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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】自律除雪機
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/04 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
E01H5/04 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019161061
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038582
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山村 誠
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 貴正
(72)【発明者】
【氏名】小谷 善明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏也
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0003137(US,A1)
【文献】特開2016-212697(JP,A)
【文献】特開2015-178707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180478(US,A1)
【文献】特開2003-138513(JP,A)
【文献】特開2008-081966(JP,A)
【文献】特開平01-320510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の除雪作業領域内を自律走行する自律除雪機であって、
走行装置と、
除雪作業部と、
前記除雪作業部による除雪作業領域を設定するための第1のマーカと除雪した雪を集める集雪領域を設定するための第2のマーカを撮影する撮像装置を備えた領域設定部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記撮像装置により撮影された前記第1のマーカに基づいて除雪作業領域を設定するとともに、前記撮像装置により撮影された第2のマーカに基づいて集雪領域を設定し、
位置検出処理により前記自律除雪機の現在の位置に基づいて前記除雪作業領域から逸脱しないようにするとともに、前記集雪領域に除雪した雪を集めるように前記自律除雪機を制御することを特徴とする自律除雪機。
【請求項2】
ユーザの携帯端末装置との通信を行う通信部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の自律除雪機。
【請求項3】
前記制御部は、前記携帯端末装置により設定され前記通信部を介して送られる情報に基づいて前記除雪作業領域を設定することを特徴とする請求項2に記載の自律除雪機。
【請求項4】
現在位置を検出する位置検出部を備え、前記制御部は、前記位置検出部による現在位置を取得し、現在位置と前記集雪領域との間の距離が一定以上離れている場合、現在位置と前記集雪領域との間に仮の集雪領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の自律除雪機。
【請求項5】
前記除雪作業部は、雪を掻き集めるオーガと、前記オーガで掻き集められた雪を飛ばすブロアとを備え、前記除雪作業領域の雪を前記オーガおよび前記ブロアを用いて、前記集雪領域に向けて飛ばすことで集雪することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の自律除雪機。
【請求項6】
前記除雪作業部は、雪を押すブレードを備え、前記除雪作業領域の雪を前記ブレードを用いて、前記集雪領域に向けて押し出すことで集雪することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の自律除雪機。
【請求項7】
前記制御部は、除雪作業の作業スケジュールを設定可能であり、前記制御部は、前記作業スケジュールに基づいて前記除雪作業部を制御して除雪を行うことを特徴とする請求項2に記載の自律除雪機。
【請求項8】
前記制御部は、ユーザの起床時間を取得し、前記起床時間に除雪作業が所定量以上完了するように前記作業スケジュールを設定することを特徴とする請求項7に記載の自律除雪機。
【請求項9】
前記制御部は、前記起床時間を、ユーザの前記携帯端末装置に設定されたアラーム時間から前記通信部を介して取得することを特徴とする請求項8に記載の自律除雪機。
【請求項10】
前記制御部は、ユーザの前記携帯端末装置の位置情報を前記通信部を介して取得し、前記携帯端末装置の位置情報に基づいて除雪作業の前記作業スケジュールを設定することを特徴とする請求項7に記載の自律除雪機。
【請求項11】
前記制御部は、ユーザの前記携帯端末装置の位置情報に基づいて、ユーザが除雪作業領域に到達する時間を予測し、予測した到達時間に除雪作業が所定量以上完了しているように作業スケジュールを設定することを特徴とする請求項10に記載の自律除雪機。
【請求項12】
前記制御部は、ユーザの前記携帯端末装置から天気予報情報を前記通信部を介して取得し、この天気予報情報に基づいて、前記除雪作業領域の積雪量を予測し、予測した積雪量に基づいて作業スケジュールを設定することを特徴とする請求項7に記載の自律除雪機。
【請求項13】
前記制御部は、集雪領域に集雪した雪の量が一定以上の量になった場合に、前記通信部から前記携帯端末装置を介して除雪業者に回収依頼を送信することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の自律除雪機。
【請求項14】
前記除雪作業部による除雪作業時に、融雪剤を撒きながら除雪作業を行うことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の自律除雪機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律除雪機に係り、特に、自律走行しながら除雪作業を行うことを可能とした自律除雪機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路などの積雪を除去するための除雪機が知られている。
そして、このような除雪機として、例えば、位置情報システムとコンピューターを内蔵したシステムコントローラー、および積雪監視システムとを備えており、積雪監視システムでの監視カメラによる積雪撮像、あるいは降雪感知情報をもとにシステムコントローラーからの指示により除雪等の作業を行う自律除雪機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-040076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の技術では、システムコントローラーからの指示によりあらかじめ設定したエリア内あるいは航行通路に沿って除雪等の作業を行うものであるが、GPSの精度が低い領域では、設定した通路を走行することが困難な場合がある。
本発明は、前記した点に鑑みてなされたものであり、高い精度で自律走行して除雪作業を行うことができる自律除雪機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、所定の除雪作業領域内を自律走行する自律除雪機であって、走行装置と、除雪作業部と、前記除雪作業部による除雪作業領域を設定するための第1のマーカと除雪した雪を集める集雪領域を設定するための第2のマーカを撮影する撮像装置を備えた領域設定部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記撮像装置により撮影された前記第1のマーカに基づいて除雪作業領域を設定するとともに、前記撮像装置により撮影された第2のマーカに基づいて集雪領域を設定し、位置検出処理により前記自律除雪機の現在の位置に基づいて前記除雪作業領域から逸脱しないようにするとともに、前記集雪領域に除雪した雪を集めるように前記自律除雪機を制御することを特徴とする。
【0006】
前記構成において、ユーザの携帯端末装置との通信を行う通信部を備えていることを特徴とする。
【0007】
前記構成において、前記領域設定部は、前記除雪作業領域の境界に設置される作業用ポールに形成されたマーカを撮影する撮像装置を備え、前記制御部は、前記撮像装置で撮影された画像に基づいて、前記マーカを読み取り、前記除雪作業領域を設定することを特徴とする。
【0008】
前記構成において、前記制御部は、前記携帯端末装置により設定され前記通信部を介して送られる情報に基づいて前記除雪作業領域を設定することを特徴とする。
【0009】
前記構成において、前記制御部は、前記除雪作業領域を設定する際に、除雪した雪を集める集雪領域を設定し、前記制御部は、前記除雪作業部を前記除雪作業領域に積雪した雪を前記集雪領域に集雪するように制御することを特徴とする。
【0010】
前記構成において、前記集雪領域の境界に、前記作業用ポールとは異なる集雪用ポールを設置し、前記制御部は、前記集雪用ポールに形成されたマーカに基づいて前記集雪領域を設定することを特徴とする。
【0011】
前記構成において、現在位置を検出する位置検出部を備え、前記制御部は、前記位置検出部による現在位置を取得し、現在位置と前記集雪領域との間の距離が一定以上離れている場合、現在位置と前記集雪領域との間に仮の集雪領域を設定することを特徴とする。
【0012】
前記構成において、前記除雪作業部は、雪を掻き集めるオーガと、前記オーガで掻き集められた雪を飛ばすブロアとを備え、前記除雪作業領域の雪を前記オーガおよび前記ブロアを用いて、前記集雪領域に向けて飛ばすことで集雪することを特徴とする。
【0013】
前記構成において、前記除雪作業部は、雪を押すブレードを備え、前記除雪作業領域の雪を前記ブレードを用いて、前記集雪領域に向けて押し出すことで集雪することを特徴とする。
【0014】
前記構成において、前記制御部は、除雪作業の作業スケジュールを設定可能であり、前記制御部は、前記作業スケジュールに基づいて前記除雪作業部を制御して除雪を行うことを特徴とする。
【0015】
前記構成において、前記制御部は、ユーザの起床時間を取得し、前記起床時間に除雪作業が所定量以上完了するように前記作業スケジュールを設定することを特徴とする。
【0016】
前記構成において、前記制御部は、前記起床時間を、ユーザの前記携帯端末装置に設定されたアラーム時間から前記通信部を介して取得することを特徴とする。
【0017】
前記構成において、前記制御部は、ユーザの前記携帯端末装置の位置情報を前記通信部を介して取得し、前記携帯端末装置の位置情報に基づいて除雪作業の前記作業スケジュールを設定することを特徴とする。
【0018】
前記構成において、前記制御部は、ユーザの前記携帯端末装置の位置情報に基づいて、ユーザが除雪作業領域に到達する時間を予測し、予測した到達時間に除雪作業が所定量以上完了しているように作業スケジュールを設定することを特徴とする。
【0019】
前記構成において、前記制御部は、ユーザの前記携帯端末装置から天気予報情報を前記通信部を介して取得し、この天気予報情報に基づいて、前記除雪作業領域の積雪量を予測し、予測した積雪量に基づいて作業スケジュールを設定することを特徴とする。
【0020】
前記構成において、前記制御部は、集雪領域に集雪した雪の量が一定以上の量になった場合に、前記通信部から前記携帯端末装置を介して除雪業者に回収依頼を送信することを特徴とする。
【0021】
前記構成において、前記除雪作業部による除雪作業時に、融雪剤を撒きながら除雪作業を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、領域設定部により設定された除雪作業領域内で、走行装置を制御することで、高い精度で自律除雪機を自律走行させながら除雪作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る自律除雪機の実施形態を示す側面図である。
図2】本実施形態の制御構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の自律除雪機による除雪作業領域の例を示す説明図である。
図4】本実施形態の始動動作を示すフローチャートである。
図5】本実施形態の除雪動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る自律除雪機の実施形態を示す側面図である。
図1に示すように、自律除雪機1は、自律除雪機1のフレームを構成する車両本体10と、走行装置11と、除雪作業部12とを備えている。
【0025】
車両本体10の左右両側下方には、走行装置11が設けられている。
本実施形態においては、走行装置11は、一対のホイール20に履帯21を掛け渡すことで構成されるクローラ式の走行装置11が用いられている。
車両本体10の前後方向略中央部分には、動力源22が搭載されている。動力源22は、走行装置11を駆動する電動モータ23(図2を参照)と、除雪作業部12を駆動するエンジン24(図2を参照)とを備えている。
【0026】
電動モータ23は、左右の走行装置11ごとに設けられており、電動モータ23による左右の走行装置11の駆動により、自律除雪機1を前進、後進、左転回、右転回など任意の方向に走行させることができるように構成されている。
エンジン24は、スロットル25を操作して回転数を調整し、図示しない変速機を介して除雪作業部12を駆動するものである。エンジン24の駆動軸には、図示しない発電機が設けられており、発電機によって発電された電力は、各部に動作電力を供給するバッテリ26(図2を参照)に供給される。
【0027】
図1に示すように、車両本体10の前方には、除雪作業部12の一部を構成する、車両本体10の幅方向に延在するオーガハウジング30が設けられている。オーガハウジング30の内側には、オーガ31が回転駆動自在に設けられている。オーガハウジング30は、オーガ31の上部および両側部を被覆している。
オーガハウジング30の後方には、ブロア(図示せず)を被覆するブロアハウジング32が設けられており、ブロアハウジング32の上部には、シュータ33が設けられている。
【0028】
シュータ33は、ブロアハウジング32に対して略水平周りに回転自在に取付けられている。シュータ33は、図示しないシュータ駆動モータで回転駆動させることで、シュータ33による投雪方向を調整することが可能である。
シュータ33の上端部には、シュータガイド34が上下に揺動自在に取付けられている。シュータガイド34は、図示しないガイド駆動モータで上下に揺動駆動させることで、投雪角度を調整することが可能である。
自律除雪機1は、左右の走行装置11によって前進走行しつつ、オーガ31によって雪を掻き集め、掻き集めた雪をブロアによってシュータ33を介して遠くに投雪することができる。
【0029】
動力源22の上部前方には、左右に間隔を空けて一対のアーム35が立設されており、これらアーム35の上端には、照明光を照射する前照灯36が支持されている。
図1には図示されていないが、車両本体10には、領域設定部を構成し撮像装置としてのカメラ37と、例えば、LiDARなどのレーダシステム38と、GPSシステム39と、自律除雪機1の各部に動作電力を供給するバッテリ26(いずれも図2を参照)とがそれぞれ搭載されている。
なお、カメラ37は一台でも複数台でもよく、例えば、2台のカメラ37からなるステレオカメラでもよい。
【0030】
図2は、自律除雪機1の制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、自律除雪機1は、制御システム40を備えており、制御システム40は、CPUなどからなる制御部41と、RAM、ROMなどからなる記憶部42とを備えている。
そして、制御部41は、記憶部42に記憶された制御プログラムを実行することによって、自律除雪機1の各部を制御する。
【0031】
制御システム40は、ユーザインターフェースなどからなる操作部43と、通信部44とを備えている。
操作部43は、例えば、タッチパネルなどを操作することで、自律除雪機1の運転操作、除雪作業操作、除雪作業領域の設定操作などの各種操作を行うことができる機能を備えている。
【0032】
通信部44は、ユーザが所有する、例えばスマートフォンなどの携帯端末装置60と、インターネット上の管理クラウド61を介したデータ通信機能および電話を行うことができる通信機能を備えている。なお、通信部44は、携帯端末装置60と直接通信することができるものであってもよい。
携帯端末装置60は、表示画面を操作することで、自律除雪機1の運転操作、除雪作業操作、除雪作業領域の設定操作などの各種操作を行うことができる機能を備えている。
制御部41には、エンジン24のスロットル25を制御するための除雪制御ドライバ45と、電動モータを駆動制御するための走行制御ドライバ46とを備えている。
制御部41には、カメラ37と、レーダシステム38と、GPSシステム39とがそれぞれ接続されている。
【0033】
制御部41は、カメラ37からの画像情報を取得し、画像処理を行うことで、後述するように所定の除雪作業領域を設定する。
また、制御部41は、レーダシステム38からの情報を取得して、自律除雪機1の前方における障害物などの存在を検出する。
制御部41は、GPSシステム39の情報を取得することにより、自律除雪機1の現在位置を取得することができる。
【0034】
図3は、自律除雪機1による除雪を行う除雪作業領域の例を示す説明図である。
図3は、例えば、車道50に隣接して歩道51が配置された道路において、歩道51に沿って複数の家52が建ち並んだ状態の例を示している。
そして、家(1)52aと家(2)52bとの間に私道が存在し、家(2)52bと家(3)52cとが並んだ状態で、家(1)52aから家(3)52cまでの歩道51と、家(1)52aと家(2)52bとの間の私道53を除雪しようとする場合は、家(1)52aの端部の歩道51の端部、私道53の各隅部および家(3)52cの端部に対応する歩道51の端部に、除雪作業領域54の境界を示す作業用ポール55を立設しておく。作業用ポール55の上端部には、例えば、縞状のマーカ56(図1を参照)が形成されている。
【0035】
制御部41は、自律除雪機1のカメラ37で撮影された作業用ポール55の撮影画像を取得し、作業用ポール55のマーカ56を検出することで、マーカ56とマーカ56とを直線的に連結するバーチャルワイヤを設定し、これにより、除雪作業領域54の境界を設定する除雪作業領域54設定処理を行う。
また、除雪作業領域54の設定処理は、除雪した雪を集めておく集雪領域57の設定を行う。集雪領域57には、集雪用ポール58を設置し、この集雪用ポール58のマーカ(図示せず)を検出することにより、設定される。
この場合に、除雪作業領域54の作業用ポール55のマーカと区別するため、集雪領域57の集雪用ポール58のマーカは、例えば、縞の本数の異なるマーカや、太さの異なるマーカなどが用いられる。
家(2)52bと家(3)52cとの間には、自律除雪機1が待機する待機場所59が設定されている。
【0036】
なお、除雪作業領域54および集雪領域57は、例えば、ビーコンを用い、ビーコンから発せられる位置情報に基づいて設定するようにしてもよいし、例えば、携帯端末装置60の地図情報を利用して設定するようにしてもよい。
また、除雪作業領域54は、カメラ37で撮影された撮影画像に基づいて制御部41が逐次設定するようにしてもよい。その他、一度カメラ37の撮影画像に基づいて設定された除雪作業領域54や、携帯端末装置60によりあらかじめ設定された除雪作業領域54は、制御システム40の記憶部42に記憶させるようにしてもよいし、通信部44を介して管理クラウド61に記憶させるようにしてもよい。
【0037】
制御部41は、前述のように、除雪作業領域54の設定処理を行うほか、自律除雪機1の位置検出処理、自律除雪機1の自走動作制御、自律除雪機1の除雪動作制御を行う。
制御部41により位置検出処理は、GPSシステム39により取得される位置情報やレーダシステム38により取得される作業用ポール55や家52などとの距離情報に基づいて、自律除雪機1の現在の位置を検出する処理である。
【0038】
制御部41による自走動作制御は、位置検出処理により検出された自律除雪機1の現在の位置に基づいて、走行制御ドライバ46に動作指示を行い、除雪作業領域54からはみ出ないように走行させる制御である。
また、制御部41による自走動作制御は、カメラ37による撮影画像による画像解析あるいはレーダシステム38による物体検出に基づいて、自律除雪機1の前方に存在する人や家52などの障害物を検出し、障害物が存在することを検出した場合は、障害物を回避するように走行させる制御も含まれる。
【0039】
制御部41による除雪動作制御は、除雪制御ドライバ45に動作指示を行い、エンジン24のスロットル25を駆動してオーガ31およびブロアを駆動させる制御である。
この場合に、除雪動作制御は、除雪作業領域54の設定処理により設定した集雪領域57の位置に応じて、シュータ33を回転駆動するとともに、シュータガイド34を揺動駆動し、除雪された雪が集雪領域57に集まるように投雪方向を調節する。
【0040】
また、自律除雪機1の現在の位置から集雪領域57までの距離が離れている場合には、制御部41は、現在位置から集雪領域57までの間に、仮の集雪領域(図示せず)を設定する。そして、制御部41は、除雪動作制御を行うことで、まず、仮の集雪領域に雪を投雪し、その後、最終的に集雪領域57に雪を集雪するように制御する。なお、仮の集雪領域は、複数設定してもよい。
また、自律除雪機1に融雪剤を散布する機能を持たせ、除雪作業を行う際に、同時に融雪剤の散布作業も行わせるようにしてもよい。
【0041】
また、制御部41は、通信部44を介して携帯端末装置60と通信することにより、携帯端末装置60からユーザの生活パターンを取得することができる。
例えば、ユーザが携帯端末装置60でアラームを設定した場合、制御部41は、通信部44を介してアラームの設定時間からユーザの起床時間を取得する。
制御部41は、除雪動作制御は、携帯端末装置60から取得したユーザの起床時間に基づいて、自律除雪機1の除雪開始時間を設定する。例えば、ユーザが起床する前に除雪が所定量以上完了するように、起床時間より早い時間から除雪を開始するように制御する作業スケジュールを設定する。
これにより、ユーザが起床する際に、自宅周辺の除雪作業領域54の除雪を完了させることができる。
【0042】
また、制御部41は、通信部44を介して携帯端末装置60と通信することにより、携帯端末装置60の現在位置を取得することができる。
携帯端末装置60の現在位置が、自律除雪機1の現在位置の近くであると判断した場合は、携帯端末装置60がユーザの自宅に存在すると判断することができ、携帯端末装置60の現在位置が離れていると判断した場合には、携帯端末装置60がユーザの自宅に存在しないと判断することができる。
制御部41は、携帯端末装置60の現在位置を取得することにより、ユーザの自宅から離れる出勤時間と、ユーザが自宅に戻る帰宅時間とを取得することができる。制御部41は、出勤時間または帰宅時間より前に除雪が所定量以上完了するように制御する作業スケジュールを設定する。
これにより、ユーザが出勤時間に出勤する際、および帰宅時間に帰宅する際に、自宅周辺の除雪作業領域54の除雪を完了させることができる。
【0043】
制御部41は、通信部44を介して携帯端末装置60と通信することにより、携帯端末装置60から天気予報情報を取得することができる。
制御部41は、携帯端末装置60から取得した天気予報情報に基づいて、降雪時間、降雪量を取得し、積雪量に応じた除雪時間を予測する。制御部41は、予測した除雪時間に基づいて除雪作業時間を設定する。
制御部41は、前述のユーザの起床時間、出勤時間および帰宅時間に応じた除雪作業を行う際に、除雪作業時間を加味して作業スケジュールを設定する。
【0044】
制御部41は、前述の携帯端末装置60のアラーム設定時間や出勤時間および帰宅時間を、毎日、平日だけあるいは休日だけ取得することで、1日の起床時間、出勤時間および帰宅時間の平均を推定することができ、制御部41は、この推定時間に基づいて、1日ごとあるいは1週間ごとの作業スケジュールを設定することが可能である。
【0045】
自律除雪機1による除雪動作を行う開始タイミングは、ユーザの携帯端末装置60から管理クラウド61を介して送信される除雪開始指示信号を通信部44が受信した場合、前述の起床時間、出勤時間および帰宅時間に応じた作業スケジュールに基づいたタイマによる場合、カメラ37の撮影画像の画像解析により、除雪作業領域54に一定以上の積雪がある場合などが考えられる。
また、制御部41は、集雪領域57に集雪された雪の量が一定以上の量になった場合には、通信部44を介して除雪業者に回収依頼を送信するようにしてもよい。
【0046】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図4は除雪作業開始動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、除雪作業を開始する場合は、まず、自律除雪機1を起動させ(ST1)、制御部41は、除雪作業の開始指示があるか否かを判断する(ST2)。この場合に、開始指示は、例えば、ユーザにより携帯端末装置60から通信部44を介して送られる開始指示であってもよいし、あらかじめ設定した作業スケジュールに基づく開始指示であってもよい。
その他、例えば、制御部41がカメラ37による撮影画像を解析することで所定量以上の積雪があると判断した場合に開始指示とするようにしてもよい。
【0047】
そして、開始指示があったと判断した場合は(ST2:YES)、制御部41は、除雪作業領域54を取得する(ST3)。除雪作業領域54は、記憶部42または携帯端末装置60に記憶されている除雪作業領域54を取得するようにしてもよいし、カメラ37の撮影画像に基づいて、作業用ポール55のマーカ56を認識することで逐次取得するようにしてもよい。
除雪作業領域54を取得した後、制御部41は、走行制御ドライバ46および除雪制御ドライバ45にそれぞれ動作指示を送り(ST4)、自律除雪機1による除雪作業を開始する(ST5)。
【0048】
図5は除雪動作を示すフローチャートである。
図5に示すように、制御部41は、GPSにより、除雪作業領域54および集雪領域57における自律除雪機1の現在位置を取得する(ST11)。制御部41は、自律除雪機1の現在位置に応じて、集雪領域57にシュータ33が向くようにシュータ33を移動させる(ST12)。
続いて、制御部41は、カメラ37の撮影画像およびレーダシステム38による検出結果に基づいて、自律除雪機1の前方の状況を取得する(ST13)。
制御部41は、取得した自律除雪機1の前方の状況に基づいて、自律除雪機1の前方に障害物が存在するか否かを判断する(ST14)。
【0049】
そして、障害物が存在しないと判断した場合には(ST14:YES)、制御部41は、除雪制御ドライバ45に動作指示を行い、エンジン24を駆動してオーガ31およびブロアを起動させる(ST15)。この状態で、制御部41は、走行制御ドライバ46に動作指示を行い、電動モータ23を駆動して走行装置11を駆動することで、自律除雪機1を前進させながら除雪作業を行う(ST16)。
一方、自律除雪機1の前方に障害物が存在していると判断した場合には(ST14:NO)、制御部41は、走行制御ドライバ46に動作指示を行い、自律除雪機1が障害物を回避するように動作させる(ST22)。
【0050】
除雪作業を行っている間、制御部41は、カメラ37の撮影画像およびレーダシステム38による検出結果に基づいて、自律除雪機1の前方の状況を取得する。そして、自律除雪機1の前方の所定範囲内に人が存在するか否かを判断するとともに(ST17)、障害物が存在するか否かを判断する(ST18)。
自律除雪機1の前方の所定範囲内に人が存在すると判断した場合(ST17:NO)、障害物が存在すると判断した場合には(ST18:NO)、制御部41は、走行装置11を制御することで、人または障害物を回避するように動作させる(ST23)。
そして、回避した後、制御部41は、自律除雪機1の現在位置に基づいて、集雪領域57に対応するようにシュータ33を移動させる(ST25)。
【0051】
また、制御部41は、自律除雪機1の前方に人または障害物が存在しないと判断した場合は(ST17,18:YES)、除雪作業を継続し、自律除雪機1の走行方向に除雪作業領域54の境界が存在するか否かを判断する(ST19)。この場合、あらかじめ記憶された除雪作業領域54の情報と自律除雪機1の現在位置との関係で、除雪作業領域54の境界を判断するようにしてもよいし、カメラ37の撮影画像に基づいて作業用ポール55に形成されたマーカ56を認識することで、除雪作業領域54の境界を判断するようにしてもよい。
【0052】
そして、除雪作業領域54の境界が存在すると判断した場合は(ST19:YES)、制御部41は、自律除雪機1が除雪作業領域54からはみ出さないように旋回させるなど、走行装置11を制御する(ST24)。
除雪作業領域54の境界が存在せず(ST19:NO)、除雪作業領域54内の除雪作業がすべて完了したと判断した場合は(ST20:YES)、制御部41は、待機位置に自律除雪機1を帰還させるように制御する(ST21)。
除雪作業領域54内の除雪作業が完了していない場合は(ST20:NO)、前記ステップ16以下の動作を繰り返して行う(ST16)。
【0053】
以上述べたように、本実施形態においては、走行装置11と、除雪作業部12と、除雪作業部12による除雪作業領域54を設定する領域設定部と、領域設定部にて設定された除雪作業領域54から逸脱しないように走行装置11を制御する制御部41と、を備えている。
これにより、領域設定部により設定された除雪作業領域54内で、走行装置11を制御することで、高い精度で自律除雪機を自律走行させながら除雪作業を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態においては、ユーザの携帯端末装置60との通信を行う通信部44を備えている。
これにより、制御部41は、通信部44により携帯端末装置60と通信を行い、携帯端末装置60により設定された除雪作業領域54内の除雪作業を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態においては、領域設定部は、除雪作業領域54の境界に設置される作業用ポール55に形成されたマーカ56を撮影するカメラ37(撮像装置)を備え、制御部41は、カメラ37で撮影された画像に基づいて、マーカ56を読み取り、除雪作業領域54を設定する。
これにより、カメラ37により撮影された作業用ポール55のマーカ56の画像を解析することで、除雪作業領域54を設定することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、制御部41は、携帯端末装置60により設定され通信部44を介して送られる情報に基づいて除雪作業領域54を設定する。
これにより、携帯端末装置60により除雪作業領域54を設定することができ、携帯端末装置60により設定された除雪作業領域54の除雪作業を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態においては、制御部41は、除雪作業領域54を設定する際に、除雪した雪を集める集雪領域57を設定し、制御部41は、除雪作業部12を除雪作業領域54に積雪した雪を集雪領域57に集雪するように制御する。
これにより、設定された集雪領域57に除雪した雪を集めることができる。
【0058】
また、本実施形態においては、集雪領域57の境界に、作業用ポール55とは異なる集雪用ポール58を設置し、制御部41は、集雪用ポール58に形成されたマーカに基づいて集雪領域57を設定する。
これにより、カメラ37により撮影された集雪用ポール58のマーカの画像を解析することで、集雪領域57を設定することができる。
【0059】
また、本実施形態においては、現在位置を検出するGPSシステム39(位置検出部)を備え、制御部41は、GPSシステム39による現在位置を取得し、現在位置と集雪領域57との間の距離が一定以上離れている場合、現在位置と集雪領域57との間に仮の集雪領域を設定する。
これにより、自律除雪機1の現在位置が集雪領域57と離れている場合でも、仮の集雪領域を介することで、集雪領域57に雪を集めることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、除雪作業部12は、雪を掻き集めるオーガ31と、オーガ31で掻き集められた雪を飛ばすブロアとを備え、除雪作業領域54の雪をオーガ31およびブロアを用いて、集雪領域57に向けて飛ばすことで集雪する。
これにより、オーガ31およびブロアにより除雪作業を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態においては、制御部41は、除雪作業の作業スケジュールを設定可能であり、制御部41は、作業スケジュールに基づいて除雪作業部12を制御して除雪を行う。
これにより、制御部41は、設定された作業スケジュールに基づいて除雪作業を行うことができる。
【0062】
また、本実施形態においては、制御部41は、ユーザの起床時間を取得し、起床時間に除雪作業が所定量以上完了するように作業スケジュールを設定する。
これにより、ユーザの起床時間に基づいた作業スケジュールに基づいて除雪作業を行うことができる。
【0063】
また、本実施形態においては、制御部41は、起床時間を、ユーザの携帯端末装置60に設定されたアラーム時間から通信部44を介して取得する。
これにより、携帯端末装置60のアラーム時間から取得したユーザの起床時間に基づいて除雪作業を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態においては、制御部41は、ユーザの携帯端末装置60の位置情報を通信部44を介して取得し、携帯端末装置60の位置情報に基づいて除雪作業の作業スケジュールを設定する。
これにより、ユーザの位置情報に応じた作業スケジュールに基づいて除雪作業を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態においては、制御部41は、ユーザの携帯端末装置60の位置情報に基づいて、ユーザが除雪作業領域54に到達する時間を予測し、予測した到達時間に除雪作業が所定量以上完了しているように作業スケジュールを設定する。
これにより、ユーザの位置情報に基づいてユーザが除雪作業領域54に到達する時間を予測することで、例えば、ユーザの出勤時間および帰宅時間に応じた作業スケジュールを設定することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、制御部41は、ユーザの携帯端末装置60から天気予報情報を通信部44を介して取得し、この天気予報情報に基づいて、除雪作業領域54の積雪量を予測し、予測した積雪量に基づいて作業スケジュールを設定する。
これにより、天気予報情報を取得することで、除雪作業領域54の積雪量に応じた作業スケジュールを設定することができる。
【0067】
また、本実施形態においては、制御部41は、集雪領域57に集雪した雪の量が一定以上の量になった場合に、通信部44から携帯端末装置60を介して除雪業者に回収依頼を送信する。
これにより、集雪領域57に溜まった雪の回収を行うことができる。
【0068】
また、本実施形態においては、除雪作業部12による除雪作業時に、融雪剤を撒きながら除雪作業を行う。
これにより、融雪剤を撒くことで、除雪作業を容易に行うことができる。
【0069】
なお、本発明は前記実施形態に記載のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
例えば、前記実施形態においては、オーガ31および前記ブロアを備えた自律除雪機1を用いた場合の例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ドーザと呼ばれるブレードを備えた自律除雪機1に対しても適用することが可能である。これにより、ブレードにより除雪作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 自律除雪機
10 車両本体
11 走行装置
12 除雪作業部
22 動力源
23 電動モータ
24 エンジン
25 スロットル
26 バッテリ
31 オーガ
33 シュータ
34 シュータガイド
37 カメラ
38 レーダシステム
39 GPSシステム
40 制御システム
41 制御部
42 記憶部
43 操作部
44 通信部
45 除雪制御ドライバ
46 走行制御ドライバ
54 除雪作業領域
55 作業用ポール
56 マーカ
57 集雪領域
58 集雪用ポール
60 携帯端末装置
61 管理クラウド
図1
図2
図3
図4
図5