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特許7191813急性心不全に罹患している対象におけるうっ血を評価するためのアドレノメデュリン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】急性心不全に罹患している対象におけるうっ血を評価するためのアドレノメデュリン
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20221212BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221212BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221212BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221212BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20221212BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 D
A61K45/00
A61P9/00
C07K14/47
C07K16/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019500262
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2017067091
(87)【国際公開番号】W WO2018007588
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】16178725.4
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16199092.4
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514122524
【氏名又は名称】シュピーンゴテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベルクマン
(72)【発明者】
【氏名】アードリアン フォールス
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/216580(WO,A1)
【文献】特表2012-508386(JP,A)
【文献】特表2016-521351(JP,A)
【文献】Matthew F Yuyun,Prognostic value of human mature adrenomedullin in patients with acute myocardial infarction,J Cardiovasc Med (Hagerstown),2017年01月,Vol.18 No.1,Page.42-50
【文献】Matthew F Yuyun,Prognostic significance of adrenomedullin in patients with heart failure and with myocardial infarction,Review Am J Cardiol,2015年01月15日,Vol.115 No.7,Page.986-991
【文献】北村 和雄,高血圧:診断と治療の進歩 I.病因と病態 6.新しい降圧物質:アドレノメデュリン,日本内科学会雑誌,1995年01月10日,Vol.84 No.1,Page.36-40
【文献】北村 和雄,アドレノメデュリンの展開研究,心臓,2013年,Vol.45 No.12,Page.1496-1502
【文献】MIHAI GHEORGHIADE,CONGESTION IN ACUTE HEART FAILURE SYNDROMES: AN ESSENTIAL TARGET OF EVALUATION AND TREATMENT,AMERICAN JOURNAL OF MEDICINE,米国,2006年12月,VOL:119, NR:12,PAGE(S):S3 - S10,http://dx.doi.org/10.1016/j.amjmed.2006.09.011
【文献】Mihai Gheorghiade,Assessing and grading congestion in acute heart failure: a scientific statement from the acute heart failure committee of the heart failure association of the European Society of Cardiology and endorsed by the European Society of Intensive Care Medicine,Eur J Heart Fail,2010年03月30日,Vol.12 No.5,Page.423-433
【文献】SAYOKO NEGI,PROGNOSTIC IMPLICATION OF PHYSICAL SIGNS OF CONGESTION IN ACUTE HEART FAILURE PATIENTS AND ITS ASSOCIATION WITH STEADY-STATE BIOMARKER LEVELS,PLOS ONE,2014年05月06日,VOL:9, NR:5,PAGE(S):E96325/1-7,https://journals.plos.org/plosone/article/file?id=10.1371/journal.pone.0096325&type=printable
【文献】BRENT BOYER,BIOMARKER CHANGES DURING ACUTE HEART FAILURE TREATMENT,CONGESTIVE HEART FAILURE,米国,2011年10月17日,VOL:18, NR:2,PAGE(S):91 - 97,http://dx.doi.org/10.1111/j.1751-7133.2011.00256.x
【文献】MAISEL ALAN,MID-REGION PRO-HORMONE MARKERS FOR DIAGNOSIS AND PROGNOSIS IN ACUTE DYSPNEA RESULTS FROM THE BACH (BIOMARKERS IN ACUTE HEART FAILURE) TRIAL,JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY,2010年05月11日,VOL:55, NR:19,PAGE(S):2062 - 2076,https://reader.elsevier.com/reader/sd/pii/S0735109710009976?token=755D7212AFD071483012400C0D936089093D494C657C851A89F083771FE0F1D21C765B192C75F991D5DA4A6C444DCBA9
【文献】ETOH T,Plasma Proadrenomedullin N-Terminal 20 Peptide (PAMP) in Patients with Congestive Heart Failure,Hormone and Metabolic Research,1997年01月,Vol.29 No.1,Page.46-47
【文献】加藤丈司,アドレノメデュリン 病態と疾患からみたアドレノメデュリン 心不全,日本臨床,2004年09月28日,Vol.62 増刊号9,Page.269-272
【文献】北村和雄,病態バイオマーカーの''いま''IV.炎症・線維化 アドレノメデュリンと関連ペプチドの疾患マーカーとしての意義,カーとしての意義,2016年10月15日,Vol.67 No.5,Page.434-435
【文献】稲津東彦,心血管系ホルモン アドレノメデュリンと関連ペプチド,月刊内分泌・糖尿病・代謝内科,2013年04月28日,Vol.36 特別増刊号,Page.417-427
【文献】GEGENHUBER Alfons,Comparative Evaluation of B-Type Natriuretic Peptide, Mid-Regional Pro-A-type Natriuretic Peptide, Mid-Regional Pro-Adrenomedullin, and Copeptin to Predict 1-Year Mortality in Patients With Acute Destabilized Heart Failure,Journal of Cardiac Failure,2007年02月,Vol.13 No.1,Page.42-49
【文献】ISHIMURA Kimihiko,PLASMA ADRENOMEDULIN LEVELS AND LONG-TERM MORTALITY AND CARDIOVASCULAR OUTCOMES IN HYPERTENSIVE PATIENTS ,Abstracts. 21st Scientific Meeting of the International Society of Hypertension, 2006,2006年,Page.197 PM4-09-02
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
G01N 33/53
A61K 45/00
A61P 9/00
C07K 14/47
C07K 16/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるうっ血またはうっ血の程度を診断することを補助するための方法であって、
前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患しているか、あるいは、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患しており、配列番号4による成熟ADM-NH のレベルが、うっ血の早期代用マーカーとして使用され、
前記対象から得られた血液中の前記成熟ADM-NH のレベルが特定の閾値を上回ることが、前記対象はうっ血を有すると予測することを補助すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記成熟ADM-NH のアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つのバインダーを使用することによって前記成熟ADM-NH のレベルを測定することを含み、
前記成熟ADM-NH のレベルが特定の閾値を上回ることがうっ血を示し、うっ血の治療法の必要性を示し、前記成熟ADM-NH のレベルが特定の閾値を下回ることがうっ血の治療法の成功を示す、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記うっ血の程度が、うっ血スコアとして表され、前記うっ血スコアは、前記対象の、3つのパラメーターである頸静脈圧(JVP)、末梢浮腫、および起座呼吸を評価することによって得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記うっ血の程度が、臨床的うっ血スコアとして表される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記成熟ADM-NH のレベルが、前記成熟ADM-NH に対するバインダーを使用することによって測定される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バインダーが、前記成熟ADM-NH に結合する抗体、および抗体フラグメントを含む群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
列番号4による血漿成熟ADM-NHの閾値が50~100pg/mlの範囲から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記成熟ADM-NH の測定が、1人の患者において複数回実施される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記治療法が、利尿剤の投与、循環作動薬の投与、血管拡張薬の投与、限外濾過を含む群から選択される、請求項2~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の内容は:
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)うっ血の治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象における治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ための方法であり、
ここで、前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象であるか、あるいは、ここで、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片の計測が、うっ血の早期代用マーカーとして使用される方法である。
【背景技術】
【0002】
心不全(HF)は、心臓の構造または機能に関する問題が体の要求を満たすために十分な血流を供給できるその能力を損なったときに起こる心臓病である。それは、非常に多くの症状、特に、休息時もしくは労作中の息切れ(SOB)、肺うっ血またはくるぶしの腫脹などの体液鬱滞の兆候、および休息時の心臓の構造または機能の異常の客観的証拠の原因となり得る。
【0003】
心不全とは、心機能障害によって引き起こされる一連の症状および兆候を特徴とする臨床的な症候群である。それは、1~2%の有病率を有する、先進国における罹患率および死亡率の主な原因の1つである。心不全は、慢性HFと急性HFに分類できる。慢性HFに罹患している患者は、安定した慢性HF、慢性HFの兆候および症状の悪化、ならびに慢性HFの急性代償不全に分類される。急性心不全(AHF)は、緊急の治療法または入院加療の必要性をもたらす、心不全の兆候および症状の急激な発生と規定される。AHFは、急性デノボHF(これまでに心機能障害に罹患していない患者のAHFの新規発症)または慢性HFの急性代償不全と表すことができる。AHFは、65歳より高齢な成人における入院加療の主な原因である。過去数十年間にわたる治療学的な進歩に主に関連する慢性心不全患者の予後における顕著な改善にもかかわらず、患者が非代償性心不全のためにいったん入院すると、短期および長期の転帰は共に、非常に悪い状態のままである。AHFのために入院した患者の約25%が、退院後30日間以内に再入院を必要とし、同時に、入院加療後5年間を越えて生き残っている患者は<50%である。罹患患者の生存とクオリティオブライフを著しく低減することに加えて、ヘルスケアシステムに対するAHFの金銭的負担は甚大である。心不全ケアのトータルコストは、米国において2012年だけで310億ドルであると見積もられ、そして、このコストの大部分が院内ケアに関連している。このコストは、人々の高齢化により2030年には前例のない700億ドルまで増大すると予測される。
【0004】
心不全は、保存されたEF(HFpEF)を有するHFとしても知られている、典型的に≧50%とみなされる正常な左室駆出分画率(LVEF)を有する患者から、低減したEFを有するHF(HFrEF)としても知られている、典型的に<40%とみなされる低減したLVEFを有する患者までの、幅広い患者を含む。40~49%の範囲内にあるLVEFを有する患者は「グレー領域」に相当し、そしてそれは、中距離EFを有するHF(HFmrEF)と規定される(Ponikowski et al. 2016. European Heart Journal 18(8): 891-975)。
【0005】
院内状況におけるAHF治療の第一目的は、うっ血緩和(単純に言うと、過剰な細胞内および細胞外液の除去)ならびにうっ血の症状および兆候の軽減である。利尿剤は、依然としてAHFにおけるうっ血除去療法の主要な柱であり、ほとんどすべての入院患者がこの薬物群を受けている。循環作動薬および血管拡張薬のように;心拍出量を増強し、かつ、充満圧を低減する他のクラスの薬物療法が、選択された群の患者に与えられる。限外濾過はまた、一部の患者、特に利尿薬療法に対して適切に応答しない患者において検討されるであろう。
【0006】
患者(通常)は利尿薬療法に対して良好に応答するが、患者の相当な割合が、うっ血緩和および正常血液量状態の適切なレベルに達することなく(すなわち、残留うっ血)退院する。これは主として、うっ血の臨床的評価に関する現在のアプローチが不十分であるという事実に関連する。退院中の残留うっ血が、退院後の悪い転帰、特に再入院に関連していることを示す一貫した根拠がある。したがって、達成されるうっ血緩和のレベルおよび退院のタイミングの妥当性に関してなされる客観かつ最適な決定を容易にできる、より的確かつ信頼性があるうっ血の代替物に関する未達成の非常に大きな必要性が存在する。
【0007】
ペプチドアドレノメデュリン(ADM)は、ヒト褐色細胞腫から単離された、52個のアミノ酸を含む新規血圧降下ペプチドとして、最初に、Kitamuraらにより説明された(Kitamura et al. 1993. Biochemical and Biophysical Research Communications 192 (2): 553-560)。同じ年に、185個のアミノ酸を含む前駆体ペプチドをコードしているcDNAおよびこの前駆体ペプチドの完全アミノ酸配列も、説明された。とりわけN-末端に21個のアミノ酸のシグナル配列を含む、前駆体ペプチドは、「プレプロアドレノメデュリン」(pre-proADM)と称される。Pre-proADMは、185個のアミノ酸を含む。成熟ADM-NHは、配列番号4に示され、ADM-Glyは配列番号5に示されている。
【0008】
成熟アドレノメデュリンペプチドは、52個のアミノ酸を含み(配列番号4)、かつ、これはpre-proADMからタンパク質分解性切断により形成され、pre-proADMのアミノ酸95~146を含む、アミド化されたペプチドである(ADM-NH)。今日まで、pre-proADMの切断において形成されたペプチド断片の実質的にごくわずかな断片が、より的確に特徴づけられ、特に生理活性ペプチドのアドレノメデュリン(ADM)、および、20個のアミノ酸(22-41)を含むペプチドで、これにpre-proADMにおけるシグナルペプチドの21個のアミノ酸が続く「PAMP」である。さらに、ADMおよびPAMPの両方に関して、生理活性のある小断片が、さらに発見され、より詳細に調べられている。1993年のADMの発見および特徴決定は、活性の集中的研究および溢れるような刊行物の引き金となり、その結果が様々な総説記事において最近まとめられ、本説明の文脈において、記事、Takahashi 2001. Peptides 22: 1691; Eto et al. 2001. Peptides 22: 1693-1711 and Hinson et al. 2000 Endocrine Reviews 21(2):138-167が、特に参照された。
【0009】
今日までの科学的研究において、とりわけ、ADMは、多機能性制御ペプチドとみなすことができることがわかった。これは、循環血中に、グリシンにより延長された不活性型で部分的に放出される(Kitamura et al. 1998. Biochem. Biophys. Res. Commun. 244(2): 551-555)。また、ADMに特異的であり、かつ、ADMの作用を恐らく調節する結合タンパク質(Pio et al. 2001. The Journal of Biological Chemistry 276(15): 12292-12300)も、存在する。
【0010】
これまでの研究で最も重要であるADMに加えPAMPのこれらの生理作用は、血圧へ影響を及ぼす作用であった。したがって、ADMは、効果的な血管拡張薬である。
【0011】
さらに、pre-proADMから形成された上述のさらなる生理活性ペプチドPAMPは、ADMの作用機序とは異なる作用機序を有するように見えたとしても、PAMPは血圧降下作用を同様に示すことがわかった(Eto et al. 2001. Peptides 22: 1693-1711; Hinson et al. 2000 Endocrine Reviews 21(2):138-167; Kuwasako et al. 1997. FEBS Lett 414(1): 105-110; Kuwasaki et al. 1999. Ann. Clin. Biochem. 36: 622-628; Tsuruda et al. 2001. Life Sci. 69(2): 239-245; Kangawa et al. EP 0 622 458)。
【0012】
さらに、循環血および他の生物学的液体中で測定され得るADMの濃度は、数多くの病態において、対照健常者において認められる濃度を有意に上回っていることがわかった。したがって、うっ血性心不全、心筋梗塞、腎疾患、高血圧障害、糖尿病、ショックの急急性期ならびに敗血症および敗血症性ショックの患者におけるADMレベルは、様々な程度であるが、有意に増加した。またPAMP濃度も、該病態の一部において増加したが、それらの血漿レベルは、ADMに比べ低下した(Eto et al. 2001. Peptides 22: 1693-1711)。
【0013】
通常ADMの高い濃度が、敗血症または敗血症性ショックにおいて認められることが、さらに知られている(Eto et al. 2001. Peptides 22: 1693-1711; Hirata et al. 1996. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 81(4): 1449-1453; Ehlenz et al.1997. Exp Clin Endocrinol Diabetes 105: 156-162; Tomoda et al. 2001. Peptides 22: 1783-1794; Ueda et al. 1999 Am. J. Respir. Crit. Care Med.160: 132-136; Wang et al. 2001. Peptides 22: 1835-1840)。これらの知見は、敗血症および他の重症症候群、例えばSIRSなどの患者における疾患経過の典型的現象として知られている典型的血行動態変化に関連付けられている。アドレノメデュリンは、敗血症発症時(Wang, Shock 1998, 10(5):383-384; Wang et al. 1998. Archives of surgery 133(12): 1298-1304)、ならびに多くの急性および慢性疾患において(Parlapiano et al. 1999. European Review for Medical and Pharmacological Sciences 3:53-61; Hinson et al. 2000 Endocrine Reviews 21(2):138-167)中心的役割を果たす。
【0014】
ADMのコグネート前駆体ペプチドのより安定した断片の決定により、ADMを、直接または間接のいずれかで循環ADMレベルを測定する、いくつかの方法が説明された。最近になって、循環成熟ADMを測定するアッセイを説明する方法が公開された(Marino et al. 2014. Crit Care 18: R34)。
【0015】
ADM前駆体由来の断片を定量する他の方法が、例えば、MR-proADMの測定(Morgenthaler et al. 2005. Clin Chem 51(10):1823-9)、PAMPの測定(Washimine et al. 1994. Biochem Biophys Res Commun 202(2):1081-7)、CT-proADMの測定(EP211552)について説明されている。MR-proADM測定のための市販のアッセイが、利用可能である(BRAHMS MR-proADM KRYPTOR; BRAHMS GmbH, Hennigsdorf, Germany)(Caruhel et al. 2009. Clin Biochem 42(7-8):725-8)。これらのペプチドは同じ前駆体から化学量論的比で生成されるので、これらの血漿レベルは、ある程度相関している。
【0016】
ADMの血漿中濃度は、心不全に罹患している患者において上昇し、疾患の重症度と相関がある(Hirayama et al. 1999. J Endocrinol 160: 297-303; Yu et al. 2001. Heart 86: 155-160)。高血漿ADMは、これらの対象における独立した陰性予後指標である(Poyner et al. 2002. Pharmacol Rev 54: 233-246)。
【0017】
心不全におけるMR-proADMの役割は、いくつかの試験で調査された。BACH試験(Maisel et al. 2010. J. Am. Coll. Cardiol. 55: 2062-2076)では、MR-proADMは90日間の死亡に関する強力な予後徴候であり、ナトリウム利尿性ペプチドを超える予後的価値を加えた。PRIDE試験(Shah et al. 2012. Eur. Heart J. 33: 2197-2205)からの順次データは、MR-proADMの潜在的予後の役割を強固なものにした;患者の中で、MR-proADMは、1年間での死亡率に関して最大の曲線下面積(AUC)を有した。同様に、慢性心不全(CHF)に罹患している患者のMR-proADMのレベルは、疾患の重症度と強く相関し、そして、ペプチドの上昇レベルは12カ月の経過観察における高い死亡リスクと強く関係した(van Haehling et al. 2010. European Journal of Heart Failure 12: 484-491; Adlbrecht et al. 2009. European Journal of Heart Failure 11: 361-366)。
【0018】
MR-proADMは、急性非代償性心不全に罹患している患者の治療中に調査された(Boyer et al. 2012. Congest Heart Fail 18 (2): 91-97):急性期治療中にMR-proADMレベルが上昇傾向にある患者は永続的なうっ血を伴うことが分かった。治療法後12~24時間の期間内に、MR-proADMの上昇を伴う患者は、末梢浮腫が高かった。Kaiserらは、単心室の患者におけるMR-proADMを計測した(Kaiser et al. 2014. Europ J Heart Failure 16: 1082-1088)。機能不全のフォンタン回路(腹水および末梢浮腫を示す)に罹患している患者におけるレベルは、フォンタン不全症に罹患していない患者と比較して、かなり高かった。そのうえ、Eisenhutは、アドレノメデュリンレベルの低減につながる治療が、肺炎および敗血症(Eisenhut 2006. Crit Care 10: 418)における肺胞浮腫の重症度および範囲を低減するかどうか推測した。
【0019】
驚いたことに、本発明によれば、プロ-アドレノメデュリンまたはその断片が心不全または急性心不全に伴う、特に新規発症AHFまたは急性非代償性HFもしくは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象における、あるいは、慢性心不全の兆候/症状の悪化を伴う慢性心不全に罹患している対象における、うっ血の早期かつ的確な代替物であることがわかった。
【発明の概要】
【0020】
本発明の内容は:
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)うっ血の治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象におけるうっ血の治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ための方法であり、
ここで、前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象であるか、あるいは、ここで、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、うっ血の早期代用マーカーとして使用される方法であって、以下の:
・前記対象から得られた体液中のプロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のレベルを測定し;そして、
a)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、前記対象におけるうっ血の範囲と相関があるか、またはうっ血を診断し、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルがうっ血またはうっ血の範囲を示唆するか、または
b)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、前記対象におけるうっ血の治療法または治療介入の必要性または成功と相関があり、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入の成功を予測し、および、ここで、特定の閾値を上回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入の必要性を示唆するか、または
c)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血の予測と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、うっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血を予測し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を予測するか、または、
d)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、治療法または治療介入後の残留うっ血を示唆し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を示唆するか、または
e)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、退院の決定の評価と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、対象を退院させることはできないことを意味し、かつ、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、対象を退院させてもよいことを意味すること、を含み、
ここで、前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片が、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4によるADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADMを含む群から選択される方法である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、典型的なbio-ADM用量/シグナル曲線および100μg/mLの抗体NT-Hの存在下でのbio-ADM用量/シグナル曲線を示す。
図2】異なるグレードのうっ血に罹患している患者におけるbio-ADMの連続計測。
図3】退院時の利尿剤治療とbio-ADM(入院)との相互作用の例示。70pg/mL超または未満のbio-ADMを用いた患者それぞれに関して、利尿剤を用いたまたはそれなしの治療に関するカプラン-マイヤープロット。利尿剤は、入院時に高いbio-ADMを用いた患者において最も有益であり得る。 FALSE0:bio-ADM<70pg/mL、利尿剤を用いた治療なし、 FALSE1:bio-ADM<70pg/mL、利尿剤を用いた治療あり、 TRUE0:bio-ADM>70pg/mL、利尿剤を用いた治療なし、 TRUE1:bio-ADM>70pg/mL、利尿剤を用いた治療あり。
図4】重度のうっ血(CCS=3)に罹患している患者に対するうっ血に罹患していないかまたは軽度のうっ血に罹患している患者(CCS<3、p<0.001)に関するbio-ADMのボックスプロット。
図5】重度のうっ血(CCS=3)に罹患している患者に対するうっ血に罹患していないかまたは軽度のうっ血に罹患している患者(CCS<3、p<0.01)に関するbio-ADMのボックスプロット。
【発明を実施するための形態】
【0022】
うっ血の重症度、うっ血の範囲、うっ血の度合い、うっ血のグレードなどは、本出願中を通じて同じ意味で使用される。
成熟ADM、bio-ADMおよびADM-NHは、本出願中を通じて同じ意味で使用される、配列番号4による分子である。
急性心不全に罹患している対象、および/または悪化の兆候を示す心不全に罹患している対象、および/または心不全もしくは急性心不全の症状がある対象におけるうっ血の治療法または治療介入は、利尿剤の投与、循環作動薬の投与、血管拡張薬の投与、限外濾過、特に利尿剤を含む群から選択され得る。
【0023】
プロ-アドレノメデュリンまたはその断片は、特に、急性心不全に罹患している対象、および/または悪化の兆候を示す心不全に罹患している対象、および/または心不全もしくは急性心不全の症状を有する対象における、急性心不全および心不全に伴ううっ血の早期の、定量的で、的確な代替物である。
急性心不全または心不全に伴ううっ血の早期かつ的確な代替物は、それらの濃度および/または免疫反応レベルがうっ血の範囲、特に実際のうっ血の範囲を反映することを意味する。
【0024】
本明細書を通じて、対象とは、急性心不全に罹患している対象、および/または悪化の兆候を示す心不全に罹患している対象、および/または心不全もしくは急性心不全の症状を有する対象である。本発明の特定の一態様において、前記対象は、急性心不全、すなわち、新規発症AHFまたは急性非代償性HFのいずれかに罹患している。本発明の特定の別の態様において、前記対象は、急性非代償性慢性HF、または慢性心不全の兆候/症状の悪化に罹患している。本発明の特定の一態様において、前記対象は、急性心不全、特に新規発症AHFに罹患している。
【0025】
「急性的」という用語は、急激な発症を意味し、そして、患者が緊急治療法または入院加療の必要性をもたらす心不全兆候および症状の変化を有すると特徴づけることができる症状出現を指す悪化したかまたは非代償性心不全を記載するのに使用される。
「慢性」という用語は、長い期間を指す。慢性心不全とは、通常、症状の治療によって安定が保たれた長期にわたる状態である(安定した慢性HF)。
【0026】
安定した慢性HFは、以下の:
(i)身体の要求を満足する十分な血流を供給する心臓の能力を損なう構造上の欠陥または機能不全の存在、
(ii)容積過負荷(肺性および/または全身性うっ血が現れる)および/または深刻な心拍出量減少(低血圧、腎臓機能不全および/またはショック症候群が現れる)の不存在、
を特徴とし、かつ、ここで、前記患者が、緊急治療法または治療調節の必要がなく、また入院加療を必要としない。
【0027】
兆候および症状の悪化がある慢性HFは、以下の:
(i)身体の要求を満足する十分な血流を供給する心臓の能力を損なう構造上の欠陥または機能不全の存在、
(ii)容積過負荷(肺性および/または全身性うっ血が現れる)および/または深刻な心拍出量減少(低血圧、腎臓機能不全および/またはショック症候群が現れる)、
を特徴とし、かつ、ここで、前記患者が、緊急治療法の必要がなく、また入院加療を必要としないが、治療調節を必要とする。
【0028】
慢性心不全はまた、代償不全になってもよく(急性非代償性心不全または急性非代償性慢性心不全と呼ばれる)、そしてそれは、最も一般的には、治療介入性疾患(肺炎など)、心筋梗塞、不整脈、管理不良高血圧、または水分制限、食事もしくは薬物療法の維持を患者が怠った結果である。治療後に、急性非代償性慢性HFに罹患している患者は、安定した慢性代償性状態(安定した慢性HF)に戻ってもよい。
【0029】
新規発症急性HFおよび急性非代償性慢性HFは、以下の:
(i)身体の要求を満足する十分な血流を供給する心臓の能力を損なう構造上の欠陥または機能不全の存在、
(ii)容積過負荷(肺性および/または全身性うっ血が現れる)および/または深刻な心拍出量減少(低血圧、腎臓機能不全および/またはショック症候群が現れる)、
を特徴とし、かつ、ここで、前記患者が、緊急治療法または治療調節の必要とし、また入院加療を必要とする。
【0030】
【表1】
【0031】
新規発症AHFまたは急性非代償性HFもしくは急性非代償性慢性HF、あるいは、慢性心不全の兆候/症状の悪化のいずれかがある急性心不全の上記定義は、Voors et al., European Journal of Heart Failure (2016), 18, 716 - 726と一致している。
HFにおけるうっ血は、例えば呼吸困難、ラ音、および/または浮腫などのHFの兆候および症状に関連した高い左心室拡張期血圧と規定される。うっ血に関連するこれらの兆候および症状は、HFに関連した入院加療の主要な理由である。
【0032】
うっ血(および関連した兆候/症状)の除去と正常血液量状態の達成が、依然として院内AHF治療法の第一目的であるが、うっ血を評価するための標準アルゴリズムも、または診断ツールも存在しない。うっ血の臨床的評価に関する現在の実務は、兆候および症状を中心に展開する。頸静脈圧(JVP)、末梢浮腫、起座呼吸、S3心音および肝腫大などの身体的検査知見、または心肥大および間質/肺胞浮腫のような胸部X線写真知見が、うっ血の代替物として使用される。慎重に実施したJVP評価以外に、うっ血の検出のためのこれらのパラメーターの予測値が控え目~中程度であることに注意しなければならない。うっ血の信頼でき、かつ、的確な代用マーカーを得るという、高度で、まだ対処されていない要求が存在する。定量的および質的な様式でうっ血およびうっ血緩和を測定し、予測し、評価し、および/または観察するという、高度、かつ、まだ対処されていない医療上の要求が存在する。うっ血の範囲、すなわち、うっ血のグレードを測定し、予測し、評価し、および/または観察するという要求が存在する。
【0033】
よって、本発明の方法は、本発明のすべての実施形態において、本発明において詳細に記載したうっ血の早期代用マーカーとしてのプロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片を使用することによって、以下の:
a)対象におけるうっ血を量的および質的に診断し、そして、対象におけるうっ血の範囲を評価または観察し、
b)うっ血の治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象における治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価すること、
を可能にする方法であり、
ここで、前記対象は、急性心不全に罹患している対象、および/または兆候の悪化を示す心不全に罹患している対象、および/または心不全もしくは急性心不全の症状を有する対象である。
【0034】
特に、本発明の方法は、本発明のすべての実施形態において、対象におけるうっ血を量的および質的に診断し、そして、対象におけるうっ血の範囲を評価または観察することを可能にし、ここで、前記対象が、急性心不全、すなわち、新規発症AHFまたは急性非代償性HFもしくは急性非代償性慢性HFのいずれかに罹患しているか、またはここで、前記対象が、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患しており、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、本発明において詳細に記載したうっ血の早期代用マーカーとして使用される。特に前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片は、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4による成熟ADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADM、好ましくは、配列番号3によるMR-proADM、配列番号4による成熟ADM-NHまたは配列番号5によるADM-Gly、より好ましくは、配列番号4による成熟ADM-NHを含む群から選択される。
【0035】
特に、本発明の方法は、本発明のすべての実施形態において、うっ血の治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象における治療法または治療介入の指針となることを可能にし、ここで、前記対象が、急性心不全、すなわち、新規発症AHFまたは急性非代償性HFもしくは急性非代償性慢性HFのいずれかに罹患しているか、またはここで、前記対象が、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患しており、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、本発明において詳細に記載したうっ血の早期代用マーカーとして使用される。特に前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片は、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4による成熟ADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADM、好ましくは、配列番号3によるMR-proADM、配列番号4による成熟ADM-NHまたは配列番号5によるADM-Gly、より好ましくは、配列番号4による成熟ADM-NHを含む群から選択される。
【0036】
特に、本発明の方法は、本発明のすべての実施形態において、対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測することを可能にし、ここで、前記対象が、急性心不全、すなわち、新規発症AHFまたは急性非代償性HFもしくは急性非代償性慢性HFのいずれかに罹患しているか、またはここで、前記対象が、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患しており、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、本発明において詳細に記載したうっ血の早期代用マーカーとして使用される。特に前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片は、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4による成熟ADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADM、好ましくは、配列番号3によるMR-proADM、配列番号4による成熟ADM-NHまたは配列番号5によるADM-Gly、より好ましくは、配列番号4による成熟ADM-NHを含む群から選択される。
【0037】
特に、本発明の方法は、本発明のすべての実施形態において、対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価することを可能にし、ここで、前記対象が、急性心不全、すなわち、新規発症AHFまたは急性非代償性HFもしくは急性非代償性慢性HFのいずれかに罹患しているか、またはここで、前記対象が、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患しており、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、本発明において詳細に記載したうっ血の早期代用マーカーとして使用される。特に前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片は、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4による成熟ADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADM、好ましくは、配列番号3によるMR-proADM、配列番号4による成熟ADM-NHまたは配列番号5によるADM-Gly、より好ましくは、配列番号4による成熟ADM-NHを含む群から選択される。
【0038】
特に、本発明の方法は、本発明のすべての実施形態において、対象の退院の決定を評価することを可能にし、ここで、前記対象が、急性心不全、すなわち、新規発症AHFまたは急性非代償性HFもしくは急性非代償性慢性HFのいずれかに罹患しているか、またはここで、前記対象が、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患しており、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、本発明において詳細に記載したうっ血の早期代用マーカーとして使用される。特に前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片は、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4による成熟ADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADM、好ましくは、配列番号3によるMR-proADM、配列番号4による成熟ADM-NHまたは配列番号5によるADM-Gly、より好ましくは、配列番号4による成熟ADM-NHを含む群から選択される。
【0039】
本発明に関して、うっ血の範囲は、うっ血のグレード重症度として表されてもよく、以下で記載するように測定された。しかしながら、当業者は、うっ血の範囲が、例えばAmbrosyらによって利用されたスコアなどの他のスコアまたは代替物によって表され得ることを知っている(Ambrosy et al. 2013. European Heart Journal 34 (11): 835-843)。
以前に強調したように、臨床的代替物は、うっ血の検出に関して最適を下回る予測値を有する。本発明に示された実施例のうちの1つの分析(PROTECT試験)において、我々は、精度を高めるために3つの最も強力なうっ血の臨床的代替物(すなわち、JVP、末梢浮腫、および起座呼吸)を組み合わせて、以下に提示されたスキームを使用して複合臨床うっ血スコア(CCS)を開発した:
【0040】
【表2】
【0041】
次に、これらの3つのパラメーターそれぞれのスコアは、複合うっ血スコアを得るために加算され、そしてそれは、0~8の範囲をとった。
次に、以下のアルゴリズムが、うっ血のグレード重症度に利用された:
CCS=0、臨床的うっ血なし
CCS 1~3、軽度の臨床的うっ血
CCS 4~5、中程度の臨床的うっ血
CCS ≧6、重度の臨床的うっ血
【0042】
本発明中に示された別の実施例のための分析(BIOSTAT試験)において、我々は、末梢浮腫のレベルによるうっ血のグレードを記載した(重症度が増大する順に:なし、足首、膝下、膝上)。PROTECTが、ロロフィリン対プラセボの効果に対する無作為化比較臨床試験に登録された急性非代償性心不全に罹患している世界中の患者の選抜集団であるのに対して、BIOSTAT-CHFは、約2/3が入院しており、および1/3が外来患者の状況で診察された、悪化した心不全の兆候および/または症状を有する患者の2つのヨーロッパのコホートから成る。
【0043】
上述の説明のとおり、うっ血は、多くの異なった方法で分類できる。当業者は、うっ血の範囲が他のスコアまたは代替物によって表され得ることを知っている。臨床分類は、うっ血の臨床的症状/兆候の存在を検出するための枕元の身体検査法(存在対不存在の場合、「乾」対「湿」)および/または末梢低灌流(存在対不存在の場合、「温」対「冷」)に基づくことができる(総説に関して、Ponikowski et al. 2016. Eur Heart J. ehw128を参照)。これらの選択肢の組み合わせは4つの群を分類する:温かくて湿っている(十分に灌流され、かつ、うっ血した)-最も多く存在する;冷たくて湿っている(低灌流で、かつ、うっ血した);冷たくて乾いている(低灌流で、うっ血なし);および温かくて乾いている(代償され、十分に灌流され、うっ血なし)。この分類法は、初期相における治療法を指導する助けとなり得、予後情報を含んでいる。
【0044】
典型的に、AHFの症状および兆候は、体液の貯留(肺うっ血および/または末梢浮腫)または、頻度は低いが、末梢循環不全を伴った低減した心拍出量を反映する。胸部X線写真は、AHFの診断のための有用な試験になり得る。肺静脈うっ血、胸膜浸出液、組織間腔または肺胞浮腫、および心肥大はAHFの最も特異的な知見であるが、AHFに罹患している患者のうちの最大20%において、胸部X線写真はほぼ正常である。
【0045】
うっ血の症状/兆候(左側)は、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、肺ラ音(両側)、末梢浮腫(両側)と規定される。うっ血の症状/兆候(右側)は、頸静脈圧、末梢浮腫(両側)、うっ血性肝腫大、肝頸静脈逆流、腹水、腸うっ血の症状と規定される(総説に関して、Ponikowski et al. 2016. Eur Heart J. ehw128の表12.2を参照)。
【0046】
浮腫とは、間質液体積の異常膨脹から生じる細胞間組織における水分の貯留である。組織間腔および脈管間の空間の水分は、毛細管静水圧グラジエントおよび毛細管を越えた膠質浸透圧グラジエントによって調整される(Trayes et al. 2013. Am Fam Physician 88(2):102-110)。水分貯留は、この平衡状態を乱す局所的または全身的状態の時に起こり、増強された毛細管静水圧、増強された血漿量、減少した血漿膠質浸透圧(低アルブミン血症)、増強された毛細血管透過性、またはリンパ管閉塞に通じる。
【0047】
臨床的に、浮腫は腫脹とも表す:間質液の量は、体液の恒常性によって決定され、そして、間質内の体液分泌の増加、または体液の減弱した除去が浮腫を引き起こす原因となり得る。静水圧の上昇は、心不全で起こる。全身に引き起こされる浮腫の原因は、複数の臓器および末梢における浮腫の原因となり得る。例えば、重度の心不全は、肺浮腫、胸膜浸出液、腹水、および末梢浮腫の原因となり得る。
【0048】
肺浮腫は、肺の気腔および実質における体液貯留である。それは、減弱されたガス交換に通じ、そして、呼吸機能不全の原因となり得る。それは、肺循環から血液を適切に除去する左心室不全(「心原性肺浮腫」)または肺の肺実質または血管系に対する傷害(「非心原性肺浮腫」)のいずれかのためである(Ware and Matthay 2005. N. Engl. J. Med. 353 (26): 2788-96)。治療は3つの態様:第一に、呼吸機能を改善すること、第二に、原因疾患を治療すること、第三に、肺に対する更なる損害を避けること、に注目される。肺浮腫、特に急性のものは、致命的な呼吸困難または低酸素症による心拍停止につながり得る。それは、うっ血性心不全の主要な特徴である。
【0049】
肺浮腫の抗し難い症状は、呼吸の難しさであるが、また、喀血(古典的にピンク色の、泡のような痰と考えられる)、多汗症、不安症、および蒼白皮膚も含み得る。息切れは、起座呼吸(息苦しさによりまっすぐ横たわることができないこと)および/または発作性夜間呼吸困難(夜間の重篤な突発性の息苦しさの症状出現)を表す。これらは、左心室不全による慢性肺浮腫の一般的に現れる症状である。肺浮腫の発症は、「体液の貯留」の症状および兆候に関連し得る;これは、身体の残りの部分に対して左心室不全の発現を記載するための特定的な用語ではなく、末梢浮腫(通常、陥凹性異形の、脚の腫脹、ここで、皮膚は、圧迫によりゆっくりと正常に戻る)、高い頸静脈圧、および肝臓が肥大し、柔らかくなるか、または拍動さえし得る肝腫大を含む。他の兆候としては、聴診による末端吸気性断続性ラ音(深呼吸の終わりに聞かれる音)および第三心音の存在が挙げられる。
【0050】
本発明では、プロ-アドレノメデュリンまたはその断片が、うっ血の重症度および浮腫の範囲と相関があり、うっ血緩和および利尿剤の投与量を予測することが実証される。
本発明の一態様において、残留うっ血は、7日目までのJVP、起座呼吸、および浮腫の評価に基づいて、CCS≧2と規定される。
【0051】
本発明の一態様において、うっ血緩和は、単独または組み合わせのいずれかでの、以下の3種類の最先端のマーカーによって規定される:
・利尿反応:40mgの利尿剤用量あたりの4日目までの体重減少と規定される。
・血液濃度:0(ベースラインと比較して、4日目までにヘモグロビンレベルに減弱があるかまたは変化がない場合)または1(ベースラインと比較して、4日目までにヘモグロビンレベルの増大がある場合)とコードされる。
・重度の残留うっ血:7日目までにJVP、起座呼吸、および浮腫評価に基づいてCCS≧2と規定される。
【0052】
本発明の内容は:
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)うっ血の治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象におけるうっ血の治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ための方法であって、
ここで、前記対象は、急性心不全に罹患している対象、および/または兆候の悪化を示す心不全に罹患している対象、および/または心不全もしくは急性心不全の症状を有する対象であり、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片を、うっ血の早期代用マーカーとして使用することによって:
【0053】
・前記対象から得られた体液中のプロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つのバインダーを使用することによって免疫反応性検体のレベルを測定し;そして、
a)前記免疫反応性検体のレベルが、前記対象におけるうっ血の範囲と相関があるか、またはうっ血を診断し、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルがうっ血またはうっ血の範囲を示唆するか、または
b)前記免疫反応性検体のレベルが、前記対象におけるうっ血の治療法または治療介入の必要性または成功と相関があり、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入の成功を予測し、および、ここで、特定の閾値を上回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入の必要性を示唆するか、または
c)前記免疫反応性検体のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血の予測と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、うっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血を予測し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、治療法後のうっ血緩和を予測するか、または、
d)前記免疫反応性検体のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、治療法または治療介入後の残留うっ血を示唆し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を示唆するか、または
e)前記免疫反応性検体のレベルが、退院の決定の評価と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、対象を退院させることはできないことを意味し、かつ、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、対象を退院させてもよいことを意味すること、を含み、
ここで、前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片が、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4によるADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADMを含む群から選択される、方法。
【0054】
プロ-アドレノメデュリンまたはその断片、特に配列番号4によるADM-NHのベースラインレベルが独立に、例えば、7日目までの、重度の残留うっ血、例えば、4日目までの、利尿反応、および例えば、4日目までの、血液濃度、を予測することが、実施例からわかった。ベースラインにてうっ血の重症度と相関するごく少数のベースライン臨床レベルの変数およびバイオマーカーが存在し、プロ-アドレノメデュリンまたはその断片、特に配列番号4によるADM-NHは、圧倒的に、最も強力であると思われる。プロ-アドレノメデュリンまたはその断片、特に配列番号4によるADM-NHは、ベースラインにおいて臨床的うっ血の重症度と強く相関し、例えば、7日目までの、重度の残留うっ血の存在を独立に予測する。データは、プロ-アドレノメデュリンまたはその断片、特に配列番号4によるADM-NHが、うっ血に関して信頼できる、定量的な、早期代替物であるという概念を強く支持している。これは、AHF患者におけるうっ血の評価、特に退院前の残留うっ血の存在の確認のための的確かつ信頼性が高いツールに対して非常に大きなまだ対処されていない医療的要求が存在することを前提として、興味深い知見である。これは、本発明によると、プロ-アドレノメデュリンまたはその断片、特に配列番号4によるADM-NHは、退院前の残留うっ血の存在の確認に使用され得る。
【0055】
本発明の内容は、前記うっ血の範囲が、うっ血スコア、特に臨床的うっ血スコアとして表される方法である。
【0056】
本発明の内容は、前記対象が、以下の:
a)うっ血のグレードに関する群、または
b)うっ血の治療法または治療介入に対して非応答体、および/または応答体、および/または不十分な応答体、または
c)うっ血緩和群またはうっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血群、
に層別化される方法である。
【0057】
本発明の内容は、前記対象が、患者群に層別化される方法であって、一方の群が治療法を必要としている患者を含み、もう片方の群が治療法を必要としていない患者を含む方法である。
【0058】
これまで、とりわけ、マーカーBNPおよびproBNPは、うっ血マーカーであるとみなされてきた。驚いたことに、バイオマーカーであるプロ-アドレノメデュリンまたは本発明のそれぞれの断片は、うっ血マーカーとしてこれまで使用された他のいかなる臨床的または生化学的パラメーターよりも、はるかに優れている。このことは、例えば、Kremer et al. European Journal of Heart Failure (2017) 19 (Suppl S1) 5-601によって示されており、Kremerらは、生物活性アドレノメデュリンに相当するバイオマーカーであるbio-ADMの、ADHFにおけるうっ血の潜在的マーカーとしての潜在的役割を試験し、そして、臨床的に評価したうっ血に加え、追加的な予後的価値を評価した。bio-ADMは、ADHFのために入院した1562人の患者においてベースライン、2日目およびと7日目に評価された。臨床的うっ血は、浮腫、起座呼吸、および頸静脈怒張を組み込んだ複合臨床的うっ血スコア(CCS)を使用して評価された。これを、BNPを含めた他の臨床的および生化学的パラメーターと比較した。多数の臨床的および生化学的パラメーターの中も、bio-ADMは、臨床的に評価されたうっ血の最も強力な予測因子であった。BNPレベルではなく、ベースラインbio-ADMレベルが、7日目までの重度の残留うっ血の存在と強く、かつ、独立して相関していた。7日目の時点で残留うっ血がある患者において、bio-ADMレベルは高いままであったが、BNPレベルは低下した。BNPではなく、bio-ADMが、臨床的に評価されたうっ血に加えて、60日間の心不全再入院に関する強力な独立した予測因子であった。よって、発明者らは、Bio-ADMは、ADHFに罹患している患者において高められ、かつ、ADHFのために入院した患者の(残留)うっ血の有望なマーカーであると結論づけた。bio-ADMは、退院後の早期再入院に関する強力で独立した予測因子であった。
【0059】
本発明の具体的実施形態において、該proADMおよび/または少なくとも5個のアミノ酸を有するそれらの断片は、下記を含む群から選択される:
配列番号1(proADM):164個のアミノ酸(preproADMの22~185)
【0060】
【化1】
【0061】
配列番号2(プロアドレノメデュリンN-20末端ペプチド、PAMP):preproADMの第22~41アミノ酸
【化2】
【0062】
配列番号3(中央領域アドレノメデュリン、MR-proADM):preproADMの第45~92アミノ酸
【化3】
【0063】
配列番号4(成熟アドレノメデュリン(成熟ADM);アミド化ADM;bio-ADM;hADM):第95~146アミノ酸-CONH
【化4】
【0064】
配列番号5(アドレノメデュリン1-52-Gly(ADM 1-52-Gly)):preproADMの第95~147アミノ酸
【化5】
【0065】
配列番号6(C-末端プロアドレノメデュリン、CT-proADM):preproADMの第148~185アミノ酸
【化6】
【0066】
本発明の具体的実施形態において、該proADMおよび/または少なくとも5個のアミノ酸を有するそれらの断片は、成熟ADM-NH(配列番号4)、ADM 1-52-Gly(配列番号5)、MR-proADM(配列番号3)およびCT-ADM(配列番号6)を含む群から選択される。
【0067】
本発明の具体的実施形態において、成熟ADM-NH(配列番号4)および/若しくはADM 1-52-Gly(配列番号5)-免疫反応性のレベルまたはMR-proADM(配列番号3)免疫反応性のレベルまたはCT-ADM(配列番号6)免疫反応性のレベルのいずれかが、治療法または治療介入に関する該患者の必要性を決定し、かつ、これと相関され、ここで、該患者は、該対象の体液中の成熟ADM-NH(配列番号4)および/若しくはADM 1-52-Gly(配列番号5)-免疫反応性のレベルまたはMR-proADM(配列番号3)免疫反応性のレベルまたはCT-ADM(配列番号6)免疫反応性のレベルが閾値を上回る場合に、斯かる必要性を有するものとして確定される。
【0068】
本発明の具体的実施形態において、pro-ADMおよび/またはそれらの断片のレベルは、成熟ADM-NH(配列番号4)および/またはADM 1-52-Gly(配列番号5)の後続の配列内に構成される領域に結合するバインダー、および成熟ADM-NH(配列番号4)および/またはADM 1-52-Gly(配列番号5)の配列内に構成される領域に結合する第二のバインダー:の群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される。
【0069】
本発明の具体的実施形態において、pro-ADMおよび/またはそれらの断片のレベルは、MR-proADM(配列番号3)の配列内に構成される領域に結合するバインダー、およびMR-proADM(配列番号3)の配列内に構成される領域に結合する第二のバインダー:の群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される。
【0070】
本発明の具体的実施形態において、pro-ADM(配列番号1)および/またはそれらの断片のレベルは、CT-proADM(配列番号6)の配列内に構成される領域に結合するバインダー、およびCT-proADM(配列番号6)の配列内に構成される領域に結合する第二のバインダー:の群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される。
【0071】
本発明の内容は、特定の実施形態において、前記断片が、配列番号3によるMR-proADMまたは配列番号4による成熟ADM-NHから選択され得る、本発明による方法である。
本発明の内容は、前記プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のレベルが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に対するバインダーを使用することによって測定される、本発明による方法である。
【0072】
本発明の内容は、前記バインダーが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に結合する抗体、抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択される、本発明による方法である。
本発明による体液は、特定の一実施形態において、血液サンプルである。血液サンプルは、全血、血清および血漿を含む群から選択され得る。本発明の具体的な実施形態において、前記サンプルは、ヒトクエン酸血漿、ヘパリン血漿およびEDTA血漿を含む群から選択される。
【0073】
本発明の内容は、前記プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片の測定が、1人の患者において複数回実施される、本発明による方法である。
本発明の内容は、前記サンプルが、病院への入院時または退院前に採取される方法である。
【0074】
本発明の内容は、前記モニタリングが、得られた予防的および/または治療学的な測定値に対して前記対象の応答を評価するために実施される、本発明による方法である。
本発明の内容は、前記方法が、前記対象をうっ血グレード群に層別化するのに使用される、本発明による方法である。
本発明の内容は、前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、急性心不全または心不全に罹患している対象における死亡または有害事象のリスクと相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、死亡または有害事象の高いリスクを予測する、本発明による方法である。
【0075】
本発明の具体的な実施形態において、アッセイが、proADMおよび/または少なくとも5個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここで該アッセイのアッセイ感度は、健常対象の成熟ADM-NHを定量することができ、かつ、<70pg/ml、好ましくは<40pg/ml、およびより好ましくは<10pg/mlである。
【0076】
本発明の具体的な実施形態において、アッセイが、proADMおよび/または少なくとも5個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここで該アッセイのアッセイ感度は、健常対象のMR-proADMを定量することができ、かつ、<0.5nmol/L、好ましくは<0.4nmol/L、およびより好ましくは<0.2nmol/Lである。
【0077】
本発明の具体的な実施形態において、アッセイが、proADMおよび/または少なくとも5個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここで該アッセイのアッセイ感度は、健常対象のCT-proADMを定量することができ、かつ、<100pmol/L、好ましくは<75pmol/L、およびより好ましくは<50pmol/Lである。
【0078】
本発明の具体的な実施形態において、該バインダーは、proADMおよび/またはそれらの断片への結合親和性の少なくとも10-1、好ましくは10-1を示し、好ましい親和性は、10-1より大きく、最も好ましくは1010-1よりも大きい。当業者は、化合物のより高い投与量を適用することにより、より低い親和性を補償すると考えることができ、この方策は、本発明の範囲外に繋がるものではないことを知っている。
【0079】
アドレノメデュリンに対する抗体の親和性を決定するために、アドレノメデュリンの固定化された抗体に対する結合キネティックスを、Biacore 2000システム(GE Healthcare Europe GmbH, Freiburg, Germany)を使用する、非標識表面プラズモン共鳴により決定した。抗体の可逆的固定化は、製造業者の指示に従い、CM5センサー表面に高密度で共有結合された抗-マウスFc抗体を使用し実行した(マウス抗体捕獲キット;GE Healthcare)(Lorenz et al. 2011. Antimicrob Agents Chemother. 55 (1): 165-173)。
【0080】
本発明の具体的な実施形態において、該バインダーは、proADMおよび/またはそれらの断片へ結合する抗体または抗体断片または非-Igスカフォールドを含む群から選択される。
本発明の具体的な実施形態において、アッセイは、proADMおよび/または少なくとも5個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここで斯かるアッセイは、サンドイッチアッセイ、好ましくは完全に自動化されたアッセイである。
【0081】
本発明の一実施形態において、これは、完全に自動化されたアッセイシステムを必要としない、患者の傍で1時間以内に検査を行うことができる検査技術である、いわゆるPOC-検査(ポイントオブケア)であってよい。この技術の一例は、免疫クロマトグラフィー検査技術である。
【0082】
本発明の一実施形態において、斯かるアッセイは、非限定的に、酵素標識、化学発光標識、電気化学発光標識を含む検出技術の任意の種類を使用するサンドイッチイムノアッセイ、好ましくは完全自動化アッセイである。本発明の一実施形態において、斯かるアッセイは、酵素標識されたサンドイッチアッセイである。自動化または完全自動化アッセイの例は、下記のシステムの一つに使用され得るアッセイを含む:Roche Elecsys(登録商標)、Abbott Architect(登録商標)、Siemens Centauer(登録商標)、Brahms Kryptor(登録商標)、BiomerieuxVidas(登録商標)、Alere Triage(登録商標)。
【0083】
様々な免疫測定が公知であり、かつ、本発明のアッセイおよび方法のために使用することができ、これらは、放射免疫測定(「RIA」)、均一酵素-増幅免疫測定(「EMIT」)、酵素結合免疫吸着測定(「ELISA」)、アポ酵素再活性化免疫測定(「ARIS」)、ディップスティック免疫測定および免疫-クロマトグラフィーアッセイを含む。
本発明の具体的な実施形態において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、検出されるために標識されている。
【0084】
好ましい検出方法は、例えば放射免疫測定(RIA)、化学発光-および蛍光-免疫測定、酵素結合免疫測定(ELISA)、Luminex-ベースのビーズアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイなどの、様々なフォーマットの免疫測定、ならびに即時免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの、迅速試験フォーマットを含む。
好ましい実施形態において、該標識は、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、放射性ヨウ素標識を含む群から選択される。
【0085】
これらのアッセイは、均一または不均一アッセイ、競合および非競合アッセイであることができる。一実施形態において、アッセイは、非競合的免疫測定である、サンドイッチアッセイの形状であり、ここで検出および/または定量されるべき分子は、第一の抗体および第二の抗体へ結合される。第一の抗体は、固相、例えばビーズ、ウェル若しくは他の容器の表面、チップまたはストリップに結合され、第二の抗体は、例えば、色素、放射性同位体、または反応性部分若しくは触媒活性部分により、標識されている抗体である。次に被検体へ結合された標識された抗体の量が、好適な方法により測定される。「サンドイッチアッセイ」に関与した一般的組成物および手順は、良く確立されており、かつ、当業者に公知である(The Immunoassay Handbook, Ed. David Wild, Elsevier LTD, Oxford; 3rd ed. (May 2005); Hultschig et al. 2006. Curr Opin Chem Biol. 10 (1):4-10)。
【0086】
別の実施形態において、アッセイは、2種の捕獲分子、好ましくは両方共液体反応混合物中の分散体として存在する抗体を含み、ここで第一の標識成分は、第一の捕獲分子に付着され、該第一の標識成分は、蛍光-または化学発光-消光または増幅を基にした標識システムの一部であり、ならびに該印付けシステムの第二の標識成分は、第二の捕獲分子へ付着され、その結果両方の捕獲分子の被検体への結合時に、測定可能なシグナルが発生され、試料を含有する溶液中で形成されたサンドイッチ複合体の検出が可能になる。
【0087】
別の実施形態において、該標識システムは、蛍光色素または化学発光色素、特にシアニン型の色素と組み合わせた、希土類クリプテートまたは希土類キレートを含む。
本発明の文脈において、蛍光ベースのアッセイは、色素の使用を含み、これは例えば、FAM(5-または6-カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD-700/800、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7などのシアニン色素、キサンテン、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5)、6-カルボキシローダミン-6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY TMRなどのBODIPY色素、オレゴングリーン、ウンベリフェロンなどのクマリン、Hoechst 33258などのベンズイミド;フェナントリジン、例えばテキサスレッド、Yakima Yellow、Alexa Fluor、PET、臭化エチジウム、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素および同類のものを含む群から選択され得る。
【0088】
本発明の文脈において、化学発光ベースのアッセイは、文献(Kirk-Othmer, Encyclopedia of chemical technology, 4th ed. 1993. John Wiley & Sons, Vol.15: 518-562, incorporated herein by reference, including citations on pages 551-562)において化学発光物質に関して説明された物理原理を基に、色素の使用を含む。好ましい化学発光色素は、アクリジニウムエステルである。
【0089】
本明細書で言及する「アッセイ」または「診断アッセイ」は、診断分野において適用される任意の型であることができる。斯かるアッセイは、検出されるべき被検体の、1または複数の捕獲プローブへの、ある親和性での結合を基にすることができる。捕獲分子と標的分子または関心対象の分子の間の相互作用に関して、親和定数は、10-1よりも大きいことが好ましい。
【0090】
本発明の文脈において、「バインダー分子」は、試料由来の標的分子または関心対象の分子、すなわち被検体(すなわち、本発明の文脈において、PCTおよびそれらの断片)への結合に使用することができる分子である。したがってバインダー分子は、標的分子または関心対象の分子へ特異的に結合するために、空間的に、ならびに表面電荷、疎水性、親水性、ルイスドナーおよび/またはアクセプターの存在若しくは非存在などの表面特徴に関しての両方で、適切に造形されなければならない。これにより、結合は、捕獲分子と標的分子または関心対象の分子の間の、例えば、イオン結合、ファンデルワールス結合、π-π結合、σ-π結合、疎水性結合または水素結合の相互作用または前述の相互作用の2またはそれ以上の組み合わせにより媒介され得る。本発明の文脈において、バインダー分子は、例えば、核酸分子、糖分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチドまたは糖タンパク質を含む群から選択され得る。好ましくは、バインダー分子は、標的または関心対象の分子に対する十分な親和性を伴うそれらの断片を含む抗体、ならびに組み換え抗体または組み換え抗体断片を含む抗体に加え、それらの長さが少なくとも12個のアミノ酸を伴う変種鎖由来の該抗体または断片の化学的および/または生化学的に修飾された誘導体である。
【0091】
化学発光標識は、アクリジニウムエステル標識、イソルミノール標識に関与するステロイド標識および同類のものであることができる。
酵素標識は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチンキナーゼ(CPK)、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)、酸性ホスファターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどであることができる。
【0092】
本発明の一実施形態において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、磁気粒子として固相に、およびポリスチレン表面に結合されている。
本発明の具体的な実施形態において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、固相に結合されている。
【0093】
本発明の具体的な実施形態において、前記閾値が、血漿ADM-NHの閾値範囲内にあって、すなわち、50~100pg/ml、好ましくは60~90pg/ml、最も好ましくは70pg/mlの閾値が適用される。
本発明の具体的な実施形態において、前記閾値が、血漿MR-proADMの閾値範囲内にあって、すなわち、0.5~1.5nmol/L、好ましくは0.7~1nmol/L、最も好ましくは0.8nmol/Lの閾値が適用される。
本発明の具体的な実施形態において、前記閾値が、血漿CT-proADMの閾値範囲内にあって、すなわち、85~350pmol/L、好ましくは100~250pmol/L、最も好ましくは150pmol/Lの閾値が適用される。
【0094】
本発明のADM-NHレベルまたはproADMレベルもしくはその断片は、それぞれ、実施例に概説されているように、記載したADM-NHアッセイ(あるいは、proADMまたはその断片のアッセイ、それぞれ)を用いて決定した。これらが本発明に使用されるアッセイシステムとは異なる方法で較正された場合、上記の言及された閾値は、他のアッセイにおいて異なっているであろう。そのため、上記の言及されたカットオフ値は、較正の差を考慮して、こうして別の方法で較正されたアッセイのために適切に適用されるべきである。較正における差を定量化する1つの可能性が、両方の方法で使用したサンプル中のそれぞれのバイオマーカー(例えば、bio-ADM)を計測することによって、本発明で使用したそれぞれのバイオマーカーアッセイと、問題のアッセイとの方法比較解析(相関)である。別の可能性は、問題のアッセイを用いて決定することであり、所定のこの試験が十分な分析感度を有し、代表的な正規母集団のバイオマーカーレベルの中央値が、文献に記載のように、結果をバイオマーカーレベルの中央値と比較し、そして、この比較によって得られた差に基づく較正を再計算することである。本発明に使用される較正では、正常な(健常な)対象からのサンプルが計測された:血漿bio-ADM(成熟ADM-NH)の中央値は24.7pg/mlであり、最低値は11pg/mlであり、99パーセンタイル値は43pg/mlであった。あるいは、市販の対照サンプルが、異なった較正の調節に使用される場合がある(例えば、ICI Diagnostics, Berlin, Germany)。
【0095】
正常な(健常な)対象における血漿MR-proADM濃度の中央値は、Caruhelら(Caruhel et al. 2009. Clin Biochem 42:725-8)に記載のとおり、MR-proADMの検出のための自動化されたサンドイッチ蛍光アッセイを使用して0.41(四分位範囲0.23~0.64)nmol/Lであった(Smith et al. 2009. Clin Chem 55:1593-1595)。
普通の健常対象(n=200)の血漿CT-proADM濃度の中央値は、77.6pmol/L(最低46.6pmol/L、最高136.2pmol/L)であり、95%パーセンタイル値が、113.8pmol/Lであった(EP 2 111 552 B1)。
【0096】
本発明の具体的な実施形態において、血漿ADM-NHの閾値は、健常集団の濃度中央値の5倍であり、好ましくは濃度中央値の4倍であり、より好ましくは濃度中央値の3倍であり、最も好ましくは濃度中央値の2倍である。
本発明の具体的な実施形態において、血漿MR-proADMの閾値は、健常集団の濃度中央値の5倍であり、好ましくは濃度中央値の4倍であり、より好ましくは濃度中央値の3倍であり、最も好ましくは濃度中央値の2倍である。
本発明の具体的な実施形態において、血漿CT-proADMの閾値は、健常集団の濃度中央値の5倍であり、好ましくは濃度中央値の4倍であり、より好ましくは濃度中央値の3倍であり、最も好ましくは濃度中央値の2倍である。
【0097】
本発明の抗体は、抗原へ特異的に結合する免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされた1または複数のポリペプチドを含むタンパク質である。認識された免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α(IgA)、γ(IgG、IgG、IgG、IgG)、δ(IgD)、ε(IgE)およびμ(IgM)定常領域遺伝子に加え、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。完全長免疫グロブリン軽鎖は一般に、約25Kdまたは長さ214アミノ酸である。完全長免疫グロブリン重鎖は一般に、約50Kdまたは長さ446アミノ酸である。軽鎖は、NH-末端で可変領域遺伝子(長さ約110アミノ酸)により、およびCOOH-末端でκまたはλ定常領域遺伝子によりコードされている。重鎖は同様に、可変領域遺伝子(長さ約116アミノ酸)および他の定常領域遺伝子の一つによりコードされている。
【0098】
抗体の基本的構造単位は一般に、免疫グロブリン鎖の2つの同一対からなる四量体であり、各対は、1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。各対において、軽鎖および重鎖可変領域は、抗原へ結合し、かつ、定常領域はエフェクター機能を媒介する。免疫グロブリンはまた、例えば、Fv、Fab、および(Fab’)、さらには二機能性ハイブリッド抗体および単鎖抗体を含む、様々な他の形でも存在する(例えば、Lanzavecchia et al. 1987. Eur. J. Immunol. 17:105; Huston et al. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:5879-5883; Bird et al. 1988, Science 242:423-426; Hood et al., Immunology, Benjamin, N.Y., 2nd ed., 1984; Hunkapiller and Hood 1986. Nature 323:15-16を参照)。免疫グロブリン軽鎖または重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)とも称される、3つの超可変領域により中断されたフレームワーク領域を含む(「免疫学的関心のあるタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest, E. Kabatet al., U.S. Department of Health and Human Services, 1983を参照)。前述のように、CDRは主に、抗原のエピトープへの結合に寄与する。免疫複合体は、抗原に特異的に結合された、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体、または機能性抗体断片などの、抗体である。
【0099】
キメラ抗体は、その軽鎖および重鎖遺伝子が、通常異なる種に属する免疫グロブリン可変領域遺伝子および定常領域遺伝子から、遺伝子操作により構築される抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントが、κおよびγ1またはγ3などの、ヒト定常セグメントへ連結され得る。したがって一例において、治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の可変または抗原-結合ドメインおよびヒト抗体由来の定常またはエフェクタードメインで構成されたハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種も使用することができ、あるいは可変領域は、分子技術により作製することができる。キメラ抗体の作製方法は、当該技術分野において周知であり、例えば米国特許第5,807,715号を参照されたい。「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域および非-ヒト(マウス、ラットまたは合成など)免疫グロブリン由来の1または複数のCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非-ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と称され、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と称される。一実施形態において、全てのCDRは、ヒト化免疫グロブリン中のドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域は、存在する必要はないが、存在する場合、これらはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち少なくとも約85~90%、例えば約95%以上など同一でなければならない。したがって、可能性のあるCDRを除き、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化された軽鎖およびヒト化された重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリンまたは抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから採用されたアミノ酸による限定数の置換を有することができる。ヒト化または他のモノクローナル抗体は、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に対し実質的に作用しない追加の保存的アミノ酸置換を有することができる。保存的置換の例は、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;および、phe、tyrなどの置換である。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作により構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号を参照)。ヒト抗体は、軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子が、ヒト起源である抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の方法を用いて、産生することができる。ヒト抗体は、関心対象の抗体を分泌するヒトB細胞の不死化により産生することができる。不死化は、例えば、EBV感染によるか、またはトリオーマ細胞を作製するためのヒトB細胞の骨髄腫若しくはハイブリドーマ細胞との融合により、達成することができる。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイ法(例えば、Dowerら、PCT公開番号WO91/17271;McCaffertyら、PCT公開番号WO92/001047;およびWinter、PCT公開番号WO92/20791を参照)により産生されるか、またはヒトコンビナトリアルモノクローナル抗体ライブラリーから選択されることができる(Morphosysウェブサイトを参照)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニック動物を用いて、調製することができる(例えば、Lonbergら、PCT公開番号WO93/12227;およびKucherlapati、PCT公開番号WO91/10741を参照)。
【0100】
したがって、本抗体は、当該技術分野において公知のフォーマットを有することができる。例としては、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDR-グラフト化抗体がある。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、例えばIgG、典型的完全長免疫グロブリン、または重鎖および/または軽鎖の少なくともF-可変ドメインを含む抗体断片のように、組み換えにより作製された抗体、例えば化学的に結合された抗体(断片抗原結合)であり、Fabミニボディ、一本鎖Fab抗体、エピトープタグを伴う一価Fab抗体、例えばFab-V5Sx2を含むFab-断片;CH3ドメインを伴う二量体化された二価Fab(ミニ-抗体);例えば異種ドメインに支援された多量体化により形成された、例えばdHLXドメインの二量体化により形成された、二価Fabまたは多価Fab、例えばFab-dHLX-FSx2;F(ab’)-断片、scFv-断片、多量体化された多価および/または多重特異性scFv-断片、二価および/または二重特異性ディアボディ、BITE(登録商標)(二重特異性T細胞誘導抗体)、三機能性抗体、例えばG以外の様々なクラス由来の多価抗体;単-ドメイン抗体、例えばラクダ科動物または魚類免疫グロブリン由来のナノボディ、ならびに多くの他のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0101】
抗体に加え、標的分子と複合し、かつ、高度に標的特異性のバイオポリマーを作製するために使用される他のバイオポリマー足場は、当該技術分野において周知である。例としては、アプタマー、スピーゲルマー、アンチカリンおよびコノトキシンがある。
【0102】
好ましい実施形態において、抗体フォーマットは、Fv断片、scFv断片、Fab断片、scFab断片、(Fab)2断片およびscFv-Fc融合タンパク質を含む群から選択される。別の好ましい実施形態において、抗体フォーマットは、scFab断片、Fab断片、scFv断片、およびPEG化された断片など、それらの生物学的利用能が最適化された複合体を含む群から選択される。最も好ましいフォーマットの一つは、scFabフォーマットである。
【0103】
非-Ig足場は、タンパク質足場であってよく、かつ、これらはリガンドまたは抗原に結合することが可能であるので、抗体模倣体として使用されてよい。非-Ig足場は、テトラネクチン-ベースの非-Ig足場(例えば、US2010/0028995に記載)、フィブロネクチン足場(例えば、EP1266025に記載);リポカリン-ベースの足場(例えば、WO2011/154420に記載);ユビキチン足場(例えば、WO2011/073214に記載)、トランスフェリン足場(例えば、US2004/0023334に記載)、プロテインA足場(例えば、EP2231860に記載)、アンキリン反復配列ベースの足場(例えば、WO2010/060748に記載)、マイクロタンパク質(好ましくは形成するシスチンノットを形成するマイクロタンパク質)足場(例えば、EP2314308に記載)、Fyn SH3ドメインベースの足場(例えば、WO2011/023685に記載)、EGFR-A-ドメインベースの足場(例えば、WO2005/040229に記載)、およびKunitzドメインベースの足場(例えば、EP1941867に記載)を含む群から選択されてよい。
【0104】
本発明の一実施形態において、本発明の抗体は、下記のように作製され得る:
Balb/cマウスを、0および14日目に、ADM-100μgペプチド-BSA-複合体(完全フロイントアジュバント100μl中に乳化された)、ならびに21および28日目に50μg(不完全フロイントアジュバント100μl中)により免役化した。動物は、融合実験の3日前に、1回腹腔注射および1回静脈内注射として投与される、食塩水100μl中に溶解した該複合体50μgを、受け取った。
【0105】
免疫化されたマウス由来の脾細胞および骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、50%ポリエチレングリコール1mlにより、30秒間、37℃で融合した。洗浄後、細胞を、96-ウェル細胞培養プレートに播種した。ハイブリッドクローンを、HAT培地[20%ウシ胎仔血清およびHAT-補充物を補充したRPMI1640培養培地]において成長させることにより選択した。2週間後、HAT培地を、3継代のためにHT培地と交換し、引き続き通常の細胞培養培地に戻した。
【0106】
この細胞培養物上清を、融合後3週間、抗原特異性IgG抗体について一次スクリーニングした。陽性の試験した微量培養物を、増殖のために、24-ウェルプレートへ移した。再試験後、選択された培養物を、限定-希釈技術を用い、クローニングおよび再クローニングし、かつ、アイソタイプを決定した(同じく、Lane 1985. J. Immunol. Meth. 81: 223-228; Ziegler, B. et al. 1996 Horm. Metab. Res. 28: 11-15を参照)。
【0107】
抗体は、下記の手順に従うファージディスプレイにより作製することができる:
ヒトナイーブ抗体遺伝子ライブラリーHAL7/8を、アドレノメデュリンペプチドに対する組み換え一本鎖F-可変ドメイン(scFv)の単離のために、使用した。この抗体遺伝子ライブラリーを、アドレノメデュリンペプチド配列へ2種の異なるスペーサーにより連結されたビオチンタグを含むペプチドの使用を含む、パニング戦略によりスクリーニングした。非特異的に結合された抗原およびストレプトアビジン結合された抗原を使用するパニングラウンド混合物を使用し、非特異的バインダーのバックグラウンドを最小化した。パニングの第3ラウンドから溶離されたファージを使用し、モノクローナルscFv発現している大腸菌株を作製した。これらのクローン性株の培養物からの上清を、抗原ELISA試験に直接使用した(Hust et al. 2011. Journal of Biotechnology 152: 159-170; Schutte et al. 2009. PLoS One 4, e6625を参照)。
【0108】
マウス抗体のヒト化は、下記の手順に従い実行することができる:マウス起源の抗体のヒト化のために、この抗体配列を、相補性決定領域(CDR)を伴うフレームワーク領域(FR)と抗原の構造的相互作用について分析した。構造モデリングを基に、ヒト起源の好適なFRを選択し、かつ、マウスCDR配列を、ヒトFRに移植した。CDRまたはFRのアミノ酸配列に変動を導入し、FR配列に関する種スイッチにより無効とされた構造相互作用を取り戻すことができる。この構造相互作用の回復は、ファージディスプレイライブラリーを使用するランダムアプローチによるか、または分子モデリングによりガイドされる方向づけられたアプローチを介して、達成され得る(Almagro et al. 2008. Front Biosci. 2008; 13:1619-33を参照)。
【0109】
本発明の内容はまた、前記Pro-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、治療法または治療介入のガイダンスに使用され、ここで、前記Pro-アドレノメデュリンまたは断片のレベルが特定の閾値を上回る場合には、ここで、治療法または治療介入が示唆され、かつ、ここで、前記Pro-アドレノメデュリンまたは断片のレベルが特定の閾値を下回る場合には、治療法または治療介入が示唆されない、本発明による方法でもある。閾値および閾値範囲は先に与えられる。
【0110】
以下の実施形態が、本発明の対象である:
1.
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)うっ血の治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象におけるうっ血の治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ための方法であり、
ここで、前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象であるか、あるいは、ここで、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、うっ血の早期代用マーカーとして使用される方法であって、以下の:
【0111】
・前記対象から得られた体液中のプロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のレベルを測定し;そして、
a)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、前記対象におけるうっ血の範囲と相関があるか、またはうっ血を診断し、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルがうっ血またはうっ血の範囲を示唆するか、または
b)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、前記対象におけるうっ血の治療法または治療介入の成功と相関があり、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入の成功を予測し、および、ここで、特定の閾値を上回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入の必要性を示唆するか、または
c)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血の予測と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、うっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血を予測し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を予測するか、または、
d)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、治療法または治療介入後の残留うっ血を示唆し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を示唆するか、または
e)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、退院の決定の評価と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、対象を退院させることはできないことを意味し、かつ、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、対象を退院させてもよいことを意味すること、を含み、
ここで、前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片が、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4による成熟ADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADMを含む群から選択される、方法。
【0112】
2.
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)うっ血の治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象におけるうっ血の治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ための方法であり、
ここで、前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象であるか、あるいは、ここで、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、かつ、ここで、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、うっ血の早期代用マーカーとして使用される方法であって、以下の:
【0113】
・前記対象から得られた体液中のプロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つのバインダーを使用することによって免疫反応性検体のレベルを測定し;そして、
a)前記免疫反応性検体のレベルが、前記対象におけるうっ血の範囲と相関があるか、またはうっ血を診断し、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルがうっ血またはうっ血の範囲を示唆するか、または
b)前記免疫反応性検体のレベルが、前記対象におけるうっ血の治療法または治療介入の成功と相関があり、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、治療法または治療介入の成功を予測し、および、ここで、特定の閾値を上回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入の必要性を示唆するか、または
c)前記免疫反応性検体のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血の予測と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、うっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血を予測し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、治療法後のうっ血緩和を予測するか、または、
d)前記免疫反応性検体のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、治療法または治療介入後の残留うっ血を示唆し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を示唆するか、または
e)前記免疫反応性検体のレベルが、退院の決定の評価と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、対象を退院させることはできないことを意味し、かつ、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、対象を退院させることはできないことを意味すること、を含み、
ここで、前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片が、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4によるADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADMを含む群から選択される、方法。
【0114】
3.
前記うっ血の範囲が、うっ血スコア、特に臨床的うっ血スコアとして表される、項目1または2に記載の方法。
【0115】
4.
前記対象が、以下の:
a)うっ血のグレードに関する群、または
b)うっ血の治療法または治療介入に対して非応答体、および/または応答体、および/または不十分な応答体、または
c)うっ血緩和群またはうっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血群、
に層別化される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
5.
前記断片が、配列番号3によるMR-proADMまたは配列番号4によるADM-NHから選択され得る、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
6.
前記プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のレベルが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に対するバインダーを使用することによって測定される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
7.
前記バインダーが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に結合する抗体、抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択される、項目6に記載の方法。
【0119】
8.
前記閾値が、閾値範囲内にあり、すなわち、配列番号4による血漿ADM-NHの閾値範囲が50~100pg/mlであり、血漿MR-proADMの閾値範囲が0.5~1.5nmol/Lであり、および血漿CT-proADMの閾値範囲が85~350pmol/Lである、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
9.
前記プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片の測定が、1人の患者において複数回実施される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
10.
前記サンプルが、病院への入院時または退院前に採取される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
11.
前記モニタリングが、得られた予防的および/または治療学的な測定値に対して前記対象の応答を評価するために実施される、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
12.
前記方法が、前記対象をうっ血グレード群に層別化するのに使用される、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
13.
前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベル、あるいは、前記免疫反応性検体のレベルが、急性心不全、すなわち、新規発症AHF、急性非代償性HF、または急性非代償性慢性HFのいずれかに罹患している対象における死亡または有害事象のリスクと相関があるか、あるいは、ここで、前記対象が、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、死亡または有害事象の高いリスクを予測する、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
14.
前記Pro-アドレノメデュリンまたはその断片のレベル、あるいは、前記免疫反応性検体のレベルが、治療法または治療介入のガイダンスに使用され、ここで、前記Pro-アドレノメデュリンまたは断片のレベルが特定の閾値を上回る場合には、ここで、治療法または治療介入が示唆され、かつ、ここで、前記Pro-アドレノメデュリンまたは断片のレベルが特定の閾値を下回る場合には、治療法または治療介入が示唆されない、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
15.
前記Pro-アドレノメデュリンまたはその断片のレベル、あるいは、前記免疫反応性検体のレベルが、治療法または治療介入の必要性を決定するのに使用される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
16.
前記治療介入または治療法が、利尿剤の投与、循環作動薬の投与、血管拡張薬の投与、限外濾過を含む群から選択される、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
17.
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象における治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ための試薬、医療薬またはキットの製造におけるバインダーの使用であり、
ここで、前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象であるか、あるいは、ここで、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、ならびに、ここで、前記バインダーが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に結合し、そして、前記対象から得られた体液サンプル中のプロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のレベルを決定でき、かつ、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、うっ血の早期代用マーカーとして使用され;そして、ここで、
【0129】
a)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、前記対象におけるうっ血の範囲と相関があるか、またはうっ血を診断し、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルがうっ血を示唆するか、または
b)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、前記対象における治療法または治療介入の成功と相関があり、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、治療法または治療介入の成功を予測し、および、ここで、特定の閾値を上回るレベルが、治療法または治療介入の必要性を示唆するか、または
c)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血の予測と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、うっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血を予測し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を予測するか、または、
d)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、治療法または治療介入後の残留うっ血を示唆し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を示唆するか、または
e)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、退院の決定の評価と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、対象を退院させることはできないことを意味し、かつ、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、対象を退院させてもよいことを意味すること、を含み、
ここで、前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片が、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4によるADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADMを含む群から選択される、試薬、医療薬またはキットの製造におけるバインダーの使用。
【0130】
18.
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)うっ血の治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象におけるうっ血の治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ための試薬、医療薬またはキットの製造における少なくとも1つのバインダーの使用であり、
【0131】
ここで、前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象であるか、あるいは、ここで、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、ならびに、ここで、前記バインダーが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のアミノ酸配列内の領域に結合し、そして、前記対象から得られた体液サンプル中の免疫反応性検体のレベルを決定でき、かつ、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片が、うっ血の早期代用マーカーとして使用され;そして、ここで、
【0132】
a)前記免疫反応性検体のレベルが、前記対象におけるうっ血の範囲と相関があるか、またはうっ血を診断し、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルがうっ血を示唆するか、または
b)前記免疫反応性検体のレベルが、前記対象における治療法または治療介入の成功と相関があり、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、治療法または治療介入の成功を予測し、および、ここで、特定の閾値を上回るレベルが、治療法または治療介入の必要性を示唆するか、または
c)前記免疫反応性検体のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血の予測と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、うっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血を予測し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、治療法後のうっ血緩和を予測するか、または、
d)前記免疫反応性検体のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、治療法または治療介入後の残留うっ血を示唆し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を示唆するか、または
e)前記免疫反応性検体のレベルが、退院の決定の評価と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、対象を退院させることはできないことを意味し、かつ、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、対象を退院させてもよいことを意味すること、を含み、
ここで、前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片が、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4によるADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADMを含む群から選択される、試薬、医療薬またはキットの製造における少なくとも1つのバインダーの使用。
【0133】
19.
前記うっ血の範囲が、うっ血スコア、特に臨床的うっ血スコアとして表される、項目17または18に記載の使用。
【0134】
20.
前記対象が、以下の:
a)うっ血のグレードに関する群、または
b)うっ血の治療法または治療介入に対して非応答体、および/または応答体、および/または不十分な応答体、または
c)うっ血緩和群またはうっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血群、
に層別化される、項目17~19のいずれか一項に記載の使用。
【0135】
21.
前記断片が、配列番号3によるMR-proADMまたは配列番号4による成熟ADM-NHから選択され得る、項目17~20のいずれか一項に記載の使用。
【0136】
22.
前記バインダーが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に結合する抗体、抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択される、項目17~21のいずれか一項に記載の使用。
【0137】
23.
前記閾値が、閾値範囲内にあり、すなわち、配列番号4による血漿ADM-NHの閾値範囲が50~100pg/mlであり、血漿MR-proADMの閾値範囲が0.5~1.5nmol/Lであり、および血漿CT-proADMの閾値範囲が85~350pmol/Lである、項目17~22のいずれか一項に記載の使用。
【0138】
24.
前記プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片の測定が、1人の対象において複数回実施される、項目17~23のいずれか一項に記載の使用。
【0139】
25.
前記サンプルが、病院への入院時または退院時に採取される、項目17~24のいずれか一項に記載の使用。
【0140】
26.
前記モニタリングが、得られた予防的および/または治療学的な測定値に対して前記対象の応答を評価するために実施される、項目17~25のいずれか一項に記載の使用。
【0141】
27.
前記方法が、前記対象をうっ血グレード群に層別化するのに使用される、項目17~26のいずれか一項に記載の使用。
【0142】
28.
前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベル、あるいは、前記免疫反応性検体のレベルが、急性心不全または心不全に罹患している対象における死亡または有害事象のリスクと相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、死亡または有害事象の高いリスクを予測する、項目17~27のいずれか一項に記載の使用。
【0143】
29.
前記Pro-アドレノメデュリンまたはその断片のレベル、あるいは、前記免疫反応性検体のレベルが、治療法または治療介入のガイダンスに使用され、ここで、前記Pro-アドレノメデュリンまたは断片のレベルが特定の閾値を上回る場合には、ここで、治療法または治療介入が示唆され、かつ、ここで、前記Pro-アドレノメデュリンまたは断片のレベルが特定の閾値を下回る場合には、治療法または治療介入が示唆されない、項目17~28のいずれか一項に記載の使用。
【0144】
30.
前記Pro-アドレノメデュリンまたはその断片のレベル、あるいは、前記免疫反応性検体のレベルが、治療法または治療介入の必要性を決定するのに使用される、項目17~29のいずれか一項に記載の使用。
【0145】
31.
前記治療介入または治療法が、利尿剤の投与、循環作動薬の投与、血管拡張薬の投与、限外濾過を含む群から選択される、項目17~30のいずれか一項に記載の使用。
【0146】
32.
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象における治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ためのキット、試薬または医療薬であり、
ここで、前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象であるか、あるいは、ここで、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、ならびに、ここで、前記キット、試薬または医療薬が、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に結合するバインダーを含み、そして、そのバインダーが、前記対象から得られた体液サンプル中のプロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のレベルを決定でき;そして、ここで、
【0147】
a)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、前記対象におけるうっ血の範囲と相関があるか、またはうっ血を診断し、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルがうっ血を示唆するか、または
b)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、前記対象における治療法または治療介入の成功と相関があり、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、治療法または治療介入の成功を予測し、および、ここで、特定の閾値を上回るレベルが、治療法または治療介入の必要性を示唆するか、または
c)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血の予測と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、うっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血を予測し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を予測するか、または、
d)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、治療法または治療介入後の残留うっ血を示唆し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を示唆するか、または
e)前記プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のレベルが、退院の決定の評価と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、対象を退院させることはできないことを意味し、かつ、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、対象を退院させてもよいことを意味すること、を含み、
ここで、前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片が、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4によるADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADMを含む群から選択される、キット、試薬または医療薬。
【0148】
33.
a)対象におけるうっ血を診断するか、またはうっ血の範囲を評価もしくは観察するか、
b)治療法または治療介入の必要性を予測、決定、もしくは観察するか、またはうっ血の治療法または治療介入の成功を予測、決定、もしくは観察するか、または対象における治療法または治療介入の指針となるか、
c)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を予測するか、
d)対象におけるうっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血を評価するか、あるいは、
e)対象の退院の決定を評価する、
ためのキット、試薬または医療薬であり、
【0149】
ここで、前記対象は、新規発症AHFまたは急性非代償性HFまたは急性非代償性慢性HFのいずれかである急性心不全に罹患している対象であるか、あるいは、ここで、前記対象は、慢性心不全の兆候/症状の悪化がある慢性心不全に罹患している対象であり、ならびに、ここで、前記キット、試薬または医療薬が、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片のアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つのバインダーを含み、そして、そのバインダーが、前記対象から得られた体液サンプル中の免疫反応性検体のレベルを決定でき;そして、ここで、
【0150】
a)前記免疫反応性検体のレベルが、前記対象におけるうっ血の範囲と相関があるか、またはうっ血を診断し、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルがうっ血を示唆するか、または
b)前記免疫反応性検体のレベルが、前記対象における治療法または治療介入の成功と相関があり、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、治療法または治療介入の成功を予測し、および、ここで、特定の閾値を上回るレベルが、治療法または治療介入の必要性を示唆するか、または
c)前記免疫反応性検体のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血の予測と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、うっ血の治療法または治療介入後の残留うっ血を予測し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を予測するか、または、
d)前記免疫反応性検体のレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和または残留うっ血と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、治療法または治療介入後の残留うっ血を示唆し、それに対して、特定の閾値を下回るレベルが、うっ血の治療法または治療介入後のうっ血緩和を示唆するか、または
e)前記免疫反応性検体のレベルが、退院の決定の評価と相関があり、ここで、特定の閾値を上回る上昇レベルが、対象を退院させることはできないことを意味し、かつ、ここで、特定の閾値を下回るレベルが、対象を退院させてもよいことを意味すること、を含み、
ここで、前記プロ-アドレノメデュリンまたは断片が、配列番号1によるプロ-アドレノメデュリン、または配列番号2によるPAMP、または配列番号3によるMR-proADM、または配列番号4によるADM-NH、または配列番号5によるADM-Gly、または配列番号6によるCT-proADMを含む群から選択される、キット、試薬または医療薬。
【0151】
34.
前記断片が、配列番号3によるMR-proADMまたは配列番号4による成熟ADM-NHから選択され得る、項目32または33に記載のキット、試薬または医療薬。
【0152】
35.
前記バインダーが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に結合する抗体、抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択される、項目32~34のいずれか一項に記載のキット、試薬または医療薬。
【0153】
36.
前記閾値が、閾値範囲内にあり、すなわち、配列番号4による血漿ADM-NHの閾値範囲が50~100pg/mlであり、血漿MR-proADMの閾値範囲が0.5~1.5nmol/Lであり、および血漿CT-proADMの閾値範囲が85~350pmol/Lである、項目32~35のいずれか一項に記載のキット、試薬または医療薬。
【実施例
【0154】
実施例1
抗体の作製およびそれらの親和定数の決定
本発明者らは、bio-ADMのN-末端(NT-ADM)、中央領域(MR-ADM)およびC-末端(CT-ADM)部分に結合するマウスモノクローナル抗体を開発し、かつ、それらの親和定数を決定した(表1)。
【0155】
免疫化のためのペプチド
ペプチドは、JPT Peptide Technologies GmbH(Berlin, Germany)により供給された。ペプチドは、スルホ-SMCC架橋法を用い、BSAに結合させた。この架橋手順は、製造業者(Thermo Fisher/ Pierce)の指示に従い行った。
マウス抗体の作製
Balb/cマウスを、0および14日目に、100μgペプチド-BSA-複合体(完全フロイントアジュバント100μl中に乳化された)、ならびに21および28日目に50μg(不完全フロイントアジュバント100μl中)により免役化した。動物は、融合実験の3日前に、1回腹腔注射および1回静脈内注射として投与される、食塩水100μl中に溶解した複合体50μgを受け取った。
【0156】
免疫化されたマウス由来の脾細胞および骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、50%ポリエチレングリコール1mlにより、30秒間、37℃で融合した。洗浄後、細胞を、96-ウェル細胞培養プレートに播種した。ハイブリッドクローンを、HAT培地[20%ウシ胎仔血清およびHAT-補充物を補充したRPMI1640培養培地]において成長させることにより選択した。2週間後、HAT培地を、3継代のためにHT培地と交換し、引き続き通常の細胞培養培地に戻した。
【0157】
この細胞培養物上清を、融合後3週間、抗原特異性IgG抗体について一次スクリーニングした。陽性の試験した微量培養物を、増殖のために、24-ウェルプレートへ移した。再試験後、選択された培養物を、限定-希釈技術を用い、クローニングおよび再クローニングし、かつ、アイソタイプを決定した(Lane, 1985. J. Immunol. Meth. 81: 223-228; Ziegler et al. 1996. Horm. Metab. Res. 28: 11-15を参照)。
【0158】
表1:
【表3】
【0159】
モノクローナル抗体産生
抗体は、標準抗体産生法(Marx et al, 1997. Monoclonal Antibody Production, ATLA 25, 121)により作製し、およびプロテインAにより精製した。抗体の純度は、SDSゲル電気泳動分析を基に、>95%であった。
【0160】
親和定数
抗体のアドレノメデュリンに対する親和性を決定するために、固定化された抗体に対するアドレノメデュリンの結合キネティックスを、Biacore 2000システム(GE Healthcare Europe GmbH, Freiburg, Germany)を使用する、無標識表面プラズモン共鳴により決定した。抗体の可逆性固定化は、製造業者の指示に従い、CM5センサー表面へ、高密度で共有結合された抗-マウスFc抗体を用いて行った(マウス抗体捕獲キット;GE Healthcare)。
【0161】
標識手順(トレーサー)
抗体(PBS中1mg/ml、pH7.4)100ug(100ul)を、アクリジニウムNHS-エステル(アセトニトリル中1mg/ml、InVent GmbH, Germany)10ulと混合し(EP 0 353 971)、かつ、室温で20分間インキュベーションした。標識したCT-Hを、Bio-Sil(登録商標)SEC 400-5(Bio-Rad Laboratories, Inc., USA)上のゲル-濾過HPLCにより精製した。精製された標識された抗体を、溶液(リン酸カリウム300mmol/L、NaCl 100mmol/L、Na-EDTA 10mmol/L、ウシ血清アルブミン5g/L、pH7.0)中に希釈した。最終濃度は、200μLにつき標識された化合物およそ800.000相対発光量(RLU)(およそ20ng標識抗体)であった。アクリジニウムエステル化学発光を、AutoLumat LB 953(Berthold Technologies GmbH & Co. KG)を用いて測定した。
【0162】
固相
ポリスチレンチューブ(Greiner Bio-One International AG, Austria)を、抗体((抗体1.5μg/0.3mL、NaCl 100mmol/L、トリス/HCl 50mmol/L、pH7.8)によりコーティングした(室温、18時間)。5%ウシ血清アルブミンでブロックした後、チューブをPBS(pH7.4)で洗浄し、真空乾燥した。
【0163】
キャリブレーター
合成ヒトADM(hADM)(Bachem, Switzerland)を、50mMトリス/HCl、250mM NaCl、0.2%Triton X-100、0.5%BSA、20錠/Lプロテアーゼコンプリートプロテアーゼ阻害カクテル錠(Roche AG);pH7.8を用い、線形希釈した。キャリブレーターは、使用まで-20℃で貯蔵した。
【0164】
実施例2
高シグナル/ノイズ比を生じる抗体組み合わせの決定
ADM免疫測定:
サンプル(またはキャリブレーター)50ulを、標識された二次抗体(200ul)の添加後、コーティングされたチューブにピペットで入れ、これらのチューブを、室温で2時間インキュベーションした。未結合のトレーサーを、洗浄液(20mM PBS、pH7.4、0.1%TritonX-100)により、5回洗浄(各1ml)することにより除去した。チューブに結合した化学発光を、LB 953(Berthold Technologies GmbH & Co. KG)を用いて測定した。
【0165】
全ての抗体を、コーティングされたチューブおよび標識抗体として、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用し、下記の変数と組み合わせた(表2)。インキュベーションは、hADM-免疫測定で説明したように行った。結果は、特異的シグナル(10ng/ml ADM)/バックグラウンド(ADMを含まないサンプル)シグナルの比で示した。
【0166】
表2:
【表4】
【0167】
驚くべきことに、本発明者らは、最高シグナル/ノイズ比の組み合わせとしてMR-ADMとCT-ADMの組み合わせを認めた。
引き続き、本発明者らは、この抗体-組み合わせを、bio-ADMを計測するためのさらなる研究に使用した。本発明者らは、固相抗体として抗MR-ADMを、および標識抗体として抗CT-ADMを使用した。典型的投与量/シグナル曲線を、図1に示している。本アッセイの分析感度(10回試行の平均、ADM-非含有サンプル+2SD)は、2pg ADM/mlであった。
【0168】
実施例3
ヒトアドレノメデュリンの安定性:
ヒトADMを、ヒトクエン酸血漿中に希釈し(n=5、最終濃度10ng ADM/ml)、24℃でインキュベーションした。選択された時点で、アリコートを、-20℃で凍結した。これらのサンプルを解凍した直後に、前述のhADM免疫測定を使用し、hADMを定量した。
【0169】
表3は、ヒト血漿中、24℃でのhADMの安定性を示す。
【表5】
【0170】
驚くべきことに、サンドイッチイムノアッセイにおいてMR-ADMおよびCT-ADMの抗体-組み合わせを使用すると、この被検体の分析前安定性は、高かった(わずかに0.9%/時の免疫反応性の平均喪失)。対照的に、別のアッセイ法を使用すると、わずか22分間の血漿半減期が報告された(Hinson et al. 2000 Endocrine Reviews 21(2):138-167)。病院の日常業務におけるサンプルの採取から分析までの時間は2時間未満であるので、使用されたADM検出法は、日常的診断に適している。許容し得るADM-免疫反応性の安定性に達するには、サンプルへの一般的でない添加物(アプロチニンなど(Ohta et al. 1999. Clin Chem 45 (2): 244-251))は不要であることは、驚きに値する。
【0171】
実施例4
キャリブレーター-調製の再現性
本発明者らは、ADMアッセイのためのキャリブレーターの調製において、結果の高い変動性を認めた(平均CV 8.5%、表4を参照)。これは、プラスチックおよびガラスの表面へのhADMの高い吸着のためであるかもしれない(Lewis et al. 1998. Clinical Chemistry 44 (3): 571-577)。この作用は、界面活性剤(最大1%TritonX 100または1%Tween 20)、タンパク質(最大5%BSA)および高イオン強度物質(最大1M NaCl)またはそれらの組み合わせの添加により、わずかだけ低下した。驚くべきことに、余分の抗ADM抗体(10ug/ml)を、キャリブレーター希釈緩衝液に添加した場合、ADMアッセイキャリブレーター-調製物の回収および再現性は、調製間においてCV<1%まで実質的に改善された(表4)。
幸いなことに、N-末端抗体の存在は、MR-およびC-末端抗体の組み合わせにより発生したbio-ADM-シグナルに影響を及ぼさなかった(図1)。
【0172】
表4:
【表6】
【0173】
キャリブレーターの調製物間変動
ADMアッセイキャリブレーターを、NT-ADM-抗体10μg/mlを伴うまたは伴わずに、上述のように調製した。変動係数(CV)は、5つの独立した調製試行から得た。キャリブレーターは、上述のADMアッセイを用いて測定した(s/n-r=シグナル対ノイズ比)。全ての下記の試験について、本発明者らは、トレーサー緩衝液中の補充物としてNT-ADM抗体10μg/mlおよびNT-ADM抗体10μg/mlの存在下で調製したキャリブレーターを基にした、ADMアッセイを使用した。
【0174】
実施例5
感度
アッセイ感度の目的は、健常対象のADM濃度を完全に対象とすることである。
【0175】
健常対象におけるbio-ADM濃度:
健常対象(n=100、平均年齢56歳)を、bio-ADMアッセイを用いて測定した。中央値は24.7pg/mlであり、最低値は11pg/mlであり、99パーセンタイル値は43pg/mlであった。アッセイ感度は2pg/mlであったので、全健常対象の100%が、記載のbio-ADMアッセイを用い、検出可能であった。
【0176】
市販の完全に自動化された均質時間分解アッセイを使用し、血漿中のMR-proADM(BRAHMS MR-proADM KRYPTOR; BRAHMS GmbH, Hennigsdorf, Germany)を測定した(Caruhel et al. 2009. Clin Biochem. 42 (7-8):725-8)。
【0177】
実施例6
(PROTECT)
調査集団および計測値
この試験の詳細は、公開されている(Massie et al. 2010. N Engl J Med. 363:1419-1428.; Weatherleyfunctioned al. 2010. J Card Fail. 16:25-35.; Voors et al. 2011. J Am Coll Cardiol. 57:1899-1907)。要するに、腎機能障害(クッククロフト?ゴルト式を有する20~80mL/分の間のクレアチンクリアランスであると見積もられている)を有する2,033人の急性心不全患者を、組み入れ、そして、ロロフィリンまたはプラセボに無作為化した。PROTECT試験のプロトコールは、それぞれの参加施設にて倫理委員会によって承認され、すべての関係者から書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0178】
bio-ADMを、Sphingotec GmbH(Hennigsdorf, Germany)によって開発された免疫学的アッセイを使用して、PROTECTトライアル(すべての利用可能なベースラインサンプル)に組み込まれた1572人の入院AHF患者において、ベースライン評価中に採取した血漿から計測した。PROTECT(うっ血および腎機能に対する治療効果を評価するために急性心不全および体液過剰で入院した患者に関する、選択的A1アデノシン受容体アンタゴニストのプラセボ対照無作為化調査を表す)は、AHFのために入院した2033人の患者におけるプラセボに対してロロフィリンを比較した、多施設、無作為化二重盲検試験であった。
【0179】
転帰の試験
臨床的うっ血スコア
以前に強調したように、臨床的代替物は、うっ血の検出に関して最適を下回る予測値を有する。この分析において、我々は、精度を高めるために3つの最も強力なうっ血の臨床的代替物(すなわち、JVP、末梢浮腫、および起座呼吸)を組み合わせて、以下に提示されたスキームを使用して複合臨床うっ血スコア(CCS)を開発した:
【0180】
【表7】
【0181】
次に、これらの3つのパラメーターそれぞれのスコアは、複合うっ血スコアを得るために加算され、そしてそれは、0~8の範囲をとった。類似のスキームが、Ambrosyら(Ambrosy et al. 2013. European Heart Journal 34 (11): 835-843)によって以前に利用された。
【0182】
次に、以下のアルゴリズムを、うっ血のグレード重症度に利用した:
CCS=0、臨床的うっ血なし
CCS 1~3、軽度の臨床的うっ血
CCS 4~5、中程度の臨床的うっ血
CCS ≧6、重度の臨床的うっ血
【0183】
うっ血緩和のマーカー
・利尿反応:40mgの利尿剤用量あたりの4日目までの体重減少と規定される。
・血液濃度:0(ベースラインと比較して、4日目までにヘモグロビンレベルに減弱があるかまたは変化がない場合)または1(ベースラインと比較して、4日目までにヘモグロビンレベルの増大がある場合)とコードされる。
・重度の残留うっ血:7日目までにJVP、起座呼吸、および浮腫評価に基づいてCCS≧2と規定される。
【0184】
統計解析
ベースライン臨床的特徴およびbio-ADMを含めたバイオマーカーを、ベースラインにおける臨床的うっ血の重症度によってまとめた(先に提示したスキーム)。ベースラインにおける臨床的うっ血の重症度と独立に相関したベースライン因子を、多変数論理計算回帰モデルを使用して決定した(CCS変数を、2つのレベル;0=軽度/中程度(CCS<6)および1=重度(CCS≧6)を用いた二元転帰として再コード化した)。
【0185】
ベースラインbio-ADMレベルと利尿反応(連続的変量)との関係は、線形回帰分析を使用して評価した。血液濃度および重度の残留うっ血転帰に関して、二元論理計算回帰分析を実施した。多変数モデルを、bio-ADMレベルとこれらの転帰との調整後相関を評価するために利用した。
【0186】
結果
表5では、うっ血の重症度につれてbio-ADM濃度が増大することが実証される。
【0187】
表5:ベースラインにおける臨床的うっ血の重症度によるベースライン臨床変数およびバイオマーカー
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0188】
さらに、bio-ADMがうっ血の重症度の独立予測因子であり、かつ、すべての他の入手可能な変数の中で最も強力であることが、多変数ロジスティック回帰によって実証された(表6)。
【0189】
表6:多変数論理計算回帰モデル(重度対軽度/中程度)におけるベースライン臨床的うっ血の重症度と独立に相関するベースライン因子
【表9】
【0190】
【化7】
【0191】
さらに、bio-ADMがうっ血緩和を予測するか否か分析した。表7では、bio-ADMが、7日目までの重度の残留うっ血の独立予測因子であることが実証される。
【0192】
表7:ベースラインbio-ADMレベルとうっ血緩和のマーカーとの相関
【表10】
【0193】
【化8】
【0194】
うっ血のマーカーに関して、bio-ADM濃度がより高いことが予想されるように、より多くの利尿剤が治療法に使用された(表8および9)。
【0195】
表8:ベースラインbio-ADMレベルの三分位における、7日目または退院(より早期の場合)までの総IV利尿剤用量;PROTECT
【表11】
【0196】
表9:ベースラインbio-ADMレベルと、7日目またはより早期であれば退院までの総IV利尿剤用量との間の未調整相関および調整相関;線形回帰分析;PROTECT
【表12】
【0197】
同じサンプルセットにおいて、同様にMR-proADMを測定した。MR-proADMの三分位によるベースライン特徴を表10に示す:bio-ADMに類似して、高レベルのMR-proADMが、浮腫の増大した範囲と相関していた。
【0198】
表10:MR-proADMの三分位によるベースライン特徴
【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【0199】
実施例7(BIOSTAT)
追加解析を、BIOSTAT調査(BIOlogy Study to TAilored Treatment in Chronic Heart Failure)により実施した。調査は、詳細に記載されている(WWW.BIOSTAT-CHF.EU; Voors et al. 2016. Eur J Heart Fail. Jun;18 (6):716-26)。BIOlogy Study to TAilored Treatment in Chronic Heart Failure(BIOSTAT-CHF)には、欧州諸国11か国から、心不全の悪化の兆候/症状がある2516人の患者が組み入れられ、そしてかれらは、準最適な医学的処置を受けていると考えられた。スコットランドからの別の1738人の患者を、バリデーションコホートに組み入れた。全体的に、両患者コホートともよく一致していた。患者の大部分が、急性心不全のために入院しており、残りは、外来診療所において心不全の悪化の兆候および/または症状が現れていた。患者の約半分が、ニューヨーク心臓協会のクラスIIIに入っており、そして、7%対34%の指数対バリデーションコホートの患者が、保存された駆出分画率を有する心不全に罹患していた。調査設計に従って、すべての患者に利尿剤を使用したが、両コホートの組み入れ基準のため、患者には、最適な、徴候ベースの薬物療法ではなかった。追跡期間において、ガイドライン推奨用量への漸増が奨励された。
【0200】
調査集団
患者は、以下の組み入れ基準を満たした:
・新規発症または悪化した心不全の症状を有している≧18歳の年齢であり、
・以下のいずれかによって記録される心機能不全に関する客観的証拠を有しており、
・≦40%ORの左心室駆出分画率、
・それぞれ、>400pg/mLまたは>2000pg/mlのBNPおよび/またはN末端親脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)の血漿中濃度、
【0201】
・組み入れ時点で、経口または静脈内フロセミド≧40mg/日または同等物を用いて治療されており、
・以前に徴候ベースの治療法[アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤/アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)およびβ-ブロッカー]を用いて治療されていないか、あるいは組み入れ時点で、これらの薬物の目標用量の≦50%を受けているか、
・治療医によってACE阻害薬/ARBおよび/またはβ-ブロッカーが開始されるか、または漸増されることが予期される。
【0202】
患者を、入院患者として、または外来診療所から登録した。約2/3が入院しており、そして1/3が外来患者の状態で見出された。
ベースラインにおけるバイオマーカー計測値が入手可能であった、トライアルに含まれるすべてのタイプの患者(n=1806)を含めた患者のサブセットを、本発明で分析した。PROTECT調査(実施例6)に類似して、BIOSTAT調査でも同様に、高レベルのbio-ADMが、高い重症度の浮腫と相関した(表11)。
【0203】
表11:末梢浮腫の重症度に基づくベースライン臨床変数および標準的なバイオマーカー;BIOSTAT
【表14】
【0204】
同じサンプルセットにおいて、同様にMR-proADMを測定した。MR-proADMの三分位によるベースライン特徴を表12に示す:bio-ADMに類似して、高レベルのMR-proADMが、浮腫の増大した範囲と相関していた。
【0205】
表12:MR-proADMの三分位によるベースライン特徴
【表15-1】
【表15-2】
【表15-3】
【0206】
実施例8
(サブグループ分析PROTECT)
表13は、左室駆出分画率(LVEF)の状態に基づく、bio-ADMレベルと臨床的うっ血との相関に対するPROTECTトライアルに関するデータを示す。駆出分画率に基づく分類法が現在心不全に使用されている中で最も相関のある表現型検査なので、分析を、HFrEF対HFpEFサブグループで実施した。bio-ADMレベルと臨床的うっ血スコアとの相関は、2つのサブグループで同等であった。
【0207】
表13:PROTECTにおける駆出分画率の状態によるベースラインbio-ADMレベル(ログ変換)と臨床的うっ血スコアとの間の相関
【表16】
【0208】
低減された駆出分画率(HFrEF)を伴う心不全を、LVEF<40%と規定し、そして、保存された駆出分画率(HFpEF)を伴うと心不全を、LVEF≧50%と規定した。
LVEFデータは、763人の患者(利用可能なベースラインbio-ADM計測値を有する1572人の患者のうち)においてのみ利用可能であった;これらのうち、545人がHFrEFを有し、102人がHFpEFを有していた。
【0209】
実施例9
うっ血のある患者におけるbio-ADMの連続計測値(モニタリング)(PROTECT調査)
うっ血状態に関するbio-ADMレベルを観察するために、PROTECTトライアルに組み込まれた入院AHF患者において、追跡評価中に採取した血漿(2日目および7日目のすべての入手可能なサンプル)から、bio-ADMを計測した。異なった時点でのすべての患者のbio-ADMレベルの中央値を、表14にまとめる。bio-ADMレベルを、7日目の治療成功に基づいて経時的に分析した(先に説明したように複合うっ血スコア[CCS]を利用して、7日目までのうっ血の状態に基づいて規定した)。
図2は、7日目までの重度の残留うっ血がある患者が、高いベースラインレベルのbio-ADMを有し、そして、これらの高レベルが、治療法の7日間の経過後にも維持され、それに対して、ベースラインと比較して下がったレベルが、7日目までに軽度のうっ血のみまたはうっ血が見られない患者において7日目まで観察されたことを示す。
【0210】
【表17】
【0211】
実施例10
臨床的に評価したうっ血に関するbio-ADMとMR-proADMの予測値の比較分析
a)PROTECT調査
表15には、PROTECTトライアルにおける、ベースライン時の臨床的うっ血の重症度の予測に関するbio-ADMとMR-proADMとの比較分析、ならびに7日目までの重度の残留うっ血の存在が提示される。臨床的うっ血を、先に記載した複合うっ血スコア(CCS)を用いて評価した。ベースライン臨床的うっ血の重症度を、CCSが<6であった場合には、軽度/中程度、そして、CCSが≧6である場合には、重度と等級づけした。次に、ベースラインにおけるbio-ADM、MR-proADMレベルおよび臨床的うっ血の重症度の間の未調整相関および調整相関を、一変量および多変量バイナリ論理計算回帰モデルにより評価した。ボディーマスインデックス、血清アルブミン、総コレステロール、BNP、心房細動の病歴および既往HF入院加療を含めたベースライン多変数モデルを、20.0%の有意水準でベースライン時の臨床的うっ血の重症度と相関した単変量変数を含めたモデル対する後退的選択を実施した後に、多変数解析のために同定した。曲線下面積(AUC)を、bio-ADMおよびMR-proADMに関して計算して、軽度/中程度と重度の臨床的うっ血との間の2つのバイオマーカーの判別値を定量化し、そして、比較した。
【0212】
残留うっ血に関して、7日目に評価したCCSを利用した。7日目までのCCSが≧3であった場合に、重度の残留うっ血が存在したと見なした。再び、7日目までのbio-ADM、MR-proADMレベルおよび重度の残留うっ血の存在の間の未調整相関および調整相関を、一変量および多変量バイナリ論理計算回帰モデルにより評価した。起座呼吸、頸静脈圧、末梢浮腫、経皮的な治療介入の履歴、ペースメーカー、ACEI/ARB使用、BMI、拡張期血圧、BUN、ヘマトクリットおよびBNPを含めたベースラインモデルを、20.0%の有意水準で7日目までの重度の残留うっ血の存在と相関した単変量変数を含めたモデルに対する後退的選択を実施した後に、多変数解析のために同定した。AUCを計算して、重度の残留うっ血の存在に関するバイオマーカーの判別値を定量化し、そして、比較した。
【0213】
表15:ベースライン時のうっ血の重症度およびPROTECTにおいて7日目までの重度の残留うっ血の存在を予測する際のベースラインbio-ADMおよびMR-proADMレベルの比較分析
【表18】
【0214】
b)BIOSTAT調査
表16には、BIOSTATにおけるbio-ADM、MR-proADMレベルおよびベースライン臨床的うっ血の重症度の間の相関が提示される。臨床的うっ血を、わずかに異なったCCS(PROTECTで利用したものとの比較)を利用して評価したが、類似した統計的アプローチを分析に利用した。浮腫、起座呼吸および頸静脈圧を使用することによって、CCSを計算したが、以下の表中に提示したとおり、スコアは0~5の範囲のみに及んだ:
【0215】
【表19】
【0216】
うっ血のベースライン重症度を、CCSが<2であった場合に、なし/軽度(N=709)、そして、CCSが≧2であった場合に、重度(N=635)と規定した。バイナリの論理計算回帰モデルを利用して、未調整相関および調整相関を評価した。PROTECT(BMI、血清アルブミン、総コレステロール、BNP、心房細動の病歴および既往HF入院加療を含む)において同定されたのと同じベースラインモデルを、多変数調節のために利用した。
【0217】
表16:BIOSTATにおけるベースライン時のうっ血の重症度を予測する際のベースラインbio-ADMおよびMR-proADMレベルの比較分析
【表20】
【0218】
実施例11
a)GREAT調査
3つの国(英国、仏国およびスイス)の参加大学病院の救急外来への急性呼吸困難を示す任意抽出AHF患者(n=1075)の3つのコホートを採用した。AHFを欧州心臓病学会のガイドラインに従って、利尿剤および/または血管拡張療法の強化を必要とする肺もしくは末梢の浮腫または頸静脈圧の臨床徴候に伴う息切れの進行性の悪化および新規発症と規定した。組み入れは、腎臓機能とは無関係であるが、確定された腎代償療法による末期腎不全に罹患している患者は除いた。これらの調査は、ヘルシンキの宣言書およびそれぞれの研究倫理委員会からの倫理承認を受けた。すべての患者が、書面によるインフォームドコンセントを提出した。
【0219】
血漿サンプリング
署名入りのインフォームドコンセント後に、静脈血を、横臥患者から採血し、抗凝血物質としてEDTAを入れた予冷チューブ内に回収した。この入院サンプルを得る間隔は、最長4時間(パリ)、1時間(バーゼル)および12時間(レスター)であった。血漿を、単一バッチで-80℃にて分析まで保存した。
【0220】
結果
患者の特徴を表17にまとめ、そしてバイオマーカー分布を表18にまとめる。経過観察の初年度中に、299人が亡くなった。コホートの1つ(パリ)は、再入院加療の原因に対するデータを有していなかったので、その終点まで除外した。残りの施設は、n=861人の患者に関する経過観察データを有しており、そのうちの345人が、1年以内に亡くなったか、または心不全(HF)のために再入院した。
【0221】
bio-ADMは、一変量および多変数の両方(両方p<0.0001)で、1年死亡率(p<0.0001)および1年死亡率またはHFのための再入院加療(p<0.0001)に相関していた。とりわけ、bio-ADMと利尿剤を用いたる治療との相互作用が、退院に対してもたらされた(p=0.0001、表19および20、ならびに図3)。正規化HR(log10変換bioADMの1つの標準偏差(SD)に対して正規化された)は、bio-ADMに関して1.7(p<0.0001)であり、そして、利尿治療との相互作用期間に関して0.61(p<0.0001)であった。
【0222】
【表21】
【0223】
【表22】
【0224】
【表23】
【0225】
【表24】
【0226】
bio-ADMはまた、臨床的うっ血とも相関していた。データを、レスターおよびパリの施設から入手可能であった(n=1107)。臨床的うっ血スコアを、末梢浮腫、起座呼吸および頸静脈圧>6cmの存在と組み合わせる(スコアにポイントをそれぞれ追加した、表21を参照)。bio-ADMは、3の臨床的うっ血スコア(CCS)を有する患者において上昇した(n=284、p<0.001、図4)。
【0227】
【表25】
【0228】
【表26】
【0229】
実施例12
DiSomma調査
調査集団
これは、集中治療室で実施した予測的な、観察的トライアルであった。我々は、ローマのSant’ Andrea病院の救急外来(ED)からのAHFのために入院した患者を登録した。臨床的うっ血スコア(CCS:末梢浮腫、頸静脈怒張および起座呼吸)、利尿治療およびbio-ADM値を含めた臨床および実験データを、来院時に収集し、そして、退院まで患者を観察し続けた。調査は、ローマのSant’ Andrea病院の倫理委員会によって承認された。すべての患者が、書面によるインフォームドコンセントを提出した。
【0230】
血漿採取
ADM計測のための血漿サンプルを入院時に得た。
【0231】
結果
AHFの最終診断を受けた209人の患者を動員した。臨床的うっ血スコアは、168人の患者において入手可能であった。患者の特徴を表17にまとめる。22.6%、38.1%、21.4%、および17.9%の患者が、それぞれ0、1、2および3のCCSを示した。0~2の間のCCSを有する患者と比較して、3のCCSを有する患者および大静脈指数>1(p=0.05)を有する患者においてbio-ADMはより高い結果となり(p=0.01)、(心不全患者にとって死亡および再入院加療の主な原因であると考えられる)うっ血の検出におけるbio-ADMの潜在的役割を示唆した。そのうえ、bio-ADMのより高いレベルは、フロセミド治療の増強、およびたぶんうっ血量に相関する院内死亡率のより高い割合に関係した(それぞれp=0.002およびp<0.001)。
【0232】
【表27】
【0233】
bio-ADMもまた、臨床的うっ血と相関していた。臨床的うっ血スコアを、末梢浮腫、起座呼吸および頸静脈圧>6cmの存在と組み合わせる(スコアにポイントをそれぞれ追加した)。BioADMは、3の臨床的うっ血スコア(CCS)を有する患者において上昇した(n=30、p<0.01、図5)。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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