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特許7191859位置センサとしてのカテーテルスプライン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】位置センサとしてのカテーテルスプライン
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/10 20160101AFI20221212BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20221212BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B90/10
A61B18/14
A61M25/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019566155
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2018053633
(87)【国際公開番号】W WO2018220479
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】62/512,263
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/971,966
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バル-タル・メイル
(72)【発明者】
【氏名】モンタグ・アブラム・ダン
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-161077(JP,A)
【文献】特開2014-073384(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0272667(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/10
A61B 18/14
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
近位端及び遠位端を有するプローブであって、前記プローブは、ヒト患者の器官に挿入されるように構成され、プローブ軸を画定する、プローブと、
前記遠位端において前記プローブ上に位置付けられる、少なくとも2つの導体と、
少なくとも2つの可撓性導電スプラインであって、各導電スプラインのそれぞれ、前記導体を備え、体積を包囲するそれぞれの弓状形態へと屈曲するように構成されている、少なくとも2つの可撓性導電スプラインと、
前記導体を介して前記スプラインに誘起された電圧を受け取り、前記受け取った電圧に応答して前記体積の位置及び向きを計算するように構成されているプロセッサと、を備え
前記導体は、前記遠位端に対して遠位側の前記プローブ軸上の共通の第1の終端において互いに電気的に接続され、前記第1の終端と反対側の別個の第2の終端において終端し、
前記プロセッサは、前記受け取った電圧に応答して前記体積の楕円率を計算するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記スプラインは、バルーンカテーテルを形成する可撓性材料に取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プローブ及び前記スプラインは、バスケットカテーテルを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記受け取った電圧を生成するように、前記スプラインによって包囲された前記体積を横断する交番磁界を発生させる、少なくとも1つの磁界放射器を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインは偶数個のスプラインを備え、前記プロセッサは、対向するスプライン対のそれぞれの中心及び向きを計算し、前記それぞれの中心及び向きから前記体積の前記位置及び向きを導出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの導体及び前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインは、前記プローブ軸を中心として対称に分布している、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つの導体及び前記少なくとも2つの可撓性スプラインは同数である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインはn個のスプラインを備え、nは3以上の整数であり、前記プロセッサは、それぞれの
【数1】
の異なるスプライン対に誘起された
【数2】
電圧のサブセットを受け取り、前記受け取ったサブセットに応答して前記体積の前記位置及び向きを計算するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインは、n個のスプラインを含み、nは2以上の整数であり、前記プロセッサは、それぞれの
【数3】
の異なるスプライン対に誘起された
【数4】
電圧を受け取り、前記受け取った
【数5】
電圧に応答して前記体積の前記位置及び向きを計算するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記受け取った電圧に応答して前記体積の大きさを計算するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記スプラインは、バルーンカテーテルを形成する可撓性材料に取り付けられており、前記装置はスクリーンを更に備え、前記プロセッサは、前記体積の前記位置、前記向き、及び前記大きさに応答して前記バルーンカテーテルの仮想表現を前記スクリーン上に提示するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
装置であって、
近位端及び遠位端を有するプローブであって、前記プローブは、ヒト患者の器官に挿入されるように構成され、プローブ軸を画定する、プローブと、
前記遠位端において前記プローブ上に位置付けられる、少なくとも2つの導体と、
少なくとも2つの可撓性導電スプラインであって、各導電スプラインのそれぞれは、前記導体を備え、体積を包囲するそれぞれの弓状形態へと屈曲するように構成されている、少なくとも2つの可撓性導電スプラインと、
前記導体を介して前記スプラインに誘起された電圧を受け取り、前記受け取った電圧に応答して前記体積の位置及び向きを計算するように構成されているプロセッサと、を備え、
前記導体は、前記遠位端に対して遠位側の前記プローブ軸上の共通の第1の終端において互いに電気的に接続され、前記第1の終端と反対側の別個の第2の終端において終端し、
前記プロセッサは、前記受け取った電圧に応答して前記体積の大きさを計算するように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、カテーテルナビゲーションに関し、特にカテーテルの位置及び向きを特定するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気生理学市場では、より正確なマップをもたらす、より詳細な電位図を提供するためにバスケット型又はバルーン型多電極カテーテルを開発しようとする競争意欲が高まっている。位置情報も入手できる場合、かかるカテーテルからの情報の有用性が大幅に向上する。
【0003】
Fuimaonoらの米国特許第6,748,255号は、心臓のマッピングに有用であると述べられているバスケットカテーテルについて記載している。このカテーテルは、近位端及び遠位端、並びにそれらの内部を通る少なくとも1つのルーメンを有する細長いカテーテル本体を備え、バスケット形状の電極アセンブリは、カテーテル本体の遠位端に装着される。
【0004】
Solisらの米国特許第7,155,270号は、心臓内の複数の点を同時にマッピングするのに有用であると述べられているカテーテルについて記載している。このカテーテルは、それぞれ自由遠位端を有する複数の可撓性スパインを含むマッピングアセンブリを含み、スパインは、スパインが互いに対して配置可能にする支持構造体によって支持される。
【0005】
Phanらの米国特許第6,529,756号は、体内組織内に周辺病変を形成するために使用され得、また、マッピング機能を実行するためにも使用され得るプローブについて記載している。このプローブは、体内組織に対して電極又は他の作動要素を支持する折り畳み式/拡張型構造体を含む。
【0006】
Fleischmanの米国特許第6,893,439号、及びFleischmanらの同第6,939,349号は、遠位端に可撓性スプライン脚部を有するガイド本体を備える電極支持構造体について記載している。このスプライン脚部は、組織に対する密着接触を容易にするために弓形形状を画定するように屈曲され、電極要素は、スプライン脚部によってその軸に沿って移動するように担持される。
【0007】
Kordisらの米国特許第8,346,339号は、心リズム障害を検出するための可撓性電極アセンブリを有するバスケット型心臓マッピングカテーテルについて記載している。このカテーテルは、近位部分、遠位部分、及びそれらの間の内部の内側部分を有する複数の可撓性スプラインを含み、スプラインの近位部分を確実に固定するためのアンカーが存在する。
【0008】
Justらの米国特許第8,560,086号は、複数の電気トレース及び基板を有するフレキシブル回路と、フレキシブル回路を包囲し、複数の電気トレースのうちの少なくとも1つと電気的に結合されたリング電極と、電極の少なくとも一部の上に延在する外側カバーと、を含む、カテーテル電極アセンブリのファミリーについて記載している。
【0009】
Kordisらの米国特許第8,644,902号は、バスケット型心臓マッピングカテーテルを使用して心リズム障害を検出する方法について記載している。この方法は、複数の露出した電極を誘導するために複数の可撓性スプラインを含むバスケットアセンブリを提供することを含み、電極は、バスケットの外側方向に向かって実質的に一方向に向けられている、実質的に平坦な電極である。
【0010】
Bar-Talらの米国特許出願公開第2015/0208942号は、電極を有するプローブを生体の心臓に挿入することによって、心臓のカテーテル法が実行され得る方法を記載している。このプローブは、複数のリブを有するバスケットカテーテルであってよく、各リブは複数の電極を有する。
【0011】
Chouらの米国特許出願公開第2015/036650842号は、フレキシブルプリント回路基板電気経路を有する拡張型カテーテルアセンブリについて記載している。この拡張型アセンブリは、バスケットアレイ又はバスケットカテーテルを形成する複数のスプラインを備え得る。
【0012】
参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態は装置を提供するものであり、この装置は、
近位端及び遠位端を有するプローブであって、プローブは、ヒト患者の器官に挿入されるように構成され、プローブ軸を画定する、プローブと、
遠位端においてプローブ上に位置付けられる、少なくとも2つの導体と、
少なくとも2つの可撓性導電スプラインであって、各導電スプラインは第1の終端及び第2の終端を有し、第1の終端は、遠位端を越えたプローブ軸上の領域において互いに電気的に接続され、各第2の終端は、導体のうちのそれぞれ1つに電気的に接続されており、スプラインは、体積を包含するそれぞれの弓状形態に曲がるように構成されている、少なくとも2つの可撓性導電スプラインと、
導体を介してスプラインに誘起された電圧を受け取り、受け取った電圧に応答して体積の位置及び向きを計算するように構成されているプロセッサと、を備える。
【0014】
開示する実施形態では、スプラインは、バルーンカテーテルを形成する可撓性材料に取り付けられている。あるいは、プローブ及びスプラインは、バスケットカテーテルを形成する。
【0015】
更に開示する実施形態では、プロセッサは、受け取った電圧に応答して体積の楕円率を計算するように構成されている。
【0016】
更に開示する実施形態では、装置は、受け取った電圧を生成するように、スプラインによって包囲された体積を横断する交番磁界を発生させる、少なくとも1つの磁界放射器を含む。
【0017】
代替的な実施形態では、少なくとも2つの可撓性導電スプラインは偶数個のスプラインを備え、プロセッサは、対向するスプライン対のそれぞれの中心及び向きを計算し、それぞれの中心及び向きから体積の位置及び向きを導出するように構成されている。
【0018】
更なる代替的な実施形態では、少なくとも2つの導体及び少なくとも2つの可撓性導電スプラインは、プローブ軸を中心として対称に分布している。
【0019】
更なる代替的な実施形態では、少なくとも2つの導体及び少なくとも2つの可撓性スプラインは同数である。
【0020】
少なくとも2つの可撓性導電スプラインはn個のスプラインからなってよく、nは3以上の整数であり、プロセッサは、それぞれの
【0021】
【数1】
の異なるスプライン対に誘起された
【0022】
【数2】
電圧のサブセットを受け取り、受け取ったサブセットに応答して体積の位置及び向きを計算するように構成されている。
【0023】
あるいは、少なくとも2つの可撓性導電スプラインはn個のスプラインからなり、nは2以上の整数であり、プロセッサは、それぞれの
【0024】
【数3】
の異なるスプライン対に誘起された
【0025】
【数4】
電圧を受け取り、受け取った
【0026】
【数5】
電圧に応答して体積の位置及び向きを計算するように構成されている。
【0027】
プロセッサは、受け取った電圧に応答して、体積の大きさを計算するように構成されてよい。スプラインは、バルーンカテーテルを形成する可撓性材料に取り付けられてよく、装置はスクリーンを更に備えてよく、プロセッサは、体積の位置、向き、及び大きさに応答してバルーンカテーテルの仮想表現をスクリーン上に提示するように構成されてよい。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、
近位端及び遠位端を有するプローブを、ヒト患者の器官に挿入するように構成することであって、プローブはプローブ軸を画定する、ことと、
プローブ上に、その遠位端において少なくとも2つの導体を位置付けることと、
少なくとも2つの可撓性導電スプラインを提供することであって、各導電スプラインは第1の終端及び第2の終端を有する、ことと、
遠位端を越えたプローブ軸上の領域において、第1の終端を電気的に接続することと、
導体のうちのそれぞれ1つに各第2の終端を電気的に接続することと、
体積を包囲する、それぞれの弓状形態へとスプラインを屈曲させることと、
導体を介してスプラインに誘起された電圧を受け取り、受け取った電圧に応答して体積の位置及び向きを計算することと、を含む、方法が提供される。
【0029】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態による、医療用プローブを備える医療システムの概略図である。
図2A】本発明の一実施形態による、プローブの遠位端の概略図である。
図2B】本発明の一実施形態による、プローブの遠位端の概略図である。
図2C】本発明の一実施形態による、プローブの遠位端の概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、プローブ上の導体の異なる終端と導体の共通終端との間に生じる電圧を示す。
図4】本発明の一実施形態による、バルーンのプロセッサによって実施されるバルーンカテーテルアルゴリズムの工程のフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態による、図1の医療システムに類似のシステムを使用した実験結果を示す。
図6】本発明の一実施形態による、カテーテルの単軸センサを追跡するための位置及び向きアルゴリズムの工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
概論
バスケット又はバルーンカテーテルプローブでは、カテーテルの位置を可能な限り正確に把握することが重要である。通常、この情報は、カテーテルに組み込まれている1つ以上のセンサから取得される。対照的に、本発明の実施形態は、バスケット又はバルーンカテーテルのスプラインを個々の単巻単軸磁気センサとして使用し、センサが交番磁界内にあるときに、センサからの信号がセンサの位置を提供する。大面積の単巻センサの精度は、小面積の多巻センサと同等である。これは、これら2種類のセンサの総面積が同様であるためである。スプラインからの信号は単独で使用されてよい、又はカテーテルに組み込まれる他の位置センサと合わせて、カテーテルのスプラインによって包囲される体積の位置を提供してよい。
【0032】
したがって、本発明の一実施形態は、ヒト患者の器官、通常、心臓に挿入され得るプローブを備える。このプローブは、通常、円筒形であり、対称軸を画定する。少なくとも2つの導体が、プローブ上にその遠位端において位置付けられ、プローブは少なくとも2つの可撓性導電スプラインを備える。各導電スプラインは、第1の終端と、第2の終端と、を有し、第1の終端は、プローブ遠位端を越えたプローブ軸上の領域において互いに電気的に接続される。各第2の終端は、導体のうちのそれぞれ1つに電気的に接続され、スプラインは、体積を包囲する、それぞれの弓状形態へと屈曲するように構成されている。
【0033】
プロセッサは、導体を介してスプラインに誘起された電圧を受け取り、電圧は、スプラインによって包囲された体積を横断する交番磁界によってスプラインに誘起される。プロセッサは、受け取った電圧に応答して、体積の位置及び向きを計算する。
【0034】
(発明を実施するための形態)
図1は、本発明の一実施形態による、近位端23と、遠位端26と、を有する医療用プローブ22を備える医療システム20の概略図である。図2A図2B、及び図2Cは、本発明の実施形態による、プローブ22の遠位端26の概略図である。システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(33 Technology Drive,Irvine,CA 92618 USA)製のCARTO(登録商標)システムを基にしてよい。
【0035】
本明細書で以下に記載する実施形態では、医療用プローブ22は、診断又は治療といった処置、例えば、電位のマッピング、及び/又は患者30の心臓28内でのアブレーション手術に使用される。また、プローブ22は、必要な変更を加えることで心臓又は他の体内の臓器において他の治療及び/又は診断目的で使用することもできる。
【0036】
システム20を使用した医療処置中、医療専門家32は、医療用プローブの遠位端26に固定されたバルーン34(図2A図2B、及び図2Cを参照してより詳細に記載する)が心臓28の室に入るように、患者の体腔に予め位置付けられている生体適合性のシース(図示せず)に医療用プローブ22を挿入する。
【0037】
システム20はシステムプロセッサ46によって制御され、このプロセッサは、単一プロセッサとして、又は連携してネットワーク化若しくはクラスタ化されたプロセッサのセットとして具現化されてよい。プロセッサ46は、典型的には、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードドライブ若しくはCD ROMドライブなどの不揮発性二次記憶装置、ネットワークインタフェース、及び/又は周辺機器を含むプログラマブルデジタル演算装置である。ソフトウェアプログラムを含めたプログラムコード、及び/又はデータは、当該技術分野において公知のとおり、CPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信又は格納のために結果が生成される。プロセッサ46は、CPU及びメモリを使用して、プロセッサが通信するモジュールバンク50に含まれる、以下に記載する1つ以上のモジュールを使用して、本明細書に開示するアルゴリズムを実施するようにプログラムされ得る。
【0038】
簡潔にするために、本明細書の説明では、プロセッサ46は上記のように想定するが、本発明の範囲は、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラム可能ゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)、マイクロ制御装置(microcontroller unit、MCU)、及びCPUを含むが、これらに限定されない任意の好適な集積回路から形成されるプロセッサを含むことを理解されたい。
【0039】
いくつかの実施形態では、プロセッサ46は、通常、FPGA、次いでアナログ-デジタル(analog-to-digital、A/D)信号変換集積回路47として構成されている、リアルタイムノイズ低減回路45を備える。プロセッサは、A/D回路47からの信号を、本明細書に記載のモジュールに送出できる。プロセッサは、アルゴリズムを実行するために、回路45及び回路47、並びに上記で言及したモジュールの特徴を使用する。
【0040】
プロセッサ46は、通常、システムの操作コンソール24内に位置する。コンソール24は、専門家32がプロセッサ46との通信に用いる制御手段54を備える。コンソール24は、通常、プロセッサによって生成された視覚情報、例えば心臓28のマップ48が専門家32に提示され得るスクリーン56を備える。
【0041】
コンソール24は、ケーブル36によって、複数の固定された交番磁界放射器を備える、通常、患者30の下に位置する位置パッド25に接続される。一実施形態では、3組の概ね類似の放射器27A、27B、及び27Cが存在し、各放射器は、異なる周波数でそれぞれの磁界を放射する3つの直交コイルを備える。したがって、この場合、放射される9つの別個の磁界が存在する。本明細書において放射器27と総称する、放射器27A、27B、及び27Cは、モジュールバンク50内の磁気追跡モジュール52によって給電され、それらの磁界を、心臓28及びその周囲を含む体積へと放射する。
【0042】
給電放射器27に加えて、モジュール52は、バルーン34上の導電素子によって生じた電圧を記録するように構成されており、この電圧は、導電素子を横断する放射器27によって発生した交番磁界に応答して生じる。電圧発生については、以下により詳細に記載する。これもまた以下に記載するように、プロセッサ46は、記録した電圧から、バルーン34の位置及び向きを導出できる。
【0043】
図2A及び図2Bはそれぞれ、概ね球状形態及び概ね楕円状形態であるバルーン34の概略斜視図であり、図2Cは、バルーンに遠位の点から見たバルーン34の概略図である。バルーン34は、体積38を包囲すると想定する。図2Aは、完全に膨張したときのバルーンを示し、図2Bは、少なくとも部分的に膨張した構成のバルーンを示す。通常、バルーン34は、部分的に又は完全に膨張したときに約20mm~約40mmの直径を有する。
【0044】
上記のように、バルーン34は遠位端26に固定され、遠位端は、バルーンが少なくとも部分的に膨張しているときに、バルーンの対称軸60を画定する。上記の予め位置付けられたシースを通してバルーンを送達するために、バルーンは当初収縮形態であり、遠位端26は、この形態で心臓28に挿入される。心臓28内の定位置に収まると、バルーンは、通常、生理食塩水など流体をバルーンに注入することによって膨張してよい。心臓28内でのバルーンの位置付け処置が完了すると、バルーンを収縮させ、プローブ22(収縮したバルーンを有する)を患者30から引き抜いてよい。
【0045】
バルーンが収縮及び膨張し得るように、バルーン34は生体適合性の可撓性プラスチック材料62から形成され、この材料は、複数の概ね類似の可撓性スプライン64A、64B、...64Hに固定される。スプライン64A、64B、...は、本明細書においてスプライン64と総称し、スプラインは、通常、軸60を中心に対称に分布している。本開示及び「特許請求の範囲」において、スプラインは、細長く、薄いストリップ又はスラットであると想定する。更に、その形状により、スプラインは概ね弓状形態に屈曲してよい。
【0046】
以下の説明において、スプライン64の数は2以上の任意の好都合な奇数又は偶数のスプラインであってよいが、例として、8つのスプライン64A、64B、...64Hが存在すると想定する。いくつかの実施形態では、スプライン64は材料62の内部にあり、したがって、スプラインは、材料62で覆われたリブ又はスパインとして作用する。あるいは、スプライン64は材料62の外部にあり、スプラインは、材料を定位置に支持するように、材料62の外側表面にセメントで取り付けられる。通常、スプライン64は、フレキシブルプリント回路(PC)、ニチノールなど可撓性ワイヤ、又はかかる材料の組成物から形成される。
【0047】
図2A及び図2Bに示すように、スプライン64は、バルーン34によって包囲された体積38を取り囲む、すなわち包囲する。
【0048】
簡潔かつ明瞭にするために、以下の説明では、スプライン64は材料62の外部にあり、可撓性PCから形成されると想定し、スプライン64がバルーン材料の内部にある、及び/又は上記で言及した他の材料から形成される場合には、当業者が必要な変更を加えて説明を適合させることができるであろう。
【0049】
スプライン64は、通常、スプラインと接触する心臓組織の温度を測定するための、典型的には、熱電対又はサーミスタなどセンサ、及び電極など他の要素を備える。電極は、とりわけ、心臓組織の高周波(RF)アブレーション、並びに/又は心臓組織によって生成された心電図(ECG)信号の測定及び記録に使用されてよい。いくつかの実施形態では、他の要素はまた、センサを横断する放射器27からの磁界に応答して信号を提供する位置センサ、典型的には、コイルを備える。プロセッサ46は、かかる信号を使用して、センサの位置、すなわち位置及び向きを見出すように構成されてよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、以下に記載するように、プロセッサ46はスプライン64内の導体からの信号を使用してバルーン34の位置及び向きを判定するために、かかる位置センサは存在しない。
【0050】
かかる他の要素に対して送受信する信号は、通常、モジュールバンク50内のそれぞれのモジュールと共にプロセッサ46によって分析され、及び/又は生成される。簡潔にするために、かかる他の要素及びそれらのそれぞれのモジュールは、図示していない。
【0051】
各スプライン64A、64B、...64Hは、それぞれの導体66A、66B、...66Hを備え、本明細書ではこれらの導体を導体66と総称する。導体66は、スプライン上へのめっきによってなど、これに限定するものではないが、任意の便利な方法でスプライン64上に形成されてよい。したがって、スプライン64は、本明細書において導電スプライン64とも称する。導体66は、バルーンの遠位領域72に共通の第1の終端70を有し、領域72は、軸46が材料62を切断する、遠位端26を越えた軸46上にある。加えて、導体66A、66B、...66Hは、74と総称する、それぞれの第2の別個の終端74A、74B、...74Hを有する。以下に記載するように生成された、終端74A、74B、...74Hからの信号は、それぞれの導体76A、76B、...76Hによってプローブ22の近位端23に、次いでモジュール52に搬送され、プロセッサ46は、以下にも記載するように、このモジュールを使用して信号を分析する。
【0052】
いくつかの実施形態では、導体66のうちの1つ以上は、全て上述したように、電極として、及び/又は温度センサの少なくとも1つの端子として、及び/又は位置センサの少なくとも1つの端子として機能できるように構成されてよい。
【0053】
バルーン34が少なくとも部分的に膨張しているとき、導体66の各対は、共通終端70において接続され、それぞれの異なる第2の終端74において終端し、特定の対の導体66によって画定される(すなわち、66A、66B、66C...66Hによって画定される)領域を包囲する。特定の対の導体66は、単巻コイルとして作用することが理解されるであろう。したがって、放射器27からの交番磁界が単巻コイルによって包囲された領域を横断するとき、ファラデーの誘導の法則は、対66の異なる第2の終端74にわたって誘導電圧が発生し、この電圧は、包囲された領域の面積、領域における磁界の強度、及び磁界に対する領域の向きに依存することを規定する。
【0054】
図3は、本発明の一実施形態による、異なる終端74A、74B、...74Hと共通終端70との間に生じる電圧を示す。図に示すように、電圧V、V、...Vは、第2の終端74A、74B、...74Hと導体66の共通の第1の終端70との間で生成されると考えられ得、任意の2つの第2の終端間での測定電圧は、2つの導体上で生成されると想定する2つの電圧の合計である。例えば、終端74Aと74Cとの間での測定電圧VACは、以下の式(1)で与えられると想定する。
【0055】
【数6】
【0056】
多巻コイルを有する単軸センサ(SAS)は、当該技術分野において既知であり、これらのセンサが空間的にマッピングされた交番磁界内に位置付けられると、コイル全体で発生した電圧を使用して磁界内のコイルの位置及び向きを見出し得ることが理解されるであろう。以下の付録は、マッピングされた磁界内でSASの位置及び向きを見出すためのアルゴリズムを記載しており、当業者であれば、必要な変更を加えて、アルゴリズムの説明を使用して、1対の導体66によって画定される特定の単巻コイルなど単巻コイルの位置及び向きを見出すことができるであろう。このアルゴリズムは、とりわけ、通常、約1mmの直径を有する、多巻SASの総面積が、約20mmの直径を有するバルーン上の1対の導体66によって形成される単巻コイルとほぼ同一であり、したがって、多巻コイル及び単巻コイル(同一磁界内)によって形成される電圧もほぼ同一であるために適用可能である。
【0057】
n個の導体66(スプライン64内)について、nが2以上の整数である場合、
【0058】
【数7】
のそれぞれの電圧を生成する単巻コイルを形成する、
【0059】
【数8】
の異なる可能な導体の対が存在する。したがって、本明細書で考慮する(それぞれのスプライン内の)8つの導体の場合、28の可能な異なる単巻コイルが存在する。この関係は、n個の導体の数にかかわらず、異なる単巻コイルを支配するであろう。例えば、n=4である場合、6つの可能な異なる単巻コイルが存在し、n=6である場合、15の可能な異なる単巻コイルが存在し、n=12である場合、66の可能な異なる単巻コイルが存在する、などとなる。
【0060】
各単巻コイルの両端の電圧は、コイルの位置及び向き、並びに導体間の幾何学的関係を与え、バルーンに対する導体の幾何学的関係が既知であるか、又は推定され得る。プロセッサ46は、幾何学的関係から、及び28の異なる単巻コイルによって生じた電圧から、バルーン34の体積38の位置及び向きを推定できる。
【0061】
したがって、
【0062】
【数9】
対の単巻コイルを形成するn個のスプラインについては、プロセッサ46は、幾何学的関係から、及び
【0063】
【数10】
のコイルによって生じた電圧から、バルーン34の体積38の位置及び向きを推定できることが理解されるであろう。
【0064】
更に、プロセッサ46は、全ての
【0065】
【数11】
対の単巻コイルを使用するのではなく、選択したコイルのサブセットを使用して、バルーン34の体積38の位置及び向きを推定するように構成されてよい。
【0066】
したがって、開示する実施形態では、プロセッサ46は、8組の導体66によって生成された28の異なる電圧を分析するのではなく、対向する4対の導体66、つまり(66A、66E)、(66B、66F)、(66C、66G)、(66D、66H)を含む8つの導体のサブセットによって生成された4組の電圧を分析するように構成されている。すなわち、プロセッサは、以下の式(2)で与えられる電圧を記録し、分析する。
【0067】
【数12】
【0068】
対向する各対の導体66(例えば、1対を形成する66A及び66E)は、概して平面楕円を形成する(バルーン34が完全に膨張している場合、楕円はほぼ円形であり、ほぼ1の楕円率である)。更に、4つの楕円の各中心は、体積38の中心に対応してほぼ同一である。スプライン64は対称であるために、4つの各楕円は、通常、実質的に同一の楕円率を有し、そのため、バルーン34は実質的に、軸60を中心とした回転楕円体である。バルーン34上のスプライン64の既知の構成により、互いに対する4つの楕円の向きが既知であるため、これらの向きは、バルーンの向き及びその包囲された体積の大きさを計算するために使用されてよい。プロセッサは、バルーンの位置、すなわちその位置及び向き、並びにその体積を推定することにより、医療処置における心臓の構造に対する物理的バルーンの実際のサイズ及びその実際の位置の仮想表現を提供できる。
【0069】
図4は、本発明の一実施形態による、バルーン34のプロセッサ46によって実施されるバルーンカテーテルアルゴリズムの工程のフローチャートである。このアルゴリズムは、バルーンの4つの楕円を記述する、上記の開示した実施形態の4対の対向する導体66の電圧を測定すると想定する。プロセッサ46は、測定した電圧から、体積38の位置及び向きを見出す。
【0070】
生成工程80では、領域(アルゴリズムの後続の工程で心臓28を取り囲む)内の所定の点において走査された磁気サンプリング検出器によって領域内で得られた磁界測定値から、磁界モデル
【0071】
【数13】
を生成する。領域内の磁界は9つの放射器27によって設けられ、通常、9つの異なる周波数で同時に伝送するように構成されている。ある位置(x,y,z)とこの位置にある9つの測定した磁界との対応関係を提供する磁界モデルは、所定の点における磁界測定値に適合する。
【0072】
較正工程81では、典型的にはバルーンがほぼ球状になるようにバルーン34を膨張させ、4つの楕円のそれぞれの面積を測定する。バルーンがほぼ球状である場合、楕円はほぼ円であり、各楕円の面積は同一であり、バルーン直径から既知である。各楕円の面積は、本明細書においてAreacalであると想定する。
【0073】
通常、ヘルムホルツコイルによって生成される既知の磁界Φに膨張したバルーンを挿入し、プロセッサ46で4つの各楕円の電圧Meascalを測定し、記録する。(9つの放射器27からの)各楕円の9つの電圧が存在することが理解されるであろう。ファラデーの誘導法から、電圧は、Areacalと楕円への磁界Φの投影Φとの積に正比例する。つまり、以下のとおりとなる。
【0074】
【数14】
式中、kは比例定数である。
【0075】
プロセッサは、楕円率計算工程86で使用するkの値を記憶する。
【0076】
カテーテル挿入工程82では、心臓が磁界領域内に位置するように患者30を移動し、バルーン34が患者の心臓に入るように患者にプローブ22を挿入する。次いで、バルーンを膨張させ、スプライン導体66の第2の終端74A、74B、...74Hで生成された電圧を、モジュール52を使用してプロセッサ46で測定し、記録する。対向する導体66によって形成された楕円ごとに、放射器27からの9つの磁界によって生成された9つの異なる電圧が存在する。
【0077】
位置計算工程84では、プロセッサ46は、測定した9つの電圧及び工程80で導出した磁界モデル
【0078】
【数15】
を使用して、特定の楕円の位置及び向きを計算する。複数の交番磁界内のコイルの位置及び向きを計算する方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、上記のCARTOシステムで使用される。複数の交番磁界内のコイルの位置及び向きを計算する方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,818,486号(Montag)に記載されている。加えて、複数の交番磁界内のコイルの位置及び向きを計算する方法は、以下の付録に記載する。後者2つの方法は、最小化に基づいている。工程84では、プロセッサはまた、通常、以下の付録に記載する方法を使用して、特定の楕円の面積を計算してよい。代替的に又は追加的に、この面積は、工程86で以下に説明するように計算してよい。
【0079】
楕円率計算工程86では、プロセッサ46は、工程82で測定した9つの電圧Measの大きさを使用して、特定の楕円の楕円率、すなわち、長半径の長さaと短半径の長さbとの比率を計算する。以下に説明するように、大きさの値により、プロセッサが特定の楕円の面積Aを推定できるようになる。
【0080】
較正工程81の楕円は、通常、工程82で変形され、この楕円は、未知の面積Aを有する。しかしながら、上記のように、任意の所与の楕円によって生成される電圧は、楕円の面積及び楕円への磁界の投影に正比例するため、式(3)を使用して以下の式が成立する。
【0081】
【数16】
式中、(v,v,v)は、
【0082】
【数17】
の制約を受ける方向ベクトルである。
【0083】
工程86では、プロセッサ46は、式(4)及び工程81で導出した定数kの値を使用して、各楕円の面積Aを推定する。式(4)では、6つの未知数が存在するが、9つの独立した放射器27が存在するため、プロセッサ46が式(4)を使用して所与の楕円面積を推定するのに十分過ぎるほどの情報がある。
【0084】
以下の式(5)及び(6)は、楕円の面積Aをa及びbに、また楕円の外周pをa及びbにそれぞれ関係付ける式である。外周pの値は、楕円を形成する導体66の全長であり、この値は既知である。
【0085】
【数18】
【0086】
プロセッサ46は、A及びpの値を使用してa及びbについて式(5)及び(6)を解き、したがって、特定の楕円の楕円率を求める。
【0087】
矢印88によって示すように、プロセッサは、対向する導体66によって生成された4つの楕円の全てについて、工程84及び86の計算を繰り返す。
【0088】
アルゴリズムの終了工程90では、プロセッサは楕円の4つの位置を平均して、体積38の位置を見出す。プロセッサはまた、4つの楕円の向きから体積38の向きを見出す。楕円の楕円率の平均は、体積38の回転楕円の楕円率の値を与える。
【0089】
体積38は回転楕円であるため、この体積の大きさV、すなわち、バルーン34によって包囲された体積は、以下の式(7)で与えられる。
【0090】
【数19】
【0091】
開示した実施形態では、プロセッサは、工程90において、上記で決定した体積38の位置、向き、及び大きさを使用して心臓のマップ48(図1)上に、バルーン34の実際のサイズ及び心臓の構造に対するバルーンの実際の位置の仮想表現を提示してよい。この提示は、医療処置中に実施されてよい。
【0092】
代替的に又は追加的に、プロセッサは、スクリーン56上に大きさVの数値を提示してよい。専門家32は、数値から、及び/又は仮想表現から、バルーン34の膨張が足りないか、又は過剰であるかを推定してよい。
【0093】
図4のフローチャートについての上記の説明は、4対のコイルを形成するスプラインについて検討しているが、当業者であれば、他の可能な数の対のコイルについて、必要な変更を加えて説明を適合させることができ、かかる全ての可能な数は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0094】
図5は、本発明の実施形態による、システム20と同様のシステムを使用して、発明者らによって得られた実験結果を示す。この結果は、図3及び4を参照して上述した4つの楕円からなるシステムの結果である。この図は、バルーン34によって包囲された体積38の7つの選択された位置について、プロセッサ46が7つの各位置において計算する4つの楕円のうちの3つを示す。
【0095】
付録
図6は、本発明の一実施形態による、カテーテルの単軸センサ(SAS)を追跡するための位置及び向き(P&O)アルゴリズムの工程を説明するフローチャートである。このフローチャートは、SASが1巻以上のコイルを備え、SASが、i個の磁界発生器によって生成されたi個の交番磁界によって照射される関心領域(ROI)内にあると想定しており、iは正の整数である。以下の説明では、上記の放射器27に対応してi=9であり、ROIは、心臓28を含む領域を含むと想定してよい。P&Oアルゴリズムは、磁気追跡モジュール52を使用してプロセッサ46によって実施されると想定する。
【0096】
生成工程100では、バルーンカテーテルアルゴリズムの工程80と実質的に同一である磁界モデル
【0097】
【数20】
が、ROI内の所定の点において走査された磁気サンプリング検出器によってROI内で得られた磁界測定値から生成される。この磁界モデルは、所定の点における磁界測定値に適合する。
【0098】
定義工程110において、初期位置ベクトルは、ROIの中心などの点において、カテーテルの遠位端の初期SAS位置ベクトル
【0099】
【数21】
を任意に割り当てることによって定義される。
【0100】
第1の測定工程120では、i個の初期磁界測定値、measが、単軸センサで測定される。磁界測定値はモジュール52によって受信され、プロセッサ46に中継される。
【0101】
選択工程130においては、初期向きベクトルが、6つの単位ベクトル、例えば、((1,0,0)、(-1,0,0)、(0,1,0)、(0,-1,0)、(0,0,1)、(0,0,-1))の1つから選択される。プロセッサ46は、以下の式(A)~(C)を使用して6つのコスト関数costを計算する。
【0102】
【数22】
式中、ΔMeas10は、(C)によって与えられるペナルティー関数であり、
【0103】
【数23】
、v、vは、SAS向きベクトル
【0104】
【数24】
の成分であり、
【0105】
【数25】
AreaはSASの実際の面積であり、
Areacalは、SASの較正された面積であり、
constraintWeightは、通常、constraintWeight=0.05の値を有する定数である。
【0106】
工程130では、プロセッサ46が、工程120からの初期磁界測定値、6つの単位ベクトル、及び工程110で定義した初期位置ベクトルを使用する。選択した初期位置ベクトルは、式(B)の6つのコスト関数計算においてcostの最低値をもたらすベクトルである。
【0107】
第1の決定工程135では、これが初期位置及び向き測定値である場合、工程120において磁界が既に測定されているために、プロセッサ46が第2の測定工程140を迂回する。これが初期測定値ではない場合、第2の測定工程140では、単一軸センサにおいて磁界measを測定する。
【0108】
変動工程150及び第2の決定工程160では、プロセッサ46は、コスト関数値costを最小化するために、工程140後に繰り返しループを開始する。工程150では、SAS位置ベクトル
【0109】
【数26】
及びSAS向きベクトル
【0110】
【数27】
を変更して、コスト関数を減少させる。
【0111】
繰り返しループでは、プロセッサ46は、通常、単純にコスト関数を減少させるだけではなく、以下の式(D)に従って、ガウス-ニュートン(G-N)最適化法のレーベンバーグ-マルカート(L-M)変法を使用して、7つの微分変数
【0112】
【数28】
を計算する。
【0113】
【数29】
式中、Jはヤコビアン行列であり、JはJの転置であり、diag(J)は、その要素がJの対角要素である対角行列であり、λは、通常、約0.001であり、各繰り返しにおいて10の係数で収縮する、負ではないスカラパラメータである。式(D)中のΔMeasは10×1の行列であり、これは、9つの放射器27からの9つの項と、式(C)からの1つのペナルティー関数項と、を含む。
【0114】
式(D)から繰り返し計算される7つの微分
【0115】
【数30】
は、位置ベクトル
【0116】
【数31】
の成分の微分変化、向きベクトル
【0117】
【数32】
の成分の微分変化、及び連続する繰り返しループサイクル間での面積の変化を表す。
【0118】
プロセッサ46は、7つの微分を使用して、位置ベクトル
【0119】
【数33】
の変化、向きベクトル
【0120】
【数34】
の変化、及び繰り返しループサイクル間での面積
【0121】
【数35】
の変化を計算する。
【0122】
第2の決定工程160では、
【0123】
【数36】
が所定の閾値(通常、0.002)を下回らない場合、繰り返しループは変動工程150を続ける。
【0124】
【数37】
が所定の閾値を下回る場合、プロセッサ46は、割り当て工程165で計算したSASの位置、向き、及び面積を、見出した位置、向き、及び面積、すなわち測定した位置及び向きベクトル、並びに面積として割り当てる。
【0125】
上記の説明は、心臓内に位置付けられたバルーンカテーテルを形成するスプラインを想定するが、本発明の実施形態は、バスケットカテーテルを形成するスプラインのために実施され得ることが理解されるであろう。また、本発明の実施形態は、サイナプラスティ処置など心臓以外の器官での処置に使用され得ることも理解されるであろう。
【0126】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上文に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。
【0127】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
近位端及び遠位端を有するプローブであって、前記プローブは、ヒト患者の器官に挿入されるように構成され、プローブ軸を画定する、プローブと、
前記遠位端において前記プローブ上に位置付けられる、少なくとも2つの導体と、
少なくとも2つの可撓性導電スプラインであって、各導電スプラインは第1の終端及び第2の終端を有し、前記第1の終端は、前記遠位端を越えた前記プローブ軸上の領域において互いに電気的に接続され、各第2の終端は、前記導体のうちのそれぞれ1つに電気的に接続され、前記スプラインは、体積を包囲する、それぞれの弓状形態へと屈曲するように構成されている、少なくとも2つの可撓性導電スプラインと、
前記導体を介して前記スプラインに誘起された電圧を受け取り、前記受け取った電圧に応答して前記体積の位置及び向きを計算するように構成されているプロセッサと、を備える、装置。
(2) 前記スプラインは、バルーンカテーテルを形成する可撓性材料に取り付けられている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記プローブ及び前記スプラインは、バスケットカテーテルを形成する、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記プロセッサは、前記受け取った電圧に応答して前記体積の楕円率を計算するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記受け取った電圧を生成するように、前記スプラインによって包囲された前記体積を横断する交番磁界を発生させる、少なくとも1つの磁界放射器を備える、実施態様1に記載の装置。
【0128】
(6) 前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインは偶数個のスプラインを備え、前記プロセッサは、対向するスプライン対のそれぞれの中心及び向きを計算し、前記それぞれの中心及び向きから前記体積の前記位置及び向きを導出するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記少なくとも2つの導体及び前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインは、前記プローブ軸を中心として対称に分布している、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記少なくとも2つの導体及び前記少なくとも2つの可撓性スプラインは同数である、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインはn個のスプラインを備え、nは3以上の整数であり、前記プロセッサは、それぞれの
【数38】
の異なるスプライン対に誘起された
【数39】
電圧のサブセットを受け取り、前記受け取ったサブセットに応答して前記体積の前記位置及び向きを計算するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインは、n個のスプラインを含み、nは2以上の整数であり、前記プロセッサは、それぞれの
【数40】
の異なるスプライン対に誘起された
【数41】
電圧を受け取り、前記受け取った
【数42】
電圧に応答して前記体積の前記位置及び向きを計算するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0129】
(11) 前記プロセッサは、前記受け取った電圧に応答して前記体積の大きさを計算するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(12) 前記スプラインは、バルーンカテーテルを形成する可撓性材料に取り付けられており、前記装置はスクリーンを更に備え、前記プロセッサは、前記体積の前記位置、前記向き、及び前記大きさに応答して前記バルーンカテーテルの仮想表現を前記スクリーン上に提示するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(13) 方法であって、
近位端及び遠位端を有するプローブを、ヒト患者の器官に挿入するように構成することであって、前記プローブはプローブ軸を画定する、ことと、
前記遠位端において前記プローブ上に少なくとも2つの導体を位置付けることと、
少なくとも2つの可撓性導電スプラインを提供することであって、各導電スプラインは第1の終端及び第2の終端を有する、ことと、
前記遠位端を越えた前記プローブ軸上の領域において、前記第1の終端を電気的に接続することと、
前記導体のうちのそれぞれ1つに各第2の終端を電気的に接続することと、
体積を包囲する、それぞれの弓状形態へと前記スプラインを屈曲させることと、
前記導体を介して前記スプラインに誘起された電圧を受け取り、前記受け取った電圧に応答して前記体積の位置及び向きを計算することと、を含む、方法。
(14) 前記スプラインは、バルーンカテーテルを形成する可撓性材料に取り付けられている、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記プローブ及び前記スプラインはバスケットカテーテルを形成する、実施態様13に記載の方法。
【0130】
(16) 前記受け取った電圧に応答して前記体積の楕円率を計算することを含む、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記受け取った電圧を生成するように、前記スプラインによって包囲された前記体積を横断する交番磁界を発生させることを含む、実施態様13に記載の方法。
(18) 前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインは偶数個のスプラインを備え、前記方法は、対向するスプライン対のそれぞれの中心及び向きを計算することと、前記それぞれの中心及び向きから前記体積の前記位置及び向きを導出することと、を含む、実施態様13に記載の方法。
(19) 前記少なくとも2つの導体及び前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインを、前記プローブ軸を中心として対称に分布させることを含む、実施態様13に記載の方法。
(20) 前記少なくとも2つの導体及び前記少なくとも2つの可撓性スプラインは同数である、実施態様13に記載の方法。
【0131】
(21) 前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインはn個のスプラインを備え、nは3以上の整数であり、前記方法は、それぞれの
【数43】
の異なるスプライン対に誘起された
【数44】
電圧のサブセットを受け取ることと、前記受け取ったサブセットに応答して前記体積の前記位置及び向きを計算することと、を含む、実施態様13に記載の方法。
(22) 前記少なくとも2つの可撓性導電スプラインは、n個のスプラインを含み、nは2以上の整数であり、前記方法は、それぞれの
【数45】
の異なるスプライン対に誘起された
【数46】
電圧を受け取ることと、前記受け取った
【数47】
電圧に応答して前記体積の前記位置及び向きを計算することと、を含む、実施態様13に記載の方法。
(23) 前記受け取った電圧に応答して前記体積の大きさを計算することを含む、実施態様13に記載の方法。
(24) 前記スプラインは、バルーンカテーテルを形成する可撓性材料に取り付けられており、前記方法は、前記体積の前記位置、前記向き、及び前記大きさに応答して前記バルーンカテーテルの仮想表現をスクリーン上に提示することを更に含む、実施態様23に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6