(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】利用者の少なくとも1つの腕をサポートする装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20221212BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A61H1/02 K
(21)【出願番号】P 2019566915
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2018064910
(87)【国際公開番号】W WO2018224555
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】102017112436.5
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットーボック・エスイー・ウント・コンパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ミゼラ、オリバー
(72)【発明者】
【氏名】クルツベク、アンネドア
(72)【発明者】
【氏名】モスラー、ルダー
(72)【発明者】
【氏名】シアマイスター、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ボーンマン、ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】フォックス、サマンサ
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503320(JP,A)
【文献】特開2009-268839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/00
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者(2)の少なくとも1つの上腕をサポートする装置であって、該装置は、
腕(4)に当て付けるように構成された腕ソケット(10)を有する少なくとも1つの腕支持部材(6)と、
前記少なくとも1つの腕支持部材(6)に力を印加するように構成された少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)と、
前記少なくとも1つの腕支持部材(6)に印加されるべき前記力に対する少なくとも1つのカウンタサポート(14)と、
を備え、該少なくとも1つのカウンタサポート(14)は、
少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)と、
前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)に反力を伝達するように構成された少なくとも1つの力伝達部材(18)と、を備え、
前記腕(4)の運動自由度が前記装置によって制約されず、前記少なくとも1つの力伝達部材(18)は、前記少なくとも1つの腕支持部材(6)が旋回軸を中心として旋回可能なように前記少なくとも1つの腕支持部材(6)が1つのジョイント(20)によって配置される圧力伝達部材であり、
前記少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)は、前記少なくとも1つの腕支持部材(6)上の前記旋回軸に対して偏心的に前記力を印加し、
前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)は、身体部分に前記装置を当て付けるように構成された当て付け部材(17)を備え、前記圧力伝達部材は、ジョイント(2
2)またはヒンジによって当て付け部材(17)に結合される、装置。
【請求項2】
前記圧力伝達部材は、ロッドまたはレールである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)は、身体部分に前記装置を当て付けるように構成された当て付け部材(17)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記当て付け部材(17)は、ベルト、バンド、バンデージ、またはソケット部材である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記身体部分は、前記利用者(2)の胴体である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)は、前記利用者(2)の肩に当て付けるための少なくとも肩部材(30)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)は、前記反力を地面へ導入可能にする少なくとも1つの地面接触部材(46)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの力伝達部材(18)の向きは、前記利用者(2)の胴体の動きおよび/または前記腕(4)の動きによって前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)に対して変更可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記圧力伝達部材は、前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)と結合される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記圧力伝達部材は、ボールジョイント(22)によって前記当て付け部材(17)と結合される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)は、弾性部材を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記弾性部材は、ばね部材である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)は、前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)に対して相対的な前記少なくとも1つの腕支持部材(6)の位置および/または向きに依存して前記力を印加するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)は、前記旋回軸を中心とする前記少なくとも1つの腕支持部材(6)の旋回角に依存して前記力を印加するように構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)により印加される前記力は、前記少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)の変更可能な初期応力によって、および/または前記少なくとも1つの腕支持部材(6)に対する力の印加の調整可能な偏心度によって変更可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの力伝達部材(18)は、案内部に支承され、該案内部によって、前記少なくとも1つの腕支持部材(6)が配置されている前記少なくとも1つの力伝達部材(18)の部分が、前記装置が当て付けられたときに前記利用者(2)の胴体から離れることを防止する、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、前記利用者(2)の両方の腕(4)を支持するための2つの腕支持部材(6)を備え、前記2つの腕支持部材(6)の各々は、前記少なくとも1つの力伝達部材(18)のそれぞれ1つに旋回可能なように配置され、前記装置は、それぞれの前記少なくとも1つの力伝達部材(18)の間に配置された結合部材(32)をさらに備え、前記結合部材によって前記少なくとも1つの力伝達部材(18)の両方に引張力が印加可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
両方の力伝達部材(18)は、前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)上の同じ個所で結合される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記装置は、ブロック装置をさらに備え、該ブロック装置により前記少なくとも1つの力伝達部材(18)に対する前記少なくとも1つの腕支持部材(6)の相対的な動きが少なくとも1つの方向でブロック可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記動きは、完全にブロック可能である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
利用者(2)の少なくとも1つの上腕をサポートする装置であって、該装置は、
腕(4)に当て付けるように構成された腕ソケット(10)を有する少なくとも1つの腕支持部材(6)と、
前記少なくとも1つの腕支持部材(6)に力を印加するように構成された少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)と、
前記少なくとも1つの腕支持部材(6)に印加されるべき前記力に対する少なくとも1つのカウンタサポート(14)と、
を備え、該少なくとも1つのカウンタサポート(14)は、
少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)と、
前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)に反力を伝達するように構成された少なくとも1つの力伝達部材(18)と、
を備え、前記腕ソケット(10)は、少なくとも3つの並進的および3つの回転的な自由度で前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)に対して可動であり、
前記少なくとも1つの力伝達部材(18)は、前記少なくとも1つの腕支持部材(6)が旋回軸を中心として旋回可能なように前記少なくとも1つの腕支持部材(6)が1つのジョイント(20)によって配置される圧力伝達部材であり、
前記少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)は、前記少なくとも1つの腕支持部材(6)に偏心的に前記力を印加し、
前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)は、身体部分に前記装置を当て付けるように構成された当て付け部材(17)を備え、前記圧力伝達部材は、ジョイント(2
2)またはヒンジによって当て付け部材(17)に結合される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の少なくとも1つの腕をサポートする装置に関し、本装置は、腕に当て付けるための腕ソケットを備える少なくとも1つの腕支持部材と、少なくとも1つの腕支持部材に力を印加するように構成された少なくとも1つの受動的なアクチュエータと、少なくとも1つのカウンタサポート部材およびカウンタサポート部材に反力を伝達するように構成された少なくとも1つの力伝達部材を備える、印加されるべき力に対する少なくとも1つのカウンタサポートとを有する。
【背景技術】
【0002】
このような種類の装置が特許文献1から公知である。この装置は、利用者の胴体の周りに巻付け可能なベルトの形態で構成されたカウンタサポート部材を有している。ベルトには背中に沿って肩へと延びる支持ストラットがあり、この支持ストラットが、利用者の肩の上方および横脇でそれぞれジョイントと結合され、それにより腕を持ち上げることができる。相応のジョイントにばね部材が配置されていて、これにより上方を向く力を腕ソケットに対して及ぼすことができ、それにより、たとえば重量のある物品を持ち上げるときや頭上で作業をするときに腕のサポートを行うことができる。腕を下げたいときは、ばね部材により印加される力を上回る圧力が、腕によって腕ソケットに対して及ぼさなければならず、それによって腕が下がる。
【0003】
特許文献2および特許文献3より、受動的なアクチュエータとして作用する機械式のエネルギー蓄積器として、ボーデンケーブルと連結されたばね、特に引張ばねがそれぞれ設けられる相応の装置が公知である。ボーデンケーブルは方向転換ロールを介して案内され、それにより、カウンタサポート部材に対して相対的な腕支持部材の運動を意味する腕の旋回のときにばねが回転し、それにより、機械式のエネルギー蓄積器にエネルギーが充填される。
【0004】
特に、装置の利用者がたとえばつまずいたり倒れたりして、たとえば床に転がらざるを得ないケースについて、このような種類の装置は利用者にとって危険や怪我につながりかねない。このことは、たとえば従来技術によれば肩関節の外部に配置される装置のジョイントが、そのジョイント軸と旋回軸とが肩関節の相応の軸を通過するように可能な限り正確に配置され、それにより利用者の生得の肩およびこれに伴って腕が行える一切の動きを模倣できると標榜されているもかかわらず起こる。
【0005】
頭上での作業時に腕をサポートする能動的な装置が、特許文献4から公知である。それぞれの腕ソケットが、多数の異なるジョイントと連結フレーム部材とを介して相互に連結される。それにより、肩関節が行うことができる可能な限り多くの動きが、装置を装着していても可能であることが意図される。しかしこの装置は部材の数が多いために大型であり、設計コストが高く、それに伴って高価である。それに加えて、この装置は肩関節を2つのヒンジジョイントによって模倣しようと試みている。そのため、生得の肩関節が行うことができる一切の運動が可能なわけではない。特に、特定の方向への腕の持ち上げのためには、そのために設けられたジョイントが、その旋回軸を所望の方向に向けるために、まず正しい位置へと回転しなければならない。そのため、場合により追加の不自然な動きを行わなければならず、それによって装置の快適性およびこれに伴って利用者の受け入れも悪くなる。
【0006】
特に重量のある対象物を持ち上げるときや頭上での作業時にサポートをする別のサポート装置が、特許文献5および特許文献6から公知である。しかしこれらの装置は、サポートを必要とする特別な動きに照準を定めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2016/0081871A1号明細書
【文献】国際公開第2014/093408A2号明細書
【文献】米国特許第9,427,865号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3156193A1号明細書
【文献】国際公開第2014/195373A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/339583A1号明細書
【発明の概要】
【0008】
したがって本発明の課題は、これらの欠点を取り除き、もしくは少なくとも緩和することにある。
【0009】
本発明は、利用者の脊柱の運動自由度が本装置によって制約されることがなく、この場合、特に傾斜が可能であり、および/または腕の運動自由度が本装置によって制約されることがないことを特徴とする、請求項1のプレアンブルに記載の装置によって課せられた課題を解決する。
【0010】
さらに本発明は、少なくとも1つの腕ソケットが少なくとも1つのカウンタサポート部材に関して少なくとも3つの並進的および3つの回転的な自由度で可動であることを特徴とする、請求項2のプレアンブルに記載の装置によって課せられた課題を解決する。腕支持部材は少なくとも1つの旋回軸を中心として旋回可能なようにジョイントを介して力伝達部材と結合されるのが特別に好ましい。少なくとも1つの力伝達部材は、カウンタサポート部材に対して相対的に可動なように、特に少なくとも1つの回転軸を中心として回転可能なように、カウンタサポート部材に配置されるのが好ましい。そのために少なくとも1つの力伝達部材は、たとえばヒンジ、ボールジョイント、またはその他のジョイントによってカウンタサポート部材に取り付けられ、または、たとえば力伝達部材の1つの端部をもって、そのために設けられるカウンタサポート部材のポケットまたはホルダの中に差し込まれ、もしくは挿入される。
【0011】
本発明の根底にある知見は、しばしば複雑で高いコストのかかるジョイントの配置にもかかわらず、そのような種類の装具や装置によっては、装着者の肩の領域で多くの動きを模倣することはできないというものである。このことが特に当てはまるのは、少なくとも1つの腕支持部材の向きおよび/または位置がカウンタサポート部材に対して相対的に変化し、肩の動きによってではなく、もしくはそれだけによってではなく、たとえば胴体、脊柱、または肩甲帯などの動きによっても引き起こされる動きである。このような動きは、特に利用者がつまずいたり転んだりする上述した状況のときに、転倒を支えて怪我を回避するために大きな重要性がある。
【0012】
特に前提となる知見は、特許文献4から公知の装置では、ヒンジジョイントが解剖学的な関節に対して固定的な基準点を必要とし、したがって、回転中心がフレームによって一定に固定されているということにある。
【0013】
カウンタサポート部材に対して相対的な少なくとも1つの力伝達部材の運動性により、本装置の好ましい実施形態では、少なくとも1つの腕の運動自由度が本装置によって制約されないことが実現される。
【0014】
腕の運動自由度が本装置によって制約されないというとき、本発明の枠内においてこのことは特に、本装置の利用者が本装置なしに行うことができるどのような動きでも、本装置を有しているときに可能であり、それによりせいぜいのところ最小限にしか、すなわち些細にしか制約されないことであると理解される。このような動きは、特に前傾および後傾、すなわち前方および後方への腕の持ち上げ、外転および内転、すなわち横方向への腕の持ち上げと引き寄せ、および肩関節における内回転と外回転を含む。特に、本発明の装置によって分回し運動を、相応の人物が本装置なしに可能であるのと同程度に可能である。分回し運動とは、特に、頂点が肩関節に位置する不規則な円錐が生じる最大の運動振幅における、3つのジョイント軸の実行可能な主要運動を中心とする腕の振り回しである。
【0015】
利用者の脊柱の運動自由度が本装置によって制約されないというとき、このことは特に、前屈と後屈が可能であることであると理解される。これらの動きは腹屈および背屈とも呼ばれる。前屈は、上半身およびこれに伴って脊柱と頭部の前方傾斜であり、それに対して後屈はこれと反対向きの動きである。上半身およびこれに伴って脊柱のこれ以外の動き、たとえば側屈や回転も、本装置によって制約されないのが好ましい。
【0016】
脊柱の動きも、特に脊柱の横への傾きおよび/または前方および後方への傾きおよび/または長軸を中心とする脊柱の回転も、本装置によって妨げられず、制約されず、もしくは不可能にならないのが好ましい。ここで説明したこれらすべての動きが、本装置によって、その最大の運動振幅に関しても運動順序に関しても制約されないのが好ましい。
【0017】
このとき腕ソケットは、少なくとも1つのカウンタサポート部材に関して、少なくとも3つの並進的な自由度および3つの回転的な自由度で可動である。従来技術に基づく装置はせいぜい回転的な自由度を許容するだけであるのに対して、本発明の装置により、たとえば空間方向に沿って並進的な変位のみに関わる、カウンタサポート部材に対して相対的な腕ソケットの動きも可能になることが実現される。それにより、腕ソケットがカウンタサポート部材に対して相対的に、肩の動きだけに由来するのでなく、たとえば脊柱やその他の身体部分の動きも必要とする上腕の動きを模倣して一緒に遂行することができる。
【0018】
ここで説明している発明に基づく装置の好ましい実施形態では、力伝達部材は圧縮力伝達部材、特にロッドまたはレールを有し、これに腕支持部材が旋回軸を中心として旋回可能なように配置される。このとき、旋回軸を有するただ1つのヒンジジョイントを設けることが多くの場合に十分である。それぞれの旋回軸が1つの点で、好ましくは生得の肩の球関節の旋回点で、仮想的に合致する複数のジョイントの複雑な構成物は必要ない。それによって設計が大幅に簡素化される。さらに製造コストも削減することができる。
【0019】
腕支持部材が力伝達部材に配置されるジョイントと、カウンタサポート部材とは、力伝達部材を介して相互に間隔をおくように位置決めされるのが好ましい。この間隔は、力伝達部材の有効長さに相当する。このときジョイントは、本装置が当て付けられた状態のとき、ほぼ利用者の肩関節の高さにある。カウンタサポート部材は、特に、力伝達部材がカウンタサポート部材に配置されるカウンタサポート部材のジョイント装置は、本装置が当て付けられた状態のとき、利用者の骨盤領域にあるのが好ましく、利用者の腸骨稜の上または上方かつ股関節よりも上にあるのが特別に好ましい。このとき肩パートに属するのは特に利用者の肩甲骨である。ジョイントは肩関節窩の高さ、またはこれよりも上にあるのが好ましい。
【0020】
利用者の肩のそばを通る運動領域をジョイントについて具体化することが可能であるのが好ましく、それにより、腕が極端な位置にあるときでもジョイントが利用者の身体に突き当たることがあり得ない。このことは特に、カウンタサポート部材に対する腕支持部材の腕ソケットの比較的広い間隔によって実現される。利用者の腰領域へのカウンタサポート部材の配置は、カウンタサポートに来る力を骨盤を通じて容易に受け止めて導き出すことを可能にする。利用者の上半身で軟部や肋骨が押しつぶされることが、それによって回避される。そのためにカウンタサポートは、たとえば力伝達部材が特にジョイント式に結合された腰ベルトを有することができる。
【0021】
腕支持部材は、本装置が当て付けられた状態のとき利用者の腕と結合可能であるスリーブを備えているのが好ましい。このスリーブは、挿入されるべき腕の方向に沿った長手方向伸長もしくは長さを備えている。この長手方向伸長または長さの中心を、以下においてスリーブの中心と呼ぶ。これに準じて腕ソケットも長手方向伸長または長さを有しており、その中心が腕ソケットの中心を定義する。区間sは、スリーブの中心または腕ソケットの中心と、腕支持部材が力伝達部材に取り付けられるジョイントの回転軸との間の間隔を表す。区間aは、このジョイントの回転軸と、力伝達部材がカウンタサポート部材に配置される位置との間の間隔を表す。これら両方の区間の比率a/sは特に1.1以上、好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.4以上、特別に好ましくは1.5以上である。さらに両方の区間の比率a/sは、好ましくは5.0以下、好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下、特別に好ましくは2.0以下である。複数のスリーブまたは腕ソケットがある場合、この点に関しては、もっとも離れて遠位に配置されているスリーブまたは腕ソケットに着目する。
【0022】
このような寸法により、一方におけるスリーブまたは腕ソケットと、他方におけるジョイントとの間の十分に大きいレバーアームをもって腕への力導入が行われ、それに対して、そのために必要なカウンタサポートでの力支持は利用者の肩パートから十分遠くに離れて、特に利用者の腰領域で行われる。
【0023】
特に骨盤ベルトとして構成されるカウンタサポート部材は、利用者の身体のほうを向くクッションを有するのが特別に好ましく、クッションは寛骨の解剖学的な構成に合わせて適合化されるのが好ましい。クッションは、骨盤の腸骨(Osilium)の腸骨稜を少なくとも部分的に受容するために、たとえば凹部を備えている。痛みとして感じられる可能性がある、寛骨の突き出した部分に対する圧力がそれによって回避され、もしくは少なくとも緩和される。クッションの適合化された輪郭によって、骨盤に対する特別に快適で自然な相対位置がクッションについて与えられるので、本装置を利用者によって直感的に正しく装着することができ、それによって取扱が簡易化される。
【0024】
カウンタサポート部材は少なくとも部分的に、ズボンのベルトバックルに挿通可能なベルトとして構成されるのが好ましい。それにより、カウンタサポート部材を利用者のズボンに取り付けることができる。それにより、カウンタサポート部材を利用者の腰領域で確実に位置決めできることが保証される。そのためにカウンタサポート部材は、特にカウンタサポート部材と結合されるボールジョイントによって構成される、たとえばカウンタサポート部材への力伝達部材の結合個所を起点として、カウンタサポート部材を少なくともズボンの前側のベルトバックルへ差し込むことを可能にする長さと幅をもって突出することができる。そのためにカウンタサポート部材はその自由端において、たとえば3.0cm±1.0cm、特に3.5cm±0.2cmの幅を有することができる。特別に好ましい実施形態では、カウンタサポート部材と結合される力伝達部材の端部は、カウンタサポート部材にあるポケットへ差し込まれているにすぎない。このケースでは、本装置を装着するために力伝達部材をポケットから取り出すことができ、それにより、カウンタサポート部材をズボンのベルトバックルへ、最終的な位置に達するまで単に挿通することができる。その後、力伝達部材を単にカウンタサポート部材のポケットへ差し込むことができる。
【0025】
ジョイントは、腕の外転および/または内転を可能にするために、利用者の身体から離れるように動くように構成されるのが好ましい。このとき利用者は、前頭面で腕を身体から離れるように広げる。このことは、利用者の身体からのジョイントの間隔が広がることに帰結し、それは特にジョイントが水平方向で、特に横断面で、身体から離れるように動くことによる。このとき力伝達部材はカウンタサポート部材に対して相対的に、力伝達部材がカウンタサポート部材に取り付けられている結合個所を中心として旋回する。このような旋回が行われる理由は、腕支持部材と力伝達部材の間のジョイントの旋回軸が、外転および/または内転が行われる利用者の肩の関節軸と一致していないからである。それと同時に、力伝達部材の長軸を中心とする腕支持部材の回転が行われるのが好ましい。
【0026】
利用者の身体に対するジョイントの間隔は、腕が水平方向に身体から離れるように伸ばされたとき、実質的に最大になるのが特別に好ましい。腕がさらに上方に向かって持ち上げられると、ジョイントが再び身体に向かって動くのが好ましい。ジョイントと利用者の身体との間の最小の間隔は、外転および/または内転の両方の最終位置で実現されるのが好ましい。これらの最終位置は、腕が利用者の頭部に当たることによって、および腕が利用者の腰に当たることによって定義される。これらの最終位置にあるとき、ジョイントは、身体に向かって押圧をしないために十分に広く利用者の身体から間隔をおく。
【0027】
身体に対するジョイントの最大の間隔は、腕が横断面で広げられた状況に備えて設計されるのが好ましい。ジョイントが離れるように動くことで、利用者の身体にジョイントが当たることが回避され、それによって装着快適性が向上する。利用者の身体からのジョイントの最大の間隔と最小の間隔が実現される腕位置は既知であるので、一方におけるスペーサ部材および他方における力伝達部材の長さを選択することで、最大の間隔および/または最小の間隔を調整することができる。最大の間隔が可能な限り小さく調整されると、利用者の活動中に他の物体にジョイントが不慮の衝突をするリスクが低く抑えられる。腕の外転および/または内転のときには、ジョイントを特に完全に、または大部分において横断面で変位させることができる。あるいは、たとえば腕ソケットとカウンタサポート部材の間でできる限り容易でロバストな運動性を可能にするために、ジョイントが少なくとも部分的に矢状面または前頭面で変位することも可能である。
【0028】
腕支持部材が力伝達部材と結合されるジョイントは、本装置が当て付けられた状態のとき肩甲骨の領域にあり、特に利用者の肩甲骨にあるのが好ましい。ただしこのことは、特に、ジョイントが装着状態のときに利用者の身体と接触することを意味するのではなく、仮にジョイントが利用者の身体に押し付けられたとすると、利用者の肩甲骨とのこのような接触が起こることになることを意味するにすぎない。
【0029】
腕が横断面で動いたときに、ジョイントはその横断面の内部で旋回するように構成および配置されるのが好ましい。利用者の腕が横断面で身体から側方へ突き出し、横断面の内部で身体の前方へと旋回したとき、ジョイントはこの旋回運動に横断面で追随する。このときジョイントは、利用者の肩パートから離れるように動き、肩関節を中心として回るのが好ましい。このことも、カウンタサポート部材への力伝達部材のジョイント式の取付によって実現されるのが好ましい。このとき力伝達部材はカウンタサポート部材に対して相対的に、力伝達部材がカウンタサポート部材に取り付けられている結合個所を中心として旋回する。それと同時に、力伝達部材の長軸を中心として腕支持部材の回転が行われるのが好ましい。
【0030】
ジョイントは、この好ましい実施形態では、基本的に肩関節に沿って比較的小さい間隔をおきながら案内される。利用者の身体へのジョイントの衝突が、そのようにして回避され、それによって装着快適性が向上する。さらに、利用者の活動中に他の対象物にジョイントが不慮の衝突をするリスクが低くなる。
【0031】
腕が利用者の身体の前で最大限大きく交差しているとき、ジョイントは特に肩甲骨の高さで実質的に身体の横に並ぶ。利用者の腕が横断面で身体から側方に突き出しているとき、ジョイントは特に肩甲骨の高さで身体の背中に位置決めされる。腕が横断面で旋回運動すると、ジョイントは特に完全に、または大部分において、横断面で軌道曲線に沿って旋回する。このとき横断面での動きが行われるのは、力伝達部材が横断面に対して垂直に向いているときである。
【0032】
カウンタサポート部材は、本装置の作動時に、作用する力が伝達されるべき対象物に当て付けられる。受動的なアクチュエータが腕支持部材に対して力を印加することが意図されるので、これが支持され得る相応のカウンタサポートが存在しなければならない。本発明の意味における受動的なアクチュエータは、特にモータではない。力を印加するのに必要な所要のエネルギーは、本装置の利用者すなわち装着者によって印加される。通常、腕支持部材に印加されるべき力は、重力と反対に作用するように印加される。したがって、腕およびこれと結合された腕支持部材が持ち上げられるとき、受動的なアクチュエータのエネルギー蓄積器からエネルギーが取り出される。これと反対向きの動きのとき、すなわち腕を下すとき、このことは印加される力に抗して行われる。受動的なエネルギーのエネルギー蓄積器にエネルギーが供給される。このことは、受動的なアクチュエータのエネルギー蓄積器の調整可能な初期応力を度外視するならば、本発明の意味における受動的なアクチュエータにとって唯一のエネルギー源である。
【0033】
受動的なアクチュエータは、少なくとも1つのエネルギー蓄積器、好ましくは少なくとも1つの機械式のエネルギー蓄積器を備えているのが好ましい。これはたとえばばね部材、圧力蓄積器、空気圧式および/または油圧式のシステム、および/または油圧式のエネルギー蓄積器を有することができる。ばね部材はたとえば圧縮力伝達部材と腕支持部材の間でジョイントに直接的に、回転ばねまたは定力ばねの形態で配置されていてよい。弾性的なロープ、たとえばゴムロープなどの形態の弾性部材も考えられ、その1つの端部が腕支持部材の1つの部分に配置される。腕支持部材が圧縮力伝達装置に対して相対的に旋回軸を中心として旋回すると、弾性部材が伸長または圧縮され、それによりエネルギーが機械式のエネルギー蓄積器に供給され、またはこれから取り出される。当然ながら、これ以外の部材、たとえばガス圧ばねや圧縮ばねなども考えられ、圧縮ばねについては、圧縮ばねによって提供される圧縮力を引張力にするために方向転換が利用される。
【0034】
機械式のエネルギー蓄積器は、本装置のさまざまな位置に配置されていてよい。エネルギー蓄積器のために必要な設計スペースが存在し、利用者の腕が動いたときにエネルギー蓄積器そのものが支障を受けない位置が選択されるのが好ましい。たとえば上腕にエネルギー蓄積器が配置されていてよい。
【0035】
好ましい実施形態では、カウンタサポート部材は利用者の身体部分に、特に胴体に当て付けるための当て付け部材であり、特にベルト、バンド、バンデージ、またはソケット部材である。当て付け部材は、たとえばズボンなどの衣服に組み込まれるのが好ましい。その代替または追加としてカウンタサポート部材は、利用者の肩に当て付けるための少なくとも1つの肩部材を有する。その代替または追加としてカウンタサポート部材は少なくとも1つの地面接触部材を備えており、それにより反力を地面へと導入可能である。このような種類の底面接触部材は外骨格として構成されるのが好ましく、従来技術からそれ自体として公知である。これは能動的に、たとえばモータ駆動式に、または受動的に構成されていてよい。
【0036】
カウンタサポート部材が利用者の胴体のための、特に利用者の腰のための当て付け部材として構成されると、利用者にとって特別に楽で快適な仕方で所要の反力を導出することができる。この反力は腰領域で利用者の身体に導入されて両脚で受け止められる。地面接触部材の利用が特に好ましいのは、大きい荷重を持ち上げるときのサポートをするために本装置が使用される場合である。仮にそうしたケースでカウンタサポート部材が利用者の胴体のための、特に腰のための当て付け部材として構成されると、重い荷重によって発生する強い追加負荷が利用者の肩領域からは導出されるものの、両脚によって引き続き支えられなければならないことになる。地面接触部材も利用されることによって、それに対処することができる。その場合、負荷の少なくとも一部を、ただし好ましくは追加の負荷全体を、地面へと導出することが可能であり、それにより、利用者の両脚および特に膝も過負荷を受けることがない。そのために、利用者の腰から膝およびくるぶしを介して足部まで延びる、従来技術から原理的に公知である装具、たとえば能動的または受動的な外骨格を利用することができる。
【0037】
たとえばリュックサックサスペンダーまたはズボンサスペンダーとして構成されていてよい、肩に当て付けるための肩部材の利用は、本装置の特別に小さい設計スペースを可能にする。しかしこれは、肩領域から本来導出されるべき力が別の個所で肩領域に導入されるという欠点を有し、そのため、他のカウンタサポート部材を利用したときと比較して効果が小さくなる。当然ながらこの場合にもカウンタサポート部材は、人間の身体の肩またはその他の部分に、特に利用者の胴体に配置される柔軟または剛直な部材であってよい。
【0038】
カウンタサポート部材に対して相対的な力伝達部材の向きを、利用者の胴体の動きによって、および/または腕の動きによって変更可能であると好ましいことが判明している。カウンタサポート部材に対して相対的な力伝達部材のこのような向きの変更により、たとえば長手伸長方向または角度位置の変更により、圧縮力伝達部材への腕支持部材の旋回可能な配置によっては惹起することができない多数の、さらに好ましくは全部の、動きと自由度を具体化することができる。利用者の胴体および/または腕の動きによって向きの変更が容易に惹起されるので、直感的な操作が保証される。圧縮力伝達部材はジョイントによって、特にボールジョイントまたはヒンジによって、当て付け部材と結合されるのが好ましい。このようなジョイントの厳密な構成は利用目的や所与の条件に依存し、特に利用者の個人的な優先事項や好みにも依存する。たとえば、たとえばベルトまたはバンドとして構成される当て付け部材に対して相対的な、ロッドまたはボルトとして構成される圧縮力伝達部材の旋回を可能にするボールジョイントを利用することができる。トーションすなわち圧縮力伝達部材の独自の長軸を中心とする回転も、このような種類のジョイントによって可能となり得る。ただし場合によっては、単純なヒンジジョイントを設け、これによって圧縮力伝達部材が当て付け部材に配置されれば十分である。このことが特に十分なのは、当て付け部材の変形が帰結される、当て付け部材に対して相対的な圧縮力伝達部材の動きが可能である程度に、当て付け部材の柔軟性が高い場合である。当て付け部材そのものは柔軟な部材として構成されるので、このような変形は、利用者の腕および/または胴体が相応に動いたときに元に戻る。このようにして、当該個所でも可能な限り簡易な結合が圧縮力伝達部材と当て付け部材の間で実現される。
【0039】
圧縮力伝達部材が腕支持部材に配置されるジョイントは、さまざまな仕方で構成されていてよい。それはスラストジョイントまたはチェーンジョイント、またはフラップ機構として構成されていてよい。たとえば曲げばねなどの弾性部材もジョイントとして、および同時に少なくとも機械式のエネルギー蓄積器として利用することができる。当然ながら、たとえば引張・押圧・フォークの形態のボーデンケーブル原理も適用することができる。
【0040】
腕支持部材は、好ましくはスペーサ部材に配置される腕ソケットを備えている。このスペーサ部材は腕支持部材の一部として、圧縮力伝達部材または力伝達部材と結合されるのが好ましい。このとき、たとえばレールまたはロッドとして構成される圧縮力伝達部材の長さは、および、場合によりロッドまたはレールとして構成されるスペーサ部材の長さも、装着者の上腕の可能な動きの角度領域全体がカバーされるように選択されるのが好ましい。腕ソケットは、最大限可能な装着快適性を実現するために、スペーサ部材にジョイント式に配置されるのが好ましい。
【0041】
好ましい実施形態では、受動的なアクチュエータは、カウンタサポート部材に対して相対的な少なくとも1つの腕支持部材の位置および/または向きに依存して、特に旋回軸を中心とする腕支持部材の旋回角に依存して、力を印加するように構成され、受動的なアクチュエータは好ましくは偏心的に力を腕支持部材に印加する。腕支持部材のスペーサ部材に対して力が印加されるのが好ましい。たとえば上腕およびこれに伴って腕支持部材の位置と角度位置に関わりなく常に等しい力が印加される受動的なアクチュエータとしての定力ばねに代えて、腕およびこれに伴って腕支持部材の位置および/または向きに応じて異なる力を印加することができる受動的なアクチュエータを利用することができる。たとえば腕が法線に対して、すなわち重力に従う方向に対して、相対的に特定の角度を上回っていない限り、力が印加されないのが好ましい。この角度はたとえば45°、60°、または90°であり得る。腕がこのような角度を超えて持ち上げられたときに初めて、受動的なアクチュエータによって重力と反対方向を向く力が印加されるのが好ましい。この力は、圧縮力伝達部材に対して相対的な上腕およびこれに伴って腕支持部材のその後の持ち上げすなわち旋回に伴って、変化することができる。そのためにカムディスク、伝動装置、またはその他の力・ストローク機能、たとえばゲートを利用することができる。最大の力は、好ましくは70°から120°の角度領域のとき、特別に好ましくは90°のときに印加される。
【0042】
受動的なアクチュエータにより印加される力は、受動的なアクチュエータの変更可能な初期応力によって、および/または腕支持部材に対する力印加の調整可能な偏心度によって、変更可能であるのが好ましい。
【0043】
好ましい実施形態では力伝達部材は案内部に支承され、この案内部によって、腕支持部材が配置されている力伝達部材の部分が、本装置が当て付けられた状態のときに利用者の胴体から離れることが防止される。この案内部は、設計的に特別に簡素な実施形態では、繊維から製作されるのが好ましい止め輪またはスリーブである。案内部は位置決め補助としての役目を果たすのが好ましい。しかし、案内部に対して相対的に力伝達部材を動かすことは必要ないのが好ましい。
【0044】
本装置は両方の腕を支持するために2つの腕支持部材を備えているのが特別に好ましく、両方の腕支持部材はそれぞれ腕ソケットを有するとともに、それぞれ力伝達部材に旋回可能なように配置されるのが好ましく、それぞれの力伝達部材の間に少なくとも1つの結合部材が配置されるのが好ましく、この結合部材によって両方の力伝達部材に引張力を印加可能であるのが好ましい。それによっても、力伝達部材がカウンタサポート部材と反対を向いている端部をもって利用者の身体から、特に胴体から、あまりに遠く離れることが防止される。
【0045】
本装置が利用者の2つの腕をサポートする装置である場合、本装置は、それぞれ1つの腕に当て付けるためのそれぞれ1つの腕ソケットを備える2つの腕支持部材と、腕支持部材のうちの少なくとも1つに対して力を印加するように構成された少なくとも1つの受動的なアクチュエータと、腕支持部材のそれぞれ1つの反力をカウンタサポート部材へ伝達するように構成された、少なくとも1つのカウンタサポート部材および少なくとも2つの力伝達部材を有する、印加されるべき力のための少なくとも1つのカウンタサポートとを有する。このケースでは、本装置は2つの受動的なアクチュエータを備えているのが好ましく、そのうちの各々が力を腕支持部材のうちの1つに対して印加するように構成される。
【0046】
両方の力伝達部材は互いに独立して、カウンタサポート部材に対して相対的に可動であるのが特別に好ましい。それにより、本装置の利用者がその両方の腕によって行うことができるさまざまな動きに追随できることが実現される。それぞれの力伝達部材の間の固定的な連結は行われないのが好ましい。したがって、両方の腕支持部材を両方の力伝達部材と結合することができる両方のジョイントは、腕の動きがそれを必要とするときには、特に互いに離れたり互いに近づくように動くことができる。
【0047】
ジョイントの旋回範囲はストッパによって制限可能であるのが好ましい。ストッパにより、力伝達部材に対して相対的な、旋回軸を中心とする腕支持部材の動きが制限されるのが好ましい。本装置は、それぞれの力伝達部材に対して相対的な旋回軸を中心とするそれぞれ1つの腕支持部材の動きを制限するために、2つのストッパを備えているのが好ましい。このようにして、たとえば鉛直線を超えた後にさまざまなコンポーネントの互いに相対的な重なり合いが起こることが防止される。
【0048】
ストッパは、動きが制限されるアクティブな位置と、位置を制限しないパッシブな位置へと移行可能であるのが好ましい。特にストッパは、アクティブな位置および/またはパッシブな位置で固定され、好ましくは係止される。このことは、本装置の収納や本装置の脱着のために、および/または本装置の利用のために、さまざまな程度の運動自由度を意図することを可能にする。高い程度の運動自由度は、できる限り小さな梱包容積で本装置を収納および/または輸送することを容易にする。低い程度の運動自由度は、たとえば本装置の脱着の際に、たとえば受動的なアクチュエータの張力によって生じることがある不都合な相対運動を回避することができる。
【0049】
ストッパは力伝達部材にある突起であるのが特別に好ましい。腕支持部材と結合されるジョイントの部分が、たとえば屹立している付加部が、意図される最大の旋回範囲の通過後に、力伝達部材のストッパに自動的に突き当たることができる。本発明の1つの実施形態では、力伝達部材はその長軸を中心として回転し、それにより突起をアクティブまたはパッシブな位置へと移行させる。ジョイントに結合されている力伝達部材の端部の意図的な回転が、ストッパの機能性をオンまたはオフすることができる。
【0050】
特に力伝達部材は、ジョイントと結合された上側の部分片と、カウンタサポート部材と連結された下側の部分片とを有し、ストッパは上側の部分片によって構成され、上側の部分片はジョイントとのさまざまな相対角度位置で固定可能なように製作される。このとき上側の部分片は、その長軸を中心として回転できないようにジョイントと連結される。しかし、上側の部分片をジョイントに対してその長軸を中心として回転した相対角度位置で取り付けるために、このような固定的な連結を解消することができる。ジョイントと上側の部分片のこのような回転した取付けにより、ジョイントに対するストッパの相対運動も行われるのが好ましい。それによりこの実施形態では、ストッパがアクティブな位置とパッシブな位置との間で動く。下側の部分片はカウンタサポート部材と回転可能に連結されるのが好ましく、上側の部分片と下側の部分片は、通常の動作のときには互いに相対回転不能に結合され、それによりカウンタサポート部材と力伝達部材の結合個所を中心とするジョイントの旋回を可能にする。ストッパをアクティブおよび/またはパッシブな位置へ移行させるために、上側の部分片をジョイントおよび下側の部分片に対して相対的に回転させることができる。そのためには、たとえばストッパをアクティブな位置および/またはパッシブな位置で摩擦接合式に固定することができる、上側の部分片と下側の部分片との間で意図される摩擦が克服されなければならない。その追加または代替として、操作可能な固定装置、たとえば取外し可能な係止装置が存在するのが好ましく、これが外された状態では上側の部分片の回転を可能にし、閉じられた状態では上側の部分片の回転を摩擦接合式および/または形状接合式にブロックする。
【0051】
上側の部分片は、アクティブな位置とパッシブな位置の間で力伝達部材の長手方向にストッパを変位させるために、下側の部分片と螺旋状に連結されるのが好ましい。上側の部分片は、たとえば下側の部分片とねじ山を介して連結され、それにより、下側の部分片に対する上側の部分片の相対回転によって、ストッパがそのアクティブな位置とパッシブな位置の間で少なくとも1つの運動成分をもって力伝達部材の長手方向へ変位することができる程度まで、力伝達部材をテレスコピック式に動かすことができる。
【0052】
特に2つの腕支持部材と2つの力伝達部材があるケースについて、これらをたとえば平面的に、たとえば十字の形態で配置することができる。複数の支持部やばね、弾性的または機械式のエネルギー蓄積器、またはその他の力伝達装置や力印加部材も利用することができる。平面的な配置によって、一方では、本装置が当て付けられた状態のときさほどかさばらず、それにより日常の作業のさほど支障にならないことが実現される。他方では、むしろ力伝達装置が利用者の胴体の動きに追随することが実現される。
【0053】
本装置は、利用者のさまざまに異なる身長に合わせて適合化可能であるのが好ましい。そのようにして、本装置を多面的かつ臨機応変に利用することができ、異なるサイズの利用者について異なる装置を留保しておかなくてよい。このとき、たとえば特に圧縮力伝達部材の形態の力伝達装置の長さを、たとえばテレスコピックロッドが利用されることによって適合化可能であってよい。これはたとえばクイックリリースまたは回転係止を備えることができ、それにより容易にロック解除し、長さに関して調節して、再びロックすることができる。このことは無段階に行われるのが好ましい。あるいは段階的な調整も可能である。たとえば係止穴が存在していてよく、所望の長さが設定されたときに、内側からばね付勢されるピンがその中で係止される。長さを調節するために、ピンをテレスコピックロッドの中に押し込んで、テレスコピックロッドの複数の部材を相互にスライドさせる。
【0054】
当然ながら、腕支持部材のスペーサ部材もこのようにして長さに関して調節することができる。この場合にも入れ子またはテレスコピックロッドを利用することができる。その代替または追加として腕ソケットが、一致補正を惹起するために、スペーサ部材の上または中で摺動するように構成されていてよい。肩に対して相対的に上腕が特定の動きをしたとき、このようなケースではスペーサ部材に対して相対的に腕ソケットの運動が生じ、それにより腕ソケットが利用者の腕と常に同じ領域で接触する。
【0055】
テレスコピックロッドの代替として、互いにねじれた螺旋またはピボット軸受を上腕で長さと方向の調整のために利用することもできる。
【0056】
力伝達部材が当て付け部材に配置されるジョイントは、それぞれの当て付け部材に固定的に配置されていてよいのが好ましい。当て付け部材がベルトまたはバンドとして構成されている場合、その長さを容易に調整することができ、それによってジョイントの位置も調整可能である。その代替または追加として、たとえばクリップとして構成されるジョイントが当て付け部材と取外し可能に結合可能であってよく、または結合されていてよい。その代替または追加として、ジョイントがレール、ゲート、またはその他のスライド輪郭に沿ってスライド可能に構成されていてよい。さらに別の選択肢は、ベルトポシェットの中への配置、たとえばスキーシューズなどで知られるいわゆるラチェットバックルを介してのジョイントの連結、ピンロック、または面ファスナーなどである。
【0057】
本装置が衣類に、特にジャケットやシャツに組み込まれていると、本装置の適合するサイズを特別に容易に判定することができる。特に当て付け部材はズボンに組み込まれるのが好ましい。その場合、利用者について適合する既製服サイズが判定されるだけであり、それにより適合するサイズの衣類を選択することができる。
【0058】
異なるサイズと異なる力の強さの利用者には、異なる大きさの力が受動的なアクチュエータのによって印加されるべきなので、印加されるべき力の強さを調整可能であると好ましいことが判明している。このことは、たとえばばね部材の、たとえばコイルばねの初期応力を、たとえば回転板やスライド機構を通じて調整可能であることによって行うことができる。弛緩したばね長さ、すなわち負荷がないときのばねの長さも調整することができる。その代替または追加として、個別に、または一緒に作動化可能であり、場合により必ずしも異なるばね定数や硬度を有するのでない、複数のばねストランドまたはばね部材が存在していてよい。受動的なアクチュエータにより印加される力が腕支持部材に、特に腕支持部材のスペーサ部材に作用するレバーアームの長さを同じく調整し、たとえば調節ねじを通じて変更することができる。同様のことはボーデンケーブルのストッパについても当てはまる。調整は機械式またはメカトロニクス式に、たとえばモータ駆動式に実行可能であってよい。メカトロニクス式の調整可能性は、たとえば印加可能な力をアダプティブに適合化可能であるべき場合、たとえば、たとえば工具などの対象物の保持によって比較的大きい補助力が必要とされ、もしくは望まれる場合に好ましい。
【0059】
ばね部材と、その他の機械式、油圧式、または空気圧式のエネルギー蓄積器とが、本装置の当て付け時に初めて応力をかけられると、特別に快適であることが判明している。これに加えて、これらを脱ぐときに応力解除をすることができる。このことは、たとえばレバー、止め輪、または取外し可能なクランプ結合によって行うことができ、これらがそれぞれのばね部材と結合されて、ばねの応力を場合により所望の程度まで可能にする。その代替または追加として、たとえばばね部材の1つの端部が配置されるスライダが存在していてよい。スライダを案内部材に沿ってスライドさせることで、ばねまたはばね部材に応力をかけ、または弛緩させることができる。特定の位置での係止と固定は、案内部材にスライダを引掛けることで行われるのが好ましい。
【0060】
腕ソケットは、腕が中に存在していない限りにおいて開いている、自動閉止式のソケットであるのが特別に好ましい。腕がソケットへ挿入されると、操作機構がリリースされて、これによりソケットが閉止する。それと同時に、このような機構によってばね部材に応力をかけることができる。
【0061】
本装置は、力伝達部材に対して相対的な腕支持部材の動きを少なくとも1つの方向で、好ましくは全面的にブロック可能であるブロック装置を備えているのが好ましい。
【0062】
それぞれの腕支持部材の間に少なくとも1つの引張部材、特に少なくとも1つの引張ばねがあるのが好ましい。それにより、両方の腕支持部材に対してそれぞれ引張力が、それぞれ他方の腕支持部材に向かう方向へと及ぼされる。それによって驚くべきことに、本装置の装着者が複雑な動きや通常外の動きをしたときでも、力伝達部材が装着者の胴体から離れないことが実現される。それにより、本装置の受け入れを悪くすることになる、本装置のコンポーネントがたとえば対象物やドアフレームなどに突き当たる危険が低減されることが実現される。さらにこのようにして、本装置の各部分と利用者の身体部分との間の完全には回避することができない不一致に基づいて腕支持部材が強く変位しすぎることが防止され、もしくは少なくとも減らすことができる。
【0063】
腕ソケットのうちの少なくとも1つが、ただし好ましくは両方の腕ソケットが、特にベルトとして構成されていてよい閉止部材を備えているのが好ましい。このような閉止部材により、腕ソケットを腕の周りで閉止可能である。ベルトはたとえば腕の周りに巻き付けられ、ベルトの1つの自由端に配置されてたとえば面ファスナーの形態で構成されていてよい取付部材によって、腕ソケットの向かい合う端部に取り付けることができる。当然ながらこれ以外の形態の取付け、たとえば留め金、たとえば押しボタンの形態の形状接合部材、またはこれ以外の閉止部材も可能である。
【0064】
閉止部材は少なくとも1つの取付部材によって、本装置の腕ソケットとは別の部材に取付可能であるのが好ましい。この別の部材は肩ベルトまたは力伝達部材、またはこれらの力伝達部材のうちの1つの外装、またはカウンタサポート部材であるのが好ましい。このようなケースで本装置の装着者が本装置を脱ごうとするとき、装着者はまず閉止部材を外して、腕ソケットから腕を出せるようにする。その瞬間に設計上、腕ソケットからの腕の取外しによって、腕により腕支持部材に対して印加される力が低減し、それに対して受動的なアクチュエータから印加される力は引き続き存在するという危険がある。こうしたケースでは、腕支持部材が上方に向かって急速に、たとえば瞬間的に動くことがあり、このことは怪我や周辺の器具もしくは物品の損傷につながりかねない。しかし腕ソケットが閉止部材によって閉止されていれば、腕ソケットから腕を出せるようにするために、閉止部材をまず外さなければならない。したがって本装置の装着者は、閉止部材の1つの端部を手で持ち、そのようにして下方に向かって作用する力を腕ソケットに対して、およびこれに伴って腕支持部材に対して、引き続き印加することができる。このケースでは閉止部材は、本装置の別の部材に、たとえば肩ベルトに配置されるのが好ましい。このようにして本装置がコントロールされながら、場合によりゆっくりと一種の「パーキング位置」へと移され、瞬間的な動きが起こることがない。
【0065】
このような種類の装置を当て付ける際には逆の手順が行われる。本装置を当て付けようとする本装置の装着者は、まず閉止部材を本装置の他の部材から外し、そのようにしてすでに力を腕支持部材に対して印加して、これを当て付けのために希望される位置へと移す。このとき腕が腕ソケットの中に入るまで、装着者が閉止部材を放すことができないのが好ましい。次いで閉止部材が腕の周りに巻かれて、本装置が確実に当て付けられる。
【0066】
カウンタサポート部材は、装着者の胴体の周りに巻付け可能である、閉止部によって閉止可能なベルトを備えているのが好ましい。このようなベルトは1つの独立した発明であり、単独で、または本装置の一部として、特に装具または義肢の一部として適用可能である。たとえばこのようなベルトは、本装置の装着者の他の身体部分の周りに、または対象物の周りにも巻付け可能であってよい。このようなベルトは、たとえば閉じられた状態のときに応力がベルトに対して作用していて、そのため、ベルトが意図せず開くとこのような応力の瞬間的でコントロール不能な解放につながることになる場合には常に好ましい。これはたとえば腰部ベルトまたは腹部ベルトである。このとき閉止部は、閉止部を開閉するために少なくとも2つのステップが必要であるように構成される。たとえば閉止部として、たとえば1つまたは2つの操作部材によって外すことができるスナップ閉止部が使用されているにすぎないと、アクチュエータにより作用する力に基づき、ベルトの各端部が互いに離れるように加速されて、周辺の物品や人間に打ちつけられる危険がある。これを防止するために閉止部が2段階式に構成される。
【0067】
閉止部を閉じるために、対応するように構成された2つの形状接合部材の形状接合を成立させる前に、ベルトの一方の端部を、他方の端部に配置された鳩目に通さなければならないのが好ましい。このとき鳩目に通される端部に、両方の形状接合部材のうちの1つがあるのが好ましい。閉止部を開くためには、まず形状接合を解消し、次いでベルトの端部のうちの1つを前述の鳩目に通さなければならず、このときやはり形状接合部材のうちの1つが鳩目に通される。
【0068】
受動的なアクチュエータは少なくとも1つの弾性部材を備え、本装置は、腕支持部材と力伝達部材の間の事前設定された角度のときに弾性部材に当接し、そのようにして腕支持部材に対して及ぼされるべき力を変化させる、少なくとも1つの当て付け部材を備えているのが好ましい。弾性部材は、力伝達部材に対して相対的に腕支持部材が動いたとき、伸長または圧縮されるので力を及ぼす。支持部材は力伝達部材に対して相対的に回転可能なように支承されるのが好ましく、弾性部材により印加される力の作用点は、相応のジョイントの回転軸に関して偏心的に支承される。したがって、力伝達部材に対して相対的に腕支持部材が旋回すると、弾性部材により印加される力の方向が変化する。このとき、好ましくはジョイントに配置される当て付け部材は、特に、事前設定された角度のときに弾性部材と接触するように配置される。その瞬間以降、作用点に対して作用する力は、作用点と弾性部材の第2の軸受点との間の方向によってではなく、作用点と、当て付け部材が弾性部材に当接する点との間の方向によって規定されるようになる。この点が可能な限り回転軸の近くに、好ましくは正確に回転軸にあれば、弾性部材の一部によって印加される力がほぼ軸方向または正確に延び、それにより腕支持部材に対してトルクが及ぼされることがなくなる。当て付け部材の位置のスライドまたは変更によって、このような力を調整することができる。
【0069】
したがって、好ましくは当て付け部材が腕支持部材および/または力伝達部材に対して相対的にスライド可能であることによる、事前設定された角度および/または印加されるべき力の変化を調整可能であるのが好ましい。このことは、たとえば当て付け部材がゲートの中でスライド可能であるとともに、たとえばねじによって固定可能であることによって行うことができる。その代替または追加として、当て付け部材が偏心器として構成されていてもよい。
【0070】
本発明は、腕支持部材が力伝達部材とジョイントによって結合されることを特徴とする、請求項16のプレアンブルに記載の装置によって、課せられた課題を解決する。好ましい実施形態では、これはカウンタサポート部材への力伝達部材のジョイント式の配置のほか、腕ソケットの動きのために必要であるただ1つのジョイントである。
【0071】
このジョイントは、本装置が当て付けられた状態のとき利用者の腕の外転および/または内転が許容されるように構成および構成されるのが好ましい。このような動きは、前頭面での腕の側方への持ち上げないし引き下ろしに相当する。このような動きが本装置によって、および特にジョイントによって損なわれることがない。
【0072】
ジョイントとカウンタサポート部材は、力伝達部材によって相互に間隔をおいているのが好ましい。本装置が当て付けられた状態のとき、ジョイントは利用者の肩領域に、特別に好ましくは肩甲骨の高さもしくはそれ以上の高さで配置されるのが好ましい。その追加または代替としてカウンタサポート部材は、利用者の骨盤領域に好ましくは利用者の骨盤の上に、さらに好ましくは利用者の腸骨稜よりも上または上方かつ股関節よりも上に配置されるのが好ましい。ジョイントとカウンタサポート部材のこのような位置決めは、ここで説明しているどの実施形態についても好ましいとみなされる。
【0073】
好ましい実施形態では、カウンタサポート部材は本装置が当て付けられた状態のとき利用者の脊柱に対して側方へオフセットされている。このようなオフセットは、脊柱の中心から見て少なくとも5センチメートルであるのが好ましい。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、1つの腕支持部材だけを備えている本装置は、右腕のサポートのためにも左腕のサポートのためにも利用できるように構成される。そのために力伝達部材を、および場合により受動的なアクチュエータも取り外すことができる。力伝達部材がカウンタサポート部材のポケットに挿入されるだけであり、そのようにして容易に取出し可能であると、このことが特別に容易に可能である。力伝達部材には、一方の腕のサポートのために必要であるその他すべてのコンポーネントが配置されるのが好ましい。したがって、これらのコンポーネントもカウンタサポート部材から取り外される。そして力伝達部材がカウンタサポート部材の別のポケットへ挿入され、またはカウンタサポート部材の別の個所に取り付けられ、そのようにして他方の腕のサポートのために利用することができる。そのために力伝達部材は、および好ましくはこれに直接的または間接的に取り付けられるすべてのコンポーネントは、右腕および左腕のために利用できるようにするために対称に構成される。
【0075】
受動的なアクチュエータは、一方の端部をもって力伝達部材またはカウンタサポート部材に配置されるとともに、他方の端部をもって腕支持部材の一部に、たとえばこれに配置された力作用レバーに作用するのが好ましい。しかしながら、受動的なアクチュエータが一方の端部をもって腕支持部材に作用するとともに、他方の端部をもって、力伝達部材と相対回転不能に結合された力伝達レバーに作用することも可能であるのは当然であり、特定の用途について好ましい。このようなケースでもアクチュエータは、サポートをする力を腕支持部材に対して印加するように構成される。
【0076】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施例について詳しく説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】本発明の第1の実施例に基づく本装置を当て付けられた状態で示す模式図である。
【
図2】当て付けられた装置の図をさまざまな位置で示す側面図である。
【
図3】当て付けられた装置の図をさまざまな位置で示す側面図である。
【
図4】当て付けられた装置の図をさまざまな位置で示す側面図である。
【
図5】当て付けられた装置の図をさまざまな位置で示す側面図である。
【
図6】当て付けられた装置の図をさまざまな位置で示す側面図である。
【
図7】当て付けられた本装置の図を上から示す平面図である。
【
図8】当て付けられた本装置の図を上から示す平面図である。
【
図9】当て付けられた本装置の図を上から示す平面図である。
【
図10】本発明の別の実施例に基づく本装置を示す模式図である。
【
図12】本発明の別の実施例に基づく本装置を示す模式図である。
【
図13】本発明の別の実施例に基づく本装置を示す模式図である。
【
図14】本発明の別の実施例に基づく本装置を示す模式図である。
【
図15】本発明の別の実施例に基づく本装置を示す模式図である。
【
図18】当て付けられた本装置を示す模式図である。
【
図21】ベルトを外すためのさまざまなステップである。
【
図24】印加される力を調整するためのさまざまな方式である。
【
図25】印加される力を調整するためのさまざまな方式である。
【
図26】印加される力を調整するためのさまざまな方式である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は、腕4をサポートする装置を装着した利用者2を示している。本装置は、スペーサ部材8と腕ソケット10とを有する腕支持部材6を備えている。腕支持部材6はその遠位端で、スリーブ12を介して腕4に配置される。
【0079】
さらに本装置は、カウンタサポート部材16と力伝達部材18とを有するカウンタサポート14を備えている。腕支持部材6のスペーサ部材8はジョイント20を介して、
図1の力伝達部材18の上側の端部に配置されている。力伝達部材はたとえばロッドの形態で構成される。図示した実施例では、力伝達部材18はテレスコピックロッドである。力伝達部材18はその下側端部をもって、図示した実施例ではボールジョイント22を介してカウンタサポート部材16に配置されている。カウンタサポート部材16は、発生する力を安定した部材へと伝達するための役目を果たし、地面、物品、または身体部分に当接することができる。図示した実施例では、カウンタサポート部材16は腰領域で利用者2に当接する腰ベルトである。調整装置24を通じて、カウンタサポート部材16の長さを調整することができる。このことは、一方では利用者2の快適性のために好ましく、他方では、利用者2の身体でのボールジョイント22の可能な限り正確な位置決めのために好ましい。
【0080】
さらに
図1に示す装置は、図示した実施例では引張ばねの形態で構成された受動的なアクチュエータ26を備えている。
図1の受動的なアクチュエータ26の下側端部は力伝達部材18に配置されるのに対して、これと向かい合う端部は腕支持部材6のスペーサ部材8のレバー部材28に作用する。受動的なアクチュエータ26によってレバー部材28に対して、およびこれに伴って腕支持部材6のスペーサ部材8に対して、重力と反対向きに作用して利用者2の腕4を支える力が印加される。
【0081】
図1に示す装置は、2つの腕支持部材6、2つのカウンタサポート14、および2つの受動的なアクチュエータ26を備えているが、わかりやすさを考慮してそのうち一方だけについて説明している。
【0082】
図2から6は、本発明の1つの実施例に基づく装置を当て付けられた状態で示しており、利用者2がそれぞれ異なる動きを行っている。
図2は利用者2がリラックスして立っていることを示し、それに対して
図3には腕を広げた利用者2を見ることができる。それぞれの腕ソケット10はスリーブ12を介して腕に固定されて、スペーサ部材8とともに腕支持部材6を形成する。腕支持部材はジョイント20を介して力伝達部材18と結合されており、それぞれの力伝達部材18が腰ベルトの形態のカウンタサポート部材16に配置されている。ジョイント20にはレバー部材28があり、これに受動的なアクチュエータ26が作用する。
【0083】
リラックスして立っている
図2には、ジョイント20が後方に向かって利用者2の身体から離れている様子を明らかに見ることができる。利用者2が
図3に示すように腕を広げると、それぞれのジョイント20が利用者2の身体に近づくように変位する。ジョイント20は、図示した実施例では肩関節の領域にある。さらに本装置は2つの肩ベルト30を備えていて、これらによって本装置が身体に保持される。これらの肩ベルトは、ジョイント20を身体に対して事前設定された間隔に保つための役目を果たすのではない。
【0084】
図4は、
図3と比較して腕をさらに持ち上げたことを示している。さらに
図4および5の腕は、利用者2からさらに前方に向かって出されている。両方のジョイント20が互いに離れており、特に、事前設定された間隔に保たれるために肩ベルト30と結合されるのでないことがわかる。ジョイント20ならびにジョイント20によって相互に結合される力伝達部材18とスペーサ部材8はむしろ外方に向かって動き、ほぼ完全に自由に可動である。本装置は複雑な新関節構造や剛直なレールシステムなしですむことがわかる。ジョイント20は
図3および4ではまだ利用者2の身体の後側で肩甲骨の領域にあるのに対して、
図5では身体の動きのみによって利用者2の横に移動しており、そのようにして動きに追随することができる。
図6は、
図5に示す位置を側面図として示している。利用者2の腕4が互いに交差しており、ジョイント20は
図6に示した図面では利用者2の肩の横にある。それと同時に、力伝達部材18がカウンタサポート部材16に配置されるボールジョイント22は変化していない。このボールジョイント22の位置は、利用者2の腕4の動きに関わりなく変わらずに保たれる。このように少ない設計コストでのこのような種類の運動自由性は、従来技術に基づく装置ではほぼ不可能である。
【0085】
図7から9は、利用者2とその腕4のさまざまな位置を平面図で示している。
図9では腕が大きく広げられており、
図7および8の位置を経て前方に向かっていき、ついには
図8のように交差される。ジョイント20は
図9から
図7を経て
図8へと外方に向かって移動していき、その際に、常に利用者2の身体の近くに密着していることがわかる
図10は、1つの実施例に基づく本装置の模式図を示している。ジョイント20を介して力伝達部材18と結合されたスペーサ部材8を見ることができる。
図2から9に示す実施例とは異なり、両方の力伝達部材の間には、図示した実施例では弾性的なベルトとして構成されたただ1つの結合部材32しかない。留め具34を介してベルトの長さを調整することができ、それにより、印加される引張力を調整可能である。
【0086】
両方の肩ベルト30が同じく図示されており、これらによって装置1を利用者2の身体に配置することができる。カウンタサポート部材は図示されていない。カウンタサポート部材は
図11に示されている。カウンタサポート部材は別のベルト36を含んでいて、このベルトは、できる限り高い装着快適性を実現するために、身体のほうを向く側にクッション38を備えている。力伝達部材18は、そのために設けられたポケット40に挿入されるとともに、その中で旋回することができ、それによりボールジョイントの機能が果たされる。このように設計的に特別に簡素な仕方で、複雑なジョイント構造を省略することができる。
【0087】
図12は、本例ではTシャツである衣服に本装置が組み込まれた模式図を示している。カウンタサポート部材16は、力伝達部材18と相応のジョイント20を介してスペーサ部材8および腕ソケット10と結合された2つの肩部材で構成されている。本装置がTシャツに組み込まれていることにより、本装置を特別に容易に着脱することができ、それにより複雑な取扱いが必要ない。それによって本装置の受け入れが向上する。
【0088】
図13は、さまざまなレールとジョイントとを有し、それによって力を腰部材44からそのために設けられた地面接触部材46へと導入することができる外骨格42を示している。
【0089】
図14は、ジョイント20の別の実施形態の模式図を示している。旋回レバー48がスペーサ部材8と力伝達部材18を結合し、
図14では力伝達部材の上側の端部が、図示しない長孔またはゲートの中でスライド可能に配置されている。そして旋回をするときに、力伝達部材18の枢支点が旋回レバー48に沿って二重矢印50の方向へスライドする。それによってレバー部材28の長さも変化し、それにより、受動的なアクチュエータ26によって印加される力も同じく変化する。
【0090】
図15は、これまでの実施形態とは異なり、受動的なアクチュエータ26がレバー部材28と力伝達部材18の間にではなく、レバー部材28とスペーサ部材8の間に配置された別の実施形態を示している。二重矢印50に沿って位置が力伝達部材18でスライド可能である逆応力部52を介して、受動的なアクチュエータ26に対して初期応力が印加される。
【0091】
図16および17は、本発明の実施例に基づく本装置によって腕に印加することができるさまざまな力推移を示している。X軸には前傾角がプロットされている。前傾とは矢状面での、本例では前方に向かっての腕の持ち上げである。0°は下方に向かって垂れた腕に相当する。
図16に見られるとおり、事前設定された角度を超えたときに初めて力が印加される。Y軸にはトルク比率がプロットされている。腕の自重と重力によって引き起こされるトルクが、本装置により印加されるトルクによって除算されている。
【0092】
さまざまな力推移をほぼ個別的に調整可能であり、図示した実施例では、さまざまに異なる程度に初期応力をかけられた、ただ1つの受動的なアクチュエータ26によって生成されている。点線は、ほぼ初期応力を有さない受動的なアクチュエータ26によって生成され、それに対して破線と実線を通じて初期応力が増していく。
【0093】
図17も同じく腕に印加される力を前傾の角度に対して示しているが、ここではアクチュエータの初期応力は変わらずに保たれている。その代わりに、受動的なアクチュエータ26がその力を支持部材6に伝達する枢支点が変位する。それに伴い、ジョイント20の回転中心からの力枢支点の距離が、点線から破線を経て実線へと増えていく。このようにして、広い角度範囲にわたって、特に約150°を超えた角度のとき、力の増大を実現できることがわかるが、
図16に示す推移の場合とは明らかに異なる推移が現れている。
【0094】
図18は、ほぼ当て付けられた状態で本装置を示している。腰ベルトの形態のカウンタサポート部材16はまだ開いており、それに対して腕ソケット10はすでに閉止部材54によって利用者2の腕4の周りで閉じられている。スペーサ部材8はジョイント20を介して、外装56の中に配置されたそれぞれの力伝達部材18に配置されている。受動的なアクチュエータ26は、弾性的なロープまたはワイヤの形態で構成されている。スペーサ部材8には、両方のスペーサ部材8およびこれに伴って両方の腕支持部材6を相互に結合する引張部材58が配置されている。さらに本装置は肩ベルト30を備えていて、その結合部材によって引張部材58が案内される。さらに
図18には、脊柱88の中心が図示されている。これは脊柱の理想化された対称軸に相当する。カウンタサポート部材16と結合される、またはその内部もしくは表面に配置される、力伝達部材18の下側端部が脊柱軸88から側方へ間隔をおいていることがわかる。したがって、このことは必然的にカウンタサポート部材16そのものにも当てはまる。
【0095】
このような実施形態の各部材が
図19に示されている。両方の力伝達部材18に、それぞれ腕支持部材6のそれぞれスペーサ部材8が、それぞれジョイント20を中心として旋回可能なように配置されている。両方のスペーサ部材8の間には、図示しないそれぞれの肩ベルトの間の結合部材を通過して延びる引張部材58がある。
【0096】
図20は、肩ベルト30のうちの1つの上側領域、ならびに腕ソケット10およびこれに配置された閉止部材54を示している。閉止部材54は、腕ソケット10を図示しない腕の周りで閉止するために
図20の下側部分に示す鳩目62と協同作用する、留め金の形態の取付部材60を備えている。肩ベルト30はこれに準じて構成された鳩目62を備えている。
図20の下側領域には、閉止部材54が開いた状態で示されている。腕ソケット10は、もはや腕の周りで完全には閉止されていない。取付部材60が肩ベルト30の鳩目62に挿入され、このようにして確実に支承することができる。閉止部材54の端部にはグリップ部材64があり、これによって閉止部材54を容易に把持可能である。
【0097】
図21は、一例として腰ベルトとして構成されているカウンタサポート部材16の閉止部66を開くときのさまざまな段階を示している。このようなベルトは他の対象物についても好ましく、単独で、または本装置の一部として、特に装具または義肢の一部として、1つの独立した発明をなす。1番上の図は、閉止部66を閉じた状態で示している。この閉止部は留め金を備えていて、その係止部材68がそのために意図される係止受容部70と形状接合式に協同作用する。2つの操作部材72を押し合わせることで、係止部材68と係止受容部70を互いに離すことができ、その様子は上から2番目の図に示されている。矢印74に沿って引張力が及ぼされる。上から3番目の図には、このような引張力によって係止部材68が傾動する様子が示されて、ついには紙面に対してほぼ垂直の位置になり、その様子が上から4番目の図に示されている。カウンタサポート部材16の両方の端部を互いにそれ以上離すことは不可能である。係止部材68がこの位置では鳩目76に挿通されないからである。そのためには、まず係止部材68を傾動させなければならず、その様子が下から2番目の図に示されている。この位置のときに初めて鳩目76を通過し、矢印74に沿って力が及ぼされたときに両方の部材を互いに離すことができ、その様子が1番下の図に示されている。それによって閉止部66に保全が導入され、これにより、操作部材72を操作するだけで完全な解除が惹起され、そのためにカウンタサポート部材16の個々の端部のはね返りや打ち返しが惹起されることが防止される。
【0098】
図22は、左側の図に再び力伝達部材18、スペーサ部材8、ならびに受動的なアクチュエータ26を示している。さらにジョイント20の領域に、
図22の左側の図では受動的なアクチュエータとして作用する弾性部材にまだ当接していない当て付け部材78がある。このことは、
図22の右側の図では相違している。受動的なアクチュエータとして作用する弾性部材に、当て付け部材78が当接していることがわかる。当て付け部材78は好ましくは正確にジョイント20の回転軸の上にあるので、弾性部材と当て付け部材78の間の接触により、弾性部材が腕支持部材6に対して、腕支持部材6に対するトルクを引き起こす力を印加することが防止される。弾性部材は当接をする当て付け部材78によって2つの部分に分かれ、これらの部分がそれぞれ力を及ぼすものの、トルクを生成することはない。これらの力は半径方向でジョイント20の回転軸のほうを向いているからである。当て付け部材78が弾性部材に当たるときの、腕支持部材6と力伝達部材18の間の角度を調整可能であるのが好ましい。腕支持部材6のさらなる時計回りの旋回は、弾性部材すなわち受動的なアクチュエータによって力が腕支持部材6に対して印加されることなく行われる。
【0099】
図23は、左側の図の状況を示している。ストッパ80が、ジョイント20を中心とする力伝達部材18に対して相対的なスペーサ部材8のさらなる旋回を妨げることになる。たとえば本装置を収納したいときや、突起80をパッシブな位置へ移行させたいとき、左から2番目の図に示すように、突起80が矢印74に沿ってスペーサ部材8との係合を外される。そして右から2番目の図に示すように、矢印50に沿って両方向へスペーサ部材8を完全に自由に力伝達部材18に対して旋回させることができ、そのようにして、一番右に示す位置へと移行させることができる。
【0100】
図24は、受動的なアクチュエータ26によって印加される調整可能な力を具体化するための1つの可能性を示している。受動的なアクチュエータは、ジョイント20に関して偏心的に配置された作用点82で、腕支持部材6のスペーサ部材8に作用する。図示した実施例ではドライバーである適当な工具によって、ジョイント20の旋回軸に対して相対的な作用点82の位置を形状接合部材を介して調節し、そのようにして偏心度を調整して、受動的なアクチュエータ26により印加される力を変更することができる。その代替または追加として存在する可能性が、
図25に示されている。この図面は両方の図に、それぞれ力伝達部材18ならびにこれに配置されたスペーサ部材8を示している。この図は
図24に示す図に対して90°だけ回転している。それぞれ2つの受動的なアクチュエータ26が存在し、これらが向かい合う作用点82でスペーサ部材8に作用する。そして力を調整したいときには、
図24に示す方策の代替または追加として、受動的なアクチュエータ26のうちの1つまたは両方を取り外して、別のものと取り替えることができる。それによっても力を調整することができる。たとえば後の時点で再び使用するために受動的なアクチュエータ26を携行したいときは、その上側の取付バックルを突起84に配置することができる。
【0101】
図26は、腕支持部材6のスペーサ部材8および力伝達部材18とともに、ジョイント20を示している。作用点82がスライド可能に構成されていることがわかる。そのために本装置はモータ86を備えていて、これにより、
図26の左側領域に示されている歯車を駆動可能であり、それによって作用点82が移動する。モータにより、システムを最小の力の状態にすることができ、そのようにしてほぼ、好ましくは完全に不作動化することができ、このことは特に本装置を着脱するときに好ましく、または、別の理由からサポートが必要ないときに好ましい。
【0102】
図27および28は
図18の図面と対応するが、それぞれの腕支持部材6の間ではなく、腕支持部材6のそれぞれ1つとカウンタサポート部材16との間に配置された2つの別の引張部材58が存在するという相違がある。これらによっても腕ソケット10が腕に保持される。さらに、これらの部材は両方の腕について互いに独立しており、それによって影響を防ぐことができる。さらに
図28では、
図18に示す引張部材58が取り外されている。
【0103】
図29には、図示している他の実施形態のように受動的なアクチュエータ26が腕支持部材6の力作用レバーと力伝達部材18またはカウンタサポート部材16との間に配置されるのでなく、力伝達部材18の力作用レバーと腕支持部材6との間に延びる本発明の実施形態が示されている。それによっても、サポートをする力が腕支持部材6に対して及ぼされる。
【符号の説明】
【0104】
2 利用者
4 腕
6 腕支持部材
8 スペーサ部材
10 腕ソケット
12 スリーブ
14 カウンタサポート
16 カウンタサポート部材
17 当て付け部材
18 力伝達部材
20 ジョイント
22 ボールジョイント
24 調整装置
26 受動的なアクチュエータ
28 レバー部材
30 肩ベルト
32 結合部材
34 留め金
36 ベルト
38 クッション
40 ポケット
42 外骨格
44 腰部材
46 地面接触部材
48 旋回レバー
50 二重矢印
52 逆応力部
54 閉止部材
56 外装
58 引張部材
60 取付部材
62 鳩目
64 グリップ部材
66 閉止部
68 係止部材
70 係止受容部
72 操作部材
74 矢印
76 鳩目
78 当て付け部材
80 突起
82 作用点
84 突起
86 モータ
88 脊柱軸
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 利用者(2)の少なくとも1つの腕(4)をサポートする装置であって、該装置は、
腕(4)に当て付けるための腕ソケット(10)を備える少なくとも1つの腕支持部材(6)と、
前記少なくとも1つの前記腕支持部材(6)に力を印加するように構成された少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)と、
前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)および前記カウンタサポート部材(16)に反力を伝達するように構成された少なくとも1つの力伝達部材(18)を備えるカウンタサポート(14)であって、印加されるべき力に対する少なくとも1つのカウンタサポート(14)とを有し、
前記装置は、利用者(2)の脊柱の運動自由度が前記装置によって制約されず、特に傾斜が可能であり、および/または腕(4)の運動自由度が前記装置によって制約されないように構成されることを特徴とする装置。
[2] 利用者(2)の少なくとも1つの腕(4)をサポートする装置であって、該装置は、
腕(4)に当て付けるための腕ソケット(10)を備える少なくとも1つの腕支持部材(6)と、
前記少なくとも1つの前記腕支持部材(6)に力を印加するように構成された少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)と、
少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)および前記カウンタサポート部材(16)に反力を伝達するように構成された少なくとも1つの力伝達部材(18)を備えるカウンタサポート(14)であって、印加されるべき力に対する少なくとも1つのカウンタサポート(14)とを有し、
前記装置は、少なくとも1つの前記腕ソケット(10)が前記少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)に関して少なくとも3つの並進的および3つの回転的な自由度で可動であることを特徴とする装置。
[3] 前記力伝達部材(18)は圧縮力伝達部材、特にロッドまたはレールを有し、これに前記腕支持部材(6)が旋回軸を中心として旋回可能なように配置されることを特徴とする、[1]または[2]に記載の装置。
[4] 前記腕支持部材(6)が前記力伝達部材(18)と結合されるジョイント(20)は前記装置が当て付けられた状態のとき肩甲骨の領域にあり、特に利用者(2)の肩甲骨にあることを特徴とする、[3]に記載の装置。
[5] 前記カウンタサポート部材(16)は利用者(2)の身体部分に、特に胴体に当て付けるための当て付け部材(17)であり、特にベルト、バンド、バンデージ、またはソケット部材であることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載の装置。
[6] 前記カウンタサポート部材(16)は利用者(2)の肩に当て付けるための少なくとも1つの肩部材(30)を有することを特徴とする、[1]から[5]のいずれか一項に記載の装置。
[7] 前記カウンタサポート部材(16)は少なくとも1つの地面接触部材(46)を有し、それにより反力を地面へ導入可能であることを特徴とする、[1]から[6]のいずれか一項に記載の装置。
[8] 前記カウンタサポート部材(16)に対して相対的な前記力伝達部材(18)の向きを利用者(2)の胴体の動きおよび/または腕(4)の動きによって変更可能であることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか一項に記載の装置。
[9] 前記圧縮力伝達部材はジョイントによって、特にボールジョイント(22)またはヒンジによって前記カウンタサポート部材(16)と、特に前記当て付け部材(17)と結合されることを特徴とする、[4]から[7]のいずれか一項に記載の装置。
[10] 前記受動的なアクチュエータ(26)は少なくとも1つの弾性部材、特にばね部材を有することを特徴とする、[1]から[9]のいずれか一項に記載の装置。
[11] 前記受動的なアクチュエータ(26)は前記カウンタサポート部材(16)に対して相対的な少なくとも1つの前記腕支持部材(6)の位置および/または向きに依存して、特に旋回軸を中心とする前記腕支持部材(6)の旋回角に依存して、力を印加するように構成され、前記受動的なアクチュエータ(26)は好ましくは偏心的に前記腕支持部材(6)に対して力を印加することを特徴とする、[1]から[10]のいずれか一項に記載の装置。
[12] 前記受動的なアクチュエータ(26)により印加される力は前記受動的なアクチュエータ(26)の変更可能な初期応力によって、および/または前記腕支持部材(6)に対する力印加の調整可能な偏心度によって変更可能であることを特徴とする、[1]から[11]のいずれか一項に記載の装置。
[13] 前記力伝達部材(18)は案内部に支承され、該案内部によって、前記腕支持部材(6)が配置されている前記力伝達部材(18)の部分が、前記装置が当て付けられた状態のときに胴体から離れることが防止されることを特徴とする、[1]から[12]のいずれか一項に記載の装置。
[14] 前記装置は両方の腕(4)を支持するために2つの腕支持部材(6)を有し、両方の前記腕支持部材(6)は好ましくはそれぞれ前記力伝達部材(18)に旋回可能なように配置され、それぞれの前記力伝達部材(18)の間に少なくとも1つの結合部材(32)が配置され、該結合部材によって両方の前記力伝達部材(18)に引張力を印加可能であり、好ましくは両方の前記力伝達部材(18)は同じ個所で前記カウンタサポート部材(16)と結合されることを特徴とする、[1]から[13]のいずれか一項に記載の装置。
[15] 前記装置はブロック装置を有し、該ブロック装置により前記力伝達部材(18)に対する前記腕支持部材(6)の相対的な動きが少なくとも1つの方向でブロック可能であり、好ましくは完全にブロック可能であることを特徴とする、[1]から[14]のいずれか一項に記載の装置。
[16] 利用者(2)の少なくとも1つの腕(4)をサポートする装置において、前記装置は、
腕(4)に当て付けるための腕ソケット(10)を備える少なくとも1つの腕支持部材(6)と、
前記少なくとも1つの前記腕支持部材(6)に力を印加するように構成された少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)と、
少なくとも1つのカウンタサポート部材(16)および前記カウンタサポート部材(16)に反力を伝達するように構成された少なくとも1つの力伝達部材(18)を備えるカウンタサポート(14)であって、印加されるべき力に対する少なくとも1つのカウンタサポート(14)とを有し、
前記腕支持部材(6)はジョイント(20)を介して前記力伝達部材(18)と結合されることを特徴とする装置。
[17] 前記装置が当て付けられた状態のとき利用者(2)の腕(4)の外転および/または内転を許容するために構成され、設計されることを特徴とする、[16]に記載の装置。
[18] 前記ジョイント(20)と前記カウンタサポート部材(16)は前記力伝達部材(18)によって相互に間隔をおき、前記装置が当て付けられた状態のとき前記ジョイント(20)は好ましくは利用者(2)の肩領域に、特に好ましくは肩甲骨の高さもしくはそれ以上の高さで配置され、前記カウンタサポート部材(16)は好ましくは利用者(2)の骨盤領域に、特に好ましくは利用者(2)の骨盤の上に、さらに好ましくは腸骨稜の上または下方かつ股関節よりも上に配置されることを特徴とする、[16]または[17]に記載の装置。
[19] 前記装置が当て付けられた状態のとき前記カウンタサポート部材(16)は利用者(2)の脊柱に対して側方にオフセットされて、好ましくは脊柱の中心から少なくとも5cmだけ間隔をおいて、配置されることを特徴とする、[1]から[18]のいずれか一項に記載の装置。
[20] 前記少なくとも1つの受動的なアクチュエータ(26)は第1の端部をもって前記力伝達部材(18)または前記カウンタサポート部材(16)に配置されるとともに第1の端部に向かい合う端部をもって前記腕支持部材(6)に、特にこれに配置された力作用レバーに配置され、または、第1の端部をもって前記腕支持部材(6)に配置されるとともに第2の端部をもって力伝達部材(18)に、特にこれに配置された力作用レバーに配置されることを特徴とする、[1]から[19]のいずれか一項に記載の装置。