(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】離散した点で組織の層を接合するためのスキャフォールド
(51)【国際特許分類】
A61B 17/03 20060101AFI20221212BHJP
A61L 17/10 20060101ALI20221212BHJP
A61L 17/08 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B17/03
A61L17/10
A61L17/08
(21)【出願番号】P 2019551995
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(86)【国際出願番号】 US2018022834
(87)【国際公開番号】W WO2018175225
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-17
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】キンテーロ・ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】クリクスノフ・レオ・ビー
(72)【発明者】
【氏名】タンハウザー・ロバート・ジェイ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-537068(JP,A)
【文献】特開2010-057687(JP,A)
【文献】特開2012-024253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/03
A61L 15/00 - 33/18
A61F 13/00 - 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の2つの層を接合するための装置であって、
a)上面、下面及び側壁を有する実質的に平坦で柔軟なスキャフォールドと、
b)前記スキャフォールドを前記上面から前記下面まで貫通する複数の第1通路と、
c)前記スキャフォールドを前記上面から前記下面まで貫通する複数の第2通路と、
d)前記上面に解放可能に取り付けられて前記上面全体を被覆する、実質的に平坦で柔軟な上部カバーと、
を備え、前記上部カバーは、前記複数の第1通路と位置合わせされ
て、前記上部カバーの上面から前記スキャフォールドの前記下面まで貫通するスルーホール又は孔部を形成する複数の上部カバー通路を有
し、前記スルーホール又は孔部は、その中を通して接着剤を前記上部カバーの上面から前記スキャフォールドの前記下面へと浸透させるように構成されており、前記複数の第2通路は、前記接着剤が前記複数の第2通路に浸透できないように、前記複数の上部カバー通路のない前記上部カバーの部分によって被覆されている、装置。
【請求項2】
前記下面に解放可能に取り付けられて前記下面全体を被覆する実質的に平坦で柔軟な底部カバーを更に備え、
前記底部カバーが、前記複数の第1通路
と位置合わせされた孔部及び前記複数の第2通路と位置合わせされた孔部を有しない、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記上部カバー及び/又は前記底部カバーがプルタブを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
感圧接着剤が、前記下面、前記上面又は前記下面と前記上面との両方に配置されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記スキャフォールドが、前記下面、前記上面又は前記下面と前記上面との両方に形成された表面溝を更に備え、
前記表面溝が、少なくともいくつかの前記第2通路を相互に、及び/又は前記スキャフォールドの周辺に接続する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スキャフォールドが生分解性
である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2通路が、
体液に可溶で
ある又は
組織が吸収できる生体適合性材料で少なくとも部分的に満たされている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記接着剤の架橋又は重合の促進剤又は開始剤が、前記第1通路内、前記第1通路に面する前記底部カバー上、又はこれらの組み合わせに配置されている、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記促進剤又は前記開始剤が四級アンモニウム塩を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
キットであって、
請求項1
に記載の装置と、
重合可能な又は架橋可能な流動性の接着剤を収容している容器と、
前記接着剤を前記装置上に分配するのに適合したディスペンサと、
を備えるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織の2つの層を、接合される組織の層同士の直接接触を可能にしながら、接着剤で相互に固定する離散した点を提供する通路を備える吸収性のスキャフォールドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば腹部形成術などの手術中に組織の層を接合したり傷を閉じたりするための多くの方法が存在する。腹部形成術処置では、縫合又はステープル留めの代わりに外科用接着剤を使用して組織の層を接合することができ、この場合、外科用接着剤の層が組織の層の間に「挟まれる」。外科用接着剤を塗布する既知の1つの方法は、ディスペンサから1層の組織上に液体接着剤を分配し(dispensing)、次にその上に組織の第2の層を適用させることに関する。
【0003】
組織接合の既知の方法に伴う問題は、(i)接合される組織の層の間に液体接着剤が均一に分配されないことにより、接着剤の厚さにばらつきが生じること、及び(ii)接着剤によって接合される組織の層が完全に分離してしまうことにより、治癒が遅れ、壊死するおそれがあることが伴う。
【0004】
「Articles and Methods for Tissue Repair」と題された国際公開第2008/082444号は、組織を医学的に治療する方法であって、移送装置を組織表面へと導くことであって、その移送装置が接着剤のパターン化された配列をそれと共に対応付ける(associated)、ことと、接着剤のパターン化された配列の少なくとも一部を、接触接着により移送装置から組織表面へと移送することと、移送装置を組織表面から遠ざけることと、物品を接着剤の少なくとも一部に隣接するように配置することと、接着剤を使用して物品を組織表面に接着することと、を含む方法を開示している。
【0005】
「Scaffold for Bone and Tissue Repair in Mammals」と題された米国特許第8,353,966号は、骨の硬組織(bone hard tissue)又は筋肉、皮膚又は臓器軟組織の修復及び再生のための組織スキャフォールドであって、スキャフォールドが、スキャフォールド中心軸(scaffold central axis)、スキャフォールド横断寸法(scaffold transverse dimension)及びスキャフォールド横断寸法よりも大きいスキャフォールド長さ方向寸法(scaffold lengthwise dimension)を有する硬質なスキャフォールド本体を有し、スキャフォールド本体が、約20~約250MPaの圧縮強度を有し、それぞれ繊維横断寸法及び繊維横断寸法の少なくとも約10倍の繊維長さ方向寸法を有する生体適合性の無機ガラス繊維と、スキャフォールド本体の約10体積%~約35体積%を構成する相互接続された多孔体とを備え、各繊維が直径約20ミクロン~約5000ミクロンであり、繊維の少なくとも約75体積%が相互に長手方向に位置合わせし(longitudinally co-aligned)、全体としてスキャフォールド中心軸に対して長さ方向に向いており、全体としてスキャフォールド中心軸を中心としたらせん状には向いておらず、スキャフォールド内へ長さ方向に流体を流すことを可能にする開いた流路をスキャフォールド内に画定するように配置されており、繊維が、隣接する長手方向に整列している繊維同士が相互に融着されるように相互に自己接合している組織スキャフォールドを開示している。
【0006】
「Wound Closure System」と題された米国特許第6,652,559号は、患者の創傷を閉鎖するための創傷閉鎖システムであって、両端、互いに離れて反対向きの第1及び第2の表面並びに、創傷の対向縁部(facing edges)を互いに近接して固定するための十分な長さ及び幅を有する細長い柔軟な裏当てであって、両端の間に配置され、創傷の対向縁部上に積層されるように適合した第1部分と、第1部分の両側に配置され、第1表面から裏当てを通って第2表面まで延伸する所定数の離間した貫通孔(perforations)がそれぞれ設けられた第2及び第3部分とを備え、第1部分には、第1表面から裏当てを通って第2表面まで延伸する孔部(aperture)が設けられていない裏当てと、第2及び第3部分を有する裏当ての第1表面の少なくとも一部に塗布されて、裏当ての少なくとも第2及び第3部分を創傷の対向縁部が互いに近接するように患者に接着するための第1感圧接着剤と、裏当てに取り外し可能に取り付けられ、感圧接着剤を被覆している第1保護部材と、裏当ての第2及び第3部分の患者への接着を強化するために貫通孔に適用するための流動性の湿気硬化性外科用接着剤と、を備え、(a)保護部材を取り外して感圧接着剤を露出させ、(b)裏当てを露出した感圧接着剤と共に患者に適用して、創傷の対向縁部を互いに近接するように固定し、(c)外科用接着剤を孔部内に適用した後に、外科用接着剤が貫通孔を通って流れ、硬化すると、裏当てと協働する離散した接合部位を形成して、硬化した接着剤が逆に裏当ての柔軟性を損なうことなく、創傷の対向縁部を互いに近接した状態に維持し、片面に第2の感圧接着剤が塗布された第2の保護部材が、裏当てに取り外し可能に取り付けられて第2表面を被覆し、裏当てが当該第1及び第2保護部材の間に配置されており、第2の保護部材に、裏当ての第2及び第3部分に画定された貫通孔と合わされて(registering)、これらと流体連通している対応する数の貫通孔が設けられている創傷閉鎖システムを開示している。
【0007】
「Wound Closure Material」と題された米国特許出願公開第2013/0012988号は、生分解性材料の芯を有する創傷閉鎖材料であって、生分解性材料の芯の少なくとも片側に接着剤の多数の離散したスポット(spot)が設けられており、生分解性材料の芯が開放気泡構造を備えている創傷閉鎖材料を開示している。
【0008】
「Device for Promotion of Hemostatis and/or Wound Healing」と題された米国特許第8,642,831号は、表面と複数の相互に連結された開放気泡(open and interconnected cells)とを備える止血マトリックス材料であって、マトリックス材料がゼラチン又はコラーゲンを含み、マトリックスの表面が、表面上の個別の離散した位置に印刷された少なくとも1つの医薬組成物を備え、医薬組成物が1つ以上の止血剤を含んでいる止血マトリックス材料を開示している。
【0009】
Cohera Medical,Inc.の合成組織接着剤TissuGlu(登録商標)Surgical Adhesiveは、ポリウレタンプレポリマーをベースにしており、腹部形成術中にマルチポイントディスペンサを使用してスポット状に離散的な用途で適用される。
【0010】
「Multi-layer Porous Film Material」と題された米国特許出願公開第2014/0155916号は、複数の細孔を含む第1の多孔質フィルム層及び複数の細孔を含む第2の多孔質フィルム層を備え、第1及び第2の多孔質フィルム層が積層構成であり、複数の接続点で相互に接続されて、第1及び第2の多孔質フィルム層間に少なくとも1つの空隙を画定する外科用インプラントを開示している。
【0011】
「Controlled Adhesive Locations Facilitating Tissue Remodeling」と題された米国特許出願公開第2008/0109034号は、組織の2つの部分を相互に接着するための外科用インプラントであって、a)少なくとも1つの層と、少なくとも1つの層内に形成され、これを通して組織を成長させるための複数の開口部とを有する移植可能なマトリックスと、b)組織の2つの部分を相互に接着するための移植可能なマトリックスの周囲のポリマー接着剤であって、組織の2つの部分が突き合わせられると重合して組織を接着するポリマー接着剤と、を備える外科用インプラントを開示している。
【0012】
「Tissue Scaffold」と題された米国特許出願公開第2006/0141012号は、複数の気泡開口部を有する第1フィルム、及び第1フィルムに隣接し、第1フィルムの気泡開口部よりも大きい複数の気泡開口部を有する第2フィルムを有し、第1フィルムの気泡開口部が、第2フィルムの気泡開口部と相互接続して、第1フィルムから第2フィルムまで延伸する経路を画定する組織スキャフォールドを開示している。
【0013】
「Surgical Scaffolds」と題される米国特許出願公開第2013/0204077号は、軟組織修復用の外科用スキャフォールドであって、非繊維状ポリマー材料のシートを備え、シート表面の少なくとも一部が複数のスルーホール(through-holes)を備える外科用スキャフォールドを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
組織の層を離散した点で接合するために、接合される組織層が相互接触を確立することを可能にする、改善された装置、システム及び方法の必要性が依然として存在する。接着剤による組織の接合を改善すること、特に層に接着剤を均一な厚さにするための改善された装置及び方法が必要である。更に、組織の治癒及び接合を迅速化し、接着接合部に直接隣接する領域における組織の壊死を防止する方法及び装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実施形態では、組織の2つの層を接合するための装置が、上面、下面及び側壁を有する実質的に平坦で柔軟なスキャフォールドと、スキャフォールドを上面から下面まで貫通する複数の第1通路と、スキャフォールドを上面から下面まで貫通する複数の第2通路と、上面に解放可能に取り付けられ、上面全体を被覆する、実質的に平坦で柔軟な上部カバーと、複数の第1通路と位置合わせされた複数の上部カバー通路を有する上部カバーと、を備える。
【0016】
別の一実施形態によれば、組織の2つの層を接合するための装置と、重合可能な又は架橋可能な流動性の接着剤を収容している容器と、接着剤を装置上に分配するのに適合したディスペンサと、を備えるキットが提供される。
【0017】
更に別の一実施形態によれば、装置を使用して組織の層を接着接合する方法であって、流動性の接着剤を上部カバー上に分配し、複数の第1通路を接着剤で満たすステップと、スキャフォールドから上部カバーを取り外すステップと、第1組織と第2組織との間にスキャフォールドを配置し、第1通路内の接着剤と第1組織及び第2組織との接触を確立するステップと、第1組織及び第2組織と接触している接着剤を重合及び/又は架橋させることにより、第1組織と第2組織とを離散した接合点でスキャフォールドを通して相互に接合するステップと、組織の層の間の直接接触を複数の第2通路を通して確立するステップと、第1組織と第2組織との間にスキャフォールドを残すステップと、を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】装置の一実施形態を示す略斜視断面図である。
【
図3】装置の一実施形態を示す略斜視断面分解図である。
【
図5】装置の一実施形態を示す略斜視断面図である。
【
図6】装置の一実施形態を示す略斜視断面分解図である。
【
図14】装置の一実施形態を示す略側面断面図である。
【
図16】装置の一実施形態を示す略側面断面図である。
【
図17】スキャフォールドの実施形態を示す略底面図である。
【
図18】スキャフォールドの実施形態を示す略底面図である。
【
図19】スキャフォールドの実施形態を示す略上面図である。
【
図20】スキャフォールドの実施形態を示す略上面図である。
【
図21】スキャフォールドの実施形態を示す略上面図である。
【
図22A】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【
図22B】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【
図22C】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【
図22D】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【
図23A】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【
図23B】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【
図23C】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【
図23D】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【
図23E】動作中の装置の実施形態を示す略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで
図1から
図3を参照すると、本発明の装置10の一実施形態が示されている。
図1は装置10の略斜視図であり、
図2は装置10の略斜視断面図であり、
図3は装置10の略斜視断面分解図である。
【0020】
スキャフォールド
装置10は、吸収性の又は非吸収性の材料から作製された薄く平坦で柔軟なスキャフォールド20を備えている。好適な一実施形態では、スキャフォールド20は、少なくとも部分的に吸収性の、又は少なくとも部分的に可溶性のポリマー又は複合材料から作製されている。最も好適な一実施形態では、スキャフォールド20は完全に吸収性であるか、又は完全に可溶性である。スキャフォールド20は、実質的に平坦で柔軟であり、上面22、下面24及び側壁26によって画定されている。複数の第1通路30及び複数の第2通路40が、スキャフォールド20内に複数のスルーホール又は孔部を備え、スキャフォールド20を上面22から下面24まで、上面22及び下面24にほぼ垂直に横断する。
【0021】
第1通路30は、上面22上では第1上部開口部32として見え、下面24上では第1下部開口部34として見える。第2通路40は、上面22上では第2上部開口部42として見え、下面24上では第2下部開口部44として見える。
【0022】
好適な一実施形態では、第1通路30及び第2通路40の壁は、上面22及び下面24に垂直である。すなわち、第1上部開口32は、第1下部開口34と同じ寸法を有し、第2上部開口部42は、第2下部開口部44と同じ寸法を有する。
【0023】
いくつかの実施形態(図示せず)では、第1通路30が円錐形状を有することにより、第1上部開口部32が第1下部開口部34よりも大きい。
【0024】
好適な一実施形態では、第2通路40が空の開口部又は孔部である。任意選択的に、第2通路40が、創傷治癒剤、流体吸収材料などの医学的に有用な薬剤を任意に含む急速に可溶できる材料(図示せず)で満たされてもよい。
【0025】
スキャフォールド20が、正方形、長方形、円形、楕円形、三角形などの任意の幾何学的形状又は形態であってもよい。任意選択的に、スキャフォールドがトリミング可能であってもよい。スキャフォールド20の厚さ(又は側壁26の高さ)は、約0.2mm~約8mm、より好ましくは、例えば1、2、3、4mmなどの1mm~6mmである。例えば
図19~
図21に示されるような上面図から測定した場合のスキャフォールド20の総表面積は、約3cm
2~約400cm
2、より好ましくは10、20、50、100、150、200cm
2などの5cm
2~300cm
2である。いくつかの実施形態では、スキャフォールド20が実質的に円形である場合、円の直径は例えば5cm、10cm、15cm、20cmなどの約2cm~約20cmである。いくつかの実施形態では、スキャフォールド20が実質的に正方形である場合、正方形の辺は約3、5、10、15、20cmなどの約2cm~約20cmである。
【0026】
第1及び第2通路30、40が、円形、長方形などを含む任意の形状であってもよい。円形の場合、第1通路30が、2、5、10mmなどの約1mm~約15mmの直径を有してもよい。円形の場合、第2通路40が、2、5、10、25、40mmなどの約2mm~約50mmの直径を有してもよい。複数の第2通路40が、第1通路30が占めていないスキャフォールド20の上面22及び下面24上の空間の50%~95%を占め、第2通路40が第1通路30と交差しないように構成されていてもよい。スキャフォールド20の上面22及び下面24上の空間の総面積のうちで第1通路30が占める部分が、5%~50%であってもよく、スキャフォールド20の上面22及び下面24上の空間の総面積のうちで第2通路40が占める部分が、50%~95%であってもよい。
【0027】
すべての実施形態において、第1通路30及び第2通路40は、例えば上面22の40、60、80、90%などの上面22の30%~95%など、スキャフォールド20のかなりの部分を被覆している。好ましくは、第2通路40が占める表面積は、第1通路30が占める表面積の約30%~約300%である。好ましくは、第2通路40が占める表面積は、第1通路30が占める表面積以上である。
【0028】
スキャフォールド20が、10、20、50、75、100、500などの4~数百の第1通路30を有してもよい。スキャフォールド20が、1、5、10、20、50、100などの1~数百の第2通路40を有してもよい。
【0029】
スキャフォールド20を、パンチング、ラミネート、ウェブ変換(web converting)、射出成形、層接着、機械加工、3D印刷及びそれらの組み合わせなどの、当業者に周知の多くの技術によって製造することができる。
【0030】
スキャフォールド20が、合成材料、半合成材料、天然材料又はこれらの組み合わせのいずれかで形成されてもよい。特に好適な材料には、例えばPLGA又はポリ(乳酸-コ-グリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンコポリマー及びエチレンブチレンコポリマー、ポリウレタン、ポリウレタンフォーム、ポリスチレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、これらのコポリマー及び混合物、綿、コラーゲン、ゼラチン及びこれらの複合材料が含まれる。スキャフォールド20が、多孔質であっても、又は非多孔質であってもよい。
【0031】
スキャフォールド20が、生分解性であっても、生分解性でなくても、又は部分的に生分解性であってもよい。「生分解性」とは、スキャフォールド20が、一定期間後に物理的に除去する必要がないように、in vivoで経時的に生分解することを意味する。したがって、例えば、生分解性材料は、生体内環境において約1週間~約5年の期間にわたって生分解する材料である。非生分解性材料は、生体内環境において約5年以内に生分解しない材料である。
【0032】
一実施形態では、
図20に示すように、少なくともいくつかの第2通路40を互いに及び/又はスキャフォールド20の周辺部に接続する表面溝80が設けられている。表面溝80は、上面22及び/又は下面24に切り込まれ、第1通路30とは流体連通していない。表面溝80は、体液が接着剤70によって形成される離散した接合点の周りを移動するのに伴って、組織T1及びT2を接合する領域から移動又は排出されることを可能にしている。
【0033】
上部カバー
装置10は、上面222、下面224及び側壁226によって画定される薄く平坦で柔軟なフィルムを有する上部カバー200を更に備えている。上部カバー200は、
図1~
図3に示すように、上面22に解放可能に取り付けられ、少なくとも上面22全体を被覆するように構成されている。別の実施形態では、上部カバー200は上面22を超えて延伸し、上面22よりも大きい。上部カバー200は、上部カバー200にスルーホール又は孔部を備え、上部カバー200を上面222から下面224まで、上面222及び下面224にほぼ垂直に貫通する複数の上部カバー通路230を有する。上部カバー通路230は、上面222上では上部カバー上部開口部232として見え、下面224上では上部カバー下部開口部234として見える。
【0034】
好適な一実施形態では、上部カバー通路230の壁は、上部カバー200の上面222及び下面224に対して垂直である。すなわち、上部カバー上部開口部232は、上部カバー下部開口部234と同じ寸法を有する。いくつかの実施形態(図示せず)では、上部カバー通路230が円錐形状を有することにより、上部カバー上部開口部232が上部カバー下部開口部234よりも大きい。
【0035】
位置合わせ
第1通路30は、上部カバー通路230と位置合わせされている。すなわち、
図1~
図2に示されるように、上部カバー200がスキャフォールド20上に配置されると、第1通路30が上部カバー通路230と位置合わせされ、上部カバー200の上面222からスキャフォールド20の下面24まで貫通するスルーホール又は孔部を形成する。図示されるように、第1上部開口部32は、上部カバー下部開口部234と位置合わせされている。
【0036】
第1上部開口部32は、上部カバー下部開口部234と同じ寸法でも、又は異なる寸法でもよい。好適な一実施形態では、図示されるように、第1上部開口部32が上部カバー下部開口部234と同じ寸法を有する。いくつかの実施形態では、第1上部開口部32は、上部カバー下部開口部234(図示せず)よりも小さい。いくつかの実施形態では、第1上部開口部32は、上部カバー下部開口部234(図示せず)よりも大きい。
【0037】
第2通路40は、上部カバー200によって完全に覆われ、上部カバー200の上面222上に露出していない。すなわち、第2上部開口部42は、上部カバー200によって完全に被覆されている。
【0038】
上部カバー200は、ポリマーフィルム、剥離ライナーなどの任意のポリマー材料で作製されている。
【0039】
任意選択的な底面カバーを有する実施形態
ここで
図4から
図6を参照すると、
図1から
図3の実施形態に類似しているが、更なる任意選択的な底部カバー300を有する本発明の装置10の一実施形態が示されている。
図4は装置10の略斜視図であり、
図5は装置10の略斜視断面図であり、
図6は装置10の略斜視断面分解図である。底部カバーの利点には、例えば、以下の「間接充填(indirect fil)」の項目で述べるように、装置の取扱い性及び使いやすさが改善されることが含まれる。
【0040】
この実施形態では、装置10が、上面322、下面324及び側壁326によって画定される薄く平坦で柔軟なフィルムを有する任意選択的な底部カバー300を更に備えている。底部カバー300は、
図1~
図3に示すように、スキャフォールド20の下面24に解放可能に取り付けられ、少なくとも下面24全体を被覆するように構成されている。別の実施形態では、底部カバー300は下面24を超えて延伸し、下面24よりも大きい。
【0041】
任意選択的な底部カバー300は、孔部も開口部も有さず、第1通路30及び第2通路40を完全に被覆するように、すなわち、第1下部開口部34及び第2下部開口部44を被覆するように構成されている。
【0042】
底部カバー300は、ポリマーフィルム、剥離ライナーなどの任意のポリマー材料で作製されている。
【0043】
プルタブ
ここで
図7~
図9を参照すると、上部カバープルタブ250を有する上部カバー200を備えた装置10の一実施形態が示されている。
図7は装置10の略斜視図であり、
図8は装置10の略上面図であり、
図9は装置10の略側面図である。
【0044】
上部カバープルタブ250は、スキャフォールド20を越えて延伸してスキャフォールド20から張り出し、解放可能な上部カバー200の持ち上げ及び取り外しを容易にする。上部カバープルタブ250は、手又は外科用把持器又は別の外科用ツールによって容易に把持できるサイズであり、(図示されるように)上部カバー200の幅と実質的に同一の幅を有してもよく、又は、上部カバープルタブ250が、上部カバー200の幅の10%~80%のより狭い幅を有してもよい。いくつかの実施形態では、上部カバープルタブ250の幅は、1、2、3、4、5cmなど、1~10cmである。
図8~
図9、
図11~
図12において矢印L1で示される上部カバープルタブ250の長さL1は、例えば5、10、15、20mmなど、約3mm~約30mmである。
【0045】
ここで
図10~
図12を参照すると、上部カバー200が上部カバープルタブ250を有し、底部カバー300が底部カバープルタブ350を有する装置10の一実施形態が示されている。
【0046】
図10は装置10の略斜視図であり、
図11は装置10の略上面図であり、
図12は装置10の略側面図である。底部カバープルタブ350は、スキャフォールド20を越えて延伸してスキャフォールド20から張り出し、解放可能な底部カバー300の持ち上げ及び取り外しを容易にする。底部カバープルタブ350は、手又は外科用把持器又は別のツールによって容易に把持できるサイズであり、(図示されるように)底部カバー300の幅と実質的に同一の幅を有してもよく、又は、底部カバープルタブ350が、底部カバー300の幅の10%~80%のより狭い幅を有してもよい。いくつかの実施形態では、底部カバープルタブ350の幅は、1、2、3、4、5cmなど、1~10cmである。矢印L2によって
図11~
図12に示される底部カバープルタブ350の長さL2は、5、10、15、20mmなど、約3mm~約30mmである。
【0047】
図10~
図12に示されるように、上部カバープルタブ250及び底部カバープルタブ350が、上部カバー200及び底部カバー300を別個に容易に取り外すことができるように、互いに向かい合っていてもよい。別の実施形態(図示せず)では、上部カバープルタブ250及び底部カバープルタブ350が、スキャフォールド20の同じ側面上に配置されていても、又はスキャフォールド20の隣り合う側面上に配置されていてもよい。
【0048】
更なる実施形態の上面図及び断面図
ここで
図13及び
図14を参照すると、
図7~
図9の実施形態と同様の装置10の実施形態が図示されている。図示された実施形態は、2つではなく3つの第2通路40を有する。
図13は略上面図であり、
図14は
図13に示される線A-Aに沿った略側面断面図である。
【0049】
ここで
図15及び
図16を参照すると、
図10~
図12の実施形態と同様の装置10の実施形態が図示されている。図示された実施形態は、2つではなく3つの第2通路40を有する。
図15は略上面図であり、
図16は
図15に示される線A-Aに沿った略側面断面図である。
【0050】
PSA
ここで
図17及び
図18を参照すると、
図1~
図12の実施形態と同様のスキャフォールド20の実施形態が示されている。
図17及び
図18は、略底面図、すなわち下面24からの図である。
図17は、下面24上に配置され、下面24のうちで第1通路30及び第2通路40によって占められていない領域の10%~90%を被覆する、すなわち下面24のうちで第1下部開口部34及び第2下部開口部44によって占められていない領域の10%~90%を被覆する任意選択的な感圧接着剤の帯又は縞50を示す。いくつかの実施形態では、任意選択的な感圧接着剤の縞50は、下面24のうちで第1通路30及び第2通路40によって占められていない領域の20、30、40、50、60又は70%を被覆している。ドット状、正方形状、様々な角度の帯状(mixed angular bands)などを含む、感圧接着剤を適用するその他の形状及び形態も考えられる。
【0051】
図18は、別の一実施形態において、下面24上に配置され、下面24のうちで第1通路30及び第2通路40によって占められていない領域の100%を被覆する任意選択的な感圧部52を示す。
【0052】
(図示されていない)任意選択的な感圧接着剤を更に又は代わりに、スキャフォールド20の上面22のうちで第1通路30及び第2通路40によって占められていない表面上に、縞状、ドット状、帯状に又は全体にわたって使用してもよい。
【0053】
開始剤
次に、略上面図を示す
図19~
図21を参照すると、第1通路30及び第2通路40のサイズ及び配置が異なるスキャフォールド20の様々な実施形態が示されている。
【0054】
好適な一実施形態では、接着剤重合又は架橋の開始剤及び/又は促進剤が、
図19~
図21及び
図13~
図14に示すように、第1通路30の壁にコーティングされることなどにより、参照番号60で示すように第1通路30内に配置されてもよい。接着剤重合又は架橋の開始剤及び/又は促進剤を第2通路40内に配置することもできるが、好適な一実施形態では、接着剤重合又は架橋の開始剤及び/又は促進剤が第2通路40内に配置されない。
【0055】
別の一実施形態では、接着剤重合又は架橋の開始剤及び/又は促進剤を、底部カバー300の上面322上の第1通路30内、上面322上全体、又は
図15~16に参照番号62によって示されるように、底部カバー300の上面322上の第1通路30内のみに配置してもよい。
【0056】
一実施形態においては、接着剤重合又は架橋の開始剤及び/又は促進剤が、底部カバー300の上面322上の第1通路30内に配置され、第1通路30の壁にもコーティングされていてもよい。
【0057】
一実施形態(図示せず)では、上面22上、下面24上又はその双方上で設けられた、接着剤重合又は架橋の開始剤及び/又は促進剤でコーティングされたメッシュがあり、そのメッシュが第1通路30の上方に配置されている。
【0058】
いくつかの実施形態におけるスキャフォールド20は、その中又は上に位置する1つ以上の化学物質を含む。例えば、1つ以上の化学物質が、化学的に結合、物理的に結合、コーティング、吸収又は吸着されるなど、底部カバー300の上面322上の、好ましくは第1通路30内のスキャフォールド20内又は上に分散されてもよい。したがって、例えば、スキャフォールド20が好ましくは、少なくとも1つの重合開始剤又は速度促進剤又は調整剤を含み、任意選択的に1つ以上の生体活性材料を含んでもよい。
【0059】
例えば、重合開始剤又は促進剤又は速度調整剤が、その開始剤又は速度調整剤が、続いて適用される重合性接着剤組成物に所望の開始又は速度調整の効果を付与するように、スキャフォールド20内又は上に充填されてもよい。重合開始剤又は速度調整剤は、その開始剤又は速度調整剤がスキャフォールド20から分離してしまうことなく、その残分が結果として生じるポリマー材料中に分散するように、スキャフォールド20内又は上に固定されてもよい。あるいは、例えば、重合開始剤又は速度調整剤を、続いて適用される重合性接着剤組成物によって可動化又は可溶化され、結果として生じるポリマー材料中に分散されるような方法でのみ、最初にスキャフォールド20に付着させてもよい。
【0060】
所望により、化学物質の組み合わせをスキャフォールド20内又は上に設けて、複数の効果を得てもよい。例えば、第1の化学種(重合開始剤又は速度調整剤など)をスキャフォールド20内又は上に固定する一方で、第2の異なる化学種(生体活性材料など)をスキャフォールド20に分離可能に付着させてもよい。化学種及び結果として生じる効果の他の組み合わせもまた構想される。
【0061】
化学物質が、スキャフォールド20内の化学物質の濃度が実質的に均一となるように、スキャフォールド20に均一な方法で適用されてもよい。あるいは、濃度勾配がスキャフォールド20を横切って又はそれを通して存在するように、化学物質が適用されてもよい。
【0062】
スキャフォールド20内又は上に存在する場合、化学物質(すなわち、重合開始剤、速度調整剤及び/又は生体活性材料あるいはその他の添加剤)が、任意の好適な方法でスキャフォールド20内又は上に組み込まれてもよい。例えば、化学物質が、化学物質を含有する溶液、混合物などとスキャフォールド20を接触させることにより、スキャフォールド20に添加されてもよい。化学物質が、例えば、浸漬、噴霧、ロールコーティング、グラビアコーティング、はけ塗り、蒸着等によってスキャフォールド20に添加されてもよい。あるいは、化学物質が、成形中などのスキャフォールド20の製造中にスキャフォールド20内又は上に組み込まれてもよい。
【0063】
スキャフォールド20内又は上に加えられた重合開始剤又は速度調整剤が、例えば重合時間の短縮などの多くの利点を提供してもよい。重合開始剤又は速度調節剤の濃度を高めて、重合時間を更に短縮してもよい。
【0064】
重合開始剤又は速度調整剤がスキャフォールド20内又は上に直接に加えられるので、重合性接着剤組成物と重合開始剤又は速度調整剤とを適用前に混合する必要がない。これは、より長い作業時間を可能にし得、重合性モノマー組成物は、より長い時間にわたって、より正確にかつ注意深く適用されることができる。
【0065】
そのような好適な開始剤は、当技術分野では公知であり、例えば、米国特許第5,928,611号及び同第6,620,846号に説明され、両方が参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれ、並びに米国特許出願第2002/0037310号に説明され、参照によりその全体がまた本明細書に組み込まれる。重合開始剤として有用な四級アンモニウム塩化物及び臭化物塩は、特に好適である。例として、臭化ドミフェン、塩化ブチリルコリン、臭化ベンザルコニウム、塩化アセチルコリンなどの四級アンモニウム塩がとりわけ使用されてもよい。
【0066】
塩化ベンジルトリアルキルアンモニウムなどのベンザルコニウム又はベンジルトリアルキルアンモニウムハライドが使用されてもよい。使用される場合、ベンザルコニウムハライドは、異なる鎖長化合物の混合物を含む、精製されていない状態のベンザルコニウムハライドであってもよく、又は、C12、C13、C14、C15、C16、C17、及びC18の化合物が挙げられるが、これらには限定されない、約12個~約18個の炭素原子の鎖長を有するものを含む任意の好適な精製された化合物であってもよい。例として、開始剤は、塩化ベンジルトリアルキルアンモニウム(BTAC)など四級アンモニウム塩化物塩であってもよい。
【0067】
また、他の開始剤又は促進剤は、過度の実験なしに当業者によって選択されてもよい。そのような好適な開始剤又は促進剤としては、洗剤組成物;界面活性剤:例えば、ポリソルベート20(例えば、ICI AmericasからのTween 20(商標))、ポリソルベート80(例えば、ICI AmericasからのTween 80(商標))及びポロキサマーなどの非イオン性界面活性剤、臭化テトラブチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、テトラデシル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、並びにドデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、分子内塩などの両性又は双性イオン界面活性剤;イミダゾール、アルギニン及びポビジンなどのアミン、イミン及びアミド;トリフェニルホスフィン及び亜リン酸トリエチルなどのホスフィン、亜リン酸塩、及びホスホニウム塩;エチレングリコール、没食子酸メチルなどのアルコール;タンニン;亜硫酸水素ナトリウム、硫酸カルシウム及びケイ酸ナトリウムなどの無機塩基及び塩;チオ尿素及びポリスルフィドなどの硫黄化合物;モネンシン、ノナクチン、クラウンエーテル、カリックスアレーン及び高分子エポキシドなどの高分子環状エーテル;炭酸ジエチルなどの環状及び非環状カーボネート;Aliquat 336などの相間移動触媒;ナフテン酸コバルト、及びアセチルアセトン酸マンガンなどの有機金属;並びに、ジ-t-ブチルペルオキシド及びアゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤又は促進剤及びラジカルを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
3、4、又はそれ以上などの2つ以上の開始剤又は促進剤の混合物が使用されてもよい。複数の開始剤又は促進剤の組み合わせは、例えば、重合性モノマー種の開始剤を調整するために有益であり得る。例えば、モノマーのブレンドが使用される場合、開始剤のブレンドは、単一の開始剤より優れた結果を提供し得る。例えば、開始剤のブレンドは、1つのモノマーを優先的に開始する1つの開始剤、及び他のモノマーを優先的に開始する第2の開始剤を提供することができ、又は確実に両方のモノマー種が等価の若しくは所望の不等価の速度で開始されるのを確実にする開始速度を提供することができる。この方法では、開始剤のブレンドは、必要な開始剤の量を最小限にするのに役立ち得る。更に、開始剤のブレンドは重合反応速度論を強化し得る。
【0069】
動作
組織への直接充填
動作においては、
図14又は
図16に示される図と同様の略断面側面図を示す
図22を参照すると、
図22Aに示すように、上部カバー200を有するスキャフォールド20を備える装置10を、下面24に隣接してこれと接触している組織T1上に配置する。
【0070】
任意選択的に、装置10を組織T1上に配置する前に、任意選択的な底部カバー300を取り外す。スキャフォールド20を、下面24上に配置された任意選択的な感圧接着剤50又は52によって組織上に任意選択的に固定する。
【0071】
図22Bに示されるように、次に架橋性又は重合性の液体又は半液体の接着剤70を上部カバー200の上面222上に適用することにより、接着剤70が上部カバー通路230内に浸透し、そこから第1通路30内に浸透して、図示するように第1通路30を満たす。余分な接着剤70も上部カバー200の上面222上に図示されている。有利には、接着剤70は第2通路40内に浸透することができない。接着剤70は、第1通路30によって画定される離散した区域又は点で組織T1への接着を開始する。
【0072】
次に、好ましくはタブ250を引っ張ることによって上部カバー200を取り外すと、
図22Cに示すように、接着剤70が第1通路30を満たし、上面22が露出した状態のスキャフォールド20が組織T1上に残る。
【0073】
次に、
図22Dに更に示すように、第2組織T2を上面22と接触させることによってスキャフォールド20を組織T1とT2の間に挟み、第1通路30内に入っている接着剤70を組織T2とも接触させる。接着剤70は、組織T1及びT2との界面で接合を確立すると共に、第1通路30内で重合及び/又は架橋する。
【0074】
したがって、接着接合されている組織T1及びT2は、第1通路30によって画定される離散した区域又は点で接着剤70によって相互に接着接合される。同時に、組織T1及びT2は相互に対して露出しており、接着剤70で満たされていない第2通路40を介して接触を確立することができる。
【0075】
動作
間接充填
別の動作方法では、
図14又は
図16に示される図と同様の略断面側面図を示す
図23を参照すると、最初に、上部カバー200及び底部カバー300を有するスキャフォールド20を備える装置10を、上部カバー200の上面222が上向きとなるように配置する。次に、
図23Aに示すように、架橋性又は重合性の接着剤70を上部カバー200の上面222上に適用することにより、接着剤70が上部カバー通路230内に浸透し、そこから第1通路30内に浸透して、図示するように第1通路30を満たす。余分な接着剤70も上部カバー200の上面222上に図示されている。有利には、接着剤70は第2通路40内に浸透することができない。
【0076】
次に、任意選択的にタブ250を引っ張ることによって上部カバー200を取り外すと、
図23Bに示すように、底部カバー300が取り付けられ、接着剤70が第1通路30を満たし、上面22が露出した状態のスキャフォールド20が残る。
【0077】
次に、
図23Cに示すように、底部カバー300を有するスキャフォールド20を、上面22が組織T1に向くように裏返して組織T1と接触させ、組織T1が上面22に隣接してこれと接触するように、組織T1上にスキャフォールド20を配置する。接着剤70は、第1通路30によって画定される離散した区域又は点で組織T1への接着を開始する。
【0078】
スキャフォールド20を、上面22上に配置された任意選択的な感圧接着剤(図示せず)によって組織上に任意選択的に更に固定する。
【0079】
次に、任意選択的にタブ350を引っ張ることによって底部カバー300を取り外すと、
図23Dに示すように、接着剤70が第1通路30を満たし、下面24が露出した状態のスキャフォールド20が組織T1上に残る。
【0080】
次に、
図23Eに示すように、第2組織T2を下面24と接触させることによってスキャフォールド20を組織T1とT2の間に挟み、第1通路30内に入っている接着剤70を組織T2とも接触させる。接着剤70は、組織T1及びT2との界面で接合を確立すると共に、第1通路30内で重合及び/又は架橋する。
【0081】
したがって、接着接合されている組織T1及びT2は、第1通路30によって画定される離散した区域又は点で接着剤70によって相互に接着接合される。同時に、組織T1及びT2は相互に対して露出しており、接着剤70で満たされていない第2通路40を介して接触を確立することができる。
【0082】
有利には、組織T1及びT2の接合が生じていない領域が相互に接触し、第2通路40を通して治癒接触を確立することが可能である。有利には、組織の層T1とT2との間に配置されたスキャフォールド20が、露出した組織の領域全体にわたってではなく、離散した固定点で組織の層を接合するための液体接着剤の均一な分布を可能にし、組織同士の接触を可能にする。
【0083】
最終的にスキャフォールド20は吸収又は溶解し、組織の層の間に離散した接着接合を残す。
【0084】
接着剤
一実施形態では、液体又は半液体の接着剤70は、組織T1及びT2との接触時に重合されるか、又は架橋する。より好適な一実施形態では、接着剤70は、接着剤重合及び/又は架橋の開始剤及び/又は促進剤との接触後に重合されるか、又は架橋する。
【0085】
そのような開始剤及び/又は促進剤が、非解放可能に(non-releasably)、すなわち、重合及び/又は架橋を開始又は加速する活性を保持しながら、スキャフォールド20内又は上に固定されることが可能であるようにコーティング又は配置されてもよい。一実施形態では、開始剤及び/又は促進剤が、解放可能に、すなわち、流動性の接着剤70中に少なくとも部分的に放出されてこれと混合することが可能であるように配置される。
【0086】
好適な一実施形態では、接着剤70は、第1開口部30内に解放可能に配置された開始剤及び/又は促進剤60並びに/あるいは底部カバー300上に解放可能に配置された開始剤及び/又は促進剤62との接触後に重合されるか又は架橋する。
【0087】
組織T1及びT2と接触する接着剤70の急速な重合及び/又は架橋により、組織T1及びT2が、第1通路30、より具体的には第1上部開口部32及び第1下部開口部34に対応する離散した接着点で、スキャフォールド20を介して相互に接着する。
【0088】
有利には、接着剤70が第1開口部30内に進入すると、接着剤70の架橋又は重合が開始される。
【0089】
接着剤70が、いかなる種類の生体適合性のかつ急速に架橋可能な及び/又は重合可能な化合物又は化合物の混合物であってもよい。急速に架橋可能及び/又は重合可能であることは、開始剤又は促進剤を加えた後、あるいは接着剤が2つ以上の成分から形成された後に、0.2分から約20分以内、より好ましくは、例えば1、2、3、5分などの0.5分から10分以内に硬化する、すなわち架橋及び/又は重合することが可能であることを意味する。
【0090】
一実施形態において、接着剤70は、例えば別個のバレル又は1つのデュアルバレルシリンジ(two-barrel syringe)に含まれる2つの成分をミキシングチップに通して混合することにより、スキャフォールド20への注入前に形成される。この実施形態では、スキャフォールド20の内側に架橋開始剤も促進剤も配置されていない。一実施形態では、接着剤70は、フィブリノーゲンとトロンビンとを混合することにより形成される。
【0091】
一実施形態では、接着剤70がフィブリノーゲンを含み、スキャフォールド20の内側に配置された架橋開始剤又は促進剤がトロンビンを含む。
【0092】
好適な一実施形態では、重合性接着剤組成物が、重合性単量体接着剤を含んでもよい。実施形態では、重合性接着剤組成物は、重合性1,1-二置換エチレン単量体配合を含む。実施形態では、重合性接着剤組成物は、シアノアクリレート配合を含む。実施形態では、ポリウレタン、ポリエチレングリコール、アクリレート、グルタルアルデヒドなどの合成重合性接着性材料及び生物ベースの接着剤が使用されてもよい。
【0093】
単独で又は組み合わせて使用可能な好適なα-シアノアクリレートモノマーとしては、2-オクチルシアノアクリレートなどのアルキルα-シアノアクリレート;ドデシルシアノアクリレート;2-エチルヘキシルシアノアクリレート;n-ブチルシアノアクリレートなどのブチルシアノアクリレート;エチルシアノアクリレート;メトキシエチルシアノアクリレートなどのメチルシアノアクリレート、又は他のα-シアノアクリレートモノマー;2-エトキシエチルシアノアクリレート;3-メトキシブチルシアノアクリレート;2-ブトキシエチルシアノアクリレート;2-イソプロポキシエチルシアノアクリレート;及び1-メトキシ-2-プロピルシアノアクリレートが挙げられる。実施形態では、モノマーは、エチル、n-ブチル、又は2-オクチルα-シアノアクリレートである。使用され得る他のシアノアクリレートモノマーとしては、アルキルシアノアセテート又はアルキルエステルシアノアセテートの、パラホルムアルデヒドとの、クネーフェナーゲル反応(Knoevenagel)反応、それに続く、結果として生じるオリゴマーの熱分解及び蒸留によって調製されたものなどのアルキルエステルシアノアクリレートが挙げられる。
【0094】
その他の多くの接着剤配合物が使用可能であり、当業者に周知である。例えば、PEGスクシンイミジルグルタレートを含む混合物を、流動性の接着剤として使用することができる。
【0095】
本発明の実施形態の上述の開示及び説明は、説明及び例示を目的とするものであり、好適な実施形態の寸法、形状及び材料並びに説明に、本発明の精神から逸脱することなく様々な変更を加えてもよいことが理解されよう。
【0096】
〔実施の態様〕
(1) 組織の2つの層を接合するための装置であって、
a)上面、下面及び側壁を有する実質的に平坦で柔軟なスキャフォールドと、
b)前記スキャフォールドを前記上面から前記下面まで貫通する複数の第1通路と、
c)前記スキャフォールドを前記上面から前記下面まで貫通する複数の第2通路と、
d)前記上面に解放可能に取り付けられて前記上面全体を被覆する、実質的に平坦で柔軟な上部カバーと、
e)前記複数の第1通路と位置合わせされた複数の上部カバー通路を有する前記上部カバーと、
を備える装置。
(2) 前記下面に解放可能に取り付けられて前記下面全体を被覆する実質的に平坦で柔軟な底部カバーを更に備え、
前記底部カバーが、前記複数の第1通路又は前記複数の第2通路と位置合わせされた孔部を有しない、
実施態様1に記載の装置。
(3) 前記上部カバー及び/又は前記底部カバーがプルタブを有する、実施態様2に記載の装置。
(4) 感圧接着剤が、前記下面、前記上面又は前記下面と前記上面との両方に配置されている、実施態様2に記載の装置。
(5) 前記スキャフォールドが、前記下面、前記上面又は前記下面と前記上面との両方に形成された表面溝を更に備え、
前記表面溝が、少なくともいくつかの前記第2通路を相互に、及び/又は前記スキャフォールドの周辺に接続する、
実施態様1に記載の装置。
【0097】
(6) 前記スキャフォールドが生分解性又は可溶性である、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記第2通路が、急速に可溶できる又は急速に吸収できる生体適合性材料で少なくとも部分的に満たされている、実施態様1に記載の装置。
(8) 架橋又は重合の促進剤又は開始剤が、前記第1通路内、前記第1通路に面する前記底部カバー上、又はこれらの組み合わせに配置されている、実施態様2に記載の装置。
(9) 前記促進剤又は前記開始剤が四級アンモニウム塩を含む、実施態様8に記載の装置。
(10) キットであって、
実施態様1の装置と、
重合可能な又は架橋可能な流動性の接着剤を収容している容器と、
前記接着剤を前記装置上に分配するのに適合したディスペンサと、
を備えるキット。
【0098】
(11) 実施態様2に記載の装置を使用して組織の層を相互に接着接合する方法であって、
a)流動性の接着剤を前記上部カバー上に分配し、前記複数の第1通路を前記接着剤で満たすステップと、
b)前記スキャフォールドから前記上部カバーを取り外すステップと、
c)第1組織と第2組織との間に前記スキャフォールドを配置し、前記第1通路内の前記接着剤と前記第1組織及び前記第2組織との接触を確立するステップと、
d)前記第1組織及び前記第2組織と接触している前記接着剤を重合及び/又は架橋させることにより、前記第1組織と前記第2組織とを離散した接合点で前記スキャフォールドを通して相互に接合するステップと、
e)前記組織の層の間の直接接触を前記複数の第2通路を通して確立するステップと、
f)前記第1組織と前記第2組織との間に前記スキャフォールドを残すステップと、
を含む方法。
(12) 前記接着剤が、前記スキャフォールド内又は上に配置された開始剤及び/又は促進剤と反応するステップを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記接着剤が、シアノアクリレートモノマー、フィブリノーゲン又はPEGスクシンイミジルグルタレートを含む、実施態様11に記載の方法。
(14) ステップa)の前に実行される、
1)前記スキャフォールドから前記底部カバーを取り外すステップと、
2)前記下面が前記第1組織と接触するように前記スキャフォールドを配置するステップと、
3)前記下面上に任意選択的に配置された感圧接着剤を介して、前記第1組織上に前記スキャフォールドを任意選択的に固定するステップと、
を更に含む、実施態様11に記載の方法。
(15) ステップb)の後に実行される、
1)前記スキャフォールドの前記上面を前記第1組織と接触させるステップと、
2)前記下面上に任意選択的に配置された感圧接着剤を介して、前記第1組織上に前記スキャフォールドを任意選択的に固定するステップと、
3)前記スキャフォールドから前記底部カバーを取り外すステップと、
を更に含む、実施態様11に記載の方法。
【0099】
(16) 実施態様2に記載の装置を使用して組織の層を相互に接着接合する方法であって、
a)前記スキャフォールドから前記底部カバーを取り外すステップと、
b)前記スキャフォールドを第1組織上に配置し、前記下面を前記第1組織と接触させるステップと、
c)前記下面上に任意選択的に配置された感圧接着剤を介して、前記第1組織上に前記スキャフォールドを任意選択的に固定するステップと、
d)流動性の接着剤を前記上部カバー上に分配して前記複数の第1通路を満たすステップと、
e)前記スキャフォールドから前記上部カバーを取り外すステップと、
f)第2組織を前記上面と接触させることにより、
前記複数の第1通路内の前記接着剤と前記第1組織及び前記第2組織との接触を確立するステップと、
g)前記第1組織及び前記第2組織と接触している前記接着剤を重合及び/又は架橋させることにより、前記第1組織と前記第2組織とを離散した接合点で前記スキャフォールドを通して相互に接合するステップと、
h)前記組織の層の間の直接接触を前記複数の第2通路を通して確立するステップと、
i)前記第1組織と前記第2組織との間に前記スキャフォールドを残すステップと、
を含む方法。
(17) 前記接着剤が、前記スキャフォールド内又は上に配置された開始剤及び/又は促進剤と反応するステップを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 実施態様2に記載の装置を使用して組織の層を相互に接着接合する方法であって、
a)流動性の接着剤を前記上部カバー上に分配して前記複数の第1通路を満たすステップと、
b)前記スキャフォールドから前記上部カバーを取り外すステップと、
c)前記スキャフォールドを第1組織上に配置し、前記上面を前記第1組織と接触させるステップと、
d)前記上面上に任意選択的に配置された感圧接着剤を介して、前記第1組織上に前記スキャフォールドを任意選択的に固定するステップと、
e)前記スキャフォールドから前記底部カバーを取り外すステップと、
f)第2組織を前記下面と接触させることにより、
前記複数の第1通路内の前記接着剤と前記第1組織及び前記第2組織との接触を確立するステップと、
g)前記第1組織及び前記第2組織と接触している前記接着剤を重合及び/又は架橋させることにより、前記第1組織と前記第2組織とを離散した接合点で前記スキャフォールドを通して相互に接合するステップと、
h)前記組織の層の間の直接接触を前記複数の第2通路を通して確立するステップと、
i)前記第1組織と前記第2組織との間に前記スキャフォールドを残すステップと、
を含む方法。
(19) 前記接着剤が、前記スキャフォールド内又は上に配置された開始剤及び/又は促進剤と反応するステップを更に含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記接着剤が、シアノアクリレートモノマー、フィブリノーゲン又はPEGスクシンイミジルグルタレートを含む、実施態様18に記載の方法。