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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】食品用日持ち向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3508 20060101AFI20221212BHJP
   A23L 3/3562 20060101ALI20221212BHJP
   A23L 3/3472 20060101ALI20221212BHJP
   A23L 3/3517 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A23L3/3508
A23L3/3562
A23L3/3472
A23L3/3517
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019067932
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162525
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉川 隆一
(72)【発明者】
【氏名】服部 桂祐
(72)【発明者】
【氏名】末田 依里佳
(72)【発明者】
【氏名】中西 祐輔
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-116921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00-3/54
A23B 4/00-7/16
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機酸及び/又は有機酸塩並びに(b)高度分岐環状デキストリン、ほうじ茶粉末及びデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルからなる群から選択される2種以上を含有する食品用日持ち向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用日持ち向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物による食品の変質、腐敗を抑制する目的で、酢酸や酢酸ナトリウムといった有機酸及び/又は有機酸塩を含有する日持ち向上剤が広く用いられている。しかし、有機酸及び/又は有機酸塩は一般に独特の酸味や酸臭を呈することから、これらを含有する日持ち向上剤を食品に添加すると、添加量等によっては該食品の風味を損ないかねない。そのため、このような有機酸及び/又は有機酸塩を含有する日持ち向上剤においては、有機酸及び/又は有機酸塩に由来する酸味の発現を抑制又は低減すること(即ち、酸味のマスキング)が重要な課題となっていた。
【0003】
有機酸及び/又は有機酸塩を含有する日持ち向上剤において酸味をマスキングする方法としては、例えば、高度分岐環状デキストリンを配合する方法(特許文献1)、糖類処理物、タンパク質処理物および植物処理物の3つの範疇のうちの少なくとも2つの範疇から選択される素材を3種以上含有することを特徴とする酢酸またはその塩の酸味マスキング剤を配合する方法(特許文献2)、酢酸ナトリウム、酢酸およびショ糖脂肪酸エステルを含有する食品用粉末状日持ち向上剤において、該剤の粒子径に応じて酢酸の含有量を一定の範囲に調整する方法(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
しかし、上記各方法でも酸味のマスキング効果や処方上の制約、コスト等の観点で一長一短があることから、酸味のマスキングされた新たな食品用日持ち向上剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-116921号公報
【文献】特開2019-000008号公報
【文献】特開2017-038627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機酸及び/又は有機酸塩を含有しながらも、食品に添加した際に酸味を呈しにくい食品用日持ち向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、有機酸及び/又は有機酸塩を含有する食品用日持ち向上剤に対し、酸味のマスキング素材として高度分岐環状デキストリン、ほうじ茶粉末及びデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルのうちの2種以上を組み合わせて配合することにより、有機酸及び/又は有機酸塩に由来する酸味がマスキングされることを見出し、この知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、(a)有機酸及び/又は有機酸塩並びに(b)高度分岐環状デキストリン、ほうじ茶粉末及びデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルからなる群から選択される2種以上を含有する食品用日持ち向上剤からなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る食品用日持ち向上剤は、有機酸及び/又は有機酸塩を含有するにもかかわらず、食品に添加した際に酸味を呈しにくく、該食品の風味を損ないにくい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る食品用日持ち向上剤(以下「本発明の日持ち向上剤」ともいう)は、少なくとも(a)有機酸及び/又は有機酸塩並びに(b)高度分岐環状デキストリン、ほうじ茶粉末及びデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルからなる群から選択される2種以上(以下それぞれ「(a)成分」、「(b)成分」ともいう)を含有する。
【0011】
本発明における(a)成分である有機酸及び/又は有機酸塩は、食品に対して使用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、有機酸としては、アジピン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、フマル酸、蓚酸、リンゴ酸、コハク酸等が挙げられ、有機酸塩としては、前記有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、菌増殖抑制効果の観点から、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸及びアジピン酸並びにそれらの塩が好ましく、酢酸及び酢酸塩が特に好ましい。これら有機酸及び/又は有機酸塩は、いずれか1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0012】
なお、本発明における(a)成分としては、有機酸及び/又は有機酸塩を含有する製剤として市販されているものを用いてもよい。そのような製剤としては、例えば、サンミエース42(商品名;氷酢酸/酢酸ナトリウム製剤;大東化学社製)等が挙げられる。
【0013】
本発明の日持ち向上剤中の有機酸及び/又は有機酸塩の含有量に特に制限はないが、例えば、該剤100質量%に対して、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0014】
本発明における(b)成分のうちの1種である高度分岐環状デキストリンは、高度に分岐した構造を有し、分子内に環状構造を有するデキストリンであって、食品に対して使用可能なものであれば特に制限はない。このような高度分岐環状デキストリンは、例えば、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とを有する糖類に、糖転移酵素を作用させることにより製造することができる。
【0015】
高度分岐環状デキストリンとしては、例えば、クラスターデキストリン(商品名;グリコ栄養食品社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0016】
本発明の日持ち向上剤中の高度分岐環状デキストリンの含有量に特に制限はないが、高度分岐環状デキストリン自体の風味の影響を避けつつ酸味のマスキング効果を得る観点から、例えば、該剤100質量%に対して、0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましい。
【0017】
本発明における(b)成分のうちの1種であるほうじ茶粉末は、茶葉を焙煎してなるほうじ茶葉の粉末又は該ほうじ茶葉から抽出したほうじ茶エキスの粉末であり、好ましくはほうじ茶葉の粉末である。
【0018】
ほうじ茶葉の粉末の製造方法に特に制限はないが、例えば、茶樹(Camellia Sinensis、Camellia Sinensis var. assamica又はこれらの雑種)の葉や茎から製造された茶葉(例えば、煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、茎茶、釜炒緑茶等の不発酵茶の茶葉)を焙煎してほうじ茶葉を製造した後に粉末化する方法、あるいは前記茶葉を粉末化した後に焙煎する方法等により製造することができる。
【0019】
茶葉の焙煎温度及び焙煎時間に特に制限はないが、例えば、焙煎温度としては150℃~350℃が好ましく、焙煎時間としては15秒~3分間が好ましい。
【0020】
茶葉を粉末化する方法に特に制限はなく、例えば、公知の粉砕機(例えば、気流式粉砕機、機械式粉砕機、ボールミル、石臼等)等を用いて粉砕することにより粉末化することができる。
【0021】
また、ほうじ茶エキスの粉末の製造方法に特に制限はないが、例えば、前記ほうじ茶葉を水等の溶媒に加えて成分を抽出した後、該ほうじ茶葉とエキスとを分離し、該エキスに賦形剤を溶解又は分散させて噴霧乾燥法等により乾燥及び粉末化する方法等が挙げられる。
【0022】
ほうじ茶粉末の粒子径に特に制限はないが、例えば、体積基準の平均粒子径(メジアン径)が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明に用いられるほうじ茶粉末は、市販の茶葉を焙煎及び粉末化したものであってもよく、市販のほうじ茶葉(例えば、ほうじ煎茶、ほうじ番茶、京番茶、雁ヶ音ほうじ茶等の茶葉)を粉末化したものであってもよく、市販の粉末状茶葉を焙煎したものであってもよく、市販のほうじ茶葉から抽出したほうじ茶エキスを乾燥及び粉末化したものであってもよく、ほうじ茶粉末の形態で市販されているものであってもよい。
【0024】
本発明の日持ち向上剤中のほうじ茶粉末の含有量に特に制限はないが、ほうじ茶粉末自体の風味の影響を避けつつ酸味のマスキング効果を得る観点から、例えば、該剤100質量%に対して、0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.05~0.3質量%であることがより好ましい。
【0025】
本発明における(b)成分のうちの1種であるデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルは、平均重合度10のポリグリセリンであるデカグリセリンと中鎖脂肪酸とのエステルであり、エステル化反応等、自体公知の方法で製造することができる。
【0026】
デカグリセリン中鎖脂肪酸エステルを構成する中鎖脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする中鎖脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~12の脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数8~12の脂肪酸が好ましい。デカグリセリン中鎖脂肪酸エステルは、これら中鎖脂肪酸の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0027】
本発明においてデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルは、該エステルを構成する脂肪酸のうち主要な脂肪酸が中鎖脂肪酸であればよく、例えば、構成脂肪酸100質量%中、中鎖脂肪酸が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%を占めていれば、残部にその他の脂肪酸を含んでいてもよい。
【0028】
デカグリセリン中鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムJ-0021(商品名;デカグリセリンラウリン酸エステル;理研ビタミン社製)、SYグリスターMCA-750(商品名;デカグリセリンカプリル酸エステル;阪本薬品工業社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0029】
本発明の日持ち向上剤中のデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルの含有量に特に制限はないが、デカグリセリン中鎖脂肪酸エステル自体の風味の影響を避けつつ酸味のマスキング効果を得る観点から、例えば、該剤100質量%に対して、0.0001~0.001質量%であることが好ましく、0.0002~0.0005質量%であることがより好ましい。
【0030】
本発明における(b)成分としては、前記高度分岐環状デキストリン、ほうじ茶粉末及びデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルのうちの2種以上(即ち、任意の2種又は3種すべて)を組み合わせて用いればよいが、とりわけ、高度分岐環状デキストリンとほうじ茶粉末の2種又は高度分岐環状デキストリンとデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルの2種を組み合わせて用いることが好ましい。
【0031】
本発明の日持ち向上剤の形状に特に制限はないが、ハンドリング性、保存性等の観点から、粉末状であることが好ましい。
【0032】
本発明の日持ち向上剤の製造方法に特に制限はなく、前記(a)及び(b)成分を均一に混合すればよい。混合には、公知の混合機(例えば、リボンミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、V型混合機等)等を用いることができる。
【0033】
なお、(b)成分としてデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルを使用する場合、予めこれをデキストリン等の賦形剤と混合してデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルを含有する粉末を調製した後、該粉末と(a)成分、他の(b)成分及び所望により後述する他の任意の成分を混合することが好ましい。このようにすることで、本発明の日持ち向上剤中のデカグリセリン中鎖脂肪酸エステルの含有量が少量であっても、これを製剤中に均一に分散させることができ、本発明の効果を十分に発揮することができる。デカグリセリン中鎖脂肪酸エステルを含有する粉末を調製する方法に特に制限はないが、例えば、デカグリセリン中鎖脂肪酸エステルをアルコール等の溶媒に溶解し、得られた溶液と賦形剤とを混合する方法、デカグリセリン中鎖脂肪酸エステルと賦形剤とを水に溶解又は分散させ、該分散液を噴霧乾燥法等により乾燥及び粉末化する方法等が挙げられる。
【0034】
本発明の日持ち向上剤は、前記(a)及び(b)成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、(a)成分以外の日持ち向上作用を有する成分(ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸またはリン酸等の無機酸;ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の無機酸塩;グリシン;リゾチーム;ε-ポリリジン;チアミンラウリル硫酸塩;しらこ蛋白抽出物;ペクチン分解物等)、(b)成分のデカグリセリン中鎖脂肪酸エステル以外の食品用乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、デカグリセリン中鎖脂肪酸エステル以外のポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、賦形剤(ブドウ糖、果糖等の単糖類;ショ糖、乳糖、麦芽糖等のオリゴ糖類;デキストリン、粉末水飴等の澱粉分解物;マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、粉末還元水飴等の糖アルコール類;コーンスターチ等の澱粉類;オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム等の加工澱粉類;カゼイン、カゼインナトリウム等の乳清蛋白質等)、粉質改良剤(第三リン酸カルシウム、微粒二酸化珪素等)等が挙げられる。
【0035】
本発明の日持ち向上剤は、食品に添加することにより、該食品に日持ち向上効果を付与することができる。
【0036】
本発明の日持ち向上剤の添加対象となる食品に特に制限はないが、例えば、はんぺん、蒲鉾、竹輪、魚肉ソーセージ等の水産練り製品類;ハム、ソーセージ、ハンバーグ、肉団子等の畜肉加工食品類;コロッケ、魚フライ、玉子焼き、餃子、シュウマイ、春巻、和え物、煮物、焼き物等の惣菜類;ポテトサラダ、マカロニサラダ等のサラダ類;生麺、茹で麺、蒸し麺等の麺類;白飯、炒飯、ちまき、おにぎり等の米飯類;もち類;フラワーペースト、カスタードクリーム等のクリーム類;小豆餡、いも餡、栗餡等の餡類;大福餅、麩饅頭、スポンジケーキ等の和・洋菓子類;蒸しパン、中華饅頭等の蒸し物類;タレ、麺つゆ、ソース等の調味料類;サンドイッチの具材等のフィリング類;ジャム等の果実加工品類;コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;味噌漬け、醤油漬け、たくあん、浅漬け等の漬物類;魚介類の塩蔵品、干物、燻製品等の珍味類;いくら、明太子、数の子等の魚卵加工品類;もずく、生のり等の海藻類等が挙げられる。
【0037】
本発明の日持ち向上剤の食品への添加量は、該食品の製造条件や配合、目的とする保存期間等によっても異なるが、例えば、食品100質量部に対する(a)成分の添加量に換算して、0.1~1.5質量部であることが好ましく、0.3~1質量部であることがより好ましい。
【0038】
本発明の日持ち向上剤の食品への添加方法に特に制限はなく、例えば、予め該食品に用いる原材料に混合しておく方法、該食品の製造工程中、任意の工程で添加する方法等が挙げられる。
【0039】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0040】
[日持ち向上剤の調製1]
(1)原材料
1)酢酸ナトリウム(大東化学社製)
2)氷酢酸/酢酸ナトリウム製剤(商品名:サンミエース42;大東化学社製)
3)高度分岐環状デキストリン(商品名:クラスターデキストリン;グリコ栄養食品社製)
4)ほうじ茶粉末(商品名:ほうじ茶パウダー;ほうじ茶葉の粉末;伊藤園社製)
5)紅茶粉末(商品名:アールグレイ抹;紅茶葉の粉末;伊藤園社製)
6)緑茶粉末(商品名:緑茶抹;緑茶葉の粉末;伊藤園社製)
7)エピガロカテキンガレート(商品名:Nテアフラン90S;伊藤園社製)
8)デキストリン(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製)
【0041】
(2)原材料の配合
前記原材料を用いて調製した日持ち向上剤1~9の配合組成を表1に示した。このうち、日持ち向上剤1及び2は本発明の実施例であり、日持ち向上剤3~9はそれらに対する比較例である。
【0042】
【表1】
【0043】
(3)日持ち向上剤の調製方法
表1に示した配合割合に従い、前記原材料を1Lポリ袋に入れ、袋の口を縛り、手で3分間袋を振って均一に混合し、日持ち向上剤1~9を各100g得た。
【0044】
[コンソメスープにおける評価試験1]
(1)コンソメスープの調製
熱湯1500gに市販のコンソメスープの素(商品名:コンソメ粉末(JAS);理研ビタミン社製)27gを加え、コンソメスープを調製した。該コンソメスープ100gに対し、前記日持ち向上剤1~9を各1g添加し、スパチュラで攪拌して溶解し、コンソメスープ1~9を得た。なお、コンソメスープに対する各日持ち向上剤の添加量は、該剤に含まれる酢酸ナトリウム及び氷酢酸/酢酸ナトリウム製剤の添加量に換算して、十分な日持ち向上作用を発揮し得る量である。
【0045】
(2)風味の評価
前記コンソメスープ1~9の風味について官能評価を行った。評価は日持ち向上剤無添加のコンソメスープを対照とし、表2に示す評価基準に従って10名のパネラーで行った。結果は10名の評点の平均値を下記の基準に従って記号化し、表3に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 平均値3.7以上
△:やや悪い 平均値2.5以上、3.7未満
×:悪い 平均値2.5未満
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例である日持ち向上剤1又は2を添加したコンソメスープ1及び2は、いずれも酸味がマスキングされており、日持ち向上剤無添加の対照に近い良好な風味を呈していた。一方、比較例の日持ち向上剤3~9を添加したコンソメスープ3~9は、いずれも酸味が強く感じられた。
【0049】
[日持ち向上剤の調製2]
(1)原材料
1)酢酸ナトリウム(大東化学社製)
2)グリシン(昭和電工社製)
3)フマル酸(理研化学社製)
4)リゾチーム(CANADIAN INOVATECH社製)
5)高度分岐環状デキストリン(商品名:クラスターデキストリン;グリコ栄養食品社製)
6)乳化剤含有粉末(下記方法で調製した試作品1~8)
7)デキストリン(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製)
【0050】
(2)乳化剤含有粉末の調製方法
<試作品1>
デカグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムJ-0021;理研ビタミン社製)0.43gをエチルアルコール(商品名:一般アルコール トレーサブル95 1級;日本アルコール産業社製)99.57gに溶解し、デカグリセリンラウリン酸エステルの0.43%アルコール溶液を得た。該アルコール溶液2gとデキストリン(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製)200gとをフードプロセッサー(型式:MK-K48P;パナソニック社製)で2分間混合して、粉末状の乳化剤含有粉末(試作品1;デカグリセリンラウリン酸エステル含有量約0.0043%)を約200g得た。
【0051】
<試作品2>
デカグリセリンラウリン酸エステルをデカグリセリンカプリル酸エステル(商品名:SYグリスターMCA-750;阪本薬品工業社製)に替えた以外は前記試作品1と同様に操作して、粉末状の乳化剤含有粉末(試作品2;デカグリセリンカプリル酸エステル含有量約0.0043%)を約200g得た。
【0052】
<試作品3>
デカグリセリンラウリン酸エステルをグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムM-300;理研ビタミン社製)に替えた以外は前記試作品1と同様に操作して、粉末状の乳化剤含有粉末(試作品3;グリセリンラウリン酸エステル含有量約0.0043%)を約200g得た。
【0053】
<試作品4>
デカグリセリンラウリン酸エステルをジグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムDL-100;理研ビタミン社製)に替えた以外は前記試作品1と同様に操作して、粉末状の乳化剤含有粉末(試作品4;ジグリセリンラウリン酸エステル含有量約0.0043%)を約200g得た。
【0054】
<試作品5>
デカグリセリンラウリン酸エステルをソルビタンラウリン酸エステル(商品名:L-300;理研ビタミン社製)に替えた以外は前記試作品1と同様に操作して、粉末状の乳化剤含有粉末(試作品5;ソルビタンラウリン酸エステル含有量約0.0043%)を約200g得た。
【0055】
<試作品6>
デカグリセリンラウリン酸エステルをプロピレングリコールラウリン酸エステル(商品名:Type-BP;理研ビタミン社製)に替えた以外は前記試作品1と同様に操作して、粉末状の乳化剤含有粉末(試作品6;プロピレングリコールラウリン酸エステル含有量約0.0043%)を約200g得た。
【0056】
<試作品7>
デカグリセリンラウリン酸エステルをデカグリセリンステアリン酸エステル製剤(商品名:ポエムJ-0081HV;デカグリセリンステアリン酸エステル含有量約40%;理研ビタミン社製)に替え、アルコール溶液中の乳化剤の含有量を揃える目的で、該製剤の仕込み量を1.075g、エチルアルコールの仕込み量を98.925gにそれぞれ調整した以外は前記試作品1と同様に操作して、粉末状の乳化剤含有粉末(試作品7;デカグリセリンステアリン酸エステル含有量約0.0043%)を約200g得た。
【0057】
<試作品8>
デカグリセリンラウリン酸エステルをデカグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムJ-0381V;理研ビタミン社製)に替えた以外は前記試作品1と同様に操作して、粉末状の乳化剤含有粉末(試作品8;デカグリセリンオレイン酸エステル含有量約0.0043%)を約200g得た。
【0058】
(3)原材料の配合
前記原材料を用いて調製した日持ち向上剤10~20の配合組成を表4に示した。このうち、日持ち向上剤10及び11は本発明の実施例であり、日持ち向上剤12~20はそれらに対する比較例である。なお、日持ち向上剤10及び11並びに13~19における乳化剤含有粉末の配合量を乳化剤の添加量に換算すると、いずれも約0.00025%である。
【0059】
【表4】
【0060】
(4)日持ち向上剤の調製方法
表4に示した配合割合に従い、前記原材料を1Lポリ袋に入れ、袋の口を縛り、手で3分間袋を振って均一に混合し、日持ち向上剤10~20を各100g得た。
【0061】
[コンソメスープにおける評価試験2]
(1)コンソメスープの調製
熱湯1500gに市販のコンソメスープの素(商品名:コンソメ粉末(JAS);理研ビタミン社製)27gを加え、コンソメスープを調製した。該コンソメスープ100gに対し、前記日持ち向上剤10~20を各1g添加し、スパチュラで攪拌して溶解し、コンソメスープ10~20を得た。なお、コンソメスープに対する各日持ち向上剤の添加量は、該剤に含まれる酢酸ナトリウム、グリシン、フマル酸及びリゾチームの添加量に換算して、十分な日持ち向上作用を発揮し得る量である。
【0062】
(2)風味の評価
前記コンソメスープ10~20の風味について官能評価を行った。評価は日持ち向上剤無添加のコンソメスープを対照とし、表5に示す評価基準に従って10名のパネラーで行った。結果は10名の評点の平均値を下記の基準に従って記号化し、表6に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 平均値3.7以上
△:やや悪い 平均値2.5以上、3.7未満
×:悪い 平均値2.5未満
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例である日持ち向上剤10又は11を添加したコンソメスープ10及び11は、いずれも酸味がマスキングされており、日持ち向上剤無添加の対照に近い良好な風味を呈していた。一方、比較例の日持ち向上剤12~20を添加したコンソメスープ12~20は、いずれも酸味が強く感じられた。
【0066】
[日持ち向上剤の調製3]
(1)原材料
1)酢酸ナトリウム(大東化学社製)
2)グリシン(昭和電工社製)
3)フマル酸(理研化学社製)
4)リゾチーム(CANADIAN INOVATECH社製)
5)高度分岐環状デキストリン(商品名:クラスターデキストリン;グリコ栄養食品社製)
6)ほうじ茶粉末(商品名:ほうじ茶パウダー;ほうじ茶葉の粉末;伊藤園社製)
7)紅茶粉末(商品名:アールグレイ抹;紅茶葉の粉末;伊藤園社製)
8)緑茶粉末(商品名:緑茶抹;緑茶葉の粉末;伊藤園社製)
9)乳化剤含有粉末(前記試作品1、4又は7)
10)デキストリン(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製)
【0067】
(2)原材料の配合
前記原材料を用いて調製した日持ち向上剤21~26の配合組成を表7に示した。このうち、日持ち向上剤21及び22は本発明の実施例であり、日持ち向上剤23~26はそれらに対する比較例である。なお、日持ち向上剤21~26における乳化剤含有粉末の配合量を乳化剤の添加量に換算すると、いずれも約0.00025%である。
【0068】
【表7】
【0069】
(3)日持ち向上剤の調製方法
表7に示した配合割合に従い、前記原材料を1Lポリ袋に入れ、袋の口を縛り、手で3分間袋を振って均一に混合し、日持ち向上剤21~26を各100g得た。
【0070】
[コンソメスープにおける評価試験3]
(1)コンソメスープの調製
熱湯1500gに市販のコンソメスープの素(商品名:コンソメ粉末(JAS);理研ビタミン社製)27gを加え、コンソメスープを調製した。該コンソメスープ100gに対し、前記日持ち向上剤21~26を各1g添加し、スパチュラで攪拌して溶解し、コンソメスープ21~26を得た。なお、コンソメスープに対する各日持ち向上剤の添加量は、該剤に含まれる酢酸ナトリウム、グリシン、フマル酸及びリゾチームの添加量に換算して、十分な日持ち向上作用を発揮し得る量である。
【0071】
(2)風味の評価
前記コンソメスープ21~26の風味について官能評価を行った。評価は日持ち向上剤無添加のコンソメスープを対照とし、表8に示す評価基準に従って10名のパネラーで行った。結果は10名の評点の平均値を下記の基準に従って記号化し、表9に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 平均値3.7以上
△:やや悪い 平均値2.5以上、3.7未満
×:悪い 平均値2.5未満
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
表9の結果から明らかなように、本発明の実施例である日持ち向上剤21又は22を添加したコンソメスープ21及び22は、いずれも酸味がマスキングされており、日持ち向上剤無添加の対照に近い良好な風味を呈していた。一方、比較例の日持ち向上剤23~26を添加したコンソメスープ23~26は、いずれも酸味が強く感じられた。
【0075】
[日持ち向上剤の調製4]
1)酢酸ナトリウム(大東化学社製)
2)ピロリン酸二水素二ナトリウム(太平化学産業社製)
3)グリシン(昭和電工社製)
4)高度分岐環状デキストリン(商品名:クラスターデキストリン;グリコ栄養食品社製)
5)ほうじ茶粉末(商品名:ほうじ茶パウダー;ほうじ茶葉の粉末;伊藤園社製)
6)紅茶粉末(商品名:アールグレイ抹;紅茶葉の粉末;伊藤園社製)
7)乳化剤含有粉末(前記試作品1又は4)
8)デキストリン(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製)
【0076】
(2)原材料の配合
前記原材料を用いて調製した日持ち向上剤27~35の配合組成を表10に示した。このうち、日持ち向上剤27~30は本発明の実施例であり、日持ち向上剤31~35はそれらに対する比較例である。なお、日持ち向上剤28~30及び32~34における乳化剤含有粉末の配合量を乳化剤の添加量に換算すると、いずれも約0.00025%である。
【0077】
【表10】
【0078】
(3)日持ち向上剤の調製方法
表7に示した配合割合に従い、前記原材料を1Lポリ袋に入れ、袋の口を縛り、手で3分間袋を振って均一に混合し、日持ち向上剤27~35を各100g得た。
【0079】
[コンソメスープにおける評価試験4]
(1)コンソメスープの調製
熱湯1500gに市販のコンソメスープの素(商品名:コンソメ粉末(JAS);理研ビタミン社製)27gを加え、コンソメスープを調製した。該コンソメスープ100gに対し、前記日持ち向上剤27~35を各1g添加し、スパチュラで攪拌して溶解し、コンソメスープ27~35を得た。なお、コンソメスープに対する各日持ち向上剤の添加量は、該剤に含まれる酢酸ナトリウム、リン酸二水素二ナトリウム及びグリシンの添加量に換算して、十分な日持ち向上作用を発揮し得る量である。
【0080】
(2)風味の評価
前記コンソメスープ27~35の風味について官能評価を行った。評価は日持ち向上剤無添加のコンソメスープを対照とし、表11に示す評価基準に従って10名のパネラーで行った。結果は10名の評点の平均値を下記の基準に従って記号化し、表12に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 平均値3.7以上
△:やや悪い 平均値2.5以上、3.7未満
×:悪い 平均値2.5未満
【0081】
【表11】
【0082】
【表12】
【0083】
表12の結果から明らかなように、本発明の実施例である日持ち向上剤27~30を添加したコンソメスープ27~30は、いずれも酸味がマスキングされており、日持ち向上剤無添加の対照に近い良好な風味を呈していた。一方、比較例の日持ち向上剤31~35を添加したコンソメスープ31~35は、いずれも酸味が強く感じられた。