(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】化粧材の固定構造及びカーテンウォール
(51)【国際特許分類】
E04F 19/00 20060101AFI20221212BHJP
E04B 2/96 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E04F19/00 D
E04B2/96
(21)【出願番号】P 2019046913
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 数人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 正裕
(72)【発明者】
【氏名】竹島 儀貢
(72)【発明者】
【氏名】坂口 克己
(72)【発明者】
【氏名】萩野 太郎
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-177210(JP,U)
【文献】特開平09-279736(JP,A)
【文献】特開2004-052484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0073036(US,A1)
【文献】実開昭60-177209(JP,U)
【文献】実開昭60-179712(JP,U)
【文献】実開昭63-10115(JP,U)
【文献】実開昭63-10114(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/00
E04B 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁を構成する壁構成材の屋外側に化粧材を固定するための化粧材の固定構造であって、
前記壁構成材は、屋外側端部に壁側固定部を有しており、
前記化粧材は、屋内側端部に化粧側固定部を有しており、
前記壁側固定部は、屋外側に向けてそれぞれ延出した1対の壁側延出板を有しており、
前記化粧側固定部は、屋内側に向けてそれぞれ延出した1対の化粧側延出板を有しており、
前記1対の壁側延出板と前記1対の化粧側延出板とは、板厚方向に重ね合わされた前記壁側延出板と前記化粧側延出板とからなる2組の積層板部を構成しており、
前記2組の積層板部のうち、一方の積層板部に関しては、前記壁側延出板に通孔を有し、かつ、前記化粧側延出板に、先端部に開口した鉤形状のボルト挿通溝を有するのに対し、他方の積層板部に関しては、前記壁側延出板に、先端部に開口した鉤形状のボルト挿通溝を有し、かつ、前記化粧側延出板に通孔を有しており、
前記2組の積層板部のそれぞれは、前記壁側延出板に備えられた前記通孔又は前記ボルト挿通溝と、前記化粧側延出板に備えられた前記ボルト挿通溝又は前記通孔とをそれぞれ挿通したボルトと、前記ボルトに螺合したナットと、前記ボルトのうちで前記ナットが螺合した部分よりも先端側に装着された留め具とを備えた締結部材により結合固定されている、
化粧材の固定構造。
【請求項2】
少なくとも1組の積層板部に関して、前記壁側延出板と前記化粧側延出板とのうち、いずれか一方の延出板の先端部には、略L字形の係止部が設けられており、いずれか他方の延出板の基端部には、凹状の被係止部が設けられており、前記係止部と前記被係止部とが屋内外方向に係合している、
請求項1に記載した化粧材の固定構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の化粧材の固定構造を備えたカーテンウォール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁を構成するフレーム材やパネル材などの壁構成材の屋外側に、化粧材を固定するための化粧材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビルディングなどの建築物にあっては、外壁を構成するパネル材の表面形状を工夫したり、外壁を構成するフレーム材の配置を工夫するなどして、外観意匠を向上することが行われている。
【0003】
ただし、近年、建築物の外観意匠に対する要望が多様化してきており、建築物の外壁を構成する壁構成材自体を工夫することによっては、外観意匠に対する要望に必ずしも応えられないケースが出てきている。また、例えばフレーム材の屋外側部分の形状を工夫した場合に、該フレーム材によって保持されたガラスパネルの交換作業が行えなくなるなどの不都合を生じる可能性がある。そこで、例えば特許文献1に記載された構造のように、建築物の壁構成材に、意匠を凝らした化粧材を取り付けることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構造は、化粧材を挿通したビスをフレーム材である無目に直接螺合し、化粧材を無目に結合固定する構造を採用しており、化粧材の脱落防止については特段考慮されていない。このため、化粧材の交換作業時やガラスパネルの交換作業時など、化粧材を無目から取り外す際に、化粧材を脱落(落下)させてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みて、化粧材が壁構成材から脱落することを防止できる、化粧材の固定構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化粧材の固定構造は、建築物の壁を構成する、フレーム材やパネル材などの壁構成材の屋外側に、化粧材を固定するための固定構造である。
前記壁構成材は、屋外側端部に壁側固定部を有している。
前記化粧材は、屋内側端部に化粧側固定部を有している。
前記壁側固定部は、屋外側に向けてそれぞれ延出した1対の壁側延出板を有している。
前記化粧側固定部は、屋内側に向けてそれぞれ延出した1対の化粧側延出板を有している。
前記1対の壁側延出板と前記1対の化粧側延出板とは、板厚方向に重ね合わされた前記壁側延出板と前記化粧側延出板とからなる2組の積層板部を構成している。
前記2組の積層板部のうち、一方の積層板部に関しては、前記壁側延出板に通孔(円孔)を有し、かつ、前記化粧側延出板に、先端部に開口した鉤形状のボルト挿通溝を有するのに対し、他方の積層板部に関しては、前記壁側延出板に、先端部に開口した鉤形状のボルト挿通溝を有し、かつ、前記化粧側延出板に通孔を有している。
そして、前記2組の積層板部のそれぞれを、前記壁側延出板に備えられた前記通孔又は前記ボルト挿通溝と、前記化粧側延出板に備えられた前記ボルト挿通溝又は前記通孔とをそれぞれ挿通したボルトと、前記ボルトに螺合したナットと、前記ボルトのうちで前記ナットが螺合した部分よりも先端側に装着された、割りピンやCリング、Uリングなどの留め具とを備えた、締結部材により結合固定している。
【0008】
本発明では、少なくとも1組の積層板部に関して、前記壁側延出板と前記化粧側延出板とのうち、いずれか一方の延出板の先端部に、略L字形の係止部を設け、いずれか他方の延出板の基端部に、凹状の被係止部を設け、前記係止部と前記被係止部とを屋内外方向に係合させることができる。
【0009】
本発明では、好ましくは、前記壁側延出板に形成する前記ボルト挿通溝を、屋内外方向に伸長した横溝部と、該横溝部の屋内側端部から下側に向けて伸長した、下向き縦溝部とからなる、略横L字形状のものとし、前記化粧側延出板に形成する前記ボルト挿通溝を、屋内外方向に伸長した横溝部と、該横溝部の屋外側端部から上側に向けて伸長した、上向き縦溝部とからなる、略L字形状のものとすることができる。
また、本発明では、前記壁構成材(例えば方立や無目)と、前記化粧材とを、上述したような化粧材の固定構造によって接合することで、建物の外壁を構成するカーテンウォールを形成することができる。
【0010】
本発明では、前記ナットを、片側からの締結作業のみによって前記ボルトを締め付けることができるポップナットとし、該ナットの一部を前記通孔の開口縁部に押し付けるように塑性変形させる(かしめ固定する)ことで、前記ナットを前記通孔を備えた延出板に支持固定することができる。
【0011】
本発明では、前記壁構成材の屋外側面に、前記化粧側固定部の先端部と上下方向に係合する脱落防止部(方立側脱落防止部材)を設けるか、又は/及び、前記化粧材の屋内側面に、前記壁側固定部の先端部と上下方向に係合する脱落防止部(化粧側脱落防止部材)を設けることができる。また、前記壁構成材と、前記化粧材とを、上述したような化粧材の固定構造によって接合することで、前記化粧材の脱落を防止した、カーテンウォールを形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化粧材やガラスパネルの交換作業時において、化粧材が壁構成材から脱落することを防止できる。
すなわち、本発明では、化粧材を壁構成材に対して、ボルトとナットとの分離防止を図れる留め具を備えた締結部材により結合固定するため、化粧材を壁構成材から取り外す際にボルトを緩めた場合にも、ボルトがナットから抜け落ちずに済む。したがって、締結部材が落下することを防止できるため、化粧材の脱落を防止することができる。
【0013】
また、壁構成材が備える壁側延出板と化粧材が備える化粧側延出板とのうち、いずれか一方の延出板の先端部に設けられた係止部と、いずれか他方の延出板の基端部に設けられた被係止部とを、屋内外方向に係合させる構成を採用すれば、係止部と被係止部との係合部により、化粧材に作用する風荷重などの力の一部を支承することができる。このため、化粧材を壁構成材に結合固定するのに用いる締結部材の数を減らすことが可能になるとともに、締結部材を構成するボルトの径を小さくすることが可能になる。また、係止部と被係止部との係合により、壁構成材に対する化粧材の取り付け位置を規制することができるため、化粧材の取り付け作業の作業性を向上することもできる。
【0014】
また、壁構成材が備える1対の壁側延出板と化粧材が備える1対の化粧側延出板とを、それぞれ板厚方向に重ね合わせて2組の積層板部を構成し、それぞれの積層板部を締結部材により結合固定する構造を採用すれば、いずれか片方の積層板部のみを結合固定する構造を採用した場合に比べて、化粧材を壁構成材に対して強固に結合固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施の形態の第1例に関して、化粧材を固定したカーテンウォールを屋外側から見た模式図である。
【
図3】
図3は、
図2から方立及び躯体を取り出して示す図である。
【
図4】
図4は、方立側固定部を、屋外側から見て模式的に示した斜視図である。
【
図5】
図5の(A)は、躯体及び取付アタッチメントを示す断面図であり、
図5の(B)は、躯体及び取付アタッチメントを屋外側から見た図である。
【
図7】
図7は、化粧側固定部を、屋内側から見て模式的に示した斜視図である。
【
図12】
図12の(A)は、
図8から第1の締結部材及び第2の締結部材を省略して示す図であり、
図12の(B)は、
図12の(A)のE-E断面図である。
【
図13】
図13の(A)は、
図8から第1の締結部材及び第2の締結部材を省略して示す図であり、
図13の(B)は、
図13の(A)のF-F断面図である。
【
図14】
図14は、方立に対する化粧材の取り付け手順を説明するために示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、
図1~
図14を用いて説明する。本例では、本発明をビルディングの外壁を構成するカーテンウォールに適用した例を示す。
【0017】
[カーテンウォールの全体構造]
本例のカーテンウォール1は、マリオン方式のカーテンウォールであり、
図1に示すように、縦材(縦枠)である方立2と、横材(横枠)である無目3と、ガラスパネル4と、化粧材5とを備えている。
【0018】
方立2は、長手方向を上下方向に向けて配置され、躯体6(
図2、
図3、
図5参照)の屋外側に固定されている。無目3は、長手方向を左右方向に向けて配置され、隣り合う方立2同士の間に架け渡すように連結されている。ガラスパネル4は、四角形状を有しており、方立2と無目3とにより仕切られた開口部7に配置されている。本例では、ガラスパネル4だけでなく、方立2及び無目3についても、外部に露出して、カーテンウォール1の外面を構成する。化粧材5は、外壁の意匠性を向上させるために設けたものであり、方立2の屋外側に、方立2を覆うように固定されている。このため、方立2が、特許請求の範囲に記載した壁構成材に相当する。躯体6は、矩形状の断面形状を有しており、長手方向を上下方向に向けて配置されている。なお、上下方向、左右方向及び屋内外方向とは、カーテンウォール1を躯体6に取り付けた状態での各方向をいう。
【0019】
[方立の構造]
方立2は、アルミニウム合金の押し出し型材製であり、
図3に示すように、方立本体8と、躯体取付部9と、方立側固定部10とを一体に備えている。方立本体8は、方立2の屋内外方向の中間部を構成している。躯体取付部9は、方立本体8の屋内側に隣接する、方立2の屋内側端部を構成しており、方立側固定部10は、方立本体8の屋外側に隣接する、方立2の屋外側端部を構成している。本例では、方立側固定部10が、特許請求の範囲に記載した壁側固定部に相当し、後述する方立側延出板17a、17bが、特許請求の範囲に記載した壁側延出板に相当する。なお、本発明を実施する場合に、方立と方立側固定部とを、互いに外側では別体とし、部品(ブラケット)である方立側固定部を方立に固定する構造を採用することもできる。
【0020】
方立本体8は、それぞれが矩形状の断面形状を有し、屋内外方向に隣接配置された屋内側中空部11及び屋外側中空部12と、1対の張出片13とを有している。屋内側中空部11は、屋内側の見付け片11aと、屋外側の見付け片11bと、左右1対の見込み片11cとを備えている。屋外側中空部12は、屋内側の見付け片12aと、屋外側の見付け片12bと、左右1対の見込み片12cとを備えている。本例では、屋内側中空部11の屋外側の見付け片11bと、屋外側中空部12の屋内側の見付け片12aとが、一体に構成されている。つまり、屋内側中空部11の屋外側の見付け片11bの中間部が、屋外側中空部12の屋内側の見付け片12aになっている。
【0021】
1対の張出片13は、屋内側中空部11の屋外側の見付け片11bの左右両端部から左右両側に向けて延出している。また、屋外側中空部12を構成する1対の見込み片12cの外側面には、略L字形の断面形状を有する方立側係止爪12dがそれぞれ2つずつ設けられている。本例では、方立側係止爪12dに対して、後述するように押縁14を係止する。これにより、方立本体8の左右両側に、ガラスパネル4の左右両側の縦辺を保持するための保持凹溝15を設ける。
【0022】
躯体取付部9は、方立2を躯体6に対して取り付けるためのもので、屋内側中空部11を構成する1対の見込み片11cの屋内側端部からそれぞれ屋内側に向けて延出した、1対の躯体取付板16から構成されている。1対の躯体取付板16は、左右方向に離隔して互いに平行に配置されている。
【0023】
方立側固定部10は、方立2の屋外側に化粧材5を固定するためのもので、屋外側中空部12の屋外側の見付け片12bの屋外側面から屋外側に向けてそれぞれ延出した、1対の方立側延出板17a、17bから構成されている。1対の方立側延出板17a、17bは、左右方向に離隔して互いに略平行に配置されている。また、1対の方立側延出板17a、17bの屋内外方向に関する長さ寸法は、互いに同じである。
【0024】
1対の方立側延出板17a、17bのうち、左右方向に関して一方側(
図3及び
図4のの右側)に配置された第1の方立側延出板17aは、方立側係止部18と、方立側ボルト挿通溝19とを有している。
【0025】
方立側係止部18は、第1の方立側延出板17aの先端部(屋外側端部)に設けられたもので、略L字形の断面形状を有しており、左右方向に関して他方側(
図3及び
図4の左側)に向けて略直角に折れ曲がっている。
【0026】
方立側ボルト挿通溝19は、第1の方立側延出板17aの上下方向の1乃至複数箇所に設けられており、左右方向視が横L字形(鉤形)の切欠きである。方立側ボルト挿通溝19は、横溝部19aと、下向き縦溝部19bとから構成されている。このうちの横溝部19aは、屋内外方向に略水平に伸長し、その屋外側端部が第1の方立側延出板17aの先端部に開口し、その屋内側端部が第1の方立側延出板17aの中間部に位置している。下向き縦溝部19bは、横溝部19aの屋内側端部から下側に向けて伸長している。横溝部19a及び下向き縦溝部19bの幅寸法は、互いに同じであり、後述する第1の締結部材42を構成するボルト44の直径よりもわずかに大きい。このような方立側ボルト挿通溝19を設けることにより、第1の方立側延出板17aの先端部に設けられた方立側係止部18は、上下方向に関して不連続になっている。
【0027】
1対の方立側延出板17a、17bのうち、左右方向に関して他方側に配置された第2の方立側延出板17bは、方立側折曲部20と、方立側被係止部21と、方立側通孔22と、方立側切欠き23とを有している。
【0028】
方立側折曲部20は、第2の方立側延出板17bの先端部(屋外側端部)に設けられたもので、略L字形の断面形状を有しており、方立側係止部18とは反対に、左右方向に関して一方側に向けて略直角に折れ曲がっている。つまり、方立側折曲部20と方立側係止部18とは、互いに近づく方向に折れ曲がっている。
【0029】
方立側被係止部21は、第2の方立側延出板17bの基端部(屋内側端部)に、第2の方立側延出板17bの上下方向の全長にわたり設けられている。また、方立側被係止部21は、左右方向に関して一方側に向けて凹んだ矩形凹状の断面形状を有している。本例では、このような方立側被係止部21を形成するために、第2の方立側延出板17bの基端部を、断面形状がクランク形になるように屈曲させている。
【0030】
方立側通孔22は、円孔であり、第2の方立側延出板17bの上下方向の1乃至複数箇所に設けられている。また、方立側通孔22は、屋内外方向に関しては、下向き縦溝部19bと同じ位置に形成されているが、上下方向に関しては、下向き縦溝部19bの下端部よりも下方にずれた位置に形成されている。また、方立側通孔22の直径は、後述する第2の締結部材43を構成するボルト47の直径よりもわずかに大きい。
【0031】
方立側切欠き23は、第2の方立側延出板17bの先端部に開口するように形成されており、左右方向視が略矩形状である。このような方立側切欠き23を設けることにより、第2の方立側延出板17bの先端部に設けられた方立側折曲部20は、上下方向に関して不連続になっている。
【0032】
[方立の固定構造]
本例では、上述のような構成を有する方立2を、躯体6に対して、取付アタッチメント24を利用して固定している。取付アタッチメント24は、
図5に示すように、ステンレス鋼板などの金属板製で、略コ字形の断面形状を有している。このような取付アタッチメント24を、取付ボルト25及び座金26を用いて、躯体6に沿って該躯体6の屋外側面に予め固定しておく。そして、取付アタッチメント24を、方立2の躯体取付部9を構成する1対の躯体取付板16同士の間に配置し、複数組の躯体固定用ボルト27と躯体固定用ナット28とを用いて、1対の躯体取付板16を取付アタッチメント24に対して結合固定する。
【0033】
[無目の構造]
無目3は、アルミニウム合金の押し出し型材製であり、左右方向に隣り合う方立2同士の間に配置され、その左右方向両端部を方立2に対して連結している。無目3は、ガラスパネル4の上辺及び下辺を、屋外側からの取り外し可能にそれぞれ保持している。
【0034】
[ガラスパネルの構造]
ガラスパネル4は、2枚のガラス板を重ね合わせて構成された合わせガラスであり、方立2と無目3とにより仕切られた開口部7に配置されている。本例では、ガラスパネル4を屋外側から取り外し可能とするために、
図3に示すように、方立2の左右両側部分に押縁14を係止するとともに、無目3の屋外側部分に押縁57を係止している。
【0035】
押縁14は、略L字形の断面形状を有しており、屋外側中空部12の見込み片12cの外側面に重ね合わされる押縁側見込み片14aと、張出片13と略平行に配置される押縁側見付け片14bとを有している。押縁側見込み片14aの内側面には、略L字形の断面形状を有する押縁側係止爪14cが2つ設けられている。本例では、押縁側係止爪14cのそれぞれを、方立2に設けられた方立側係止爪12dに対して、屋内外方向及び左右方向にそれぞれ係合させることにより、押縁14を方立2の屋外側中空部12の左右両外側にそれぞれ取り付けている。そして、押縁側見付け片14bと張出片13と屋外側中空部12の見込み片12cとにより三方が囲まれた部分に、保持凹溝15を形成している。ガラスパネル4の上側に配置される無目3は、屋外側部分に押縁57を係止することで、下側が開口した保持凹溝を形成しており、ガラスパネル4の下側に配置される無目3は、屋外側部分に押縁57を係止することで、上側が開口した保持凹溝を形成している。
【0036】
ガラスパネル4の四辺(左右両縦辺、上辺及び下辺)は、エチレンプロピレンゴムなどの弾性材製の屋外側ガラススペーサ29a及び屋内側ガラススペーサ29bにより挟持した状態で、保持凹溝15の内側にそれぞれ保持されている。また、屋外側ガラススペーサ29a及び屋内側ガラススペーサ29bは、樹脂製の屋外側シーリング材30a及び屋内側シーリング材30bによりそれぞれ覆われている。ガラスパネル4の交換作業は、対象となるガラスパネル4の四方に配置された屋外側シーリング材30a及び屋外側ガラススペーサ29aを取り外すとともに、四方に配置された押縁14、57を取り外すことにより、屋外側から行うことが可能である。
【0037】
[化粧材の構造]
化粧材5は、方立2の屋外側に固定されて、無目3やガラスパネル4よりも屋外側に張り出して配置される。このような化粧材5は、単独で又は複数の化粧材5の組み合わせにより、ビルディングの外壁面に立体的なラインや模様などを浮き上がらせる。
【0038】
化粧材5の形状は、特に限定されるものではなく、外壁面のデザインに応じて適宜決定することができるものである。本例では、
図2及び
図6に示すように、化粧材5として、断面形状が三角形(図示の例では二等辺三角形)で、全体が三角柱である、いわゆるルーバー形(羽板形)のものを使用している。
【0039】
化粧材5は、アルミニウム合金の押し出し型材製であり、化粧材本体31と、化粧側固定部32とを一体に備えている。化粧材本体31は、いわゆる意匠部であり、外部から目立つ化粧材5の屋外側端部から屋内寄り部分にわたる範囲を構成している。化粧側固定部32は、外部から目立たない化粧材5の屋内側端部を構成している。このような化粧材5の上端部及び下端部は、それぞれ三角板状の蓋体により塞がれている。なお、本発明を実施する場合に、化粧材と化粧側固定部とを別体とし、部品(ブラケット)である化粧側固定部を化粧材に固定する構造を採用することもできる。
【0040】
化粧材本体31は、左右の側面を構成する1対の側板部33と、1対の側板部33の屋内側部分同士を左右方向に連結した連結板部34とを有している。また、化粧材本体31は、必要とされる屋内外方向の長さ寸法に応じて、断面形状が三角形の1つの部品のみから構成するか、又は、断面形状が三角形の部品(先端側部品)と断面形状が台形状の1乃至複数の部品(基端側部品)とを屋内外方向に連結して構成することができる。
図2及び
図6に示した例では、化粧材5は、断面形状が三角形の部品と断面形状が台形状の2つの部品とを屋内外方向に連結して構成されている。
【0041】
化粧側固定部32は、化粧材本体31の連結板部34の屋内側面から屋内側に向けてそれぞれ延出した、1対の化粧側延出板35a、35bから構成されている。1対の化粧側延出板35a、35bは、左右方向に離隔して互いに略平行に配置されている。また、1対の化粧側延出板35a、35bの屋内外方向に関する長さ寸法は、互いに同じであり、1対の方立側延出板17a、17bの長さ寸法と同じである。
【0042】
1対の化粧側延出板35a、35bのうち、左右方向に関して一方側(
図6の右側、
図7の左側)に配置された第1の化粧側延出板35aは、化粧側折曲部36と、化粧側被係止部37と、化粧側通孔38と、化粧側切欠き39とを有している。
【0043】
化粧側折曲部36は、第1の化粧側延出板35aの先端部(屋内側端部)に設けられたもので、略L字形の断面形状を有しており、左右方向に関して他方側(
図6の左側、
図7の右側)に向けて略直角に折れ曲がっている。
【0044】
化粧側被係止部37は、第1の化粧側延出板35aの基端部(屋外側端部)に、第1の化粧側延出板35aの上下方向の全長にわたり設けられている。また、化粧側被係止部37は、左右方向に関して他方側に向けて凹んだ矩形凹状の断面形状を有している。本例では、このような化粧側被係止部37を形成するために、第1の化粧側延出板35aの基端部を、断面形状がクランク形になるように屈曲させている。
【0045】
化粧側通孔38は、円孔であり、第1の化粧側延出板35aの上下方向の1乃至複数箇所に設けられている。また、化粧側通孔38は、方立側ボルト挿通溝19と同数設けられている。化粧側通孔38の直径は、後述する第1の締結部材42を構成するボルト44の直径よりもわずかに大きい。
【0046】
化粧側切欠き39は、第1の化粧側延出板35aの先端部に開口するように形成されており、左右方向視が略矩形状である。このような化粧側切欠き39を設けることにより、第1の化粧側延出板35aの先端部に設けられた化粧側折曲部36は、上下方向に関して不連続になっている。
【0047】
1対の化粧側延出板35a、35bのうち、左右方向に関して他方側に配置された第2の化粧側延出板35bは、化粧側係止部40と、化粧側ボルト挿通溝41とを有している。
【0048】
化粧側係止部40は、第2の化粧側延出板35bの先端部(屋内側端部)に設けられたもので、略L字形の断面形状を有しており、化粧側折曲部36とは反対に、左右方向に関して一方側に向けて略直角に折れ曲がっている。つまり、化粧側係止部40と化粧側折曲部36とは、互いに近づく方向に折れ曲がっている。
【0049】
化粧側ボルト挿通溝41は、第2の化粧側延出板35bの上下方向の1乃至複数箇所に設けられており、左右方向視がL字形(鉤形)の切欠きである。また、化粧側ボルト挿通溝41は、方立側通孔22と同数設けられている。化粧側ボルト挿通溝41は、横溝部41aと、上向き縦溝部41bとから構成されている。このうちの横溝部41aは、屋内外方向に伸長し、その屋内側端部が第2の化粧側延出板35bの先端部に開口し、その屋外側端部が第2の化粧側延出板35bの中間部に位置している。上向き縦溝部41bは、横溝部41aの屋外側端部から上側に向けて伸長している。横溝部41a及び上向き縦溝部41bの幅寸法は、互いに等しく、後述する第2の締結部材43を構成するボルト47の直径よりもわずかに大きい。上向き縦溝部41bは、屋内外方向に関して化粧側通孔38と同じ位置に形成されている。また、上向き縦溝部41bの上端部は、化粧側通孔38よりもに下方に位置している。このような化粧側ボルト挿通溝41を設けることにより、第2の化粧側延出板35bの先端部に設けられた化粧側係止部40は、上下方向に関して不連続になっている。
【0050】
[化粧材の固定構造]
本例では、上述のような構成を有する化粧材5を、方立2に対して、第1の締結部材42及び第2の締結部材43を用いて結合固定している。具体的には、
図8に示すように、第1の方立側延出板17aと第1の化粧側延出板35aとを板厚方向(左右方向)に重ね合わせて、第1の積層板部50aを構成した状態で、第1の方立側延出板17aと第1の化粧側延出板35aとを、第1の締結部材42により結合固定している。また、第2の方立側延出板17bと第2の化粧側延出板35bとを板厚方向(左右方向)に重ね合わせて、第2の積層板部50bを構成した状態で、第2の方立側延出板17bと第2の化粧側延出板35bとを、第1の締結部材42と同数の第2の締結部材43により結合固定している。
【0051】
第1の締結部材42は、ボルト44と、ナット45と、割りピン46と、ワッシャ55とを備えている。
図9に示すように、第1の締結部材42による結合状態では、ワッシャ55を挿通したボルト44の軸部44aを、第1の方立側延出板17aの方立側ボルト挿通溝19の下端部及び第1の化粧側延出板35aの化粧側通孔38の内側に、左右方向に関して一方側から他方側に向けて挿通し、軸部44aのうちで第1の化粧側延出板35aの内側面から突出した部分にナット45を螺合している。これにより、第1の方立側延出板17aと第1の化粧側延出板35aとを、ボルト44の頭部44b(ワッシャ55)とナット45により左右方向両側から挟持している。本例では、ナット45は、ポップナットであり、化粧側通孔38の開口縁部に押し付けるようにその一部を塑性変形させる(かしめ変形させる)ことで、第1の化粧側延出板35aの内側面に支持固定されている。さらに、軸部44aのうちでナット45が螺合した部分よりも先端側に割りピン46を装着している。
図10及び
図11に示すように、割りピン46は、1対の脚部46a、46bと略C字形の連結部46cとを有している。割りピン46を軸部44aの先端部に装着した状態では、針棒状の一方の脚部46aを軸部44aの先端部に形成された貫通孔44cに挿入し、該一方の脚部46aと他方の脚部46bに形成された凹円弧形の保持凹部との間で、軸部44aを弾性的に挟持する。これにより、割りピン46が軸部44aから脱落することを防止する。また、割りピン46の両端部は、ナット45よりも両側に張り出して配置されている。
【0052】
第2の締結部材43も同様に、ボルト47と、ナット48と、割りピン49と、ワッシャ56とを備えている。第2の締結部材43による結合状態では、
図9に示すように、ワッシャ56を挿通したボルト47の軸部47aを、第2の化粧側延出板35bの化粧側ボルト挿通溝41の上端部及び第2の方立側延出板17bの方立側通孔22の内側に、左右方向に関して他方側から一方側に向けて挿通し、軸部47aのうちで第2の方立側延出板17bの内側面から突出した部分にナット48を螺合している。これにより、第2の化粧側延出板35bと第2の方立側延出板17bとを、ボルト47の頭部47b(ワッシャ56)とナット48により左右方向両側から挟持している。本例では、ナット48は、ポップナットであり、方立側通孔22の開口縁部に押し付けるようにその一部を塑性変形させる(かしめ変形させる)ことで、第2の方立側延出板17bの内側面に支持固定されている。さらに、軸部47aのうちでナット48が螺合した部分よりも先端側に割りピン49を装着している。
図10及び
図11に示すように、割りピン49は、割りピン46と同様に、1対の脚部49a、49bと略C字形の連結部49cとを有している。割りピン49を軸部47aに装着した状態での態様については、割りピン46の場合と同様である。このような本例では、割りピン46、49が特許請求の範囲に記載した留め具に相当する。
【0053】
上述のように第1の締結部材42及び第2の締結部材43を用いて、化粧材5を方立2に対して結合固定した状態で、第1の締結部材42及び第2の締結部材43は、
図9~
図11に示したように、上下方向に隣接配置される。また、
図8に示すように、第1の方立側延出板17aの先端部に形成された方立側係止部18と、第1の化粧側延出板35aの基端部に形成された化粧側被係止部37とを屋内外方向に係合する。同様に、第2の化粧側延出板35bの先端部に形成された化粧側係止部40と、第2の方立側延出板17bの基端部に形成された方立側被係止部21とを屋内外方向に係合する。
【0054】
さらに本例では、
図12に示すように、第1の化粧側延出板35aに形成された化粧側切欠き39の上縁部を、方立2の屋外側面に固定された方立側脱落防止部材51に対し上下方向に係合させている。方立側脱落防止部材51は、屋外側から見た形状がL字形状で、下半部に左右方向に関して一方側に張り出した張出部51aを有している。また、方立側脱落防止部材51は、方立2の屋外側面に、1対の取付ビス52により固定されている。本例では、このような方立側脱落防止部材51の張出部51aに対し、化粧側切欠き39の上縁部のうち、化粧側折曲部36によって構成される部分を上側から係合させている。これにより、化粧材5の重量の一部を、方立側脱落防止部材51によって支承するようにしている。また、化粧側折曲部36を、方立側脱落防止部材51のうちで張出部51aよりも上側に位置する部分と第1の方立側延出板17aとの間部分に配置して、方立2に対する化粧材5の左右方向位置を規制している。
【0055】
さらに、
図13に示すように、第2の方立側延出板17bに形成された方立側切欠き23の下縁部に対して、化粧材5の屋内側面に固定された化粧側脱落防止部材53を上下方向に係合させている。化粧側脱落防止部材53は、屋内側から見た形状が逆L字形状で、上半部に左右方向に関して他方側に張り出した張出部53aを有している。また、化粧側脱落防止部材53は、化粧材5の連結板部34の屋内側面に、1対の取付ビス54により固定されている。本例では、このような化粧側脱落防止部材53の張出部53aを、方立側切欠き23の下縁部のうち、方立側折曲部20によって構成される部分に対し上側から係合させている。これにより、化粧材5の重量の一部を、化粧側脱落防止部材53を利用して第2の方立側延出板17bにより支承するようにしている。また、方立側折曲部20を、化粧側脱落防止部材53のうちで張出部53aよりも下側に位置する部分と第2の化粧側延出板35bとの間部分に配置して、方立2に対する化粧材5の左右方向位置を規制している。
【0056】
[化粧材の取り付け方法及び取り外し方法]
本例では、上述のような化粧材5を、方立2に対して、次のような手順により取り付ける。以下、
図14を参照して説明する。
先ず、
図14の(A)に示すように、第1の化粧側延出板35aに、第1の締結部材42を仮組み付けするとともに、第2の方立側延出板17bに、第2の締結部材43を仮組み付けする。
【0057】
具体的には、第1の化粧側延出板35aに第1の締結部材42を仮組み付けする作業は、次のように行う。先ず、ポップナットであるナット45を、その一部を塑性変形させることにより、第1の化粧側延出板35aの内側面に相対回転不能にかつ脱落不能に取り付ける。次に、ボルト44の軸部44aを化粧側通孔38の内側に、左右方向に関して一方側から他方側に向けて挿通し、該軸部44aをナット45に螺合させる。その後、軸部44aの先端部に割りピン46を装着する。これにより、ボルト44を緩めた場合にも、ボルト44がナット45から脱落しないようにする。また、第1の化粧側延出板35aの外側面とボルト44の頭部44bとの間に、第1の方立側延出板17aを進入させられるだけの隙間を確保しておく。このような第1の締結部材42の仮組み付け作業は、化粧材5を製造する工場内で予め行うことが好ましい。ただし、第1の締結部材42の仮組み付け作業は、化粧材5を固定する建築現場で行うこともできる。
【0058】
同様に、第2の方立側延出板17bに第2の締結部材43を仮組み付けする作業は、次のように行う。先ず、ポップナットであるナット48を、その一部を塑性変形させることにより、第2の方立側延出板17bの内側面に相対回転不能にかつ脱落不能に取り付ける。次に、ボルト47の軸部47aを方立側通孔22の内側に、左右方向に関して他方側から一方側に向けて挿通し、該軸部47aをナット48に螺合させる。その後、軸部47aの先端部に割りピン49を装着する。これにより、ボルト47を緩めた場合にも、ボルト47がナット48から脱落しないようにする。また、第2の方立側延出板17bの外側面とボルト47の頭部47bとの間に、第2の化粧側延出板35bを進入させられるだけの隙間を確保しておく。このような第2の締結部材43の仮組み付け作業は、方立2を製造する工場内で予め行うことが好ましい。ただし、第2の締結部材43の仮組み付け作業は、化粧材5を固定する建築現場で行うこともできる。
【0059】
次いで、
図14の(A)→(B)に示すように、化粧材5を方立2に近づけるように屋内側に水平移動させて、第1の化粧側延出板35aの外側面とボルト44の頭部44b(ワッシャ55)との間に、第1の方立側延出板17aを進入させるとともに、第2の方立側延出板17bの外側面とボルト47の頭部47b(ワッシャ56)との間に、第2の化粧側延出板35bを進入させる。これにより、第1の化粧側延出板35aに支持されたボルト44の軸部44aを、第1の方立側延出板17aに形成された方立側ボルト挿通溝19の横溝部19aの内側に挿入し、該横溝部19aに沿って屋内側に移動させる。同時に、第2の方立側延出板17bに支持されたボルト47の軸部47aを、第2の化粧側延出板35bに形成された化粧側ボルト挿通溝41の横溝部41aの内側に挿入し、該横溝部41aに沿って屋外側に移動させる。
【0060】
そして、第1の化粧側延出板35aに支持されたボルト44の軸部44aが、方立側ボルト挿通溝19の横溝部19aの屋内側端部に突き当たるとともに、第2の方立側延出板17bに支持されたボルト47の軸部47aが、化粧側ボルト挿通溝41の横溝部41aの屋外側端部に突き当たったならば、化粧材5を方立2に対して下側に移動させる。これにより、第1の化粧側延出板35aに支持されたボルト44の軸部44aを、方立側ボルト挿通溝19の下向き縦溝部19bに沿って下側に移動させるとともに、第2の方立側延出板17bに支持されたボルト47の軸部47aを、化粧側ボルト挿通溝41の上向き縦溝部41bに沿って上側に移動させる。この際、第1の締結部材42と第2の締結部材43とが上下方向に関して近づくが、これら第1の締結部材42と第2の締結部材43とが干渉(衝突)することはない。また、化粧材5を方立2に対して下側に移動させることで、第1の化粧側延出板35aに形成された化粧側切欠き39の上縁部を、方立側脱落防止部材51の張出部51aに対し上側から係合させるとともに、第2の方立側延出板17bに形成された方立側切欠き23の下縁部に対して、化粧側脱落防止部材53の張出部53aを上側から係合させる。
【0061】
その後、
図14の(C)に示すように、第1の締結部材42に関して、ナット45に対するボルト44の締め付け量を増大させるとともに、第2の締結部材43に関して、ナット48に対するボルト47の締め付け量を増大させる。これにより、第1の化粧側延出板35aと第1の方立側延出板17aとを板厚方向に隙間なく重ね合わせて、第1の積層板部50aを構成し、これら第1の方立側延出板17aと第1の化粧側延出板35aとを、ボルト44の頭部44bとナット45により挟持する。同様に、第2の化粧側延出板35bと第2の方立側延出板17bとを板厚方向に隙間なく重ね合わせて、第2の積層板部50bを構成し、第2の化粧側延出板35bと第2の方立側延出板17bとを、ボルト47の頭部47bとナット48により挟持する。この際、第1の方立側延出板17aの先端部に形成された方立側係止部18と、第1の化粧側延出板35aの基端部に形成された化粧側被係止部37とを屋内外方向に係合させる。同様に、第2の化粧側延出板35bの先端部に形成された化粧側係止部40と、第2の方立側延出板17bの基端部に形成された方立側被係止部21とを屋内外方向に係合させる。
【0062】
これに対して、化粧材5を方立2から取り外す際には、第1の締結部材42のボルト44を緩めるとともに、第2の締結部材43のボルト47を緩める。そして、上述した取り付け方法とは反対に、化粧材5を方立2に対し上側に移動させて、第1の化粧側延出板35aに支持されたボルト44の軸部44aを、方立側ボルト挿通溝19の下向き縦溝部19bに沿って上側に移動させるとともに、第2の方立側延出板17bに支持されたボルト47の軸部47aを、化粧側ボルト挿通溝41の上向き縦溝部41bに沿って下側に移動させる。その後、化粧材5を方立2から離れるように屋内側に水平移動させて、第1の化粧側延出板35aに支持されたボルト44の軸部44aを、方立側ボルト挿通溝19の横溝部19aに沿って屋外側に移動させるとともに、第2の方立側延出板17bに支持されたボルト47の軸部47aを、化粧側ボルト挿通溝41の横溝部41aに沿って屋内側に移動させる。このように、化粧材5を方立2から取り外す際には、化粧材5を重力に逆らって上側に移動させた後、方立2に対して屋外側に水平移動させる。
【0063】
以上のような構成を有する本例では、化粧材5が方立2から脱落することを有効に防止できる。
すなわち、本例では、化粧材5の交換作業時やガラスパネル4の交換作業時などに、化粧材5を方立2から取り外すべく、ボルト44、47を緩めた場合に、軸部44a、47aの先端部に装着された割りピン46、49とナット45、48とが係合することで、ボルト44、47がそれ以上緩むことを防止できる。このため、ボルト44、47とナット45、48とが分離し、ボルト44、47がナット45、48から抜け落ちることを防止できる。また、ナット45、48は、それぞれの一部を塑性変形させることで、第1の化粧側延出板35a及び第2の方立側延出板17bに支持固定されているため、落下することはない。したがって、本例の構造によれば、化粧材5を取り外す際に、第1の締結部材42及び第2の締結部材43が落下することを防止できるため、化粧材5が方立2から脱落することを有効に防止できる。
【0064】
また、施工から長期間経過するなどして、ボルト44、47に意図しない緩みが生じた場合にも、化粧材5が方立2から脱落するには、化粧材5を重力に逆らって上側に移動させた後、化粧材5を方立2に対して左右方向に相対移動させて、方立側係止部18と化粧側被係止部37との係合を外すとともに、化粧側係止部40と方立側被係止部21との係合を外し、化粧材5を屋外側に移動させる必要がある。このように、化粧材5が方立2から脱落するには、化粧材5を方立2に対して重力の方向とは異なる複数の方向に相対移動させる必要があるため、化粧材5の脱落を有効に防止することができる。
【0065】
さらに、万が一、第1の締結部材42及び第2の締結部材43が落下するような不測の事態が発生した場合にも、化粧材5の重量は、方立側脱落防止部材51及び化粧側脱落防止部材53を利用して方立2が支承するため、化粧材5が方立2から直ちに脱落(落下)することを防止できる。また、方立側係止部18と化粧側被係止部37との係合部、及び、化粧側係止部40と方立側被係止部21との係合部により、化粧材5が屋外側に傾く(方立2から離れる)ことも防止できる。また、方立側脱落防止部材51及び化粧側脱落防止部材53により、方立2に対する化粧材5の左右方向の移動が規制されるため、方立側係止部18と化粧側被係止部37との係合、及び、化粧側係止部40と方立側被係止部21との係合が外れることもない。このように本例の構造によれば、第1の締結部材42及び第2の締結部材43が落下した場合にも、化粧材5が脱落することを防止できる。したがって、第1の締結部材及び第2の締結部材として、割りピン(留め具)を備えない、一般的なボルトとナットとを備えた締結部材を使用した場合にも、化粧材5の脱落を防止することができる。
【0066】
また、本例では、ボルト44の軸部44aを挿通した方立側ボルト挿通溝19は、第1の方立側延出板17aの先端部に開口しており、かつ、ボルト47の軸部47aを挿通した化粧側ボルト挿通溝41は、第2の化粧側延出板35bの先端部に開口している。このため、化粧材5を取り外す際に、ボルト44、47とナット45、48とを分離しなくても、化粧材5を方立2から取り外すことができる。したがって、本例の構造によれば、ボルト44、47をわずかに緩めるだけで、化粧材5の取り外し作業を行えるため、第1の締結部材42及び第2の締結部材43の落下を防止できるだけでなく、化粧材5の取り外し作業の作業性の向上も図ることができる。
【0067】
また、本例の構造によれば、第1の化粧側延出板35a及び第2の方立側延出板17bに対して、第1の締結部材42及び第2の締結部材43をそれぞれ仮組み付けしたまま、化粧材5の取り付け作業(固定作業)を行うことができる。このため、化粧材5の取り付け作業時に、第1の締結部材42及び第2の締結部材43が落下することを防止できるとともに、建築現場での化粧材5の取り付け作業の作業性を向上させることもできる。
【0068】
また、化粧材5を方立2に固定した状態で、第1の方立側延出板17aの先端部に形成された方立側係止部18と、第1の化粧側延出板35aの基端部に形成された化粧側被係止部37とを屋内外方向に係合させているため、第1の方立側延出板17aと第1の化粧側延出板35aとが屋内外方向に相対移動することを防止できる。また、第2の化粧側延出板35bの先端部に形成された化粧側係止部40と、第2の方立側延出板17bの基端部に形成された方立側被係止部21とを屋内外方向に係合させているため、第2の方立側延出板17bと第2の化粧側延出板35bとが屋内外方向に相対移動することを防止できる。このため、化粧材5に作用する風荷重などの力の一部を、方立側係止部18と化粧側被係止部37との係合部、及び、化粧側係止部40と方立側被係止部21との係合部によって、それぞれ支承することができる。したがって、第1の締結部材42及び第2の締結部材43に作用する力を低下させることができる。この結果、第1の締結部材42及び第2の締結部材43の数を減らすことが可能になるとともに、ボルト44、47の径を小さくすることが可能になる。また、方立側係止部18と化粧側被係止部37との係合、及び、化粧側係止部40と方立側被係止部21との係合により、方立2に対する化粧材5の取り付け位置を規制することができるため、化粧材5の取り付け作業の作業性を向上することもできる。
【0069】
また、第1の積層板部50aを構成する第1の方立側延出板17aと第1の化粧側延出板35aとを、第1の締結部材42により結合固定するとともに、第2の積層板部50bを構成する第2の方立側延出板17bと第2の化粧側延出板35bとを、第2の締結部材43により結合固定している。このため、第1の積層板部50aと第2の積層板部50bとのいずれか一方のみを結合固定する構造を採用した場合に比べて、化粧材5を方立2に対して強固に結合することができる。
【0070】
上述した実施の形態では、化粧材をカーテンウォールを構成する方立に固定する構造について説明したが、化粧材は、縦材である方立に限らず、横材である無目に固定することもできるし、開口部に配置されるサイディングパネルなどの各種のパネル材に固定することもできる。また、化粧材は、カーテンウォールに限らず、例えば耐力壁や目隠し壁(フェンスを含む)など、カーテンウォール以外の建築物の壁に固定することができる。
【0071】
本発明を実施する場合に、締結部材を構成するナットは、ポップナットに限らず、通常のナットを使用することができる。また、本発明を実施する場合に、ボルトとナットとの分離を防止する留め具は、割りピンに限らず、CリングやUリングなど、従来から知られた各種構造の留め具を使用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 カーテンウォール
2 方立(壁構成材)
3 無目
4 ガラスパネル
5 化粧材
6 躯体
7 開口部
8 方立本体
9 躯体取付部
10 方立側固定部(壁側固定部)
11 屋内側中空部
11a 見付け片
11b 見付け片
11c 見込み片
12 屋外側中空部
12a 見付け片
12b 見付け片
12c 見込み片
12d 方立側係止爪
13 張出片
14 押縁
14a 押縁側見込み片
14b 押縁側見付け片
14c 押縁側係止爪
15 保持凹溝
16 躯体取付板
17a 第1の方立側延出板(壁側延出板)
17b 第2の方立側延出板(壁側延出板)
18 方立側係止部(係止部)
19 方立側ボルト挿通溝
19a 横溝部
19b 下向き縦溝部
【0073】
20 方立側折曲部
21 方立側被係止部(被係止部)
22 方立側通孔
23 方立側切欠き
24 取付アタッチメント
25 取付ボルト
26 座金
27 躯体固定用ボルト
28 躯体固定用ナット
29a 屋外側ガラススペーサ
29b 屋内側ガラススペーサ
30a 屋外側シーリング材
30b 屋内側シーリング材
31 化粧材本体
32 化粧側固定部
33 側板部
34 連結板部
35a、35b 化粧側延出板
36 化粧側折曲部
37 化粧側被係止部(被係止部)
38 化粧側通孔
39 化粧側切欠き
【0074】
40 化粧側係止部(係止部)
41 化粧側ボルト挿通溝
41a 横溝部
41b 上向き縦溝部
42 第1の締結部材(締結部材)
43 第2の締結部材(締結部材)
44 ボルト
44a 軸部
44b 頭部
44c 貫通孔
45 ナット
46 割りピン(留め具)
46a 脚部
46b 脚部
46c 連結部
47 ボルト
47a 軸部
47b 頭部
47c 貫通孔
48 ナット
49 割りピン(留め具)
49a 脚部
49b 脚部
49c 連結部
50a 第1の積層板部
50b 第2の積層板部
51 方立側脱落防止部材
51a 張出部
52 取付ビス
53 化粧側脱落防止部材
53a 張出部
54 取付ビス
55 ワッシャ
56 ワッシャ
57 押縁