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  • 特許-天然バニリンの精製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】天然バニリンの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/82 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
C07C45/82
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019541804
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018053207
(87)【国際公開番号】W WO2018146210
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】1751021
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィベール, マルティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】エチェバルネ, アラン
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508482(JP,A)
【文献】特開平03-030683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/
C07C 47/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然バニリンを含む液体流F2を同伴ガスG1および/または気化液体L1と共にストリッピングする少なくとも1つの工程(b)を含む、生物工学的方法により得られる天然バニリンの精製方法であって、前記液体流F2中の天然バニリンの重量濃度が10%以上である方法。
【請求項2】
前記液体流F2中の天然バニリンの重量濃度が30%以上である、請求項1に記載の天然バニリンの精製方法。
【請求項3】
任意選択的には水の存在下で、天然バニリンの製造に起因する流れF1の溶媒S1を蒸発させることによる天然バニリンの前記液体流F2の調製の予備工程(a)を更に含む、請求項1または2に記載の天然バニリンの精製方法。
【請求項4】
工程(b)の後、バニリンよりも揮発性の低い化合物を除去する工程(c)を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の天然バニリンの精製方法。
【請求項5】
前記同伴ガスG1または前記気化液体L1が、水、水蒸気、酢酸アルキル、アルコール、不活性ガス(N、CO、He、Ar、欠乏空気、およびこれらの混合物から選択される)からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の天然バニリンの精製方法。
【請求項6】
工程(b)が、20℃以上、および140℃以下の温度で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の天然バニリンの精製方法。
【請求項7】
工程(b)が不活性雰囲気下で行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の天然バニリンの精製方法。
【請求項8】
工程(b)または(c)において得られる前記天然バニリンが、400ハーゼン以下(10重量%エタノール溶液中)の色を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の天然バニリンの精製方法。
【請求項9】
結晶化により天然バニリンを形成する工程(d)を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
- ストリッピング装置、
- バニリンよりも揮発性の低い不純物を除去するための装置
を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法の実施のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然バニリンの精製方法に関する。また本発明は、本発明による方法によって得ることができる天然バニリン、天然バニリンを製造するための装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
バニリンは、当業者に公知の異なる方法によって、特に以下の2つの経路によって得ることができる:
- 特に、発酵基質からバニリンへの生物学的変換を可能にすることができる微生物の培養を含む、生物工学的プロセスに基づく「天然」ルート。発酵基質がフェルラ酸であるそのような方法は、特に、欧州特許第0885968号明細書から既知である。米国特許第5017388号明細書には、発酵基質がオイゲノールおよび/またはイソオイゲノールである方法が記載されている。これらの方法によって、天然バニリンと呼ばれるバニリンが調製される。
- 微生物が関与しない、グアイアコールから出発する従来の化学反応を含む「合成」ルート。これらの方法によって、合成バニリンと呼ばれるバニリンが調製される。
【0003】
最後に、バニリンは、バニリンがリグニンから得られる天然として記載されている経路によって調製することもできる。特に、米国特許第2745796号明細書および独国特許第1132113号明細書、ならびにInternational Journal of Biology and Biotechnology,2004,Vol.1,No.4,pp535-537中のAzadbakhtらによる「Preparation of lignin from wood dust as vanillin source and comparison of different extraction methods」という表題の論文を挙げることができる。
【0004】
現在、天然バニリンは、バニリンよりも大きいpKaを有する不純物の液/液抽出工程を含む、欧州特許出願第2791098号明細書に記載の方法に従って精製することができる。この方法の収率は良好であり、一般的には80%を超える:しかしながら、バニリンの色に関して改善された品質を得るためには、いくつかの追加の精製工程が必要であり、そのためこの方法の全体的な収率の低下が引き起こされる。
【0005】
国際特許出願国際公開第2014/114590号パンフレットには、天然バニリンの精製方法も記載されている。この方法は天然バニリンを蒸発させることを含み、この蒸発は、溶融バニリンの蒸留または真空蒸発によって行うことができる。この方法は、採用が簡単であり工業的プロセスと適合させるため連続的に運転される装置を用いて、非常に純粋な天然バニリンを良好な収率で製造することができる。しかしながら、そのような方法は、必要な設備の品目の数および規模のため実施が困難な可能性がある。
【0006】
このため、従来技術において提供されたものよりも単純な方法を利用可能にすることが有利である。
【0007】
本発明の目的の1つは、改善された全体収率を有しながらも、著しく改善された着色、特に10%エタノール溶液中で100ハーゼン以下、好ましくは50ハーゼン以下、より好ましくは20ハーゼン以下、更に好ましくは10ハーゼン以下の着色を示すバニリンが得られる方法を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の主題は、天然バニリンを含む液体流F2を同伴ガスG1および/または気化液体L1と共にストリッピングする少なくとも1つの工程(b)を含む、天然バニリンの精製方法に関する。
【0009】
本発明の第2の主題は、本発明の方法によって得ることができる天然バニリンに関し、これは、固体の形態で存在し、その色が、10重量%エタノール溶液中で400ハーゼン以下、好ましくは200ハーゼン以下、より好ましくは50ハーゼン以下、更に好ましくは20ハーゼン以下であることを特徴とする。
【0010】
最後に、本発明の第3の主題は、特に、
- ストリッピング装置、
- バニリンよりも揮発性の低い不純物を除去するための、好ましくは真空膜蒸留装置または薄膜蒸留装置における装置
を含む、本発明による方法を実施するための装置に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明との関係において、および別段の指示がない限り、「…と…との間」という表現は境界を含む。
【0012】
本発明の第1の主題は、天然バニリンを含む液体流F2を同伴ガスG1および/または気化液体L1と共にストリッピングする少なくとも1つの工程(b)を含む、天然バニリンの精製方法に関する。
【0013】
本発明による方法は、有利には天然バニリンを含む液体流F2から出発して高い滴定濃度を有する天然バニリンを得ることを可能にする。
【0014】
本発明では、「天然バニリン」という表現は、特に、規則EC1334/2008の第9.2条c)による天然風味物質、すなわち植物、動物、または微生物起源の物質そのままから、または1つ以上の従来の食品調製方法によってヒトが消費するためにそれらを変換した後にそれから、物理的、酵素的、または微生物学的方法により得られる風味物質である。天然風味物質は、天然に存在し天然に同定されている物質に相当する。世界の他の国または地域で施行されている規制によって与えられる定義も適用される場合がある。加えて、「天然バニリン」は更に、バニラのさやから抽出されたバニリンを意味する場合がある。
【0015】
有利には、液体流F2は天然バニリンの製造方法から生じ得る。この流れF2において、天然のバニリンは塩ではないバニリンの形態で存在する。好ましくは、天然バニリンの液体流F2において、バニリンの重量濃度は、前記液体流の総重量に対して10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である。
【0016】
好ましくは、天然バニリンの製造方法は、この場合、発酵基質のバニリンへの生物変換を可能にすることができる微生物の培養を含む生物工学的プロセスを意味する。非常に好ましくは、これは欧州特許出願第0885968号明細書に記載されているものなどのフェルラ酸の発酵のための方法である。
【0017】
バニリンとは別に、流れF2は、不純物、特に酵素変換または発酵による製造中に形成される不純物、典型的にはバニリルアルコール、バニリン酸、バニリンの二量体および三量体(すなわち、それぞれ2個または3個のフェニル基を有する主鎖を示す化合物、二量体は有利にはジフェニルメタンから選択される)を含み得る。フェルラ酸の発酵に関する場合、典型的な不純物は更に、フェルラ酸、グアイアコール、およびグアイアコール誘導体から選択され得る。最後に、流れF2は微量の安定剤を含んでいてもよい。
【0018】
加えて、流れF2は、食品グレードの溶媒(例えばFEMA GRASTMプログラムによって識別される溶媒)または水などの溶媒または複数の溶媒の混合物を含んでいてもよい。しかしながら、液体流F2中の溶媒の重量濃度は、前記液体流の総重量に対して好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。
【0019】
本発明による方法は、連続運転またはバッチ式運転によって行うことができる。
【0020】
ストリッピングは、同伴ガスまたは気化液体によって同伴させる工程である。これは、バニリンの品質を向上させるために、不純物がガスまたは気化液体に同伴されるためである。
【0021】
特に本発明との関係において、ストリッピング工程は、天然バニリンの流れの中に存在する特定の不純物を有利に除去することを可能にする。
【0022】
このようなストリッピング工程は、穏やかな条件下で、特にガス状の流体または液体を注入することおよび/または本発明による方法が行われるチャンバーを真空下に置くことによって実施することができる。
【0023】
本発明との関係において、同伴ガスG1または気化液体L1は、水、水蒸気、酢酸アルキル、アルコール、不活性ガス(N、CO、He、Ar、欠乏空気、およびこれらの混合物から選択される)からなる群から選択される。好ましくは、同伴ガスG1または気化液体L1は水または水蒸気である。複数の同伴ガスG1および/または複数の気化液体L1の混合物の使用が想定される場合もある。
【0024】
工程(b)は、20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上の温度で行うことができる。工程(b)は、140℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃の温度で行うことができる。本発明の一実施形態によれば、工程(b)は、400mbar~25mbarの範囲の減圧下で行われる。
【0025】
第1の実施態様によれば、ストリッピング工程は同伴ガスG1、好ましくは水蒸気を用いて行われる。この実施形態は、ストリッピングカラム中で連続的に行うことができる。典型的には、液体流F2は頂部からストリッピングカラムの中に導入される一方で、同伴ガスG1は底部から導入される。これらの接触の間、同伴ガスは液体流中に存在する不純物で満たされてカラムの頂部から抽出される一方で、精製された液体流はカラムの底部で回収される。
【0026】
第2の実施形態によれば、ストリッピング工程は、気化液体L1、好ましくは水を用いて行われる。この実施形態は、反応器内で連続的にまたはバッチ式で実施することができ、典型的には、液体流F2と液体L1は反応器内で混合される。その後、圧力を下げることおよび/または温度を上げることによって、液体L1が気化する。気化液体L1はその後反応器から抽出され、それと共に液体流中に存在する不純物が同伴される。このようにして精製された前記液体流は、その後反応器中で回収することができる。
【0027】
好ましくは、ストリッピング工程(b)は、不活性雰囲気下、より好ましくはN下で行われる。
【0028】
好ましい実施形態によれば、本発明による天然バニリンの精製方法は、任意選択的には水の存在下で、天然バニリンの製造に起因する流れF1の溶媒S1を蒸発させることによる、天然バニリンの前記液体流F2の調製の予備工程(a)を更に含んでいてもよい。
【0029】
これは、天然バニリンの製造中に、天然バニリン、不純物、および大量の溶媒(典型的には例えば酢酸エチルなどの食品グレードの溶媒)を含む液体流を回収することが典型的であるためである。この流れは典型的には「粗製バニリン溶液」と呼ばれる。本発明による方法は、溶媒S1中に天然バニリンを含む天然バニリンの製造方法により生じる液体流F1を利用可能にする工程を含み得る。溶媒S1の中でも、例えば、MEK(メチルエチルケトン)、アルコール(エタノール、ブタノール等)、酢酸アルキル(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル等)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、およびシクロヘキサンなどの、法令により認可された有機溶媒を挙げることができる。溶媒S1はまた、水であってもよい。溶媒S1はまた、有機溶媒の混合物、とりわけ、上に挙げられた有機溶媒の混合物、または水と有機溶媒との混合物であってもよい。
【0030】
一実施形態によれば、液体流F1は、発酵培地用の安定剤を更に含んでいてもよい。例えばソルビン酸、安息香酸、酢酸、およびそれらの塩などの安定剤として使用することができる静菌剤(または殺生物剤)が当業者に周知である。液体流F1中の天然バニリンのための安定剤は、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で存在する。その結果、液体流F2は微量の前記安定剤を含有する場合がある。しかしながら、特に発酵培地の安定化が別の方法で行われている場合、流れF1は安定剤を含まなくてもよい。例えば、液体流F1は熱処理によって安定化されていてもよい。この熱処理によって微生物の作用を停止させることができる。熱処理の温度は、通常35℃以上、通常110℃以下、好ましくは50℃~110℃である。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、方法は、工程(a)の前または工程(b)の前に、天然バニリンの製造方法により得られる流れを洗浄する予備工程を更に含む。この洗浄は、酸性不純物を除去するために水溶液を使用して行うことができる。通常、この洗浄は塩基性溶液、好ましくは水酸化ナトリウム溶液を用いて行うことができる。
【0032】
好ましくは、流れF1において、バニリンの重量濃度は、前記流れの総重量に対して0.5%~60%、より好ましくは5%~40%、更に好ましくは10%~35%である。
【0033】
本発明による任意の工程(a)は、前記流れの総重量に対してバニリンの重量濃度が10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であるバニリンの流れF2を得るために溶媒S1を除去することを含む。溶媒S1の残留含有率は、前記液体流の総重量に対して好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。
【0034】
本発明による方法によれば、蒸発工程a)は、前記蒸発工程の実施の前および/または最中に流れF1に添加される水の存在下で任意選択的に行うことができる。
【0035】
好ましい実施形態では、工程(a)との関係において、粗製バニリンのための溶媒S1は、水の存在下で蒸発により、例えば蒸留によりまたは蒸発装置により除去される。水と溶媒S1は共沸混合物を形成してもよい。蒸留による蒸発の場合、溶媒S1は、大気圧で、または真空下で、あるいは大気圧の後に真空下で、蒸留されてもよい。水は、流れF1への1回以上の添加により添加されてもよい。食品グレードの水(例えば都市水道水)を使用することが好ましい。本発明による方法により生じるリサイクルされた食品グレードの水を使用することも可能である。
【0036】
好ましくは、前記蒸発工程a)は、60℃~140℃、特に好ましくは80℃~100℃の温度で行われる。
【0037】
工程(b)の後、本発明による天然バニリンの精製方法は、バニリンよりも揮発性の低い化合物を除去する工程(c)を追加で含んでいてもよい。この工程は、有利には真空膜蒸留装置または薄膜蒸留装置において行うことができる。
【0038】
工程(c)が行われる熱交換流体の温度は、通常130℃以上、好ましくは145℃以上であり、230℃以下、好ましくは180℃以下である。工程(c)が行われる圧力は、通常0.4mbar以上、好ましくは1mbar以上であり、通常75mbar以下、好ましくは8mbar未満、より好ましくは4mbar未満である。
【0039】
この蒸発工程(c)は、例えば流動化剤の添加などの技術的な補助剤の使用によって促進することができる。したがって、本発明の特定の実施形態によれば、食品に関する法令によって認可されている流動化剤、例えばポリエチレングリコールを、工程(b)と工程(c)との間、または工程(c)の最中に天然バニリンに添加することができる。
【0040】
前記工程(c)の終了時に、有利には着色されていない天然バニリン凝縮物が得られる。前記天然バニリン凝縮物は、好ましくは400ハーゼン以下、好ましくは200ハーゼン以下、より好ましくは100ハーゼン以下、より好ましくは50ハーゼン以下、更に好ましくは20ハーゼン以下(10重量%エタノール溶液中)の色を有する。
【0041】
本発明による方法は、天然バニリンを、好ましくは結晶化によって、より好ましくはFEMA GRASTMプログラムによって同定された溶媒からの結晶化によって形成する工程(d)を更に含んでいてもよい。好ましい実施形態では、天然バニリンは水からまたはアルコール/水混合物から結晶化または再結晶化される。このようにして得られたバニリンは、白色結晶の形態である。本発明の好ましい実施形態によれば、使用される溶媒は、食品業界で使用され得る製品の製造を可能にする法令と適合性がある。
【0042】
本発明の方法により得ることができる天然バニリンは、固体形態で存在することを特徴とし、その色は、10重量%のエタノール溶液中で、200ハーゼン以下、好ましくは100ハーゼン以下、優先的には50ハーゼン以下、より優先的には20ハーゼン以下(10重量%エタノール溶液中)である。
【0043】
このバニリンの滴定濃度は、有利には95%以上、好ましくは99%以上、より好ましくは99.5%以上である。
【0044】
本発明の方法により得ることができる天然バニリンは、適合する官能特性を示すことを特徴とする。
【0045】
本発明の方法により得ることができる天然バニリンは、特定の不純物を示す。本発明の方法により得られる天然バニリン中に存在する不純物は、前記天然バニリンの調製方法と関連する。そのため、フェルラ酸から生じる天然バニリンの発酵マスト中に存在する不純物は、オイゲノールまたはイソオイゲノール発酵マスト中で得られるものとは異なる。更に、精製方法は、特定の不純物を様々な量で除去することを可能にする。したがって、精製工程の終了時に、天然バニリンはその調製方法に特異的かつその精製方法に特異的な不純物を示すであろう。
【0046】
本発明者らは、全く驚くべきことに、発酵プロセスから得られた本発明により精製された天然バニリンが、特に視覚的外観、性状、味、および臭いに関して、適合性のある官能特性を示すことを発見した。
【0047】
先行技術の方法と比較して、本発明による精製方法は、天然バニリンを70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の収率で精製することを可能にする。得られた天然バニリンは有利には非常に高いバニリンの滴定濃度を示し、これは白色であり、そして実施例で示される通り、間違いなく適合する官能特性を示す。適合性の評価は、特に、基準に対しての3点試験法で訓練されたパネルによって行うことができる。規格ISO 4120:2004(f)は、有意な相違を立証するための正しい回答の最小数を規定する。
【0048】
本発明は、
- ストリッピング装置、
- バニリンよりも揮発性の低い不純物を除去するための装置、好ましくは真空膜蒸留装置または薄膜蒸留装置
を含む、特には本方法を実施するための装置にも関する。
【0049】
前記装置は、任意選択的には、
- 粗製バニリン溶液を洗浄することができる洗浄装置、および/または
- 粗製バニリン溶液から溶媒を蒸発させることができる蒸留装置、および/または
- 精製天然バニリンを形成するための手段、好ましくは結晶化手段、
を更に含んでいてもよい。
【0050】
本発明による方法の具体的ではあるが非限定的である実施形態を図1に示す。
【0051】
この実施形態によれば、天然バニリンの製造方法によって粗製バニリンの溶液(F0)が得られる。溶液は、溶媒S1中の天然バニリンと、製造方法に典型的な不純物とを含む。この溶液F0は、洗浄装置(1)内で水酸化ナトリウム溶液を用いて洗浄される。得られた流れ(F1)は、溶媒S1中に天然バニリンおよび低減された含有率の酸性不純物を含有する。
【0052】
流れ(F1)は、溶媒S1を蒸発させるために蒸留装置(2)の中に導入される。水は任意選択的に(3)で導入される。溶媒S1および水が(4)で排出される一方で、70%を超える天然バニリンを有利に含む流れ(F2)が回収される。
【0053】
流れ(F2)はストリッピング装置(5)の中に導入される。不純物は、(6)で導入されて(7)で排出される同伴ガスG1および/または気化液体L1によって除去される。
【0054】
精製された天然バニリンの流れ(F3)は、その後真空膜蒸留装置または薄膜蒸留装置(8)で処理される。重い化合物が(9)で分離され、高純度で無色の天然バニリン凝縮物(C)が得られる。
【0055】
天然バニリン(VA)を白色結晶の形態で得るために、前記凝縮物(C)が(10)で結晶化されてもよい。
【0056】
本発明を、本発明を限定する性質を示さない実施例によって以降説明する。
【実施例
【0057】
実施例1:
図1に示されている方法を、溶液中での天然バニリンの製造方法から得られる流れから出発して行った。この流れは以下の組成を示した。
【0058】
【0059】
この流れに対して水酸化ナトリウム水溶液で洗浄する第1の工程を行った。この工程の終了時に得られる流れは以下の化合物を含む。
【0060】
【0061】
水の存在下での蒸留工程(a)は、100mbarの圧力下で80℃の温度で行った。出口の流れは以下の化合物を含んでいた。
【0062】
【0063】
ストリッピング工程(b)は、工程(a)の終了時に得られた流れに対して、同伴液として運転条件下で気化される水を使用して90℃の温度で行った。液体の水を大気圧で添加した後、圧力を25mbarまで下げた。出口の流れは以下の化合物を含んでいた。
【0064】
【0065】
引き続き薄膜蒸留装置において工程(c)を行った。出口の流れは以下の化合物を含んでいた。
【0066】
【0067】
最後に、工程(c)の出口で得られた生成物に対して結晶化工程(d)を行った。この精製プロセスの終了時に得られたバニリンは99.6%の滴定濃度を示し、87%の収率で得られた。
【0068】
このようにして精製したバニリンは、18ハーゼンの比色を示す。
【0069】
3点試験法による官能分析は、3点試験法に関する規格ISO4120/2004に準拠して行った。官能分析は、7~11人で構成されたパネルで行われる。この官能分析を行った後、得られたバニリンの官能的性質は参照と一致していると結論づけられた。この例における参照はRhovanil(登録商標)Natural CW市販バニリンである。
【0070】
実施例2:
初期流が以下の組成を示したことを以外は実施例1と同様の手順を行う。
【0071】
【0072】
洗浄工程は行わなかった。蒸留後、出口の流れは以下の化合物を含んでいた。
【0073】
【0074】
ストリッピングは水蒸気で行った。このために、600gの処理すべき流れを、凝縮器を備えた1リットルの反応器の中に入れた。浸漬管によって低圧蒸気を104~108℃で3時間注入した。出口の流れは以下の化合物を含んでいた。
【0075】
【0076】
薄膜蒸留装置を通過した後、出口の流れは以下の化合物を含んでいた。
【0077】
【0078】
結晶化後、バニリンは99.5%の滴定濃度を示した。
図1