(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】一体式メンブレンろ過構造体
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20221212BHJP
B01D 69/04 20060101ALI20221212BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20221212BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20221212BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20221212BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20221212BHJP
C01B 32/956 20170101ALN20221212BHJP
【FI】
B01D71/02
B01D69/04
B01D69/10
B01D69/12
B01D69/00
C04B38/00 303Z
C01B32/956
(21)【出願番号】P 2019566335
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(86)【国際出願番号】 FR2018051257
(87)【国際公開番号】W WO2018220332
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-04-27
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】310009890
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ポール ルプルー
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン バンサン
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-506138(JP,A)
【文献】特開昭58-196820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0139193(US,A1)
【文献】特開2004-306020(JP,A)
【文献】特開2010-228946(JP,A)
【文献】特開2016-093794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
C04B 38/00
C01B 32/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体をろ過するためのメンブレンを有するろ過構造体であり、以下のものを含む少なくとも1つの一体品を含む、ろ過構造体であって:
・浸透率K
Sの多孔質無機材料から形成された支持体(1)であって、主軸線(X)、上流面(2)、下流面(3)、周辺面、及び内側部分を有する管状の一般形状を有する支持体(1)、
・前記支持体の前記主軸線に平行であり、前記支持体の前記内側部分に形成された、複数の流路(4、5)であって、前記多孔質無機材料から形成された内壁によって互いに分離されている流路(4、5)、
・前記流路は、前記液体の循環方向においてそれらの上流端部又は下流端部の一方又は他方で閉塞されて、それぞれ前記液体のための入口流路(4)及び出口流路(5)を規定し、それにより、前記液体が、前記入口流路及び出口流路を分離している多孔質の壁を通過するようにされており、
・少なくとも前記入口流路(4)の内面を被覆している、浸透率K
m及び平均厚さt
mのメンブレン(6)、
前記液体の平均経路距離Dが次の関係式(1)を満たすことを特徴とする、ろ過構造体:
D=α×(A×log(K
s×t
m/K
m)+B) (1)
上式中、
αは、0.0008~0.0013の間の範囲内の係数であり、
A=272×φ
c+272×p
i+0.02、
B=601×φ
c+1757×p
i+0.28、
φ
cは、前記流路の全ての平均水力学的直径であり、
p
iは、前記内壁の平均厚さであり、
D、t
m、φ
c、p
iは、mで表され、K
s及びK
mは、m
2で表され、
Dは、当該構造体の前記主軸線に対して直角な断面の平面において、各入口流路を被覆する前記メンブレンのi個の部分とメンブレンの各部分iの最も近い出口流路との間の距離d
iの算術平均により定義され、部分iは、前記メンブレンの等しい長さの少なくともi個の部分への分割数として定義され、iは、10より大きく、各d
iは、前記入口流路の内容積と接する前記メンブレンの部分の内面の中央の点から、前記メンブレンの部分に最も近い出口流路の内壁の点に至るまで測定される。
【請求項2】
前記K
s×t
m/K
mの比が、0.0005と5との
間である、請求項1に記載のろ過構造体。
【請求項3】
前記支持体の水力学的直径が、50mmと300mmの
間である、請求項1又は2に記載のろ過構造体。
【請求項4】
前記流路の平均水力学的直径φ
cが、0.5mmと5mmの
間である、請求項1~3のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項5】
前記支持体の平均内壁厚さp
iが、0.3mmと3mmの
間である、請求項1~4のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項6】
前記支持体が、正方形、六角形又は円形のベースを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項7】
前記フィルターが、200~1500mmの長さを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項8】
全ての前記流路が、同一の水力学的直径を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項9】
前記支持体が、20%と70%の間の開放細孔率を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項10】
前記支持体が、10nmと50μmの間の平均細孔径を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項11】
前記メンブレンの平均厚さt
mが、0.1~300μmの範囲
内であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項12】
前記メンブレンが、10%と70%の間の開放細孔率を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項13】
前記メンブレンが、10nmと5μmの
間のメジアン細孔径を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項14】
前記流路が、円形又は多角形の断面、特に正方形、六角形又は八角形及び正方形の断面を有することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のろ過構造体。
【請求項15】
化学、製薬、食品、農産食料品、バイオリアクター、又は石油又はシェールガスの抽出の分野における液体の精製及び/又は分離のための、請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のろ過を目的とする無機材料のろ過構造体、特に、液体の、より詳しく言えば水の、とりわけ石油の抽出又はシェールガスから得られる産出水の分子又は粒子を分離するようにメンブレンで被覆された、ろ過構造体の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の流体、とりわけ汚染水をろ過するためにセラミック又は非セラミックメンブレンを用いるフィルターは、以前から知られている。これらのフィルターは、メンブレンの表面を流体が長手方向に循環することにより粒子の蓄積を制限することを可能にする、タンジェント式ろ過の原理により機能する。粒子は循環流中に残存する一方で、液体は圧力差の効果の下でメンブレンを横切ることができる。この技術は、性能品質及びろ過レベルの安定性をもたらす。それは、粒子及び/又は分子を多く含む流体のろ過のために、特に推奨される。
【0003】
処理すべき流体をろ過媒体を通してその表面と直角に通過させることを必要とする、もう一つの「フロント式ろ過」技術も知られている。フロント式フィルターは、一般的に、ろ過すべき液体を通過させなければならないろ過壁により分離された入口流路と出口流路を管理するように交互に閉塞された流路を含んでおり、液体は、通過するとその分子又は粒子がなくなって、それにより入り口流路内に蓄積する残留物を生じさせる一方で、精製された液体が、出口流路を通って出ていき、又はフィルターの周囲が塞がれていない場合には一部がその周囲を通って出ていく。この技術は、粒子の蓄積とろ過媒体の表面にケーキが蓄積することにより制限を受けるが、タンジェント式ろ過技術に必要とされる再循環路の設置を免れるという利点を有する。
【0004】
本発明により検討されるフィルターは、多孔質の無機材料製の一体式の構造体又は管状支持体から製作され、この支持体は、その軸線に平行な長手方向の流路を画定する壁から形成されている。流路の内面が、分離用メンブレンで被覆される。このメンブレンは、多孔質の無機媒体を含むか、あるいは更には本質的にそれによって形成され、そしてその性質と形態が、汚染分子又は粒子の大きさが当該媒体の細孔のメジアン直径に近いか又はそれより大きい限りにおいて、それらを止めるように適合される。
【0005】
入口流路は、ろ過すべき液体の循環の方向に対してフィルターの上流面(又は前面)で、ろ過すべき液体の通路に開口している。これらの入口流路は、液体の循環の方向においてフィルターの下流面(又は向かい側の面)で閉塞されている。対照的に、ろ過した液体を排出するための出口流路は、フィルターの上流面で閉塞され、フィルターの下流面で開口している。
【0006】
上述のようなメンブレンフィルターの作業性を改善するために、いろいろな構造が提案されてきた。例えば、米国特許第4060488号明細書又は米国特許第4069157号明細書には、表面にメンブレン分離層を設けた流路を含む多孔質支持体から形成されたフィルターが開示されている。これらのフィルターの流路は閉塞されておらず、そしてそれらはタンジェント式ろ過により機能する。
【0007】
国際公開第2009/121366号には、水をろ過するためのフロント式フィルターが記載さている。このフィルターは、平行な流路とメンブレンを含んでいる。流路の構造は、対称的であり、すなわちフィルターの主軸線に対して直角な平面における流路の断面は、フィルターの丸い形状のために必然的に切り落とされる周辺流路を除いて、同一である。
【0008】
米国特許第5114581号明細書にも、流路を不均一なパターンで交互に閉塞することができる、メンブレンを用いるフロント式フィルターが開示されており、このフィルターは、ガスを、あるいは更には液体も、ろ過することを目的としている。微孔質のメンブレンの存在することが、とりわけ逆洗による、フィルターの逆流式の再生を可能にしている。しかし、液体のろ過品質を最適化するための特別な構成に関しては、この刊行物に何も示されていない。
【0009】
ろ過面積を増やすために、提案がなされている。しかし、これまでに先行技術文献に記載された構造のいずれも、汚染された液体のろ過に関しては、最大のろ過効果を保証していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、現時点で、最大のろ過効果を有する、すなわち同等のバルクについて且つ支持体の壁及びメンブレンの同じ本質的特性について、ろ液の最適化された最大流量を有するメンブレンフィルター、すなわち壁にろ過メンブレンを付着させた多孔質支持体を含むフィルター、とりわけフロント式タイプのフィルターが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
詳しく言えば、出願人の会社は、上述のようなろ液の最適化は、ろ過構造体の種々の構成要素を一緒に適合させることに基づくということを見いだした。言い換えると、最大のろ過効果を得るためには、支持体の物理的特性、メンブレンの物理的特性、及び流体が出入りするための流路のそれぞれの配置を一緒に調整することが必要であるということを見いだした。
【0012】
したがって、フィルターの幾何学的な特性のみを考慮に入れたいろいろな構成を提案している先行の解決策とは対照的に、本発明は、上述の幾何学的特性とろ過メンブレンの特定の本質的特性との相関関係を確立することに基礎を置いている。このような相関関係は、これまでに記載されてこなかった。
【0013】
より正確に言えば、本発明は、液体をろ過するためのメンブレンを有するろ過構造体、より詳しく言えばフロント式ろ過タイプのろ過構造体であり、以下のものを含む少なくとも1つの一体品を含むろ過構造体であって:
・浸透率K
Sの多孔質無機材料から製作された支持体であって、主軸線、(液体の循環方向に照らして)上流面(又はベース)、下流面(又はベース)、周辺面、及び内側部分を有する管状の一般形状を有する支持体、
・支持体の主軸線に平行であり、支持体の内側部分に形成された複数の流路であって、多孔質無機材料から形成された内壁によって互いに分離されている流路、
・上記流路は、液体の循環方向においてそれらの上流端部又は下流端部の一方又は他方で閉塞されて、それぞれ液体のための入口流路及び出口流路を画定し、それにより、液体が、入口流路及び出口流路を分離している多孔質の壁を通過するようにしており、
・少なくとも入口流路の内面を被覆している、浸透率K
m及び平均厚さt
mのメンブレン、
ここで、液体の平均経路距離Dが、次の関係式(1)を満たす:
D=α×(A×log(K
s×t
m/K
m)+B) (1)
上式中、
αは、0.0008~0.0013の間の範囲内、好ましくは0.0008~0.0012の間の範囲内、より好ましくは0.0009~0.0011の間の範囲内の係数であり、
A=272×φ
c+272×p
i+0.02、
B=601×φ
c+1757×p
i+0.28、
φ
cは、流路の全ての平均水力学的直径であり、
p
iは、内壁の平均厚さであり、
D、t
m、φ
c、p
iは、mで表され、K
s及びK
mは、m
2で表され、
Dは、構造体の主軸線に対して直角な断面の平面において、各入口流路を被覆するメンブレンのi個の部分とメンブレンの各部分iの最も近い出口流路との間の距離d
iの算術平均により定義され、部分iは、メンブレンの等しい長さの少なくともi個の部分への分割数として定義され、iは、10より大きく、又は更には20より大きく、各d
iは、入口流路の内容積と接するメンブレン部分の内面の中央の点から、該メンブレン部分に最も近い出口流路の内壁の点に至るまで測定される、ろ過構造体に関する。更に詳しくは、例えば添付の
図2を参照することができる。
【0014】
適切な場合には一緒に組み合わせてもよい、本発明の好ましい実施形態によれば、
・Ks×tm/Kmの比は、0.0005と5の間、好ましくは0.001と1の間であり、
・支持体の水力学的直径は、50mmと300mmの間、好ましくは80mmと230mmの間であり、
・流路の平均水力学的直径φcは、0.5mmと8mmの間、好ましくは0.5mmと7mmの間、より好ましくは0.5mmと5mmの間、好ましくは0.5mmと4mmの間、より好ましくは0.5mmと3mmの間であり、
・支持体の内壁の平均厚さpiは、0.3mmと2mmの間、好ましくは0.4mmと1.4mmの間であり、
・構造体はフロント式ろ過フィルターであり、
・支持体は、正方形、六角形又は円形のベースを有し、
・フィルターは、200mmと1500mmの間の長さを有し、
・全流路は、同一の水力学的直径を有し、
・内壁の平均厚さpiは、0.3mmと2mmの間であり、
・支持体は、20%と70%の間の開放細孔率を有し、
・支持体は、10nmと50μmの間、好ましくは100nmと40μmの間、より好ましくは5μmと30μmの間のメジアン細孔径を有し、
・メンブレンの平均厚さtmは、0.1~300μmの範囲内、好ましくは10~70μmの範囲内であり、
・メンブレンは、10%と70%の間の開放細孔率を有し、
・メンブレンは、10nmと5μmの間、好ましくは30nmと5μmの間、より好ましくは50nmと2000nmの間、非常に好ましくは100nmと1000nmの間のメジアン細孔径を有し、
・メンブレンのメジアン細孔径は、支持体のメジアン細孔径よりも少なくとも10のファクターだけ小さく(すなわちそれらの比は10未満であり)、又は更には少なくとも50のファクターだけ小さく、又は更には少なくとも100のファクターだけ小さく、
・流路は、円形又は六角形の断面、特に正方形又は六角形の断面、又は八角形及び正方形の断面を有し、
・好ましくは、支持体の外側の周壁はろ過を行わず、
・あるいはまた、支持体の外側の周壁はろ過を行ってもよい。
【0015】
本発明はまた、先に定義されたとおりのフィルターを、化学、製薬、食品、農産食料品、バイオリアクター、又は石油又はシェールガスの抽出の分野において液体を精製及び/又は分離するために使用することにも関する。
【0016】
関係式(1)において、数値は、通常のように国際単位系で、すなわちD、tm、φc、pi、φfはメートル(m)で、KsとKmは平方メートル(m2)で表される。
【0017】
支持体の浸透率Ks及びメンブレンの浸透率Kmは、コゼニー・カルマンの関係式に基づき、次の式により定義され:
K=(PO3×D50
2)/[180×(1-PO)2]
この式中のPOは、0と1の間の開放細孔率(例えば50%の細孔率は0.5のPOに相当する)であり、D50は、メートルで表したメジアン細孔径である。
【0018】
本発明による支持体の開放細孔率及びメジアン細孔径は、水銀圧入法により既知のようにして測定される。細孔の容積に対応する細孔率は、支持体のブロックから採取した1cm3のサンプルについて、Micromeritics社から入手されるAutopore IVシリーズ9500ポロシメーターのような水銀ポロシメーターを使って、2000barで水銀を圧入することにより測定され、サンプル採取領域は、一般にブロックの表面から500μmまで達する表皮を除く。適用可能な標準規格は、ISO標準規格15901-1.2005のパート1である。高圧に至る圧力上昇が、サイズがだんだんと小さくなる細孔中へ水銀を「押し込む」ことになる。水銀の侵入は、通常、二段階で行われる。第一段階では、水銀の侵入が、水銀を一番大きな細孔(>4μm)中に導入するために空気の圧力を利用して、44psia(約3バール)までの低圧で行われる。第二段階では、30000psia(約2000バール)の最高圧力までの油を用いて行われる。こうして、ISO標準規格15901-1.2005のパート1に記載されたウォッシュバーンの法則を適用することにより、水銀ポロシメーターが容積ベースの細孔寸法分布を求めることを可能にする。支持体のメジアン細孔径は、母集団の50体積%のしきい値に相当する。
【0019】
メンブレン中の細孔の全容積に対応するメンブレンの細孔率と、メンブレンのメジアン細孔径は、本発明によると、有利には走査型電子顕微鏡を使用して測定される。本発明に関連して言えば、この方法によりメンブレンについて得られた細孔率を、開放細孔率になぞらえることができると考えられる。一般的には、少なくとも1.5cmの累積長さにわたってコーティングの全体厚さを可視化するように、支持体の壁の断面を撮影する。画像の取得は、少なくとも50粒子のサンプル、好ましくは少なくとも100粒子のサンプルで行われる。各細孔の面積と相当直径を、任意選択的に画像のコントラストを増加させることを目的とした画像の二値化処理後に、画像から標準的な画像解析技術により得る。こうして、相当直径の分布が推定され、そしてそれからメジアン細孔径が得られる。メンブレンの細孔率は、細孔の相当直径分布曲線を積分することにより得られる。同様に、メンブレン層を構成している粒子のメジアン寸法を、この方法により求めることができる。実例として、メンブレン層を構成している粒子のメジアン細孔径又はメジアン寸法を求める一つの例は、当該分野において慣用の、次の一連の工程を含む。
【0020】
断面で(すなわち壁の厚さ全体にわたって)観測されるメンブレン層を備えた支持体の一連のSEM画像を撮影する。より大きなシャープネスのために、材料の研摩断面で画像を撮影する。画像の取得は、少なくとも1.5cmに等しいメンブレン層の累積長さにわたり画像の取得を行い、それによりサンプル全体としての代表値を得るようにする。好ましくは、画像処理の技術分野でよく知られている二値化処理技術を画像に施して、粒子又は細孔の輪郭のコントラストを増加させる。
【0021】
メンブレン層を構成している各粒子又は各細孔について、その面積の測定を行う。当該粒子又は細孔について測定されたものと同じ面積の完全な円形物の直径に相当する、相当細孔径又は相当粒子径を求める(この作業は、できる限り、専用のソフトウェア、とりわけNoesis社により販売されているVisilog(登録商標)を使って行う)。こうして、通常の分布曲線により、粒子の寸法分布又は細孔の直径分布が得られ、また、メンブレン層を構成している粒子のメジアン寸法及び/又はメジアン直径が求められ、このメジアン寸法又はメジアン直径は、それぞれ前述の分布を、このメジアン寸法以上の相当直径を有する粒子又は細孔のみを含む第一の集団と、このメジアン寸法又はこのメジアン直径未満の相当直径を有する粒子のみを含む第二の集団とに分割する相当直径に相当する。
【0022】
本願において、フィルター又は流路の水力学的直径は、式4×S/Pにより定義され、Sは、主軸線に直角なフィルターの断面の全面積、又は主軸線に直角な流路の断面の面積であり、Pは、この断面の周囲長さである。
【0023】
支持体の形状は、フィルターの全体的な形状を規定する。それは、主軸線に沿って伸びる管状の形状を有し、そして上流側ベース、下流側ベース、周囲面、及び内側部分を含む。形状及び寸法が同一である上流側ベース及び下流側ベースは、様々な形状でよく、例えば正方形、六角形又は円形であることができる。下流側の面(又はベース)は、入ってくる液体流(ろ過すべき液体)の側に配置することを意図し、上流側の面(又はベース)は、入ってくる液体流の反対側に配置することを意図するものである。支持体は、一般的に、50~300mm、好ましくは80~230mmの水力学的直径φfを有する。
【0024】
支持体の内側部分に、支持体の主軸線に平行な複数の流路が形成される。ろ過用流路としても知られるこれらの流路は、それらの端部の一方又は他方が閉塞されて、流体の流動方向において入口流路と出口流路とを規定する。こうして、入口流路は、閉塞されていない入口面(流体の循環方向において上流側)と、閉塞された出口面とを有する。出口流路は、流体の循環方向において閉塞された上流側の正面と、ろ過構造体の下流正面側の閉塞された面とを有する。
【0025】
流路の形状は制限されず、流路は、多角形の断面、とりわけ六角形又は正方形又は八角形/正方形、あるいはまた円形の断面を有することができるが、好ましくは円形又は正方形の断面を有する。流路の平均の水力学的直径φcは、一般に0.5~5mmであり、好ましくは0.5~4mm、より好ましくは0.5mmと3mmの間である。フィルターは、フィルターの寸法を適合させるために切り取られることがある周辺の流路に加えて、いくつかのカテゴリーの流路を含むことができる。流路の一つのカテゴリーは、同じ形状を有し且つ±5%の範囲内までの同一の水力学的直径を有する一組の流路により規定される。例えば、フィルターは、フィルターの周囲面の近くに位置する流路から形成される流路の第一のカテゴリーと、フィルターの中央に位置する流路から形成される第二のカテゴリーを含むことができ、第一のカテゴリーの流路は第二のカテゴリーのものより大きな水力学的直径を有する。水力学的直径が異なる複数の流路の場合、流路のおのおのに固有の水力学的直径は、本発明に従い、上記の式(4×S/P)から計算されるように規定される。よく知られているように、流路の全体の平均水力学的直径φcは、フィルターに存在している全部の流路の個別の水力学的直径の算術平均であるとして求められる。しかし、好ましくは、フィルターは一つだけのカテゴリーの流路を含む。
【0026】
流路は、支持体の多孔質の無機材料により形成された内壁によって互いに分離されている。内壁の平均厚さpiは、一般には0.3~2mm、好ましくは0.4~1.4mmである。
【0027】
支持体は、多孔質の無機材料、とりわけ非酸化物セラミック材料、例えばSiC、特に再結晶SiC、Si3N4、Si2ON2、SiAlON、BN又はそれらの組み合わせなどから形成される。その細孔率は、一般には20~70%、好ましくは40~50%であり、メジアン細孔径は、5nm~50μm、好ましくは100nm~40μm、より好ましくは5~30μmである。支持体の浸透率Ksは、好ましくは1.0×10-15m2と1.0×10-12m2の間、好ましくは6.9×10-15m2と3.4×10-11m2の間である。
【0028】
フィルターはまた、流路の内面を被覆するメンブレンも含む。それは、多孔質の無機材料、特に非酸化物セラミック材料、例えばSiC、特に再結晶SiC、Si3N4、Si2ON2、SiAlON、BN又はそれらの組み合わせなどから形成される。その細孔率は、一般に10~70%であり、メジアン細孔径は、10nm~5μm、好ましくは50nm~1μm(1マイクロメートル)の間である。メンブレンの浸透率Kmは、好ましくは10-19~10-14m2である。メンブレンは、一般的に、0.1~300μm、好ましくは1~200μm、より好ましくは10~80μmの平均厚さtmを有する。
【0029】
本発明によるフィルターは、当業者によく知られている任意の技術により得ることができる。慣用の製造法は、一般に、支持体を製造するための主要工程、及びその後メンブレンを付着させるための主要工程を含む。
【0030】
支持体は、好ましくは、ダイを通してペーストを押し出し、続いて乾燥及び焼成して、それにより支持体の材料を焼結させ、そして用途に必要とされる細孔率及び機械的強度特性を得るようにして得られる。例えば、それが再結晶SiCで製作される支持体である場合、それは次の製造工程に従って得ることができる:
・純度が98%より高く、粒子の75質量%が30μmより大きい直径を有し、レーザー粒子寸法分析により測定されるこの粒子寸法画分の質量ベースのメジアン直径が300μm未満であるような粒子寸法を有する炭化ケイ素粒子を含む混合物をブレンドする。この混合物は、セルロース誘導体タイプの有機結合剤も含む。水を加え、そして、本発明による一体品を得るようにダイを設定して、押し出し成形を可能にする可塑性を有する均一なペーストが得られるまで混合物をブレンドする、
・化学的に結合していない水の含有量を1質量%未満とするのに十分な時間、粗製一体品をマイクロ波により乾燥させる、
・周知の技術に従って、例えば国際公開第2004/065088号に記載されているものに従って、一体品の閉塞を行うことができる、
・少なくとも1900℃及び2400℃未満の温度まで焼成して、一般に少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3時間保持する。得られた材料は、20~70体積%、好ましくは40~50体積%の開放細孔率、及び約5nm~50μm、好ましくは100nm~40μm、より好ましくは5~30μmのメジアン細孔径を有する。
【0031】
その後、ろ過用の支持体をメンブレンで被覆する。メンブレンは、当業者に知られたいろいろな技術によって、すなわち懸濁液又はスリップからの堆積、化学気相成長(CVD)、又は溶射、例えばプラズマ溶射による堆積により付着させることができる。好ましくは、メンブレン層はスリップ又は懸濁液を使用するコーティングによって付着させる。メンブレンは、複数の連続した層の付着により得てもよい。メンブレンは、基材と直接接触して付着された、プライマーとして知られる第一の層の上に位置する。プライマーは、結合層として働く。プライマーの付着のために使用されるスリップは、好ましくは、メジアン直径が1~30μmのSiC粒子を30及び60質量%の間の量で含み、残りは、例えば金属ケイ素粉末、シリカ粉末及び/又は炭素粉末である。粉末の全質量の80~120%に相当する質量の脱イオン水を、この粉末混合物に加える。メンブレンは、プライマー層の上に付着させた分離用の層から作られる。フィルターにその選択性を与えるように細孔率が制御されるのは、この分離用の層においてである。分離用の層を付着させるために用いられるスリップは、メジアン直径が0.5~20μmのSiC粒子を30及び70質量%の間の量で含むことができ、あるいは、金属ケイ素、シリカ及び炭素の混合物を合計で30及び70質量%の間の量で含むことができ、残りは脱イオン水である。特定の添加剤、例えば増粘剤、結合剤及び/又は分散剤などをスリップに加えて、特にそれらのレオロジーを制御するようにしてもよい。スリップの粘度は、一般的に、DIN標準規格53019-1:2008に従い1s-1の剪断勾配で22℃で測定して0.01~0.8Pa・s、好ましくは0.05~0.7Pa・sである。スリップは、一般的に、好ましくはセルロース誘導体から選択される、水の0.1~1質量%の増粘剤を含むことができる。それらは、一般的に、好ましくはポリ(ビニルアルコール)(PVA)及び/又はアクリル誘導体から選択される、SiC粉末の0.1~5質量%の結合剤を含むことができる。スリップは、好ましくはポリメタクリル酸アンモニウムから選ばれる、SiC粉末の0.01~1質量%の分散剤を含むこともできる。スリップの1以上の層を付着させ、それによりメンブレンを形成するようにしてもよい。一つのスリップ層の付着は、0.1~80μmの厚さを有するメンブレンを得るのを可能にするが、もっと厚い一般には100~300μmのメンブレンを、スリップの複数の連続した層を付着させることにより得ることもできる。
【0032】
次に、こうして被覆した支持体を、室温で一般的に少なくとも30分間、次いで60℃で少なくとも24時間乾燥させる。こうして乾燥させた支持体を、非酸化性雰囲気下、好ましくはアルゴン下で、一般に1000℃と2200℃の間の焼成温度で焼結させ、それにより画像解析により測定して10~70体積%の細孔率及び画像解析により測定して10nm~5μmのメジアン相当細孔径のメンブレンを得る。
【0033】
浸漬フィルターとして使用する場合には、入口流路の内面に加えて、支持体の周囲をメンブレンで被覆するのが好ましい。
【0034】
本発明によるフィルターは、液体の精製及び/又は液体から粒子又は分子を分離する様々な用途のために使用することができる。本発明によるフィルターは、ろ過すべき液体の粘度とは関係なく、ろ液流を最大限にするのを可能にする。したがって、それは、例えば動的粘度が0.1mPa・sから20mPa・sまで、又は更には50mPa・sまでの、液体をろ過するために使用することができる。ろ過しようとする流体の動的粘度は、DIN標準規格53019-1:2008に従い1s-1の剪断勾配下にて20℃で測定することができる。本発明は、とりわけ、上記のとおりのフィルターを石油の抽出から得られる又はシェールガスから得られる産出水の精製のために使用することに関する。それには、化学、製薬、食品、農産食料品又はバイオリアクターの分野における液体の、そしてまたスイミングプールの水の、精製及び/又は分離のための様々な工業的方法における用途もある。
【0035】
ここに添付した図面は、本発明の特定の実施形態をより詳しく説明するものである。しかしながら、下記に提示する情報は、図面でもって説明される本発明の実施形態のいずれにおいても、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】一般的なろ過用構造体(又はフィルター)の全体図である。
【
図2】本発明の主題をより詳しく説明するフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図3】流路の一つの構成を示しているフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図4】流路の構成を異にしているフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図5】流路の構成を異にしているフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図6】流路の構成を異にしているフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図7】流路の構成を異にしているフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図8】流路の構成を異にしているフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図9】流路の構成を異にしているフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図10】流路の構成を異にしているフィルターの上流面の一部の正面図である。
【
図11】本発明によるフィルターの実施形態を説明する図である。
【
図12】本発明によるフィルターの別の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、主軸線(X)、ろ過すべき液体の循環方向において上流側の面2及び下流側の面3を有する円筒状支持体1を含むフロント式ろ過フィルターを図示している。液体の循環方向において上流側の面で開口している入口流路4と下流側の面で開口している出口流路5とを含む、主軸線(X)に平行な複数の流路が、支持体の内側部分に形成され、そして多孔質の内壁により互いに分離されている。上流側ベース2及び下流側ベース3のそれぞれに姿を現している入口流路4は、それらの内面をメンブレン(
図1では図示せず)で被覆され、そしてそれらの下流側の面で閉塞されている。出口流路は、それらの上流側の面2で閉塞されている。
【0038】
図2は、本発明の主題をより詳しく説明するためのフィルターの上流面の図である。
図2には、フィルターの中央の入口流路4と複数の出口流路5、そしてまた各入口流路の内側を覆っているろ過用メンブレン6が示されている。このメンブレンは、
図2に示したように、等しい長さのi個の部分に分割されている。各部分iごとに、入口流路の内部容積と接触するメンブレン部分の内表面の中央の点7から当該メンブレン部分に一番近い出口流路の内壁の点8に至るまでの距離diが定められる。
図2に見られるように、様々な出口流路5が存在することができ、そしてそれらを、メンブレン部分iの位置及び流路の閉塞形状及び幾何学的条件が関係するものとして検討することが必要である。
【0039】
本発明に従って関係する距離Dは、各一体品の全部の入口流路の全部の部分iについて上記のように求められたdiの算術平均である。
【0040】
断面において選ばれる部分の数は、有利には、流路の構成及び各入口流路に対する出口流路の数に応じて選ばれるが、支持体の多孔質の壁を横切って入口流路から出口流路へと導かれる液体の平均経路を表すものとなるのに十分でなければならない。一般的には、流路当たりのdiの測定数は、10より大きく、又は更には20より大きく、好ましくは50より大きく、又は更には100より大きい。本発明によれば、Dの計算のためには、入口流路当たり少なくとも20、好ましくは少なくとも50、又は更には100の距離diが、上記のようにして求められる。
【0041】
図3は、流路を閉塞する第一の構成による、入口流路及び出口流路の断面が正方形のろ過フィルターの上流面の正面図である。
【0042】
図4~7は、流路を閉塞するその他の構成による、入口流路及び出口流路の断面が正方形のろ過フィルターの上流面の正面図である。
【0043】
図8~10は、流路を閉塞するいくつかの構成による、入口流路及び出口流路の断面が六角形であるろ過フィルターの上流面の正面図である。
【0044】
図11及び12は、上述のようなフィルターの二つの作用モードを図示しており、より詳しく言えば、
図11は、収容容器(ハウジング)内に入れられたろ過構造体(又はフィルター)の長手方向断面(主軸線を通過する平面に沿っての)を図示しており、
図12は、ろ過すべき液体の貯留器中に浸漬されたフィルターの長手方向断面を模式的に表している。
【0045】
図11は、主軸線(X)、上流面2及び下流面3を有する円筒状の支持体1を含む、収容容器10内に入れられたフロント式ろ過フィルターを説明するものである。液体の循環方向において上流側の面で開口している入口流路4と下流側の面で開口している出口流路5とを含む、主軸線(X)に平行な複数の流路が、支持体の内側部分に形成され、多孔質の内壁により互いに分離されている。上流側のベース2及び下流側のベース3のおのおのに姿を現す入口流路4は、内側面をメンブレン(6)で覆われ、且つ下流側の面3で閉塞されている。出口流路5は、上流側の面2で閉塞されている。この装置の耐漏洩性は、シール9によって確保されている。
【0046】
図12は、ろ過すべき液体を含んでいる貯留器11中に浸漬されたフロント式ろ過フィルターを模式的に表している。フィルターの構成部材は、フィルターがその外周にコーティング6’を更に含んでいて、それによりろ過すべき液体が外周を通り抜けて周囲の出口流路へ直接進むことによりメンブレンを迂回しないようにしていることを除いて、
図11のものと同様である。このコーティングは、耐漏洩性であることができる。このコーティングが浸透可能である場合には、それは少なくともメンブレンを含む。収容容器と接触するところの耐漏洩性は、シール9により確保されている。
【0047】
限定するものでない以下の例により、添付の
図1~10に関して本発明を説明する。
【実施例】
【0048】
本発明によるフロント式フィルターの例(例1-3、2-1、3-4、3-5及び4-2)と、比較例(1-1、1-2、2-2、2-3、2-4、3-1、3-2、3-3、3-5、4-1及び4-3)を、下記で説明する方法により製作した。
【0049】
〔例1-1(比較例)〕
炭化ケイ素のハニカムを形成することによる当業者によく知られた技術により、支持体を作製した。このためには、ブレンダーで次のものを混合する:
・メジアン直径が約11μmの粒子の第一の粉末を70質量%及びメジアン直径が約0.9μmの粒子の第二の粉末を30質量%含む、純度が98%より高い炭化ケイ素粒子の2つの粉体の混合物3000g、及び
・セルロース誘導体タイプの有機結合剤300g。
【0050】
SiC及び有機結合剤の質量に対し約25質量%の水を加え、そして細孔率35%の支持体を得るための押し出し成形を可能にする可塑性を持つ均一なペーストが得られるまでブレンディングを行う。
【0051】
このペーストを使用し、ダイを用いて支持体を押し出し成形して、内側部分に正方形断面の複数の流路を有する、直径150mm及び長さ300mmの円筒状の一体式粗製ブロックを得る。ダイの形状は、水力学的直径が1.8mmの正方形断面及び内壁の平均厚さが400μmの流路が得られるように適合させる。
【0052】
次に、得られた粗製一体品を乾燥させて、化学的に結合していない水の含有量を1質量%未満にし、そしてその後、アルゴン下で2100℃の温度に至るまで焼成して、この温度を5時間保持する。得られた支持体は、水銀圧入法で測定して35%の開放細孔率と約10μmのメジアン細孔直径を有する。
【0053】
この一体品の流路を、周知の技術、例えば国際公開第2004/065088号に記載されている技術に従い、交互に閉塞し、それにより
図3に示した閉塞幾何学的配列を得る。支持体の外側の周壁は、ろ過機能なしにする。
【0054】
次に、流路の内側面にろ過メンブレンを付着させる。メンブレンの付着は、スリップを塗布することにより行う。このために、第一段階において、スリップを使用してメンブレン結合プライマーを作製し、このスリップの無機組成は、メジアン直径D50が約10μmの黒色SiC粒子の粉末(SIKA社のDPF-C)を48質量%、メジアン直径D50が約2μmの黒色SiC粒子の粉末(SIKA社のFPC-07)を32質量%、メジアン直径D50が約4μmの金属ケイ素粒子の粉末を13質量%、メジアン直径D50が約1μmの非晶質炭素粉末を7質量%含む。全体を、水の量が混合物の全質量の約50%に相当する脱イオン水の溶液中で混合する。
【0055】
スリップを使用して、メンブレン分離層(メンブレン)を得る。このスリップの無機組成は、メジアン直径D50が約4μmの金属ケイ素粒子の粉末が67質量%、メジアン直径D50が約1μmの非晶質炭素粉末が33質量%である。全体を、水の量が混合物の全質量の約50%に相当する脱イオン水の溶液中で混合する。
【0056】
次に、支持体を室温で10分間、そしてその後60℃で12時間乾燥させる。次いで、こうして乾燥させた支持体を1470℃の温度の周囲圧力のアルゴン下で4時間焼成する。
【0057】
プライマーとメンブレンは、同じ方法に従って付着させる。上記のスリップを、貯留器中へ20rpmでかき混ぜながら入れる。連続してかき混ぜながら一般に25mbarの温和な真空下での脱気の段階後に、貯留器を約0.8barの温和な超過圧力下に置いて、それにより支持体の内側を下端から上端まで被覆できるようにする。この作業は、長さ300mmの支持体に対しては数秒を要するだけである。スリップが支持体の流路の内壁を被覆し、そして付着直後に、過剰分を重力により排出させる。実際問題として、プライマーのこの層は、その細孔率特性(メジアン細孔径及び全体的な細孔率)がメンブレン自体のそれよりも大きければ、その厚さとは関係なく、フィルターのろ過性能品質に影響を及ぼすことはなく、したがってメンブレンが分離層として働くだけである。
【0058】
その後、被覆された支持体を室温で30分間乾燥させ。次いで60℃で30時間乾燥させる。
【0059】
次に、こうして乾燥させた被覆支持体をアルゴン雰囲気下の1300℃の温度で4時間焼結させて、40%のメンブレン細孔率が100nmのメジアン細孔径とともに得られる。
【0060】
〔例1-2(比較例)〕
例1-1のやり方と同じやり方でフィルターを作製し、唯一の違いは、閉塞を
図4で説明される構成に従って行ったことであった。
【0061】
〔例1-3(本発明による例)〕
閉塞を
図5で説明される構成に従って行ったことを除いて、例1-1のやり方と同じやり方でフィルターを作製した。
【0062】
〔例2-1(本発明による例)及び例2-2~2-4(比較例)〕
水力学的直径が2.6mmで平均内壁厚さが800μmの流路を得るようにダイを変更したことを除いて、例1-1のやり方と同じやり方でフィルターを作製した。支持体を押し出し加工するための混合物は、メジアン直径が約11μmの炭化ケイ素粒子の第一の粉末を65質量%、及びメジアン直径が約0.9μmの炭化ケイ素粒子の第二の粉末を35質量%含む。
【0063】
この一連の例においては、その後、下記で説明する方法に従って流路の内壁に炭化ケイ素製のメンブレン分離層を付着させる:
第一段階で、メジアン直径D50が約11μmである黒色SiC粒子の粉末(SIKA社のDPF-C)を30質量%、メジアン直径D50が約2.5μmである黒色SiC粒子の粉末(SIKA社のFCP-07)を20質量%、及び脱イオン水を50%含む無機組成のスリップを使用して、分離層を取り付けるためのプライマーを作製する。分離層を構成する材料のスリップも調製し、その組成は、SiC粒子(d50が0.6μmの領域にある)を40質量%、及び脱イオン水を60%含む。有機添加剤を加えてスリップのレオロジーを、DIN標準規格C33-53019に従い22℃で測定して1s-1の剪断勾配の下で0.7Pa・sに調整した。
【0064】
これらの二つの層を、下記で説明する同じ方法に従い連続して付着させる:
スリップを、貯留器にかき混ぜながら(20rpm)入れる。温和な真空(一般的に25mbar)下で引き続きかき混ぜながらの脱気段階の後に、貯留器を約0.7barの正圧下に置いて、それにより支持体の内側を下端から上端まで被覆できるようにする。この作業は、長さ30cmの支持体については数秒を要するだけである。支持体の流路の内壁をスリップで被覆した直後に、過剰分を重力により排出させる。
【0065】
その後、支持体を室温で10分間、次いで60℃で12時間乾燥させ、そして例1-1~1-3の一連の例についてと同じ手順に従って流路を閉塞する。
【0066】
次に、こうして乾燥させた支持体を、周囲圧力のアルゴン下で1540℃の温度で2時間焼成する。
【0067】
〔例3-1~3-3(比較例)、3-4及び3-5(本発明による例)〕
水力学的直径が1.9mmに等しく壁の厚さが635μmの流路を得るようにダイを変更したことを除いて、例2-1のやり方と同じやり方でフィルターを作製した。更に、得られた粗製一体品を2200℃の温度に至るまで焼成する。得られた支持体は、50%の開放細孔率及び約35μmの平均細孔直径を有する。
【0068】
例3-1~3-4による構造体の閉塞を、それぞれ
図3~6に従って、それぞれ例1-1~1-3についてと同じやり方で行った。
図7による配置構成を、例3-5により作製した。
【0069】
この一連の例においては、分離メンブレンの付着及び乾燥の工程を連続して二度(一度だけ)行い、それにより平均厚さが50μmの層を得るようにする。更に、有機添加剤を加えてスリップのレオロジーを、DIN標準規格C33-53019に従い22℃で測定して1s-1の剪断勾配下で0.7Pa・sに調整した。
【0070】
〔例4-1及び4-3(比較例)及び例4-2(本発明による例)〕
流路が2.0mmの水力学的直径及び600μmの平均内壁厚さを有する、
図8に示した六角形の構造体を得るようにダイを変更したことを除いて、例2-1のやり方と同じやり方でフィルターを作製した。更に、得られた粗製一体品を2130℃の温度に至るまで焼成する。得られた支持体は、40%の開放細孔率及び約9μmの平均細孔直径を有する。
【0071】
この一連の例では、分離メンブレンの作製を例2-1についてしたように行うが、被覆した支持体をその後1540℃の代わりに1480℃の温度のアルゴン下で焼成する。
【0072】
例4-1~4-3による構造体の閉塞を以前と同じやり方で行って、それによりそれぞれ
図8~10による閉塞した構造体を得るようにした。
【0073】
〔結果及び試験の表〕
これらのフィルターのおのおのについて、Φ/Φmax比を求める。ここで、Φは検討中のフィルターの特性流量であり、Φmaxは同じ一連の例のうちの最も効果的なフィルターについて測定された流量であって、それの有効性を100%とする。フィルターの特性流量は、次の方法に従って評価した:25℃の温度で、脱塩水から作った流体を、0.5barのメンブレン横断圧力及び2m/sの流路循環速度で評価すべきフィルターに供給する。透過物をフィルター出口で回収する。20時間ろ過後のフィルターの特性流量の測定値を、L/h/m/barで表す。得られた結果、そしてまたこうして得られたフィルターの全ての関連する寸法特性を、下記の表1に示す。
【0074】
本発明による例1-3、2-1及び3-4は、構成がメンブレン及び支持体の物理的特性に一層依存している最適な構造体に相当している。これらの例は、フィルターの入口流路及び出口流路のパターン及び数を、流路の形状、内壁の平均厚さ、メンブレンの平均厚さ、メンブレンのメジアン細孔直径及びメンブレン又は支持体の細孔率などのフィルターの物理的パラメータに応じて適合させ、それによりろ液の流量を最大限にするための本発明による距離Dを得ることの重要性を実証している。このように寸法を規定された本発明によるフィルターは、表1で報告される結果で認められるように、ろ液の最適化された最大流量を特徴とする。
【0075】
本発明の利点は、入口及び出口流路の構成が全体として異なることにより、この場合には添付の
図8~10に示したように六角形の断面を有することにより、前述の例と異なるほかのタイプのフィルターでも実証される。
図8~10による構成は、入口及び出口流路の数が異なっている。得られた結果を下記の表2で報告する。流路の断面が正方形のフィルターについてのように、先に述べた意味において最大限のろ過の有効性が、本発明に基づく例4-3によるフィルターについて認められるが、この場合、その流路は六角形の断面である。
【0076】
【0077】
【表2】
本発明の実施態様の一部を以下の項目1~15に記載する。
〈項目1〉液体をろ過するためのメンブレンを有するろ過構造体であり、以下のものを含む少なくとも1つの一体品を含む、ろ過構造体であって:
・浸透率K
S
の多孔質無機材料から形成された支持体(1)であって、主軸線(X)、上流面(2)、下流面(3)、周辺面、及び内側部分を有する管状の一般形状を有する支持体(1)、
・前記支持体の前記主軸線に平行であり、前記支持体の前記内側部分に形成された、複数の流路(4、5)であって、前記多孔質無機材料から形成された内壁によって互いに分離されている流路(4、5)、
・前記流路は、前記液体の循環方向においてそれらの上流端部又は下流端部の一方又は他方で閉塞されて、それぞれ前記液体のための入口流路(4)及び出口流路(5)を規定し、それにより、前記液体が、前記入口流路及び出口流路を分離している多孔質の壁を通過するようにされており、
・少なくとも前記入口流路(4)の内面を被覆している、浸透率K
m
及び平均厚さt
m
のメンブレン(6)、
前記液体の平均経路距離Dが次の関係式(1)を満たすことを特徴とする、ろ過構造体:
D=α×(A×log(K
s
×t
m
/K
m
)+B) (1)
上式中、
αは、0.0008~0.0013の間の範囲内の係数であり、
A=272×φ
c
+272×p
i
+0.02、
B=601×φ
c
+1757×p
i
+0.28、
φ
c
は、前記流路の全ての平均水力学的直径であり、
p
i
は、前記内壁の平均厚さであり、
D、t
m
、φ
c
、p
i
は、mで表され、K
s
及びK
m
は、m
2
で表され、
Dは、当該構造体の前記主軸線に対して直角な断面の平面において、各入口流路を被覆する前記メンブレンのi個の部分とメンブレンの各部分iの最も近い出口流路との間の距離d
i
の算術平均により定義され、部分iは、前記メンブレンの等しい長さの少なくともi個の部分への分割数として定義され、iは、10より大きく、各d
i
は、前記入口流路の内容積と接する前記メンブレンの部分の内面の中央の点から、前記メンブレンの部分に最も近い出口流路の内壁の点に至るまで測定される。
〈項目2〉前記K
s
×t
m
/K
m
の比が、0.0005と5との間、好ましくは0.001と1の間である、項目1に記載のろ過構造体。
〈項目3〉前記支持体の水力学的直径が、50mmと300mmの間、好ましくは80mmと230mmの間である、項目1又は2に記載のろ過構造体。
〈項目4〉前記流路の平均水力学的直径φ
c
が、0.5mmと5mmの間、好ましくは0.5mmと4mmの間、より好ましくは0.5mmと3mmの間である、項目1~3のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目5〉前記支持体の平均内壁厚さp
i
が、0.3mmと3mmの間、好ましくは0.4mmと1.4mmの間である、項目1~4のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目6〉前記支持体が、正方形、六角形又は円形のベースを有することを特徴とする、項目1~5のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目7〉前記フィルターが、200~1500mmの長さを有することを特徴とする、項目1~6のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目8〉全ての前記流路が、同一の水力学的直径を有することを特徴とする、項目1~7のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目9〉前記支持体が、20%と70%の間の開放細孔率を有することを特徴とする、項目1~8のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目10〉前記支持体が、10nmと50μmの間の平均細孔径を有することを特徴とする、項目1~9のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目11〉前記メンブレンの平均厚さt
m
が、0.1~300μmの範囲内、好ましくは10~70μmの範囲内であることを特徴とする、項目1~10のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目12〉前記メンブレンが、10%と70%の間の開放細孔率を有することを特徴とする、項目1~11のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目13〉前記メンブレンが、10nmと5μmの間、好ましくは50nmと1000nmの間のメジアン細孔径を有することを特徴とする、項目1~12のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目14〉前記流路が、円形又は多角形の断面、特に正方形、六角形又は八角形及び正方形の断面を有することを特徴とする、項目1~13のいずれか一項に記載のろ過構造体。
〈項目15〉化学、製薬、食品、農産食料品、バイオリアクター、又は石油又はシェールガスの抽出の分野における液体の精製及び/又は分離のための、項目1~14のいずれか一項に記載のフィルターの使用。