IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 ダイセイコーの特許一覧

<>
  • 特許-吹矢の矢 図1
  • 特許-吹矢の矢 図2
  • 特許-吹矢の矢 図3
  • 特許-吹矢の矢 図4
  • 特許-吹矢の矢 図5
  • 特許-吹矢の矢 図6
  • 特許-吹矢の矢 図7
  • 特許-吹矢の矢 図8
  • 特許-吹矢の矢 図9
  • 特許-吹矢の矢 図10
  • 特許-吹矢の矢 図11
  • 特許-吹矢の矢 図12
  • 特許-吹矢の矢 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】吹矢の矢
(51)【国際特許分類】
   F41B 1/00 20060101AFI20221212BHJP
   A63H 33/18 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F41B1/00 B
A63H33/18 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019208733
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021081125
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】399039834
【氏名又は名称】株式会社 ダイセイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】米山 隆明
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特許第4910074(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3127809(JP,U)
【文献】特許第6593737(JP,B1)
【文献】特開2012-117757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0256479(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226510(US,A1)
【文献】特開2000-130989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 1/00
A63H 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹矢に使用する矢であって、
頭部と該頭部から後方に延びる棒状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、
円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、
前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が密着かつ固着して収容され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致又は略一致しており、前記フィルムの先端部が前記ピンの頭部に隣接するように前記フィルムは装着され、前記頭部が錘として接続された矢。
【請求項2】
吹矢に使用する矢であって、
球形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、
円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、
前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が密着かつ固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部が前記ピンの先端部に隣接するように前記フィルムは装着され、前記ピンの球形である先端部が錘として接続された矢。
【請求項3】
吹矢に使用する矢であって、
俵形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、
円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、
前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が密着かつ固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部が前記ピンの先端部に隣接するように前記フィルムは装着され、前記ピンの俵形である先端部が錘として接続された矢。
【請求項4】
吹矢に使用する矢であって、
涙形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、
円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、
前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が密着かつ固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部が前記ピンの先端部に隣接するように前記フィルムは装着され、前記ピンの涙形である先端部が錘として接続された矢。
【請求項5】
吹矢に使用する矢であって、
矢じり形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、
円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、
前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が密着かつ固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部が前記ピンの先端部に隣接するように前記フィルムは装着され、前記ピンの矢じり形である先端部が錘として接続された矢。
【請求項6】
吹矢に使用する矢であって、
丸矢じり形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、
円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、
前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が密着かつ固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部が前記ピンの先端部に隣接するように前記フィルムは装着され、前記ピンの丸矢じり形である先端部が錘として接続された矢。
【請求項7】
前記支持部の最後尾に衝撃吸収部が設けられている請求項1~6のいずれか1項記載の矢。
【請求項8】
前記衝撃吸収部は、前記支持部の最後尾に取り付けられた複数の線状体と当該線状体の後方に設けられた柱状体とからなる請求項7記載の矢。
【請求項9】
前記フィルムは円錐形に巻かれたときのフィルムの幅方向端部同士の重なりしろが、フィルム全長の、後端から5分の1の部分で1cm以内であり、先端に向かって徐々に幅広になって中央部で最も幅広であり、先端にいくにつれて徐々に二重以上に重なっていく形状である請求項1~8のいずれか1項記載の矢。
【請求項10】
前記フィルムは向かい合う二辺が長辺になっている略長尺状のオリエンテッドポリプロピレンシートからなり、前記長辺のうちの一方が円弧状に湾曲していて更に当該長辺に隣接する角部に円弧状の湾曲部が形成されており、前記長辺のうちの他方が略直線状に形成されている請求項1~9のいずれか1項記載の矢。
【請求項11】
前記矢は全長が200mm±5mmであり、円錐形に巻かれたフィルムの後端の外径が13.0mm±0.2mmである請求項1~10のいずれか1項記載の矢。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹矢に使用する矢に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、矢を吹く際の呼吸が腹式呼吸であり健康によいという理由から、スポーツや娯楽としての吹矢が普及している。
【0003】
スポーツや娯楽としての吹矢は、図12図13に示すように、フィルムを円錐状に巻いてフィルムの先端に錘としてのピンを差し込んだ矢2を用いて行われ、この矢2を筒40に入れ、筒40の後端部から筒40内に息を吹き込むことにより、矢2を発射させてウレタン製の的38に当てる。矢としては、略長方形状のプラスチックフィルムを円錐状に巻いてその先端に錘としてのピンを脚の部分から差し込み固着したものが用いられている(例えば、特許文献1参照、図1)。ピンは、一般に球形又は楕円形の頭部と該頭部から延びる円柱部とからなる金属製のものが用いられる。円柱部の最後尾がピンの後端部となる。
【0004】
ピンは円柱部の後端部から円錐状フィルムの先端部に差し込まれる。その結果、矢は先端部側から頭部、円錐状フィルムの順に形成される。ピンの円柱部はすべて円錐状フィルムの内部に収容される。図1では、丸ピン4の円柱部が円錐状フィルム6の先端に差し込まれた矢2が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4910074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
円錐状フィルムは円錐形をしているため、後端部にいくにつれて内径が大きくなっている。円柱部は円柱形状なので横断方向の径がどこも同一サイズである。このため、円柱部を収容した部分の円錐状フィルムでは、円柱部と円錐状フィルム内面との距離が後方にいくにつれて大きくなっている。すなわち、ピンと円錐状フィルムとの隙間が後方にいくにしたがって広くなっている。
【0007】
通常、ピンと円錐状フィルム内面とは接着剤によって接着されている。その際、飛行中にブレが出ないように、すなわち、矢の飛行性能を確保するためには、ピンの軸心を円錐状フィルムの中心線と同軸になるようにピンを円錐状フィルムに取り付けて接着する必要がある。図1のように、ピンと円錐状フィルムとの隙間は後方にいくにつれて広くなっているので、接着剤の分量も後方にいくにつれて多くなる。
【0008】
一方、ピンの円柱部における後方の部分にゴムなどの弾性部材を巻いて円錐状フィルムとの密着性を良くする方法が採られることもある。
【0009】
これらの場合に、ピンを円錐状フィルム先端の軸心に据えつつ接着剤の分量をピンの先端部と後端部とでピン周りで調整したり、ゴムをピン周りに均一に巻くことは熟練の技術が必要であり均質な矢を大量生産する要請に対しては困難な点があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、飛行性能が優れ、困難なく量産することができる矢を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、吹矢に使用する矢であって、頭部と該頭部から後方に延びる棒状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が収容され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致又は略一致しており、前記フィルムの先端部に連続して前記ピンの頭部が錘として接続された矢、を提供する。
【0012】
本発明によれば、ピンとフィルムとの軸心が一致し、ピン表面とフィルム内側面とが密着する。
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、吹矢に使用する矢であって、球形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部に連続して前記ピンの球形である先端部が錘として接続された矢、を提供する。
【0014】
本発明によれば、ピンとフィルムとの軸心が一致し、ピン表面とフィルム内側面とが密着する。
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために、吹矢に使用する矢であって、俵形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部に連続して前記ピンの俵形である先端部が錘として接続された矢、を提供する。
【0016】
本発明によれば、ピンとフィルムとの軸心が一致し、ピン表面とフィルム内側面とが密着する。
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために、吹矢に使用する矢であって、涙形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部に連続して前記ピンの涙形である先端部が錘として接続された矢、を提供する。
【0018】
本発明によれば、ピンとフィルムとの軸心が一致し、ピン表面とフィルム内側面とが密着する。涙形とは先端がドーム状に形成されており、その両端部から後方へゆるやかな凸曲面が形成されている形状である。当該凸曲面は直線でもよい。
【0019】
本発明は、上記目的を達成するために、吹矢に使用する矢であって、矢じり形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部に連続して前記ピンの矢じり形である先端部が錘として接続された矢、を提供する。
【0020】
本発明によれば、ピンとフィルムとの軸心が一致し、ピン表面とフィルム内側面とが密着する。矢じり形とは前面が三角錐に近似した凸曲面形状であり、そこから後方へ向かって緩やかな曲面が形成され、支持部との接続点は垂直な平面が形成された形状である。
【0021】
本発明は、上記目的を達成するために、吹矢に使用する矢であって、丸矢じり形である先端部と該先端部から後方に延びる棒状かつ円錐台形状の支持部とからなるピンであって、該支持部は横断面の直径が後方に向かうにしたがって徐々に大きくなるピンと、円錐形に巻かれたフィルムと、からなり、前記フィルムの先端部内側には前記ピンの支持部が固着され、前記ピンの支持部と前記フィルムとの径の拡大度合いは一致しており、前記フィルムの先端部に連続して前記ピンの丸矢じり形である先端部が錘として接続された矢、を提供する。
【0022】
本発明によれば、ピンとフィルムとの軸心が一致し、ピン表面とフィルム内側面とが密着する。丸矢じり形とは前面は前記矢じり形と同形状であるが、側面が途中から支持部との接続点にかけてすぼむ形状の凸曲面が形成された形状である。
【0023】
本発明の別の態様においては、前記支持部の最後尾に衝撃吸収部が設けられていることが好ましい。
【0024】
前記衝撃吸収部は、前記支持部の最後尾に取り付けられたクロス状に配置された複数の線状体と当該線状体の後方に設けられた柱状体とからなることが好ましい。
【0025】
本発明は、前記フィルムは円錐形に巻かれたときのフィルムの幅方向端部同士の重なりしろが、フィルム全長の、後端から5分の1の部分で1cm以内であり、先端に向かって徐々に幅広になって中央部で最も幅広であり、先端にいくにつれて徐々に二重以上に重なっていく形状であることが好ましい。
【0026】
本発明は、前記フィルムは向かい合う二辺が長辺になっている略長尺状のオリエンテッドポリプロピレンシートからなり、前記長辺のうちの一方が円弧状に湾曲していて更に当該長辺に隣接する角部に円弧状の湾曲部が形成されており、前記長辺のうちの他方が略直線状に形成されていることが好ましい。
【0027】
本発明は、前記矢は全長が200mm±5mmであり、円錐形に巻かれたフィルムの後端の外径が13.0mm±0.2mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ピンと円錐状フィルムとが軸心が一致し、ピンの支持部表面と円錐状フィルム内側面とを容易に密着させることができるので、飛行中のブレの少ない的中率の高い矢を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来の矢の縦断面図
図2】本発明に係る矢で第1実施形態のピンをフィルムに装着させたものの全体斜視図
図3】第1実施形態のピンをフィルムに装着させたものの縦断面図
図4】第1実施形態のピンの拡大側面図
図5】第2実施形態のピンの拡大側面図
図6】第3実施形態のピンの拡大側面図
図7】第4実施形態のピンの拡大側面図
図8】第5実施形態のピンの拡大側面図
図9】第4実施形態のピンの最後尾に衝撃吸収部を設けた変形例の側面図
図10】フィルムの展開図
図11】治具の側面図
図12】的の正面図
図13】吹矢の筒に矢を挿入しようとするときの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0031】
図2は本発明に係る矢8で第1実施形態のピン10を円錐形に巻かれたフィルム16に装着させたものの全体斜視図、図3はその縦断面図である。図4は、第1実施形態のピン10の拡大側面図であり、各寸法は図4に示すとおりである。なお、本発明は記載の寸法に限定されるものではなく、寸法はあくまで一例である。
【0032】
ピン10は、図4に示すように、球形部12と、該球形部12と連続していて該球形部12から後方に延びる支持部14と、からなる。球形部12は略球形をしており、錘としての役割をもつ。球形部12の後尾には棒状かつ円錐台状の支持部14が連続して形成されている。支持部14は球形部12との接続部において断面円形であり後方に向かうにつれて側面からみて末広がり状に徐々に径が大きくなる横断面円形の部材、すなわち、円錐台状の部材である。支持部14の、球形部12との接続部における径は球形部12の径よりも小さい。本形態では、球形部12の径が3.3mmであるのに対し、支持部14の、球形部12との接続部における径は2mmになっている。支持部14の長さは25mmであり、最後尾の径は3.41mmであり、これは接続部における径2mmより大きい。すなわち、支持部の径は末広がりになっている。
【0033】
ピン10は材質がプラスチック又は金属であるが、例えばポリアミドを用いることができる。この場合、弾力性をもたせることが可能である。ピン10は一例として3Dプリンタで作成可能であり、所望の寸法を3Dプリンタに入力すると入力した通りの寸法の製品が出来上がるので、均質なものを大量に生産することができる。ピン10は、軸心から錐面の母線までの距離を横断方向の錐表面では一致させる必要があるが、3Dプリンタではこの要請に容易に応えることができる。
【0034】
図10はフィルム16の展開図である。
【0035】
フィルム16は、図10に示すように、向かい合う二辺が長辺になっている略長尺状のオリエンテッドポリプロピレンシートからなる。前記長辺のうちの一方がゆるやかな円弧状に内側に湾曲している円弧部28となっている。円弧部28に隣接する角部には円弧部28よりもカーブが急な円弧状の湾曲部30が形成されている。円弧部28と向かい合う長辺は、略直線状に形成されている直線部32となっている。直線部32の両端の角部は、角が切断された形状になっている。また、円弧部28の、湾曲部30と逆の隣接部も角が切断された形状になっている。手元辺34は曲線、並びに先端辺36は直線状になっている。直線部32と先端辺36の裏面の縁には糊が付されていて裏面のシールカバーを剥がせば付着できるようになっている。
【0036】
次に、矢8を作成する方法を説明する。
【0037】
図11は、フィルム16を巻く際に用いる金属製で円錐形の治具42の側面図である。治具42の先端から後端への径の拡大度合いは支持部14の先端から後端への径の拡大度合いと同一である。この“同一”は製造上の誤差範囲を含む。フィルム16は治具42を用いて円錐形に巻いていく。まず、手元辺34を治具42に巻く。その際にピン10を治具42の先端部に保持する。次に、ピン10を起点にしてフィルム16を巻いていき、巻いた部分を押えて治具42をフィルム16を巻いていく方向に回転させていく。巻いた状態の最先端部は湾曲部30が円周を形成した状態になる。ピン10を先端に装着させた状態で巻き終わる。この結果、図3に示すように球形部12がフィルム16の先端部と隣接する。
【0038】
フィルム16の直線部32と先端辺36の裏面の縁には糊が付されているので巻いていくときにフィルム16が支持部14を囲むようにしてかつ支持部14に付着しながら巻かれていき、フィルム16の他の箇所をも付着させながら巻かれて円錐形を形成していく。支持部14は横断面丸径で後方にいくにつれて径が大きくなる側面末広がり状に形成されていてこの径が大きくなる比率がフィルム16の後方にいくにつれての径が大きくなる比率と整合している。よって、支持部14とフィルム16との軸心が一致し、かつ、支持部14はフィルム16内面に密着する。このように支持部14とフィルム16とが密着するため、従来、フィルムにピンを取り付ける際に要していた接着剤を使用せずに済み、フィルム16の裏面の前記箇所に付されている糊のみで密着化が図れる。もちろん、支持部14とフィルム16との接着は接着剤を用いてもよいし、なんら接着剤や糊などを用いなくても良い。
【0039】
なお、フィルム16は円錐形に巻かれたときの円弧部28と直線部32との重なりしろは、フィルム16全長の、後端から5分の1の部分で1cm以内であるが、先端に向かって徐々に幅広になって長手方向中央部で最も幅広であり、先端にいくにつれて徐々に何重にも重なっていく状態になっている。
【0040】
上述のフィルム形状を採用することによって、上述のように重なりしろを小さくすることができた。支持部14とフィルム16との上記密着によって、支持部14の軸心とフィルム16の軸心を一致させることができたので、フィルムの重なりしろを小さくできたことと相俟って、フィルムの上下方向の重心を均等にすることができて飛行中のブレが小さくなり、的への的中率が向上した。
【0041】
矢8は全長が200mm±5mmであり、円錐形に巻かれたフィルム16の後端の外径が13.0mm±0.2mmである。
【0042】
次に本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態と同様の部分は同一の番号を付してその説明を省略する。
【0043】
図5は、第2実施形態のピン110の拡大側面図である。第1実施形態とは支持部14の構成は同じであるが、頭部の形状が俵形となっている点が異なる。すなわち、ピン110は、俵形部18と、該俵形部18と連続していて該俵形部18から後方に延びる支持部14と、からなる。俵形部18は略俵形をしており、やはり錘の役割をもつ。すなわち、長手方向断面が略楕円形となっている。俵形部18の後尾には棒状の支持部14が連続して形成されている。矢全体の重心を前にもってきたいときはこの俵形部18を有するピンを用いることができる。
【0044】
次に本発明の第3実施形態を説明する。第1実施形態と同様の部分は同一の番号を付してその説明を省略する。
【0045】
図6は、第3実施形態のピン210の拡大側面図である。第1実施形態とは支持部14の構成は同じであるが、頭部の形状が涙形となっている点が異なる。すなわち、ピン210は、涙形部20と、該涙形部20と連続していて該涙形部20から後方に延びる支持部14と、からなる。涙形部20は錘の役割を有し、図6に示されるように前面がゆるやかな凸曲面で形成されそこから後方へ向かって急な曲面が形成されさらにその後方へはゆるやかな凸曲面が形成されている。涙形部20の後尾には棒状の支持部14が連続して形成されている。このピン210は、支持部14との接続部に近接する地点がゆるやかな凸曲面で形成されているので、的に刺さった矢を引き抜くときに抵抗小さく容易に抜ける。
【0046】
次に本発明の第4実施形態を説明する。第1実施形態と同様の部分は同一の番号を付してその説明を省略する。
【0047】
図7は、第4実施形態のピン310の拡大側面図である。第1実施形態とは支持部14の構成は同じであるが、頭部の形状が矢じり形となっている点が異なる。すなわち、ピン310は、矢じり形部22と、該矢じり形部22と連続していて該矢じり形部22から後方に延びる支持部14と、からなる。矢じり形部22は錘の役割を有し、図7に示されるように前面が凸曲面で形成されそこから後方へ向かって緩やかな曲面が形成され支持部14との接続点は垂直な平面が形成されている。矢じり形部22の後尾には棒状の支持部14が連続して形成されている。このピン310は、矢じり部22の、支持部14との接続点直前部位が垂直な平面で形成されているので、矢が的に刺さった際にフィルム先端部がその垂直な平面に当たってフィルム先端部がそれ以上前へ移動することを防止できる。吹いた矢は時速100km程度の高速でウレタン製の的にぶつかり刺さるので、フィルムが支持部14に糊着けされていても的にぶつかった衝撃で慣性の法則によりフィルム先端部が多少前にずれる。その壁となるのが矢じり部22の上記垂直な平面である。
【0048】
次に本発明の第5実施形態を説明する。第1実施形態と同様の部分は同一の番号を付してその説明を省略する。
【0049】
図8は、第5実施形態のピン410の拡大側面図である。第1実施形態とは支持部14の構成は同じであるが、頭部の形状が丸矢じり形となっている点が異なる。すなわち、ピン410は、丸矢じり形部24と、該丸矢じり形部24と連続していて該丸矢じり形部24から後方に延びる支持部14と、からなる。丸矢じり形部24は錘の役割を有し、図8に示されるように前面が凸曲面で形成されそこから後方へ向かって緩やかな曲面が形成され支持部14との接続点にかけて徐々にすぼむ形状の凸曲面が形成されている。丸矢じり形部24の後尾には棒状の支持部14が連続して形成されている。このピン410は、丸矢じり形部24の、支持部14との接続点直前部位がすぼむ形状の曲面で形成されているので、矢が的に刺さった際にフィルム先端部がその曲面に当たってフィルム先端部がそれ以上前へ移動することを防止できる。吹いた矢は時速100km程度の高速でウレタン製の的にぶつかり刺さるので、フィルムが支持部14に糊着けされていても的にぶつかった衝撃で慣性の法則によりフィルム先端部が多少前にずれる。その壁となるのが丸矢じり形部24の上記すぼむ形状の曲面である。また、この曲面は矢を的から引き抜くときに抵抗が小さくて済み、矢を引き抜き易いという利点もある。
【0050】
次に本発明の第4実施形態の変形例を説明する。第4実施形態と同様の部分は同一の番号を付してその説明を省略する。
【0051】
図9は、この変形例のピン510の拡大側面図である。第4実施形態とは矢じり形部22及び支持部14の構成は同じであるが、支持部14の後端に衝撃吸収部26が設けられている点が異なる。衝撃吸収部26は衝撃吸収の役割を果たし、支持部14の後端から延びる3本の線状体が捩じり構造でクロスしてこのクロス部分の先に柱状体が形成されている構造になっている。衝撃吸収部26はピン510と同一素材で作成可能である。この構造により、的に刺さっている矢に次に吹いた矢が重なって前の矢のフィルム内の奥深くに食い込むダブル突入の状態になっても、すなわち、後に発射した矢が前の矢のフィルム内のピン後端に当たっても、衝撃吸収部26が衝撃を吸収し、前に放った矢を引き続き使用可能にさせることができる。なお、線状体は3本に限定されるものではなく、例えば2本でも4本でもよい。
【符号の説明】
【0052】
8…矢、10…ピン、12…球形部、14…支持部、16…フィルム、18…俵形部、20…涙形部、22…矢じり形部、24…丸矢じり形部、26…衝撃吸収部、28…円弧部、30…湾曲部、32…直線部、34…手元辺、36…先端辺、110…ピン(第2実施形態)、210…ピン(第3実施形態)、310…ピン(第4実施形態)、410…ピン(第5実施形態)、510…ピン(第4実施形態の変形例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13