(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】仮設防雪柵
(51)【国際特許分類】
E01F 7/02 20060101AFI20221212BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E01F7/02
F16B7/18 D
F16B7/18 C
(21)【出願番号】P 2019078349
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 博幸
(72)【発明者】
【氏名】荒木 みなみ
(72)【発明者】
【氏名】河越 泰地
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-256376(JP,A)
【文献】特開2001-69861(JP,A)
【文献】特開2017-106284(JP,A)
【文献】実開昭58-52304(JP,U)
【文献】実開平2-6715(JP,U)
【文献】実開昭49-80031(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/02
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の線上に沿って所定の間隔で立設された複数本の主柱と、前記複数本の主柱のそれぞれの間に張設された複数枚のネットと、前記複数本の主柱をそれぞれ斜め下方から支える複数本の控柱と、前記複数本の控柱のそれぞれの下端を地面に固定するための複数本の杭とを有する仮設防雪柵であって、
前記複数枚のネットは、それぞれ少なくとも上縁および下縁に袋部が形成され、両端に係止金具を備え前記上縁および下縁に形成された袋部にそれぞれ挿通され2本の主柱間に水平状態で横架された少なくとも2本の横棒によってほぼ垂直な姿勢にて張設され、
前記複数本の主柱の所定高さ位置にはそれぞれ水平方向に突出する締結用ネジが植設され、
前記係止金具には、前記締結用ネジの頭部が挿通可能な大きさの円形穴と、前記頭部よりも小さく前記締結用ネジの軸部の径よりも大きな幅を有し前記円形穴の上方にて水平方向に沿って設けられた長穴と、前記円形穴と前記長穴を接続する連通部と、を有するだるま穴が形成されており、前記係止金具は前記締結用ネジの軸部が前記長穴内に位置した状態で前記締結用ネジによって対応する前記主柱に結合されていることを特徴とする仮設防雪柵。
【請求項2】
前記係止金具に設けられている前記だるま穴の長穴は、中央が上方へ向かって膨らむように湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の仮設防雪柵。
【請求項3】
前記複数枚のネットは、上縁と下縁との間にそれぞれ第3の袋部が形成され、該第3の袋部には、両端に前記係止金具を備えた第3の横棒がそれぞれ挿通され、前記第3の横棒の両端の前記係止金具は前記主柱の対応する位置に設けられた締結用ネジに結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設防雪柵。
【請求項4】
前記複数本の杭は、下部にそれぞれ螺旋刃が形成されたアンカー杭であり、
前記控柱の下端部と前記アンカー杭は、頭部が山形をなすUボルトと該Uボルトの2本の脚部がそれぞれ挿通される2個のボルト挿通穴を有するベースプレートと前記Uボルトの2本の脚部に螺合される2個のナットとを備えた複数組の結合金具によって結合されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の仮設防雪柵。
【請求項5】
前記アンカー杭は、少なくとも上部の断面が円形をなし、
前記Uボルトは、前記2本の脚部の間隔が前記アンカー杭の径の1.5~2.5倍の大きさを有するように形成され、
前記ベースプレートに形成されている前記2個のボルト挿通穴は前記Uボルトの2本の脚部の並びと同一の方向に沿って長い長穴として形成され、
前記ベースプレートが前記控柱の下端部に接合し、前記Uボルトの内側が前記アンカー杭の上部に接合した状態で、前記控柱と前記アンカー杭とが前記結合金具によって結合されていることを特徴とする請求項4に記載の仮設防雪柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設用の防雪柵に関し、特に鉄道の線路脇の軌道から離れた位置に設置して有効な吹きだめ式の仮設防雪柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冬季に積雪が多い地域においては、風によって運ばれて来る雪が鉄道線路上へ堆積して列車の運行を妨げることがある。そこで、風による吹きだまりの発生を減らすために線路脇に防雪柵が設置されることがある。防雪柵には、防雪の仕方の違いから吹きだめ式や吹き止め式、吹き払い式があり、さらに常設柵と仮設柵がある。吹き止め式は、軌道の近傍に設置すると防雪の効果が高いため、常設柵と設置されることが多い。しかし、特に強い風が吹く区間では、常設柵を設置する場合、強度が非常に高い柵を設置しなくてはならず、膨大な費用を要するという課題がある。
【0003】
一方、吹きだめ式の防雪柵は、軌道から数10メートル離れた位置に設置して、柵と軌道とのスペースに吹きだまりを生じさせることで、線路上への吹きだまりの発生を減らすというもので、風を完全に遮断するのではなく逃がす機能を有しており、それほど高い強度を必要としないので設置コストを抑えることができるが、線路脇に吹きだまりを生じさせる広いスペースを必要とする。そのため、常設柵とするには用地買収が必要になってしまう。そこで、強い風が吹く区間では、冬の間だけ線路脇の畑等の期間限定で借り受けた土地に、線路上への吹きだまりの発生を減らすため仮設の防雪柵を設置する方策が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の吹きだめ式の仮設防雪柵には、例えば直線上に並べて設置した複数の主柱間に横架した複数の横棒によって風を減衰させるためのスノコをほぼ垂直姿勢に保持するとともに、各主柱の前後にそれぞれ打ち込んだ2本の杭と主柱の上方部との間に斜め方向の控柱を設けて柱同士を紐で結合し、各主柱を前後から支えるように構成したものがある。
上記のような構成を有する従来の仮設防雪柵は、主柱および控柱として木材(丸太)を使用するとともに、主柱と控柱とを結合する紐として縄を用い、スノコも植物由来の材料で形成されたものが用いられていた。そのため、柵の耐用年数が短いとともに、結合用の紐(縄)は使い捨てであったため長期的に見た時のコストが高くつく。また、作業に熟練を要するとともに多くの人手を必要とし、構築に要するのべ作業時間が長いという課題があった。
【0006】
なお、仮設防雪柵に関する発明としては、複数の防雪板を上下方向に平行に並べた状態で主柱により保持し、さらに主柱を斜め下方から支える控柱を設けるとともに、主柱を折り畳み可能に構成することによって、解体後の格納を容易にするようにしたものがある(特許文献1)。しかし、上記防雪柵は、特許文献1の公報に記載されているように、道路脇の路肩に設置される吹き払い式の防雪柵に関するものであり、軌道から数10メートル離れた位置に設置される吹きだめ式の防雪柵として使用するには不向きである。
【0007】
本発明は上記のような問題点に着目してなされたもので、多くの人手および熟練を必要とせずに短時間で構築することができ、のべ作業時間を短縮することができる吹きだめ式の仮設防雪柵を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、構成する部品の耐用年数を高めることができ、それによって長期的に見た時のコストを低減することができる吹きだめ式の仮設防雪柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、
1本の線上に沿って所定の間隔で立設された複数本の主柱と、前記複数本の主柱のそれぞれの間に張設された複数枚のネットと、前記複数本の主柱をそれぞれ斜め下方から支える複数本の控柱と、前記複数本の控柱のそれぞれの下端を地面に固定するための複数本の杭とを有する仮設防雪柵において、
前記複数枚のネットは、それぞれ少なくとも上縁および下縁に袋部が形成され、両端に係止金具を備え前記上縁および下縁に形成された袋部にそれぞれ挿通され2本の主柱間に水平状態で横架された少なくとも2本の横棒によってほぼ垂直な姿勢にて張設され、
前記複数本の主柱の所定高さ位置にはそれぞれ水平方向に突出する締結用ネジが植設され、
前記係止金具には、前記締結用ネジの頭部が挿通可能な大きさの円形穴と、前記頭部よりも小さく前記締結用ネジの軸部の径よりも大きな幅を有し前記円形穴の上方にて水平方向に沿って設けられた長穴と、前記円形穴と前記長穴を接続する連通部と、を有するだるま穴が形成されており、前記係止金具は前記締結用ネジの軸部が前記長穴内に位置した状態で前記締結用ネジによって対応する前記主柱に結合されているように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する仮設防雪柵によれば、ネットの上縁および下縁に形成された袋部にそれぞれ両端に係止金具を備えた横棒(支持パイプ)を挿通し、横棒を持ち上げて端部の係止金具にあるだるま穴を主柱に設けられている締結用ネジ(ピンボルト)に係合させることで、簡単に横棒を主柱間に横架させてネットを垂下させることができる。また、係止金具が係合された締結用ネジ(ピンボルト)を回して締め付けるだけで横棒を主柱に固定することができるため、多くの人手や熟練を必要とせずに短時間で仮設防雪柵を構築することができ、のべ作業時間を短縮することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記係止金具に設けられている前記だるま穴の長穴は、中央が上方へ向かって膨らむように湾曲して形成されているようにする。
かかる構成によれば、ネットの袋部に挿通された横棒(支持パイプ)の両端が係止される2本の主柱の上端の高さがずれた状態で設置されることで、横棒が水平面に対して傾斜した姿勢で支持されたとしても、ピンボルトとの接線が水平となるので、横棒を均等に支持することができ、防雪柵を安定した状態に構築することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記複数枚のネットは、上縁と下縁との間にそれぞれ第3の袋部が形成され、該第3の袋部には、両端に前記係止金具を備えた第3の横棒がそれぞれ挿通され、前記第3の横棒の両端の前記係止金具は前記主柱の対応する位置に設けられた締結用ネジに結合されているようにする。
これにより、ネットの上縁と下縁との間に第3の袋部が形成されこの袋部に第3の横棒が挿通されて、両端の係止金具によって主柱に結合されるため、ネットの高さ方向の長さが長くても風により大きく膨らんで防雪効果が低下するのを回避することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記複数本の杭は、下部にそれぞれ螺旋刃が形成されたアンカー杭であり、
前記控柱の下端部と前記アンカー杭は、頭部が山形をなすUボルトと該Uボルトの2本の脚部がそれぞれ挿通される2個のボルト挿通穴を有するベースプレートと前記Uボルトの2本の脚部に螺合される2個のナットとを備えた複数組の結合金具によって結合されているようにする。
上記のような構成によれば、下部にそれぞれ螺旋刃が形成されたアンカー杭を用いているため、控柱を固定する杭を容易に地中へ打設することができるとともに、頭部が山形をなすUボルトを有する複数組の結合金具を用いて控柱の下部と杭とを結合するため、控柱との結合強度を高めることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記アンカー杭は、少なくとも上部の断面が円形をなし、
前記Uボルトは、前記2本の脚部の間隔が前記アンカー杭の径の1.5~2.5倍の大きさを有するように形成され、
前記ベースプレートに形成されている前記2個のボルト挿通穴は前記Uボルトの2本の脚部の並びと同一の方向に沿って長い長穴として形成され、
前記ベースプレートが前記控柱の下端部に接合し、前記Uボルトの内側が前記アンカー杭の上部に接合した状態で、前記控柱と前記アンカー杭とが前記結合金具によって結合されているようにする。
上記のような構成によれば、杭と控柱の傾き(角度)がずれたとしても、Uボルトの脚部が長穴内部で移動することで杭と控柱の傾きのずれを吸収しつつ両者を強固に結合することができ、それによって設置された防雪柵の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る仮設防雪柵およびその構築方法によれば、多くの人手および熟練を必要とせずに短時間で構築することができ、のべ作業時間を短縮することができる。また、仮設防雪柵を構成する部品の耐用年数を高めることができ、それによって長期的に見た時のコストを低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る仮設防雪柵の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】実施形態の仮設防雪柵を構成する主柱と左右の控柱との連結構造の一例を示す要部拡大斜視図である。
【
図3】実施形態の仮設防雪柵を構成する主柱と支持パイプとネットとの関係を示す要部拡大斜視図である。
【
図4】実施形態の仮設防雪柵を構成する端部の主柱とネットとの関係を示す拡大斜視図である。
【
図5】(A)は実施形態の仮設防雪柵を構成する支持パイプ(横棒)の一例を示す正面図、(B)は端部の拡大斜視図である。
【
図6】(A)は実施形態の仮設防雪柵を構成するアンカー杭の構成例を示す正面図、(B)はアンカー杭を地中に設置した状態を示す拡大斜視図である。
【
図7】アンカー杭への控柱の結合手段(山形Uボルト)の構成例を示すもので、(A)は結合手段の分解正面図、(B)はベースプレートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る仮設防雪柵およびその構築方法の実施形態について説明する。
図1には、本発明に係る仮設防雪柵の一実施形態の斜視図が示されている。
図1に示すように、本実施形態の仮設防雪柵は、直線上に並べて設置した複数の主柱11A~11F間にそれぞれ風を減衰させるためのネット12A~12Eがほぼ垂直姿勢となるように張設されている。また、主柱11A~11Fには、中間部よりやや上の位置から斜め下方へ向かって延びる2本の控柱13A,13Bがそれぞれ設けられている。
【0017】
特に限定されるものでないが、上記主柱11A~11F及び控柱13A,13Bは角柱パイプで形成されている。また、主柱11A~11Fの下端には、側面視で台形をなす台座部が設けられており、台座部の下面を地面に載置させることで、高さを揃えることができるようになっている。
一方、控柱13A,13Bの下端部は、後述するように地中に打設されたアンカー杭に結合され、アンカー杭を介して地面にしっかりと固定され、主柱11A~11Fを前後から支えるように構成されている。
【0018】
さらに、上記主柱11A~11Fのうち両端に位置する主柱11Aと11Fのネットと反対側の側部には、上端部から左右斜め下方へ向かって延びる2本の側部控柱13C,13Dがそれぞれ設けられ、側部控柱13C,13Dによって主柱11A,11Fを介して柵全体を左右から支えるように構成されている。
側部控柱13C,13Dの上端は、
図2に示すように、主柱11A(11F)の上端部に固着されたブラケット14に、ピンボルト15によって回転可能に連結されている。図示しないが、前後の控柱13A,13Bも上端が各主柱11A~11Fの中間部にピンボルトによって回転可能に連結されている。これによって、控柱13A,13Bおよび13C,13Dは、折り畳み可能な構成となっている。
【0019】
また、
図2および
図3に示すように、各主柱11の前面と背面には、ネット12を垂下する支持パイプ16の端部の係止金具61を係止するためのピンボルト17A,17Bがそれぞれ植設されている。ピンボルト17A,17Bにはそれぞれ一対のナットが螺合されており、一対のナットで係止金具61を挟持することで支持パイプ16の端部を主柱11に結合するように構成されている。
一方、上記ネット12A~12Eは耐久性の高い合成樹脂繊維で形成されており、透過率は設置される区間における想定風速に応じて選択される。具体的には、想定風速が7~13m/秒の区間では、例えば60%程度の透過率のものを選択すると良い。
【0020】
また、各ネット12A~12Eは、上端と下端に沿って直径5cm程度のパイプを挿通可能な大きさの袋部21a,21bがそれぞれ設けられているとともに、中間部にも同様な大きさの袋部21cが水平方向に沿ってそれぞれ設けられている。そして、各ネット12A~12Eは袋部21aに挿通された支持パイプ16によって垂下され、袋部21b,21c挿通されたパイプによって撓みが抑制されるように構成されている。
なお、各袋部21a~21cは、帆布のような丈夫な生地で形成され、ネットの端部を挟持した状態で縫製されている。
【0021】
さらに、各ネット12A~12Eの左右の端には、
図3に示すように、補強部22a,22bが形成されている。そして、補強部22a,22bには、所定の間隔をおいて、紐を通す複数の穴23が形成され、穴23の縁にはハトメが被着されているとともに、これらの穴23に対応して主柱11A~11Fには対をなす係止ピン30が植設されている。
そのため、上記各穴23に紐を通して、対応する主柱11の係止ピン30に絡めるようにして結びつけることで、各ネット12A~12Eの両端を主柱11A~11Fに係止することができ、それによって、ネットが風を受けた際に大きく撓んで両端が主柱11A~11Fから離れてしまわないように構成されている。
【0022】
なお、ネット両端の穴23に通す紐としては、例えば表面が繊維で覆われたゴム紐のような伸び代を有しかつ引っ張りに強い紐を使用すると良い。このような紐を使用することで、強い風を受けた際に紐が伸びることによって、ある程度風を逃がすことができ、それによって柵の倒壊やネットの破損を回避することができる。
また、ネット両端の穴23に通す紐として、伸び特性を有していない強靭な紐を使用することも可能であり、その場合には、紐の長さを長めに設定して、ネットの両端と主柱との間にゆとりのある状態にして係止すると良い。このようにすることによって、強い風を受けた際の柵の倒壊やネットの破損を回避することができる。
【0023】
次に、
図5を用いて、上記袋部21a~21cに挿通されてネット12A~12Eを垂下したり撓みを抑制したりする支持パイプ(横棒)16について説明する。
図5(A)に示すように、支持パイプ16は、例えば直径が約5cmで長さがおよそ2mの鉄製のパイプであり、両端にだるま穴を有する係止金具61A,61Bが固着されている。係止金具61A,61Bには、
図5(B)に示すように、中央部よりやや下方、先端側にある円形の大径穴62aと、該大径穴62aの上方にほぼ水平方向に沿って形成された長穴62bと、大径穴62aと長穴62bとを接続する連通部62cとからなる変形だるま穴62が形成されている。
【0024】
上記大径穴62aは、
図2に示すように、主柱11A~11Fの側面に植設されたピンボルト17Aの頭部のナット17Cを挿通可能な大きさを有し、長穴62bと連通部62cはピンボルト17Aの頭部のナット17Cの径よりも小さく胴部よりもやや大きな幅を有するように設計されている。
これにより、支持パイプ16の一端を持ち上げて係止金具61Aまたは61Bの大径穴62aにピンボルト17Aの頭部に螺合されているナット17Cを挿通させた後、連通部62cを通って長穴62bへピンボルト17Aの胴部を移動させることによって、係止金具61Aをピンボルト17Aに対して抜けを防止しつつ係止させることができる。
なお、螺合されているナット17Cを緩めた状態で変形だるま穴62に嵌合させ、支持パイプ16の先端の位置が決まったらナット17Cを締め付けることで、係止金具61A,61Bを主柱11A~11Fにしっかりと固定することができる。
【0025】
上記のようにだるま穴62に長穴62bが形成されていると、支持パイプ16の両端が係止される2本の主柱の上端間の距離がばらついたとしても、その差を吸収して支持パイプ16の両端を2本の主柱に連結することができ、作業時間を短縮することができる。
また、変形だるま穴62の長穴62bは、中央が上方へ向かって少し膨らむように湾曲して形成されている。これにより、支持パイプ16の両端が係止される2本の主柱の上端の高さがずれた状態で設置されることで、支持パイプ16が水平面に対して傾斜して支持されたとしても、支持パイプ16を均等に支持することができる。そのため、防雪柵を安定させることができる。
【0026】
例えば、支持パイプ16が水平面に対して傾斜した状態で支持されたとすると、長穴62bも傾くこととなる。一方、支持パイプ16にはネット12の重量および風圧による荷重がかかる。そのため、長穴62bが湾曲せず平坦であり傾斜していると、分力が生じてパイプの低い側へより多くの力が作用してしまう。
しかるに、長穴62bが上方へ向かって少し膨らむように湾曲していると、ピンボルト17A,17Bとの接線が水平となるので、分力が発生せず左右ほぼ均等に支持パイプ16を支持することができる。また、長穴62bが湾曲していると、支持パイプ16の軸方向へのずれを抑制する効果がある。
【0027】
次に、
図6を用いて、上記控柱13A,13Bを地面に固定するためのアンカー杭の構成と控柱とアンカー杭との結合構造について説明する。
本実施形態の仮設防雪柵においては、アンカー杭18として、
図6(A)に示すように、パイプの下部に螺旋状の刃を有する杭が使用され、かかるアンカー杭18を、
図6(B)に示すように、地面に対して斜めに打設するように構成されている。なお、このアンカー杭18は、電動工具を用いて回転させることで打設することができる。
【0028】
さらに、アンカー杭18は端部を30~50cmほど露出した状態で打設され、その露出した部位に、
図7(A)に示すような頭部が山形をなす2本のUボルト91とベースプレート92と一対のナット93A,93Bとからなる結合金具19によって、
図6(B)に示すように、控柱13がアンカー杭18と結合されるように構成されている。ベースプレート92には、控柱13が係合する切欠き92cが形成されている。
Uボルト91の一対の脚部91a,91bの間隔は通常のUボルトの間隔よりも広く、例えば結合対象のアンカー杭18のパイプ径の2倍前後の距離をおくように設定され、この脚部91a,91bの先端側に雌ネジ部が形成されている。また、ベースプレート92には、
図7(B)に示すように、Uボルト91の脚部91a,91bが挿通可能であってUボルト91の本体と平行な方向に長い長穴92a,92bが形成されている。
【0029】
上記のように構成された結合金具19を2組使用することで、
図6(B)に示すように、アンカー杭18に対して異なる角度をなす控柱13を結合させたい場合にも、Uボルト91とベースプレート92との間にアンカー杭18および控柱13を抱きかかえるようにして、Uボルト91の脚部91a,91bが長穴92a,92b内で適切な位置に移動することで、両者を強固に結合することができる。
また、Uボルト91が山形をなしているため、ナット93A,93Bを回して締め付ける際に、Uボルト91がアンカー杭18から反力を受けて脚部91a,91bが長穴92a,92b内でスライドすることで適切な位置へ移動する。そのため、手による位置調整が不要であり、効率よく作業を実施することができる。
なお、Uボルト91の一対の脚部91a,91bの間隔は、大きすぎると結合金具19が大型化してしまう一方、小さすぎるとアンカー杭18と控柱13のなす角度を調整する機能が低下するので、アンカー杭18のパイプ径の1.5~2.5倍とするのが望ましい。
【0030】
次に、上記実施形態の仮設防雪柵の構築方法について説明する。
仮設防雪柵を構築するにあたっては、先ず柵を設けたい位置(設置ライン)を決定し、その設置ラインから両側方へ所定距離(控柱13A,13Bの開く幅)だけ離れた位置に、所定のピッチ(ネットの幅+α)で、アンカー杭18の対を打設する。また、各ネット12の袋部21a~21cに支持パイプ16を挿通したものを用意する。
続いて、控柱13A,13Bを開きながら主柱11をアンカー杭18の対の中心に立てて、上記結合金具19を用いて控柱13A,13Bの下端部をアンカー杭18に結合する。控柱13Cまたは13Dを有する柵の両端の主柱11に関しては、控柱13C,13D用に打設したアンカー杭18に控柱13C,13Dの下端部を結合する。
【0031】
その後、先端にフックを有する持ち上げ用のロッドのフックに、ネット12の上部の袋部21aに挿通された支持パイプ16の端部を引っ掛けて持ち上げ、支持パイプ16の端部の係止金具61の大径穴62aを、主柱11の上端にあるピンボルト17Aの頭部に螺合されているナット17Cを挿通させるようにして嵌合させる。支持パイプ16の反対側の端部の係止金具61も同様にして他の主柱11のピンボルトに嵌合させる。また、ネット12の中間と下部の袋部21b,21cに挿通されている支持パイプ16についても同様にして、端部の係止金具61を主柱11の中間と下部にあるピンボルトの頭部(ナットを含む)に嵌合させる。
【0032】
次に、立設されている主柱11に梯子を立てかけて、ピンボルト17A,17Bの端部に螺後されているナット17Cを回して締め付け、支持パイプ16の端部の係止金具61を主柱11の上端に固定する。また、ネット12の中間と下部の袋部21b,21cに挿通されている支持パイプ16の端部の係止金具61も同様にして、主柱11に固定する。その後、ネット12の側部に設けられているハトメの穴にそれぞれ紐を通して主柱11の係止ピン30に絡めるようにして結びつける。以上の作業によって、一連の仮設防雪柵の構築が完了する。
また、上記仮設防雪柵の解体作業は、上記と逆の手順によって実施することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態では、主柱11A~11Fおよび控柱13A,13Bとして角柱パイプを使用したが、円筒状の丸パイプを使用するようにしても良い。
また、前記実施形態では、螺旋状の刃を有するアンカー杭を使用したが、杭に関しては従来と同様に、ハンマーで打ち込むタイプの杭を使用するようにしても良い。
なお、本発明の仮設防雪柵は、鉄道軌道に対する防雪柵に限定されず、道路に対する防雪柵にも利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
11A~11F 主柱
12A~12E ネット
21a,21b 袋部
13A~13C 控柱
15 ピンボルト
16 支持パイプ
17A,17B ピンボルト
18 アンカー杭
19 結合金具
30 係止ピン
61A,61B 係止金具
62 変形だるま穴
91 Uボルト
92 ベースプレート