(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ネットワーク装置、通信制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/10 20090101AFI20221212BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20221212BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20221212BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20221212BHJP
【FI】
H04W28/10
H04W84/18
H04W88/04
H04W4/38
(21)【出願番号】P 2019103635
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 太一
(72)【発明者】
【氏名】稲村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康隆
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139520(JP,A)
【文献】特開2015-070573(JP,A)
【文献】特開2017-073633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境の状態を調整する設備の動作に関する要求を示す要求情報に応じて前記設備を制御する制御装置と無線ネットワークを介して通信する第1通信部と、
前記要求情報を送信する通信装置と無線により通信する第2通信部と、
前記第2通信部が前記通信装置から受信した前記要求情報を前記第1通信部から前記制御装置宛てに転送する要求情報転送部と、
前記通信装置の通信量と、
前記制御装置からの制御を受けた前記設備の動作により
前記環境の状態が
目標の状態へ変化する速度と、前記無線ネットワークにおける輻輳状態との
うち少なくとも
前記速度を含む一以上を用いて前記要求情報転送部による前記要求情報の転送可否を制御するフィルタリング処理を行うフィルタリング部と、
を備えるネットワーク装置。
【請求項2】
前記フィルタリング部は、前記通信装置から受信した前記要求情報の転送を停止するフィルタリング期間を、前記通信装置の前記通信量と前記速度とに基づいて得られる係数に応じて前記通信装置ごとに決定する、
請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項3】
前記要求情報転送部は、前記通信装置から前記フィルタリング期間に受信した前記要求情報を破棄する、又は、前記通信装置から前記フィルタリング期間に受信した前記要求情報が示す前記要求をまとめた情報を、前記フィルタリング期間の終了後に前記第1通信部から前記制御装置宛てに送信する、
請求項2に記載のネットワーク装置。
【請求項4】
前記通信装置の前記通信量は、前記第2通信部が前記通信装置から所定の期間に受信した前記要求情報のうち転送された前記要求情報の累積又は平均のデータ量である、
請求項2又は請求項3に記載のネットワーク装置。
【請求項5】
前記速度は、前記制御装置が前記設備の制御を開始してから当該設備の動作によって前記
環境が目標の状態に到達するまでの到達時間と、前記到達時間における前記
環境の状態の変位量とに基づいて算出される、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のネットワーク装置。
【請求項6】
前記フィルタリング部は、前記要求情報転送部が転送した前記要求情報に応じて前記制御装置が前記設備の制御を開始したことを契機として算出された前記速度を用いて前記フィルタリング期間を更新する、
請求項5に記載のネットワーク装置。
【請求項7】
前記フィルタリング部は、前記通信量が大きいほど前記フィルタリング期間が長くなるように前記係数を決定する、
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載のネットワーク装置。
【請求項8】
前記フィルタリング部は、前記速度が遅いほど前記フィルタリング期間が長くなるように前記係数を決定する、
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載のネットワーク装置。
【請求項9】
前記要求情報に応じて前記設備の制御を行う設備制御部をさらに備え、
前記要求情報転送部は、前記要求情報に設定されている情報に基づいて転送要否を判断し、転送が不要と判断された前記要求情報のうち、前記フィルタリング期間に該当しないタイミングにおいて受信した前記要求情報を前記設備制御部に出力する、
請求項2から請求項8のいずれか一項に記載のネットワーク装置。
【請求項10】
前記無線ネットワークにおける前記輻輳状態は、前記第1通信部における通信の異常の発生に基づいて得られる、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のネットワーク装置。
【請求項11】
前記フィルタリング部は、前記輻輳状態に基づいて前記フィルタリング処理を行うか否かを決定する、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のネットワーク装置。
【請求項12】
前記設備は、屋内の環境を調整するための動作を行う、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のネットワーク装置。
【請求項13】
環境の状態を調整する設備の動作に関する要求を示す要求情報に応じて前記設備を制御する制御装置と無線ネットワークを介して通信する第1通信部と、前記要求情報を送信する通信装置と無線により通信する第2通信部とを有するネットワーク装置が、
前記第2通信部により前記通信装置から受信した前記要求情報を前記第1通信部から前記制御装置宛てに転送する要求情報転送ステップと、
前記通信装置の通信量と、
前記制御装置からの制御を受けた前記設備の動作により
前記環境の状態が
目標の状態へ変化する速度と、前記無線ネットワークにおける輻輳状態との
うち少なくとも
前記速度を含む一以上を用いて前記要求情報転送ステップによる前記要求情報の転送可否を制御するフィルタリング処理を行うフィルタリングステップと、
を有する通信制御方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1から12のいずれか一項に記載のネットワーク装置として機
能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ネットワーク装置、通信制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、ホテル、工場又は商業施設等の建物(以下、総称して「ビル」という。)では、エネルギー管理や設備保全管理、テナント管理等の統合的なビル運用管理(監視や制御等)が行われている。このビル運用管理には、情報通信ネットワークが不可欠である。情報通信ネットワークを用いて、ビル内外の状態を計測する各種センサや、管理対象設備を操作するための設定器等の機器から設備管理に必要な情報が収集されるとともに、各種機器間の制御データの授受が行われる。このような情報通信ネットワークには、例えば、階層化された無線ネットワークが用いられる。
【0003】
階層化された無線ネットワークは、下位のネットワークと上位のネットワークとを有する。下位のネットワークは、ビルの設備を操作するための機器や、その設備の制御に用いられる各種センサなどとの通信に用いられる。上位のネットワークは、下位のネットワークが受信したデータを、ビルの設備を制御する機器へ中継する。このような階層化された無線ネットワークでは、ビル内のユーザから設備を操作するための情報が多く送信された場合に、下位のネットワークから上位ネットワークに転送されるデータ量が増大し、上位のネットワークの帯域が圧迫されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-139520号公報
【文献】特開2017-216526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、設備を操作するための情報を中継する無線ネットワークにおける帯域の圧迫を軽減することができるネットワーク装置、通信制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のネットワーク装置は、第1通信部と、第2通信部と、要求情報転送部と、フィルタリング部とを持つ。第1通信部は、環境の状態を調整する設備の動作に関する要求を示す要求情報に応じて前記設備を制御する制御装置と無線ネットワークを介して通信する。第2通信部は、前記要求情報を送信する通信装置と無線により通信する。要求情報転送部は、前記第2通信部が前記通信装置から受信した前記要求情報を前記第1通信部から前記制御装置宛てに転送する。フィルタリング部は、前記通信装置の通信量と、前記制御装置からの制御を受けた前記設備の動作により前記環境の状態が目標の状態へ変化する速度と、前記無線ネットワークにおける輻輳状態とのうち少なくとも前記速度を含む一以上を用いて前記要求情報転送部による前記要求情報の転送可否を制御するフィルタリング処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の制御システムのシステム構成を示す構成図。
【
図2】同実施形態の制御システムが備える各装置の機能ブロック図。
【
図3】同実施形態の制御情報テーブルの一例を示す図。
【
図4】同実施形態のユーザ情報テーブルの一例を示す図。
【
図7】同実施形態のフィルタリング機能の一例を説明するための図。
【
図8】同実施形態のフィルタリング機能の実現方法の一例を示す図。
【
図9】同実施形態の通信装置ごとのフィルタリング期間の決定方法の一例を示す図。
【
図10】同実施形態の通信装置ごとの係数の算出方法の一例を示す概念図。
【
図11】同実施形態の時間ウインドウ幅の最小単位の算出方法の一例を説明するための図。
【
図12】同実施形態の制御システムにおける通信シーケンスの一例を示す図。
【
図13】同実施形態の制御システムにおける通信シーケンスの一例を示す図。
【
図14】同実施形態の制御システムにおける通信シーケンスの一例を示す図。
【
図15】第2の実施形態のフィルタリング機能の実現方法の一例を示す図。
【
図16】同実施形態の制御システムにおける通信シーケンスの一例を示す図。
【
図17】同実施形態の制御システムにおける通信シーケンスの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態のネットワーク装置、通信制御方法及びプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
統合的なビル運用管理を行うシステムは、環境状態を調整するための設備、例えば、ビル内の空調や照明などを制御する制御システムとしての機能を有している。このようなシステムでは、設備を制御するための各種情報が情報通信ネットワークを介して送信される。従来の情報通信ネットワークは、例えば、Ethernet(登録商標)やLonWorks(登録商標)といった通信方式を適用した有線配線の構成が一般的であった。しかし近年は、ビルの建設や改築において、工期の短縮や、竣工後の高い自由度(設備の増設や撤去に対する柔軟性等)の確保が要求されている。そこで、無線通信方式を適用した情報通信ネットワークが検討され、導入が始まっている。加えて、ビル内の温度や湿度、照度といった環境状態を計測するセンサについても、配線や工事にかかるコストを抑えるために無線化が進められている。
【0010】
また、ビル内においてセンサが設置された位置や間隔によってはエリア内に正確な計測ができない地点が存在することがある。さらには、個々のユーザによって環境状態の感じ方や満足度が異なることがある。これらを解決するために、タスクアンビエントと呼ばれるシステムの導入が進められている。タスクアンビエントシステムでは、ユーザ自身が空調や照明などの設備の制御システムに対して自身の要求を直接伝え、制御システムは、そのユーザの環境が最適となるように快適制御を行う。そのため、タスクアンビエントシステムには、ユーザが要求を制御システムに伝えるための手段が必要である。ユーザがビル内を移動することを考慮すると、その手段として、無線通信端末が適していると考えられる。
【0011】
タスクアンビエントシステムでは、要求したユーザ近辺に空調や照明の制御を限定する。よって、エリア全域を一律に制御するよりもエネルギー消費を抑えることができるという利点がある。加えて、タスクアンビエントシステムでは、ユーザが移動先の地点における環境への要求を示す要求情報を挙げる。よって、定位置センサと異なり、エリア全域の細かな地点の情報を知ることができるという利点がある。
【0012】
タスクアンビエントシステムがユーザからの要求情報を収集するために、例えば、無線通信端末が標準で備えるBluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)といった無線通信の適用が考えられる。これらの無線通信は、近距離用の無線通信であるため、広域のエリアに分布するユーザからの要求情報を受信することはできない。そこで、近距離無線と長距離無線を組み合わせた階層型の無線システムを構築することによって、ユーザからの要求情報を簡易に、かつ広域で受信することが可能となる。
【0013】
このような階層型の無線システムを適用する上で、上位と下位のネットワークにおける通信帯域の違いがある場合に問題が生じることがある。例えば、920MHz無線等の長距離無線は、伝搬距離が長いために広域をカバーできる反面、通信帯域が狭いという特徴を持つ。このように、低帯域の無線を上位ネットワークに適用した場合、下位ネットワークからのデータを全て中継伝送すると、上位ネットワークの通信帯域を圧迫してしまうことがある。これを解決する方法として、下位ネットワークからのデータを、上位ネットワークの帯域に合わせて間引いて転送することによって、帯域を抑える方法がある。しかし、効率的に間引くことができないと、タスクアンビエントシステムは、ユーザ要求に追従して環境を変化させる制御を行うことができない。つまり、システムの快適性を損なうことにつながる。
【0014】
階層化されたネットワークの通信帯域圧迫を防止する他の方法として、下位ネットワークと上位ネットワークの中継点にあるゲートウェイ等の装置において、中継伝送に割り当てる通信帯域を制限又は停止する方法が考えられる。この方法は、転送対象のパケットを透過転送させないようにフィルタリングすることで容易に実現できる。しかし、帯域が圧迫された際に一律してパケットを破棄すると、有用なユーザ情報が破棄されてしまう可能性がある。また、空調の制御を例にとると、温度の性質上、空調の制御から実際に空調環境が変化するまでの時間は緩やかであるために、ユーザは空調環境の変化を待てずに多数の要求を送信してしまうことがある。この多数の要求によるさらなる帯域の圧迫が懸念される。
【0015】
過剰なデータ転送を防止するために、距離等を指標に用いて通信可否を制限する方法も考えられる。この方法によって、通信帯域の圧迫を防止できる可能性がある。しかしながら、例えば指標として距離を使用すると、距離が近い端末からの連続した要求を防止できないことがある。無線通信に用いられる周波数帯域は、限られた資源である。特定のユーザが周波数帯域を占有すると、タスクアンビエントシステムは、幅広いユーザの要求を収集することができないため、不公平感が生まれる。
【0016】
そこで、実施形態の制御システムは、ユーザからの要求の増加に起因する上位ネットワークの帯域の圧迫を軽減しつつ、その要求に即した環境調整を行うよう設備を制御する。例えば、制御システムは、空調状態や照明による明るさといった環境状態に対するユーザ個々の要求を反映させるように設備を制御して環境調整を行う。ユーザからの要求に則した環境調整を行うために、実施形態の制御システムは、環境変化の特性に応じた転送制御を行うことでユーザからの過剰な要求情報の転送を防止する。また、実施形態の制御システムは、通信帯域の使用量に関するユーザごとの不公平感を低減するようにパケット転送を制御する。この制御は、設備の制御によって環境が変化する速度、ユーザの通信量、上位ネットワークにおける無線通信の輻輳状態といった種々の指標を用いて、ユーザからの要求情報を効率的にフィルタリングして転送することにより行われる。この制御により、システムが管理している環境や、情報通信ネットワークの負荷状態に適したフィルタリングを実現することが可能となる。以下に、詳細な実施形態を説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の制御システム1のシステム構成を示す構成図である。制御システム1は、例えば、ビルの運用管理システムである。制御システム1の制御対象設備は、例えば、屋内の環境を調整する設備である。以下では、制御対象設備が空調設備である場合を主に説明するが、照明などの他の設備でもよい。また、制御システム1は、複数種類の制御対象設備を制御してもよい。制御システム1は、制御装置100と、センサ装置200と、通信装置300とを備える。制御システム1が備えるN台(Nは2以上の整数)の制御装置100を、制御装置100-1~100-Nと記載する。
図1では、N=4の場合を例に示している。制御装置100は、ネットワーク装置の一例である。また、
図1では、センサ装置200と、通信装置300とをそれぞれ1台のみ示しているが、センサ装置200の台数及び通信装置300の台数は任意である。センサ装置200及び通信装置300はそれぞれ、少なくともいずれかの制御装置100と通信する。
【0018】
制御装置100は、例えば、制御対象設備を制御するコントローラ端末である。制御装置100は、センサ装置200及び通信装置300から取得した情報に基づいて制御対象設備の動作を制御する。制御システム1が有する複数の制御装置100は、制御装置100間で通信を行う第1無線ネットワーク400を構築する。第1無線ネットワーク400は、上位ネットワークである。第1無線ネットワーク400は、制御装置100同士が互いに通信可能なネットワークである。例えば、第1無線ネットワーク400は、広域通信可能なメッシュネットワークであり、制御装置100は、第1無線ネットワーク400により、マルチホップ伝送を行う。マルチホップ伝送では、制御装置100は、宛先が自装置以外のパケットを受信した場合に、自装置に記憶しているルーティングテーブルを参照して、受信したパケットを中継伝送する。制御装置100は、マルチホップ伝送によって、第1無線ネットワーク400に接続されたいずれの制御装置100に対してもパケットを送信することが可能となる。
【0019】
センサ装置200は、例えば、周辺の環境情報を測位して通知するセンサ端末である。通信装置300は、例えば、環境に対するユーザの要求を制御装置100へ通知するユーザの端末装置である。センサ装置200及び通信装置300は、それぞれ第2無線ネットワーク500により制御装置100と通信する。第2無線ネットワーク500は、下位ネットワークである。第2無線ネットワーク500は、センサ装置200又は通信装置300が近接する制御装置100と通信するために用いられる。センサ装置200又は通信装置300は、近距離無線通信によって制御装置100と通信する。従って、第2無線ネットワーク500は、近距離無線通信により形成される。センサ装置200及び通信装置300は、ブロードキャストによって制御装置100に情報を送信する。
【0020】
続いて、装置構成を説明する。
図2は、第1の実施形態の制御システム1が備える各装置の構成を示す機能ブロック図である。制御装置100は、センサ装置200から環境情報を取得することで、制御対象の設備を制御する。ここでは、制御装置100-i(iは1以上N以下のいずれかの整数)の構成について説明するが、制御装置100-1~100-Nは同じ構成である。また、制御装置100-iとは異なる他の制御装置100を総称して制御装置100-n(n≠i、nは1以上N以下の整数)と記載する。制御装置100-iは、第1通信部101と、第2通信部102と、第3通信部103と、制御情報記憶部104と、ユーザ情報記憶部105と、制御部106とを備える。
【0021】
制御装置100-iは、バスで接続されたプロセッサやメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行することによって、第1通信部101、第2通信部102、第3通信部103、制御情報記憶部104、ユーザ情報記憶部105及び制御部106を備える装置として機能する。なお、制御装置100-iの各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。制御装置100-iは、クラウドコンピューティングシステムによって実現されてもよい。
【0022】
第1通信部101は、無線ネットワークインタフェースである。第1通信部101は、他の制御装置100との間で第1無線ネットワーク400を構築する。第1通信部101は、第1無線ネットワーク400を介して、他の制御装置100と通信する。第1通信部101は、例えば無線LAN(Local Area Network)又はLTE(Long Term Evolution)(登録商標)等の無線通信方式により通信してもよい。
【0023】
第2通信部102は、無線ネットワークインタフェースである。第2通信部102は、センサ装置200及び通信装置300との間で第2無線ネットワーク500を構築する。第2通信部102は、第2無線ネットワーク500を介して、センサ装置200及び通信装置300と通信する。第2通信部102は、例えば無線LAN、Bluetooth(登録商標)又は赤外線等の近距離の無線通信方式により通信してもよい。
【0024】
第3通信部103は、有線又は無線のネットワークインタフェースである。第3通信部103は、制御対象設備(不図示)と通信する。第3通信部103は、例えばデジタル入力/出力(DIO)やシリアル通信等の通信方式により通信してもよい。
【0025】
制御情報記憶部104及びユーザ情報記憶部105は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。制御情報記憶部104は、制御情報テーブルを記憶する。制御情報テーブルは、ユーザから受け付けた要求を、制御対象設備を制御するための制御情報に変換するテーブルである。ユーザ情報記憶部105は、ユーザ情報テーブルを記憶する。ユーザ情報テーブルは、第2無線ネットワーク500を介して制御装置100と通信を行う通信装置300に関する情報を保持するテーブルである。
【0026】
図3は、第1の実施形態の制御情報テーブルの一具体例を示す図である。同図は、制御対象設備が空調設備の場合の例を示している。制御情報テーブルは、制御情報レコードを有する。制御情報レコードは、要求情報と、制御補正情報の値とを有する。要求情報は、屋内環境に対するユーザからの要求を表す。要求情報は、通信装置300から送信される。要求情報は、例えば、“暑い”又は“寒い”等、屋内環境に対してユーザがどのような感情を抱いているかによって表されてもよい。制御補正情報は、要求情報を受け付けた場合に、センサ装置200を介して取得された環境情報(温度)に対して補正を行うことで、要求情報に応じた屋内環境に近づくように空調設備を制御するための制御量を表す。制御補正情報は、例えば、要求情報として“暑い”を受け受けた場合、センサ装置200から取得された環境情報(温度)よりも高い温度となるように補正を行うための値を保持する。制御補正情報は、例えば、要求情報として“寒い”を受け受けた場合、センサ装置200から取得された環境情報(温度)よりも低い温度となるように補正を行うための値を保持する。
【0027】
図3に示される例では、制御情報テーブルの最上段の制御情報レコードは、要求情報の値が“暑い”、制御補正情報の値が“+1度”である。従って、制御情報テーブルの最上段のレコードによると、通信装置300から受信した要求情報が“暑い”である場合、センサ装置200が取得した温度の情報に対して、制御補正情報が示す“+1度”に基づいた補正が行われる。なお、
図3に示される制御情報テーブルは一具体例に過ぎない。そのため、
図3とは異なる態様で制御情報テーブルが構成されてもよい。例えば、制御補正情報は、要求情報“暑い”又は“寒い”に対して1度が対応付けられているが、温度に異なる任意の値が対応付けられていてもよい。
【0028】
図4は、第1の実施形態のユーザ情報テーブルの一具体例を示す図である。ユーザ情報テーブルは、ユーザ情報レコードを有する。ユーザ情報レコードは、装置識別子、受信電力、パケット受信時間、パケット転送時間等の、ユーザが利用する通信装置300に関する各種情報を有する。さらに、ユーザ情報レコードは、当該制御装置100を介して第1無線ネットワーク400に転送した通信装置300の通信量を示すデータ転送量の情報と、後述するフィルタリング制御部112により決定される通信装置300のフィルタリング期間の情報とを有する。ユーザ情報テーブルは、通信装置300からの要求情報の取得を契機として更新される。
【0029】
装置識別子は、通信装置300を識別可能な識別子である。装置識別子には、例えば、MACアドレス等のアドレス情報が用いられる。受信電力は、第2通信部102が通信装置300から受信したパケットの受信電力値である。受信電力は、通信装置300からパケット受信を契機に計測される。パケット受信時間は、第2通信部102が通信装置300からのパケットを受信した時間であり、パケット転送時間は、通信装置300から受信したパケットを第1通信部101から第1無線ネットワーク400へ転送した時間である。後述するフィルタリング制御部112の機能により、データ転送が抑制されるフィルタリング期間においては、通信装置300からのパケットについては受信のみが行われ、第1無線ネットワーク400へのパケット転送を停止する。そのため、パケット受信時間とパケット転送時間が異なる場合がある。
【0030】
データ転送量は、ユーザの通信量の一例である。データ転送量は、通信帯域を超過するデータが発生した又は発生するおそれがある場合に、単位時間におけるユーザ伝送量の不均衡が生じないようにデータを間引いて抑制するための指標となる。ユーザ情報レコードに設定されるデータ転送量は、単位時間あたりのパケットサイズを累積加算した値でもよく、単位時間あたりに転送されたパケットサイズの平均値でもよい。また、データ転送量の算出に用いるデータは、第1無線ネットワーク400に転送した要求情報でもよく、さらに、第3通信部を介して制御可能な自装置の配下の制御対象設備に関する制御のみに閉じて外部への転送が行われなかった要求情報を含めてもよい。
【0031】
図2に示される制御部106は、制御装置100-iの各部の動作を制御する。制御部106は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及びRAM(Random Access Memory)を備えた装置により実行される。制御部106は、制御プログラムを実行することによって、環境情報取得部107、要求情報取得部108、要求情報転送部109、ユーザ情報管理部110、環境係数管理部111、フィルタリング制御部112、設備制御部113及び帯域管理部114として機能する。環境係数管理部111及びフィルタリング制御部112は、フィルタリング部の一例である。
【0032】
環境情報取得部107は、環境情報を取得する。環境情報は、センサ装置200が設けられた屋内の環境の状態を表す。環境情報は、センサ装置200によって生成される。環境情報は、例えば、屋内の温度、湿度、照度、音量等の環境に関する情報であればどのような情報であってもよい。環境情報として、センサ装置200の機能に応じて異なる情報が取得されてもよい。なお、第1の実施形態では、環境情報は屋内の温度であるものとして説明する。環境情報取得部107は、第2無線ネットワーク500を介してセンサ装置200から環境情報を取得した場合、その環境情報の転送要否を判定する。環境情報取得部107は、その環境情報を利用して他の制御装置100-nが制御対象設備の制御を行う場合、転送が必要と判定する。例えば、環境情報取得部107は、センサ装置200の識別子と、そのセンサ装置200の環境情報を利用する制御装置100のアドレス情報との対応を示す第1対応情報を予め記憶しておく。環境情報取得部107は、環境情報に付加されている送信元のセンサ装置200の識別子に対応付けて第1対応情報に設定されている制御装置100のアドレス情報を読み出し、自装置のアドレス情報であるか否かによって、転送要否と、転送が必要な場合の宛先を判断する。環境情報取得部107は、転送が必要と判定すると、第1無線ネットワーク400を介して宛先の他の制御装置100-nに環境情報を送出する。一方、環境情報取得部107は、転送が不要と判定すると、環境情報を設備制御部113に出力する。また、環境情報取得部107は、第1無線ネットワーク400を介して他の制御装置100-nから転送された自装置宛ての環境情報を取得し、取得した環境情報を設備制御部113に出力する。他の制御装置100-nから転送される環境情報は、自装置における制御対象機器の制御に用いられる。
【0033】
要求情報取得部108は、第2無線ネットワーク500を介して通信装置300から要求情報及び装置識別子を取得し、要求情報転送部109に出力する。要求情報は、通信装置300によって生成される。装置識別子は、通信装置300を識別可能な識別子であり、例えば、要求情報が設定されているパケットに付加される。装置識別子は、例えば、通信装置300のMACアドレスである。要求情報取得部108は、第1無線ネットワーク400を介して他の制御装置100-nから転送された自装置宛ての要求情報及び装置識別子を取得した場合、取得した要求情報及び装置識別子を設備制御部113に出力する。
【0034】
要求情報転送部109は、要求情報取得部108が第2無線ネットワーク500を介して通信装置300から要求情報を取得した場合、制御対象設備の制御を行う他の制御装置100-nへの転送要否を判定する。転送要否は、要求情報に設定又は付加されている任意の情報を用いて判定される。転送要否の判定に用いられる情報の例は、要求情報に設定されている要求の内容、通信装置300の位置を示す情報、通信装置300の識別子、要求先の制御対象設備を示す情報、それら情報の組み合わせなどであるが、これらに限定されない。例えば、要求情報転送部109は、転送要否の判定に用いられる情報と、制御装置100のアドレス情報との対応を示す第2対応情報を予め記憶しておく。要求情報転送部109は、要求情報から転送要否の判定に用いられる情報を取得し、取得した情報に対応付けて第2対応情報に設定されている制御装置100のアドレス情報を読み出す。要求情報転送部109は、読み出したアドレス情報が、自装置のアドレス情報であるか否かによって、転送要否と、転送が必要な場合の宛先を判断する。要求情報転送部109は、判定の結果、転送が必要と判断した場合、フィルタリング制御部112に対して転送可否の問い合わせを行う。要求情報転送部109は、フィルタリング制御部112が転送可と判定した場合、第1無線ネットワーク400を介して宛先の他の制御装置100-nに要求情報及び装置識別子を送出する。要求情報転送部109は、フィルタリング制御部112が転送不可と判定した場合、要求情報及び装置識別子を破棄する。要求情報転送部109は、転送が不要と判断した場合、要求情報及び装置識別子を設備制御部113に出力する。
【0035】
ユーザ情報管理部110は、第2通信部102が受信したパケットに設定されている装置識別子に基づいて通信装置300を識別し、通信装置300別の通信データ量を測定する。通信データ量は、第2通信部102が通信装置300から所定の期間に受信した要求情報のうち、転送が行われた要求情報が設定されていたパケットの累積のデータ量である。つまり、ユーザ情報管理部110は、通信装置300から受信した要求情報を要求情報転送部109により他の制御装置100-nへ転送した場合、転送した要求情報のパケットサイズをもとにデータ量を算出する。ユーザ情報管理部110は、装置識別子別に、算出されたそれらデータ量の所定期間における累積値又は平均値である通信データ量を算出する。ユーザ情報管理部110は、ユーザ情報記憶部105が記憶しているユーザ情報テーブルに装置識別子別に算出した通信データ量をデータ転送量として記録する。なお、ユーザ情報管理部110は、転送された要求情報に加えて、フィルタリングによって転送が行われなかった要求情報のパケットも含めて通信データ量を算出してもよい。あるいは、ユーザ情報管理部110は、転送が不要な要求情報のパケットもさらに含めて通信データ量を算出してもよい。
【0036】
環境係数管理部111は、通信装置300が設置されている環境の変動係数を算出するため、制御対象設備の動作により通信装置300が設置されている環境が変化する速度である応答速度を算出する。すなわち、環境係数管理部111は、要求情報転送部109が転送した要求情報を受信して他の制御装置100-nの設備制御部113が制御対象設備の制御を開始した場合に、他の制御装置100-nから第1無線ネットワーク400を介して制御実行開始の通知を受信する。このとき、他の制御装置100-nの設備制御部113は、要求情報に応じて制御対象設備の制御を開始する際に目標として設定した環境情報をさらに制御装置100-iに通知する。一例として、空調システムでは、空調設備に設定した室温設定の値を目標の環境情報とする。環境係数管理部111は、環境情報取得部107からセンサ装置200により計測された環境情報を取得する。環境係数管理部111は、要求情報の転送から、センサ装置200により計測された環境情報が制御対象設備に設定された目標の環境状態に一致するまでの遅延時間を計測する。環境係数管理部111は、環境変化の相対値と計測した遅延時間とを用いて応答速度を算出し、単位係数(単位となる環境係数)として保持する。なお、他の制御装置100-nの環境係数管理部111が応答速度を算出し、第1無線ネットワーク400を介して制御装置100-iに通知してもよい。
【0037】
フィルタリング制御部112は、通信装置300の通信量と、制御対象設備の応答速度と、第1無線ネットワーク400の輻輳状態との少なくともいずれかを用いて、要求情報転送部109による要求情報の転送可否を制御するフィルタリング処理を行う。フィルタリング制御部112は、通信装置300の通信量及び制御対象設備の応答速度に基づいてフィルタリング処理におけるフィルタリング期間を決定する。フィルタリング制御部112は、フィルタリング期間を定期的に更新してもよく、フィルタリング期間が所定回(1回又は複数回)経過する度に更新してもよい。フィルタリング期間に要求情報取得部108が第2無線ネットワーク500を介して取得した要求情報は、第1無線ネットワーク400に転送されない。フィルタリング制御部112は、要求情報転送部109から転送可否判断の問い合わせを受けた場合に、第1無線ネットワーク400における輻輳状態と、問合せを受けたタイミングがフィルタリング期間に含まれるか否かとに基づいて転送の可否の応答を返す。
【0038】
設備制御部113は、第2無線ネットワーク500を介して受信した、又は、第1無線ネットワーク400を介して制御装置100-nから転送された要求情報及び装置識別子と、環境情報とを取得する。設備制御部113は、第2無線ネットワーク500を介して受信した要求情報及び装置識別子を取得した場合、フィルタリング制御部112に、装置識別子により特定される通信装置300のフィルタリング期間内であるか否かの問い合わせを行う。設備制御部113は、フィルタリング制御部112がフィルタリング期間内であると判定した場合、要求情報及び装置識別子を破棄する。一方、設備制御部113は、フィルタリング制御部112がフィルタリング期間ではないと判定した場合、要求情報及び環境情報に基づいて制御対象設備を制御する。制御対象設備は、例えば、ユーザのいる場所に最も近い場所に設けられた空調設備であってもよい。例えば、設備制御部113は、“暑い”を示す要求情報を受信した場合、第3通信部103を介して、ユーザ周辺の温度が下がるように空調設備の運転状態を変更する。設備制御部113は、例えば、“寒い”を示す要求情報を受信した場合、第3通信部103を介して、推定環境情報が示す温度が上がるように空調設備の運転状態を変更する。設備制御部113は、制御装置100-nから転送された要求情報及び環境情報を用いて制御対象設備の制御を行う際に、制御の目標となる環境状態を制御装置100-nへ通知する。
【0039】
帯域管理部114は、第1無線ネットワーク400における通信帯域の使用状況を監視し、第1無線ネットワーク400の輻輳状態を算出する。第1無線ネットワーク400の輻輳状態は、フィルタリング制御部112におけるフィルタリング機能を有効にするか無効にするかの判断を行うための指標として用いられる。一例として、帯域管理部114は、輻輳状態を、大及び小の2段階で示す混雑状況で表し、混雑度が大の場合にフィルタリング機能を有効化する。帯域管理部114は、通信帯域の使用状況を、例えば、第1無線ネットワークの通信データを常に観測して計測してもよく、自装置における再送回数、キャリアセンス失敗回数といった通信に関する異常の発生を示す指標を用いて予測してもよい。輻輳状態を、システム条件に応じてさらに複数の段階で表し、段階ごとのフィルタリング制御を行ってもよい。また、輻輳状態を測る指標として、再送回数やキャリアセンス失敗回数以外の通信に関わる指標を用いてもよい。また、帯域管理部114は、第1無線ネットワーク400を介して、他の制御装置100-nの帯域管理部114が算出した輻輳状態、又は、混雑状況を受信してもよい。
【0040】
センサ装置200は、周辺の環境を計測するセンサ端末である。センサ装置200は、例えば、温度計、湿度計、照度計等である。なお、第1の実施形態ではセンサ装置200は温度計であるとして説明する。センサ装置200は、環境を計測した結果を示す環境情報を制御装置100へ送信する。センサ装置200は、通信部201と、環境情報取得部202と、制御部203とを備える。
【0041】
通信部201は、無線ネットワークインタフェースである。通信部201は、第2無線ネットワーク500を介して、制御装置100と通信する。通信部201は、例えば無線LAN、Bluetooth又は赤外線等の近距離の無線通信方式で通信してもよい。環境情報取得部202は、センサ装置200近傍の環境情報をセンシングすることで取得する。制御部203は、センサ装置200の各部の動作を制御する。制御部203は、例えばCPU等のプロセッサ及びRAMを備えた装置により実行される。制御部203は、環境情報生成プログラムを実行することによって、取得された環境情報をブロードキャストで制御装置100に送信する。
【0042】
通信装置300は、ユーザから受け付けた要求を示す要求情報を制御装置100に送信する。通信装置300は、通信部301と、入力部302と、表示部303と、制御部304とを備える。通信部301は、無線ネットワークインタフェースである。通信部301は第2無線ネットワーク500を介して、制御装置100と通信する。通信部301は、例えば無線LAN、Bluetooth又は赤外線等の近距離の無線通信方式で通信してもよい。
【0043】
入力部302は、タッチパネル、マウス、キーボード、ボタン等の入力装置を用いて構成される。入力部302は、入力装置を通信装置300に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部302は、入力装置において入力された入力信号から入力データ(例えば、制御装置100に対する要求を示す要求情報)を生成し、通信装置300に入力する。
【0044】
表示部303は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の映像出力装置である。表示部303は、映像出力装置を通信装置300に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部303は、映像データから映像信号を生成し自装置に接続されている映像出力装置に映像信号を出力する。
【0045】
制御部304は、通信装置300の各部の動作を制御する。制御部304は、例えばCPU等のプロセッサ及びRAMを備えた装置により実行される。制御部304は、要求情報生成プログラムを実行することによって、要求情報生成部305として機能する。要求情報生成部305は、入力部302を介して受け付けた入力に基づいて、要求情報を生成する。例えば、入力部302が、“暑い”という入力を受け付けた場合、要求情報生成部305は、“暑い”を示す要求情報を生成する。要求情報生成部305は、生成された要求情報と装置識別子とを対応付けてブロードキャストで制御装置100に送信する。
【0046】
図5及び
図6は、第1の実施形態の通信装置300の一具体例を示す図である。
図5に示す通信装置300aは、例えば、スマートフォン又はタブレットコンピュータ等の情報処理装置である。通信装置300aは、アプリケーションを実行することで屋内環境(例えば、温度)に対する要求情報を受け付ける。通信装置300aは、入力部302と表示部303とが一体として構成されたタッチパネル303aを備える。タッチパネル303aには、ボタンB1及びボタンB2を示す画像が表示される。ボタンB1及びボタンB2はそれぞれ、屋内の環境に対する要求に対応付けられる。通信装置300aは、ボタンB1又はボタンB2のいずれかが操作(タッチ)された場合に、操作されたボタンB1又はボタンB2に応じた要求情報を生成する。例えば、通信装置300aのタッチパネル303aが、“暑い”と表示されたボタンB1に対する操作を受け付けると、要求情報生成部305は、“暑い”ことを示す要求情報を生成する。また、例えば、通信装置300aのタッチパネル303aが、“寒い”と表示されたボタンB2に対する操作を受け付けると、要求情報生成部305は、“寒い”ことを示す要求情報を生成する。通信装置300aの要求情報生成部305は、生成された要求情報を、自装置の装置識別子と対応付けて制御装置100に送信する。
【0047】
図6に示す通信装置300bは、入室カード又は従業員カード等の電子カード型の通信装置300の一例である。通信装置300bは、入力部302として、ボタン等の入力部302b-1及び302b-2を備える。入力部302b-1及び302b-2はそれぞれ、屋内の環境に対する要求に対応付けられる。通信装置300bの要求情報生成部305は、入力部302b-1又は302b-2が操作を受け付けると、操作された入力部302b-1又は302b-2に応じた要求情報を生成する。例えば、通信装置300b-1の要求情報生成部305は、“暑い”と表示された入力部302b-1が操作を受け付けると、“暑い”ことを示す要求情報を生成する。また、通信装置300bの要求情報生成部305は、“寒い”と表示された入力部302b-2が操作を受け付けると、“寒い”ことを示す要求情報を生成する。通信装置300bは、生成された要求情報を、自装置の装置識別子と対応付けて制御装置100に送信する。なお、通信装置300は情報処理装置又は電子カード等の形態に限定されない。通信装置300は、ユーザが自身の屋内環境に対する要求を入力する手段と、制御装置100と通信を行う手段とを備えていればよい。
【0048】
図7は、第1の実施形態の制御装置100のフィルタリング制御部112が有するフィルタリング機能の一具体例を説明する図である。通信装置300は、第2無線ネットワーク500を介して制御装置100-iに要求情報600a-nを送信する。制御装置100-iの要求情報転送部109は、要求情報取得部108が取得した要求情報600a-nの内容に応じて他の制御装置100-nへの転送が必要と判断した場合、第1無線ネットワーク400を介して要求情報600a-nを転送する。この時、制御装置100-iのフィルタリング制御部112は、第1無線ネットワーク400の通信帯域が第2無線ネットワーク500の通信帯域より小さく、全てのデータを転送すると帯域を圧迫すると判断した場合、フィルタリング処理を行う。すなわち、フィルタリング制御部112は、通信装置300から受信した要求情報600a-nの全てを伝送せず、パケットの間引きによるフィルタリングを行った要求情報600b-nを第1無線ネットワーク400に対して送出する。
【0049】
図8は、第1の実施形態によるフィルタリング機能の実現方法の一具体例を示す図である。横軸は、時間経過を示す。縦の矢印は、制御装置100-iが第2無線ネットワーク500から受信した要求情報600a-nのパケットと、受信したこれらパケットのうち第1無線ネットワーク400へ転送される要求情報600b-nのパケットを示す。制御装置100-iのフィルタリング制御部112は、通信装置300のフィルタリング期間T
Fを、その通信装置300の通信量、すなわち、通信帯域の占有量に応じて決定する。フィルタリング期間T
Fの終了後一定期間は、転送許可期間T
Tである。
【0050】
制御装置100-iのフィルタリング制御部112は、要求情報転送部109から要求情報600a-nの転送可否判断の問い合わせを受けると、現在がフィルタリング期間TFであるか否かを判定する。フィルタリング制御部112は、前回の転送許可期間TTからの経過時間がフィルタリング期間TF未満である場合、転送不可と判定する。フィルタリング制御部112は、前回の転送許可期間からフィルタリング期間TFが経過し、転送許可期間TTである場合には、転送を許可すると判定する。要求情報転送部109は、通信装置300のフィルタリング期間TFに、その通信装置300から受信したデータのうち、転送が必要と判断した要求情報を破棄する。フィルタリング期間TFをシステムで一意に定めてもよく、通信装置300ごとに個別に決定してもよい。
【0051】
図9は、通信装置300ごとにフィルタリング期間T
Fを決定する方法の一具体例を示す図である。3台の通信装置300を、通信装置300-1、300-2、300-3と記載する。フィルタリング制御部112は、通信装置300-1、300-2、300-3に対してそれぞれ、フィルタリング期間T
F1、T
F2、T
F3を設定し、独立にフィルタリング制御を実施する。フィルタリング期間T
F1、T
F2、T
F3はそれぞれ、時間ウインドウ幅の最小単位W
Fに通信装置300-1、300-2、300-3それぞれに応じた係数α、β、γを乗算した値である。フィルタリング制御部112は、ユーザ情報記憶部105に記憶されるユーザ情報テーブルから各ユーザの通信量を表すデータ転送量を読み出し、読み出したデータ転送量に基づいて各ユーザに割り当て可能な通信帯域の比率を算出する。フィルタリング制御部112は、割り当てた通信帯域の比率に応じて、係数α、β、γを算出する。フィルタリング期間T
F1、T
F2、T
F3それぞれが経過した後の転送可能期間T
Tの長さは、通信装置300-1、300-2、300-3とも同じであるが、異なる長さとしてもよい。
【0052】
図10は、通信装置300ごとの係数の算出方法の一具体例を示す概念図である。縦軸はデータ流量を示し、横軸は時間を示す。
図10は、通信装置300-1、300-2、300-3それぞれの単位時間あたりのデータ流量の累積値の時間変動を示している。単位時間は、10分である。各通信装置300-1~300-3の係数α、β、γは、通信装置300-1~300-3それぞれのデータ流量に偏りが発生しないように、前の周期の累積値の割合から算出される。
図10では一例として、係数を決定する対象の周期の一つ前の10分周期における累積値の割合に基づいて係数を決定している。具体的には、一つ前の10時50分の10分周期においては、通信装置300-2の転送量の割合が60%と多いため、フィルタリング制御部112は、次の周期においては通信装置300-2のデータ転送量が少なくなるように制御する。すなわち、フィルタリング制御部112は、通信装置300-2の係数βに大きい値を設定する。フィルタリング制御部112は、係数βに続き、データ転送量の大きい順序に従って、係数α、係数γの順に大きな値を設定する(β>α>γ)。なお、実際に係数の値を設定する場合の比率は、システムに応じて設定される。一例として、通信装置300-1、300-2、300-3のデータ転送量の割合をそのまま係数α、β、γの割合としてもよく、データ転送量の割合に補正をかけた割合とすることも可能である。これにより、ユーザ間で、要求情報が転送され得る機会に偏りがないようにすることができる。
【0053】
図11は、時間ウインドウ幅の最小単位W
Fの算出方法の一具体例を説明するための図である。通信装置300のフィルタリング期間T
Fは、時間ウインドウ幅の最小単位W
Fと、
図10のように算出されたその通信装置300の係数との乗算により算出される。制御対象設備が空調設備である場合を例にとると、室温24℃を制御値として空調を制御し、実際に室温が24℃になるまでの到達時間をTとする。室温の変位量Vは、室温24℃を制御値として空調の制御を開始したときに計測された室温23℃と、室温の制御値との差分1℃である。最小単位W
Fは、変位の傾きが緩やかであるほど長い時間とする。そこで、変位の傾きを環境係数a(=V/T)と定義する。環境係数管理部111は、環境係数aを計測する。フィルタリング制御部112は、制御対象設備ごとに制御と計測とを連動して最小単位W
Fを算出する。一例として、フィルタリング制御部112は、環境係数aの逆数に定数kをかけた値を最小単位W
Fとして算出する。すなわち、最小単位は、以下の式(1)により算出される。
【0054】
WF=k/a=k/(V/T) …(1)
【0055】
上記のように最小単位WFを決定すると、空調のような緩やかな変動を示す制御対象設備の場合はウインドウ幅が大きく、照明のような変動が瞬時的な制御対象設備の場合はウインドウ幅が小さくなる。よって、ユーザの要求に応じた制御の開始から実際に環境が変化するまでの遅延に対するユーザからの過剰な要求情報送信を防止することができる。このように、制御システム1の特性や環境の特性を考慮してウインドウ幅の最小単位WFを決定することで、システムに適したフィルタリング制御を、人の手を介さず自律的に行うことが可能となる。
【0056】
なお、第2無線ネットワークの混雑度が3段階以上で表される場合、混雑度が高くなるほど、定数kを大きな値としてもよい。
【0057】
図12~
図14は、第1の実施形態の制御システム1における通信シーケンスの一具体例を示す図である。これらの図を用いて、制御装置100-1が、制御装置100-2へ転送する対象の要求情報を通信装置300-1~300-3から受信した場合の動作を説明する。
【0058】
まず、
図12のシーケンス図を説明する。通信装置300-1の入力部302は、ユーザ操作によって、屋内環境に対する要求を受け付ける(ステップS101)。要求情報生成部305は、入力部302が受け付けた入力に基づいて、要求情報を生成する(ステップS102)。要求情報生成部305は、生成された要求情報と、自装置の装置識別子とを対応付けてパケットに設定し、通信部301からブロードキャストにより制御装置100-1に送信する(ステップS103)。
【0059】
制御装置100-1の第2通信部102は、通信装置300-1が送信した要求情報及び装置識別情報を、第2無線ネットワーク500から受信する。制御装置100-1の要求情報取得部108は、第2通信部102が受信した要求情報を受け付ける。要求情報転送部109は、要求情報が制御装置100-2への転送対象であると判断する(ステップS104)。ユーザ情報管理部110は、通信装置300-1から受信したパケットのデータサイズを測定する。ユーザ情報管理部110は、ユーザ情報記憶部105のユーザ情報テーブルに設定されている通信装置300-1のデータ転送量を、測定されたデータサイズを用いて更新する(ステップS105)。
【0060】
次に、帯域管理部114は、監視している第1無線ネットワーク400の通信帯域の使用状況に基づいて、第1無線ネットワーク400の帯域混雑状況が大きいか否かを判定する。帯域管理部114は、帯域混雑状況が大きいと判定した場合(ステップS106)、フィルタリング機能を有効化する。フィルタリング制御部112は、パケットの受信時刻が通信装置300-1のフィルタリング期間内であるか否かを判定する。フィルタリング制御部112は、フィルタリング期間内であると判定した場合(ステップS107)、通信装置300-1から受信したパケットを破棄する(ステップS108)。
【0061】
次に、
図13のシーケンス図を説明する。通信装置300-2の入力部302は、ユーザ操作によって、屋内環境に対する要求を受け付ける(ステップS111)。要求情報生成部305は、入力部302が受け付けた入力に基づいて、要求情報を生成する(ステップS112)。要求情報生成部305は、生成された要求情報と、自装置の装置識別子とを対応付けてパケットに設定し、通信部301からブロードキャストにより制御装置100-1に送信する(ステップS113)。
【0062】
制御装置100-1の第2通信部102は、通信装置300-2が送信した要求情報及び装置識別情報を、第2無線ネットワーク500から受信する。制御装置100-1の要求情報取得部108は、第2通信部102が受信した要求情報を受け付ける。要求情報転送部109は、要求情報が制御装置100-2への転送対象であると判断する(ステップS114)。ユーザ情報管理部110は、通信装置300-2から受信したパケットのデータサイズを測定する。ユーザ情報管理部110は、ユーザ情報記憶部105のユーザ情報テーブルに設定されている通信装置300-2のデータ転送量を、測定されたデータサイズを用いて更新する(ステップS115)。
【0063】
次に、帯域管理部114は、監視している第1無線ネットワーク400の通信帯域の使用状況に基づいて、第1無線ネットワーク400の帯域混雑状況が大きいか否かを判定する。帯域管理部114は、帯域混雑状況が大きいと判定した場合(ステップS116)、フィルタリング機能を有効化する。フィルタリング制御部112は、パケットの受信時刻が通信装置300-2のフィルタリング期間内ではない、すなわち、転送可能期間内であると判定する(ステップS117)。要求情報転送部109は、通信装置300-2から受信した要求情報のパケットを制御装置100-2宛に転送する(ステップS118)。
【0064】
次に、
図14のシーケンス図を説明する。通信装置300-3の入力部302は、ユーザ操作によって、屋内環境に対する要求を受け付ける(ステップS121)。要求情報生成部305は、入力部302が受け付けた入力に基づいて、要求情報を生成する(ステップS122)。要求情報生成部305は、生成された要求情報と、自装置の装置識別子とを対応付けてパケットに設定し、通信部301からブロードキャストで制御装置100-1に送信する(ステップS123)。
【0065】
制御装置100-1の第2通信部102は、通信装置300-3が送信した要求情報及び装置識別情報を、第2無線ネットワーク500から受信する。制御装置100-1の要求情報取得部108は、第2通信部102が受信した要求情報を受け付ける。要求情報転送部109は、要求情報が制御装置100-2への転送対象であると判断する(ステップS124)。ユーザ情報管理部110は、通信装置300-3から受信したパケットのデータサイズを測定する。ユーザ情報管理部110は、ユーザ情報記憶部105のユーザ情報テーブルに設定されている通信装置300-3のデータ転送量を、測定されたデータサイズを用いて更新する(ステップS125)。
【0066】
次に、帯域管理部114は、監視している第1無線ネットワーク400の通信帯域の使用状況に基づいて、第1無線ネットワーク400の帯域混雑状況が大きいか否かを判定する。帯域管理部114は、帯域混雑状況が小さいと判定した場合(ステップS126)、フィルタリング機能を無効化する。要求情報転送部109は、通信装置300-3から受信したパケットを制御装置100-2宛に転送する(ステップS127)。
【0067】
なお、転送された要求情報のデータ転送量を記録する場合、ユーザ情報管理部110は、ステップS105の処理を実行せず、ステップS115の処理をステップS117又はステップS118の処理の後に、ステップS125の処理をステップS126又はステップS127の処理の後に行う。
【0068】
本実施形態によれば、制御装置100は、第1無線ネットワーク400が混雑している場合、各ユーザの使用可能帯域が公平に近づくように、また、制御対象設備の応答遅延に応じて要求情報が過剰に転送されないように、要求情報をフィルタリングして転送する。これにより、通信装置300に対して帯域割り当てを行うことなく、制御対象設備の動作に対するユーザからの要求の増加に起因する上位ネットワークの帯域の圧迫を軽減しながら、その要求に即した環境調整を行うよう制御対象設備を制御することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の制御装置は、フィルタリング期間に通信装置から受信した要求情報を破棄していた。本実施形態の制御装置は、フィルタリング期間に受信した要求情報の内容をまとめて、転送可能な期間に送信する。以下では、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0070】
本実施形態の制御システムの構成、制御装置の構成、センサ装置の構成、通信装置の構成は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
図15は、第2の実施形態のフィルタリング機能の実現方法の一具体例を示す図である。横軸は、時間経過を示す。縦の矢印は、制御装置100-iが第2無線ネットワーク500から受信した要求情報600a-nのパケットと、第1無線ネットワーク400へ転送される要求情報600c-nのパケットを示す。通信装置300は、第2無線ネットワーク500を介して制御装置100-iに要求情報600a-nを送信する。制御装置100-iのフィルタリング制御部112は、通信装置300のフィルタリング期間T
Fを第1の実施形態と同様に決定する。フィルタリング期間T
Fの終了後一定期間は、転送許可期間T
Tである。
【0072】
制御装置100-iのフィルタリング制御部112は、要求情報転送部109から要求情報600a-nの転送可否判断の問い合わせを受けると、現在がフィルタリング期間T
Fであるか否かを判定する。フィルタリング制御部112は、前回の転送許可期間T
Tからの経過時間がフィルタリング期間T
F未満である場合、転送不可と判定する。フィルタリング制御部112は、転送不可の期間に受信したパケットについては、転送を行わずに、パケットに設定されている要求情報600a-nの内容と、内容ごとの要求情報の受信回数を統計情報として記録する。フィルタリング制御部112は、前回の転送許可期間からフィルタリング期間T
Fが経過して転送許可期間T
Tになると、要求情報転送部109に転送許可を通知する。要求情報転送部109は、直前のフィルタリング期間T
F内において受信した要求情報600a-nに設定されていた内容をまとめた統計情報を要求情報600c-nに設定し、1つのパケットに設定して第1無線ネットワーク400に転送する。制御装置100-iの要求情報転送部109は、
図7の要求情報600b-nに代えて要求情報600c-nを送信する。なお、フィルタリング期間T
Fをシステムで一意に定めてもよく、通信装置300ごとに個別に決定してもよい。
【0073】
例えば、フィルタリング制御部112は、
図9に示す第1の実施形態と同様に、ユーザ間の通信量の比率に応じた係数に基づいて、通信装置300個別にフィルタリング期間T
Fを定め、各通信装置300に対して独立にフィルタリングの制御を実施してもよい。この場合、フィルタリング制御部112は、
図10に示す第1の実施形態と同様に、各通信装置300の係数を、前の周期のデータ流量の累積値又は平均の割合に応じて決定してもよい。また、フィルタリング制御部112は、時間ウインドウ幅の最小単位W
Fを制御対象設備の応答時間に基づいて求められる環境係数を用いて算出してもよい。
【0074】
図16及び
図17は、第2の実施形態の制御システム1における通信シーケンスの一具体例を示す図である。これらの図は、制御装置100が要求情報を転送する際のフィルタリング動作の一例を示す。これの図を用いて、本実施形態の制御装置100-1が第2無線ネットワーク500を介して通信装置300-1から要求情報を受信し、第1無線ネットワーク400を介して制御装置100-2へ要求情報を送信する場合の動作を説明する。
【0075】
まず、
図16のシーケンス図を説明する。制御装置100-1のフィルタリング制御部112は、各通信装置300-1~300-3のフィルタリング期間T
Fを定め、通信装置300-1~300-3のそれぞれについて定めたフィルタリング期間T
Fのタイマを開始する(ステップS201)。
【0076】
通信装置300-1の入力部302は、ユーザ操作によって、屋内環境に対する要求を受け付ける(ステップS202)。要求情報生成部305は、入力部302が受け付けた入力に基づいて、要求情報を生成する(ステップS203)。要求情報生成部305は、生成された要求情報と、自装置の装置識別子とを対応付けてパケットに設定し、通信部301からブロードキャストにより制御装置100-1に送信する(ステップS204)。
【0077】
制御装置100-1の第2通信部102は、通信装置300-1が送信した要求情報及び装置識別情報を、第2無線ネットワーク500から受信する。制御装置100-1の要求情報取得部108は、第2通信部102が受信した要求情報を受け付ける。要求情報転送部109は、要求情報が制御装置100-2への転送対象であると判定する(ステップS205)。ユーザ情報管理部110は、通信装置300-1から受信したパケットのデータサイズを測定する。ユーザ情報管理部110は、ユーザ情報記憶部105のユーザ情報テーブルに設定されている通信装置300-1のデータ転送量を、測定されたデータサイズを用いて更新する(ステップS206)。
【0078】
次に、フィルタリング制御部112は、通信装置300-1のフィルタリングタイマの状態を確認し、通信装置300-1のタイマ期間内であるか否かを判定する。フィルタリング制御部112は、タイマ期間内、すなわち、フィルタリング期間内であると判定する(ステップS207)。フィルタリング制御部112は、通信装置300-1から受信したパケットに設定されている要求情報の内容を解析し、通信装置300-1の装置識別子と対応付けてユーザ情報記憶部105に記録する(ステップS208)。
【0079】
図17のステップS211~S217の動作は、
図16のステップS202~S208と同様である。すなわち、通信装置300-1の入力部302は、ユーザ操作によって、屋内環境に対する要求を受け付ける(ステップS211)。要求情報生成部305は、入力部302が受け付けた入力に基づいて、要求情報を生成する(ステップS212)。要求情報生成部305は、生成された要求情報と、自装置の装置識別子とを対応付けてパケットに設定し、通信部301からブロードキャストにより制御装置100-1に送信する(ステップS213)。
【0080】
制御装置100-1の第2通信部102は、通信装置300-1が送信した要求情報及び装置識別情報を、第2無線ネットワーク500から受信する。制御装置100-1の要求情報取得部108は、第2通信部102が受信した要求情報を受け付ける。要求情報転送部109は、要求情報が制御装置100-2への転送対象であると判定する(ステップS214)。ユーザ情報管理部110は、通信装置300-1から受信したパケットのデータサイズを測定する。ユーザ情報管理部110は、ユーザ情報記憶部105のユーザ情報テーブルに設定されている通信装置300-1のデータ転送量を、測定されたデータサイズを用いて更新する(ステップS215)。フィルタリング制御部112は、通信装置300-1のフィルタリングタイマのタイマ期間内、すなわち、フィルタリング期間内であると判定する(ステップS216)。フィルタリング制御部112は、通信装置300-1から受信したパケットに設定されている要求情報の内容を解析し、通信装置300-1の装置識別子と対応付けてユーザ情報記憶部105に記録する(ステップS217)。
【0081】
そして、フィルタリング制御部112は、通信装置300-1のフィルタリングタイマがタイムアウトしたことを検出した場合、要求情報転送部109に通知する(ステップS218)。要求情報転送部109は、ユーザ情報記憶部105に蓄積された通信装置300-1の要求情報の内容を読み出し、読み出した内容の統計情報を設定した要求情報と装置識別子を設定したパケットを制御装置100-2宛に送信する(ステップS219)。
【0082】
第2の実施形態によれば、制御装置100は、フィルタリング期間内に通信装置300から受信した要求情報が示す内容をまとめて転送可能期間内に送信する。よって、上位ネットワークである第1無線ネットワーク400の帯域の圧迫を低減しながら、ユーザの全ての要求を制御装置に通知することができる。
【0083】
なお、制御システム1が有する複数の制御装置100の一部を、設備の制御を行わないネットワーク装置としてもよい。このネットワーク装置は、
図2に示す制御装置100の構成のうち第3通信部103及び設備制御部113を備えない構成である。
【0084】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、フィルタリング制御部を持つことにより、設備を操作するための情報を中継するネットワークにおける帯域の圧迫を軽減することができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1…制御システム、100、100-1~100-4、100-i、100-n…制御装置、101…第1通信部、102…第2通信部、103…第3通信部、104…制御情報記憶部、105…ユーザ情報記憶部、106…制御部、107…環境情報取得部、108…要求情報取得部、109…要求情報転送部、110…ユーザ情報管理部、111…環境係数管理部、112…フィルタリング制御部、113…設備制御部、114…帯域管理部、200…センサ装置、201…通信部、202…環境情報取得部、203…制御部、300、300-1~300-3…通信装置、301…通信部、302…入力部、303…表示部、304…制御部、305…要求情報生成部、400…第1無線ネットワーク、500…第2無線ネットワーク