(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221212BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20221212BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20221212BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 302B
H02J7/00 303C
H02J7/00 Y
H02J7/34 B
B60R16/033 C
B60R16/04 W
(21)【出願番号】P 2019059318
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(72)【発明者】
【氏名】上月 保典
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182864(JP,A)
【文献】特開2017-218013(JP,A)
【文献】特開2016-128283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
B60R 16/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1系統負荷を第1電源と接続する第1電力線と、第2系統負荷を第2電源と接続する第2電力線とを接続するスイッチを制御する電源制御装置であって、
前記第2電源のSOC値を取得するSOC取得部と、
前記SOC取得部により取得されたSOC値を第1閾値と比較することにより、前記第2電源が前記第2負荷に所定の電力を所定の時間供給できるか否かを判断する第1SOC判断部と、
前記第2電源が前記所定の電力を前記所定の時間供給できると前記第1SOC判断部により判断された場合、前記取得されたSOC値が減少することにより前記第1閾値よりも高い第2閾値を下回ったか否かを判断する第2SOC判断部と、
前記第1電力線において、前記第1電源から前記第1電力線と前記スイッチに接続された配線とを接続する第1接続部までの区間を流れる電流を測定する電流センサから、第1電源電流値を取得する電流取得部と、
前記電流取得部により取得された第1電源電流値に基づいて、前記第2電源が電流を前記第1電源に供給しているか否かを判断する電流判断部と、
前記取得されたSOC値が前記第2閾値を下回ったと前記第2SOC判断部により判断され
、かつ前記第2電源が電流を前記第1電源に供給していると前記電流判断部により判断された場合、前記第1電源が失陥したと判断する失陥判断部と、
前記第1電源が失陥したと前記失陥判断部により判断された場合、前記スイッチをオフするスイッチ制御部と、を備える電源制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の電源制御装置であって、
前記電流取得部は、前記第1電力線において前記第1接続部から前記第1系統負荷までの区間を流れる電流を測定する電流センサから、第1負荷電流値を取得し、
前記電流判断部は、電流が前記第1系統負荷に供給されているか否かを前記電流取得部により取得された第1負荷電流値に基づいて判断し、前記取得された第1負荷電流値が第3閾値よりも大きいか否かを判断し、
前記失陥判断部は、電流が前記第1系統負荷に供給され、かつ、前記取得された第1負荷電流値が前記第3閾値よりも高いと前記電流判断部により判断された場合、前記第1系統負荷が失陥したと判断し、
前記スイッチ制御部は、前記第1系統負荷が失陥したと前記失陥判断部により判断された場合、前記スイッチをオフする、電源制御装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の電源制御装置であって、
前記電流判断部は、前記取得された第1負荷電流値に基づいて、前記第1系統負荷が前記第1電力線に電流を出力しているか否かを判断し、
前記失陥判断部は、前記第1系統負荷が電流を前記第1電力線に供給していると前記電流判断部により判断された場合、前記第1電力線で異常が発生したと判断し、
前記スイッチ制御部は、前記第1電力線で異常が発生したと前記失陥判断部により判断された場合、前記スイッチをオフする、電源制御装置。
【請求項4】
請求項
1に記載の電源制御装置であって、
前記電流取得部は、前記第2電力線において前記第2系統負荷から前記第2電力線と前記スイッチを接続する配線とを接続する第2接続部までの区間を流れる電流を測定する電流センサから、第2負荷電流値を取得し、
前記電流判断部は、電流が前記第2系統負荷に供給されているか否かを前記電流取得部により取得された第2負荷電流値に基づいて判断し、前記取得された第2負荷電流値が第4閾値よりも大きいか否かを判断し、
前記失陥判断部は、電流が前記第2系統負荷に供給され、かつ、前記取得された第2負荷電流値が前記第4閾値よりも高いと前記電流判断部により判断された場合、前記第2系統負荷が失陥したと判断し、
前記スイッチ制御部は、前記第2系統負荷が失陥したと前記失陥判断部により判断された場合、前記スイッチをオフする、電源制御装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の電源制御装置であって、
前記電流判断部は、前記取得された第2負荷電流値に基づいて、前記第2系統負荷が前記第2電力線に電流を出力しているか否かを判断し、
前記失陥判断部は、前記第2系統負荷が前記第2電力線に前記電流を出力していると前記電流判断部により判断された場合、前記第2電力線で異常が発生したと判断し、
前記スイッチ制御部は、前記第2電力線で異常が発生したと前記失陥判断部により判断された場合、前記スイッチをオフする、電源制御装置。
【請求項6】
第1系統負荷を第1電源と接続する第1電力線と、第2系統負荷を第2電源と接続する第2電力線とを接続するスイッチを制御する電源制御方法であって、
前記第2電源のSOC値を取得するステップと、
前記取得されたSOC値を第1閾値と比較することにより、前記第2電源が前記第2負荷に所定の電力を所定の時間供給できるか否かを判断するステップと、
前記第2電源が前記所定の電力を前記所定の時間供給できると判断された場合、前記取得されたSOC値が減少することにより前記第1閾値よりも高い第2閾値を下回ったか否かを判断するステップと、
前記第1電力線において前記第1電源から前記第1電力線と前記スイッチに接続された配線とを接続する第1接続部までの区間に流れる電流を測定する電流センサから、電源電流値を取得するステップと、
前記取得された電源電流値に基づいて、前記第2電源が電流を前記第1電源に供給しているか否かを判断するステップと、
前記取得されたSOC値が前記第2閾値を下回ったと判断され
、かつ前記第2電源が電流を前記第1電源に供給していると判断された場合、前記第1電源が失陥したと判断するステップと、
前記第1電源が失陥したと判断された場合、前記スイッチをオフするステップと、を備える電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源の接続を制御する電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動運転システムは、電源が失陥した後においても車両の制御を継続できるように、メインバッテリだけでなく、バックアップバッテリを備える。また、自動運転システムは、2つの自動運転用負荷を備える。2つの自動運転用負荷の各々は、自動運転に用いられるセンサやECUを含む。メインバッテリは、2つの自動運転用負荷の一方に電力を供給し、バックアップバッテリは、2つの自動運転用負荷の他方に電力を供給する。自動運転システムは、メインバッテリ及びバックアップバッテリの一方が失陥した場合であっても、自動運転を継続することができる。
【0003】
特許文献1は、各々が車載装置に電力を供給する2つの電力供給系統を備える電力供給システムを開示している。電力供給システムは、2つの電力供給系統の接続を制御する電力制御装置を備える。2つの電力供給系統の一方が失陥した場合、電力制御装置が、2つの電力供給系統を接続するスイッチをオフする。
【0004】
しかし、特許文献1は、電力供給系統で失陥が発生したか否かを判断するための条件を具体的に開示していない。
【0005】
2つの電源を備える電力供給システムにおいて、2つの電源を接続する配線を流れる電流に基づいて、2つの電源の一方が失陥したか否かを判定する技術が知られている。しかし、この技術には、電源の失陥を検出する精度が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、2つの電源を備える電力供給システムにおいて、電源の失陥を高い精度で検出できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、第1系統負荷を第1電源と接続する第1電力線と、第2系統負荷を第2電源と接続する第2電力線とを接続するスイッチを制御する電源制御装置であって、SOC取得部と、第1SOC判断部と、第2SOC判断部と、失陥判断部と、スイッチ制御部とを備える。SOC取得部は、第2電源のSOC値を取得する。第1SOC判断部は、SOC取得部により取得されたSOC値を第1閾値と比較することにより、第2電源が第2負荷に所定の電力を所定の時間供給できるか否かを判断する。第2SOC判断部は、第2電源が所定の電力を所定の時間供給できると第1SOC判断部により判断された場合、取得されたSOC値が減少することにより第1閾値よりも高い第2閾値を下回ったか否かを判断する。失陥判断部は、取得されたSOC値が第2閾値を下回ったと第2SOC判断部により判断された場合、第1電源が失陥したと判断する。スイッチ制御部は、第1電源が失陥したと失陥判断部により判断された場合、スイッチをオフする。
【0009】
第1の発明は、第2電源のSOC値の時間変化に基づいて、第1電源が失陥したか否かを判断する。これにより、第1電源及び第2電源を備える電力供給システムにおいて、第1電源の失陥を高い精度で検出できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明であって、さらに、電流取得部と、電流判断部とを備える。電流取得部は、第1電力線において、第1電源から第1電力線とスイッチに接続された配線とを接続する第1接続部までの区間を流れる電流を測定する電流センサから、第1電源電流値を取得する。電流判断部は、電流取得部により取得された第1電源電流値に基づいて、第2電源が電流を第1電源に供給しているか否かを判断する。失陥判断部は、第2電源が電流を第1電源に供給していると電流判断部により判断された場合、第1電源が失陥したと判断する。
【0011】
第2の発明は、第2電源が第1電源に電流を供給している場合、第1電源が失陥したと判断する。第2電源のSOC値の時間変化に加えて、第1電源に供給される電流を用いることにより、第1電源の失陥をさらに高い精度で検出できる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明であって、電流取得部は、第1電力線において第1接続部から第1系統負荷までの区間を流れる電流を測定する電流センサから、第1負荷電流値を取得する。電流判断部は、電流が第1系統負荷に供給されているか否かを電流取得部により取得された第1負荷電流値に基づいて判断し、取得された第1負荷電流値が第3閾値よりも大きいか否かを判断する。失陥判断部は、電流が第1系統負荷に供給され、かつ、取得された第1負荷電流値が第3閾値よりも高いと電流判断部により判断された場合、第1系統負荷が失陥したと判断する。スイッチ制御部は、第1系統負荷が失陥したと失陥判断部により判断された場合、スイッチをオフする。
【0013】
第3の発明によれば、第3閾値よりも大きい電流が第1系統負荷に供給された場合、第1系統負荷が失陥したと判断される。第3の発明は、第1電源だけでなく、第1系統負荷の失陥を検出できる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明であって、電流判断部は、取得された第1負荷電流値に基づいて、第1系統負荷が第1電力線に電流を出力しているか否かを判断する。失陥判断部は、第1系統負荷が電流を第1電力線に供給していると電流判断部により判断された場合、第1電力線で異常が発生したと判断する。スイッチ制御部は、第1電力線で異常が発生したと失陥判断部により判断された場合、スイッチをオフする。
【0015】
第4の発明によれば、第1系統負荷が第1電力線に電流を供給した場合、異常が第1電力線で発生したと判断される。第4の発明は、第1電源だけでなく、第1電力線の異常を検出できる。
【0016】
第5の発明は、第2の発明であって、電流取得部は、第2電力線において第2系統負荷から第2電力線とスイッチを接続する配線とを接続する第2接続部までの区間を流れる電流を測定する電流センサから、第2負荷電流値を取得する。電流判断部は、電流が第2系統負荷に供給されているか否かを電流取得部により取得された第2負荷電流値に基づいて判断し、取得された第2負荷電流値が第4閾値よりも大きいか否かを判断する。失陥判断部は、電流が第2系統負荷に供給され、かつ、取得された第2負荷電流値が第4閾値よりも高いと電流判断部により判断された場合、第2系統負荷が失陥したと判断する。スイッチ制御部は、第2系統負荷が失陥したと失陥判断部により判断された場合、スイッチをオフする。
【0017】
第5の発明によれば、第4閾値よりも大きい電流が第2系統負荷に供給された場合、第2系統負荷が失陥したと判断される。第5の発明は、第2電源だけでなく、第2系統負荷の失陥を検出できる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明であって、電流判断部は、取得された第2負荷電流値に基づいて、第2系統負荷が第2電力線に電流を出力しているか否かを判断する。失陥判断部は、第2系統負荷が第2電力線に電流を出力していると電流判断部により判断された場合、第2電力線で異常が発生したと判断する。スイッチ制御部は、第2電力線で異常が発生したと失陥判断部により判断された場合、スイッチをオフする。
【0019】
第6の発明によれば、第2系統負荷が第2電力線に電流を供給した場合、異常が第2電力線で発生したと判断される。第6の発明は、第1電源だけでなく、第2電力線の異常を検出できる。
【0020】
第7の発明は、第1系統負荷を第1電源と接続する第1電力線と、第2系統負荷を第2電源と接続する第2電力線とを接続するスイッチを制御する電源制御装置であって、電流取得部と、電流判断部と、失陥判断部と、スイッチ制御部とを備える。電流取得部は、第1電力線において第1電源から第1電力線とスイッチに接続された配線とを接続する第1接続部までの区間に流れる電流を測定する電流センサから、電源電流値を取得する。電流判断部は、電流取得部により取得された電源電流値に基づいて、第2電源が電流を第1電源に供給しているか否かを判断する。失陥判断部は、第2電源が電流を第1電源に供給していると電流判断部により判断された場合、第1電源が失陥したと判断する。スイッチ制御部は、第1電源が失陥したと失陥判断部により判断された場合、スイッチをオフする。
【0021】
第7の発明は、第2電源が第1電源に電流を供給している場合、第1電源が失陥したと判断する。第7の発明は、第1電源及び第2電源を備える電力供給システムにおいて、第1電源の失陥を高い精度で検出できる。
【0022】
第8の発明は、第7の発明であって、さらに、SOC取得部と、第1SOC判断部と、第2SOC判断部とを備える。SOC取得部は、第2電源のSOC値を取得する。第1SOC判断部は、SOC取得部により取得されたSOC値を第1閾値と比較することにより、第2電源が第2負荷に所定の電力を所定の時間供給できるか否かを判断する。第2SOC判断部は、第2電源が第2負荷に所定の電力を所定の時間供給できると第1SOC判断部により判断された場合、取得されたSOC値が減少することにより第1閾値よりも高い第2閾値を下回ったか否かを判断する。失陥判断部は、取得されたSOC値が第2閾値を下回ったと第2SOC判断部により判断された場合、第1電源が失陥したと判断する。スイッチ制御部は、第1電源が失陥したと失陥判断部により判断された場合、スイッチをオフする。
【0023】
第8の発明は、第2電源のSOC値の時間変化に基づいて、第1電源が失陥したか否かを判断する。これにより、第8の発明は、第1電源に供給される電流を用いるだけでなく、第2電源のSOC値の時間変化を用いることにより、第1電源の失陥をさらに高い精度で検出できる。
【0024】
第9の発明は、第1系統負荷を第1電源と接続する第1電力線と、第2系統負荷を第2電源と接続する第2電力線とを接続するスイッチを制御する電源制御方法であって、a)ステップと、b)ステップと、c)ステップと、d)ステップと、e)ステップとを備える。a)ステップは、第2電源のSOC値を取得する。b)ステップは、取得されたSOC値を第1閾値と比較することにより、第2電源が第2負荷に所定の電力を所定の時間供給できるか否かを判断する。c)ステップは、第2電源が所定の電力を所定の時間供給できると判断された場合、取得されたSOC値が減少することにより第1閾値よりも高い第2閾値を下回ったか否かを判断する。d)ステップは、取得されたSOC値が第2閾値を下回ったと判断された場合、第1電源が失陥したと判断する。e)ステップは、第1電源が失陥したと判断された場合、スイッチをオフする。
【0025】
第9の発明は、第1の発明に用いられる。
【0026】
第10の発明は、第1系統負荷を第1電源と接続する第1電力線と、第2系統負荷を第2電源と接続する第2電力線とを接続するスイッチを制御する電源制御方法であって、a)ステップと、b)ステップと、c)ステップと、d)ステップとを備える。a)ステップは、第1電力線において第1電源から第1電力線とスイッチに接続された配線とを接続する第1接続部までの区間に流れる電流を測定する電流センサから、電源電流値を取得する。b)ステップは、取得された電源電流値に基づいて、第2電源が電流を第1電源に供給しているか否かを判断する。c)ステップは、第2電源が電流を第1電源に供給していると判断された場合、第1電源が失陥したと判断する。d)ステップは、第1電源が失陥したと判断された場合、スイッチをオフする。
【0027】
第10の発明は、第7の発明に用いられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、2つの電源を備える電力供給システムにおいて、電源の失陥を高い精度で検出できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電源制御装置を備える電力供給システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1に示す電源制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1に示すコンバータから出力される電流の経路の一例を示す図である。
【
図4】
図1に示すバッテリから出力される電流の経路の一例を示す図である。
【
図5】
図1に示すバッテリが失陥した場合における電流経路を示す図である。
【
図6】
図1に示すバッテリのSOC値の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図7】
図1に示すバッテリが失陥したか否かを判断する電源制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示す第1失陥条件判断処理のフローチャートである。
【
図9】
図7に示す第2失陥条件判断処理のフローチャートである。
【
図10】
図1に示す第1系統負荷が地絡した時における電流経路を示す図である。
【
図11】
図1に示す電力線で異常が発生した時における電流経路を示す図である。
【
図12】
図1に示す第1系統負荷の失陥及び電力線の異常を検出する電源制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図1に示す第2系統負荷が失陥した時における電流の流れを示す図である。
【
図14】
図1に示す第2系統負荷の失陥及び第2電力線の異常を検出する電源制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0031】
[1.構成]
[1.1.電力供給システム100の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る電源制御装置1を備える電力供給システム100の構成を示す機能ブロック図である。
図1を参照して、電力供給システム100は、自動車等の移動体に搭載される。
【0032】
電力供給システム100は、電源制御装置1と、発電機2と、コンバータ3と、スイッチ4と、メインバッテリ21と、第1電力線22と、第1系統負荷23と、バックアップバッテリ31と、第2電力線32と、第2系統負荷33とを備える。
【0033】
電源制御装置1は、メインバッテリ21、第1系統負荷23、バックアップバッテリ31及び第2系統負荷33で発生する失陥を検出する。電源制御装置1は、失陥を検出した場合、スイッチ4をオフすることにより、メインバッテリ21とバックアップバッテリ31との接続を遮断する。
【0034】
発電機2は、移動体に搭載されるエンジンの回転力から交流電圧を生成し、その生成した交流電圧を直流電圧に変換する。変換された直流電圧はコンバータ3に供給される。発電機2から出力される直流電圧は、メインバッテリ21の出力電圧よりも高い。
【0035】
コンバータ3は、直流電圧を発電機2から受け、その受けた直流電圧を降圧する。コンバータ3は、降圧した直流電圧を第1電力線22に供給する。コンバータ3は、移動体の減速時に発生する回生電力を降圧してもよい。
【0036】
メインバッテリ21は、電力供給システム100における第1電源であり、例えば、鉛蓄電池である。メインバッテリ21は、第1系統負荷23、バックアップバッテリ31及び第2系統負荷33に電力を供給する。
【0037】
第1系統負荷23は、移動体に搭載される機器であり、メインバッテリ21から供給される電力により動作する。第1電力線22は、メインバッテリ21を第1系統負荷23に含まれると接続する。第1電力線22は、接続部24及び29を含む。接続部24は、スイッチ4の一端と接続された配線42を第1電力線22と接続する。接続部29は、第1電力線22をコンバータ3と接続する。
【0038】
バックアップバッテリ31は、電力供給システム100における第2電源であり、例えば、鉛蓄電池である。バックアップバッテリ31は第2系統負荷33に電力を供給する。
【0039】
第2系統負荷33は、移動体に搭載される機器であり、バックアップバッテリ31から供給される電力により動作する。第2電力線32は、バックアップバッテリ31を第2系統負荷33と接続する。第2電力線32は、接続部34を含む。接続部24は、スイッチ4の他端と接続された配線43を第2電力線32と接続する。
【0040】
スイッチ4は、電源制御装置1からの制御信号1Sに従ってオンオフされる。スイッチ4がオンである場合、第1電力線22は、第2電力線32と接続される。スイッチ4がオフである場合、第1電力線22と第2電力線32との接続が遮断される。
【0041】
メインバッテリ21の失陥は、メインバッテリ21の通常の地絡を含む。また、メインバッテリ21の失陥は、コンバータ3の電流供給能力を超える抵抗成分を介した地絡を含む。バックアップバッテリ31、第1系統負荷23及び第2系統負荷33の失陥も同様である。電力線の異常は、電力線がいずれかの箇所において地絡すること、コンバータ3の電流供給能力を超える抵抗成分を介して地絡することを含む。
【0042】
電力供給システム100は、さらに、電流センサ25~26及び35~36と、電圧センサ37と、温度センサ38とを備える。
【0043】
電流センサ25は、第1電力線22において接続部24から接続部29までの区間を流れる電流を測定する。電流センサ25は、電源電流値I25を測定結果として電源制御装置1に供給する。電流センサ26は、第1電力線22において接続部24から第1系統負荷23までの区間を流れる電流を測定する。電流センサ26は、負荷電流値I26を測定結果として電源制御装置1に供給する。
【0044】
電流センサ35は、第2電力線32においてバックアップバッテリ31から接続部34までの区間を流れる電流を測定する。つまり、電流センサ35は、バックアップバッテリ31を流れる電流を測定する。電流センサ35は、電流測定値I35を測定結果として電源制御装置1に供給する。
【0045】
電流センサ36は、第2電力線32において第2系統負荷33から接続部34までの区間を流れる電流を測定する。電流センサ36は、負荷電流値I36を測定結果として電源制御装置1に供給する。
【0046】
電圧センサ37は、バックアップバッテリ31の端子電圧を測定し、その測定結果として電圧測定値E37を電源制御装置1に供給する。端子電圧は、バックアップバッテリ31の正極端子と負極端子との間で生じる電位差である。
図1は、電圧センサ37がバックアップバッテリ31の端子電圧を測定するための配線を省略している。
【0047】
温度センサ38は、バックアップバッテリ31の温度を測定し、その測定結果として温度測定値T38を電源制御装置1に供給する。
【0048】
[1.2.第1系統負荷23の構成]
図1を参照して、第1系統負荷23は、第1ADS(Automatic Drive System)負荷231と、一般負荷232とを含む。
【0049】
第1ADS負荷231は、電力供給システム100が搭載される移動体の移動および停止に関する制御の少なくとも一部を、移動体の操縦者に代わって実行する電力負荷である。第1ADS負荷231は、図示しないセンサやECU(Electronic Control Unit)を含む。移動体の移動および停止に関する制御として、例えば、ブレーキ制御、アクセル制御、方向指示器制御、ワイパー制御、駐車制御等が挙げられる。しかし、移動体の移動および停止に関する制御は、上記に列挙した制御に限定されない。
【0050】
一般負荷232は、エアコンや、オーディオ装置、カーナビゲーション装置等の機器である。電力がメインバッテリ21から供給されない場合であっても、一般負荷232は、移動体の走行及び停止に影響を及ぼさない。
【0051】
[1.3.第2系統負荷33の構成]
図1を参照して、第2系統負荷33は、第2ADS負荷331を含む。第2ADS負荷331は、第1ADS負荷231と同様に、移動体の移動および停止に関する制御の少なくとも一部を、移動体の操縦者に代わって実行する電力負荷である。
【0052】
第2ADS負荷33は、第1ADS負荷231に含まれる電気負荷と同じ電気負荷を含む。これにより、メインバッテリ21及びバックアップバッテリ31の一方が失陥した場合であっても、電力供給システム100は、失陥していないバッテリから供給される電力により、移動体の走行及び停止を継続することができる。
【0053】
[1.4.電源制御装置1の構成]
図2は、
図1に示す電源制御装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図2を参照して、電源制御装置1は、SOC取得部11と、第1SOC判断部12と、第2SOC判断部13と、電流取得部14と、電流判断部15と、失陥判断部16と、スイッチ制御部17と、記憶部18とを備える。
【0054】
SOC取得部11は、電流測定値I35を電流センサ35から受け、電圧測定値E37を電圧センサ37から受け、温度測定値T38を温度センサ38から受ける。SOC取得部11は、受けた電流測定値I35と、受けた電圧測定値E37と、受けた温度測定値T28とを用いて、バックアップバッテリ31のSOC値51を取得する。
【0055】
SOC取得部11は、SOC値51を所定の頻度で取得する。所定の頻度は、例えば、1分間に10回である。SOC取得部11は、SOC値51を取得するたびに、その取得したSOC値51を第1SOC判断部12及び第2SOC判断部13に出力する。
【0056】
第1SOC判断部12は、SOC値51をSOC取得部11から受け、その受けたSOC値51を用いて第1SOC判断処理を実行する。第1SOC判断処理は、受けたSOC値51を予め設定された第1閾値と比較することにより、バックアップバッテリ31が所定の電力を第2系統負荷33に所定の時間供給できるか否かを判断する。第1SOC判断部12は、第1SOC判断処理の結果を示す第1SOC判断結果52を、第2SOC判断部13及び失陥判断部16に出力する。
【0057】
第2SOC判断部13は、SOC値51をSOC取得部11から受け、第1SOC判断結果52を第1SOC判断部12から受ける。第1SOC判断結果52が、バックアップバッテリ31が所定の電力を第2系統負荷33に所定の時間供給できることを示す場合、第2SOC判断部13は、第2SOC判断処理の実行を決定する。
【0058】
第2SOC判断処理は、受けたSOC値51が減少することにより予め設定された第2閾値を下回ったか否かを判断する処理である。第2閾値は、第1閾値よりも高い。第2SOC判断部13は、第2SOC判断処理の結果を示す第2SOC判断結果53を失陥判断部16に出力する。
【0059】
電流取得部14は、電源電流値I25を電流センサ25から取得し、負荷電流値I26を電流センサ26から取得する。電流取得部14は、電流測定値I35を電流センサ35から取得し、負荷電流値I36を電流センサ36から取得する。電流取得部14は、取得した電源電流値I25と、電圧測定値I26と、負荷電流値I35及びI36を電流判断部15に出力する。
【0060】
電流判断部15は、電流取得部14から受けた電源電流値I25に基づいて、バックアップバッテリ31が電流をメインバッテリ21に供給しているか否かを判断する。電流判断部15は、その判断結果を含む電流供給情報54を失陥判断部16に出力する。
【0061】
電流判断部15は、電流取得部14から受けた負荷電流値I26に基づいて、電流が第1系統負荷23に供給されているか否かを判断する。電流判断部15は、その受けた負荷電流値I26が予め設定された第3閾値よりも高いか否かを判断する。電流判断部15は、これら2つの判断結果を含む第1負荷状態情報55を、失陥判断部16に出力する。
【0062】
電流判断部15は、電流取得部14から受けた負荷電流値I36に基づいて、電流が第2系統負荷33に供給されているか否かを判断する。電流判断部15は、その受けた負荷電流値I26が予め設定された第4閾値よりも高いか否かを判断する。電流判断部15は、これら2つの判断結果を含む第2負荷状態情報56を、失陥判断部16に出力する。
【0063】
電流判断部15は、電流取得部14から受けた負荷電流値I26に基づいて、第1系統負荷23が電流を第1電力線22に出力しているか否かを判断する。電流判断部15は、その判断結果を含む第1電力線状態情報57を失陥判断部16に出力する。
【0064】
電流判断部15は、電流取得部14から受けた負荷電流値I36に基づいて、第2系統負荷33が電流を第2電力線32に出力しているか否かを判断する。電流判断部15は、その判断結果を含む第2電力線状態情報58を失陥判断部16に出力する。
【0065】
失陥判断部16は、電力供給システム100で失陥又は異常が発生したか否かを判断する。失陥判断部16は、後述する第1失陥条件及び第2失陥条件が満たされた場合、メインバッテリ21が失陥したと判断する。第1失陥条件は、第1SOC判断結果52と、第2SOC判断結果53とに基づいて判断される。具体的には、SOC値51が第1閾値より高く、かつ、SOC値51が減少により第2閾値を下回った場合、失陥判断部16は、第1失陥条件が満たされたと判断する。第2失陥条件は、電流供給情報54に基づいて判断される。具体的には、バックアップバッテリ31がメインバッテリ21に電流を供給している場合、失陥判断部16は、第2失陥条件が満たされたと判断する。
【0066】
第1負荷状態情報55が、電流が第1系統負荷23に供給されており、かつ、負荷電流値I26が第3閾値よりも高いことを示す場合、失陥判断部16は、第1系統負荷23が失陥したと判断する。第2負荷状態情報56が、電流が第2系統負荷33に供給されており、かつ、負荷電流値I36が第4閾値よりも高いことを示す場合、失陥判断部16は、第2系統負荷33が失陥したと判断する。
【0067】
第1電力線状態情報57が、第1系統負荷23が電流を第1電力線22に出力していることを示す場合、失陥判断部16は、第1電力線22で異常が発生したと判断する。第2電力線状態情報58が、第2系統負荷33が電流を第2電力線32に出力していることを示す場合、失陥判断部16は、第2電力線32で異常が発生したと判断する。
【0068】
失陥判断部16は、メインバッテリ21、第1系統負荷23及び第2系統負荷33のいずれかが失陥したと判断した場合、失陥の発生をスイッチ制御部17に通知する。失陥判断部16は、失陥判断部16は、第1電力線22及び第2電力線32のいずれかで異常が発生した場合、異常の発生をスイッチ制御部17に通知する。
【0069】
スイッチ制御部17は、失陥又は異常の発生の通知を失陥判断部16から受けた場合、制御信号1Sを出力してスイッチ4をオフする。
【0070】
記憶部18は、不揮発性の記憶装置であり、例えば、フラッシュメモリである。記憶部18は、状態データ60を記憶する。状態データ60は、メインバッテリ21、第1系統負荷23及び第2系統負荷33の各々が失陥したか否かを示す情報を記録する。状態データ60は、第1電力線22及び第2電力線32の各々で異常が発生したか否かを示す情報を記録する。
【0071】
[2.通常時における電流経路]
電力供給システム100が正常に動作している場合における電流経路について説明する。電力供給システム100が正常に動作するとは、メインバッテリ21、第1系統負荷23、バックアップバッテリ31及び第2系統負荷33が失陥しておらず、かつ、第1電力線22及び第2電力線32で異常が発生していない状態を示す。
【0072】
(コンバータ3から出力される電流の経路)
図3は、
図1に示すコンバータ3から出力される電流の経路の一例を示す図である。
図3において、
図1に示す各センサと、各センサに関する配線と、第1系統負荷23と、第2系統負荷33とを省略している。
【0073】
図3を参照して、発電機2が発電している場合、コンバータ3は、発電機2から受けた第1直流電圧を、第2直流電圧に降圧する。第1直流電圧は、例えば、48(V)であり、第2直流電圧は、例えば、12(V)である。コンバータ3は、第2直流電圧とともに、直流電流を第1電力線22に出力する。以下、直流電流を単に「電流」と記載する。
【0074】
メインバッテリ21は、充電時において、矢印71で示す経路を流れる電流を受ける。矢印71は、コンバータ3から接続部29を経由してメインバッテリ21に達する。メインバッテリ21は、コンバータ3から供給される電流を用いて充電する。第1系統負荷23は、矢印72で示す経路を流れる電流を受ける。矢印72は、コンバータ3から接続部29及び接続部24を経由して、第1系統負荷23に達する。
【0075】
バックアップバッテリ31は、充電において、矢印73で示す経路を流れる電流を受ける。矢印73は、コンバータ3から、接続部29と接続部24とスイッチ4と接続部34とを経由してバックアップバッテリ31に達する。バックアップバッテリ31は、コンバータ3から供給される電流を用いて充電する。第2系統負荷33は、矢印74を示す経路を流れる電流を受ける。矢印74は、コンバータ3から、接続部29と接続部24とスイッチ4と接続部34を経由して、第2系統負荷33に達する。
【0076】
(バッテリから出力される電流の経路)
図4は、メインバッテリ21及びバックアップバッテリ31から出力される電流の経路の一例を示す図である。
図4において、
図1に示す各センサと、各センサに関する配線と、第1系統負荷23と、第2系統負荷33とを省略している。
【0077】
図4を参照して、コンバータ3が電流を出力しない場合、メインバッテリ21が、第1系統負荷23と、バックアップバッテリ31と、第2系統負荷33とに電流を供給する。具体的には、第1系統負荷23は、矢印75で示す経路を流れる電流を受ける。矢印75は、メインバッテリ21から接続部29と接続部24とを経由して、第1系統負荷23に達する。
【0078】
バックアップバッテリ31は、矢印76で示す経路を流れる電流を受ける。矢印76は、メインバッテリ21から、接続部29と接続部24とスイッチ4と接続部34とを経由してバックアップバッテリ31に達する。第2系統負荷33は、矢印77で示す経路を流れる電流を受ける。矢印77は、メインバッテリ21から、接続部29と接続部24とスイッチ4と接続部34とを経由して第2系統負荷33に達する。
【0079】
(バックアップバッテリ31から出力される電流の経路)
図4を参照して、バックアップバッテリ31は、第2系統負荷33に電流を供給する。具体的には、第2系統負荷33は、矢印77で示す経路を流れる電流を受ける。矢印77は、バックアップバッテリ31から、接続部34を経由して第2系統負荷33に達する。
【0080】
[3.電源制御装置1の動作]
[3.1.メインバッテリ21の失陥判断]
[3.1.1.失陥判断の概略]
第1失陥条件及び第2失陥条件の両者が満たされた場合、電源制御装置1は、メインバッテリ21が失陥したと判断する。以下、第1失陥条件及び第2失陥条件の各々について詳しく説明する。
【0081】
(第1失陥条件)
図5は、メインバッテリ21が失陥した場合における電流経路を示す図である。
図5を参照して、メインバッテリ21が、スイッチ4がオンされている期間において地絡した場合、電荷がバックアップバッテリ31から継続的に引き抜かれる。引き抜かれた電荷は、矢印81を示す経路を通って、地絡したメインバッテリ21に達する。矢印81が示す経路は、
図4に示す矢印76が示す経路と反対の経路である。
【0082】
メインバッテリ21が地絡した場合、バックアップバッテリ31は、コンバータ3から出力される電流によって充電できない。コンバータ3からの電流が、地絡したメインバッテリ21へ流れるためである。つまり、メインバッテリ21が地絡した場合、バックアップバッテリ31のSOC値51は減少する。電源制御装置1は、SOC値51の時間変化に基づいて、メインバッテリ21の失陥を検出できる。
【0083】
電源制御装置1は、下記の2つの条件が満たされた場合、第1失陥条件が満たされたと判断する。第1の条件は、第1閾値より高いSOC値51を検出することである。第2の条件は、第1の条件が満たされた後に、SOC値51が減少により第2閾値を下回ることである。以下、
図6を参照しながら具体的に説明する。
【0084】
図6は、
図1に示すバックアップバッテリ31のSOC値51の時間変化の一例を示すグラフである。
図6を参照して、SOC値51は、時刻t10において第1閾値TH1及び第2閾値TH2を下回っている。しかし、電源制御装置1は、時刻t10において、メインバッテリ21が失陥したと判断しない。SOC値51が、時刻t10よりも前の期間においてどのような時間変化をしていたかが不明であるためである。
【0085】
バックアップバッテリ31は、時刻t10から時刻t13までの期間において、コンバータ3から電流の供給を受ける。SOC値51は、時刻t10から増加を続け、時刻t11において第1閾値TH1よりも高くなる。電源制御装置1は、第1失陥条件が満たされたか否かの判断を、時刻t11から開始する。
【0086】
時刻t12において、バックアップバッテリ31が受ける電流の大きさが変化するため、SOC値51の傾きが変化する。時刻t13において、メインバッテリ21が地絡したと仮定する。コンバータ3による電流供給が停止し、かつ、電荷がバックアップバッテリ31から引き抜かれるため、SOC値51は、時刻t13から減少を開始する。SOC値51は、時刻t13から減少を開始し、時刻t14において第2閾値TH2を下回る。電源制御装置1は、時刻t14において、第1失陥条件が満たされたと判断する。このように、電源制御装置1は、バックアップバッテリ31のSOC値51の時間変化を用いることにより、メインバッテリ21が失陥したか否かを高い精度で判断できる。
【0087】
第1閾値TH1は、第2系統負荷33が所定の維持時間、自動運転制御を実行することができる電力量に対応する。維持時間は、例えば、1時間である。第1閾値TH1は、例えば、維持時間と、第2系統負荷33の最大消費電力とに基づいて決定される。
【0088】
第2閾値TH2は、第1閾値TH1よりも高く、第2系統負荷33が所定の調整時間にわたって自動運転を実行できる電力量に対応する。調整時間は、維持時間よりも長く、余裕時間とSOC値51の計測誤差とを考慮して、維持時間を調整することにより決定される。例えば、余裕時間は、維持時間の10%であり、維持時間に加算される。SOC値51の計測誤差とは、バックアップバッテリ31のヒステリシス電圧や、電流センサ35の計測誤差、電圧センサ37の計測誤差、温度センサ38の計測誤差等に由来する。
【0089】
(第2失陥条件)
メインバッテリ21が地絡した場合、バックアップバッテリ31から引き抜かれた電荷が、地絡したメインバッテリ21へ移動する。つまり、メインバッテリ21が地絡した場合、バックアップバッテリ31は、メインバッテリ21に電流を供給する。電源制御装置1は、バックアップバッテリ31からメインバッテリ21へ供給される電流を検出した場合、第2失陥条件が満たされたと判断する。
【0090】
電力供給システム100の通常動作時において、電流は、
図3に示すように、接続部29から接続部24の方向に流れる。メインバッテリ21が地絡した場合、電流は、
図5に示すように、接続部24から接続部29の方向に流れる。つまり、電源制御装置1は、接続部24から接続部29までに流れる電流の向きに基づいて、メインバッテリ21の失陥を高い精度で検出できる。
【0091】
なお、メインバッテリ21が地絡した場合、第1系統負荷23のコンデンサに蓄積された電荷が、矢印82を示す経路を通って、地絡したメインバッテリ21に達する。
図5に示していないが、第2系統負荷33のコンデンサに蓄積された電荷は、同様に地絡したメインバッテリ21に達する。しかし、第1系統負荷23及び第2系統負荷33がメインバッテリ21に供給する電流は、バックアップバッテリ31が供給する電流よりもはるかに小さいため、第1系統負荷23及び第2系統負荷33が供給する電流を無視してもよい。
【0092】
[3.1.2.失陥判断のフローチャート]
図7は、メインバッテリ21が失陥したか否かを判断する電源制御装置1の動作を示すフローチャートである。電力供給システム100を搭載する車両のイグニッションスイッチがオンされた場合、電源制御装置1は、
図7に示す処理を開始する。
【0093】
図7を参照して、電源制御装置1は、メインバッテリ21が既に失陥しているか否かを判断する(ステップS11)。具体的には、失陥判断部16が、状態データ60を記憶部18から読み出す。読み出した状態データ60がメインバッテリ21の失陥発生を記録している場合、失陥判断部16は、メインバッテリ21が既に失陥していると判断する(ステップS11においてYes)。電源制御装置1は、
図7に示す処理を終了する。
【0094】
メインバッテリ21が失陥していない場合(ステップS11においてNo)、電源制御装置1は、第1失陥条件が満たされているか否かを判断する(ステップS12)電源制御装置1は、第2失陥条件が満たされているか否かを判断する(ステップS13)。ステップS12及びS13の詳細については、後述する。
【0095】
電源制御装置1は、第1失陥条件及び第2失陥条件の両者が満たされたか否かを判断する(ステップS14)。具体的には、失陥判断部16が、第1SOC判断結果52及び第2SOC判断結果53に基づいて、第1失陥条件が満たされたか否かを判断する。失陥判断部16は、電流判断部15から受けた電流供給情報54に基づいて、第2失陥条件が満たされたか否かを判断する。
【0096】
第1失陥条件及び第2失陥条件の両者が満たされた場合(ステップS14においてYes)、失陥判断部16は、メインバッテリ21が失陥したと判断する(ステップS15)。失陥判断部16は、メインバッテリ21の失陥発生をスイッチ制御部17に通知する。スイッチ制御部17は、失陥判断部16からの通知に基づいて、制御信号1Sをスイッチ4に出力してスイッチ4をオフする(ステップS16)。スイッチ4のオフにより、バックアップバッテリ31からメインバッテリ21への電流の供給が停止する。これにより、バクアップバッテリ31は、維持時間にわたって自動運転を継続するための電力を、第2ADS負荷331に供給できる。
【0097】
第1失陥条件及び第2失陥条件の少なくとも一方が満たされていない場合(ステップS14においてNo)、失陥判断部16は、メインバッテリ21が失陥していないと判断し、ステップS17に進む。イグニッションスイッチがオフである場合(ステップS17においてYes)、電源制御装置1は、
図7に示す処理を終了する。イグニッションスイッチがオンである場合(ステップS17においてNo)、電源制御装置1は、ステップS12に戻り、メインバッテリ21が失陥したか否かの判断を繰り返す。
【0098】
[3.1.3.第1失陥条件判断(ステップS12)]
図8は、
図7に示す第1失陥条件判断(ステップS12)のフローチャートである。
図8を参照して、ステップS123が、第1SOC判断処理である。ステップS126及びS127が、第2SOC判断処理である。
【0099】
(SOC値51の取得)
SOC取得部11が、バックアップバッテリ31のSOC値51を取得する(ステップS121)。具体的には、SOC取得部11は、電流測定値I35を所定の頻度で電流センサ35から取得し、その取得した電流測定値I35を積算する。SOC取得部11は、電流測定値I35の積算値に基づいてSOC値51を決定する。電流測定値I35の積算値に基づいてSOC値51を決定するアルゴリズムは、特に限定されない。
【0100】
SOC取得部11は、電流測定値I35の積算値に基づくSOC値51を、電圧測定値E37及び温度測定値T38を用いて補正する。具体的には、SOC取得部11は、電圧測定値E37を電圧センサ37から取得し、温度測定値T38を温度センサ38から取得する。取得した電圧測定値E37が所定の範囲内である場合、SOC取得部11は、電流測定値I35の累積値に基づいて決定されたSOC値51の補正を決定する。
【0101】
SOC取得部11は、複数の温度に対応する複数のSOC-CCV曲線の中から、取得した温度測定値T38に対応するSOC-CCV曲線を特定する。複数のSOC-CCV曲線は、予め記憶部18に記憶されている。SOC取得部11は、取得した電圧測定値E37に対応するSOC値51を、特定したSOC-CCV曲線を参照して決定する。SOC取得部11は、電流測定値I35に基づくSOC値51を、取得した電圧測定値に対応するSOC値51に置き換える。
【0102】
なお、電圧測定値E37及び温度測定値T38に基づいてSOC値51を決定するアルゴリズムは、特に限定されない。また、SOC取得部11は、バックアップバッテリ31のSOC値51を、電源制御装置1と別の装置から取得してもよい。
【0103】
(第1SOC判断処理)
SOC取得部11は、図示しない開始フラグに基づいて、第2SOC判断処理の開始条件が満たされたか否かを判断する(ステップS122)。開始フラグは、電源制御装置1が
図7に示す処理を開始する際に0に初期化される。開始フラグが0である場合、第2SOC判断処理の開始条件が満たされていないことを示す。開始フラグが1である場合、第2SOC判断処理の開始条件が満たされたことを示す。
【0104】
開始フラグが1である場合、SOC取得部11は、第2SOC判断処理の開始条件が満たされていると判断する(ステップS122においてYes)。SOC取得部11は、ステップS121で取得したSOC値51を第2SOC判断部13に出力する。その後、ステップS126が第2SOC判断部13により実行される。ステップS126については後述する。
【0105】
開始フラグが0である場合、SOC取得部11は、第2SOC判断処理の開始条件が満たされていないと判断する(ステップS122においてNo)。SOC取得部11は、ステップS121で取得したSOC値51を第1SOC判断部12に出力する。
【0106】
第1SOC判断部12は、SOC取得部11から受けたSOC値51を第1閾値TH1と比較する第1SOC判断処理を実行する(ステップS123)。つまり、第1SOC判断部12は、SOC取得部11から受けたSOC値51に基づいて、バックアップバッテリ31が所定の電力を第2系統負荷に所定の維持時間供給できるか否かを判断する。
【0107】
受けたSOC値51が第1閾値TH1以下である場合(ステップS123においてNo)、第1SOC判断部12は、第2SOC判断処理の開始条件が満たされていないと判断し、
図8に示す処理を終了する。受けたSOC値51が第1閾値TH1よりも高い場合(ステップS123においてYes)、第1SOC判断部12は、第2SOC判断処理の開始条件が満たされたと判断する(ステップS124)。SOC取得部11は、開始フラグを0から1に変更する。第1SOC判断部12は、SOC値51が第1閾値TH1よりも高いことを示す第1SOC判断結果52を失陥判断部16出力し(ステップS125)、
図8に示す処理を終了する。
【0108】
(第2SOC判断処理)
第2SOC判断処理の開始条件が満たされていた場合(ステップS122においてYes)、第2SOC判断部13は、SOC取得部11から受けたSOC値51を用いて、第2SOC判断処理を実行する(ステップS126~S127)。
【0109】
第2SOC判断部13は、受けたSOC値51が増加又は変化していない場合(ステップS126においてNo)、第2SOC判断部13は、
図8に示す処理を終了する。
【0110】
第2SOC判断部13は、受けたSOC値51が減少している場合(ステップS126においてYes)、受けたSOC値51を第2閾値TH2と比較する(ステップS127)。受けたSOC値51が第2閾値TH2以上である場合(ステップS127においてNo)、第2SOC判断部13は、
図8に示す処理を終了する。受けたSOC値51が第2閾値TH2よりも低い場合(ステップS127においてYes)、第2SOC判断部13は、SOC値51が減少により第2閾値TH2を下回ったことを示す第2SOC判断結果53を失陥判断部16に出力し(ステップS128)、
図8に示す処理を終了する。つまり、SOC値51が、単調減少することにより、第2閾値TH2よりも高い値から第2閾値TH2よりも低い値に変化した場合、失陥判断部16は、ステップS128を実行する。
【0111】
{第2失陥条件判断(ステップS13)}
図9は、
図7に示す第2失陥条件判断(ステップS13)のフローチャートである。
図9を参照して、電流取得部14は、電源電流値I25を電流センサ25から取得する(ステップS131)。電流取得部14は、ステップS131で取得した電源電流値I25を、電流判断部15に出力する。
【0112】
電流判断部15は、電源電流値I25を電流取得部14から受ける。電流判断部15は、その受けた電源電流値I25に基づいて、バックアップバッテリ31がメインバッテリ21に電流を供給しているか否かを判断する(ステップS132)。
【0113】
図1を参照して、電源電流値I25の符号が正である場合、電流が接続部29から接続部24に向かって流れていると仮定する。この仮定において、ステップS131で取得した電源電流値I25の符号が正である場合、電流がメインバッテリ21から第1系統負荷23、バックアップバッテリ31及び第2系統負荷33に供給されている。この場合、電流判断部15は、バックアップバッテリ31が電流をメインバッテリ21に供給していないと判断し(ステップS132においてNo)、
図9に示す処理を終了する。
【0114】
電源電流値I25の符号が負である場合、電流が、バックアップバッテリ31からメインバッテリ21に供給されている(ステップS132においてYes)。この場合、電流判断部15は、バックアップバッテリ31がメインバッテリ21に電流を供給していることを示す電流供給情報54を失陥判断部16に出力し(ステップS133)、
図9に示す処理を終了する。
【0115】
[3.2.第1電力線22の異常及び第1系統負荷23の失陥の検出]
以下の説明において、負荷電流値I26の符号が正である場合、電流が接続部24から第1系統負荷23に向かって流れていると仮定する。
【0116】
[3.2.1.概略]
(第1系統負荷23の失陥の検出)
図10は、第1系統負荷23が地絡した場合における電流経路を示す図である。
図10を参照して、第1系統負荷23が地絡した場合、メインバッテリ21及びバックアップバッテリ31に充電された電荷が、地絡した第1系統負荷23により引き抜かれる。
【0117】
具体的には、メインバッテリ21から引き抜かれた電荷は、矢印83に示す経路を通って地絡した第1系統負荷23に達する。矢印83が示す経路は、
図4に示す矢印75に示す経路と同じである。バックアップバッテリ31から引き抜かれた電荷は、矢印84に示す経路を通って、地絡した第1系統負荷23に達する経路を示す。矢印83に示す経路は、バックアップバッテリ31から、接続部34、スイッチ4及び接続部24を経由して、第1系統負荷23に達する。
【0118】
メインバッテリ21及びバックアップバッテリ31の両者が、地絡した第1系統負荷23に電流を供給するため、負荷電流値I26は、第1系統負荷23の最大電定格流よりも大きくなる。第1系統負荷23の最大消費電流は、第1ADS負荷231の最大消費電流と、一般負荷232の最大消費電流との合計である。負荷電流値I26が第1系統負荷23の最大電定格流よりも大きい電流を示す場合、電源制御装置1は、第1系統負荷23が失陥したと判断することができる。
【0119】
(第1電力線22の異常検出)
図11は、第1電力線22又は第2電力線32で異常が発生した場合における、電流経路を示す図である。なお、
図11は、第1電力線22及び第2電力線32の両者が断線している状態を示すものではない。
図11を参照して、何らかの要因によって、第1電力線22における切断部22Aから切断部22Bまでの区間が断線したと仮定する。切断部22A及び22Bは、第1電力線22において接続部24から電流センサ26までの区間に含まれる。切断部22Aは、切断部22Bよりも接続部24に近い。
【0120】
断線した第1電力線22において、切断部22Bが地絡した場合、矢印85で示す経路を流れる電流が発生する。矢印85は、第1系統負荷23から地絡した切断部22Bまでの経路を示す。切断部22Bに達した電流は、大地に流出する。矢印85で示す経路を流れる電流は、第1系統負荷23に含まれるコンデンサに蓄積された電荷に由来する。切断部22Bが地絡した場合、負荷電流値I26の符号は、負となる。つまり、第1系統負荷23が電流を第1電力線22に出力している場合、電源制御装置1は、第1電力線22で異常が発生したと判断できる。第1系統負荷23が電流を第1電力線22に出力しているか否かを判断することにより、電源制御装置1は、第1電力線22で発生した異常を検出できる。
【0121】
[3.2.2.フローチャート]
図12は、第1系統負荷23の失陥及び第1電力線22の異常を検出する電源制御装置1の動作を示すフローチャートである。電源制御装置1は、イグニッションスイッチのオンに伴って、
図12に示す処理を開始する。
【0122】
図12に示す処理は、
図7に示す処理と並行して実行される。
図12に示す処理において、ステップS302~S306が、第1系統負荷23に関する処理である。ステップS307~S310が、第1電力線22に関する処理である。
【0123】
図12を参照して、電流取得部14が、負荷電流値I26を電流センサ26から取得する(ステップS301)。失陥判断部16は、第1系統負荷23が既に失陥しているか否かを判断する(ステップS302)。
【0124】
記憶部18に記憶されている状態データ60が第1系統負荷23の失陥を記録している場合、失陥判断部16は、第1系統負荷23が既に失陥していると判断し(ステップS302においてYes)、ステップS307に進む。
【0125】
記憶部18に記憶されている状態データ60が第1系統負荷23の失陥を記録していない場合、失陥判断部16は、第1系統負荷23が失陥していないと判断する(ステップS302においてNo)。この場合、電流判断部15は、ステップS301で取得された負荷電流値I26に基づいて、電流が第1系統負荷23に供給されているか否かを判断する(ステップS303)。
【0126】
負荷電流値I26の符号が負である場合、電流判断部15は、電流が第1系統負荷23に供給されていないと判断する(ステップS303においてNo)。電源制御装置1は、第1系統負荷23が失陥していないと判断し、ステップS307に進む。
【0127】
負荷電流値I26がゼロよりも大きい場合、電流判断部15は、電流が第1系統負荷23に供給されている判断する(ステップS303においてYes)。電流判断部15は、負荷電流値I26が第3閾値以上であるか否かを判断する(ステップS304)。第3閾値は、上述のように、第1系統負荷23の最大消費電流である。
【0128】
負荷電流値I26が第3閾値よりも低い場合(ステップS304においてNo)、電源制御装置1は、ステップS307に進む。
【0129】
負荷電流値I26が第3閾値以上である場合(ステップS304においてYes)、電流判断部15は、第3閾値よりも大きい電流が第1系統負荷23に供給されていることを示す第1負荷状態情報55を失陥判断部16に出力する。
【0130】
失陥判断部16は、電流判断部15から受けた第1負荷状態情報55に基づいて、第1系統負荷23が失陥したと判断する(ステップS305)。失陥判断部16は、第1系統負荷23の失陥を状態データ60に記録する。失陥判断部16は、第1系統負荷23の失陥をスイッチ制御部17に通知する。
【0131】
スイッチ制御部17は、第1系統負荷23の失陥を失陥判断部16から通知された場合、スイッチ4のオフを指示する制御信号1Sをスイッチ4に出力する(ステップS306)。スイッチ4のオフによって、メインバッテリ21とバックアップバッテリ31との接続が遮断される。
【0132】
電源制御装置1は、状態データ60を参照して、第1電力線22で異常が既に発生しているか否かを判断する(ステップS307)。状態データ60が第1電力線22での異常発生を記録している場合(ステップS307においてYes)、電源制御装置1は、
図12に示す処理を終了する。第1電力線22の異常が状態データ60に記録されていない場合(ステップS307においてNo)、電流判断部15は、ステップS301で取得された負荷電流値I26に基づいて、第1系統負荷23が電流を出力しているか否かを判断する(ステップS308)。
【0133】
負荷電流値I26がゼロ以上である場合、電流判断部15は、第1系統負荷23が電流を出力していないと判断する(ステップS308においてNo)失陥判断部16は、異常が第1電力線22で発生していないと判断し、
図12に示す処理を終了する。
【0134】
負荷電流値I26がゼロよりも低い場合、電流判断部15は、第1系統負荷23が電流を出力していると判断する(ステップS308においてYes)。この場合、失陥判断部16は、第1電力線22の異常を検出したと判断する(ステップS309)。失陥判断部16は、第1電力線22の異常を状態データ60に記録する。失陥判断部16が第1電力線22の異常を検出した場合、スイッチ制御部17は、スイッチ4のオフを指示する制御信号1Sをスイッチ4に出力する(ステップS310)。スイッチ4のオフによって、メインバッテリ21とバックアップバッテリ31との接続が遮断される。
【0135】
イグニッションスイッチがオンである場合(ステップS311においてNo)、電源制御装置1は、ステップS401に戻り、
図12に示す処理を繰り返す。イグニッションスイッチがオフである場合(ステップS311においてYes)、電源制御装置1は、
図12に示す処理を終了する。
【0136】
[3.3.第2電力線32の異常及び第2系統負荷33の失陥の検出]
以下の説明において、負荷電流値I36の符号が正である場合、電流が接続部34から第2系統負荷33に向かって流れていると仮定する。
【0137】
[3.3.1.概略]
(第2系統負荷33の失陥の検出)
図13は、第2系統負荷33が地絡した場合における電流の流れを示す図である。
図13を参照して、第2系統負荷33が地絡した場合、メインバッテリ21及びバックアップバッテリ31に充電された電荷が、地絡した第2系統負荷33により引き抜かれる。
【0138】
具体的には、メインバッテリ21から引き抜かれた電荷は、矢印87に示す経路を通って地絡した第2系統負荷33に達する。矢印87は、メインバッテリ21から、接続部29、接続部24、スイッチ4及び接続部34を経由して、第2系統負荷33に達する経路を示す。バックアップバッテリ31から引き抜かれた電荷は、矢印88に示す経路を通って、地絡した第2系統負荷33に達する。矢印88に示す経路は、
図4に示す矢印77が示す経路と同じである。
【0139】
メインバッテリ21及びバックアップバッテリ31の両者が、地絡した第2系統負荷33に電流を供給するため、負荷電流値I36は、第2系統負荷33の最大消費電流よりも大きくなる。従って、負荷電流値I36が第2系統負荷33の最大電定格流よりも大きい電流を示す場合、電源制御装置1は、第2系統負荷33が失陥したと判断できる。
【0140】
(第2電力線32の異常の検出)
図11を参照して、何らかの要因によって、第2電力線32における切断部32Aから切断部32Bまでの区間が断線したと仮定する。切断部32A及び32Bは、第2電力線32において接続部34から電流センサ36までの区間に含まれる。切断部32Aは、切断部32Bよりも接続部34に近い。
【0141】
切断部32Bが地絡した場合、矢印86で示す経路を流れる電流が発生する。矢印86は、第2系統負荷33から地絡した切断部32Bまでの経路を示す。切断部32Bに達した電流は、大地に流出する。矢印86で示す経路を流れる電流は、第2系統負荷33に含まれるコンデンサに蓄積された電荷に由来する。切断部32Bが地絡することにより、負荷電流値I36の符号は負となる。つまり、第2系統負荷33が電流を第2電力線32に出力している場合、第2系統負荷33が失陥したと判断される。第2系統負荷33が電流を第2電力線32に出力しているか否かを判断することにより、電源制御装置1は、第2電力線32で発生した異常を検出できる。
【0142】
[3.3.2.フローチャート]
図14は、第2系統負荷33の失陥及び第2電力線32の異常を検出する電源制御装置1の動作を示すフローチャートである。電源制御装置1は、イグニッションスイッチのオンに伴って、
図14に示す処理を開始する。
【0143】
図14に示す処理は、
図7及び
図12に示す処理と並行して実行される。
図14に示す処理において、ステップS402~S406が、第2系統負荷33に関する処理である。ステップS407~S410が、第2電力線32に関する処理である。
【0144】
電流取得部14が、負荷電流値I26を電流センサ26から取得する(ステップS401)。電源制御装置1は、記憶部18に記憶されている状態データ60を参照して、第1系統負荷23が既に失陥しているか否かを判断する(ステップS402)。
【0145】
第1系統負荷23が既に失陥している場合(ステップS402においてYes)、電源制御装置1は、ステップS407に進む。第2系統負荷33が失陥していない場合(ステップS402においてNo)、電源制御装置1は、ステップS403に進む。
【0146】
電流判断部15は、ステップS301で取得された負荷電流値I36に基づいて、電流が第2系統負荷33に供給されているか否かを判断する(ステップS403)。負荷電流値I36がゼロ以下である場合、電流判断部15は、電流が第2系統負荷33に供給されていないと判断する(ステップS403においてNo)。電源制御装置1は、第2系統負荷33が失陥していないと判断し、ステップS407に進む。負荷電流値I36がゼロよりも大きい場合、電流判断部15は、電流が第2系統負荷33に供給されている判断する(ステップS403においてYes)。電流判断部15は、負荷電流値I36が第4閾値以上であるか否かを判断する(ステップS404)。
【0147】
負荷電流値I26が第4閾値以上である場合(ステップS404においてYes)、失陥判断部16は、第2系統負荷33が失陥したと判断する(ステップS405)。失陥判断部16は、第2系統負荷33の失陥を状態データ60に記録する。失陥判断部16が第2系統負荷33の失陥を検出した場合、スイッチ制御部17は、スイッチ4のオフを指示する制御信号1Sをスイッチ4に出力する(ステップS306)。スイッチ4のオフによって、メインバッテリ21とバックアップバッテリ31との接続が遮断される。
【0148】
次に、電源制御装置1は、記憶部18に記憶されている状態データ60を参照して、第2電力線32で異常が既に発生しているか否かを判断する(ステップS407)。
【0149】
第2電力線32で異常が既に発生している場合(ステップS407においてYes)、電源制御装置1は、
図14に示す処理を終了する。
【0150】
第2電力線32の異常が状態データ60に記録されていない場合(ステップS407においてNo)、電流判断部15はステップS401で取得された負荷電流値I36に基づいて、第2系統負荷33が電流を出力しているか否かを判断する(ステップS308)。
【0151】
負荷電流値I36がゼロ以上である場合、電流判断部15は、第2系統負荷33が電流を出力していないと判断する(ステップS308においてNo)。失陥判断部16は、異常が第1電力線22で発生していないと判断し、
図14に示す処理を終了する。
【0152】
負荷電流値I36がゼロよりも低い場合、電流判断部15は、第2系統負荷33が電流を出力していると判断する(ステップS408においてYes)。失陥判断部16は、第2電力線32の異常を検出したと判断する(ステップS309)。失陥判断部16は、第2電力線32の異常を状態データ60に記録する。失陥判断部16が第1電力線22の異常を検出した場合、スイッチ制御部17は、スイッチ4のオフを指示する制御信号1Sをスイッチ4に出力する(ステップS410)。スイッチ4のオフによって、メインバッテリ21とバックアップバッテリ31との接続が遮断される。
【0153】
ステップS410の処理は、
図12に示すステップS310と同じであるため、その説明を省略する。
【0154】
以上説明したように、バックアップバッテリ31のSOC値51の時間変化に基づく第1失陥条件と、メインバッテリ21に流入する電流に基づく第2失陥条件との両者が満たされた場合、電源制御装置1は、メインバッテリ21が失陥したと判断する。これにより、電源制御装置1は、メインバッテリ21が失陥したか否かを高い精度で判断できる。
【0155】
[4.変形例]
上記実施の形態では、電力供給システム100が発電機2及びコンバータ3を備える例を説明したが、これに限られない。電力供給システム100は、発電機2及びコンバータ3を備えなくてもよい。この場合、電流センサ25は、第1電力線22においてメインバッテリ21から接続部24までの区間を流れる電流を測定する。
【0156】
上記実施の形態では、第1失陥条件と第2失陥条件との両者が満たされた場合、メインバッテリ21が失陥したと判断される例を説明したが、これに限られない。電源制御装置1は、第1失陥条件及び第2失陥条件の少なくとも一方が満たされた場合、メインバッテリ21が失陥したと判断してもよい。
【0157】
また、電源制御装置1は、電力供給システム100を搭載する移動体の操縦者の状態に応じて、メインバッテリ21が失陥したと判断する条件を変更してもよい。例えば、移動体が自動車である場合、電源制御装置1は、運転者がステアリングホイールを持っているか否かに基づいて、条件を変更できる。
【0158】
運転者がステアリングホイールを持っていない場合、電源制御装置1は、第1失陥条件及び第2失陥条件の少なくとも一方が満たされていることを、メインバッテリ21が失陥したと判断する条件に設定する。この場合、運転者は、自動運転が解除された場合に、自動車を直ちに運転することができない。メインバッテリ21及びバックアップバッテリ31の両者が同時に失陥することを防ぐことにより、自動車の自動運転が継続される状態を維持できる。運転者がステアリングホイールを持っている場合、電源制御装置1は、第1失陥条件及び第2失陥条件の両者が満たされていることを、メインバッテリ21が失陥したと判断する条件に設定する。この場合、自動運転が解除されたとしても、運転者が、直ちに自動車の運転を開始することができるためである。
【0159】
上記実施の形態では、電源制御装置1がメインバッテリ21が失陥したか否かを判断する例を説明したが、これに限られない。電源制御装置1は、バックアップバッテリ31が失陥したか否かを判断してもよい。
【0160】
上記実施の形態では、電源制御装置1は、第1系統負荷23及び第2系統負荷33が失陥したか否かを判断する例を説明したが、これに限られない。電源制御装置1は、第1系統負荷23及び第2系統負荷33の失陥を検出しなくてもよい。電源制御装置1は、第1電力線22及び第2電力線32で異常が発生したか否かを検出しなくてもよい。
【0161】
上記実施の形態では、電源制御装置1は、電流が第1系統負荷23からメインバッテリ21に流入しているか否かに基づいて、メインバッテリ21が失陥したか否かを判断する例を説明した。電源制御装置1は、電流が第2系統負荷33からバックアップバッテリ31に流入しているか否かに基づいて、バックアップバッテリ31が失陥したか否かを判断してもよい。
【0162】
具体的には、電流センサ35から受けた電流測定値I35がバックアップバッテリ31への電流の流入を示し、かつ、電流センサ36から受けた負荷電流値I36が第2系統負荷33が電流を供給していることを示す場合、電源制御装置1は、バックアップバッテリ31が失陥したと判断してもよい。
【0163】
上記実施の形態では、一般負荷232が、第1電力線22を介してコンバータ3から電力の供給を受ける例を説明したが、これに限られない。一般負荷23は、コンバータ3から電力の供給を直接受けてもよい。
【0164】
上記実施の形態では、電力供給システム100が移動体に搭載される例を説明したが、電力供給システム100が搭載される装置は、移動体に限定されない。
【0165】
また、上記実施の形態において、電源制御装置1の各機能ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全部を含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0166】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0167】
また、電源制御装置1により実行される処理の一部または全部は、プログラムにより実現されてもよい。そして、上記各実施の形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0168】
また、上記実施の形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0169】
例えば、電源制御装置1の各機能ブロックを、ソフトウェアにより実現する場合、
図15に示したハードウェア構成(例えば、CPU、ROM、RAM、入力部、出力部等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて、各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0170】
また、上記実施の形態における処理方法の実行順序は、上記実施の形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で実行順序を入れ替えてもよい。
【0171】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0172】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0173】
100 電力供給システム
1 電源管理装置
21 メインバッテリ
22 第1電力線
23 第1系統負荷
31 バックアップバッテリ
32 第2電力線
33 第2系統負荷
11 SOC取得部
12 第1SOC判断部
13 第2SOC判断部
14 電流取得部
15 電流判断部
16 失陥判断部
17 スイッチ制御部