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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20221212BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019044100
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020146130
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 信宏
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009343(WO,A1)
【文献】特開2019-005382(JP,A)
【文献】特開2017-060668(JP,A)
【文献】特開2017-051290(JP,A)
【文献】特開2018-030078(JP,A)
【文献】特開2016-211970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/00-2/28
B01J19/00-19/32
C02F1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過する流体が殺菌処理される処理流路を有する筒状の筐体と、
前記処理流路に向けて紫外線を照射する光源と、
前記光源と前記処理流路との間に設けられ、前記光源から照射された紫外線が入射する入射面と、前記処理流路に向けて紫外線が出射する出射面と、を有する窓部材と、
前記光源から照射された紫外線のうち前記入射面で反射された一部の紫外線を受光する受光部と、を備え、
前記光源は、照射した紫外線が前記入射面に対して斜めに入射するように配置されており、
前記窓部材は、前記入射面に斜めに入射した紫外線が屈折して前記出射面から出射する方向が前記筐体の軸方向と平行に近づくように、前記入射面が前記筐体の軸方向に対して斜めになるように配置されていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
通過する流体が殺菌処理される処理流路を有する筒状の筐体と、
前記処理流路に向けて紫外線を照射する光源と、
前記光源と前記処理流路との間に設けられ、前記光源から照射された紫外線が入射する入射面と、前記処理流路に向けて紫外線が出射する出射面と、を有する窓部材と、
前記光源から照射された紫外線のうち前記入射面で反射された一部の紫外線を受光する受光部と、を備え、
前記光源は、紫外線を照射するUV-LEDと、前記紫外線を平行光に近づける光学部材と、を有し、
前記光源は、照射した紫外線が前記入射面に対して斜めに入射するように配置されており、
前記窓部材は、前記入射面に斜めに入射した紫外線が屈折して前記出射面から出射する方向が前記筐体の軸方向と平行に近づくように構成されていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項3】
前記受光部は、前記光源が照射する紫外線が前記入射面で反射された反射紫外線の照度を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
検出された前記反射紫外線の照度の変化に基づいて前記光源の出力を制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項に記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
通過する流体が殺菌処理される処理流路を有する筒状の筐体と、
前記処理流路に向けて紫外線を照射する光源と、
前記光源と前記処理流路との間に設けられ、前記光源から照射された紫外線が入射する入射面と、前記処理流路に向けて紫外線が出射する出射面と、を有する窓部材と、
前記光源から照射された紫外線のうち前記入射面で反射された一部の紫外線を受光する受光部と、
前記光源の出力を制御する制御部と、を備え、
前記光源は、紫外線を照射する複数のUV-LEDがアレイ状に配置されており、
前記光源は、照射した紫外線が前記入射面に対して斜めに入射するように配置されており、
前記窓部材は、前記入射面に斜めに入射した紫外線が屈折して前記出射面から出射する方向が前記筐体の軸方向と平行に近づくように構成され
前記受光部は、前記複数のUV-LEDがそれぞれ照射する紫外線が前記入射面で反射された反射紫外線の照度分布を検出し、
前記制御部は、前記受光部が検出した前記照度分布に基づいて前記複数のUV-LEDの出力を制御することを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項6】
通過する流体が殺菌処理される処理流路を有する筒状の筐体と、
前記処理流路に向けて紫外線を照射する光源と、
前記光源と前記処理流路との間に設けられ、前記光源から照射された紫外線が入射する入射面と、前記処理流路に向けて紫外線が出射する出射面と、を有する窓部材と、
前記光源から照射された紫外線のうち前記入射面で反射された一部の紫外線を受光する受光部と、
前記光源の出力を制御する制御部と、を備え、
前記光源は、紫外線を照射する複数のUV-LEDがアレイ状に配置されており、
前記光源は、照射した紫外線が前記入射面に対して斜めに入射するように配置されており、
前記窓部材は、前記入射面に斜めに入射した紫外線が屈折して前記出射面から出射する方向が前記筐体の軸方向と平行に近づくように構成され
前記受光部は、前記複数のUV-LEDがそれぞれ照射する紫外線が前記入射面で反射された反射紫外線の照度分布を検出し、
前記制御部は、前記受光部が第1のタイミングで検出した前記反射紫外線の第1照度分布と、前記受光部が前記第1のタイミングより後の第2のタイミングで検出した前記反射紫外線の第2照度分布とに基づいて、前記複数のUV-LEDの出力を制御することを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項7】
前記窓部材は、前記入射面と前記筐体の軸方向とが成す角度αが45~75°の範囲となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項8】
前記光源は、該光源の紫外線の照射強度が最も高くなる方向と前記筐体の軸方向とが成す角度βが0~25°の範囲となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関し、特に、紫外線を照射して流体を殺菌する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線には殺菌能力があることが知られており、医療や食品加工の現場などでの殺菌処理に紫外線を照射する装置が用いられている。また、水などの流体に紫外線を照射することで、流体を連続的に殺菌する装置も用いられている。このような装置として、例えば、処理流路を区画する直管と、処理流路に向けて直管の軸方向に紫外線を発するUV-LED(Ultra Violet-Light Emitting Diode)光源と、を備える流体殺菌装置が挙げられる(特許文献1参照)。
【0003】
また、この流体殺菌装置は、UV-LEDが発する紫外線の出力の変動を検出するための受光部が処理流路の側壁に設けられており、紫外線の出力の変動に応じてUV-LED光源の出力が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-30078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の流体殺菌装置において、殺菌効率を高めるために光の照射方向と流体の流れる方向とを平行にしようとすると、指向性のあるUV-LEDを用いることになる。その場合、処理流路の側壁に設けられている受光部へ向かう紫外線の光量は減少するため、受光部での光量の検出精度が低下する。加えて、UV-LEDが発する紫外線は、窓部材や処理流路を流れる流体を透過してから受光部に到達する。そのため、受光部に到達する紫外線の光量は、流体の透過率や窓部材表面の汚れによっても変化する。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、流体殺菌装置が備える光源の出力変動を精度良く検出する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の流体殺菌装置は、通過する流体が殺菌処理される処理流路を有する筒状の筐体と、処理流路に向けて紫外線を照射する光源と、光源と処理流路との間に設けられ、光源から照射された紫外線が入射する入射面と、処理流路に向けて紫外線が出射する出射面と、を有する窓部材と、光源から照射された紫外線のうち入射面で反射された一部の紫外線を受光する受光部と、を備える。光源は、照射した紫外線が入射面に対して斜めに入射するように配置されており、窓部材は、入射面に斜めに入射した紫外線が屈折して出射面から出射する方向が筐体の軸方向と平行に近づくように構成されている。
【0008】
この態様によると、受光部は、光源から照射された紫外線のうち窓部材の入射面で反射された一部の紫外線を受光する。そのため、受光部は、流体の透過率や窓部材の汚れの影響を受けずに紫外線を受光できる。
【0009】
窓部材は、入射面が筐体の軸方向に対して斜めになるように配置されていてもよい。これにより、光源から照射された紫外線の一部が入射面で斜めに反射されるため、受光部を光源から離すことができる。
【0010】
窓部材は、入射面と筐体の軸方向とが成す角度αが45~75°の範囲となるように配置されていてもよい。角度αが大きすぎると(例えば85°)、入射面で反射された紫外線が光源近傍に戻るため、受光部を光源から余り離せない。一方、角度αが小さすぎると(例えば10°)、入射面で反射される紫外線が多くなり、処理流路に向かう紫外線が減少してしまう。そこで、角度αを45~75°の範囲で設定することで、光源と受光部との距離を適度に離すことができるとともに、入射面で反射される紫外線を抑制できる。
【0011】
光源は、該光源の紫外線の照射強度が最も高くなる方向と筐体の軸方向とが成す角度βが0~25°の範囲となるように配置されていてもよい。角度βが大きいと、光源が照射する紫外線を窓部材で大きく屈折して筐体の軸方向と平行に近づける必要がある。そのため、紫外線が窓部材を透過する際の損失が多くなる。そこで、角度βを0~25°の範囲で設定することで、窓部材で屈折し透過する紫外線の損失を抑えることができる。なお、角度βは、0~20°の範囲であってもよく、5~15°の範囲であってもよい。
【0012】
受光部は、光源が照射する紫外線が入射面で反射された反射紫外線の照度を検出してもよい。これにより、光源の出力変動を照度の変化として検出できる。
【0013】
検出された反射紫外線の照度の変化に基づいて光源の出力を制御する制御部を更に備えてもよい。これにより、例えば、光源の出力が環境や経時で変化した場合に、光源の出力を制御することで安定した殺菌処理を実現できる。
【0014】
光源は、紫外線を照射するUV-LEDと、紫外線を平行光に近づける光学部材と、を有してもよい。これにより、紫外線の照射方向と流体の流れる方向とを平行に近づけられるので、殺菌効率を高めることができる。
【0015】
光源は、紫外線を照射する複数のUV-LEDがアレイ状に配置されており、受光部は、複数のUV-LEDがそれぞれ照射する紫外線が入射面で反射された反射紫外線の照度分布を検出し、制御部は、照度分布に基づいて複数のUV-LEDの出力を制御してもよい。これにより、複数のUV-LEDの照度を個別に検出する複数のセンサを設けなくても、受光部が検出した反射紫外線の照度分布に基づいて複数のUV-LEDの出力を制御できる。
【0016】
光源は、紫外線を照射する複数のUV-LEDがアレイ状に配置されており、受光部は、複数のUV-LEDがそれぞれ照射する紫外線が入射面で反射された反射紫外線の照度分布を検出し、制御部は、受光部が第1のタイミングで検出した反射紫外線の第1照度分布と、受光部が第1のタイミングより後の第2のタイミングで検出した反射紫外線の第2照度分布とに基づいて、複数のUV-LEDの出力を制御してもよい。受光部は、光源から照射された紫外線のうち窓部材の入射面で反射された紫外線を受光する。そのため、複数のUV-LEDがアレイ状に配置されている光源の場合、受光部で検出される照度分布の各UV-LEDに対応する部分の強度は必ずしも同じではない。そこで、例えば、受光部が第1のタイミングで検出した反射紫外線の第1照度分布を基準として、受光部が第1のタイミングより後の第2のタイミングで検出した反射紫外線の第2照度分布と第1照度分布とを比較することで、各UV-LEDの劣化や故障の推定が可能となる。そして、制御部は、第2照度分布だけでなく第1照度分布を利用することで、複数のUV-LEDの個々の出力を精度良く制御できる。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、流体殺菌装置が備える光源の出力変動を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態に係る流体殺菌装置10の概略構成を示す断面図である。
図2図1に示す流体殺菌装置10の窓部材を透過する紫外線の屈折について説明するための模式図である。
図3】第1の実施の形態に係る光源の概略構成を示す図である。
図4】第2の実施の形態に係る流体殺菌装置の要部を示す模式図である。
図5】第2の実施の形態に係る光源が備える複数(9個)のUV-LEDの配列を示す正面図である。
図6】受光部の検知面を説明するための模式図である。
図7図7(a)は、受光部が検知面S1にある場合の照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図、図7(b)は、処理流路内の検知面S3での照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図である。
図8】受光部が検知面S2にある場合の照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図である。
図9】第3の実施の形態に係る流体殺菌装置の要部を示す図である。
図10図10(a)は、受光部が検知面S1にある場合の照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図、図10(b)は、処理流路内の検知面S3での照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図である。
図11図11(a)は、No.3のUV-LEDの出力を70%とし、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図、図11(b)は、No.5のUV-LEDの出力を70%とし、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図、図11(c)は、No.3、No.5のUV-LEDの出力を70%とし、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図である。
図12図12(a)は、No.3およびNo.7のUV-LEDの出力を70%とし、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図、図12(b)は、No.3のUV-LEDを消灯し、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図、図12(c)は、No.5のUV-LEDを消灯し、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の流体殺菌装置の寸法比と一致しない。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る流体殺菌装置10の概略構成を示す断面図である。流体殺菌装置10は、通過する流体が殺菌処理される処理流路12を有する筒状の筐体14と、処理流路12に向けて紫外線を照射する光源16と、光源16と処理流路12との間に設けられ、光源16から照射された紫外線L1が入射する入射面18aと、処理流路12に向けて紫外線L2が出射する出射面18bと、を有する窓部材18と、光源16から照射された紫外線L1のうち入射面18aで反射された一部の紫外線L3を受光する受光部20と、を備える。
【0022】
筐体14は、第1端部22と、第2端部24と、側壁26と、殺菌処理される流体が流入する流入管28と、殺菌処理された流体が流出する流出管30と、を有する。側壁26は、第1端部22から第2端部24に向けて軸方向に延びている。第1端部22の近傍には流出管30が設けられ、第2端部24の近傍には流入管28が設けられている。流入管28および流出管30は、側壁26から筐体14の径方向外側に延びている。
【0023】
筐体14の材質は特に限定されないが、少なくとも筐体14の内面32が紫外線に対する耐久性および反射率が高い材料であることが好ましい。筐体14の内面32は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂やアルミニウム(Al)などの金属材料で構成されることが好ましい。
【0024】
光源16は、流出管30が設けられている第1端部22に設けられている。光源16は、基板34に実装され、筐体14の軸方向Axに対して斜めに紫外線L1を照射するように配置されている。光源16からの紫外線L1の大部分は、窓部材18の入射面18aに入射し、窓部材18を通過して出射面18bから出射される。窓部材18を介して照射される紫外線L2は、多くが筐体14の軸方向の先にある第2端部24に向かって、流体の流れと反対に処理流路12を進む。また、紫外線L2の一部は、筐体14の内面32で反射されながら、流体の流れと反対に処理流路12を進む。
【0025】
光源16は、紫外線を発する発光素子であり、いわゆるUV-LED(Ultra Violet-Light Emitting Diode)である。光源16は、発光の中心波長またはピーク波長が約200nm~350nmの範囲に含まれる紫外線を照射し、殺菌効率の高い波長である260nm~290nmの範囲の紫外線を発することが好ましい。このような紫外線LEDとして、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いたものが好ましい。
【0026】
窓部材18は、第1端部22の近傍の凹部38に嵌め込まれ、シール部材(不図示)により凹部38との隙間が密閉される。窓部材18は、紫外線の透過率が高い材料で構成されることが好ましく、石英(SiO)ガラスやサファイア(Al)ガラス、非晶質のフッ素系樹脂などで構成される。
【0027】
本実施の形態に係る光源16は、照射した紫外線L1が窓部材18の入射面18aに対して斜めに入射するように配置されている。窓部材18は、入射面18aに斜めに入射した紫外線L1が屈折して出射面18bから出射する方向(紫外線L2の照射方向)が筐体14の軸方向Axと平行に近づくように構成されている。
【0028】
また、本実施の形態に係る受光部20は、光源16から照射された紫外線L1のうち入射面18aで反射された一部の紫外線L3を受光するため、流体の透過率や窓部材18の出射面18bの汚れの影響を受けずに紫外線L3を受光できる。
【0029】
窓部材18は、入射面18aが筐体14の軸方向Axに対して斜めになるように配置されている。これにより、光源16から照射された紫外線L1の一部が入射面18aで斜めに反射されるため、受光部20を光源16から離すことができる。また、窓部材18は、流出管30から流出する流体の流れを余り阻害しないように、軸方向Axに対して斜めの出射面18bが流出管30に向くように配置されている。
【0030】
受光部20は、例えば、紫外線の光量(強度、照度)の計測が可能なフォトダイオードなどの光量センサを含み、光源16が照射する紫外線L1が入射面18aで反射された紫外線L3の光量(強度、照度)を検出できる。これにより、光源16の出力変動を照度の変化として検出できる。受光部20は、受光した紫外線の光量に関する情報を制御部36に送信する。
【0031】
制御部36は、受光部20からの光量情報をモニタし、検出された紫外線L3の照度の変化に基づいて光源の出力を制御する。例えば、制御部36は、受光部20からの光量情報が所定の閾値を下回る場合、光源16の出力強度が閾値以上となるように光源16の駆動電流を増加させる。制御部36は、光源16の駆動電流を増加させたにも拘わらず、依然として所定の閾値を下回る場合、所望の殺菌効果が実現できない旨を示すアラート情報を出力してもよい。このように、本実施の形態に係る流体殺菌装置10は、光源16の出力が環境や経時で変化した場合に、光源16の出力を制御することで安定した殺菌処理を実現できる。
【0032】
次に、窓部材18の入射面18aと筐体14の軸方向Axとの成す角度、光源16の紫外線の照射強度が最も高くなる方向と筐体14の軸方向Axとが成す角度について詳述する。図2は、図1に示す流体殺菌装置10の窓部材18を透過する紫外線の屈折について説明するための模式図である。
【0033】
図2に示す角度αは、窓部材18の入射面18aと筐体14の軸方向Axとが成す角度である。角度βは、光源16の紫外線の照射強度が最も高くなる方向(光源の主光軸方向)と筐体14の軸方向Axとが成す角度である。光源16が設けられている空間の雰囲気は空気(屈折率n1=1.000)、窓部材18は合成石英ガラス(屈折率n2=1.492:波長280nmの場合)、処理流路12を流れる流体は水(屈折率n3=1.333:波長280nmの場合)である。また、紫外線L1の窓部材18への入射角をθ1、屈折角をθ2とする。また、入射面18aで屈折した紫外線L3’の処理流路12への入射角をθ2’、屈折角をθ3とする。また、図2に示す窓部材18は、入射面18aと出射面18bとが平行である。なお、入射面18aと出射面18bとは必ずしも平行でなくてもよい。
【0034】
ここで、窓部材18の出射面18bから出射する紫外線L2の進む方向が軸方向Axと平行になるようにするためには、以下の関係が成立するように角度αや角度βを設定すればよい。
n1×sinθ1=n2×sinθ2・・・(1)
n2×sinθ2’=n3×sinθ3・・・(2)
θ1=90-α+β・・・(3)
【0035】
なお、窓部材18の入射面18aと出射面18bとが平行である場合、更に以下の関係が成立する。
θ2=θ2’・・・(4)
θ3=θ1-β・・・(5)
【0036】
式(1)~式(5)を考慮すると、以下の式(6)を満足するようにαとβを設定すればよい。
n1/n3=sin(90-α)/sin(90-α+β)・・・式(6)
【0037】
したがって、例えば角度αが60°となるように窓部材18を配置した場合、角度βが約12°となるように光源16の主光軸方向を設定すればよい。また、光源16が照射する紫外線L1が入射面18aに入射する入射角θ1が42°(90-α+β)であるため、入射面18aに対して反射角42°で反射された紫外線L3が受光できる位置に受光部20を設ければよい。
【0038】
このように、本実施の形態に係る流体殺菌装置10は、光源16、窓部材18および受光部20のそれぞれの位置や向きを工夫することで、窓部材18を透過した紫外線L2が筐体14の軸方向Axと平行に近い角度で処理流路12内の流体を殺菌する。また、光源16の入射面18aへの入射角θ1がある程度大きいため、入射面18aで反射された紫外線L3は光源16から離れた方向へ向かう。そのため、光源16から離れた位置に受光部20を設けることができる。
【0039】
上述の角度αは45~75°の範囲となるように配置されているとよい。角度αが大きすぎると(例えば85~90°)、入射面18aで反射された紫外線L3が光源近傍に戻るため、受光部20を光源16から余り離せない。一方、角度αが小さすぎると(例えば0~10°)、入射面18aで反射される紫外線L3が多くなり、処理流路12に向かう紫外線L2が減少してしまう。そこで、角度αを45~75°の範囲で設定することで、光源と受光部との距離を適度に離すことができるとともに、入射面18aで反射される紫外線L3を抑制できる。
【0040】
また、角度βは0~25°の範囲となるように配置されているとよい。角度βが大きいと、光源16が照射する紫外線L1を窓部材18で大きく屈折させて筐体14の軸方向Axと平行に近づける必要がある。そのため、紫外線L1が窓部材18を透過する際の損失が多くなる。そこで、角度βが0~25°の範囲とすることで、窓部材で屈折し透過する際の紫外線の損失を抑えることができる。なお、成す角度βは、0~20°の範囲であってもよく、5~15°の範囲であってもよい。
【0041】
図3は、第1の実施の形態に係る光源の概略構成を示す図である。図3に示すように、光源16は、紫外線を照射するUV-LED40と、紫外線を平行光に近づける光学部材42と、を有している。光学部材42は、UV-LED40から放射状に出射した紫外線の広がりを抑えるためのリフレクタであり、放射状に出射した紫外線を平行光に近づくように反射面が設計されている。なお、光学部材42は、コリメータレンズであってもよい。これにより、光源16から照射される紫外線L1の広がり(配光角度)を20°以内に抑えること可能とり、紫外線の照射方向と流体の流れる方向とを平行に近づけられるので、殺菌効率を高めることができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る流体殺菌装置は、複数のUV-LEDがアレイ状に配置された光源を備えている点が第1の実施の形態に係る流体殺菌装置10と異なる。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0043】
図4は、第2の実施の形態に係る流体殺菌装置の要部を示す模式図である。なお、図4においてはリフレクタ等の光学部材の図示は省略している。
【0044】
流体殺菌装置100が備える光源44は、紫外線を照射する複数のUV-LED40がアレイ状に配置されている。受光部46は、複数のUV-LED40がそれぞれ照射する紫外線L1が入射面で反射された紫外線L3の照度分布を検出する。制御部36は、照度分布に基づいて複数のUV-LED40の出力を制御する。これにより、複数のUV-LED40の照度を個別に検出する複数のセンサを設けなくても、受光部46が検出した紫外線L2の照度分布に基づいて複数のUV-LED40の出力を制御できる。
【0045】
図5は、第2の実施の形態に係る光源が備える複数(9個)のUV-LED40の配列を示す正面図である。図6は、受光部の検知面を説明するための模式図である。図7(a)は、受光部が検知面S1にある場合の照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図、図7(b)は、処理流路12内の検知面S3での照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図である。なお、検知面S1は、各UV-LED40から検知面S1までの光路長がほぼ同じになる位置である。
【0046】
図6に示すように光源44から照射された紫外線L1が理想的な平行光の場合、検知面S1での照度分布は9個のUV-LED40(図5に示すNo.1~No.9)に対応する同じ強度のピークP1~P9を有する(図7(a)参照)。また、窓部材18で屈折された紫外線L2による処理流路12内の検知面S3での照度分布は、図7(b)に示すように中央を含む広い範囲で均一になっている。
【0047】
このように、装置稼働の初期において、受光部46の検知面S1での照度分布が各UV-LED40に対応する同じ強度のピークを有する場合、その後の照度分布における各ピークの強度の情報を制御部36が取得すればよい。制御部36は、照度分布における各ピークの強度の情報に基づいてUV-LED40が劣化や故障しているか否かを判別できる。仮に、各ピークのいずれかの強度が所定の閾値より低下している場合、制御部36は、該当するピークに対応するUV-LED40の駆動電流を上昇させてもよい。また、各ピークのいずれかの強度が見られない場合、制御部36は、該当するピークに対応するUV-LED40が故障したと判断し、流体殺菌装置10の動作を停止させてもよい。
【0048】
次に、受光部が検知面S2にある場合について説明する。なお、検知面S2は、各UV-LED40から検知面S2までの光路長が同じではない(一定ではない)位置である。図8は、受光部が検知面S2にある場合の照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図である。図6に示すように光源44から照射された紫外線L1が理想的な平行光の場合であっても、検知面S2での照度分布は9個のUV-LED40(図5に示すNo.1~No.9)に対応するピークP1~P9を有するものの、その強度は異なる(図8参照)。これは、各UV-LED40が照射した紫外線L1が検知面S2に到達するための光路長が同じではないためである。
【0049】
このような場合、装置稼働後の所定のタイミングで、検知面S1で検出された照度分布だけに基づいて、制御部36がUV-LED40の劣化や故障を判断しようとすると、例えば、初期において強度の低いピークP1~P3に対応するUV-LED40が過大に劣化していると判断されるおそれがある。
【0050】
そこで、制御部36は、受光部46が第1のタイミング(例えば、装置設置後の初期設定時)で検出した紫外線L3の第1照度分布と、受光部46が第1のタイミングより後の第2のタイミング(装置動作中の所定のタイミング)で検出した紫外線L3の第2照度分布とに基づいて、複数のUV-LED40の出力を制御するとよい。
【0051】
前述のように、複数のUV-LED40がアレイ状に配置されている光源44の場合、受光部46で検出される照度分布の各UV-LEDに対応する部分の強度は必ずしも同じではない。そこで、受光部46が第1のタイミングで検出した紫外線L3の第1照度分布を基準として、受光部46が第2のタイミングで検出した紫外線L3の第2照度分布と第1照度分布とを比較することで、各UV-LEDの劣化や故障の推定が可能となる。そして、制御部36は、第2照度分布だけでなく第1照度分布を利用することで、複数のUV-LED40の個々の出力を精度良く制御できる。
【0052】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る流体殺菌装置は、複数のUV-LEDがアレイ状に配置された光源を備えている点が第2の実施の形態に係る流体殺菌装置100と同じであるが、光源から照射される紫外線が平行光ではなくある程度広がりを持っている点が異なる。以下の説明では、前述の各実施の形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0053】
図9は、第3の実施の形態に係る流体殺菌装置の要部を示す図である。図10(a)は、受光部が検知面S1にある場合の照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図、図10(b)は、処理流路12内の検知面S3での照度分布をシミュレーションで算出した画像を示す図である。
【0054】
図9に示すように、窓部材18の入射面18aで反射した紫外線L3は、平行光ではなく、±10°程度の広がりのある光である。そのため、検知面S1での照度分布は、各UV-LED40の紫外線の一部がオーバーラップすることで、9個のUV-LED40に対応しない4個のピークしか生じない(図10(a)参照)。一方、窓部材18で屈折された紫外線L2による処理流路12内の検知面S3での照度分布は、図10(b)に示すように中央を含む範囲で均一になっている。
【0055】
このように、本実施の形態に係る流体殺菌装置110は、第2の実施の形態に係る流体殺菌装置100と異なり、照射する紫外線L1がある程度広がりのある光源48を備えている。そのため、検出した照度分布のピークの強度のみに着目しても各UV-LED40の劣化や故障を正確に判別できない。
【0056】
そこで、予め各UV-LED40の出力によって照度分布がどのようになるかを測定またはシミュレーションし、制御部36が有する記憶部に照度分布の情報(画像情報)として記憶しておく。制御部36は、所定のタイミングで受光部46により検出された照度分布の情報と、記憶部に記憶されている参考照度分布の情報とを照合し、最も近い参考照度分布の情報に基づいて、各UV-LED40の出力状態(劣化や故障)を判別する。
【0057】
図11(a)は、No.3のUV-LEDの出力を70%とし、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図、図11(b)は、No.5のUV-LEDの出力を70%とし、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図、図11(c)は、No.3、No.5のUV-LEDの出力を70%とし、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図である。図12(a)は、No.3およびNo.7のUV-LEDの出力を70%とし、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図、図12(b)は、No.3のUV-LEDを消灯し、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図、図12(c)は、No.5のUV-LEDを消灯し、それ以外のUV-LEDの出力を100%とした場合の照度分布を示す図である。
【0058】
制御部36は、受光部46で検出した照度分布の情報と、記憶部に記憶されている図11(a)~図12(c)の各図に示すような参照照度分布の特徴的な分布の情報と、に基づいて、必要に応じて各UV-LED40の出力状態を制御する。なお、制御部はCPU(中央演算装置)、GPU(画像処理装置)、DRAM(ダイナミックランダムアクセルメモリ)、フラッシュメモリといった半導体部品を組み合わせることで実現される。
【0059】
上述の各実施の形態に係る流体殺菌装置における作用効果について以下に列挙する。
(1)各実施の形態に係る流体殺菌装置は、受光部で検出する紫外線が処理流路を透過した紫外線ではないため、流体の種類や汚れに影響されず、光源の出力変動を精度良く検出できる。
(2)複数のUV-LEDがアレイ状に配置されている光源の場合、処理流路の側壁に設けられている受光部では、仮に紫外線の光量の変動を検出できても、どのUV-LEDの出力が変動したのかはっきりとは分からない。一方、各実施の形態に係る流体殺菌装置は、窓部材18の入射面で反射した紫外線を受光部で検出するため、各UV-LEDの出力変動を個別に精度良く検出できる。
(3)上述の各実施の形態では、光源、受光部および窓部材の全てが筐体14の第1端部22側にある場合について説明したが、光源と受光部とを処理流路12を挟んで対向するように設ける必要がないため、第2端部24にも同様の光源、受光部および窓部材を設けることができる。
(4)光源と受光部とを離せるため、例えば、複数の半導体発光素子がアレイ状に配列されている光源において、フォトセンサを素子間に設ける必要がない。その結果、光源における複数の半導体発光素子の実装密度を向上できる。
【0060】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた各実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0061】
上述の各実施の形態では、水などの流体に紫外線を照射して殺菌処理を施すための装置として説明した。変形例においては、紫外線の照射により流体に含まれる有機物を分解させる浄化処理に本装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
L1 紫外線、 S1 検知面、 L2 紫外線、 S2 検知面、 L3 紫外線、 S3 検知面、 10 流体殺菌装置、 12 処理流路、 14 筐体、 16 光源、 18 窓部材、 18a 入射面、 18b 出射面、 20 受光部、 22 第1端部、 24 第2端部、 26 側壁、 28 流入管、 30 流出管、 32 内面、 34 基板、 36 制御部、 38 凹部、 40 UV-LED、 42 光学部材、 42 反射角、 44 光源、 46 受光部、 48 光源、 100,110 流体殺菌装置。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
図11
図12