中和器13の異常で満水が発生していることを表示する。
【0023】
ドレンの水位が正常なときでも、ドレン導入口17からのドレンの液垂れが上面16の内面を伝わることで第1電極19と第2電極20が導通し、給湯機1が誤って停止することを防止するために、ドレン導入口17と第1電極19との間に第1壁面21を、第1電極19と第2電極20との間に第2壁面22を備えている。
【0024】
また、ドレン排出口24にゴミ25が溜まってドレンの異常水位が発生したときでも、第1壁面21の端部と第2壁面22の端部に隙間21a・22aを備えることで、第1壁面21と第2壁面22の周囲に空気溜まりが発生することを防止することで、満水電極18の作動を安定させることができる。
【0025】
中和器13のメンテナンス時期到来の判定について説明すると、中和器13に充填される中和剤15の充填量は予め決められており、その充填量に対して中和可能な総ドレン量も中和剤(炭酸カルシウム)と水(ドレン)との化学反応式から容易に導出できる。本実施形態では、タイマ46が所定積算時間(給湯機の運転積算時間)をカウントすることで、中和剤15が消耗して無くなる前に表示部44に中和剤15の交換または補充、あるいは中和器13自体の交換といった中和器13のメンテナンス時期が到来したと判断し、その旨を報知するものである。
【0026】
図4の他の実施例について説明する、この実施例では第1壁面21の第1隙間21aと、第2壁面22の第2隙間22aを、ドレン導入口17と第1電極19と第2電極20の並び方向と略垂直な方向で離れた位置にそれぞれ1箇所づつ配置している。また、第1電極19と第2電極20は、前記並び方向と略垂直な方向で離れた位置に交互に配置することで、ドレン導入口17と第1電極19の間の距離と、第1電極19と第2電極20の間の距離を大きくすることで、ドレンの液垂れによる給湯機1の誤停止の発生を、更に防止することができる。
【0027】
以上のように本発明によれば、ドレン導入口17からのドレンの液垂れで満水電極18の誤検知が発生することを防止すると共に、満水電極18の周囲に空気溜まりが発生することを防止することで満水電極18の作動を安定させることができる。また、コンパクトで廉価なドレン中和器を提供することができる。
【0028】
なお、本発明は先に説明した一実施形態に限定されるものでなく、本実施形態では、潜熱回収型給湯機1を例に挙げて説明したが、床暖房パネルやパネルコンベクタ等の放熱端末を有し、バーナで加熱した温水を循環させて暖房運転を行える潜熱回収型の温水暖房装置に適用してもよいものである。
【0029】
また、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
13 中和器
14 容器
15 中和剤
16 上面
17 ドレン導入口
18 満水電極
19 第1電極
20 第2電極
21 第1壁面
21a 第1隙間
22 第2壁面
22a 第2隙間
24 ドレン排出口