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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/00 20060101AFI20221212BHJP
   B25C 1/06 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B25C1/00 A
B25C1/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019060455
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157437
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 美隆
(72)【発明者】
【氏名】大河内 幸康
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-130617(JP,A)
【文献】特開2007-136662(JP,A)
【文献】実開昭53-056182(JP,U)
【文献】特表2008-536698(JP,A)
【文献】特開2015-077676(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0232194(US,A1)
【文献】特公昭49-006415(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0082083(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータにより回転するフライホイールの回転動力を、打ち込み具打撃用の打撃ドライバの打ち込み動作のための推力として利用する打ち込み工具であって、
前記電動モータに電力を供給する電源としてバッテリを取り付け可能で、
前記打撃ドライバの往動により打撃される打ち込み具を多数本並列に仮結合した連結打ち込み具をコイル状に巻いた状態で装填するマガジンと、該マガジンから前記連結打ち込み具を前記打撃ドライバが往動する打ち込み通路側にピッチ送りする送り機構と、
前記打撃ドライバの往動により圧縮エアを生成するエア生成部と、を備え、
前記送り機構は、前記エア生成部が生成した圧縮エアの気体圧により前記連結打ち込み具の送り方向又は反送り方向に変位する送り爪を備えた打ち込み工具。
【請求項2】
請求項記載の打ち込み工具であって、前記打撃ドライバの往動端を規制するダンパが前記エア生成部としての機能を有する構成とした打ち込み工具。
【請求項3】
電動モータにより回転するフライホイールの回転動力を、打ち込み具打撃用の打撃ドライバの打ち込み動作のための推力として利用する打ち込み工具であって、
前記電動モータに電力を供給する電源としてバッテリを取り付け可能で、
前記打撃ドライバの往動により打撃される打ち込み具を多数本並列に仮結合した連結打ち込み具をコイル状に巻いた状態で装填するマガジンと、該マガジンから前記連結打ち込み具を前記打撃ドライバが往動する打ち込み通路側にピッチ送りする送り機構を備え
前記送り機構は、電磁アクチュエータを動力源として、前記連結打ち込み具の送り方向又は反送り方向に変位する送り爪を備え、
前記電磁アクチュエータの動力が流体圧を介して前記送り爪に伝達される構成とした打ち込み工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釘等の打ち込み具を打ち込む打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の打ち込み工具は、打ち込み具を打ち込み方向に打撃するための長尺の打撃ドライバを本体部に内装している。打撃ドライバを打ち込み方向に移動させる動力源として、様々な形態の動力源が用いられている。例えば、エアホースで外部から供給される圧縮エアを動力源とする圧縮エア式の打ち込み工具が提供されている。これに対して、エアホースを接続する必要のないホースレスの打ち込み工具として、フライホイールの回転動力を打ち込み動作の駆動源とするフライホイール式の打ち込み工具が提供されている。下記の特許文献1には、フライホイール式の打ち込み工具に関する技術が開示されている。
【0003】
フライホイール式の打ち込み工具は、電動モータにより回転するフライホイールに打撃ドライバを押し付けて打ち込み方向に下動(往動)させる構成を備えている。フライホイール式の場合、打撃ドライバは打ち込み後、例えばゼンマイバネ等のばね力を利用した巻き取り機構により上動端位置に戻される。
【0004】
フライホイール式におけるフライホイールを回転させる動力源として、電動モータが用いられている。このため、フライホイール式の場合、電動モータに電力を供給するための電源としてバッテリ(DC電源)を備えており、これによりホースレス化が実現されている。
【0005】
このバッテリ電源式の打ち込み工具では、多数本の打ち込み工具を装填できるマガジンを備えている。従来マガジンは、多数本の打ち込み工具が並列に仮結合された板状の連結打ち込み具を装填する形態のものが提供されている。装填した連結打ち込み具は、圧縮ばねの付勢力により常時打ち込み通路側へ押された状態とすることにより、打ち込み後、空になった打ち込み通路内に打ち込み具が1本ずつ押し出されて供給される構成となっている。
【0006】
これに対して圧縮エア駆動式の打ち込み工具について多く見られるように、多数本の打ち込み具を樹脂シート材やワイヤで一定間隔を置いて並列に仮結合した連結打ち込み具をコイル状態に巻いた状態で装填するマガジンが提供されている。このコイル状に巻いて装填するマガジンは、打ち込み工具本体側の圧縮エアを利用して送り爪を往復動させて連結打ち込み具を打ち込み通路側にピッチ送りする送り機構を備えている。係る送り爪式の送り機構に関する従来の技術が下記の特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-203292号公報
【文献】特開2013-188849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、バッテリを電源として取り付ける打ち込み工具では、連結打ち込み具を巻き状態で装填するマガジンを備えたものは提供されていなかった。
【0009】
本発明は、ホースレスでバッテリを電源として取り付ける打ち込み工具であって、連結打ち込み具をコイル状に巻いた状態で装填する形態のマガジンを備えた打ち込み工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の1つの特徴は、電動モータにより回転するフライホイールの回転動力を、打ち込み具打撃用の打撃ドライバの打ち込み動作のための推力として利用する打ち込み工具である。打ち込み工具は、電動モータに電力を供給する電源としてバッテリを取り付け可能である。打ち込み工具は、打撃ドライバの往動により打撃される打ち込み具を多数本並列に仮結合した連結打ち込み具をコイル状に巻いた状態で装填するマガジンと、マガジンから連結打ち込み具を打撃ドライバが往動する打ち込み通路側にピッチ送りする送り機構を備えている。
【0011】
上記の特徴によれば、電動モータにより回転するフライホイールの回転動力を、打ち込み具打撃用の打撃ドライバの打ち込み動作のための推力として利用する打ち込み工具であり、電動モータに電力を供給するバッテリを取り付け可能なフライホイール式の打ち込み工具において、連結打ち込み具をコイル状に巻いた状態で装填するコイルマガジンを備えた構成とすることができる。これにより、フライホイール式の打ち込み工具について、従来の板状の連結打ち込み具を装填する形態のマガジンに代えて、コイルマガジンを適用することができ、マガジンの適用範囲を拡大することができる。
【0012】
本開示の他の特徴は、送り機構は、気体圧により連結打ち込み具の送り方向又は反送り方向に変位する送り爪を備えた打ち込み工具である。
【0013】
上記の特徴によれば、送り機構の送り爪は、気体圧により動作する。送り爪は、気体圧で例えば反送り方向に変位し、圧縮ばねにより送り方向に変位する構成とすることができる。
【0014】
本開示の他の特徴によれば、打撃ドライバの往動により圧縮エアを生成するエア生成部を備え、エア生成部が生成した圧縮エアの気体圧により送り爪を変位させる構成とした打ち込み工具である。
【0015】
上記の特徴によれば、打撃ドライバが往動するとエア生成部で圧縮エアが生成され、この圧縮エアにより送り爪が送り方向又は反送り方向に変位する。送り爪は、エア生成部で生成された圧縮エアで例えば反送り方向に戻され、圧縮ばねで送り方向に変位する構成とすることができる。
【0016】
本開示の他の特徴は、打撃ドライバの往動端を規制するダンパが前記エア生成部としての機能を有する構成とした打ち込み工具である。
【0017】
上記の特徴によれば、往動端規制用のダンパが、衝撃吸収機能(往動端規制機能)と、エア生成部としての機能を併せ持つ。
【0018】
本開示の他の特徴は、送り機構は、電磁アクチュエータを動力源として、連結打ち込み具の送り方向又は反送り方向に変位する送り爪を備えた打ち込み工具である。
【0019】
上記の特徴によれば、バッテリを共通の電源として電磁アクチュエータを動作させて送り爪が変位する。電磁アクチュエータとして、通電により往復動する複動型のアクチュエータを用いる他、通電により往動又は復動し、圧縮ばねの付勢力により復動又は往動する単動方のアクチュエータを用いることができる。
【0020】
本開示の他の特徴は、流体圧を介して電磁アクチュエータの動力を送り爪に伝達する構成とした打ち込み工具である。
【0021】
上記の特徴によれば、流体圧があらゆる方向に均一に伝達されることを利用して、電磁アクチュエータと送り爪の位置関係(配置の姿勢)の設定の自由度が高まる。
【0022】
本開示の他の特徴は、送り機構は、リンク部材の動作により、前記連結打ち込み具の送り方向又は反送り方向に変位する送り爪を備えた打ち込み工具である。
【0023】
上記の特徴によれば、リンク部材の動作により送り爪が変位する。リンク部材は、電動モータ等の特別な動力源を用いて動作させる構成とするほか、打撃ドライバの動作を利用して動作させることができる。
【0024】
本開示の他の特徴は、リンク部材は、打撃ドライバに連動して動作する打ち込み工具である。
【0025】
上記の特徴によれば、打撃ドライバの動作を利用してリンク部材が動作する。従って、打撃ドライバの動作に連動して送り爪が変位する。打撃ドライバの動作により送り爪を反送り方向に戻し、圧縮ばねの付勢力により送り方向に変位させる構成、逆に打撃ドライバの動作により送り爪を送り方向に変位させ、圧縮ばねの付勢力により反送り方向に戻す構成とすることができる。
【0026】
本開示の他の特徴は、送り機構は、送りモータを駆動源として連結打ち込み具の送り方向又は反送り方向に変位する送り爪を備えた打ち込み工具である。
【0027】
送りモータを動力源とするラックピニオン機構により送り爪を送り方向と反送り方向に変位させる構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係るフライホイール式の打ち込み工具の全体側面図である。本図は、打撃ドライバが上動端位置に戻された打ち込み待機状態を示している。
図2】エア生成部の縦断面図である。本図は、打撃ドライバが上動端位置に戻されて、エア生成部としての下動端ダンパが上方へ伸長した状態を示している。
図3】エア生成部の縦断面図である。本図は、打撃ドライバの下動によりエア生成部としての下動端ダンパが圧縮されて圧縮エアを吐出した状態を示している。
図4図1の(IV)-(IV)線断面矢視図であって、マガジン及び送り機構の横断面図である。本図は、打ち込み具の送り機構の送り爪が送り位置に移動した状態を示している。
図5】マガジン及び送り機構の横断面図である。本図は、送り機構の送り爪が反送り方向に戻された状態を示している。
図6】第2実施形態に係る下動端ダンパの縦断面図である。本図は、打撃ドライバが上動端位置に戻されて、エア生成部としての下動端ダンパが上方へ伸長した状態を示している。
図7】第2実施形態に係る下動端ダンパの縦断面図である。本図は、打撃ドライバの下動によりエア生成部としての下動端ダンパが圧縮されて圧縮エアを吐出した状態を示している。
図8】第3実施形態に係る送り機構の平面図である。本図は、送り爪が送り方向に移動した状態を示している。
図9】第3実施形態に係る送り機構の平面図である。本図は、送り爪が反送り方向に戻される途中の段階を示している。
図10】第3実施形態に係る送り機構の平面図である。本図は、送り爪が反送り方向に戻された状態を示している。
図11】第4実施形態に係る送り機構を備えたフライホイール式の打ち込み工具の全体側面図である。本図は、打撃ドライバが上動端位置に戻されて送り爪が送り位置に移動した状態を示している。
図12】第4実施形態に係る送り機構を備えたフライホイール式の打ち込み工具の全体側面図である。本図は、打撃ドライバが下動して送り爪が反送り方向に戻された状態を示している。
図13】第5実施形態に係る送り機構の平面図である。本図は、ラック・ピニオン式の送り機構において送り爪が反送り方向に戻された状態を示している。
図14】第6実施形態に係る送り機構の平面図である。本図は、流体圧介在形の電磁アクチュエータ式の送り機構において、送り爪が送り方向に移動した状態を示している。
図15】第6実施形態に係る送り機構の平面図である。本図は、流体圧介在形の電磁アクチュエータ式の送り機構において、送り爪が反送り方向に戻された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態を図1図15に基づいて説明する。図1は第1実施形態に係る打ち込み工具を示している。第1実施形態では、打ち込み工具1としてエアホースを接続する必要のないホースレスの打ち込み工具で、フライホイールの回転動力(エネルギー)を打ち込み動作のための推力として利用するいわゆるフライホイール式のDC打ち込み工具1が例示されている。
【0030】
図1に示すように 第1実施形態の打ち込み工具1は、工具本体部10と、打ち込み具nが打ち出される打ち込みノーズ部20と、多数本の打ち込み具nを収容しておくためのマガジン30と、使用者が把持するハンドル部40を備えている。ハンドル部40の基部には、打ち込み動作起動用のスイッチレバー41が設けられている。ハンドル部40の先端に直流電源としてのバッテリ42が取り付けられている。バッテリ42は、取り外して別途用意した充電器で充電することにより繰り返し電源として利用することができる。
【0031】
マガジン30には、多数本の打ち込み具nを並列に仮結合した連結打ち込み具Nが、コイル状に巻かれた状態で装填される(コイルマガジン)。マガジン30は、打ち込みノーズ部20とハンドル部40との間に跨って支持されている。マガジン30は、装填した連結打ち込み具Nをピッチ送りする送り機構31を経て打ち込みノーズ部20に結合されている。送り機構31の詳細は後述する。
【0032】
フライホイール式の工具本体部10は、ホイールモータ11を駆動源として回転するフライホイール12を備えている。ホイールモータ11は、コンタクトアームのオン操作によりバッテリ42から電力を受けて起動する。ホイールモータ11の出力軸に取り付けた出力ホイール13とフライホイール12との間に駆動ベルト14が掛け渡されている。ホイールモータ11の回転動力が駆動ベルト14を経てフライホイール12に伝達される。フライホイール12の周面に打撃ドライバ15が押圧されて、その回転動力が打撃ドライバ15に打撃方向の推力として伝達される。
【0033】
打撃ドライバ15を挟んで、フライホイール12の反対側には、押圧ローラ16が配置されている。押圧ローラ16は、スイッチレバー41の引き操作により打撃ドライバ15に押圧される。押圧ローラ16は、押圧ばね17の付勢力により打撃ドライバ15に押圧され、これにより打撃ドライバ15がフライホイール12と押圧ローラ16との間に挟み込まれる。打撃ドライバ15の挟み込み状態は、押圧ローラ16の押圧状態を解除する解除機構(図示省略)により解除される。解除機構には電磁アクチュエータが用いられている。押圧ローラ16の押圧状態は、スイッチレバー41の引き操作が解除操作されると、解除機構により解除される。
【0034】
打撃ドライバ15は、ばね力を利用した巻き取り機構により上動端位置に戻される。打撃ドライバ15は、上動端ダンパ18に当接して上動端位置に保持される。図2及び図3に示すように打撃ドライバ15の上部には、左右に張り出す肩部15aが一体に設けられている。左右の肩部15aには、それぞれ巻き取り機構で巻き取られるワイヤ19が結合されている。押圧ローラ16の押圧状態が解除されると、左右のワイヤ19が巻き取り機構のばね力で巻き取られて打撃ドライバ15が上動端位置に戻される。
【0035】
スイッチレバー41が引き操作されると、押圧ローラ16が打撃ドライバ15に押圧されて、フライホイール12との間に挟み込まれることにより、打撃ドライバ15がフライホイール12の回転動力により巻き取り機構の巻き取り力に抗して打ち込み方向に下動(往動)される。打撃ドライバ15が打ち込み通路20b内を下動して打ち込み具nが打撃される。打撃ドライバ15の下動端には、円環形の下動端ダンパ50が配置されている。打撃ドライバ15が下動端に至ると、その左右の肩部15aがそれぞれ下動端ダンパ50に当接される。下動端ダンパ50により、打撃ドライバ15の下動端が規制され、かつ衝撃が吸収される。
【0036】
打撃ドライバ15は、下動端ダンパ50の内周側を経て打ち込みノーズ部20の打ち込み通路20b内に至っている。打ち込みノーズ部20の先端が射出口20aとされている。図示は省略したが打ち込みノーズ部20には、打ち込み材Wに押し付けて相対的に上動させるコンタクトアームが設けられている。打ち込みノーズ部20の先端(射出口20a)を打ち込み材Wに向けてコンタクトアームを上動させる操作がなされると打ち込み動作可能な状態となる。これにより、当該打ち込み工具1の不用意な打ち込み動作が防止されるようになっている。
【0037】
上記した下動端ダンパ50は、打撃ドライバ15の下動端での衝撃を吸収する機能するとともに、圧縮エアを生成するエア生成部としての機能を有している。下動端ダンパ50は、円筒形の基台部51と、同じく円筒形の当接部52を有している。基台部51には、上面側に開口する円筒形の溝部51aが設けられている。溝部51a内に当接部52の下部側が進入して、当接部52が基台部51に対して上下に変位可能に支持されている。溝部51a内は気密にシールされている。溝部51aの底部と当接部52との間に1つの圧縮ばね53が介装されている。圧縮ばね53の付勢力により、当接部52は上方へ変位する方向に付勢されている。
【0038】
打撃ドライバ15が下動端に至る直前において、左右の肩部15aが当接部52の上面に当接される。打撃ドライバ15の下動により当接部52が圧縮ばね53に抗して下方へ変位する。当接部52が下方へ変位することにより、溝部51a内において圧縮エアが生成される。圧縮エアの弾発力と圧縮ばね53の付勢力により打撃ドライバ15の下動端における衝撃が吸収される。このように下動端ダンパ50が、打撃ドライバ15の下動端における衝撃吸収機能と圧縮エアの生成機能を有している。
【0039】
溝部51aの底部には、通気口52aを経てエア通路54が接続されている。打撃ドライバ15の下動により溝部51aで生成された圧縮エアは、そのままこのエア通路54を経て送り機構31の送りシリンダ32に供給される。
【0040】
図4及び図5に示すように送り機構31は、マガジン30に装填した連結打ち込み具Nを工具本体部10の打ち込み動作に連動して打ち込みノーズ部20側にピッチ送りする機能を有するもので、単動形の送りシリンダ32を備えている。送りシリンダ32は、エア生成部としての下動端ダンパ50からエア通路54を経て供給される圧縮エアにより送りロッド32aを引き込ませる側に作動し、圧縮エアが放出されると圧縮ばね32bにより送りロッド32aを突き出させる側に作動する。送りシリンダ32の送りロッド32aには送り爪33が支持されている。送り爪33は圧縮ばね33aにより打ち込み具n側へ突き出す方向に付勢されている。
【0041】
送り機構31の送り通路の反対側には、2つのストッパ爪34が設けられている。この2つのストッパ爪34は、打ち込み具nの長さ方向について上記送り爪33の両側に配置されている。2つのストッパ爪34は、それぞれ圧縮ばね34aにより打ち込み具n側へ突き出す方向に付勢されている。このストッパ爪34によって連結打ち込み具Nの反送り方向への逆流が防止される。
【0042】
打撃ドライバ15が下動端に至って1本の打ち込み具nの打ち込みが完了すると、下動端ダンパ50で生成された圧縮エアがエア通路54を経て送り機構31の送りシリンダ32に供給される。送りシリンダ32に圧縮エアが供給されると、図5に示すように送りロッド32aが圧縮エアのエア圧により圧縮ばね32bに抗して引き込み側に変位する。送りロッド32aが引き込み側に移動することにより送り爪33が反送り方向へ後退する。この後退動作は、送り爪33が圧縮ばね33aに抗して反打ち込み具n側(図4,5において上側)へ後退して1本の打ち込み具nを乗り越えつつなされる。
【0043】
図5に示すように送り爪33が反送り方向へ後退する段階では、送り方向前側の打ち込み具nの後側に2つのストッパ爪34が係合された状態となって、連結打ち込み具Nの反送り方向への戻りが規制された状態となる。このようにストッパ爪34により連結打ち込み具Nの反送り方向への戻りが規制された状態で、送り爪33が1ピッチ(打ち込み具nの1本分)だけ反送り方向へ戻される。
【0044】
こうして送り爪33が2番目の打ち込み具nに係合されて送り待機状態となる。打撃ドライバ15が下動端に至って1本の打ち込み具nの打ち込みが完了した後、スイッチレバー41の引き操作を解除すると、押圧ローラ16がリリース側へ戻されて打撃ドライバ15が巻き取り機構により上動端に戻される。打撃ドライバ15が下動端から上動することにより、下動端ダンパ50では、当接部52が圧縮ばね53の付勢力により上方へ戻される。基台部51に対して当接部52が上方へ戻されることにより、溝部51a内に圧縮エアが戻される。
【0045】
こうして送りシリンダ32に供給された圧縮エアが溝部51a内側へ戻されることにより、送りシリンダ32の送りロッド32aが圧縮ばね32bの付勢力により送り側へ突き出されて送り爪33が送り方向へ変位する。こうして送り爪33が送り方向へ変位することにより、連結打ち込み具Nが送り方向へ1ピッチだけ送られる。送り爪33により連結打ち込み具Nが1ピッチ送られることにより、打撃ドライバ15が上方へ退避されて空になった打ち込み通路20bに、1本の打ち込み具nが供給される。供給された1本に打ち込み具nは、次回の打ち込み動作により射出口20aから打ち出される。
【0046】
以上説明した第1実施形態の打ち込み工具1によれば、工具本体部10の打ち込み動作に連動して、コイル状に巻かれた状態でマガジン30に装填された連結打ち込み具Nが送り機構31によりピッチ送りされる。これにより、従来と同様、多数本の打ち込み具nをマガジン30に装填して打ち込み作業を連続的に行うことができる。
【0047】
しかも、例示した打ち込み工具1では、連結打ち込み具Nをコイル状に巻いた状態で装填できるマガジン30(コイルマガジン)を備えている。従来板状の連結打ち込み具を装填するマガジンに代えて、連結打ち込み具Nをコイル状に巻いた状態で装填する形態のマガジン30を利用することができ、この点でDC打ち込み工具について、マガジンの適用範囲を拡大することができる。
【0048】
以上説明した第1実施形態には、種々変更を加えることができる。図6,7には、第1実施形態における下動端ダンパ50に代えて、第2実施形態に係る下動端ダンパ60が示されている。第2実施形態では、円環形の1つの下動端ダンパ50に代えて、左右2つの下動端ダンパ60が用いられている。下動端ダンパ60には、第1実施形態のような2部材間に圧縮ばねを介装した構成ではなく、ビニールシート地の蛇腹形をなすより簡易なエアクッションが用いられている。
【0049】
第1実施形態と同じく左右の下動端ダンパ60も、気体圧を利用して打撃ドライバ15の衝撃を吸収するエアクッションとして機能するとともに、それぞれ圧縮エアを生成するエア生成部として機能する。第1実施形態と同様、スイッチレバー41のオン操作により打撃ドライバ15が下動して打撃動作がなされる。打撃ドライバ15が下動端の直前に至ると、左右の肩部15aがそれぞれ下動端ダンパ60に当接する。図7に示すように打撃ドライバ15の下動により左右の下動端ダンパ60が下方へ押されて縮小する。左右の下動端ダンパ60が縮小することにより、打撃ドライバ15の下動端での衝撃が吸収されるとともに、下動端ダンパ60内において圧縮エアが生成される。
【0050】
左右の下動端ダンパ60には、それぞれ発生した圧縮エアを吐出するエア通路60aが設けられている。左右のエア通路60aは合流されて、送り機構31の送りシリンダ32に接続されている。打撃ドライバ15が下動端に至って左右の下動端ダンパ60がそれぞれ縮小することにより生成された圧縮エアが、エア通路60aを経て送りシリンダ32に供給される。
【0051】
第1実施形態と同様、送りシリンダ32に圧縮エアが供給されることにより、送り爪33が打ち込み具nの1本分だけ反送り方向に戻される。送り爪33が戻される段階では、ストッパ爪34が打ち込み具nに係合して連結打ち込み具Nの反送り方向への変位が規制される。スイッチレバー41のオン操作を解除すると、押圧ローラ16の押圧状態が解除されて、打撃ドライバ15が巻き取り機構により上動端位置に戻される。
【0052】
図6に示すように打撃ドライバ15が下動端から上方へ戻されると、左右の下動端ダンパ60に対する肩部15aの当接が解除される。肩部15aの当接が解除されると、左右の下動端ダンパ60は、送りシリンダ32側に供給された圧縮エアが戻されて上方へ伸長した初期状態に復帰する。
【0053】
打撃ドライバ15の上動により送りシリンダ32への圧縮エアの供給が解除されると、その圧縮ばね32bの付勢力により送り爪33が送り方向へ移動して連結打ち込み具Nが1ピッチだけ送られて、打ち込み通路20b内に1本の打ち込み具nが供給される。
【0054】
以上説明した第2実施形態に係る下動端ダンパ60によっても、フライホイール式の打ち込み工具2において、打ち込み動作を利用して作動する送り機構31と、連結打ち込み具Nをコイル状に巻いて装填するマガジン30を適用することができる。
【0055】
送り機構31については、さらに変更を加えることができる。図8図10には、第1、第2実施形態とは異なる第3実施形態に係る送り機構80が示されている。第1、第2実施形態と同様の部材及び構成については同位の符合を用いてその説明を省略する。第3実施形態に係る送り機構80は、圧縮エアで作動する送りシリンダ32に代えて電磁アクチュエータ81を動力源とする電磁アクチュエータ形の送り機構となっている。
【0056】
電磁アクチュエータ81は、バッテリ42の電力を電源として送りロッド81aを引き込み側(反送り方向)にストロークさせ、電力供給を遮断すると送りロッド81aが圧縮ばね81bの付勢力により突き出し側(送り方向)にストロークさせる構成を備えている。送りロッド81aの先端に送り爪33が設けられている。前記例示した実施形態と同様、送り爪33は、圧縮ばね33aにより送りロッド81aから側方へ突き出す側に付勢されている。また、送り爪33とは反対側に2つのストッパ爪34が配置されている。2つのストッパ爪34は、圧縮ばね34aにより打ち込み具n側に突き出す方向に付勢されている。
【0057】
この電磁アクチュエータ形の送り機構80は、工具本体部10の打ち込み動作を利用することなく動作させることができる。
【0058】
図8に示すように電磁アクチュエータ81への電力供給を遮断すると、送りロッド81aが圧縮ばね81bの付勢力により送り方向へ突き出される。送りロッド81aが送り方向に突き出されると、送り爪33により連結打ち込み具Nが1ピッチ送られて打ち込み通路20b内に1本の打ち込み具nが供給される。
【0059】
図9に示すように電磁アクチュエータ81に対して電力供給がなされることにより、送りロッド81aが反送り方向へ戻される。送り爪33は、戻される段階で圧縮ばね33aに抗して打ち込み具nから離間する方向へ退避しつつ1本の打ち込み具nを乗り越えてその送り方向後側に移行する。送り爪33が圧縮ばね81bに抗して反送り方向へ戻される段階では、2つのストッパ爪34が係合することにより、連結打ち込み具Nの反送り方向への位置ずれが防止される。
【0060】
図10に示すように再び電磁アクチュエータ81への電力供給が遮断されると、圧縮ばね81bの付勢力により送り爪33が送り方向へ変位して連結打ち込み具Nが打ち込み通路20b側に送られる。次に打ち込み通路20bに供給される打ち込み具nは、2つのストッパ爪34を圧縮ばね34aに抗して打ち込み具nから離間させる方向へ押し下げつつ、打ち込み通路20b側へ移動する。
【0061】
以上のように送りロッド81aの引き込み側への動作を電力により行い、突き出し側への動作をばね力により行う単動形の電磁アクチュエータ81に代えて、送りロッドの両方向の移動を電磁力により行う復動形の電磁アクチュエータを用いることもできる。
【0062】
図11、12には、第4実施形態に係る送り機構70を備えたフライホイール式の打ち込み工具1が示されている。第4実施形態では、リンク部材71を主体とする送り機構70が示されている。リンク部材71は、L字形を有する部材で、支軸72を介して工具本体部10に上下に傾動可能に支持されている。リンク部材71の支軸72に対して下側の下アーム部71bは、支軸72から下方へ延びて送り爪73に係合されている。送り爪73は、圧縮ばね74によって送り方向へ付勢されている。送り爪73は、送り通路に沿って往復動可能に支持されている。上記例示した各実施形態と同様、送り通路の反対側には、2つのストッパ爪34が配置されている。
【0063】
図11に示すように打撃ドライバ15が上動端に位置する初期状態では、リンク部材71の下アーム部71bが圧縮ばね74の付勢力により送り方向に押されて当該リンク部材71が図示時計回り方向に傾動した状態となり、従って送り爪73が送り方向に変位して打ち込み通路20b内に1本の打ち込み具nが供給された状態となっている。
【0064】
スイッチレバー41の引き操作によりホイールモータ11が起動して打撃ドライバ15が打ち込み方向に下動する。図12に示すように打撃ドライバ15が下動端位置に至る直前において、打撃ドライバ15に設けた作動凸部15bが、リンク部材71の上アーム部71aに干渉する。打撃ドライバ15に下動に伴って上アーム部71aが作動凸部15bにより下方へ押し下げられることにより、リンク部材71が支軸72を中心にして図示反時計回り方向に傾動する。
【0065】
リンク部材71が図示反時計回り方向に傾動することによりその下アーム部71bが図示右側へ変位して、送り爪73が圧縮ばね74に抗して反送り方向に戻される。この段階では、ストッパ爪34により連結打ち込み具Nの反送り方向への位置ずれが防止される。スイッチレバー41に引き操作を解除して打撃ドライバ15が上動端に戻されると、作動凸部15bによる押し下げが解除されることから、リンク部材71が圧縮ばね74の間接作用により図11に示す初期位置に戻される。リンク部材71が初期位置に戻されつつ、送り爪73が圧縮ばね74の付勢力により送り方向へ変位して打ち込み通路20b内に1本の打ち込み具nが供給される。
【0066】
以上説明した第4実施形態に係る送り機構70によっても、フライホイール式の打ち込み工具1において、連結打ち込み具Nがコイル状に巻かれた状態で装填されるマガジン30を採用することができる。
【0067】
マガジン30にコイル状に巻いた状態で装填した連結打ち込み具Nを打ち込み通路20b側へピッチ送りする送り機構についてはさらに異なる形態の送り機構を適用することができる。図13には、第5実施形態に係る送り機構85が示されている。第5実施形態の送り機構85は、送りモータ86により回転するピニオンギヤ87と、ピニオンギヤ87が噛み合わされたラックギヤ88を備えている。ラックギヤ88は、送りロッド89に一体に設けられている。送りモータ86は、バッテリパック42の電力を電源して動作する。
【0068】
送りロッド89は圧縮ばね89aにより送り方向に付勢されている。送りロッド89の先端側には、第1実施形態と同様送り爪33が設けられている。送り爪33は、第1実施形態と同様圧縮ばね33aにより打ち込み具n側に突き出す方向に付勢されている。また、送り通路の反対側には、2つのストッパ爪34が設けられている。2つのストッパ爪34は、それぞれ圧縮ばね34aにより打ち込み具n側へ突き出す方向に付勢されている。このストッパ爪34によって連結打ち込み具Nの反送り方向への逆流が防止される。
【0069】
打撃ドライバ15が下動端に至って1本の打ち込み具nの打ち込みが完了すると、送りモータ86が送りロッド戻し側に起動する。送りモータ86が送りロッド戻し側に起動すると、ピニオンギヤ87とラックギヤ88との噛み合いを経て送りロッド89が圧縮ばね89aに抗して反送り方向に戻される。送りロッド89が反送り方向に移動することにより送り爪33が反送り方向へ後退する。この後退動作は、送り爪33が圧縮ばね33aに抗して反打ち込み具n側(図13において上側)へ後退して1本の打ち込み具nを乗り越えつつなされる。
【0070】
以下第1実施形態と同様、送り爪33が反送り方向へ後退する段階では、送り方向前側の打ち込み具nの後側に2つのストッパ爪34が係合された状態となって、連結打ち込み具Nの反送り方向への戻りが規制された状態となる。このようにストッパ爪34により連結打ち込み具Nの反送り方向への戻りが規制された状態で、送り爪33が1ピッチ(打ち込み具nの1本分)だけ反送り方向へ戻される。
【0071】
送り爪33が2番目の打ち込み具nに係合されて送り待機状態となる。打撃ドライバ15が下動端に至って1本の打ち込み具nの打ち込みが完了した後、スイッチレバー41の引き操作を解除すると、押圧ローラ16がリリース側へ戻されて打撃ドライバ15が巻き取り機構により上動端に戻される。打撃ドライバ15が上動端に戻された段階で、送りモータ86の動力が開放されることにより、送りロッド89が圧縮ばね89aの付勢力により送り方向に移動し、従って送り爪33が送り方向へ変位する。こうして送り爪33が送り方向へ変位することにより、連結打ち込み具Nが送り方向へ1ピッチだけ送られる。送り爪33により連結打ち込み具Nが1ピッチ送られることにより、打撃ドライバ15が上動端に戻されて空になった打ち込み通路20bに、1本の打ち込み具nが供給される。供給された1本に打ち込み具nは、次回の打ち込み動作により射出口20aから打ち出される。
【0072】
このように第5実施形態に係るラック・ピニオン式の送り機構85によっても、工具本体部10の打ち込み動作に連動して、コイル状に巻かれた状態でマガジン30に装填された連結打ち込み具Nが打ち込み通路20b側へピッチ送りされる。これにより、フライホイール形の打ち込み工具1について、圧縮エア駆動形の打ち込み工具と同様、多数本の打ち込み具nをコイル状に巻いて装填したコイルマガジン30を適用することができる。
【0073】
第5実施形態では、送り機構85の動力源として送りモータ86を用いる構成であり、第1、第2実施形態とは異なり圧縮エアを駆動源と利用しない構成であることから、第3実施形態と同じく、打撃ドライバ15の下動端を規制し、衝撃を吸収する部材としてウレタンゴム等の下動端ダンパを用いることができる。
【0074】
図14,15には、流体圧を利用した第6実施形態に係る送り機構90が示されている。第6実施形態に係る送り機構90は、電磁アクチュエータ91を動力源とする点で第3実施形態と同様であるが、送りロッド92との間に流体圧部93を介在させて流体圧部93の圧力により送りロッド92を反送り方向に戻す構成である点で第3実施形態とは異なっている。
【0075】
流体圧部93には、オイル93aが封入されている。流体圧部93の上流側に電磁アクチュエータ91のピストン91aが往復動可能に内装されている。流体圧部93の下流側に戻しピストン92bが内装されている。上流側のピストン91aと下流側にピストン92bとの間にオイル93aが封入されている。下流側のピストン92bは送りロッド92に一体に設けられている。送りロッド92は、圧縮ばね92aにより送り方向に付勢されている。
【0076】
第1実施形態と同様、送りロッド92の先端側には、送り爪33が設けられている。送り爪33は、第1実施形態と同様圧縮ばね33aにより打ち込み具n側に突き出す方向に付勢されている。また、送り通路の反対側には、2つのストッパ爪34が設けられている。2つのストッパ爪34は、それぞれ圧縮ばね34aにより打ち込み具n側へ突き出す方向に付勢されている。このストッパ爪34によって連結打ち込み具Nの反送り方向への逆流が防止される。
【0077】
打撃ドライバ15が下動端に至って1本の打ち込み具nの打ち込みが完了すると、電磁アクチュエータ91が突き出し側に作動する。電磁アクチュエータ91が突き出し側に作動すると、ピストン91aが流体圧部93内に進入する方向へ変位する。これにより流体圧部93のオイル93aが下流側へ流れる。オイル93aが下流側へ流れることにより、ピストン92bが図15に示すように圧縮ばね92aに抗して反送り方向に変位する。ピストン92bがオイル93aの流体圧により反送り方向に変位することにより送りロッド92が一体で反送り方向に戻される。送りロッド92が反送り方向に戻されることにより送り爪33が反送り方向へ後退する。この後退動作は、送り爪33が圧縮ばね33aに抗して反打ち込み具n側(図13において上側)へ後退して1本の打ち込み具nを乗り越えつつなされる。
【0078】
以下第1実施形態と同様、送り爪33が反送り方向へ後退する段階では、送り方向前側の打ち込み具nの後側に2つのストッパ爪34が係合された状態となって、連結打ち込み具Nの反送り方向への戻りが規制された状態となる。このようにストッパ爪34により連結打ち込み具Nの反送り方向への戻りが規制された状態で、送り爪33が1ピッチ(打ち込み具nの1本分)だけ反送り方向へ戻される。
【0079】
送り爪33が2番目の打ち込み具nに係合されて送り待機状態となる。図15はこの送り待機状態を示している。打撃ドライバ15が下動端に至って1本の打ち込み具nの打ち込みが完了した後、スイッチレバー41の引き操作を解除すると、押圧ローラ16がリリース側へ戻されて打撃ドライバ15が巻き取り機構により上動端に戻される。打撃ドライバ15が上動端に戻された段階で、電磁アクチュエータ91が図14に示すように引き込み側に作動する。
【0080】
電磁アクチュエータ91が引き込み側に作動して、ピストン91aが流体圧部93から退出する方向に変位することにより、オイル93aが上流側に戻される。流体圧部93においてオイル93aが上流側に戻されることにより、ピストン92bに作用するオイル93aの流体圧が低下する。これにより送りロッド92が圧縮ばね92aの付勢力により送り方向に移動し、従って送り爪33が送り方向へ変位する。こうして送り爪33が送り方向へ変位することにより、連結打ち込み具Nが送り方向へ1ピッチだけ送られる。送り爪33により連結打ち込み具Nが1ピッチ送られて、打ち込み通路20bに1本の打ち込み具nが供給される。供給された1本に打ち込み具nは、次回の打ち込み動作により射出口20aから打ち出される。
【0081】
このように第6実施形態に係るラック・ピニオン式の送り機構90によっても、工具本体部10の打ち込み動作に連動して、コイル状に巻かれた状態でマガジン30に装填された連結打ち込み具Nが打ち込み通路20b側へピッチ送りされる。これにより、フライホイール形の打ち込み工具1について、圧縮エア駆動形の打ち込み工具と同様、多数本の打ち込み具nをコイル状に巻いて装填したコイルマガジン30を適用することができる。
【0082】
第6実施形態では、送り機構90の動力源として第3実施形態と同じく電磁アクチュエータ91を用いる構成となっているが、第3実施形態とは異なって流体圧部93の流体圧により送りロッド92を反送り側に戻す構成となっている。このため、第3実施形態のように電磁アクチュエータ91の作動方向を送りロッド92の移動方向(送り方向)に一致させる必要がないことから、電磁アクチュエータ91の配置の自由度が高まる。従って、流体圧部93を介在させることにより、図14,15に示すように電磁アクチュエータ91を送りロッド92の移動方向(図14,15において左右方向)に対して交差する縦向き(作動方向を上下方向とする向き)に配置することができ、これにより当該送り機構90のコンパクト化を図ることができる。
【0083】
また、第6実施形態においても電磁アクチュエータ91を動力源として用いる構成であり、第1、第2実施形態とは異なり圧縮エアを駆動源と利用しない構成であることから、第3実施形態と同じく、打撃ドライバ15の下動端を規制し、衝撃を吸収する部材としてウレタンゴム等の下動端ダンパを用いることができる。なお、流体圧部93の流体としては例示したオイル93aに代えて、水等その他の液体あるいは圧縮エア等その他の気体を用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0084】
n…打ち込み具
N…連結打ち込み具
W…打ち込み材
1…打ち込み工具
10…工具本体部
11…ホイールモータ
12…フライホイール
13…出力ホイール
14…駆動ベルト
15…打撃ドライバ、15a…肩部、15b…作動凸部
16…押圧ローラ
17…押圧ばね
18…上動端ダンパ
19…ワイヤ
20…打ち込みノーズ部
20a…射出口、20b…打ち込み通路
30…マガジン
31…送り機構(第1実施形態)
32…送りシリンダ、32a…送りロッド、32b…圧縮ばね
33…送り爪、33a…圧縮ばね
34…ストッパ爪、34a…圧縮ばね
40…ハンドル部
41…スイッチレバー
42…バッテリ
50…下動端ダンパ(第1実施形態)
51…基台部、51a…溝部
52…当接部、52a…通気口
53…圧縮ばね
54…エア通路
60…下動端ダンパ(第2実施形態)、60a…エア通路
70…送り機構(第4実施形態)
71…リンク部材
71a…上アーム部、71b…下アーム部
72…支軸
73…送り爪
74…圧縮ばね
80…送り機構(第3実施形態)
81…電磁アクチュエータ
81a…送りロッド、81b…圧縮ばね
85…送り機構(第5実施形態)
86…送りモータ
87…ピニオンギヤ
88…ラックギヤ
89…送りロッド、89a…圧縮ばね
90…送り機構(第6実施形態)
91…電磁アクチュエータ、91a…ピストン
92…送りロッド、92a…圧縮ばね、92b…ピストン
93…流体圧部、93a…オイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15