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特許7191812光ファイバの融着接続装置及び融着接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】光ファイバの融着接続装置及び融着接続方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20221212BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G02B6/255
G02B6/02 461
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019235945
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105646
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-11-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」技術課題II「マルチコア大容量光伝送システム技術」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(74)【代理人】
【識別番号】100166660
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 晴人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】相馬 大樹
(72)【発明者】
【氏名】別府 翔平
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-026711(JP,A)
【文献】特開昭61-194411(JP,A)
【文献】特開昭51-143341(JP,A)
【文献】特開2015-004762(JP,A)
【文献】米国特許第04618212(US,A)
【文献】田中正俊、他,側方入出射を利用したマルチコア光ファイバ接続の軸回転調整,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.113、No.306,電子情報通信学会,2013年11月14日,pp.37-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/02
G02B 6/24 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/36 - 6/43
G02B 6/46 - 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアを有する光ファイバの融着接続を行う融着接続装置であって、
第1光ファイバの端面と第2光ファイバの端面とが対向し、かつ、前記第1光ファイバの側方から前記第1光ファイバのコア内に光が入射可能になるよう前記第1光ファイバが曲げられた状態で、かつ、前記第2光ファイバが、前記第1光ファイバの前記端面の中心と前記第2光ファイバの前記端面の中心とを通る軸に対して、前記第2光ファイバにおけるコアとクラッドとの間の臨界角を超えない角度で曲げられた状態で、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを保持する保持手段と、
前記第1光ファイバにおける曲げられている部分の側方から、前記第2光ファイバの方向へ伝搬する光を前記第1光ファイバに入力する光入力手段と、
前記光入力手段によって前記第1光ファイバに光が入力されている間に、前記第2光ファイバのクラッド内を伝搬して、前記第2光ファイバにおける曲げられている部分から出力される光のパワーを測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定される前記パワーに基づいて、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバの少なくとも一方を、光ファイバの中心軸を回転軸として回転させる回転制御を行うことで、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの間でコアの位置合わせを行う制御手段と、
前記位置合わせが行われた状態で、前記第1光ファイバの前記端面と前記第2光ファイバの前記端面との融着接続を行う接続手段と、
を備えることを特徴とする融着接続装置。
【請求項2】
前記保持手段は、前記第1光ファイバの中心軸と前記第2光ファイバの中心軸とが一致した状態で、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の融着接続装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記第1光ファイバの前記端面の中心と前記第2光ファイバの前記端面の中心とを通る軸に対して所定の角度を超える角度で前記第1光ファイバが曲げられた状態で、前記第1光ファイバを保持する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の融着接続装置。
【請求項4】
前記所定の角度は、前記第1光ファイバにおけるコアとクラッドとの間の臨界角である
ことを特徴とする請求項3に記載の融着接続装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記測定手段によって測定される前記パワーが最小になるように前記回転制御を行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の融着接続装置。
【請求項6】
前記第1光ファイバにおいて前記光入力手段によって光が入力される位置と前記端面との間に、前記第1光ファイバのクラッドを伝搬する光を外部に出力するためのマッチングオイル又はガラス材が付着させられている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の融着接続装置。
【請求項7】
前記光入力手段から出力される光を所定の変調方式で変調する変調手段を更に備え、
前記測定手段は、前記第2光ファイバのクラッド内を伝搬する光から前記所定の変調方式で変調された光を検出し、当該検出した光のパワーを測定する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の融着接続装置。
【請求項8】
複数のコアを有する光ファイバの融着接続方法であって、
第1光ファイバの端面と第2光ファイバの端面とが対向し、かつ、前記第1光ファイバの側方から前記第1光ファイバのコア内に光が入射可能になるよう前記第1光ファイバが曲げられた状態で、かつ、前記第2光ファイバが、前記第1光ファイバの前記端面の中心と前記第2光ファイバの前記端面の中心とを通る軸に対して、前記第2光ファイバにおけるコアとクラッドとの間の臨界角を超えない角度で曲げられた状態で、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを保持する工程と、
前記第1光ファイバにおける曲げられている部分の側方から、前記第2光ファイバの方向へ伝搬する光を前記第1光ファイバに入力する工程と、
前記第1光ファイバに光が入力されている間に、前記第2光ファイバのクラッド内を伝搬して、前記第2光ファイバにおける曲げられている部分から出力される光のパワーを測定する工程と、
前記測定されるパワーに基づいて、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバの少なくとも一方を、光ファイバの中心軸を回転軸として回転させる回転制御を行うことで、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの間でコアの位置合わせを行う工程と、
前記位置合わせが行われた状態で、前記第1光ファイバの前記端面と前記第2光ファイバの前記端面との融着接続を行う工程と、
を含むことを特徴とする融着接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコアを有する光ファイバの融着接続を行う融着接続装置及び融着接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のコアを有する光ファイバを融着接続する場合、接続対象の一方の光ファイバの端面と他方の光ファイバの端面との間でコアの位置合わせ(調心)を行う必要がある。このような調心技術として、一方の光ファイバのコアに当該光ファイバの終端から光を入力し、他方の光ファイバのコアの終端から出力される光のパワーを測定し、その測定結果に基づいてコアの位置合わせを行う能動調心(アクティブ調心)がある(例えば、特許文献1)。能動調心は、接続対象の光ファイバをその中心軸を回転軸として相対的に回転させた際に、接続対象の光ファイバのコア同士の位置が一致すると光パワーが極大となることに基づいて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-54116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の能動調心では、接続対象の光ファイバ間における実際の光の伝搬状況を確認しながらコアの位置合わせを行うことが可能であり、適切な調心を実現することが期待できる。しかし、能動調心では、多くの場合、光パワーを測定する場所(光ファイバの終端点)が、光ファイバを接続する場所(例えば、敷設済みの光ファイバに対して接続を行う場合には電柱の上等の場所)から遠く離れている。この場合、光ファイバの終端点に測定機器を配置して光パワーを測定することは、光ファイバの接続を行う場所における作業には適さないため現実的ではない。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、光ファイバの融着接続を行う位置から離れた位置に測定機器を配置することなく、接続対象の光ファイバの調心及び融着接続を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の係る融着接続装置は、複数のコアを有する光ファイバの融着接続を行う融着接続装置であって、第1光ファイバの端面と第2光ファイバの端面とが対向し、かつ、前記第1光ファイバの側方から前記第1光ファイバのコア内に光が入射可能になるよう前記第1光ファイバが曲げられた状態で、かつ、前記第2光ファイバが、前記第1光ファイバの前記端面の中心と前記第2光ファイバの前記端面の中心とを通る軸に対して、前記第2光ファイバにおけるコアとクラッドとの間の臨界角を超えない角度で曲げられた状態で、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとを保持する保持手段と、前記第1光ファイバにおける曲げられている部分の側方から、前記第2光ファイバの方向へ伝搬する光を前記第1光ファイバに入力する光入力手段と、前記光入力手段によって前記第1光ファイバに光が入力されている間に、前記第2光ファイバのクラッド内を伝搬して、前記第2光ファイバにおける曲げられている部分から出力される光のパワーを測定する測定手段と、前記測定手段によって測定される前記パワーに基づいて、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバの少なくとも一方を、光ファイバの中心軸を回転軸として回転させる回転制御を行うことで、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの間でコアの位置合わせを行う制御手段と、前記位置合わせが行われた状態で、前記第1光ファイバの前記端面と前記第2光ファイバの前記端面との融着接続を行う接続手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ファイバの融着接続を行う位置から離れた位置に測定機器を配置することなく、接続対象の光ファイバの調心及び融着接続を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】融着接続装置の構成例を示す図(実施例1)。
図2】2つの光ファイバのコアの位置関係の例を示す図。
図3】光ファイバの融着接続処理の手順を示すフローチャート。
図4】光ファイバから出力される光のパワーの測定例を示す図。
図5】融着接続装置の構成例を示す図(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一又は同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
[実施例1]
まず、図1乃至図4を参照して、本発明の実施例1について説明する。
【0011】
<融着接続装置>
図1は、本発明の実施例1に係る、複数のコアを有する光ファイバの融着接続を行う融着接続装置の構成例を示す図である。図1に示す融着接続装置は、第1光ファイバ(FB1)と第2光ファイバ(FB2)との融着接続を行う。本実施例では、FB1及びFB2は、ファイバ断面内に複数のコアを有するマルチコアファイバ(MCF)で構成される。
【0012】
融着接続装置は、制御部10、光入力部20、測定部30、及び調心接続部40を備えている。制御部10は、装置全体の動作を制御する。調心接続部40は、FB1とFB2との間でコアの位置合わせを行うために、FB1及びFB2の少なくとも一方を、光ファイバの中心軸を回転軸として回転させる調心機能を有する。調心接続部40は更に、FB1の端面と、FB1の端面と対向して配置されたFB2の端面との融着接続を行う接続機能を有する。
【0013】
融着接続装置は、FB1及びFB2の接続対象の端面同士が対向して配置された状態で、FB1に測定用の光を光源から入力し、FB1からFB2に伝搬してFB2から出力される光のパワーを測定する。更に、融着接続装置は、光パワーの測定結果に基づいて、FB1とFB2との間でコアの位置合わせ(即ち、能動調心)を行い、当該位置合わせが行われた状態で、FB1の端面とFB2との端面との融着接続を行う。
【0014】
融着接続装置は、作業者(ユーザ)によってセットされる、接続対象のFB1及びFB2を保持する保持部(図示せず)を備えている。この保持部は、図1に示すように、調心接続部40による融着接続の対象となるFB1の端面とFB2の端面とが対向した状態で、FB1とFB2とを保持する。本実施例では更に、保持部は、FB1の側方からFB1のコア内に光が入射可能になるようFB1が曲げられた状態で、FB1及びFB2を保持する。
【0015】
光入力部20は、FB1に入力される測定用の光を出力する光源を含む。上述のように、FB1は、FB1の側方から照射された光がFB1のコア内に入射可能となるように曲げられた状態で保持されている。具体的には、FB1は、FB1の端面の中心とFB2の端面の中心を通る軸に対して所定の角度を超える角度で曲げられた状態で保持されている。この所定の角度は、FB1におけるコアとクラッドとの間の臨界角に定められる。これにより、FB1における曲げられている部分の側方からFB1に光が照射された場合に、FB1のコア内に光が入射可能になる。
【0016】
図1に示すように、本実施例の光入力部20は、FB1における曲げられている部分の側方から、FB2の方向へ伝搬する光をFB1に入力するように構成されている。FB1に入力された光は、FB1のコア内に入射して伝搬し、FB1の端面からFB2の方向へ出射する。FB1の端面から出射した光は、対向して配置されているFB2の端面からFB2内(FB2のコア内又はクラッド内)に入射して伝搬する。
【0017】
測定部30は、FB2に設けられた光出力部31から外部に出力される光のパワーを測定するように構成されている。測定部30は、入射した光を電気に変換するための光電気変換素子を備えており、本実施例では一例としてフォトダイオード(PD)を備えている。測定部30は、PDからの出力信号に基づいて、PDに入射した光のパワーを測定し、その測定結果を制御部10へ出力する。
【0018】
本実施例の融着接続装置において、FB2は、図1に示すように、FB1の端面の中心とFB2の端面の中心を通る軸に対して、FB2におけるコアとクラッドとの間の臨界角を超えない角度で曲げられた状態で保持されている。これにより、光出力部31に相当する、FB2における曲げられている部分から、FB2のコア内を伝搬する光を出力させずに、FB2のクラッド内を伝搬する光を外部に出力させることが可能になる。
【0019】
なお、上述のようにFB2の一部を曲げることなく光出力部31を構成することも可能である。例えば、光出力部31が設けられるFB2の一部に、FB2のクラッドを伝搬する光を外部に出力するためのマッチングオイル又はガラス材が付着させられてもよい。この場合、光出力部31を構成するマッチングオイル又はガラス材として、FB2のクラッドの屈折率に近い屈折率を有するものが採用される。これにより、光出力部31から、FB2のコア内を伝搬する光を出力させずに、FB2のクラッド内を伝搬する光を外部に出力せることが可能になる。
【0020】
本実施例において、測定部30は、光入力部20によってFB1に光が入力されている間に、光出力部31から出力される、FB2のクラッド内を伝搬する光のパワーを測定する。測定部30によって測定される光パワーは、FB1の端面におけるコアの位置と、FB2の端面におけるコアの位置との間の相対的な位置関係に依存して変化する。
【0021】
ここで、図2は、FB1とFB2とのコアの位置関係の例を示す図である。図2(A)に示すように、FB1とFB2との間でコアの位置が一致していない場合、FB1の端面においてコアから出射した光は主にFB2のクラッドに入射することになる。その結果、測定部30によって測定される光パワーが増加する。一方、図2(B)に示すように、FB1とFB2との間でコアの位置が一致した場合、FB1の端面においてコアから出射した光は主にFB2のコアに入射することになる。その結果、FB1のコアから出射した光のうち、FB2のクラッドに漏洩する光のパワーが少なくなり、測定部30によって測定される光パワーが減少する。
【0022】
そこで、本実施例では、制御部10は、FB1のコアを伝搬してFB2のクラッドに漏洩する光のパワーの測定結果に基づいて、FB1及びFB2の少なくとも一方の回転制御を行うことで、FB1とFB2との間でコアの位置合わせ(調心)を行う。具体的には、制御部10は、光入力部20からFB1に光を入力させている間に、FB1及びFB2の少なくとも一方を回転させながら、FB2のクラッドを伝搬する光のパワーの測定値の変動をモニタリングする。更に、制御部10は、測定部30によって測定される光パワーが最小となるようにFB1及びFB2の少なくとも一方の回転制御を行う。なお、このような光ファイバの回転制御によるコアの位置合わせが可能になるように、本実施例の融着接続装置(保持部)は、FB1の中心軸とFB2の中心軸とが一致した状態で、FB1とFB2とを保持している。
【0023】
<処理手順>
図3は、融着接続装置において行われる光ファイバの融着接続処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下では、FB2の回転制御によりFB1とFB2との間でコアの調心を行う例について説明する。
【0024】
まずS31で、融着接続装置(保持部)は、作業者(ユーザ)によってセットされる、接続対象のFB1及びFB2を保持する。その際、保持部は、FB1の端面とFB2の端面とが対向し、かつ、FB1の側方からFB1のコア内に光が入射可能になるようFB1が曲げられた状態で、FB1及びFB2を保持する。
【0025】
次にS32で、制御部10は、光入力部20の光源からFB1に光が入力されるように光入力部20を制御する。その後、S33で、制御部10は、調心接続部40を用いてFB2の回転制御を行いながら、FB2から出力される光のパワーの測定値を測定部30から取得する。図4は、FB2から出力される光のパワーの測定例を示しており、横軸はFB2の回転角θ、縦軸は光パワーの測定値Pに相当する。図4の例では、FB2の回転角θ=θmである場合に、FB1とFB2との間でコアの位置が一致し、FB2から出力される光のパワーの測定値Pが最小値Pmとなっている。
【0026】
S34で、制御部10は、S33において得られた測定値Pに基づいて、測定値Pが最小となるFB2の回転角θmを特定する。更に、制御部10は、FB2の回転角がθmとなるようにFB2の回転制御を行うことで、FB1とFB1との間でコアの位置合わせを行う。その後、S35で、制御部10は、S34におけるコアの位置合わせが行われた状態で、FB1の端面とFB2の端面との融着接続を行うよう、調心接続部40を制御し、処理を終了する。
【0027】
以上説明したように、本実施例の融着接続装置は、FB1の端面とFB2の端面とが対向し、かつ、FB1の側方からFB1のコア内に光が入射可能になるようFB1が曲げられた状態で、FB1とFB2とを保持する。光入力部20は、FB1における曲げられている部分の側方から、FB2の方向へ伝搬する光をFB1に入力する。測定部30は、光入力部20によってFB1に光が入力されている間に、FB2のクラッド内を伝搬する光のパワーを測定する。制御部10は、測定部30によって測定される光パワーに基づいて、調心接続部40により、FB1及びFB2の少なくとも一方を光ファイバの中心軸を回転軸として回転させる回転制御を行うことで、FB1とFB2との間でコアの位置合わせを行う。調心接続部40は、コアの位置合わせが行われた状態で、FB1の端面とFB2の端面との融着接続を行う。
【0028】
本実施例によれば、接続対象の一方の光ファイバ(FB1)の終端から光を入力するのではなく、当該光ファイバの側方から光を入力する。更に、他方の光ファイバ(FB2)の終端から出力される光のパワーを測定するのではなく、当該光ファイバの側方から光を出力させてパワーの測定を行う。このため、光の入力を行う位置と光の出力及び測定を行う位置とを、光ファイバの融着接続を行う位置の近くに配置することが可能である。即ち、本実施例によれば、光ファイバの融着接続を行う位置から離れた位置に測定機器を配置することなく、接続対象の光ファイバの調心及び融着接続を行うことが可能になる。
【0029】
[実施例2]
実施例2では、実施例1における測定部30による光パワーの測定値の品質を高める例について説明する。以下では、実施例1と共通する部分については説明を省略する。
【0030】
上述のように、制御部10は、測定部30による光パワーの測定値に基づいてFB1及びFB2の少なくとも一方の回転制御を行うことで、FB1とFB2との間でコアの位置合わせを行う。しかし、測定部30による測定対象となる、FB2のクラッドを伝搬する光には、FB1のコアから出力される光だけでなく、FB1のクラッドから出力される光が雑音成分として含まれうる。このため、FB1のクラッドを伝搬する光をできるだけ減衰させた状態で、測定部30による測定が行われることが望ましい。
【0031】
そこで、本実施例の融着接続装置には、図5に示すように、FB1において光入力部20によって光が入力される位置と端面との間に、FB1のクラッドを伝搬する光を外部に出力するための光出力部50が設けられてもよい。この光出力部50には、例えば、FB1のクラッドを伝搬する光を外部に出力するための(FB2のクラッドの屈折率に近い屈折率を有する)マッチングオイル又はガラス材が付着させられる。
【0032】
このようにして、FB1のクラッドを伝搬する光の少なくとも一部が光出力部50から出力される。これにより、FB1のクラッドを伝搬してFB2のクラッドに入射する光が減衰し、測定部30による光パワーの測定値における信号対雑音比(SNR)を高めることが可能になる。その結果、制御部10による、測定部30による光パワーの測定値に基づく、FB1とFB2との間のコアの位置合わせの精度を高めることが可能になる。
【0033】
また、FB2のクラッドを伝搬する光には、光入力部20の光源からの光以外の外光が雑音成分として含まれうる。このため、本実施例の融着接続装置は、図5に示すように、このような雑音成分を低減するために、光入力部20から出力される光を所定の変調方式で変調する変調部60を更に備えてもよい。変調部60は、例えば同期変調装置(ロックインアンプ)で構成されうる。この場合、測定部30は、FB2のクラッド内を伝搬する光から、所定の変調方式で変調された光を検出し、当該検出した光のパワーを測定する。これにより、測定部30による光パワーの測定値におけるSNRを更に高めることが可能になる。その結果、制御部10による、測定部30による光パワーの測定値に基づく、FB1とFB2との間のコアの位置合わせの精度を高めることが可能になる。
【0034】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
10:制御部、20:光入力部、30:測定部、31:光出力部、40:調心接続部、50:光出力部、60:変調部
図1
図2
図3
図4
図5