(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】リクライニング介助車
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20221212BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61G5/12 706
A61G5/10 703
(21)【出願番号】P 2019570341
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(86)【国際出願番号】 US2018021372
(87)【国際公開番号】W WO2018165319
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519324835
【氏名又は名称】モビ・メディカル・エル・エル・シー
(73)【特許権者】
【識別番号】516105903
【氏名又は名称】ザ ユーエイビー リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェルニアニー,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,ロイド
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/091120(WO,A2)
【文献】米国特許第5865457(US,A)
【文献】特開2004-57562(JP,A)
【文献】特開2002-85463(JP,A)
【文献】特開2005-245872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニングし、前方に傾斜するように構成された車椅子であって、
(a)第1のピボット軸を有する基部フレームと、
(b)前記基部フレームに回転可能に取り付けられた少なくとも2つのホイールと、
(c)第1の着座位置から傾斜した着座位置まで、前記第1のピボット軸を中心として旋回するように構成された、シートアセンブリ及びフットレストアセンブリと、
(d)前記基部フレームに旋回可能に結合され、前記シートアセンブリがリクライニングするときに前記シートアセンブリと一致して、しかし前記フットレストアセンブリとは独立して上昇するように、第2のピボット軸を中心として旋回するように構成された、レッグレストアセンブリと、
を含む、車椅子。
【請求項2】
前記第2のピボット軸は、前記第1のピボット軸に近接又は一致する、請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記第1のピボット軸を定めるピボットシャフトであって、
前記シートアセンブリが、前記ピボットシャフトを中心として旋回して前方に傾斜し、かつ、
前記シートアセンブリが、前記ピボットシャフトを中心として旋回してリクライニングするように、
前記シートアセンブリが、前記ピボットシャフトに固定的に取り付けられる、
ピボットシャフトを含み、
前記ピボットシャフトが、フレーム部材とは独立して自由に旋回できるように、前記フレーム部材が、前記ピボットシャフトから前記少なくとも2つのホイールへ延び、
前記フットレストアセンブリが、前記ピボットシャフトとは独立して自由に旋回できるように、前記フットレストアセンブリが、前記ピボットシャフトに旋回可能に取り付けられ、
前記フットレストアセンブリは、前記シートアセンブリが前方に旋回するとき、前記フットレストアセンブリが床又は地面に接触する時点まで前記フットレストアセンブリが前方に旋回するまで、前記シートアセンブリと一致して旋回するように、前記シートアセンブリに付随し、
前記時点で、前記シートアセンブリを更に前方に旋回させても、前記フットレストアセンブリは、手動での介入なしに更に前方に旋回することはない、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項4】
フロントホイールを含み、
前記基部フレームに回転可能に取り付けられた前記2つのホイールは、前記基部フレームの後部に取り付けられたリアホイールであり、
シートの前縁近くに配置された前記基部フレーム上のピボットシャフトであって、
前記ピボットシャフトは、
前記シートアセンブリが、前記第1のピボット軸を中心として旋回して前方に傾斜し、又はリクライニングできる、前記第1のピボット軸を定め、
前記シートアセンブリは、前記ピボットシャフトに固定的に取り付けられている、
ピボットシャフトを含み、
前記シートアセンブリは、シート及び背もたれを定め、
前記基部フレームは、前記シートアセンブリを支持し、
前記フットレストアセンブリは、前記ピボットシャフトに取り付けられ、
前記フットレストアセンブリは、
前記ピボットシャフトとは無関係に自由に旋回して前方に傾斜し、かつ、
前記フットレストアセンブリが床又は地面に接触する程度まで前記シートアセンブリが前方に傾斜されるまで、前記シートアセンブリと一致して旋回して前方に傾斜し、前記程度の時点で、前記シートアセンブリが更に前方に傾斜しても、前記フットレストアセンブリが、手動での介入なしに旋回して更に前方に傾斜することはないように、前記シートアセンブリと物理的に結合された、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項5】
(a)前記第1のピボット軸を定め、前記基部フレームに対して旋回できるように前記基部フレームに旋回可能に取り付けられたピボットシャフトであって、
前記シートアセンブリは、前記シートアセンブリが、前記ピボットシャフトを中心として旋回して前方に傾斜し、リクライニングするように、前記ピボットシャフトに固定的に取り付けられた、
ピボットシャフトと、
(b)
フレーム部材であって、前記ピボットシャフトが、前記フレーム部材とは独立して自由に旋回できるように、前記ピボットシャフトから前記少なくとも1つのホイールへ延びる
、当該フレーム部材と、
(c)前記フットレストアセンブリが、床にも地面にも接触していないときに、前記フットレストアセンブリを前記シートアセンブリと一致して旋回させて前方に傾斜させるが、
前記フットレストアセンブリが床又は地面に接触している場合に、前記シートアセンブリが前方に傾斜するときに前記フットレストアセンブリが静止したままとなることを可能にする、
前記シートアセンブリ及び前記フットレストアセンブリに設けられた手段と、を含み、
前記フットレストアセンブリが、椅子の使用中に、前記ピボットシャフトとは独立して、前記シートアセンブリと一致して自由に旋回して前方に傾斜できるが、前記シートアセンブリがリクライニングするときは、前記シートアセンブリと一致して旋回してリクライニングしないように、
前記フットレストアセンブリが、前記ピボットシャフトに旋回可能に取り付けられている、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項6】
前記シートアセンブリは、前縁及び後縁を有するシートを含み、前記シートアセンブリは、前方に傾斜し、リクライニングするように構成され、
前記フットレストアセンブリは、上端及び下端を有する支持部材、及び前記支持部材から延び、前記支持部材の下端近くにあるフットプレートとを含み、
前記シートアセンブリと前記フットレストアセンブリは、前記前縁及び前記上端の近くで互いに旋回可能に結合され、
前記シートアセンブリ及び
前記フットレスト
アセンブリは、前記フットプレートが床よりも上に上昇した第1の着座位置から、前記フットプレートが床に接触する第2の着座位置へ、前記第1のピボット軸を中心として旋回して前方に傾斜する間、一致して旋回するように構成され、
前記シートアセンブリは、更に前記フットレストアセンブリから結合解除されて前方に傾斜し続けるように構成されている、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項7】
前記第1のピボット軸を定めるピボットシャフトを含む、請求項1に記載の車椅子。
【請求項8】
前記第2のピボット軸は、前記第1のピボット軸の前方にある、請求項1に記載の車椅子。
【請求項9】
前記第2のピボット軸は、前記シートアセンブリの前端にある、請求項1に記載の車椅子。
【請求項10】
前記レッグレストアセンブリは、右脚パッド及び左脚パッドを含む、請求項1に記載の車椅子。
【請求項11】
前記レッグレストアセンブリは、右脚パッドアームによって支持される右脚パッド、及び左脚パッドアームによって支持される左脚パッドを含み、
前記左脚パッドアーム及び前記右脚パッドアームは、それぞれ、前記第2のピボット軸に延び、前記第2のピボット軸を中心として旋回する、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項12】
前記レッグレストアセンブリは、前記シートアセンブリが前記第1の着座位置にあるとき、前記シートアセンブリとは独立して上昇するように構成されている、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項13】
前記レッグレストアセンブリは、前記シートアセンブリがリクライニングするときに前記シートアセンブリと一致して上昇することに加えて、前記シートアセンブリとは独立して上昇及び下降するように構成されている、請求項1に記載の車椅子。
【請求項14】
アームレストのペアであって、
前記アームレストが、前記基部フレームに対して平行移動し、前記基部フレームに対して第3のピボット軸を中心として旋回することを可能にするように構成された、アームレストのペアを含む、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項15】
アームレストのペアであって、
前記アームレストが、前記基部フレームに対して平行移動し、前記基部フレームに対して第3のピボット軸を中心として旋回することを可能にするように構成された、アームレストのペアを含み、
前記アームレストは、前記シートアセンブリが旋回してリクライニングするにつれて、前記車椅子の後部及び底部に向かって前記シートアセンブリと一致して平行移動するように構成された、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項16】
アームレストのペアであって、
前記アームレストが、前記基部フレームに対して平行移動し、前記基部フレームに対して第3のピボット軸を中心として旋回することを可能にするように構成された、アームレストのペアを含み、
前記アームレストは、前記シートアセンブリが旋回してリクライニングするにつれて、前記フットレスト
アセンブリの傾斜に平行な傾斜を保つように旋回するように構成された、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項17】
アームレストのペアであって、
前記アームレストが、前記基部フレームに対して平行移動することを可能にするように構成された、アームレストのペアを含み、
前記アームレストは、前記シートアセンブリが旋回してリクライニングするにつれて、前記車椅子の前記ホイールに接触するように前記シートアセンブリと一致して平行移動するように構成され、
前記接触は、前記ホイールの回転を阻止する、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項18】
前記シートアセンブリに取り付けられ、少なくとも2自由度で調節可能なヘッドレストを含む、請求項1に記載の車椅子。
【請求項19】
ヘッドレストポストを介して前記シートアセンブリに取り付けられたヘッドレストを含み、
前記ヘッドレストポストは、冠状面に略平行なヘッドレストピボット軸とのピボット連結を介して前記シートアセンブリに連結されている、
請求項1に記載の車椅子。
【請求項20】
ヘッドレストポストを介して前記シートアセンブリに取り付けられたヘッドレストを含み、
前記ヘッドレストポストは、前記シートアセンブリから前記ヘッドレストまでの距離を調節可能にする摺動連結を介して、前記シートアセンブリに連結されている、
請求項1に記載の車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年3月7日に出願された米国特許出願第15/452,454号(係属中)の継続出願である。米国特許出願第15/452,454号は、2016年6月3日に出願された米国特許出願第15/173,259号(係属中)の一部継続出願である。米国特許出願第15/173,259号は、2012年7月2日に出願された米国特許出願第13/574,267号(現在は、米国特許第9,358,166号)の継続的出願である。米国特許第9,358,166号は、2011年1月20日に出願された国際出願PCT/US11/21834号(放棄)の国内段階移行である。国際出願PCT/US11/21834号は、2010年2月15日に出願された米国仮特許出願第61/304,638号(失効)、2010年2月15日に出願された同第61/304,699号(失効)、及び2010年1月20日に出願された同第61/296,724号(失効)の優先権を援用している。上記の全ての特許出願の内容は、それらの全体が、参照により本明細書に組み込まれるが、上記の特許出願の出願経過は、参照により組み込まれない。
【背景技術】
【0002】
病院の患者を車椅子(wheelchairs)で運ぶのは、一般的なことである。そのような状況においては、患者は、通常、車椅子に座っており、しばしば付き添い人と呼ばれる操作者が、車椅子を押して患者を所望の場所に移動する。これを遂行するために、付き添い人は、しばしば、エレベータの内外で、廊下を通って、傾斜路を上り下りして、部屋の内外へ等々、椅子と患者を巧みに動かさなければならない。加えて、付き添い人は、しばしば、患者が、椅子(chair)から降り、又は椅子に着座するために補助しなければならない。残念なことに、従来の車椅子は、そのような状況においてはあまり効果的ではない。従来の車椅子は、患者の運送ではなく、自己移動性のために設計されているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の車椅子の1つの欠点は、車椅子を押すためには、車椅子のハンドルに届くように、付き添い人が、体をかがめなければならないことである。ハンドルは、通常、付き添い人にとって不自然な向きで、付き添い人に向かってまっすぐ後ろに延びている。典型的には、ハンドルは、調節可能ではない。加えて、車椅子は、歩いているとき、特に付き添い人の背が高いとき又は付き添い人が素早く移動しているときのように、より大きな歩幅が取られるときに、付き添い人の足のための十分な空間を提供しない。更に、車椅子は、患者の持ち物又は医療文書及び医療機器などの物品のための、十分な収納場所を提供しない。典型的には、提供される唯一の収納場所は、車椅子の柔軟な背もたれに統合された後部ポケットである。物品が、そのポケットの中に置かれるとき、その物品は、患者の背中を突きやすく、それによって不快な乗り心地となる。しかも、まっすぐに座る姿勢、及び頭部の支持の欠如は、物品が、後部ポケットの中に置かれていない場合であっても、より長時間にわたって、患者にとって不快になる場合がある。
【0004】
これらの欠点に加えて、患者が、従来の車椅子に着座し又は従来の車椅子から降りるために、付き添い人が補助することは、困難な場合がある。どちらの状況においても、付き添い人は、患者の体重の少なくとも一部を支えながら、体をかがめなければならない。そのような行動は、付き添い人の背中のけがの原因となる可能性がある。そのようなけがを負わない場合であっても、患者が、椅子に着座し、又は椅子から降りるために補助する行為は、付き添い人が持っていないかもしれない、かなり大きな力を必要とする場合がある。患者が、従来の車椅子に着座し、又は従来の車椅子から降りることはまた、特にこれらの患者が、年齢、病気、又はけがのために身体的に衰弱した状態にある場合に、身体的に過大な負担となる可能性もある。
【0005】
従来の車椅子の更なる欠点は、それらが使用されていないときに大きなスペースを占有し、病院の廊下に乱雑に置いたままにされやすく、人員及び病院の機器にとって邪魔になることである。更に、従来の車椅子のフットレストは、取り外し可能であり、紛失しやすい。しかも、従来の車椅子は、容易に盗まれる。
【0006】
従来の車椅子の更なる欠点は、それらが、リクライニングできないことである。長時間、まっすぐに座ることは、体幹筋(core muscles)の衰弱、脊椎損傷などがある患者にとっては、疲労させるものである可能性がある。従来の車椅子は、長時間にわたって歩くことができない、比較的頑健な患者には十分かもしれないが、実際には、車椅子は、より重度の障害を持つ患者を運ぶために使用される。実際の使用の問題として、車椅子は、単に患者を1つの場所から別の場所に運ぶために使用されるのではなく、患者は、病室から忙しい放射線センターへ連れて行かれるときなどに、しばしば治療を待ちながら車椅子で長時間待たなければならない。
【0007】
上記の欠点にかんがみて、病院の患者などの個人を、あちらこちらへと運ぶための代替手段を有することが望ましいということが、理解され得る。
【0008】
開示された介助車(transport chair)の実施形態は、以下の図を参照してよりよく理解することができる。なお、図に示されている部品は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】介助車の例示的な実施形態の前方斜視図である。
【
図7】
図1の介助車の基部フレーム、シートアセンブリ底部トレイ、及びフットレストアセンブリの下方斜視図である。
【
図8】
図1の介助車の基部フレーム、シートアセンブリ底部トレイ、及びフットレストアセンブリの上方斜視図であり、フットレストアセンブリは、基部フレームから分離して示されている。
【
図9】
図1の介助車の基部フレーム及びフットレストアセンブリの前方斜視図であり、フットレストアセンブリの、上昇した向きでのロックを示している。
【
図10A】
図1の介助車を示す、連続する側面図であり、介助車のシートアセンブリが、完全にリクライニングされた位置から完全に傾斜した(前方に傾けられた)位置まで関節でつながれている。
【
図10B】
図1の介助車を示す、連続する側面図であり、介助車のシートアセンブリが、完全にリクライニングされた位置から完全に傾斜した(前方に傾けられた)位置まで関節でつながれている。
【
図10C】
図1の介助車を示す、連続する側面図であり、介助車のシートアセンブリが、完全にリクライニングされた位置から完全に傾斜した(前方に傾けられた)位置まで関節でつながれている。
【
図10D】
図1の介助車を示す、連続する側面図であり、介助車のシートアセンブリが、完全にリクライニングされた位置から完全に傾斜した(前方に傾けられた)位置まで関節でつながれている。
【
図11A】
図1の介助車の更なる後方斜視図であるが、シートアセンブリに底部ラックが取り付けられていることを示すために、椅子が傾斜した(前方に傾けられた)位置で示されている。
【
図11B】
図1の介助車の更なる後方斜視図であるが、シートアセンブリに底部ラックが取り付けられていることを示すために、椅子が傾斜した(前方に傾けられた)位置で示されている。
【
図12】
図1の介助車の側面図であり、底部ラックが、シートアセンブリに取り付けられて示されており、フットレスト停止部材が配置されている。
【
図13】
図1に示される種類の2つの介助車の側面図であり、2つの介助車は、よりコンパクトかつ整理された収納のために入れ子にされている。
【
図14】介助車の別の例示的な実施形態の後方斜視図である。
【
図15A】直立構成の、代替バージョンの介助車の斜視図である。
【
図15B】リクライニング構成の、
図15Aに示されている代替バージョンの介助車の斜視図である。レッグレストの高さ、並びにアームレストの角形成及び位置の変更に注意せよ。
【
図16A】直立構成の、
図15Aに示されている代替バージョンの介助車の側面図である。
【
図16B】リクライニング位置の、
図15Bに示されている代替バージョンの介助車の側面図である。
【
図17A】直立構成の、
図15Aに示されている代替バージョンの介助車の上面図である。
【
図17B】リクライニング位置の、
図15Bに示されている代替バージョンの介助車の上面図である。
【
図18A】直立構成の、
図15Aに示されている代替バージョンの介助車の正面図である。
【
図18B】リクライニング位置の、
図15Bに示されている代替バージョンの介助車の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記のように、従来の車椅子は、病院の患者などの個人をあちらこちらへと運ぶために使用される場合、いくつかの欠点を有する。本明細書では、最高の快適さでそのような個人を運び、その一方で、同時に、個人及び椅子の操作者(例えば、病院の付き添い人)が必要とする労力を軽減し、それによってけがの機会を減らすために特に設計された介助車が、開示されている。いくつかの実施形態において、介助車は、基部フレームによって支持され、椅子のシートの前縁近くに位置するピボット軸(pivot axis)を中心として、基部フレームに対して旋回することができるシートアセンブリを含む。そのような旋回機能により、患者を移動させて椅子に着座させ、又は椅子から降ろすことが、はるかに容易になるだけでなく(特に脚が弱く、又はバランスの問題がある患者のために)、椅子を入れ子にすることが容易になり、椅子の収納に必要なスペースの量が、大幅に削減される。
【0011】
本開示において、特定の実施形態が、説明及び図示されている。なお、これらの実施形態は、単なる例であり、他の多くの変形が、可能である。本開示は、そのような全ての変形を含むことを意図している。
【0012】
図1~6は、介助車10の例示的な実施形態を示している。一般的に言えば、介助車10は、基部フレーム14によって支持されるシートアセンブリ12を含む。シートアセンブリ12は、中空の金属(例えば、鋼又はアルミニウム)チューブとして構成され得る複数のフレーム部材を含む、シートフレーム16を含む。この説明のために、フレーム部材は、チューブと呼ばれる。シートフレーム16は、2つの対向するサイドチューブ18と、上部クロスチューブ20、後部クロスチューブ22、及び底部支持部品又はトレイ24を含み、これらは、それぞれ2つのサイドチューブの間に延びている。以下に説明するように、少なくとも1つのシートアセンブリチューブセクション26が、底部トレイ24に取り付けられて、シートアセンブリ12の関節接合を可能にする。
【0013】
サイドチューブ18の間には、椅子10で運ばれるときにユーザー(患者)を支持する、支持要素28が延びている。いくつかの実施形態において、支持要素28は、患者の快適性を高めるために、患者の体になじみ、かつ空気循環も促進する柔軟な材料を含む。例として、支持要素28は、医用のビニール生地又はメッシュを含む。支持要素28の特定の性質に関係なく、サイドチューブ8は、椅子10の下部又はシート30と、椅子の上部又は背もたれ32との両方を形成するように、連続的であり得る。いくつかの実施形態において、背もたれ32は、105度よりも大きい、シート30との固定角度を形成する。そのような角度は、「オープンヒップアングル」として知られ、背骨を適切な位置にすることを可能にして患者の快適性を高めるだけでなく、更に介助車10に入って着座し、又は介助車10から出て降りることを容易にする。いくつかの実施形態において、サイドチューブ18は、グランジャン曲線(Grandjean curve)に基づいたシート側面を形成し、これは、あらゆる身体のサイズにおいて最高の快適さを提供するように特に設計されている。シート30及び背もたれ32は、連続的なサイドチューブ18によって形成されるものとして説明及び図示されており、従ってそれらの間の固定角度を定めるが、背もたれとシートとの間の角度の調節を可能にするために、別個のチューブ又はその他の部材が、シート及び背もたれのために提供され得る。
【0014】
図に更に示されるように、シート30及び背もたれ32にそれぞれ属する、サイドチューブ18の下部及び上部は、別々に湾曲している。具体的には、サイドチューブ18の下部は、患者の膝の屈曲に対応するためにシート30の前部で下方に湾曲しており、また患者の腰の屈曲に対応し、背もたれ32に移行するためにシートの後部で上方に湾曲している。サイドチューブ18の上部は、背もたれ32の中央下部付近でやや前方に湾曲し、背もたれの中央上部付近でやや後方に湾曲し、そして背もたれの上部付近で再びやや前方に湾曲して、背骨の自然な湾曲に対応して肩(及び小柄な患者の頭部)の支持を提供する。加えて、サイドチューブ18の上端は、支持要素28から椅子の操作者に向かって後方に延びている。
【0015】
特に
図2及び
図3を参照すると、サイドチューブ18の上端から後方に延び、サイドチューブの間で横方向に延びているのは、介助車10を移動するために椅子の操作者が使用することができる操作者ハンドル34である。いくつかの実施形態において、ハンドル34は、サイドチューブ18から後方に延びる側部35、及び側部の間に延びてハンドルのグリップを形成する、横方向延在部37とを含む。ハンドル34は、それ自体が支持要素28から後ろに延びる、サイドチューブ18から後ろに延びているので、このハンドルの位置によって、椅子の操作者が椅子10とともに歩いているときに、操作者の足及び脚のための十分なスペースを有することが、確実となる。加えて、ハンドル34は、グリップに適した横方向延在部37を組み込んでいるので、ハンドルは、車椅子のハンドルよりもはるかに握りやすい。
【0016】
ハンドル34は、サイドチューブ18に旋回可能に連結されており、操作者の身長に適合するように、及び/又はシートアセンブリ12のリクライニング角度を考慮して、角度調節することができる。図に示した実施形態において、調節機能は、通常はロック位置にあるが、ピボット接合部の側面にあるリリースボタン38が押し込まれて保持されている時には調節可能な、ピボット接合部36によって、使用可能になる。例として、ハンドル34の横方向延在部37は、60度の下方傾斜角から60度の上方傾斜角まで関節でつなぐことができ、それによって約8インチの垂直調節が、利用可能となる。
図2及び
図5に最もよく示されているように、操作者ハンドル34の横方向延在部37は、操作者が一杯に伸ばした手の自然な位置に適合するように、経済的に湾曲させることができる。
【0017】
サイドチューブ18には、対向するアームレスト40も取り付けられている。図に示した実施形態において、アームレスト40は、サイドチューブの後側に固着された取り付けブラケット42で、サイドチューブ18に取り付けられている。いくつかの実施形態において、アームレスト40は、底部、それらがシート30に略平行である略水平位置から、上部、それらが背もたれ32と略水平である略垂直位置まで、関節でつながれることができ、従って患者の邪魔にならないように、取り付けブラケット42に旋回可能に取り付けられている。いくつかの実施形態において、取り付けブラケット42は、以下に説明する、介助車10の底部ラックを受けて固定するように構成された取り付け要素44、例えばフックをそれぞれ含む。以下でも説明するように、そのような受けと固定は、介助車10を入れ子にすることを容易にする。
【0018】
図2及び
図3に最もよく示されているように、介助車10は、患者の身の回り品、医療文書及び医療機器、又は椅子の電動持ち上げ機構(提供される場合)の電源などの、様々な物品を収納するために使用できる後部収納部品46を任意に含む。後部収納部品46は、板金(例えば、鋼又はアルミニウム)又はプラスチック材料から製造でき、図に示すように、シートアセンブリ12の上部クロスチューブ20及び後部クロスチューブ22に固定することができる。図に更に示されるように、後部収納部品46は、大きなポケットの形状の上部小物入れ48、及び平らなトレイの形状の下部小物入れ50を定めることができる。
図2及び
図6に示されるように、収納部品46は、IVバッグ又はその他の部品をポールのフック54から掛けることができるように、水平の収容位置(図に示す)から垂直の拡張位置(図示せず)へと手動で拡張できる一体型のIVポール52を含むことができる。図に示した実施形態において、下部小物入れ50は、持ち上げ機構用の電源55(例えば、バッテリー)を支持する。
【0019】
上記のように、シートアセンブリ底部トレイ24は、2つのサイドチューブ18の間に延びている。より具体的には、底部トレイ24は、サイドチューブ18下部の間でシート30の下に延びている。底部トレイ24は、クロスチューブ20、22と同様に、シートアセンブリ12に構造健全性を提供する。加えて、底部トレイ24は、シート30の前縁近くに位置する、介助車10の前部ピボット軸56を中心とした、シートアセンブリ12の旋回を可能にする。特に、底部トレイ24は、水平ピボットシャフト58に固定的に取り付けられ、これと同軸である少なくとも1つの水平シートアセンブリチューブセクション26を支持する。水平ピボットシャフト58は、ピボット軸56と同軸をなし、従ってそのピボット軸と一致してそのピボット軸を定める、長さ方向中心軸を有する。いくつかの実施形態において、シャフト58は、中空の金属(例えば、鋼)チューブを含む。図に示した実施形態において、2つのシートアセンブリチューブセクション26がある。チューブセクション26は、底部トレイ24に固定的に連結され、底部トレイ24は、シートアセンブリ12を支持するため、シートアセンブリは、ピボットシャフト58とともに、ピボット軸56を中心として回転又は旋回することができる。
図10A~
図10Dを参照して以下に説明するように、シートアセンブリ12は、完全にリクライニングされた位置と完全に傾斜した(又は前方に傾けられた)位置との間の、任意の数の向きに配置することができる。図に示した実施形態において、チューブセクション26は、トレイからチューブセクションへ延びるフランジ60で、底部トレイ24に取り付けられている(
図8及び
図11Aを参照せよ)。
【0020】
底部トレイ24はまた、シートアセンブリ12の旋回も可能にする。この底部トレイは、操作者がピボット軸56を中心としてシートアセンブリを旋回させるのを補助する持ち上げ機構62のための、取り付け点として機能するからである。持ち上げ機構62の実施形態及びその動作を、以下に説明する。
【0021】
基部フレーム14は、シートフレーム16と同様に、中空の金属(例えば、鋼又はアルミニウム)チューブとして構成され得る複数のフレーム部材を含む。この説明のために、基部フレーム部材は、チューブとも呼ばれる。
図1及び
図4に最も明確に示されているように、基部フレーム14は、2つの対向する略垂直な前部チューブ64を含む。前部チューブ64の上端に位置するのは、シートアセンブリチューブセクション26と同様にピボットシャフト58に取り付けられた、水平基部フレームチューブセクション66である。しかし、シートアセンブリチューブセクション26とは異なり、基部フレームチューブセクション66は、ピボットシャフトが基部フレームチューブセクションとは独立して回転できるように、ピボットシャフト58に固定されていない。この構成により、前部チューブ64は、ピボットシャフト58を支持し、従って、シャフト58に取り付けられたシートアセンブリ12を支持する。
【0022】
前部チューブ64の下端には、フロントホイールアセンブリ68が連結されている。図に示されるように、フロントホイールアセンブリ68は、水平軸を中心として回転可能なホイール70及び垂直軸を中心として回転可能なブラケット72を含むキャスターホイールとして、それぞれ構成される。例として、ホイール70は、ゴム又は類似の性質を有するポリマーからなる、弾性のある外面を含む。
【0023】
前部チューブ64の間には、略水平な前部クロスチューブ74が延びている。前部クロスチューブ74は、前部チューブ64に構造的支持を提供し、更に、持ち上げ機構62が、旋回可能に取り付けられる、下方に延びる取り付けフランジ76で持ち上げ機構62を支持する。代替の構成は、可能であるが、持ち上げ機構62は、シートアセンブリ12の底部トレイ24に旋回可能に連結されたシャフト80を直線駆動する、外部ハウジング78の内部に含まれる内蔵型電気モーター(見えていない)を、含むことができる。モーターが駆動されてハウジング78からシャフト80が延ばされるとき、底部トレイ24は、上方に移動され、シートアセンブリ12は、ピボット軸56を中心として前方に旋回する。対照的に、モーターが駆動されてハウジング78の中にシャフト80が引き込まれるとき、底部トレイ24は、下方に移動され、シートアセンブリ12は、ピボット軸56を中心として後方に旋回する。
【0024】
図6は、持ち上げ機構62を作動させるために使用することができる、例示的なコントローラ77を示している。この図に示されているように、コントローラ77は、後部収納部品46の上部小物入れ48の内部に取り付けられ、上及び下の押しボタン79を含む。コントローラ77は、後部小物入れ48と一体化されているものとして示されているが、他の実施形態において、コントローラは、操作者が椅子10の後ろ以外の位置から持ち上げ機構62を遠隔的に作動させることを可能にする、長い(例えば、8~10フィート長の)ケーブルに連結されることができる。例えば、ケーブルは、操作者が椅子10の前から持ち上げ機構62を作動させることを可能にし、それにより、操作者は、持ち上げ機構を作動させると同時に患者を補助することができる。更にその他の実施形態において、コントローラ77は、無線コントローラとすることができる。
【0025】
前部チューブ64から後方に延びるのは、2つの対向する略水平のサイドチューブ82である。介助車10を同様の椅子と入れ子にすることができる実施形態において、サイドチューブ82は、
図5に示すような前部チューブ64からの角度で外側に延びて、そのサイドチューブの間に別の椅子がちょうど収まるための空間を提供する。
図2に最もよく示されているように、サイドチューブ82は、それぞれ、リアホイール86が取り付けられている垂直後部フランジ84で終端する。この実施形態におけるリアホイール86は、フロントホイール70よりもかなり大きいが、フロントホイールと同様に、ゴム又は類似の性質を有するポリマーからなる、弾性のある外面をそれぞれ含むことができる。各ホイール86の内側には、歯付きハブ88が、固定的に取り付けられている。ホイール86に隣接して配置されたフットペダル90によって操作されるブレーキ要素(図では見えていない)は、ハブ88の歯に係合して、各ホイール86への独立した確実な制動を提供することができる。独立した制動について説明したが、代替の実施形態において、各ホイール86に付随するブレーキ要素は、単一のフットペダル90によって同時に操作されることができる。
【0026】
シートアセンブリ12の下には、底部ラック100の形で、底部収納部品が延びている。ラック100の前端は、サイドチューブ82が前部チューブ64に連結する点の近くで、そのサイドチューブに旋回可能に取り付けられている(
図5を参照せよ)。ラックの後端は、サイドチューブ82の後部フランジ84で支持されている(サイドチューブ82の後部フランジ84に載置されている)。この構成で、底部ラック100の後端は、後部フランジ84から持ち上げられ、入れ子にする目的のために取り付け要素44に連結されることができる(
図11A及び11Bを参照せよ)。図に示した実施形態において、ラック100は、金属ワイヤーフレームとして構成されている。
【0027】
サイドチューブ82から下へ、かつサイドチューブ82の間に、U字形の中央クロスチューブ102が延びている。中央クロスチューブ102は、サイドチューブ82に構造的支持を提供し、更に、サイドチューブ82に旋回可能に取り付けられた停止部材104を支持する。以下に説明するように、停止部材104は、操作者が、最初に後方の椅子のフットレストを折りたたむことなく、椅子を不適切に入れ子にしようとしたときに、別の介助車のフットレストが持ち上げ機構62を損傷することを防ぐために使用される。
図3及び
図5に示す、格納された又は未配置の位置において、停止部材104は、停止部材104に設けられた磁石と底部ラックの金属(又は、設けられている場合には、ラックに付随する磁石)との間の磁気引力により、床又は地面から持ち上げられ、底部ラック100からつり下げられる。入れ子にすることを可能にするために、底部ラック100が、上方に持ち上げられるとき、磁気的結合が壊れ、停止部材104は、重力のもとで床又は地面に落ち、延びた又は配置された位置となり、入れ子になる可能性がある椅子のフットレストが、ブロックされることを確実にする。
【0028】
シートアセンブリ12に加えて、基部フレーム14のピボットシャフト58も、少なくとも1つのフットレストアセンブリ108を支持する。患者の両足を支持するために単一のフットレストアセンブリ108を設けることができるが、図に示した実施形態は、各足に1つの、2つのフットレストアセンブリを含む。各フットレストアセンブリ108は、ピボットシャフト58に取り付けられ、これと同軸である水平フットレストアセンブリチューブセクション110を含む。しかし、シートアセンブリチューブセクション26とは異なり、チューブセクション110は、ピボットシャフト58を中心として自由に回転できる。各フットレストアセンブリチューブセクション110から延びているのは、人間の下腿と長さが類似した脚112である。ピボット接合部114で各脚112の下端に旋回可能に取り付けられているのは、フットレスト116である。いくつかの実施形態において、フットレスト116は、それぞれ、略平面の金属プレート118を含む。各プレート118の底面には、以下に説明するように患者が椅子に着座し、又は椅子から降りるときに介助車10の更なるブレーキとして働く、弾性のある耐滑性の材料の層120が、取り付けられている。
【0029】
いくつかの実施形態において、フットレストアセンブリ108は、それが床又は地面に接触するまでシートアセンブリ12と一致して(in unison with)旋回し、その時点で、患者は、フットレストの上に立って、椅子10に着座し、又は椅子から降りることができる。図に示した実施形態において、そのような機能性は、シートアセンブリチューブセクション26及びフットレストアセンブリチューブセクション110によって定まる、キー及びスロット装置によって提供される。例示的なキー及びスロット装置は、
図7及び
図8に示されている。
図7及び
図8は、基部フレーム14(持ち上げ機構62が取り除かれている)、シートアセンブリ12の底部トレイ24、及びフットレストアセンブリ108を示している。具体的には、シートアセンブリチューブセクション26とフットレストチューブセクション108のペアリングによって定まる、キー及びスロット装置が示されている。
【0030】
図7及び
図8に示されるように、長方形及び弓形のタブの形状のキー122は、各シートアセンブリチューブセクション26の内縁から、その隣接するフットレストチューブセクション10に向かって延びている。キー122は、隣接するシートアセンブリチューブセクション26に面するフットレストチューブセクション110の、外縁に沿って設けられた、弓形スロット124の内部で受けられる。各スロット124は、上端126及び下端128を有し、キー122は、スロットに沿って移動し、少なくともスロットの上端に係合することができる。キー及びスロットのペアは、シートアセンブリ12が、所定の点を越えて(例えば、シート30が水平になる点を越えて)リクライニングされるとき、キー122がスロット124の上端126に係合するような角度で、チューブセクション26、110上に配置される。シートアセンブリのリクライニングの続行により、フットレストアセンブリ108が床又は地面から持ち上げられ、それにより、フットレストアセンブリが、シートアセンブリと一致して旋回する。シートアセンブリ12が、フットレスト116が床又は地面によって再び支持されるようになる程度まで再び前方に旋回されると、フットレストアセンブリ108は、シートアセンブリから「離れ(break)」、シートアセンブリが前方に旋回され続けても、静止したままとなる。そのように旋回し続ける間、シートアセンブリチューブセクション26のキー122は、フットレストアセンブリチューブセクション110のスロット124に沿って妨げられることなく移動する。そのような動作の例は、
図10A~
図10Dとの関係で以下に説明される。
【0031】
いくつかの実施形態において、フットレストアセンブリ108は、患者の足の一方又は両方を上昇させるために、シートアセンブリ12に対して所定の向きで独立してロックすることができる。そのようなロックの例を
図9に示す。この図は、フットレストアセンブリ108が取り付けられた、介助車10の基部フレーム14(持ち上げ機構62が取り除かれている)を示している。
図9に示されるように、左フットレストアセンブリ08は、左フットレストアセンブリチューブセクション110及びピボットシャフト58に形成された開口部に通されているロックピン130を用いて、右フットレストアセンブリ108に対して上昇した向きでロックされている。ピン130がそのように置かれると、フットレストアセンブリ108は、ピボットシャフト58に固定的に連結され、従って、同様にシャフトに固定されたシートアセンブリ12(図示せず)と一致して移動する。
【0032】
例示的な介助車10の構成は、上記で説明されており、ここでは椅子の操作が説明される。上記のように、シートアセンブリ12は、患者が椅子10に座っていることができる、完全にリクライニングされた向きと、患者が椅子に着座することも、椅子から降りることもできる、完全に傾斜した、又は前方に傾けられた向きとの間で、無限に調節可能である。
図10A~
図10Dは、完全にリクライニングされた向き(
図10A)から、完全に傾斜した、又は前方に傾けられた向き(
図10D)まで関節でつながれている、シートアセンブリ12を示している。
図10Aに示されるように、シートアセンブリ12が完全にリクライニングされた向きであるとき、シート30と背もたれ32の両方がリクライニングされている。いくつかの実施形態において、シートアセンブリ12が完全にリクライニングされているとき、シート30は、水平面との約10~30度の角度をなし、背もたれ32は、垂直面との約20~40度の角度をなす。例として、完全にリクライニングされた向きにおいて、シート30は、(水平面から)約20度の角度でリクライニングされており、背もたれ32は、(垂直面から)約30度の角度でリクライニングされている。
図10Aにも示されているように、フットレストアセンブリ108は、前述のキー及びスロット装置によって、床又は地面から持ち上げられている。
【0033】
持ち上げ機構62が作動させられてシャフト80が伸ばされると、シートアセンブリ12は、ピボット軸56を中心として前方に旋回し、シートアセンブリのリクライニング角度は、減少する。
図10Bは、持ち上げ機構62が操作されてシート30が水平の向きにされた後の、介助車を示している。この図にも示されているように、フットレストアセンブリ108は、フットレスト116が床又は地面と最初に接触する点へシートアセンブリ12が前方に旋回したときに、下方に旋回している。フットレスト116は、シート30が水平のときに最初に床又は地面に触れるものとして説明及び図示されているが、この関係は、単に例示的なものであり、フットレストは、シートが別の向きにあるときに最初に床又は地面に触れてもよいことに留意する。
【0034】
持ち上げ機構62が作動し続ける場合、
図10Cに示されるように、シートアセンブリ12が前方に旋回し続け、シート30と背もたれ32の両方が前方に傾き始める。しかし、注目すべきことに、フットレストアセンブリ108は、それらが今や床又は地面によって支持されているため、シートアセンブリ12とともに旋回し続けない。
【0035】
図10Dは、完全に傾斜した、又は前方に傾けられた向きのシートアセンブリ12を示している。この図に示されているように、フットレストアセンブリ108は、移動されていない。いくつかの実施形態において、シートアセンブリ12が完全に前方に傾けられているとき、シート30は、水平面との約-10~-30度の角度をなし、背もたれ32は、垂直面との約0~-20度の角度をなす。例として、完全に傾斜した向きにおいて、シート30は、(水平面から)約-20度の角度で前方に傾けられており、背もたれ32は、(垂直面から)約-10度の角度で前方に傾けられている。
【0036】
患者が、介助車10から降りることは、
図10Dに示されるようにシートアセンブリ12が前方に傾けられているときの方が、はるかに容易である。具体的には、シートアセンブリ12の旋回は、従来の車椅子の着座位置よりも起立に近い、より直立した位置に患者を置く。従って、立ち上がるために必要なエネルギ及び脚力は、より小さくなる。患者が、立ち上がり始めるとき、患者の体重は、フットレスト116に押しつけられる。この力は、フットレスト116を押して床又は地面と圧接させる。この力は、フットレスト116の下面に設けられた耐滑性の材料120との組み合わせで、患者が椅子を離れるときに、患者はもとより椅子10も安定させる。シートアセンブリ12の前方への傾きはまた、椅子10から降りる患者の補助を求められる人(例えば、病院の付き添い人)が必要とするエネルギ又は力も低減する。
【0037】
シートアセンブリ12の前方への傾きはまた、患者が椅子10に着座することも、より容易にする。具体的には、シート30は、
図10Dに示す向きで前方及び上方に傾けられているため、患者は、従来の車椅子であれば必要となる程度まで、倒れて(drop down)座る必要はない。これはまた、患者が椅子10に着座するために補助する個人の作業を、より少なくするためにも役立つ。
【0038】
シートアセンブリ12の旋回は、患者が介助車10に着座すること及び介助車10から降りることを容易にするだけでなく、椅子を入れ子にすることによって収納することも、容易にする。
図11Aは、椅子が完全に傾斜した(前方に傾けられた)向きのとき、又はそれに近いときの、介助車10を後方から示している。この図に示されているように、底部ラック100は、基部フレーム14のサイドチューブ82の後部フランジ84によって、依然として支持されている。ラック100がその位置にあるとき、ラック100は、入れ子にするために使われ得る、リアホイール86の間のスペースを占める。入れ子にすることが望ましい場合、ラック100は、
図11Bに示されるように、手動で上方に旋回され、シートアセンブリ12に取り付けられることができる。具体的には、ラック100は、シートアセンブリ12のサイドチューブ18に連結された取り付けブラケット42に設けられた、取り付け要素44に掛けられることができる。いくつかの実施形態において、そのような取り付けは、シートアセンブリ12が、完全に前方に傾けられた位置の直前まで、前方に傾けられたときに行われる。ラック100が取り付けられれば、シートアセンブリ12は、前方に完全に旋回されることができる。ともかく、ラック100がシートアセンブリ12に連結されれば、リアホイール86の間のスペースは、開放され、遮られない。
【0039】
底部ラック100が上方に旋回されると、
図2に示すように、フットレスト停止部材104をラックに連結する磁気的結合が壊れ、停止部材が、床又は地面に落ちて、配置された位置となる。上記のように、一旦配置されると、停止部材104は、誰かが椅子10の後ろで入れ子にしようとし得る、別の椅子のフットレスト116の通過をブロックするように配置され、従って、フットレストが持ち上げ機構62を損傷することを防ぐ。停止部材104によって、椅子10の後ろに入れ子にされることとなる別の椅子のフットレスト116は、入れ子になる前に上方に折りたたまれなければならない。
【0040】
そのような上向きの折りたたみは、
図12に示されている。具体的には、フットレスト116は、略水平の向きから略垂直の向きに移動されるように、約90度を通して旋回されている。いくつかの実施形態において、摩擦力によりフットレスト116が垂直の向きに保たれ、フットレスト116が、意図せずに水平の向きにばたんと倒れること(flopping down)を防ぐ。
【0041】
図13は、2つの介助車、前方の椅子10a及び後方の椅子10bの入れ子を示している。この図に示されているように、後方の椅子10bは、前方の椅子10aのリアホイール86の間のスペースの中に移動されているので、2つの椅子は、分離されて収納される場合よりも小さなスペースを占める。
図13に更に示されるように、後方の椅子10bのシートアセンブリ12は、前方の椅子10aのシートアセンブリ12の下のスペースを占めない。
【0042】
椅子10a、10bを
図13に示す向きに置くために、椅子の操作者は、最初に前方の椅子10aを所望の収納場所に配置して、その椅子のブレーキをかけることができる。次に、操作者は、前方の椅子10aを前方に旋回させ、前方の椅子の底部ラック100を、完全にリクライニングした場合と完全に傾斜した(前方に傾けられた)場合との間のどこかの位置の、その椅子に付随するシートアセンブリ12に取り付けることができる。底部ラック100がシートアセンブリ12に取り付けられれば、操作者は、前方の椅子10aを前方に傾けることを完了することができる。次に、操作者は、後方の椅子のフットレスト116を折りたたみ、それから、後方の椅子のフットレストが、前方の椅子の、配置された停止部材104に接触するまで、前方の椅子10aのリアホイール86の間で、後方の椅子を前方に押すことができる。その時点で、操作者は、後方の椅子10bのブレーキをかけ、望ましい場合は、後方の椅子の後ろで更なる椅子を入れ子にすることができるように、底部ラック100をシートアセンブリ12に取り付けて、シートアセンブリを完全に前方に傾けることができる。
【0043】
操作者は、逆の操作を行って、入れ子にした後方の椅子10bを、前方の椅子10aから戻すことができる。例えば、操作者は、後方の椅子0bのシートアセンブリ12を後ろに旋回させ、底部ラック100を取り外して、底部ラック100を(サイドチューブ82の後部フランジ84によって支持されて)水平の向きに置くことができるようにすることができる。シート12アセンブリがリクライニングされれば、操作者は、後方の椅子10bのブレーキを解除し、後方の椅子を前方の椅子10aから引き離すことができる。患者が、後方の椅子10bを使用する前に、操作者は、フットレスト16を展開しなければならない。必要と考えられる場合、患者が椅子10により容易に着座することを可能にするためにフットレスト116が展開された後、シートアセンブリ12は、再び前方に表題をつけられることができる。椅子を前方に傾けることによって、フットレスト116が、床又は地面に引っ掛かるため、操作者は、患者を運ぶために椅子10を使用する前に、椅子10をリクライニングしなければならない。特に、フットレスト116が、床又は地面に引っ掛からなかった場合でも、そのようなリクライニングは、やはり必要であろう。シート30及び背もたれ32を前方に傾ける角度は、シートアセンブリ12をリクライニングする前に運ぶことを試みた場合に、患者が椅子10から前方に滑って外へ落ちる可能性があるものだからである。
【0044】
図14は、別の例示的な介助車200を示している。椅子200は、介助車10と多くの点で類似している。しかし、椅子200の持ち上げ機構202は、ガスピストン持ち上げ機構として構成される。
図14の実施形態において、持ち上げ機構202は、2つのガスピストン204を含む。この2つのガスピストン204は、それぞれ、加圧ガスを含むハウジングを有する。この加圧ガスは、このハウジングからシャフト208を駆動するために使用される。持ち上げ機構202は、事務用椅子の持ち上げ機構と類似の方法で作動する。具体的には、ピストン204は、この場合フットペダル210によって、作動させられるまで、所与のシートの向きを維持する。その時点で、ガスは、ピストン204の内部を流れて、シャフト208に延伸力を加えることができる。いくつかの実施形態において、ピストン204によって提供される力は、それ自体では、患者が椅子10に着座したときにシートアセンブリ12を前方に旋回させるために、十分ではない。代わりに、操作者がハンドル34を用いてシートアセンブリ12を手動で前方に旋回させるとき、ピストン204は、操作者に持ち上げの補助を提供する。それでもやはり、ピストン204によって提供される力は、シートアセンブリ12を前方に旋回させるために操作者が必要とする労力の量を大きく軽減する。フットペダル210が解放されると、ピストン204は、シートアセンブリ12がどのような向きにある場合でもこれを保つ。
【0045】
図15~
図18に示されている、車椅子300の、代替の一般的な実施形態は、前傾機能(これ以降、「前方傾斜」又は単に「傾斜」と呼ばれる)を有することに加え、リクライニングが可能である。リクライニングチェア300のいくつかの実施形態において、シートアセンブリ12は、上記で説明されたピボットシャフト58であってよい、同じピボット軸56を中心として、リクライニングも前方傾斜もする。患者にとって快適で人間工学的に有利なリクライニング姿勢を可能にするために、複数の追加的な特徴が存在してもよい。
【0046】
例えば、患者がリクライニングしているときに患者の脚を上げておくため、1つ又は複数の特徴が存在してもよい。そのような特徴の1つは、フットレストアセンブリ108とは別個のレッグレストアセンブリ302である。フットレストは、患者がリクライニングするときにそのフットレストが上昇するように設計することができるが、そのようなアプローチにはいくつかの問題がある。フットレストは、患者の足が安定して載るためには角度が高すぎるものであり、患者の足が滑り落ちる傾向がある(フットレストの向きを変えるための何らかの複雑な機構がない場合)。フットレストは、患者の前へ突出するものであり、前方への運動又は回転の間に、椅子の前にある物体に衝突する可能性がある。リクライニング姿勢において、足は、患者の脚の残りの部分を支持するために良好な配置がされていない。独立して関節接合されるレッグレストには、これらの問題の1つもない。
【0047】
従って、車椅子300の実施形態は、フットレストアセンブリ108とは独立して旋回し上昇するように構成され、シートアセンブリ12が旋回してリクライニングするにつれてシートアセンブリ12と一致して旋回し上昇するように構成された、レッグレストアセンブリ302を含んでよい。車椅子300が直立した位置にあるとき、レッグレストアセンブリ302は、上昇していない位置に格納される(
図15A及び
図16Aを参照せよ)。レッグレストアセンブリ302は、当技術分野で知られているいくつかの種類のアクチュエータのいずれによって上昇してもよい。レッグレストアセンブリ302は、患者の脚が、略水平の位置まで上げられると、上昇を停止するように構成されてよい。レッグレストアセンブリ302のいくつかの実施形態は、シートアセンブリ12とは独立して上昇する機能を有し、まっすぐに座っている患者が、1つ又は複数の脚を休めることを可能にしてよい。
図15~
図18に示されたレッグレストアセンブリ302の実施形態は、2つのレッグレストパッド304(左及び右)を有するものとして示されているが、レッグレストアセンブリ302は、両方の脚が載る単一のパッド304を有し得ることが考慮される。図に示されているように2つのパッド304を有するレッグレスト302の実施形態において、レッグレストアセンブリ302は、各脚が互いに独立して上昇することを可能にするように構成され得る。これは、患者が、片足にギプス又は装具を使用していてひざを曲げることができないときなど、様々な状況において有用となり得る。
【0048】
シートアセンブリ12がリクライニングするにつれて、レッグレストアセンブリ302がシートアセンブリ12と一致して上昇するとき、レッグレストアセンブリ302の上昇の程度は、シートアセンブリ12のリクライニングの程度の関数であってよい。そのような構成は、脚を不快な可能性のある着座位置に置いたままにすることなく、患者の背中をリクライニングすることを可能にするという利点を有する。レッグレストアセンブリ302はまた、例えば患者が直立して座っている間、けがをした脚を支持するために、シートアセンブリ12のリクライニングとは独立して上昇する能力を有してもよい。
【0049】
図に示した実施形態において、レッグレストアセンブリ302は、シートアセンブリのピボットシャフト58のちょうど前の、シートの前縁にある軸306を中心として旋回する。図に示した実施形態における軸306は、軸56に近接している。ここで、フットレストアセンブリ108及びシートアセンブリ12は、軸56を中心として旋回する。更なる実施形態において、レッグレストアセンブリ302、フットレストアセンブリ108、及びシートアセンブリ12は、共通の軸(図示せず)を中心として旋回する。図に示すように、レッグレストピボット軸306は、左右レッグパッド支持部材308と交差する。ここで、左右レッグパッド支持部材308は、接合されている。他の可能な実施形態において、レッグレストアセンブリ302は、潜在的に、ピボットシャフト58をシートアセンブリ12と共有するものであり得る。
【0050】
リクライニングチェア300の別の可能な特徴は、関節接合されるアームレスト310のペアである。患者がリクライニングするとき、患者の肩は、下方に平行移動し、それによって腕の向きが変わる。これにより、腕が、固定されたアームレストに肘が接触しないような位置へ、引っ張られる可能性がある。これは、不快になり得るだけでなく、患者にIVラインが確保されている場合、この位置によって、潜在的に、IVラインに望ましくない張力がかかり、又は皮下注射針が周囲の組織を損傷する可能性がある。図に示した車椅子300の実施形態において、アームレスト310は、アームレスト310の後ろ近くに位置するピボット軸312を中心として旋回し、シートアセンブリ12がリクライニングするときに、リアホイール86に向かって平行移動する。このようにして、患者の腕は、アームレスト310によって支持されたままとなる。アームレスト310が旋回及び平行移動するときにフットレストアセンブリ108と平行のままとなるように、アームレスト310を旋回させることにより、優れた人間工学的な位置調整を達成することができる。車椅子300の更なる実施形態において、アームレスト310は、アームレスト310とリアホイール86(
図15B及び
図16Bに示す)が接触するまで、リアホイール86に向かって平行移動する。そのような接触は、ホイール86の転がりを制限又は阻止する効果を有し得る。それは、患者がリクライニング姿勢になっているときに車椅子300の移動をロックするために機能し得る。
【0051】
図15~
図18に示されているリクライニングチェア300の別の可能な特徴は、ヘッドレスト314である。従来の車椅子は、頭部の支持を提供しない。ヘッドレストの欠如により、首にけががある患者又は首の筋肉が弱い患者には従来の車椅子を使用することができず、車輪付き担架又は同様の運ぶための手段を用いることが必要となる。加えて、頭部をまっすぐな姿勢に保つことができる患者であっても、車椅子にいる時間が長引けば疲れる可能性があるが、患者は、その頭部が一方の側に倒れなければ従来の車椅子では眠ることができないし、その頭部が一方の側に倒れることによって、患者は、しばしば、目を覚ます(こうして睡眠が不可能となる)。ヘッドレスト314は、体の大きさがそれぞれ異なる患者の必要を満たすように、調節可能に構成されてよい。図に示した実施形態において示すように、その位置は、患者の頭部の後ろの軸318を中心として回転し、軸318に向かって又は軸318から遠ざかるように平行移動するヘッドレスト支持アーム316を用いて調節可能であってよい。
図16A及び
図16Bに示されるように、ヘッドレスト314はまた、略弓形の側面320を有してもよい。これにより、リクライニングの姿勢において、真っ直ぐの姿勢におけるのと同じ向きに頭部が保たれる。
【0052】
上記の開示において、様々な実施形態が説明された。なお、これらの実施形態は、単なる例であり、他の多くの変形が、可能である。そのような変形の1つにおいて、モーターを椅子に追加してリアホイールを駆動することができる。そのような実施形態において、患者は、自分で運転することができる。別の例において、持ち上げ機構は、空気圧でシートアセンブリを上下させる圧縮機を含むことができる。更なる例において、椅子は、車輪を含まない定置型の椅子であり得る。そのような場合において、椅子は、座って、又は立って補助することが必要な他の状況で使用され得る。例えば、椅子は、医院又は歯科医院で使用され得る。他の多くの変更が可能であり、そのような修正は全て、本開示の範囲内であることが意図されている。