(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】8より高いpHにおいて分散性があるアルミナの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 7/026 20220101AFI20221212BHJP
C01F 7/021 20220101ALI20221212BHJP
【FI】
C01F7/026
C01F7/021
(21)【出願番号】P 2019510828
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(86)【国際出願番号】 US2017046598
(87)【国際公開番号】W WO2018044533
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-11
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516380050
【氏名又は名称】サソール(ユーエスエイ)コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,アリソン・エル
(72)【発明者】
【氏名】ピープルズ,ブライアン・シー
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-259225(JP,A)
【文献】特開平08-325010(JP,A)
【文献】特表2008-501601(JP,A)
【文献】米国特許第03207578(US,A)
【文献】米国特許第04676928(US,A)
【文献】特表2003-501341(JP,A)
【文献】SHIN, Y. J. et al.,Materials Research Bulletin,2006年10月12日,Vol.41,pp.1964-1971,<DOI:10.1016/j.materresbull.2006.01.032>
【文献】“About Viscosity - Difference in viscosity seen with your own eyes”,[online],THINKY U.S.A., INC.,2019年04月19日,[令和3年6月22日検索], インターネット, <URL:https://www.thinkymixer.com/en-us/library/topic/about-viscosity-difference-in-viscosity-seen-with-your-own-eyes/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/00 - 7/76
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ベーマイトを含むアルミナスラリを準備する段階と、
ii)前記アルミナスラリを熟成させて38~450Å(120面)の結晶子サイズを有するアルミナを含む熟成アルミナスラリを形成する段階と、
iii)前記熟成アルミナスラリにトリカルボン酸を加えて酸改質スラリを形成する段階と、
iv)前記酸改質スラリを75℃~125℃の温度で熟成させて生成物スラリを形成する段階 と、
v)前記生成物スラリを噴霧乾燥する段階とを含む
アルミナの製造方法であって、
段階iii)においてトリカルボン酸と一緒にジカルボン酸を加えること又は段階v)における噴霧乾燥の前の段階iv)の後に前記生成物スラリにジカルボン酸を加えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記アルミナスラリが、オキシ水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミナスラリが、バイヤーライト、ギブサイト、ガンマ-アルミナ 、遷移(デルタ-シータ)アルミナ及びそれらの混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミナスラリが6~10のpHを有する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
95~220℃の温度に30分~8時間加熱することにより前記アルミナスラリを熟成させる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
熟成後、前記アルミナスラリが、40~180Å(120面)の結晶子サイズを有するアルミナを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記トリカルボン酸が、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸、
トリメシン酸ならびにそれらの混合物及び/又は誘導体を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記トリカルボン酸が(単独で又はジカルボン酸と一緒に)加えられると、酸改質スラリのpHが1~6のpHとなる、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記酸改質スラリを10分~1時間熟成させる、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記酸改質スラリを85℃~115℃の温度で熟成させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ジカルボン酸が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸、メサコン酸又はそれらの混合物を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ジカルボン酸およびトリカルボン酸を予備混合することにより、前記ジカルボン酸を前記トリカルボン酸と同時に前記熟成アルミナスラリに加える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ジカルボン酸を前記トリカルボン酸と逐次的に前記熟成アルミナスラリに加える、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ジカルボン酸を前記生成物スラリに加える、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ベーマイトを含むアルミナであって、10重量%ゾルが、8より高いpHにおいて、90%より高い分散性と、1Pa.S未満の粘度とを有する、高度に分散性があるアルミナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、8より高いpHにおいて分散性があるアルミナの新規な製造方法及び高度に分散性があるアルミナに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2016年8月29日に出願された米国特許出願第62/380,770号明細書への優先権を主張し、その特許出願の開示は引用することによりすべての目的のために本明細書の内容となる。
【0003】
背景
クエン酸は酸化アルミナ(alumina oxides)のための有効な分散剤として高分散性アルミナの分野において周知である。一般にクエン酸は酸性pH(7未満のpH)において分散剤として用いられるが、しかしながら塩基性pHにおいて分散されるアルミナを安定化するためにクエン酸を用いる市販の製品が存在する。クエン酸は有効な分散剤であるが、限界は、7より高いpHにおいてこれらのクエン酸分散剤が合理的な重量負荷で(例えば10重量%のAl2O3において)非常に粘性となる傾向を有することである。これは多くの用途におけるそれらの使用を制限する。この粘度の問題を解決するために、これらのアルミナ分散系に粘度調整剤を加える。これらの粘度調整剤の添加に伴う問題は、アルミナ分散系へのそれら、例えばポリアクリレート、の導入が分散系ならびに乾燥及び焼成の後に得られる生成物の性質に影響する場合があることである。
【0004】
本発明者らはこの問題に対する解決案を見出した。
【発明の概要】
【0005】
発明
本発明の第1の側面に従い、以下の:
i)アルミナスラリを準備する段階;
ii)アルミナスラリを熟成させて38-450Å(120面)の結晶子サイズを有するアルミナを含む熟成アルミナスラリを形成する段階;
iii)熟成アルミナスラリにトリカルボン酸を加えて酸改質スラリを形成し;
iv)酸改質スラリを75℃-125℃の温度で熟成させて生成物スラリ(product slurry)を形成する段階;および
v)生成物スラリを噴霧乾燥する段階
を含むアルミナの製造方法を提供する。前記方法は、方法の段階iii)においてトリカルボン酸と一緒にジカルボン酸を加えることによるか、あるいは、段階v)における噴霧乾燥の前で、かつ、段階iv)の後に、生成物スラリにジカルボン酸を加えることにより特徴付けられる。
【0006】
本発明の方法により製造されるアルミナは、8より高い、好ましくは9より高い、そして最も好ましくは9.5より高いpHにおいて分散可能である。
【0007】
アルミナスラリは、オキシ水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム又はそれらの混合物を含む。アルミナスラリは、好ましくはベーマイト、バイヤーライト、ギブサイト、ガンマ-アルミナ、遷移(transitional)(デルタ-シータ)アルミナ及びそれらの混合物を含む。より好ましくは、アルミナスラリはベーマイト及びガンマ-アルミナを含み、そして最も好ましくはベーマイトを含む。
【0008】
複数の方法でアルミナスラリを調製することができる。水中におけるアルミニウムアルコキシドの加水分解を介して、少なくとも水中におけるアルミナ塩の沈殿を介して、又は少なくとも水中におけるアルミニウム化合物の懸濁を介してアルミナスラリを調製することができる。水中におけるアルミニウムアルコキシド(例えばベーマイト)の加水分解を介して調製されるアルミナスラリを準備するのが好ましい。調製経路に依存してアルミナスラリは6-10のpHを有する。
【0009】
95-220℃の温度に30分ないし8時間加熱することにより、アルミナスラリを熟成させる。熟成の後、アルミナスラリは、好ましくは40-180Å(120面)の結晶子サイズを有するアルミナを含み、より好ましくは熟成アルミナスラリは60-140Å(120面)の結晶子サイズそして最も好ましくは80-100Å(120面)の結晶子サイズを有するアルミナを含む。
【0010】
トリカルボン酸を、溶液として又は粉末として加える場合がある。トリカルボン酸にはクエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸、トリメシン酸及びそれらの誘導体が含まれ、好ましくはトリカルボン酸にはクエン酸、トリメシン酸及びアコニット酸が含まれ、そして最も好ましくは、トリカルボン酸はクエン酸を含む。本発明はトリカルボン酸の誘導体、特にそのナトリウム及びアンモニウム塩の使用を提供する。トリカルボン酸の誘導体にはクエン酸ナトリウム(クエン酸モノ、ジ及びトリナトリウム)ならびにクエン酸アンモニウム(クエン酸モノ、ジ及びトリアンモニウム)が含まれる。トリカルボン酸の混合物が用いられる場合もある。
【0011】
アルミナスラリへのトリカルボン酸の添加(単独で又はジカルボン酸と一緒に)はpHを1-6のpHに下げ、従ってスラリは酸改質スラリになる。
【0012】
酸改質スラリを10分ないし1時間熟成させる。酸改質スラリの熟成のためのより好ましい温度範囲は、好ましくは85℃-115℃の温度であり、最も好ましくは、酸改質スラリを95℃-105℃の温度で熟成させる。
【0013】
ジカルボン酸にはマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸、メサコン酸及びそれらの混合物が含まれる。好ましくは、ジカルボン酸にはマロン酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸及びそれらの混合物が含まれる。最も好ましくは、ジカルボン酸はマロン酸を含む。
【0014】
段階i)のアルミナスラリ中のアルミナのパーセンテージは、1-15重量%のAl2O3、そして好ましくは5-10重量%のAl2O3である。
【0015】
Al2O3に基づき、本発明の方法の段階iii)において及び/又は段階iv)の後に加えられる酸(トリカルボン酸及びジカルボン酸)の合計量は、いつジカルボン酸が加えられるかに依存して、酸改質スラリの又は生成物スラリの0.5-15重量%、好ましくは2-11重量%そして最も好ましくは4-9重量%である。
【0016】
本発明の利点は、両方の酸を初期の処理において加え、アルミナと反応させることができ、従ってこれが粘度調整剤の必要を取り除くことである。
【0017】
トリカルボン酸の存在下におけるアルミナの熟成は、それが経時的な材料の分散性及び安定性を向上させるので有利である。
【0018】
ジカルボン酸を、酸を予備混合することによりトリカルボン酸と同時に、あるいは酸の逐次的添加により生成物スラリの熟成の前又は後に加えることができる。両方法は類似の性質を有する材料を与える。ジカルボン酸をトリカルボン酸と同時に加える場合、酸を予備混合するのが好ましい。
【0019】
本発明の第2の側面に従い、90%より高い分散性及び10重量%ゾルに関する5Pa.S未満の粘度を有する、8より高いpHにおいて高度に分散性があるアルミナを提供する。
【0020】
好ましくは、8より高いpHにおいて高度に分散性があるアルミナの粘度は、90%より高い分散性及び10重量%ゾルに関する1Pa.S未満の粘度を有する。
【0021】
好ましくは、高度に分散性があるアルミナは、9.5より高いpHにおいて95%より高い分散性及び10重量%ゾルに関する0.4Pa.S未満の粘度を有する。
【0022】
高度に分散性があるアルミナの粘度は、実施例に記載される方法により測定された。
【0023】
広義の説明(broad desrciption)
本発明の第1の側面に従い、8より高いpHにおいて分散性である、より好ましくは9より高いpHにおいて分散性である、そして最も好ましくは9.5より高いpHにおいて分散性であるアルミナの製造方法を提供する。前記方法は、アルミナスラリ、例えば(水中におけるベーマイトの加水分解により調製される)ベーマイトスラリを準備し、スラリを95-220℃の温度で約30分-8時間、熱水的に熟成させて、典型的には40-180Å(120面)、より好ましくは60-140Å(120面)である所望の結晶子サイズの熟成アルミナスラリを形成することを含み、最も好ましくは、熟成アルミナスラリは80-100Å(120面)の結晶子サイズを有するアルミナを含む。
【0024】
アルミナスラリは6-10のpHを有するであろう。
【0025】
結晶子サイズは、x-線回折(XRD)によって乾燥粉末を分析することにより決定される。120-面ピークの高さ、半値幅(full-width-at-half-maximum-intensity)(FWHM)及び角度をXRDスペクトルから得る。この情報を結晶子サイズの決定のためのシェラー式に入力する。線広がり(line broadening)及びX線波長を含む特定の測定器についての他の情報も入力する。式を解くと、測定された結晶面に関するサイズが得られる。これは本発明の分野において周知である。
【0026】
本発明の1つの態様において、トリカルボン酸、例えばクエン酸及びジカルボン酸、例えばマロン酸を水中に予備分散させ(予備混合し)、熟成アルミナスラリに加えて酸改質スラリを形成する。酸を逐次的に熟成アルミナスラリに加えて酸改質スラリを形成することもできる。酸の添加後、アルミナスラリは1-6のpHを有し、従って酸改質スラリと呼ばれる。
【0027】
酸改質スラリを次いで10分ないし1時間、熟成させる。この熟成プロセスのための温度範囲は75℃-125℃、より好ましくは85℃-115℃であり、最も好ましくは、酸改質スラリを95℃-105℃の温度で熟成させて生成物スラリを形成する。
【0028】
代替策として、前記方法はジカルボン酸、すなわちマロン酸を生成物スラリが熟成された後且つそれが噴霧乾燥される前に生成物スラリに、そしてトリカルボン酸、すなわちクエン酸と一緒にではなく加えることを含む場合がある。両方法を用いて類似の性質を有する材料が製造されるであろう。
【0029】
生成物スラリを次いで噴霧乾燥し、集める。
【0030】
前記方法は、8より高いpHにおける90%より高い分散性及び10重量%ゾルに関する5Pa.S未満の粘度という特性を含むアルミナを与える。
【0031】
好ましくは、高度に分散性があるアルミナは8より高いpHにおいて90%より高い分散性及び10重量%ゾルに関する1Pa.S未満の粘度を有する。
【0032】
より好ましくは、アルミナは、9.5より高いpHにおいて95%より高い分散性及び10重量%ゾルに関する0.4Pa.S未満の粘度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、それぞれ実施例1及び2ならびに比較例2のとおりのアルミナ分散系の5及び10重量%における粘度を示し、本発明のとおりのジカルボン酸添加が生成物スラリの粘度に有する効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施例
ここで限定的ではない実施例及び図により本発明を説明する。
【0035】
図1は、それぞれ実施例1及び2ならびに比較例2のとおりのアルミナ分散系の5及び10重量%における粘度を示し、本発明のとおりのジカルボン酸添加が生成物スラリの粘度に有する効果を示す。
【0036】
分散性は、最初にアルミナ分散系を指示されるpHにおいて調製することにより測定される。10重量%のアルミナを水酸化アンモニウムの水溶液(10のpHを有する)に加えることによりこれを行う。水酸化アンモニウムの濃溶液を用いてpHを調整する。分散系を30分間撹拌する。次いで分散系を30分間遠心し、それに続いて上澄み液をデカンテーションして捨てる。残留粉末を120℃で乾燥し、一塊にする。加えられた粉末の質量から乾燥後の残留物の質量を引き去り、次いで加えられた粉末の質量で割り、最後に結果を100倍することにより、分散性を計算する。
【0037】
粘度は、最初にアルミナ分散系を指示されるpH及び10重量%の固体負荷において調製することにより測定される。これは、アルミナを水酸化アンモニウムの水溶液に加え、必要なら水酸化アンモニウムを用いてpHを調整することにより行われる。得られるスラリを次いで30分間撹拌する。次いで少量のスラリを、25℃において温度平衡化されているTA測定器DHR2レオメーターのベースプレートに移す。40mmの平らなプレート形状(flat plate geometry)を必要な間隙まで下げ、間隙から押出されたスラリを除去して整える(trimmed)。加えられたスラリがプレート下の領域を完全に満たすのに不十分なら、プレートを上げ、追加のスラリを加える。測定器を100s-1のせん断速度で始動させ、粘度を記録する。
【実施例】
【0038】
実施例1-マロン酸/クエン酸改質アルミナの製造
アルミニウムアルコキシドの加水分解を介してベーマイトスラリを調製し、120℃において2時間熱水的に熟成させ、95Å(120結晶面(crystallite plane))の結晶子サイズを有するアルミナを得た。5重量%のクエン酸及び3重量%のマロン酸(アルミナ含有量に基づく重量パーセンテージ)を水中で予備混合し、次いでベーマイトスラリに加えて酸改質スラリを形成した。酸改質スラリを105℃で1時間熟成
させて生成物スラリを形成し、次いで生成物スラリを噴霧乾燥し、生成物を集めた。
【0039】
実施例2-マロン酸を用いて後改質されるクエン酸改質アルミナの製造
アルミニウムアルコキシドの加水分解を介してベーマイトスラリを調製し、120℃において2時間熱水的に熟成させ、95Å(120結晶面)の結晶子サイズを有するアルミナを得た。5重量%のクエン酸(アルミナ含有量に基づく重量パーセンテージ)をベーマイトスラリに加えて酸改質スラリを形成した。酸改質スラリを次いで105℃で1時間熟成させて生成物スラリを形成した。生成物スラリを次いで3重量%のマロン酸の添加により改質し、30分間撹拌した。改質生成物スラリを次いで噴霧乾燥し、生成物を集めた。
【0040】
比較例1-熟成段階iv)なしの実施例1
実施例1のとおりにベーマイトスラリを準備し、熱水的に熟成させ、95Å(120結晶面)の結晶子サイズを有するアルミナを得た。5重量%のクエン酸及び3重量%のマロン酸(アルミナ含有量に基づく重量パーセンテージ)を水中で予備混合し、ベーマイトスラリに加えて酸改質スラリを形成した。酸改質スラリを次いで噴霧乾燥し、生成物を集めた。
【0041】
比較例2-クエン酸改質アルミナの製造
実施例1のとおりにベーマイトスラリを準備し、熱水的に熟成させ、95Å(120結晶面)の結晶子サイズを有するアルミナを得た。水中の5重量%のクエン酸(アルミナ含有量に基づく重量パーセンテージ)をベーマイトスラリに加えて酸改質スラリを形成した。酸改質スラリを105℃で1時間熟成させ、次いで噴霧乾燥し、生成物を集めた。
【0042】
比較例3-マロン酸をアルミナととともに熟成させ、熟成後にクエン酸を加える実施例2
実施例1のとおりにベーマイトスラリを準備し、熱水的に熟成させ、95Å(120結晶面)の結晶子サイズを有するアルミナを得た。3重量%のマロン酸(アルミナ含有量に基づく重量パーセンテージ)をベーマイトスラリに加え、それを次いで105℃で1時間熟成させた。次いでスラリを5重量%のクエン酸の添加により改質し、30分間撹拌して生成物スラリを形成した。次いで生成物スラリを噴霧乾燥し、生成物を集めた。
【0043】
結果は下記の表1に含まれ、いくつかは
図1に示される。
【0044】
【0045】
表1中の結果により示されるとおり、クエン酸改質ベーマイト(比較例2)は実際に高
度に分散性であるが、しかしながら前記材料の粘度1.3Pa.Sは可能性のある多くの用途における使用のためには高すぎる。熱水的熟成の前のクエン酸とのマロン酸のスラリへの共添加(実施例1)は、わずかにより高い分散性(97.5%)と、はるかにより低い粘度(0.156Pa.S)とを有する材料を与える。これは十分に多くの用途で用いられるべき流体である。あるいはまた、実施例1と比較して負の影響なしで、アルミナスラリがクエン酸と一緒に熟成された後にマロン酸をそれに加えることができる(実施例2)。事実、製造される材料は分散性及び粘度に関してほとんど同じである。
【0046】
これらの材料の添加及び熟成の順序は、低粘度高pHゾルを与えることができる高度に分散性がある材料の製造における重要な段階である。アルミナを酸の存在下で熟成させない場合(比較例1)、材料はゲル化し、分散系を与えない。マロン酸のみをアルミナと一緒に熟成させ、熟成後にクエン酸を加える場合(比較例3)、10のpHにおいて分散させると材料はやはりゲル化する。
【0047】
図1はさらに、実施例1及び2において製造される試料を用いて10重量%及びpH10において調製される分散系に関する、同じ条件下での比較例2と比較されるゾル粘度における差を示す。マロン酸とクエン酸の両方を用いて製造される試料は、クエン酸のみを用いて製造される試料のゾル粘度より実質的に低いゾル粘度を有する。30分後、実施例1からの材料を用いて調製されるゾルの粘度は0.156Pa.Sの粘度を有し、一方実施例2からのゾルは0.180Pa.Sの粘度を有し、それらは両方とも1.3Pa.Sの粘度を有した比較例2における材料から調製されるゾルの粘度より実質的に低い。