(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】分子を経膜送達するための化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20221212BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221212BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20221212BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221212BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20221212BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221212BHJP
C07J 9/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K31/7088
A61K31/711
A61K31/713
A61K38/02
A61K48/00
A61P43/00 105
C07J9/00
(21)【出願番号】P 2019572458
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(86)【国際出願番号】 IL2018050714
(87)【国際公開番号】W WO2019008574
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505467867
【氏名又は名称】アポセンス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】APOSENSE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジヴ、イーラン
(72)【発明者】
【氏名】ドュブロフスキー、ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】グリムベルグ、ハギット
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/029664(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0035362(US,A1)
【文献】特表2017-509710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61K 48/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式(I)に示す構造を有するコンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは前記塩の溶媒和物若しくは水和物。
【化1】
ここで、
Dは、生体膜を横断して送達される薬物であり、低分子薬物、ペプチド、タンパク質、及び、天然の若しくは修飾された、一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)からなる群より選択され;
y、z、及びwは、互いに独立して、0、1、2、3、及び4からなる群より選択される整数であり、y、z、w、またはそれらの任意の組み合わせが0である場合は、そのE部分がヌルであることを意味し;y、z、及びwの少なくとも1つは0ではなく;
E、E´、及びE´´部分は、互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、
下記の化学式(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)若しくは(Vc´´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレートであり;
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
前記E、E´、またはE´´部分は、1つまたは2つの結合点を介して1つのD部分に結合され得る。
【請求項2】
薬学的組成物であって、
請求項
1に記載のコンジュゲートと、
薬学的に許容される塩または担体とを含む、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年7月4日に出願された米国特許出願第15/641、251号の一部継続出願であるところの、2017年7月28日に出願された米国特許出願第15/662、665号の一部継続出願であるところの、2017年8月17日に出願された米国特許出願第15/679、192号の一部継続出願である。これらの米国特許出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、化合物及び高分子を含む化合物及びコンジュゲート、送達システム、並びに、分子及び高分子をインビトロ及びインビボで使用される細胞内に生体膜を横断して送達する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
「オリゴヌクレオチド薬物(OD:Oligonucleotide Drug)」は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの配列を含む高分子薬物である。ODは、多くの医学的疾患の革新的な医学的処置に有望である。ODは、当技術分野で既知のように、一本鎖若しくは二本鎖の、天然の若しくは修飾されたRNA分子若しくはDNA分子、またはそれらの組み合わせである。ODの例は、とりわけ、siRNA(低分子干渉RNA)、ダイサー酵素のsiRNA基質(dsiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)薬物、または、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)として機能するように設計されたDNA配列であり、これらは全て、標的遺伝子の発現の下方制御に活性がある。
【0004】
臨床診療でのODの実施における大きな課題は、ODの血漿タンパク質、特にアルブミンへの結合の最適化に関連している。修飾されていない(「裸の」)オリゴヌクレオチドは、血漿タンパク質に有意に結合しない。対照的に、ODの経膜送達にしばしば必要とされる修飾である、コレステロールなどの親油性部分を付加することによるODの修飾は、血漿タンパク質への(主にアルブミンへの)強力な結合をもたらす。ODが血漿タンパク質に強く結合すると、標的細胞の膜へのODの結合能力が阻害され、それにより、細胞へのODの効果的な取り込みが阻害され、ODの効力の欠如につながる恐れがある。現在、ODのための多くの送達システムはこの課題を克服することができず、そのため、ODの生物活性を保持するためには、無血清条件を必要とする。しかし、無血清条件は、インビトロでの組織培養には適用できるが、ODが必然的に血漿タンパク質と密接に接触することとなるインビボでは実行不可能である。したがって、血漿タンパク質の存在下または非存在下の両方において、遺伝学的薬物を細胞内に疎水性のリン脂質膜を横断して送達することができるODの送達システムが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、オリゴヌクレオチド薬物(OD)と結合(conjugated)したときに、ODを細胞内にリン脂質膜を横断して送達することができ、かつ、無血清条件[(S-)条件]及び血清存在条件[(S+)条件]の両方において遺伝子サイレンシングの活性がある分子送達システム[化学式(II)に示す(MDS:Molecular Delivery System)]を提供する。実施例6において例示するように、同様の構造を有するがMDSを欠いている化学物質は、(例えば遺伝子サイレンシングにおいて)完全に生物学的に不活性であるか、あるいは、(S-)条件下では活性があるが、(S+)条件下では活性が低いかまたは不活性である。
【0006】
本発明の一実施形態では、下記の化学式(I)に示す構造を有するコンジュゲート(conjugate)、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物が提供される。
【0007】
【0008】
ここで、
Dは、生体膜を横断して送達される薬物であり、低分子薬物、ペプチド、タンパク質、及び、天然の若しくは修飾された、一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)からなる群より選択され;
y、z、及びwは、互いに独立して、0、1、2、3、及び4からなる群より選択される整数であり、y、z、w、またはそれらの任意の組み合わせが0である場合は、そのE部分がヌルであることを意味し;y、z、及びwの少なくとも1つは0ではなく;
E、E´、及びE´´部分は、互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、下記の化学式(II)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0009】
【0010】
ここで、
U及びQは、互いに独立して、一方はヌルであり、他方は、-NH-、-N(CH3)-、-N(CH2-CH3)-、-NH-(CH2)2-NH-、及び-N(CH3)-(CH2)2-N(CH3)-からなる群より選択され;
G1、G2、G3、及びG4部分は、互いに独立して、水素、メチル、及びエチルからなる群より選択され;G1、G2、G3、及びG4部分は、互いに同一であっても異なっていてもよく;G1、G2、G3、及びG4部分の少なくとも2つは水素原子であり;
Zは、ヌル、エーテル、エステル、アミン、及びアミドからなる群より選択され;
a、b、c、及びdは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、及び7からなる群より選択される整数であり、0=ヌルであり;a、b、c、及びdは、互いに同一であっても異なっていてもよく;
e及びfは、互いに独立して、1、2、及び3からなる群より選択される整数であり;e及びfは、互いに同一であっても異なっていてもよく;
aまたはbが≧2である場合、その炭化水素鎖は、飽和であって非飽和であってもよく;
Wは、ヌル、ヒドロキシル、ジ-ヒドロキシル、天然ヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、及び下記の化学式(II´)に示す構造を有する化合物からなる群より選択される。
【0011】
【0012】
ここで、
Jは、ヌル、-CH2-、第二級アミン、第三級アミン、及び酸素からなる群より選択され;
化学式(II´)の部分は、ヌル;水素;D;本明細書で定義される保護基(例えば、アルコールの保護基);リン酸基、硫酸基、またはカルボキシル基;及び固体支持体からなる群より選択されるいずれかに結合され;
E、E´、またはE´´部分は、1つまたは2つの結合点を介して1つのD部分に結合される。
【0013】
本発明の一実施形態では、Wは、天然のまたは修飾された、アデニン、シトシン、チミン、またはウラシルから選択されるヌクレオシドであり、糖部分は、リボースまたは2´-デオキシリボースである。
【0014】
本発明の別の実施形態では、Wは、2´-デオキシウリジンである。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態では、Wは、上記の化学式(II´)に示した構造を有し、Jは、-CH2-である。
【0016】
本発明の一実施形態では、E、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(III)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0017】
【0018】
ここで、
U、Q、Z、G3、G4、a、b、c、d、e、f、及びWは、上記の化学式(II)において定義したとおりである。
【0019】
本発明の一実施形態では、E、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(IVb)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0020】
【0021】
ここで、
U、Q、G3、G4、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(III)において定義したとおりである。
【0022】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVb)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vb´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0023】
【0024】
上記の化学式(Vb´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-18と称される。この化合物は、ホスホロアミダイト基と結合した場合には、Apo-Si-K-18前駆体と称される。
【0025】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVb)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vb´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0026】
【0027】
上記の化学式(Vb´´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-13と称される。この化合物は、ホスホロアミダイト基と結合した場合には、Apo-Si-K-13前駆体と称される。
【0028】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(III)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(IVc)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0029】
【0030】
ここで、
U、Q、G3、G4、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(III)において定義したとおりであり;
Jは、ヌル、-CH2-、及び酸素からなる群より選択される。
【0031】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVc)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vc´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0032】
【0033】
上記の化学式(Vc´´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-43と称される。この化合物は、ホスホロアミダイト基と結合した場合には、Apo-Si-K-43前駆体と称される。
【0034】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVc)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vc´´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0035】
【0036】
上記の化学式(Vc´´´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-63と称される。この化合物は、ホスホロアミダイト基と結合した場合には、Apo-Si-K-63前駆体と称される。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書で定義されるように、1以上のアルコールの保護基に結合された、本発明のE、E´、またはE´´部分を含む前駆体が提供される。保護基は、E、E´、またはE´´部分のカーゴ薬物(例えば、高分子薬物)への結合中に除去または修飾される。
【0038】
一実施形態では、下記の化学式(IVaP)に示す構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物を含む前駆体分子が提供される。
【0039】
【0040】
Z、U、Q、G3、G4、a、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(IVc)において定義したとおりである。この前駆体分子は、オリゴヌクレオチド鎖の5´末端または3´末端のいずれか、あるいはオリゴヌクレオチド鎖内の内部位置において、E、E´またはE´´部分と結合する働きをする。
【0041】
別の実施形態では、上記の化学式(IVaP)の前駆体分子は、下記の化学式(PP-2)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0042】
【0043】
この前駆体分子は、E、E´またはE´´部分を、5´末端または3´末端のいずれか、あるいはオリゴヌクレオチド鎖内の内部位置に結合させる役割を果たす。上記の化学式(IVaP)に示すこの前駆体分子は、Apo-Si-K-43前駆体と称される。
【0044】
別の実施形態では、上記の化学式(IVcP)の前駆体分子は、下記の化学式(PP-3)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0045】
【0046】
上記の化学式(PP-3)に示すこの前駆体分子は、Apo-Si-K-63前駆体と称される。
【0047】
本明細書の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´´´)に示したE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-12)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0048】
【0049】
上記の化学式(Cn-12)に示すこの前駆体分子は、Apo-Si-K-63-Bと称される。
【0050】
本明細書の一実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´´´)に示したE及びE´部分との結合を有し、かつ、化学式(Vc´´´)に示したE´´部分が、オリゴヌクレオチド鎖に沿った内部位置に結合されたコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-14)に示す構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物を含む。
【0051】
【0052】
上記の化学式(Cn-12)に示すこの前駆体分子は、Apo-Si-K-63-Cと称される。
【0053】
本発明の一実施形態では、siRNAやダイサー酵素の基質(dsiRNA)などのRNA二本鎖を含むコンジュゲートであって、RNA二本鎖が、27~25または27~24のヌクレオチド長であり、その両端において、化学式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、または(Vc´´´)のいずれかに示した構造をそれぞれが有するE、E´、またはE´´部分と結合するコンジュゲートが提供される。
【0054】
本発明の別の実施形態では、上記したコンジュゲートであって、次の(1)または(2)のいずれかのE、E´またはE´´部分を含むコンジュゲートが提供される。(1)RNA鎖の末端に位置する2つのE、E´、またはE´´部分。(2)RNA鎖の末端に位置するが、siRNA二本鎖内の内部位置にも位置する3以上のE、E´、またはE´´部分。E、E´、またはE´´部分は、それぞれ、化学式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、または(Vc´´´)のいずれかに示す構造を有する。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態は、インビトロまたはインビボで、薬物を細胞に生体膜を横断して送達するための方法であって、細胞を、本明細書に記載したコンジュゲートに接触させるステップを含む、方法に関する。
【0056】
別の実施形態は、医学的疾患を治療する方法であって、本明細書に記載されたコンジュゲートを含む薬学的組成物の治療有効量を、治療を必要とする患者に投与するステップを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本特許または本出願は、少なくとも1つのカラー図面を含んでいる。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開の写しは、要求し必要な手数料を支払うことで、特許商標庁により提供される。
【0058】
【
図1A】それぞれsiRNAの鎖の5´末端に位置する2つのE部分を含む本発明のコンジュゲートを示す。青及び茶色は、siRNAのRNAニ本鎖のそれぞれのオリゴヌクレオチド鎖を示している。黄色の原子は酸化還元感受性モジュールの硫黄原子であり、細胞質内の還元条件で分離し、MDSからRNAを放出して遺伝子サイレンシング活性を発揮するように設計されている。灰色及び白の原子は、それぞれ炭素原子及び水素原子である。赤及び緑の原子は、それぞれ酸素及びフッ素の原子である。
【
図1B】膜に到達したときのコンジュゲートを示し、siRNAは、膜貫通送達プロセスの前に、膜表面に対して平行になっている。青及び茶色は、siRNAのRNAニ本鎖のそれぞれのオリゴヌクレオチド鎖を示している。黄色の原子は酸化還元感受性モジュールの硫黄原子であり、細胞質内の還元条件で分離し、MDSからRNAを放出して遺伝子サイレンシング活性を発揮するように設計されている。灰色及び白の原子は、それぞれ炭素原子及び水素原子である。赤及び緑の原子は、それぞれ酸素及びフッ素の原子である。
【
図2A】化学式(V´)による本発明のE部分の結合様式を例示し、化学式(Va´)によるE部分が内部位置で連結されているRNA鎖を示す。
【
図2B】細胞質内で一般的であるような還元条件における、結果的なRNA薬物の放出を伴う、化学式(Va´)によるE部分のジスルフィド基の酸化還元媒介切断を例示する。
【
図3A】本発明のコンジュゲートの作用機序(MOA)を例示している。化学式(Cn-3)によるコンジュゲートが例示され、RNA二本鎖は25/27ヌクレオチド長のダイサー基質であり、リン酸基がパッセンジャー鎖の5´末端に結合している。細胞質において一般的な還元条件でのE、E´、E´´部分の切断及び除去を示す。
【
図3B】RNA二本鎖とダイサーエンドヌクレアーゼとの相互作用を示し、二本鎖切断を引き起こし、21/21RNA二本鎖を残し、E部分の1つの残りの残基がパッセンジャー鎖の5´末端に結合している。
【
図3C】酵素ヘリカーゼ(すなわち、RNA鎖を分離することができる細胞質酵素)によるセンス鎖の除去を示す。
【
図3D】
図3Cのイベントにより、2番目のE部分の断端の残基が除去され、インタクトのアンチセンス鎖が解放され、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に侵入し、所望の遺伝子サイレンシングが誘導される。
【
図4A】本発明のコンジュゲートの作用機序(MOA)を例示している。化学式(Cn-8)によるコンジュゲートが例示され、RNA二本鎖は25/27ヌクレオチド長のダイサー基質であり、リン酸基がパッセンジャー鎖の5´末端に結合している。細胞質において一般的な還元条件でのE、E´、E´´部分の切断及び除去を示す。
【
図4B】RNA二本鎖とダイサーエンドヌクレアーゼとの相互作用を示し、二本鎖切断を引き起こし、21/21RNA二本鎖を残し、E部分の1つの残りの残基がパッセンジャー鎖の5´末端に結合している。
【
図4C】酵素ヘリカーゼ(すなわち、RNA鎖を分離することができる細胞質酵素)によるセンス鎖の除去を示す。
【
図4D】
図4Cのイベントにより、2番目のE部分の断端の残基が除去され、インタクトのアンチセンス鎖が解放され、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に侵入し、所望の遺伝子サイレンシングが誘導される。
【
図5】それぞれがEGFP遺伝子のサイレンシングに特異的な、1つの25ヌクレオチド長鎖と1つの27ヌクレオチド長鎖とからなるRNA二本鎖のゲル電気泳動を示す(実施例6に記載)。電気泳動は、水(レーンA)、または10%ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下(レーンB)のいずれかで溶解したコンジュゲートで行った。これらの二本鎖は、非共役であるか(レーン1)、2つのコントロールApo-Si-S-1のE部分に共役しているか(レーン2)、本発明の2つのApo-Si-K-13のE部分に共役しているか(レーン3)、または本発明の2つのApo-Si-K-18のE部分に共役している(レーン4)。図示されているように、電気泳動中、Apo-Si-S-1コンジュゲートはアルブミンへの強い結合を示し、したがって無アルブミン画分を有していなかったが、Apo-Si-K-13及びApo-Si-K-18コンジュゲートはアルブミン結合画分(矢印#1)と、無アルブミン画分(矢印#2)との両方を示した。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、コンジュゲート(conjugate)及びその前駆体であって、オリゴヌクレオチド薬物(OD)などの高分子薬物と結合したときに、該薬物を細胞内にリン脂質生体膜を横断して送達し、無血清条件下及び血漿タンパク質存在下の両方において生物学的性能を発揮させることができる分子送達システム(MDS)を構成するコンジュゲート及びその前駆体に関する。この分子送達システムは、遺伝学的薬物などの高分子薬物、例えば、siRNAまたはdsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、または治療用タンパク質の膜貫通送達(経膜送達)を可能にする。血漿タンパク質存在下での活性は、本発明のコンジュゲートをインビボで使用し、生きている動物またはヒト対象に対して局所投与または全身投与(例えば静脈注射によって)するために、特に重要である。
【0060】
本発明の一実施形態では、下記の化学式(I)に示す構造を有するコンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物が提供される。
【0061】
【0062】
ここで、
Dは、生体膜を横断して送達される薬物(すなわち、カーゴ薬物)であり、低分子薬物、ペプチド、タンパク質、及び、天然の若しくは修飾された、一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)からなる群より選択され;
y、z、及びwは、互いに独立して、0、1、2、3、及び4からなる群より選択される整数であり、y、z、w、またはそれらの任意の組み合わせが0である場合は、そのE部分がヌルであることを意味し;y、z、及びwの少なくとも1つは0ではなく;
E、E´、及びE´´部分は、互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、下記の化学式(II)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0063】
【0064】
ここで、
U及びQは、互いに独立して、一方はヌルであり、他方は、-NH-、-N(CH3)-、-N(CH2-CH3)-、-NH-(CH2)2-NH-、及び-N(CH3)-(CH2)2-N(CH3)-からなる群より選択され;
G1、G2、G3、及びG4部分は、互いに独立して、水素、メチル、及びエチルからなる群より選択され;G1、G2、G3、及びG4部分は、互いに同一であっても異なっていてもよく;G1、G2、G3、及びG4部分の少なくとも2つは水素原子であり;
Zは、ヌル、エーテル、エステル、アミン、及びアミドからなる群より選択され;
a、b、c、及びdは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、及び7からなる群より選択される整数であり、0=ヌルであり;a、b、c、及びdは、互いに同一であっても異なっていてもよく;
e及びfは、互いに独立して、1、2、及び3からなる群より選択される整数であり;e及びfは、互いに同一であっても異なっていてもよく;
aまたはbが≧2である場合、その炭化水素鎖は、飽和であって非飽和であってもよく;
Wは、ヌル、ヒドロキシル、ジ-ヒドロキシル、天然ヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、及び下記の化学式(II´)に示す構造を有する化合物からなる群より選択される。
【0065】
【0066】
ここで、
Jは、ヌル、-CH2-、第二級アミン、第三級アミン、及び酸素からなる群より選択され;
上記の化学式(II´)の部分は、ヌル;水素;D;本明細書で定義される保護基(例えば、アルコールの保護基);リン酸基、硫酸基、またはカルボキシル基;及び固体支持体からなる群より選択されるいずれかに結合され;
E、E´、またはE´´部分は、1つまたは2つの結合点を介して1つのD部分に結合される。
【0067】
本発明の一実施形態では、Wは、天然のまたは修飾された、アデニン、シトシン、チミン、またはウラシルから選択されるヌクレオシドであり、糖部分は、リボースまたは2´-デオキシリボースである。
【0068】
本発明の別の実施形態では、Wは、2´-デオキシウリジンである。本発明のさらの別の実施形態では、Wは、上記の化学式(II´)に示した構造を有し、Jは、-CH2-である。
【0069】
(S+)条件と(S-)条件との両方において、本発明のコンジュゲートの膜貫通送達を可能にすることにおける、上記の化学式(II)に示した化学部分の役割は、実施例6に例示される。この実施例は、上記の化学式(II)の構造に適合するE部分が、細胞膜を横断しての細胞内への送達、及び、例えば遺伝子サイレンシングなどの生物学的作用の誘導の両方において、それに関連するコンジュゲートのロバストな性能を発揮することを示す。この性能は、(S-)条件と(S+)条件との両方で観察される。実施例6は、本発明の2つのコンジュゲートを説明する。この2つのコンジュゲートは両方とも、上記の化学式(II)に適合するE部分を有し、E部分は、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の遺伝子の発現をサイレンシングするように設計された二本鎖であるダイサー基質に結合されている。この2つのコンジュゲートの一方は、上記の化学式(Vb´)に示したApo-Si-K-18の2つのE部分を有するApo-Si-K-18コンジュゲートであり、他方は、上記の化学式(Vb´´)に示したApo-Si-K-13の2つのE部分を有するApo-Si-K-13コンジュゲートである。この実施例は、遺伝子サイレンシングにおけるこれらのコンジュゲートの性能を、Apo-Si-K-19部分、Apo-Si-W部分、及びApo-Si-G部分を含む3つの構造的に関連する対照コンジュゲートの性能と比較する。これらの3つの部分は、本発明のE部分と構造的に類似しているが、上記の化学式(II)と完全には適合せず、血漿タンパク質存在下[S(+)条件]での細胞への送達及び遺伝子サイレンシングにおいて効果的に機能しない。
【0070】
本発明のコンジュゲート及び対照コンジュゲートの両方を含む全てのコンジュゲートのE部分は、ステロール骨格と、ノナ-フルオロテール-ブタノール残基とを含む。しかしながら、明らかに、これは、無血清条件下でさえ、生物活性(例えば遺伝子サイレンシング)を与えるのに十分ではない。例えば、実施例6で説明するように、Apo-Si-Wのコンジュゲートは、血漿タンパク質の存在下でも非存在下でも不活性であった。各E部分にジスルフィド基を追加することにより、無血清条件下で活性を発揮した本発明のコンジュゲートの性能及び対照コンジュゲートApo-Si-Gの性能に反映されるように、無血清条件下で活性(例えば遺伝子サイレンシング)があった。しかしながら、ジスルフィド部分の追加自体は、血漿タンパク質存在下での性能(活性)を可能にするのには十分ではなかった。対照的に、各E部分に、ヌルでない1つのQまたはU部分を追加することにより、血漿タンパク質存在下で活性を与えることができ、これは、Apo-Si-K-18部分またはApo-Si-K-13部分を含むコンジュゲートによって発揮される、血清(+)条件下での遺伝子サイレンシングの有効な性能に反映された。
【0071】
まとめると、これらのデータは、上記の化学式(II)が、実際に、オリゴヌクレオチド薬物の膜貫通送達に必要な、及びその薬物の好ましい生物学的性能(例えば遺伝子サイレンシング)を発揮するために必要な種々の決定因子の間の、ユニークで、新規かつ予測不可能なバランスを表すという見解を支持する。本発明における「薬物」または「カーゴ薬物(cargo drug)」(すなわち、D部分)は、本発明のコンジュゲートによって送達される分子であって、低分子薬物または高分子薬物、例えば、タンパク質、ペプチド、タンパク質、またはオリゴヌクレオチド薬物などを指す。
【0072】
本発明における「薬物」または「薬剤」は、疾患を患っている対象(患者)に投与されたときに、対象に有益な効果をもたらすことができる化学物質を指す。有益な効果は、症状の改善、または、疾患プロセスに関与する因子または物質の効果を打ち消すことであり得る。薬物は、遺伝子発現を阻害するために投与される、低分子または高分子、例えば、タンパク質や、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAなどを含み得る。とりわけ、薬物は、siRNAまたはASOを含み得る。いくつかの実施形態では、薬物は、変性疾患、癌、虚血性傷害、感染症、毒性傷害、または免疫介在性疾患の治療を目的としている。
【0073】
本発明における「オリゴヌクレオチド薬物」(以降、「OD」とも称する)は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む薬物を指す。オリゴヌクレオチド薬物(OD)の例は、一本鎖または二本鎖の、天然のまたは修飾されたRNAまたはDNAである。ODの例は、siRNA(低分子干渉RNA)、ダイサー酵素の基質(dsiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)として機能するように設計されたDNA配列である。ODのヌクレオチド構成要素間の結合は、とりわけ、リン酸-トリエステル結合、またはホスホロチオエート結合によりなされる。ODのより具体的な実施形態において、本発明は以下を開示する。
【0074】
「siRNA」は、各RNA鎖が19~21ヌクレオチド長のRNA二本鎖であり、RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)タンパク質複合体を介して遺伝子発現をサイレンシングすることを目的としている。
【0075】
ダイサー酵素のsiRNA基質(「dsiRNA」)は、各RNA鎖が24~30ヌクレオチド長のRNA二本鎖である。一実施形態では、dsiRNA二本鎖は、一方の鎖が25ヌクレオチドからなり、他方の鎖が27ヌクレオチドからなる。別の実施形態では、dsiRNA二本鎖は、一方の鎖が24ヌクレオチドからなり、他方の鎖が27ヌクレオチドからなる。
【0076】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)」は、合成の、一本鎖の、天然の、または修飾された、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドであり、通常15~20ヌクレオチド長である。ASOの配列は、アンチセンスである。すなわち、ASOの配列は、タンパク質の特定のmRNAのセンス配列に相補的であり、その合成を阻害しようとする。ASOがこの相補配列に結合すると、リボソームのmRNAに沿って移動する能力が阻害され、その結果、タンパク質の合成が妨げられるか、または、mRNAの分解速度が速くなる。
【0077】
本発明における「ヌクレオシド」は、窒素含有塩基(核酸塩基)、及び、5個または6個の炭素原子の糖(例えば、リボース、デオキシリボース)を含む化学部分として定義される。核酸塩基は、天然若しくは修飾プリン(例えば、アデニン、グアニン)、または、天然若しくは修飾ピリミジン(例えば、チミン、シトシン、ウラシル)から選択される。核酸塩基は、当分野で既知のように、様々な修飾によって修飾することができる(例えば、メチル化、アセチル化)。加えて、ヌクレオシドの糖部分も、当分野で既知の方法で修飾することができる(例えば、2´-デオキシ誘導体、リボースの2´位のメチル化、2´-フルオロ原子の取り付け、または、2´酸素と4´炭素原子とを連結するブリッジを設けることによるロック核酸(LNA)の生成)。したがって、このような修飾ヌクレオシドの使用も本発明の範囲に含まれる。一実施形態では、ヌクレオシドは、天然のまたは修飾されたシトシン、チミン及びウラシルから選択されるピリミジン誘導体を含み、糖部分は、リボースまたはデオキシリボースのいずれかである。
【0078】
本発明においては、「ヌクレオチド」は、リン酸基に結合された、上記に定義したヌクレオシドである。ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの構成要素である。
【0079】
本発明における「前駆体分子」は、本発明の上記の化学式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、または(Vc´´´)のいずれかに示したE、E´、またはE´´部分として定義され、下記に定義される保護基と結合する。
【0080】
本発明における「保護基」は、コンジュゲートの合成中に除去または修飾される化学基として定義される。このような除去または修飾は、合成の様々な段階で行われ得る。例えば、これに限定しないが、Dがオリゴヌクレオチド薬物などの高分子薬物である場合は、このような除去または修飾は、E、E´またはE´´部分をDに結合させる段階で行われる。本発明の好ましい態様では、保護基は、下記に定義されるアルコールの保護基である。
【0081】
本発明における「アルコールの保護基」は、当分野で既知のように、特定の化学反応中にヒドロキシル基を「マスク」するためにヒドロキシル基に結合され、かつその後に除去可能な化学基を指す。このような保護基の例は、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル[ビス(4-メトキシフェニル)フェニルメチル](DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル](MMT)、p-メトキシ-ベンジルエーテル(PMB)、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル(トリフェニルメチル、Tr)、シリルエーテル[例えば、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)、及びトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテル]、エトキシエチルエーテル(EE)、ホスホロアミダイト、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)である。アルコールの保護基としてよく使用されるのは、ジメトキシトリチル[ビス(4-メトキシフェニル)フェニルメチル](DMT)、及びホスホルアミダイトである。
【0082】
本発明における「固体支持体への取り付け」という用語は、化学合成中の固体支持体へのE、E´、またはE´´部分の結合点を意味する。例えば、本発明のコンジュゲートの合成中にオリゴヌクレオチドの3´末端に結合するための固体支持体として、CPG(Controlled Pore Glass)を使用することができる。
【0083】
本発明における「生体膜」という用語は、生物学的システムに関連する任意のリン脂質膜を指す。このようなリン脂質膜の例は、細胞の形質膜、細胞内膜、または、血液胎盤関門などの生物学的障壁(例えば、血液脳関門(BBB)、血液眼球関門(BOB)、または血液胎児関門)に関連するリン脂質膜である。
【0084】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(II)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(III)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0085】
【0086】
ここで、
U、Q、Z、G3、G4、a、b、c、d、e、f、及びWは、上記の化学式(II)において定義したとおりである。
【0087】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(III)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(IVa)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0088】
【0089】
ここで、
Z、U、Q、G3、G4、a、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(III)において定義したとおりである。
【0090】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(III)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(IVb)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0091】
【0092】
ここで、
U、Q、G3、G4、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(III)において定義したとおりである。
【0093】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(III)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(IVc)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0094】
【0095】
ここで、
U、Q、G3、G4、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(III)において定義したとおりであり;
Jは、ヌル、-CH2-、及び酸素からなる群より選択される。
【0096】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVa)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Va´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0097】
【0098】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVa)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Va´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0099】
【0100】
この化合物は、ホスホルアミダイト及びDMT基と結合した場合には、Apo-Si-K-29-D前駆体と称される。
【0101】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVa)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Va´´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0102】
【0103】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVb)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vb´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0104】
【0105】
上記の化学式(Vb´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-18と称される。この化合物は、ホスホルアミダイトと結合した場合には、Apo-Si-K-18前駆体と称される。
【0106】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVb)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vb´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0107】
【0108】
上記の化学式(Vb´´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-13と称される。この化合物は、ホスホルアミダイトと結合した場合には、Apo-Si-K-13前駆体と称される。
【0109】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVb)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vb´´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0110】
【0111】
上記の化学式(Vb´´´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-11と称される。この化合物は、ホスホルアミダイトと結合した場合には、Apo-Si-K-11前駆体と称される。
【0112】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVc)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vc´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0113】
【0114】
上記の化学式(Vc´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-40と称される。この化合物は、ホスホルアミダイト及びDMT基と結合した場合には、Apo-Si-K-40前駆体と称される。
【0115】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVc)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vc´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物である。
【0116】
【0117】
上記の化学式(Vc´´)に示すこのE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-43と称される。この化合物は、ホスホルアミダイト及びDMT基と結合した場合には、Apo-Si-K-43前駆体と称される。
【0118】
本発明の一実施形態では、上記の化学式(IVc)に示したE、E´、またはE´´部分は、下記の化学式(Vc´´´)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物である。
【0119】
【0120】
上記の化学式(Vc´)に示すE、E´、またはE´´部分は、Apo-Si-K-63と称される。この化合物は、ホスホルアミダイト及びDMT基と結合した場合には、Apo-Si-K-63前駆体と称される。
【0121】
一実施形態では、本発明は、上記の化学式(IVa)に示したE、E´、またはE´´部分を含み、かつ下記の化学式(IVaP)に示す構造を有する前駆体分子、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物を提供する。
【0122】
【0123】
Z、U、Q、G3、G4、a、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(IVa)において定義したとおりである。この前駆体分子は、オリゴヌクレオチド鎖の5´末端または3´末端のいずれか、あるいはオリゴヌクレオチド鎖内の内部位置において、E、E´、またはE´´部分と結合する働きをする。
【0124】
別の実施形態では、本開示は、上記の化学式(IVb)に示したE、E´、またはE´´部分を含み、かつ下記の化学式(IVbP)に示す構造を有する前駆体分子、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物を提供する。
【0125】
【0126】
ここで、
U、Q、G3、G4、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(IVbP)において定義したとおりである。
【0127】
さらに別の実施形態では、本発明は、上記の化学式(IVc)に示したE、E´、またはE´´部分を含み、かつ下記の化学式(IVcP)に示す構造を有する前駆体分子、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物を提供する。
【0128】
【0129】
ここで、
Z、U、Q、G3、G4、a、b、c、d、e、及びfは、上記の化学式(IVc)において定義したとおりである。この前駆体分子は、オリゴヌクレオチド鎖の5´末端または3´末端のいずれか、あるいはオリゴヌクレオチド鎖内の内部位置において、E、E´、またはE´´部分と結合する働きをする。
【0130】
特定の実施形態では、上記の化学式(IVcP)に示した前駆体分子は、下記の化学式(PP-1)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0131】
【0132】
この前駆体分子は、オリゴヌクレオチド鎖の5´末端または3´末端のいずれか、あるいはオリゴヌクレオチド鎖内の内部位置において、E、E´、またはE´´部分と結合する働きをする。上記の化学式(PP-1)に示すこの前駆体分子は、Apo-Si-K-40前駆体と称される。
【0133】
別の特定の実施形態では、上記の化学式(IVcP)に示した前駆体分子は、下記の化学式(PP-2)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0134】
【0135】
この前駆体分子は、オリゴヌクレオチド鎖の5´末端または3´末端のいずれか、あるいはオリゴヌクレオチド鎖内の内部位置において、E、E´、またはE´´部分と結合する働きをする。上記の化学式(PP-2)に示すこの前駆体分子は、Apo-Si-K-43前駆体と称される。
【0136】
さらに別の特定の実施形態では、上記の化学式(IVcP)に示した前駆体分子は、下記の化学式(PP-3)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0137】
【0138】
上記の化学式(PP-3)に示すこの前駆体分子は、Apo-Si-K-63前駆体と称される。
【0139】
上記の化学式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、または(Vc´´´)のいずれかに示した化合物は、Dと結合するための、E、E´、またはE´´部分としての役割を果たすことができ、これにより、細胞への膜貫通送達における生物学的性能にとって望ましい本発明のコンジュゲートを形成する。Dがオリゴヌクレオチド薬物(OD)である場合、コンジュゲートは、次の(i)~(iv)の選択肢のいずれかに従うことができる。
(i)Dは、単一のE、E´、またはE´´部分と結合する。
(ii)Dは、互いに同一のまたは異なる2つのE及びE´部分と結合する;任意選択で、各オリゴヌクレオチド鎖の一端(例えば、5´末端)で結合する。
(iii)Dは、互いに同一のまたは異なるE、E´、及びE´´部分と結合する。E及びE´部分は、各オリゴヌクレオチド鎖の末端(例えば、5末端で)と結合し、E´´は、オリゴヌクレオチド鎖内の内部位置と結合する。
(iv)Dは、互いに同一のまたは異なるいくつかの(n>3)E部分に結合される;E部分は、各オリゴヌクレオチド鎖の末端(例えば、5末端で)に結合され、いくつかの他のE部分は、オリゴヌクレオチド鎖に沿ったいくつかの内部位置に結合される。
【0140】
本発明の一実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Va´)に示したE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-1)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0141】
【0142】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0143】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´)に示した2つのE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-2)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0144】
【0145】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0146】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´)に示したE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-3)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0147】
【0148】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0149】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´)に示したE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-4)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0150】
【0151】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0152】
本発明の別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)をDとして含むコンジュゲートであって、天然または修飾DNA、RNA、ロック核酸ヌクレオチド(LNA)、ホスホロチオエートヌクレオチド、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、15~25ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-5)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0153】
【0154】
ここで、
Y及びY´は、互いに独立して、水素、-CH2-Z、-CH2-Z´、-CH2-O-Z、及び-CH2-O-Z´からなる群より選択され;
Z及びZ´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、カルボキシル基、1´、2´-ジデオキシリボース、ヌクレオチド、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;
gは、0、1、2、3、4、5及び6からなる群より選択される整数である。
【0155】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Va´´)に示したE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-6)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0156】
【0157】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0158】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´´)に示したE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-7)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0159】
【0160】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0161】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´´)にしたE及びE´部分との結合を有し、かつ、化学式(Va´´)に示したE´´部分が、オリゴヌクレオチド鎖に沿った内部位置に結合されたコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-8)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0162】
【0163】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0164】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´´)に示したE及びE´部分との結合を有し、かつ、上記の化学式(Vc´´)に示したE´´部分が、オリゴヌクレオチド鎖に沿った内部位置に結合されたコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-9)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0165】
【0166】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0167】
本発明の別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)をDとして含むコンジュゲートであって、天然または修飾DNA、RNA、ロック核酸ヌクレオチド(LNA)、ホスホロチオエートヌクレオチド、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、15~25ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-10)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0168】
【0169】
ここで、
Y及びY´は、互いに独立して、水素、-CH2-Z、-CH2-Z´、-CH2-O-Z、及び-CH2-O-Z´からなる群より選択され;
Z及びZ´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、カルボキシル基、1´、2´-ジデオキシリボース、ヌクレオチド、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;
gは、0、1、2、3、4、5及び6からなる群より選択される整数である。
【0170】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Va´´´)に示したE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-11)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0171】
【0172】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0173】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´´´)に示したE及びE´部分との結合を有するコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-12)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0174】
【0175】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。上記の化学式(Cn-12)に示すこのコンジュゲートは、Apo-Si-K-63-Bと称される。
【0176】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´´)に示したE及びE´部分との結合を有し、かつ、上記の化学式(Va´´)に示したE´´部分が、オリゴヌクレオチド鎖に沿った内部位置に結合されたコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-13)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0177】
【0178】
ここで、
R及びR´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、及びカルボキシル基からなる群より選択される。
【0179】
本発明の別の実施形態では、RNA二本鎖の5´末端において、Dと、上記の化学式(Vc´´´)に示したE及びE´部分との結合を有し、かつ、上記の化学式(Vc´´´)に示したE´´部分が、オリゴヌクレオチド鎖に沿った内部位置に結合されたコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-14)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0180】
【0181】
上記の化学式(Cn-14)に示すこのコンジュゲートは、Apo-Si-K-63-Cと称される。
【0182】
本発明の別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)をDとして含むコンジュゲートであって、天然または修飾DNA、RNA、ロック核酸ヌクレオチド(LNA)、ホスホロチオエートヌクレオチド、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、15~25ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートが提供される。このコンジュゲートは、下記の化学式(Cn-15)に示す構造を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは金属キレート、あるいは上記塩の溶媒和物若しくは水和物である。
【0183】
【0184】
ここで、
Y及びY´は、互いに独立して、水素、-CH2-Z、-CH2-Z´、-CH2-O-Z、及び-CH2-O-Z´からなる群より選択され;
Z及びZ´は、互いに独立して、水素、リン酸、硫酸、カルボキシル基、1´、2´-ジデオキシリボース、ヌクレオチド、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;
gは、0、1、2、3、4、5及び6からなる群より選択される整数である。
【0185】
本発明の一実施形態では、siRNAやダイサー酵素の基質(dsiRNA)などのRNA二本鎖を含むコンジュゲート、またはそれを含む薬学的組成物であって、RNA二本鎖が、27~25または27~24のヌクレオチド長であり、その両端において、上記の化学式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、または(Vc´´´)のいずれかに示した構造をそれぞれが有するE、E´、またはE´´部分と結合し、パッセンジャー(センス)鎖の5´末端、及び/またはガイド(アンチセンス)鎖の5´末端において、リン酸、硫酸またはカルボキシル基の潜在的な追加的結合を有する、コンジュゲート、またはそれを含む薬学的組成物が提供される。
【0186】
本発明の別の実施形態では、上述したコンジュゲートであって、siRNA二本鎖の両端、及びsiRNA二本鎖内の1以上の内部位置において、上記の化学式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、または(Vc´´´)のいずれかに示した構造をそれぞれ有するE、E´、またはE´´部分と結合し、パッセンジャー(センス)鎖の5´末端及び/またはガイド(アンチセンス)鎖の5´末端におけるリン酸、硫酸、またはカルボキシル基の潜在的な追加的結合を有する、コンジュゲートが提供される。
【0187】
本発明の実施形態はまた、治療を必要とする対象における医学的疾患を治療するためのタンパク質またはOD(例えば、siRNA、dsiRNA、またはASO)などの治療上有用な薬物を含む本発明によるコンジュゲートの使用に関する。医学的疾患は、これに限定しないが、特定のタンパク質が疾患の原因または発症のいずれかに関与する、変性疾患、癌、血管疾患、代謝疾患、外傷性傷害、毒性傷害、虚血性傷害、感染症(例えば、ウイルス性感染症、細菌性感染症)、または免疫媒介性疾患であり得る。このような医学的疾患については、siRNAまたはアンチセンス機構を介した各遺伝子の発現の調節、または、治療用タンパク質(例えば、抗体、シグナル伝達において機能するタンパク質、またはタンパク質置換療法)による各タンパク質の活性の調節によって、疾患関連プロセスの阻害または疾患の根底原因の治療において有益な効果を有し得る。
【0188】
例えば、本発明の実施形態によるコンジュゲートは、特定のタンパク質をコードするDNA配列、またはそれをタンパク質に翻訳するメッセンジャーRNA(mRNA)のいずれかに結合する一本鎖または二本鎖核酸配列(DNA、RNA、または化学的類似体)の投与を含む医療形態である、アンチセンス、siRNA、またはdsiRNA療法として使用され得る。この療法は、疾患関連遺伝子の発現を阻害するように作用し、それによって、疾患の原因または発症に関与し得る疾患関連タンパク質の産生を阻害する。あるいは、本発明のコンジュゲートは、遺伝子編集を行うことができる治療用タンパク質、またはCas9-RNA複合体などのタンパク質/核酸複合体を含み得る。
【0189】
本発明の実施形態は、本明細書に記載されたコンジュゲートと、薬学的に許容される担体または塩とを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明のコンジュゲート及び薬学的組成物は、臨床現場においてインビボで使用され得る。
【0190】
本発明の別の実施形態では、それを必要とする対象における医学的疾患の治療に使用するための、本発明のコンジュゲート、または本発明のコンジュゲートを含む薬学的組成物を含む。本発明のさらなる実施形態は、それを必要とする対象における医学的疾患を治療するための医薬組成物を作製するための本発明のコンジュゲートの使用を含む。いくつかの実施形態では、医学的疾患は、癌、代謝疾患、感染症、変性疾患、血管疾患、または免疫媒介疾患である。
【0191】
本発明の実施形態によるコンジュゲートは、本発明のE、E´、またはE´´部分を含まない同様の治療薬物の性能と比較して、細胞膜または生物学的障壁(例えば、血液脳関門(BBB)など)を介した、siRNA、dsiRNA、ASO、または治療用タンパク質(例えば抗体など)の送達の改善において有利である。したがって、本発明のコンジュゲートは、例えば、効力、毒性、または薬物動態などの1以上の側面において、高分子薬物の性能を改善することができる。
【0192】
D部分がオリゴヌクレオチドである本発明のコンジュゲートは、これに限定しないが、次の方法によって合成することができる。まず、サイレンシングするべき遺伝子が、疾患の原因または発症におけるその遺伝子の役割に基づき選択される。次いで、当分野で既知のバイオインフォマティクス手法に基づき、コンジュゲートに組み込まれるヌクレオチド配列が設計され、決定される[一般的には、RISC基質では19~21塩基対の二本鎖siRNA、ダイサー基質では24~29塩基対の二本鎖RNA(dsiRNA)]。合成は、オリゴヌクレオチドの3´~5´方向において行われる。固相合成が、保護された2´-デオキシヌクレオシド(dA、dC、dG、及びdT)、リボヌクレオシド(A、C、G、U)、または化学的に修飾されたヌクレオシド、例えば[LNA(ロック核酸)またはBNA(ブリッジ核酸)]から誘導された、保護された構成要素を使用して適用される。この構成要素はヌクレオシド前駆体として提供され、5´-ヒドロキシル基及び3´-ヒドロキシル基は、DMT及びホスホルアミダイトによってそれぞれ保護される。これらのヒドロキシル基は、ヌクレオチドを、成長するオリゴヌクレオチド鎖にカップリングさせる反応中に、所望のヌクレオチド配列によって決定される順序で、連続的に除去される。
【0193】
本発明のコンジュゲートの合成の目的のために、E基は前駆体分子として提供され、各々は、上述したように、保護基に結合された本発明のE、E´、またはE´´部分である。保護基は、当分野で既知のヒドロキシルのための任意の保護基であり得るが、ホスホルアミダイト及びDMT[ジメトキシトリチルビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル]が、オリゴヌクレオチド合成において慣用的に使用される。本発明のコンジュゲートの主な利点は、上記の化学式(IVa)及び(IVc)について説明したように、オリゴヌクレオチド鎖の5´-末端、オリゴヌクレオチド鎖の3´-末端、またはオリゴヌクレオチドに沿った内部位置のいずれかにE、E´、またはE´´部分を結合する選択肢を提供することである。これにより、本発明に係るE部分を、任意の固有の天然オリゴヌクレオチド構成要素と同様に、オリゴヌクレオチド鎖内に一体化させることができる。鎖の組み立てが完了すると、生成物は固体支持体から溶液中に放出され、脱保護され、回収される。次いで、所望のコンジュゲートを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって単離し、本発明の所望のコンジュゲートを高純度で得る。siRNAまたはdsiRNAの場合、相補的RNA鎖の各々を別々に合成し、次いで、2つの鎖のアニーリングを当分野で既知の標準的な条件下で行い、所望の二本鎖siRNAまたはdsiRNAを得る。得られたsiRNAは、その後、精製及びアリコートに供される。
【0194】
本発明の一実施形態では、細胞膜及び生物学的障壁からなる群より選択されるリン脂質生体膜を横断して薬物を送達する方法であって、細胞を本発明のコンジュゲートと接触させるステップを含む方法が提供される。生物学的障壁は、血液脳関門、血液眼球関門、または血液胎児関門から選択される。
【0195】
本発明の一実施形態では、薬物を生物学的細胞に送達する方法をであって、細胞を本発明のコンジュゲートまたはそれを含む医薬組成物と接触させるステップを含む方法が提供される。細胞は、培養物、生きている動物、またはヒト対象中の細胞である。
【0196】
本発明の一実施形態では、本発明に係る上記の化学式(I)に示したコンジュゲート、またはそれを含む医薬組成物であって、E、E´、またはE´´部分が、互いに独立して、上記の化学式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、または(Vc´´´)のいずれかに記載の構造を有するコンジュゲート、またはそれを含む医薬組成物が提供される。
【0197】
本発明はまた、インビトロまたはインビボで、遺伝子発現を特異的に阻害するための方法を含む。本発明の一実施形態では、本方法は、上記の化学式(I)、(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、(Vc´´´)、(Cn-1)、(Cn-2)、(Cn-3)、(Cn-4)、(Cn-5)、(Cn-6)、(Cn-7)、(Cn-8)、(Cn-9)、(Cn-10)、(Cn-11)、(Cn-12)、(Cn-13)、(Cn-14)、または(Cn-15)のいずれかに記載の構造を有するコンジュゲート、またはその薬学的組成物の使用を含み得る。この場合、Dは、特定の遺伝子の発現を抑制するように設計されたsiRNA、dsiRNA、またはASOである。いくつかの実施形態では、遺伝子は、疾患の病因または発症に関与する病原性タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、Dは、治療用タンパク質である。
【0198】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明は、非限定的な態様で、生体膜内でエンドサイトーシスまたはフリップフロップを誘導するための方法を提供する。この方法は、本発明のコンジュゲート、またはそれを含む薬学的組成物を、生物学的膜と接触させるステップを含む。コンジュゲートは、siRNAまたはdsiRNA二本鎖を含み、siRNA二本鎖内の両端、あるいは、siRNA二本鎖内の内部位置において、上記の化学式(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、または(Vc´´´)のいずれかに示したE、E´、またはE´´部分に結合される。本発明のコンジュゲートのこの構造に起因して、siRNAは、siRNAは、膜の表面に平行に接近し、E、E´、またはE´´部分は、膜の表面に対して垂直な膜コアに向けて配向される(
図1に示す)。その結果、高度に負に荷電したRNAが膜表面に接近することとなり、これにより、細胞内に膜小胞が形成され(エンドサイトーシスにより生成されるエンドソーム)、また、コンジュゲートが一方の膜リーフレットから他方のリーフレットへと移動する(フリップフロップ)。両方のプロセスは、本発明のsiRNAまたは他の高分子薬物の細胞内への膜貫通送達の開始及び/または伝播に非常に有用であり得る。
【0199】
本発明の実施形態によるコンジュゲートは、医学的疾患の治療に使用され得る。本発明の実施形態は、治療を必要とする対象に対して、上記の化学式(I)、(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、(Vc´´´)、(Cn-1)、(Cn-2)、(Cn-3)、(Cn-4)、(Cn-5)、(Cn-6)、(Cn-7)、(Cn-8)、(Cn-9)、(Cn-10)、(Cn-11)、(Cn-12)、(Cn-13)、(Cn-14)、または(Cn-15)のいずれかに示す構造を有するコンジュゲートを含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む、治療方法を提供する。上記の化学式の式中のDは、医学的疾患の治療に有用な薬物である。
【0200】
一実施形態では、この治療方法は、siRNA、dsiRNA、またはASOを使用した遺伝的医療のためのものである。この治療方法は、治療を必要とする対象に対して、上記の化学式(I)、(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、(Vc´´´)、(Cn-1)、(Cn-2)、(Cn-3)、(Cn-4)、(Cn-5)、(Cn-6)、(Cn-7)、(Cn-8)、(Cn-9)、(Cn-10)、(Cn-11)、(Cn-12)、(Cn-13)、(Cn-14)、または(Cn-15)のいずれかに示す構造を有するコンジュゲートを含む治療有効量の医薬組成物を、に投与するステップを含む。上記の化学式の式中のDは、siRNA、dsiRNA、ASO、または治療用タンパク質であり、遺伝子の発現の阻害、または、特定の対象(患者)の疾患に関与するタンパク質の活性の阻害に有用である。
【0201】
本発明の別の実施形態では、本発明は、上記の化学式(I)、(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、(Vc´´´)、(Cn-1)、(Cn-2)、(Cn-3)、(Cn-4)、(Cn-5)、(Cn-6)、(Cn-7)、(Cn-8)、(Cn-9)、(Cn-10)、(Cn-11)、(Cn-12)、(Cn-13)、(Cn-14)、または(Cn-15)のいずれかに示す構造を有する本発明のコンジュゲートによって疾患を治療する方法を含む。上記の化学式の式中のDは、siRNA、dsiRNA、ASO、または治療用タンパク質であり、リン脂質生体膜、または生物学的障壁(例えば、血液脳関門など)を横断して細胞内に送達する必要がある。細胞は、インビトロでの細胞培養物、またはインビボでの生きている動物若しくはヒト対象のいずれかである。いくつかの実施形態では、細胞は、新生物細胞である。いくつかの実施形態では、新生物細胞は、腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、新生物細胞は、転移内の細胞である。細胞は、真核細胞、発癌性因子によってトランスフェクトされた真核細胞、ヒト細胞、前癌細胞である細胞、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。細胞は、インビトロ、すなわち細胞培養物中の細胞、エクスビボ、すなわち生きている対象から取り出された細胞、またはインビボ、すなわち生きている動物またはヒト対象中の細胞であり得る。
【0202】
本発明のさらに別の実施形態では、Dは、置換療法として、生理学的ニーズに対処するために、例えば変異した機能不全タンパク質を置換するために投与されるタンパク質である。別の実施形態では、Dは、遺伝子調節に関与するタンパク質であり、とりわけ、DNAまたはRNA編集(特定の遺伝子の配列の追加、分断または変更)に関与するタンパク質を含む。一実施形態では、上記のタンパク質は、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)関連タンパク質のメンバーであり得る。具体的には、上記のタンパク質は、Cas9タンパク質(CRISPR関連タンパク質9)、RNA誘導DNAヌクレアーゼ酵素、またはその類似体であり、そのガイドオリゴヌクレオチド配列が潜在的にロードされている。
【0203】
本発明の一実施形態では、医学的疾患の遺伝学的治療のための方法であって、治療を必要とする対象に対して、上記の化学式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IVa)、(V)、(Va)、(VI)、(VII)、(VIIa)、(VIII)または(VIIIa)のいずれかに示す構造を有する本発明のコンジュゲートを含む治療有効量の医薬組成物を、投与するステップを含む方法が提供される。上記の化学式の式中のDは、例えばCas9などのCRISPRタンパク質であり、適切なガイドオリゴヌクレオチドと共に投与され、これにより、ガイドオリゴヌクレオチドがロードされたタンパク質の細胞内への送達が達成され、CRISPRタンパク質がそのゲノム編集活性を発揮することができる。この場合のガイドオリゴヌクレオチドは、Cas9タンパク質をDNA上の特定の遺伝子座(部位)に誘導し、その部位での二本鎖DNA切断を誘導して遺伝物質の局所的欠陥の修復を可能にするRNAまたはDNAの配列である。Cas9の場合、ガイドオリゴヌクレオチドはRNAの短いセグメントであり、その配列は標的DNA遺伝子座の配列に対して相補的である。
【0204】
したがって、本発明の実施形態による各コンジュゲート、各医薬組成物、及び各方法は、とりわけ、癌、毒性傷害、代謝疾患、虚血性疾患、感染症、血管疾患、タンパク質貯蔵疾患、外傷、免疫媒介疾患、または変性疾患から選択される医学的疾患の治療において有益であり得る。
【0205】
したがって、本願発明の一実施形態では、医学的疾患の治療方法であって、治療を必要とする対象に対して、上記の化学式(I)、(II)、(III)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Va´)、(Va´´)、(Va´´´)、(Vb´)、(Vb´´)、(Vb´´´)、(Vc´)、(Vc´´)、(Vc´´´)、(Cn-1)、(Cn-2)、(Cn-3)、(Cn-4)、(Cn-5)、(Cn-6)、(Cn-7)、(Cn-8)、(Cn-9)、(Cn-10)、(Cn-11)、(Cn-12)、(Cn-13)、(Cn-14)、または(Cn-15)のいずれかに示す構造を有するコンジュゲートを含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法が提供される。上記の化学式の式中のDは、医学的疾患の治療に有用な薬物である。
【0206】
いくつかの実施形態では、医学的疾患は癌である。本明細書で使用されるとき、「癌」という用語は、癌を引き起こす細胞の典型的な特徴、例えば、制御されていない増殖、特殊機能の喪失、不死性、有意な転移能、抗アポトーシス活性の有意な増加、急速な増殖及び増殖速度、または特定の特徴的な形態及び細胞マーカーなどを示す細胞の存在を指す。一般的に、癌細胞は腫瘍の形態であり、動物の体内に局所的に存在するか、または、例えば白血病細胞などの独立細胞として血流中を循環する。
【0207】
神経学的疾患の分野では、本発明の実施形態によるコンジュゲートは、とりわけ、アルツハイマー病、運動ニューロン病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、及びクロイツフェルト・ヤコブ病などの神経変性疾患の治療に有用であり得る。
【0208】
感染症の分野では、本発明の実施形態によるコンジュゲートは、とりわけ、抗生物質または抗ウイルス剤を細菌またはウイルス病原体に送達するのに有用であり得る。したがって、本発明のコンジュゲートは、抗感染性を有し得、そのため、例えば細菌感染症またはウイルス感染症などの感染症の治療に有用である。本発明のコンジュゲートが有用であり得るウイルス感染の例は、これに限定しないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV);C型肝炎ウイルス(HCV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)などの肝親和性ウイルス;インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスCなどのオルトミクソウイルス感染;またはパラインフルエンザウイルスによる感染である。したがって、本発明の一実施形態は、抗ウイルス剤または抗菌剤に結合されたE、E´、またはE´´部分のコンジュゲートである。このような薬物は、とりわけ、病原体の遺伝物質と相互作用して、病原体の複製、代謝、感染性、または生存に関与する遺伝的プロセスを阻害することを目的とする遺伝子配列であり得る。そのような遺伝子配列は、ウイルス遺伝子の発現を抑制するように特別に設計されたsiRNAまたはdsiRNAであり得る。
【0209】
感染対策における本発明のコンジュゲートの有用性は、治療的に有用な薬物を、生体膜を横断してホスト(例えばヒト患者)の細胞に送達すること、及び、生体膜を横断して病原体(例えば、細菌またはウイルス)の細胞に送達することのうちの少なくとも一方であり得る。
【0210】
代謝疾患の分野では、本発明の実施形態によるコンジュゲートは、とりわけ、代謝障害に関与する1または複数の遺伝子の発現を下方制御することを目的とする遺伝子送達治療、または疾患の病因または発症に関与する欠陥変異タンパク質を置換するためのタンパク質の投与に有用である。
【0211】
他の実施形態では、本発明は、リン脂質膜を横断しての化合物の細胞内への送達を向上させるための、本発明の化合物の使用に関するものであり、このため、農業での利用に有益である。結合された化合物及び所望の兆候(症状)に応じて、このような送達は、様々な有用な用途を有し得る。例えば、植物においては、このような送達は、とりわけ、植物の遺伝子を改良したり、様々な昆虫、細菌、菌類を根絶したりすることによって、作物の品質と量の向上を助けることができる。
【0212】
実施例
【0213】
本発明をさらに説明するため、及び本発明の実施形態が実際にどのように実施され得るかを示すために、以下にいくつかの例を説明する。
【0214】
実施例1:D部分がオリゴヌクレオチドである、本発明の実施形態によるコンジュゲートを合成するための一般的方法
【0215】
まず、疾患の原因または発症における役割に基づいて、サイレンシング(抑制)される遺伝子を選択した。次いで、当分野で既知のバイオ情報科学方法論に基づき、コンジュゲートに組み込まれるヌクレオチド配列を設計及び決定した(一般的に、RISC基質の場合は19~21塩基対の二本鎖siRNA、ダイサー基質の場合は24~29塩基対の二本鎖RNA(dsiRNA))。
【0216】
合成は、オリゴヌクレオチドの3´から5´の方向に行った。固相合成を、保護された2´-デオキシヌクレオシド(dA、dC、dG、及びdT)、リボヌクレオシド(A、C、G、U)、または化学的に修飾されたヌクレオシド、例えばLNA(ロックされた核酸)またはBNA(架橋された核酸)、から誘導された保護された構成要素を用いて適用した。構成要素は、ヌクレオシド前駆体として提供され、5´-及び3´-ヒドロキシル基は、それぞれDMT及びホスホロアミダイトによって保護されていた。これらの基は、所望のヌクレオチド配列によって決定された順序でヌクレオチドを成長オリゴヌクレオチド鎖に結合する反応中に、順次除去された。
【0217】
本発明のコンジュゲートの合成の目的のために、E基は、それぞれ上述のように保護基に結合された本発明のE、E´、またはE´´部分である前駆体分子として提供された。保護基は当該技術分野で既知のヒドロキシルに対する任意の保護基であり得るが、ホスホロアミダイト及びDMT(ジメトキシトリチル ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)はオリゴヌクレオチド合成において慣例的に使用されている。本発明のコンジュゲートの主な利点は、上記の化学式(IVa)及び(IVc)に示すように、E、E´、またはE´´部分をオリゴヌクレオチド鎖の5´末端、オリゴヌクレオチド鎖の3´末端、またはオリゴヌクレオチドに沿った内部位置のいずれかに結合させるオプションを提供することである。それにより、本発明のE部分を、任意の固有の天然のオリゴヌクレオチド構成要素と同様に、オリゴヌクレオチド鎖内に組み込むことができる。鎖の組み立てが完了すると、生成物が、固体支持体から溶液中に放出され、脱保護され、集められた。次に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって所望のコンジュゲートを単離することによって、所望の本発明のコンジュゲートが高純度で得られた。siRNAまたはdsiRNAの場合、相補的なRNA鎖の各々は別々に合成され、その後、2つの鎖のアニーリングを当分野で既知の標準的な条件下で行うことによって、所望の二本鎖siRNAまたはdsiRNAが得られ、その後、それらを精製及び分注した。
【0218】
実施例2:本発明のE、E´、またはE´´部分を含む前駆体分子の化学合成方法
【0219】
実施例2a:アポ-Si-K-29E-前駆体の合成
【0220】
【0221】
2aA.フェノール2の合成
【0222】
エストラジオールを、アセトニトリルとメタノールとの混合物中の臭化ベンジル及び炭酸カリウムで処理した。完全かつクリーンな変換をもたらす溶解性を促進するために、メタノールを共溶媒として使用した。濾過及び濾液の濃縮後、粗生成物(2)を次のステップで使用した。
【0223】
【0224】
化合物2を過剰の水素化ナトリウムで処理した後、アリルブロミドを添加すると、化合物3へ完全に変換した。アリル誘導体2をOsO4及びNaIO4で処理すると、アルデヒド4が得られた。アルデヒド4とN-メチルアミノエタノールとの間の還元的アミノ化によってもたらされたアルコール5を、その後、光延条件下でペルフルオロ-t-BuOHと反応させて化合物6を得た。最後に、ベンジル保護基を水素化によって除去し、フェノール2を得た。
【0225】
2aA1.(8R、9S、13S、14S、17S)-3-ベンジルオキシ-17-ヒドロキシエストラ-1、3、5(10)-トリエン(2)
【0226】
アセトン(2L)及びMeOH(0.5L)中のエストラジオール(2,300g、1.1mol)、臭化ベンジル(200mL、1.68mol)及び炭酸カリウム(304g、2.2mol)の混合物を18時間加熱還流した。室温で冷却後、反応混合物を濾過し、真空中で濃縮した。濃縮物を熱トルエン中で溶解し、減圧下で濃縮した。粗物質(化合物2、508g)をそのまま次の反応で使用した。
【0227】
2aA2.(8R、9S、13S、14S、17S)-17-アリルオキシ-3-ベンジルオキシエストラ-1、3、5(10)-トリエン(3)
【0228】
無水THF(4L)中の粗アルコール3(508g、約1.1mol)の溶液に、水素化ナトリウム(110g、鉱オイル中の60%分散液、2.7mol)を滴下した。約30分後、臭化アリル(240mL、2.7mol)及びヨウ化テトラブチルアンモニウム(40g、108mmol)を加え、得られた混合物を約18時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却させ、水(1L)で注意深くクエンチし、混合物を部分的に濃縮した。混合物をEtOAc(1.5L)中で溶解し、水(3x500mL)で洗浄した。有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮して、次のステップのために十分な純度の粗化合物3(550g、1.36mol)を得た。
【0229】
2aA3.2-(((13S、17S)-3-(ベンジルオキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)アセトアルデヒド(4)
【0230】
ジエチルエーテル(30mL)及び水(30mL)中の化合物3(2.0g、5.0mmol)の溶液に、2、6-ルチジン(1.33g、12.4mmol)、過ヨウ素酸ナトリウム(4.26g、20mmol)、及びtBuOH(2mL)中のOsO4の2.5%溶液を添加した。混合物を室温で16時間撹拌した。相を分離し、水層をジエチルエーテルで2回抽出した。組み合わせた有機層をチオ硫酸ナトリウム飽和水溶液及びブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。さらに精製すると、アルデヒド4(1.51g、3.7mmol)が、75%の収率で透明なオイルとして得られた。
【0231】
2aA4.2-((2-(((13S、17S)-3-(ベンジルオキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エタン-1-オール(5)
【0232】
ジクロロエタン(100mL)中の化合物4(2.0g、4.9mmol)の溶液に、2-(メチルアミノ)エタン-1-オール(0.79mL、9.8mmol、2当量)を加え、得られた混合物を15分間撹拌した。次に、AcOH(0.56mL、9.8mmol、2当量)を加え、混合物をさらに10分間撹拌した。NaBH(OAc)3(4.2g、19.6mmol、4当量)を加え、得られた混合物を一晩撹拌した。NaOH(1M、400mL)を加え、混合物を振盪し、層を分離した。水層をEtOAc(2x、300mL)で抽出した。組み合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮して化合物5(2.4g、4.9mmol、定量的収率)を得た。
【0233】
2aA5.2-(((13S、17S)-3-(ベンジルオキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)-N-(2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)-N-メチルエタン-1-アミン(6)
【0234】
テトラヒドロフラン(THF)(100mL)中のアルコール5(2.4g、5mmol)の溶液に、ペルフルオロ-t-ブタノール(0.93mL、6.5mmol、1.3当量)、PPh3(2.1g、8.0mmol、1.6当量)、及びジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)(1.3mL、6.5mmol、1.3当量)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を濃縮し、粗物質をカラムクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘプタン+1%NEt3)で精製して、化合物6を、徐々に固化する無色のオイル(2.1g、3.1mmol、62%)として得た。
【0235】
2aA6.(13S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オール(フェノール2)
【0236】
化合物6(7.5g、11.0mmol)を酢酸エチル(EtOAc、150mL)中で溶解し、10%Pd/C(900mg ABCR+900mg Merck)を加えた。混合物を5バールの水素雰囲気下で16時間撹拌した。懸濁液をセライトの短い経路で濾過し、濃縮した。フェノール2(5.7g、9.6mmol)が、無色のオイルとして分離された。
【0237】
2aB.K-1-7の合成
【0238】
フェノール2をさらに誘導体化するには、構成要素K-1-7が必要であった。この化合物を、9-フルオレニルメチル N-スクシンイミジルカーボネート(FmocOSu)を使用したフルオレニル基の、塩基性条件を使用したチオールとの結合によって調製した。
【0239】
【0240】
(((9H-フルオレン-9-イル)メチル)チオ)-3-メチルブタン-1-オール(K-1-7)
【0241】
N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)(300mL)中の3-メチル-3-チオブタノール(13.6g、113mmol)及び炭酸ナトリウム(24g、340mmol)の懸濁液に、FmocOSu(25.2g、75.4mmol)を加えた。混合物を40℃で2時間撹拌した後、室温まで冷却した。酢酸エチル(200mL)及びヘプタン(400mL)を加え、混合物を水で洗浄し(3x200mL)、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(30%酢酸エチル(ヘプタン中のEtOAc))を使用したさらなる精製によって、化合物K-1-7(17.0g、57.2mmol)を収率76%で粘着性のオイルとして得た。
【0242】
2aC.K-29Uの合成
【0243】
構成要素K-29Uの合成を、スキーム3に示すように実行した。
【0244】
【0245】
HNO3の存在下において、2-デオキシウリジンをI2で処理して、デオキシウリジンU-1のヨード誘導体を得た。ヨウ化物U-1は、ヘック反応を使用してメチルアクリレートに結合することによって、カラムクロマトグラフィーによる精製後にメチルエステルU-2をもたらした。U-2のメチルエステルをNaOHで加水分解し、得られた化合物U-3をPd/C及びH2を使用して水素化して中間体U-4を得た。カップリング試薬として1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)を使用して中間体U-4及びU-5(市販)をカップリングし、塩化物U-6を得た。塩化物U-6を、高温で、チオトシル酸カリウムで処理して、構成要素K-29Uを得た。
【0246】
2aC1.1-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-5-ヨードピリミジン-2、4(1H、3H)-ジオン(U-1)
【0247】
2-デオキシウリジン(15g、66mmol)及びI2(19g、73mmol、1.1当量)をCHCl3(750mL)及びHNO3(水溶液、1M、150mL)の混合物中で溶解し、得られた紫色の混合物を還流で5時間撹拌した後、沈殿物が形成された。混合物を、最初に空気で、次に氷浴で冷却した。冷却した混合物を濾過し、残留物を冷たいCHCl3で洗浄した。固体を収集し、真空中で乾燥させて、ヨウ化物U-1をオフホワイトの固体(20g、57mmol、86%)として得た。
【0248】
2aC2.メチル(E)-3-(1-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)アクリレート(U-2)
【0249】
ヨウ化物U-1(5.2g、15mmol)をDMF(100mL)中で溶解し、混合物にTEA(4.1mL、29.4mmol、2当量)、アクリル酸メチル(8.0mL、88.2mmol、6当量)、PPh3(0.77g、2.9mmol、0.2当量)、及び酢酸パラジウム(0.33g、1.5mmol、0.1当量)を加えた。得られた混合物を100℃で4時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2中、10%のMeOH)で精製し、アクリレートU-2(4.0g、13mmol、87%)を、徐々に結晶化するオレンジ色のオイルとして得た。
【0250】
2aC3.(E)-3-(1-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)アクリル酸(U-3)
【0251】
アクリレートU-2(5.0g、16mmol)をNaOH(水溶液、2M、60mL)中で溶解し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、混合物がpH1(pH紙で測定)付近になるまでHCl(37%)を加えた。混合物を0℃で1時間撹拌した後、沈殿物が形成された。固形物を濾過によって収集し、フラスコに移した。粗物質をトルエンと2回共蒸発させて、粗生成物U-3(大量の水が存在する)をオフホワイトのわずかに茶色の固体(3.3g、11mmol、69%)として得た。
【0252】
2aC4.3-(1-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)プロパン酸(U-4)
【0253】
粗カルボン酸U-3(28.6g、96mmol)をH2O(500mL)中で溶解した。すべてが溶解するまで、NaOH(10mL、10M)を加えた。Pd/C(10%、3g)を加え、混合物を5バールのH2下で一晩攪拌した。混合物をセライトで濾過し、濃縮して黄色のオイル(50g)を得た。混合物には塩が含まれていたため、最小量のH2O(総量130mL)中で溶解し、pH約2(pH紙)に酸性化した。粗混合物を、逆相クロマトグラフィーを使用して脱塩した。生成物を含む画分をプールし、濃縮し、凍結乾燥して、カルボン酸U-4(10g、33mmol、35%)をふわふわした白い固体として得た。
【0254】
2aC5.N-(2-(3-クロロプロポキシ)エチル)-3-(1-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシル-メチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)プロパンアミド(U-6)
【0255】
350mLのDMF中のウリジンカルボン酸誘導体U-4(5.5g、18.4mmol)及びアミンU-5(3.2g、18.4mmol)の溶液に、TEA(10.3mL、73.5mmol、4当量)、HOBt(3.1g、20.2mmol、1.1当量)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI、3.9g、20.2mmol、1.1当量)を添加した。得られた懸濁液を室温で5日間撹拌した後、ほとんどの物質が溶解した。混合物を真空中で濃縮した。粗混合物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン(DCM)中の7~8%MeOH)によって精製して、アミドU-6(7.2g、17mmol、93%)を、徐々に固化する黄色/オレンジ色のオイルとして得た。
【0256】
2aC8.S-(3-(2-(3-(1-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)プロパンアミド)エトキシ)プロピル)4-メチルベンゼンスルホノチオエート(K-29U)
【0257】
塩化物U-6(3.6g、8.6mmol)をDMF(100mL)中で溶解し、TBAI(0.32g、0.86mmol)及びトルエンチオスルホン酸カリウム(2.9g、12.9mmol)を加えた。得られた混合物を80℃で40時間撹拌した。混合物を真空中で濃縮した。EtOAc(500mL)及びH2O(300mL)を加えて、層を分離した。有機層をブラインで洗浄した。組み合わせた水層をEtOAc(4x250mL)で抽出した。組み合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮した。粗混合物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン(DCM)中の3~7%MeOH)を使用して精製し、チオトシレートK-29U(1.75g、3.1mmol、36%)を粘着性の固体として得た。
【0258】
2aD.Apo-Si-K-29E-前駆体の合成の完了
【0259】
フェノール2と構成要素K-1-7とを光延条件下で結合させ、保護されたチオールK-29E-1を得た。フルオレニル基を、K-29Uの存在下で、NaOMeによりインサイチュで除去し、ジスルフィドK-29E-2を得た。当該技術分野で既知であるように、標準的な手順を用いて結合された標準的なホスホルアミデート部分を使用して、DMT基を結合させた。
【0260】
【0261】
2aD1.2-(((13S、14S、17S)-3-(3-(((9H-フルオレン-9-イル)メチル)チオ)-3-メチルブトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)-N-(2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)-N-メチルエタン-1-アミン(K-29E-1)
【0262】
THF(40mL)中のフェノール2(1.47g、2.5mmol)の溶液に、アルコールK-1-7(1.48g、5.0mmol)、トリフェニルホスフィン(0.91g、3.5mmol)、及びアゾジカルボン酸ジイソプロピル(0.6mL、2.9mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。濃縮後、混合物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中20%EtOAc及び1%Et3N)を使用してさらに精製し、K-29E-1(1.5g、1.7mmol)を収率67%で透明なオイルとして得た。
【0263】
2aD2.N-(6-((4-(((13S、14S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)-3-(1-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)プロパンアミド(K-29E-2)
【0264】
ジクロロメタン中の化合物K-29E-1(1当量)及びトシレートK-29U(1.5当量)の溶液を、MeOH中の2M NaOMe(4当量)で処理した。混合物を室温で16時間撹拌した。濁った懸濁液をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュを用いたさらなる精製によって、化合物K-29E-2が得られた。
【0265】
2aD3.3-(1-((2R、4S、5R)-5-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)-N-(6-((4-(((13S、14S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)プロパンアミド(K-29E-3)
【0266】
ピリジン中のK-29E-2(1当量)の溶液に、DMT-Cl(2当量)及びDMAP(0.1当量)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌し、その後、混合物を濃縮した。カラムクロマトグラフィーを用いて残渣を精製して、化合物K-29E-3を得た。
【0267】
2aD4.3-(1-((2R、4S、5R)-5-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-(((2-シアノエチル)(ジイソプロピルアミノ)ホスファニル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)-N-(6-((4-(((13S、14S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)プロパンアミドApo-Si-K29E-前駆体)
【0268】
ジクロロメタン中の化合物K-29E-3(1当量)の溶液に、2-シアノエチルN、N、N´、N-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(1.3当量)を加えた後、0.5MのN-メチルモルホリンの溶液、及びジクロロメタン中の0.25Mトリフルオロ酢酸を滴下した(ホスホロジアミダイト剤に対して1.3当量のN-メチルモルホリン)。得られた混合物を室温で2時間撹拌した後、重炭酸ナトリウム飽和水溶液でクエンチし、撹拌をさらに10分間続けた。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーを用いたさらなる精製によって、化合物Apo-Si-K-29E-前駆体が得られた。
【0269】
実施例2b:Apo-Si-K-29D前駆体の合成
【0270】
【0271】
2bA.フェノール1の合成
【0272】
【0273】
エストラジオールを過剰の水素化ナトリウムで処理した後、アリルブロマイドを添加すると、化合物3へクリーンに変換された。その後の1.5当量の9-BBNによるヒドロホウ素化によって、末端ヒドロキシ基のみが得られたが、BH3によるヒドロホウ素化は選択性がはるかに低く、付加物の混合がもたらされた。アルコール5を光延反応条件に供し、過フッ素化tert-ブタノールと結合させて化合物6を得た。化合物8のベンジル基の水素化分解によって、フェノール1が得られた。結論として、フェノール1は、5つの合成ステップによって、45%の全収率でエストラジオールから調製された。
【0274】
2bA1.(8R、9S、13S、14S、17S)-3-ベンジルオキシ-17-ヒドロキシエストラ-1、3、5(10)-トリエン(2)
【0275】
(8R、9S、13S、14S、17S)-3-ベンジルオキシ-17-ヒドロキシエストラ-1、3、5(10)-トリエン(2)の合成は、上記のセクション2aA1に開示されている。
【0276】
2bA2.(8R、9S、13S、14S、17S)-17-アリルオキシ-3-ベンジルオキシエストラ-1、3、5(10)-トリエン(3)
【0277】
(8R、9S、13S、14S、17S)-17-アリルオキシ-3-ベンジルオキシエストラ-1、3、5(10)-トリエン(3)の合成は、上記のセクション2aA2に開示されている。
【0278】
2bA3.(8R、9S、13S、14S、17S)-3-ベンジルオキシ-17-(3-ヒドロキシプロポキシ)エストラ-1、3、5(10)-トリエン(7)
【0279】
9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(800mL、THF中の0.5M溶液、安定化、400mmol)を、粗アルケン3(101.2g、251mmol)のTHF(1L)溶液に0℃で滴下し、滴下の完了後、混合物を室温で一晩撹拌した。溶液を0°Cに冷却し、30%NaOH水溶液(150mL、1.3mol)及び35%水溶液(120mL、1.3mol)を徐々に同時に滴下し、得られた不均一混合物を室温で約1時間激しく撹拌した。その後、反応混合物をEtOAc(2L)とブライン(500mL)との間で分配した。有機相を追加の500mLのブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。この手順を同様の方法で繰り返し、両方の部分を組み合わせた。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン中25%から35%の勾配のEtOAc)による濃縮物のさらなる精製によって、アルコール5(130g、310mmol)が白色固体として収率61%で得られた(3ステップ)。
【0280】
2bA4.(8R、9S、13S、14S、17S)-3-ベンジルオキシ-17-[3-(ペルフルオロ-tert-ブチルオキシ)プロポキシ]エストラ-1、3、5(10)-トリエン(8)
【0281】
アゾジカルボン酸ジイソプロピル(80mL、407mmol)を、窒素雰囲気下で、アルコール7(130g、301mmol)、トリフェニルホスフィン(162g、618mmol)、ペルフルオロ-tert-ブタノール(70mL、497mmol)、及び乾燥THF(2L)の撹拌混合物に滴下した。混合物を室温で約18時間撹拌した。反応混合物を部分的に濃縮し、ヘプタン(1L)を加えた。THFを完全に除去した後、沈殿が始まった。濾過を用いて固体を除去し、濾液を濃縮した。アセトニトリル(1.5L)を加え、沈殿が始まっている間に混合物を30分間攪拌した。固体を濾過によって収集し、真空中で乾燥させた。化合物8(160g、251mmol)が、白色固体として収率81%で単離された。
【0282】
2bA5.(8R、9S、13S、14S、17S)-3-ヒドロキシ-17-[3-(ペルフルオロ-tert-ブチルオキシ)プロポキシ]エストラ-1、3、5(10)-トリエン(フェノール1)
【0283】
Parr社の容器に、EtOAc(1L)中のベンジルエーテル8(160g、251mmol)を入れ、それに10%パラジウム炭素(4g)を加えた。混合物を、室温で、水素圧(5バール)下で撹拌した。反応を1H NMRでモニタリングした。約72時間後、反応混合物をセライトパッド(EtOAcで洗い流した)を通して濾過し、炭の上の新鮮な10%パラジウム(4g)と共に水素雰囲気(5バール)に再投入した。約16時間後、反応混合物をセライトパッド(EtOAcで洗い流した)を通して濾過し、濃縮して、フェノール1(125g、228mmol)を灰色がかった固体として91%の収率で得た。
【0284】
2bB.K-29Uの合成
【0285】
構成要素K-29Uの合成については、上記のセクション2aC(2aC1-2aC8)で説明した。
【0286】
2bC.Apo-Si-K-29D-前駆体の合成の完了
【0287】
合成は、Boc保護されたメチルアミノエタノールとフェノール1との間の光延カップリングによって開始された。カップリング(結合)は、約50%の変換をもたらした。しかしながら、カラムクロマトグラフィーを用いて、生成物(K-29C-1)を分離し、出発物質を回収できた。TFAを使用したBoc基の除去により、アミンの酸保護の存在を可能にするための方法であるNaBH(OAc)3を用いた後続の還元的アミノ化が可能になった。その後、チオアセテートのインサイチュ脱保護を用いたジスルフィドの形成が行われ、続いて、当該技術分野で既知の標準手順を使用して、DMT基とホスホルアミデート部分との結合が行われた。
【0288】
【0289】
2bC1.tert-ブチル(2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)カルバメート(K-29C-1)
【0290】
フェノール1(50g、91mmol)及びBoc N-メチルグリシノール(32g、182mmol)の溶液にPPh3(38g、146mmol)を加え、得られた混合物をすべて溶解するまで攪拌した。DIAD(23mL、118mmol)を加え、得られた混合物を64時間撹拌した。混合物を濃縮し、ヘプタンを加えた。得られた沈殿物を濾別し、濾液を濃縮した。粗物質を、カラムクロマトグラフィー(0.1%TEAを含む10%EtOAc/ヘプタン)を用いて精製した(3回)。純粋な画分をプールし、濃縮し、化合物K-29C-1(51g、73mmol、80%)と回収されたフェノール1(5g、9.5mmol、10%)とを得た。
【0291】
2bC2.2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)-N-メチルエタン-1-アミン(K-29C-2)
【0292】
化合物K-29C-1(5.6g、7.9mmol)をEtOAc中の2M HCl(100mL)中で溶解し、得られた溶液を一晩撹拌した。NaOH水溶液(2M、150mL)を加え、すべてが溶解するまで激しく撹拌した。層を分離し、有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮してK-29C-2(4.5g、7.4mmol、94%)をピンク色のオイル性物質として得た。
【0293】
2bC3.S-(2-メチル-4-オキソブタン-2-イル)エタンチオエート(K-5)
【0294】
0℃のジメチルアクロレイン(25mL、435mmol)とチオ酢酸(44mL、608mmol、1.4当量)との混合物に、TEA(31mL、435mmol)を滴下した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。EtOAc及びNaOH(1M)を加えた。層を分離し、有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中の10%EtOAc)によって精製し、K-5を黄色のオイルとして得た(22g、137mmol、32%)
【0295】
2bC4.S-(4-((2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)エタンチオエート(K-29C-3)
【0296】
ジクロロエタン(100mL)中のK-29C-2(2.0g、3.3mmol)の溶液に、Z-8-1(1.1g、6.6mmol、2当量)、酢酸(0.57mL、9.9mmol、3当量)、及びNaBH(OAc)3(2.1g、9.9mmol、3当量)を加え、得られた混合物を4時間撹拌した。NaHCO3(飽和、500mL)を加え、混合物をCH2Cl2(3x、200mL)で抽出した。組み合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中30%EtOAc+0.1%NEt3)を用いて精製し、K-29C-3(1.1g、1.5mmol、44%)を得た。
【0297】
2bC4.N-(6-((4-((2-(((13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)-3-(1-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)プロパンアミド(K-29C-4)
【0298】
ジクロロメタン中の化合物K-29C-3(1当量)及びトシレートK-29U(1.5当量)の溶液を、MeOH中の2M NaOMe(4当量)で処理した。混合物を室温で16時間撹拌した。濁った懸濁液をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。フラッシュを用いたさらなる精製によって、化合物K-29C-4が得られた。
【0299】
2bC5.3-(1-((2R、4S、5R)-5-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-2、4-ジオキソ-1、2、3、4-テトラヒドロピリミジン-5-イル)-N-(6-((4-((2-(((13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)プロパンアミド(K-29C-5)
【0300】
ピリジン中のK-29C-4(1当量)の溶液に、DMT-Cl(2当量)及びDMAP(0.1当量)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した後、混合物を濃縮した。粗物質を、カラムクロマトグラフィーを用いて精製して、化合物K-29C-5を得た。
【0301】
2bC6.(2R、3S、5R)-2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-5-(5-(3-((6-((4-((2-(((13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)アミノ)-3-オキソプロピル)-2、4-ジオキソ-3、4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)テトラヒドロフラン-3-イル(2-シアノエチル)ジイソプロピルホスホロアミダイト(Apo-Si-K29D-前駆体)
【0302】
ジクロロメタン中の化合物K-29C-5(1当量)の溶液に、2-シアノエチルN、N、N´、N-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(1.3当量)を加えた後、0.5MのN-メチルモルホリンの溶液、及びジクロロメタン中の0.25Mトリフルオロ酢酸(ホスホロジアミダイト剤に対して1当量のN-メチルモルホリン)を滴下した。得られた混合物を室温で2時間撹拌した後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、撹拌をさらに10分間続けた。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーを用いたさらなる精製によって、化合物Apo-Si-K-29D-前駆体が得られた。
【0303】
実施例2c:Apo-Si-K-18-前駆体の合成
【0304】
【0305】
2cA.フェノール2の合成
【0306】
フェノール2の合成は、上記のセクション2aA(2aA1-2aA6)で説明した。
【0307】
2cB.K-1-7の合成
【0308】
構成要素K-1-7の合成は、上記のセクション2aB(2aA1-2aA6)で説明した。
【0309】
2cC.K-6の合成
【0310】
最後の構成要素K-6は、チオトシル酸カリウムのクロロヘキサノールへの置換反応によって調製された。
【0311】
【0312】
S-(6-ヒドロキシヘキシル)4-メチルベンゼンスルホノチオエート(K-6)
【0313】
3-クロロヘキサン-1-オール(5.0mL、36.6mmol)を、ジメチルホルムアミド(DMF、150mL)及びカリウムp-トルエンチオスルホネート(KST、12.4g、54.9mmol、1.5当量)中で溶解し、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI、1.35g、3.66mmol、0.1当量)を添加した。得られた混合物を80℃で一晩撹拌した。H2O(500mL)及びEtOAc/ヘプタン(800mL、1/1、v/v)を加えた。層を分離し、有機層をH2O(300mL)及びブライン(300mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮してK-6(9.0g、31.2mmol、85%)を透明なオイルとして得た。
【0314】
2cD.Apo-Si-K-18-前駆体の合成の完了
【0315】
フェノール2から開始するApo-Si-K-18の合成の完了をスキーム4に示す。構成要素K-1-7を、光延条件を用いてフェノール2にカップリングした。硫黄上のフルオレニル保護基を脱保護するためのいくつかの初期試験の後、K-6の存在下でK-18-1をインサイチュで脱保護して、ジスルフィドK-18-2を形成できることがわかった。
【0316】
【0317】
適切なホスホロジアミデート剤を使用したホスホルアミデートの最終的な結合により、Apo-Si-K-18を簡単に入手できた。酸に不安定なホスホルアミデートへの曝露の前にEt3Nで不活性化した後、フラッシュクロマトグラフィーを用いて、この材料が精製された。
【0318】
結論として、化合物Apo-Si-K-18(2×350mg)は、フェノール2から合理的な全収率で、11ステップでエストラジオールから調製された。
【0319】
2cD1.2-(((13S、14S、17S)-3-(3-(((9H-フルオレン-9-イル)メチル)チオ)-3-メチルブトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-17-イル)オキシ)-N-(2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)-N-メチルエタン-1-アミン(K-18-1)
【0320】
THF(40mL)中のフェノール2(1.47g、2.5mmol)の溶液に、アルコールK-1-7(1.48g、5.0mmol)、トリフェニルホスフィン(0.91g、3.5mmol)及びアゾジカルボン酸ジイソプロピル(0.6mL、2.9mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。濃縮後、混合物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中20%EtOAc及び1%Et3N)を用いてさらに精製し、K-18-1(1.5g、1.7mmol)を透明なオイルとして収率67%で得た。
【0321】
2cD2.6-((4-(((13S、14S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキサン-1-オール(K-18-2)
【0322】
ジクロロメタン(15mL)中の化合物K-18-1(400mg、0.45mmol)及びトシレートK-6(388mg、1.34mmol)の溶液を、MeOH(0.9mL、1.8mmol)中の2M NaOMeで処理した。混合物を室温で16時間撹拌した。濁った懸濁液をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中30%~40%EtOAc+1%Et3N)を用いたさらなる精製によって、化合物K-18-2(220mg、0.27mmol)を無色のオイルとして収率59%で得た。
【0323】
2cD3.2-シアノエチル(6-((4-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)ジイソプロピルホスホロアミダイト(Apo-Si-K-18-前駆体)
【0324】
ジクロロメタン(25mL)中の化合物K-18-2(656mg、0.79mmol)の溶液に、2-シアノエチルN、N、N´、N-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.31mL、1mmol)を加えた後、0.5MのN-メチルモルホリンの溶液及びジクロロメタン中の0.25Mトリフルオロ酢酸(2.1mL、ホスホロジアミダイト剤に対して1当量のN-メチルモルホリン)を滴下した。黄色がかった溶液を室温で2時間撹拌した後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、撹拌をさらに10分間続けた。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中30%EtOAc及び1%Et3N)を用いたさらなる精製によって、化合物Apo-Si-K-18-前駆体(480mg、0.47mmol)を透明なオイルとして収率59%で得た。また、出発物質K-18-2(193mg、0.23mmol)が29%の収率で回収された。
【0325】
実施例2d:Apo-Si-K-13-前駆体の合成
【0326】
【0327】
2dA.フェノール1の合成
【0328】
フェノール1の合成は、上記のセクション2bA(2bA1-2bA5)で説明した。
【0329】
2dB.Apo-Si-K-13-前駆体の合成の完了
【0330】
フェノール1は、光延反応条件を使用してBoc保護されたメチルアミノエタノールにカップリングされ、中程度の収率(43%)で化合物K-13-1が得られた。トルフルオロアセト酸(TFA)を用いてBoc基を除去すると、TFA塩としてK-13-2が得られ、それを、還元剤としてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを使用したK-5によるその後の還元的アミノ化に使用した。純粋な生成物の収率は、チオールからアミンへの酢酸塩の移動に起因してやや低く、基質の一部がブロックされて所望の生成物とさらに反応する。
【0331】
メタノール中のナトリウムメトキシドをK-13-3及びK-6の溶液に加え、K-13-3から酢酸塩を除去し、得られたチオールをK-6と反応させて所望の硫黄橋を形成した。化合物K-13-4を適切なホスホロアミダイト剤と反応させて、Apo-Si-K-13-前駆体を得た。酸に不安定なホスホロアミダイト生成物の精製は、Et3Nで前処理したシリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーを使用して行った。
【0332】
結論として、化合物Apo-Si-K-13-前駆体(622mg)は、フェノール1から5ステップで調製された。フェノール1は、エストラジオールから5つの合成ステップによって45%の全収率で調製された。
【0333】
【0334】
2dB1.tert-ブチル(2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)カルバメート(K-13-1)
【0335】
THF(600mL)中のフェノール1(23.4g、42.7mmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(26g、100mmol)、tert-ブチル(2-ヒドロキシエチル)(メチル)カルバメート(9.8g、61mmol)、及び滴状DIAD(12mL、61mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。黄色がかった溶液を部分的に濃縮し、ヘプタンを加え、溶液をさらに濃縮してすべてのTHFを除去した。得られた沈殿物を濾別し、濾液を濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中5%~7%の勾配のEtOAc)を使用したさらなる精製により、化合物K-13-1(13.05g、18.5mmol)を黄色がかったオイルとして収率43%で得た。
【0336】
2dB2.S-(4-((2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)エタンチオエート(K-13-3)
【0337】
化合物K-13-1(13.05g、18.5mmol)の溶液をジクロロメタン(65mL)中で溶解し、トリフルオロ酢酸(40mL)を加えた。混合物を2時間撹拌した後、泡立ちは停止した。混合物を濃縮し、そのまま使用した。残渣を1、2-ジクロロエタン(400mL)中で溶解し、酢酸(5mL、75mmol)、アルデヒドK-5(6g、37mmol)を加え、5分間撹拌を続けた。次に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(16g、75mmol)を加え、混合物を室温で16時間撹拌した。混合物を1M NaOH及びブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。さらなる精製によって、化合物K-13-3(3.0g、4mmol)が、透明な黄色がかったオイルとして22%の収率で得られた。
【0338】
2dB3.S-(6-ヒドロキシヘキシル)4-メチルベンゼンスルホノチオエート(K-6)
【0339】
3-クロロヘキサン-1-オール(5.0mL、36.6当量)をDMF(150mL)中で溶解し、KST(12.4g、54.9mmol、1.5当量)及びTBAI(1.35g、3.66mmol、0.1当量)を加えた。得られた混合物を80℃で一晩撹拌した。H2O(500mL)及びEtOAc/ヘプタン(800mL、1/1、v/v)を加えた。層を分離し、有機層をH2O(300mL)及びブライン(300mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮してK-6(9.0g、31.2mmol、85%)を透明なオイルとして得た。
【0340】
2dB4.6-((4-((2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキサン-1-オール(K-13-4)
【0341】
ジクロロメタン(30mL)中の化合物K-13-3(1g、1.34mmol)及びトシレートK-6(770mg、2.7mmol)の溶液を、MeOH(2mL、4mmol)中の2M NaOMeで処理した。混合物を室温で16時間撹拌した。濁った懸濁液をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中30%EtOAc+1%Et3N)を使用したさらなる精製により、化合物K-13-4(650mg、0.77mmol)を無色のオイルとして58%の収率で得た。
【0342】
2dB5.2-シアノエチル(6-((4-((2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)ジイソプロピルホスホロアミダイト(Apo-Si-K-13-前駆体)
【0343】
ジクロロメタン(25mL)中の化合物K-13-4(650mg、0.77mmol)の溶液に、2-シアノエチルN、N、N´、N´-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.3mL、1mmol)を加え、0.5MのN-メチルモルホリン溶液、及びジクロロメタン中の0.25Mトリフルオロ酢酸を滴下した(2mL、ホスホロアミダイト剤に対して1当量のN-メチルモルホリン)。黄色がかった溶液を室温で2時間撹拌した。次に、反応混合物を重炭酸ナトリウム飽和水溶液でクエンチし、撹拌をさらに10分間続けた。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中30%EtOAc及び1%Et3N)を使用してさらに精製することによって、化合物Apo-Si-K-13(622mg、0.60mmol)が透明なオイルとして収率78%で得られた。
【0344】
実施例2e:Apo-Si-K-40-前駆体の合成
【0345】
0.5MのN-メチルモルホリンの溶液、及びジクロロメタン中の0.25Mトリフルオロ酢酸を滴下した
【化51】
【0346】
2eA.フェノール2の合成
【0347】
フェノール2の合成については、上記のセクション2aA(2aA1-2aA6)で説明した。
【0348】
2eB.K-1-7の合成
【0349】
構成要素K-1-7の合成については、上記のセクション2aB(2aA1-2aA6)で説明した。
【0350】
2eC.K-40-2の合成
【0351】
【0352】
2eC1.2-(6-クロロヘキシル)マロン酸ジエチル(K-40-5)
【0353】
DMF(300mL)中のNaH(2.6g、66mmol、1当量)の氷冷懸濁液に、マロン酸ジエチル(20mL、131mmol、2当量)を滴下した。添加が完了した後、氷浴を取り除き、混合物を室温まで温めながら1時間撹拌した。混合物は透明な溶液になった。混合物を0℃に冷却し、1-ブロモ-6-クロロヘキサン(9.8mL、66mmol、1当量)を滴下した。得られた混合物を0℃で1時間、室温でさらに3時間撹拌した。濃HCl(3mL)及びH2O(500mL)でクエンチした。反応混合物をEtOAc/ヘプタン(1/1、v/v、3x400mL)で抽出した。組み合わせた有機物をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中5%EtOAc)を使用して精製して、K-40-5(9.7g、35mmol、53%)を透明なオイルとして得た。
【0354】
2eC2.2-(6-クロロヘキシル)プロパン-1、3-ジオール(K-40-6)
【0355】
Et2O(250mL)中のLiAlH4(2.6g、70mmol)の氷冷した懸濁液に、温度を10℃未満に保ちながら、K-40-5(9.7g、35mmol)の溶液を30分かけて滴下した。添加が完了した後、反応混合物を0℃で2時間撹拌した。反応物を、H2O(5mL)、NaOH(水溶液、30%、2.5mL)、H2O(12mL)の順に反応をクエンチした。得られた混合物を室温で1時間撹拌した後、不溶性の白色沈殿物が形成された。沈殿物を濾別し、濾液を濃縮して、K-40-6(6.1g、31mmol、90%)を無色のオイルとして得た。
【0356】
2eC3.S-(8-ヒドロキシ-7-(ヒドロキシメチル)オクチル)4-メチルベンゼンスルホノチオエート(K-40-2)
【0357】
塩化物K-40-6(6.1g、31mmol)をDMF(200mL)中で溶解し、チオトシル酸カリウム(10.7g、47mmol、2当量)及びTBAI(1.2g、3.1mmol、0.1当量)を加えた。得られた混合物を80℃で24時間撹拌した後、真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(7:3 EtOAc:ヘプタン)を使用して粗物質を精製して、主に生成物を含む1つの画分(5.6 g)と、生成物及び出発物質の両方を含む第2の画分(3.3g)とを得た。後者の画分をDMF(100mL)中に溶解し、チオトシル酸カリウム(4.5g、20mmol)及びTBAI(0.37g、1.0mmol)を加えた。得られた混合物を80℃で24時間撹拌し、EtOAc(350mL)及びヘプタン(350mL)を加えた。有機物をH2O(500mL)及びブライン(250mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。粗物質を最初のカラムからの生成物含有画分と組み合わせ、粗物質をカラムクロマトグラフィー(7:3 EtOAc:ヘプタン)を用いて精製し、K-40-2(8.2g、24mmol、75%)をピンクがかったオイルとして得た。
【0358】
2eD.Apo-Si-K-40-前駆体の合成の完了
【0359】
フェノール2と構成要素K-1-7とを光延条件下で結合させて、保護されたチオールK-40-1を得た。フルオレニル基は、K-40-2の存在下でNaOMeによってインサイチュで除去し、ジスルフィドK-40-3を得た。最後に、DMT保護基とホスホロアミダイト基とを結合させて、最終化合物Apo-Si-K-40-前駆体を得た。
【0360】
【0361】
2eD1.2-(((13S、14S、17S)-3-(3-(((9H-フルオレン-9-イル)メチル)チオ)-3-メチルブトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)-N-(2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)-N-メチルエタン-1-アミン(K-40-1)
【0362】
THF(40mL)中のフェノール2(1.47g、2.5mmol)の溶液に、アルコールK-1-7(1.48g、5.0mmol)、トリフェニルホスフィン(0.91g、3.5mmol)及びアゾジカルボン酸ジイソプロピル(0.6mL、2.9mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。濃縮後、混合物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中20%EtOAc及び1%Et3N)を使用してさらに精製し、K-40-1(1.5g、1.7mmol)を透明なオイルとして収率67%で得た。
【0363】
2eD2.2-(6-((4-(((13S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)プロパン-1、3-ジオール(K-40-3)
【0364】
ジクロロメタン中の化合物K-40-1(1当量)及びトシレートK-40-2(1.5当量)の溶液をMeOH中の2M NaOMe(4当量)で処理した。混合物を室温で16時間撹拌した。濁った懸濁液をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュを用いたさらなる精製によって、化合物K-40-3を得た。
【0365】
2eD3.2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-8-((4-(((13S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)オクタン-1-オール(K-40-4)
【0366】
ピリジン中のK-40-3(1当量)の溶液に、DMT-Cl(2当量)及びDMAP(0.1当量)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した後、混合物を濃縮した。カラムクロマトグラフィーを用いて残渣を精製して、化合物K-40-4を得た。
【0367】
2eD4.2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-8-((4-(((13S、17S)-17-(2-((2-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)エトキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)オクチル(2-シアノエチル)ジイソプロピルホスホロアミダイト(Apo-Si-K40-前駆体)
【0368】
ジクロロメタン中の化合物K-40-4(1当量)の溶液に、2-シアノエチルN、N、N´、N-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(1.3当量)を加えた後、0.5MのN-メチルモルホリン溶液、及びジクロロメタン中の0.25Mトリフルオロ酢酸を滴下した(ホスホロジアミダイト剤に対して1.3当量のN-メチルモルホリン)。得られた混合物を室温で2時間撹拌した後、重炭酸ナトリウム飽和水溶液でクエンチし、撹拌をさらに10分間続けた。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーを使用したさらなる精製によって、化合物Apo-Si-K-40-前駆体を得た。
【0369】
実施例2f:Apo-Si-K-43-前駆体の合成
【0370】
【0371】
2fA.フェノール1の合成
【0372】
フェノール1の合成については、上記のセクション2aA(2aA1-2aA6)で説明した。
【0373】
2fB.構成要素K-43-4の合成
【0374】
【0375】
ジエチルマロネートを水素化ナトリウム及びブロモクロロヘキサンと反応させて、アルキル化生成物K-43-7を得た。水素化アルミニウムリチウムで処理すると、ジエステルがジオールK-43-8に還元された。化合物K-43-8をチオトシル酸カリウムと反応させて、所望の構成要素K-43-4を得た。
【0376】
2fB1.2-(6-クロロヘキシル)マロン酸ジエチル(K-43-7)
【0377】
DMF(300mL)中のNaH(2.6g、66mmol、1当量)の氷冷懸濁液に、マロン酸ジエチル(20mL、131mmol、2当量)を滴下した。得られた混合物を室温まで温めながら1時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、1、6-ブロモクロロヘキサン(9.8mL、66mmol、1当量)を徐々に加えた。得られた混合物を0℃で1時間、室温で3時間撹拌した。HCl(2M、3mL)で反応をクエンチし、水(500mL)を加えた。混合物をEtOAc/ヘプタン(1/1、v/v、3×400mL)で抽出し、組み合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘプタン中5%EtOAc)によるさらなる精製によって、化合物K-43-7(9.7g、34.8mmol、53%)を透明なオイルとして得た。
【0378】
2fB2.2-(6-クロロヘキシル)プロパン-1、3-ジオール(K-43-8)
【0379】
ジエチルエーテル(200mL)中のLiAlH4(2.6g、70mmol、2当量)の氷冷懸濁液に、ジエチルエーテル(50mL)中のK-43-7(9.7g、35mmol、1当量)の溶液を、混合物の温度を10°C未満に保ちながら、徐々に加えた。得られた混合物を0℃で2時間撹拌した後、水(5mL)、NaOH(30%水溶液、2.5mL)、及び水(12mL)をこの順序で添加することによって反応をクエンチした。得られた混合物を室温で1時間撹拌した後、形成された固体を濾別した。濾液を真空中で濃縮して、化合物K-43-8(6.1g、31mmol、90%)を無色のオイルとして得た。
【0380】
2fB3.S-(8-ヒドロキシ-7-(ヒドロキシメチル)オクチル)4-メチルベンゼンスルホノチオエート(K-43-4)
【0381】
DMF(200mL)中のK-43-8(6.1g、31mmol)の溶液に、チオトシル酸カリウム(11g、47mmol、1.5当量)及びTBAI(1.2g、3.1mmol)を加えた。得られた混合物を80℃で一晩撹拌した後、混合物を濃縮した。カラムクロマトグラフィーによる精製によって、K-43-4(5.6g、16mmol、52%)をピンクがかったオイルとして得た。
【0382】
2fC.Apo-Si-K-43-前駆体の合成の完了
【0383】
フェノール1を、光延反応条件を用いて、Boc保護されたメチルアミノエタノールにカップリングし、中程度の収率(43%)で化合物K-13-1を生成した。TFAを用いたBoc基の除去により、TFA塩としてK-13-2が得られ、それを、還元剤としてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを使用したK-5によるその後の還元的アミノ化に使用した。
【0384】
【0385】
メタノール中のナトリウムメトキシドをK-43-3及びK-43-4の溶液に加え、K-43-3から酢酸塩を除去し、得られたチオールをK-43-4と反応させて、所望の硫黄橋を形成した。化合物K-43-5をDMT-Clと反応させて、モノ保護ジオールK-43-6を得た。適切なホスホロアミダイト剤との反応によって、Apo-Si-K-43前駆体(1.6g)が得られた。酸に不安定なホスホロアミダイト生成物の精製は、Et3Nで前処理されたシリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーを使用して行った。
【0386】
2fC1.tert-ブチル(2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)カルバメート(K-43-1)
【0387】
THF(600mL)中のフェノール1(23.4g、42.7mmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(26g、100mmol)、tert-ブチル(2-ヒドロキシエチル)(メチル)カルバメート(9.8g、61mmol)、及び滴状DIAD(12mL、61mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。黄色がかった溶液を部分的に濃縮し、ヘプタンを加え、溶液をさらに濃縮してTHFをすべて除去した。得られた沈殿物を濾別し、濾液を濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中の勾配5%~7%のEtOAc)を使用したさらなる精製によって、化合物K-43-1(13.05g、18.5mmol)を黄色がかったオイルとして収率43%で得た。
【0388】
2fC2.SS-(4-((2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)エタンチオエート(K-43-3)
【0389】
化合物K-43-1(13.05g、18.5mmol)の溶液をジクロロメタン(65mL)中で溶解し、トリフルオロ酢酸(40mL)を加えた。混合物を2時間撹拌した後、泡立ちが止まった。混合物を濃縮し、そのまま使用した。残渣を1、2-ジクロロエタン(400mL)中で溶解し、酢酸(5mL、75mmol)、アルデヒドK-5(6g、37mmol)を加え、5分間撹拌を続けた。次に、トリアセトキシホウ水素化ナトリウム(16g、75mmol)を加え、混合物を室温で16時間撹拌した。混合物を1M NaOH及びブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。さらなる精製により、化合物K-43-3(3.0g、4mmol)を透明な黄色がかったオイルとして22%の収率で得た。
【0390】
2fC3.2-(6-((4-((2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)ヘキシル)プロパン-1、3-ジオール(K-43-5)
【0391】
メタノール(100mL)中の化合物K-43-3(2.2g、2.9mmol)及びトシレートK-43-4(1.5g、4.4mmol)の溶液を、MeOH(1.6mL、8.7mmol)中の5.4M NaOMeで処理した。混合物を室温で2時間撹拌した。混合物をNaHCO3及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中20-30%アセトン+1%Et3N)を用いてさらに精製することによって、化合物K-43-5(1.3g、1.5mmol)を無色のオイルとして50%の収率で得た。
【0392】
2fC4.2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-8-((4-((2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)オクタン-1-オール(K-43-6)
【0393】
K-43-5(1.3g、1.5mmol、1当量)の溶液に、Et3N(0.2mL、1.5mmol、1当量)及びDMAP(17mg、0.15mmol、0.1当量)を加えた。得られた混合物にDMT-Cl(0.49g、1.5mmol、1当量)を加えた。得られたオレンジ色の混合物を室温で一晩攪拌すると、黄色に変わった。メタノール(30mL)を加え、混合物を1時間攪拌した後、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘプタン中20%アセトン及び1%Et3N)による精製によって、化合物K-43-6(1.5g、1.3mmol、86%)を黄色のオイルとして得た。
【0394】
2fC5.2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-8-((4-((2-(((8R、9S、13S、14S、17S)-17-(3-((1、1、1、3、3、3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)プロポキシ)-13-メチル-7、8、9、11、12、13、14、15、16、17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナンスレン-3-イル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メチルブタン-2-イル)ジスルファニル)オクチル(2-シアノエチル)ジイソプロピルホスホロアミダイト(Apo-Si-K-43-前駆体)
【0395】
ジクロロメタン(25mL)中の化合物K-43-6(1.5g、1.25mmol)の溶液に、2-シアノエチルN、N、N´、N´-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.51mL、1.6mmol、1.3当量)と、0.5MのN-メチルモルホリン溶液及びジクロロメタン中の0.25Mトリフルオロ酢酸(3.3mL、ホスホロアミダイト剤に対して1当量のN-メチルモルホリン)とを加えた。黄色がかった溶液を室温で2時間撹拌した。TLC(ヘプタン中20%アセトン及び1%Et3N)は不完全な変換を示したので、追加の0.5当量の2-シアノエチルN、N、N´、N´-テトライソプロピルホスホロジアミダイトを加えた。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。次に、反応混合物を重炭酸ナトリウム飽和水溶液でクエンチした。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中の10%アセトン及び1%Et3N)を用いたさらなる精製によって、化合物Apo-Si-K-43-前駆体(1.6g、1.1mmol)を、わずかに黄色のオイルとして91%の収率で得た。
【0396】
実施例2g:Apo-Si-K-63-前駆体の合成。化学式(PP-3)
【0397】
【0398】
Apo-Si-K-63-前駆体の構造は、Apo-Si-K-43-前駆体の構造と非常に類似しているが、唯一の違いは6炭素原子の断片、直鎖炭化水素である。したがって、合成は、実施例2fに記載されているApo-Si-K-43-前駆体の合成と非常に類似している。
【0399】
2gA.フェノール1の合成
【0400】
フェノール1の合成については、上記のセクション2aA(2aA1-2aA6)で説明した。
【0401】
2gB.構成要素K-43-4の合成
【0402】
構成要素K-43-4の合成については、上記のセクション2fB(2fB1-2fB3)で説明した。
【0403】
2gC.直鎖炭化水素断片:1、6-ジブロモヘキサンは市販されている。
【0404】
2gD.Apo-Si-K-63-前駆体の合成の完了。化学式(PP-3)
【0405】
【0406】
実施例3:オリゴヌクレオチド鎖内の内部位置での本発明のE部分の結合モード
【0407】
化学式(Va´P)に示される構造を有するE部分の前駆体を例示する。最初に、E部分は保護された形態で、デオキシリボース部分の3´-位置及び5´-位置に4、4´-ジメトキシトリチル(DMT)及びホスホルアミダイト基をそれぞれ有している。
【0408】
【0409】
オリゴヌクレオチド鎖内の統合は、通常のオリゴヌクレオチド合成における任意のヌクレオシド構成要素の組み込みと同様に実行され、
図2に記載されているように、結果として生じる配置をもたらす。
【0410】
実施例4:カーゴ薬物(例えばsiRNA)を放出するための、細胞質内のE部分の酸化還元媒介の脱離及び除去
【0411】
上記のように、少なくとも1つのE、E´またはE´´部分は、siRNAまたはdsiRNAコンジュゲートの膜貫通に必要であるが、コンジュゲートが細胞質に到達すると、これらの部分を除去し、体から排出することが望ましい。カーゴ薬物がsiRNAまたはdsiRNAである場合、この切断はsiRNAまたはdsiRNAと遺伝子サイレンシングタンパク質複合体(Dicer及びRISC)との相互作用における立体的な問題を回避するために有益である。加えて、E部分からのカーゴ薬物のこのような分離は、細胞リン脂質膜上のコンジュゲートの負担を最小化し、これは安全性の観点から有利である。この目的のために、本発明のE部分はジスルフィド部分を含む。細胞外環境に広く見られるような酸化条件下では、ジスルフィドは安定しているので、インビボでの全身投与時に、コンジュゲートが体内に分布し、細胞のリン脂質膜を通過して細胞に到達する。対照的に、細胞質は高度に還元された環境であり、主に、任意の生細胞の細胞質内で連続的に生成される還元グルタチオンが高濃度であるので、細胞質と細胞外空間との間は約4桁の濃度勾配に達する。細胞質内のこれらの顕著な還元条件に起因して、E部分のジスルフィド基は、細胞質環境において安定した還元を受ける。その結果、細胞質内の標的部位(たとえば、遺伝子サイレンシングのためのダイサーまたはRISCタンパク質複合体)で薬理作用を発揮するために、カーゴ薬物(例えば、dsiRNA)が放出される。同時に、本発明のE部分は、他のステロールベースの分子(例えば、エストロゲン)と同様に、直接または代謝後(例えば、肝臓内のシトクロムP-450-媒介ヒドロキシル化)のいずれかに、胆汁及び/または尿を介して体から排出される。このレドックス媒介切断は、
図2、
図3、及び
図4に例示されている。図は、化学式(Va´)、化学式(Vc´)、または化学式(Vc´´)によるE部分を含むRNA二本鎖を示している。コンジュゲートは酸化的条件においてインタクトであるが、細胞外空間に存在するもの(
図2A)のように、その特徴的な還元条件に起因して細胞質に侵入すると、ジスルフィド結合が切断され(
図3、4)、細胞質の標的部位(例えば、RISC)で薬理活性を発揮するためにカーゴ薬物が放出されるが、E部分は他のステロールベースの化合物と同様に体から排出される。スルフヒドリル基のgem-ジメチル部分によってもたらされる立体障害は、酸化されたジスルフィド形態で血液に安定性を与え、切断後の遊離スルフヒドリル形態を安定化するようにさらに作用する。
【0412】
実施例5:本発明のコンジュゲートの構造の例
【0413】
化学式(Cn-14)によるコンジュゲートを例示する。コンジュゲートは、RNA二本鎖の5´末端、及びオリゴヌクレオチド鎖に沿った内部位置にある、化学式(Vc´´´)による、E、E´、及びE´´部分へのD(dsiRNA)の結合を含む。
【0414】
【0415】
この例では、Rはリン酸基であるが、R´は水素である。示されているように、ダイサー基質RNA二本鎖(dsiRNA)のパッセンジャー(センス)鎖の5´末端にあるリン酸基は、ダイサーのRNA結合部位の正電荷ポケットと相互作用し、その活性と、この酵素によって媒介される、結果として生じる全体的な遺伝子サイレンシングとを促進する(実施例7を参照)。
【0416】
実施例6:無血清(S-)条件、及び血漿タンパク質の存在((S+)条件)における本発明のコンジュゲートのパフォーマンス
【0417】
目的:この実施例は、ODなどの高分子薬物に結合した化学式(II)による重要な化学的部分を含むコンジュゲートが、リン脂質膜を介して細胞に送達され、(S-)条件及び(S+)条件の両方において、遺伝子サイレンシングをそれぞれ行うことができることの実証を目的としている。対照的に、構造が化学式(II)にしたがっていない類似の化合物は、膜貫通送達において完全に不活性であるか、無血清条件でのみ遺伝子サイレンシングを誘導する必要がある。
【0418】
方法
【0419】
E部分:本発明のE、E´またはE´´部分:化学式(Vb´)によるApo-Si-K-18、及び化学式(Vb´´)によるApo-Si-K-13、化学式(II)に記載されているすべての構造的特徴に準拠する。その構造は以下の通りである。
【0420】
【0421】
【0422】
各E部分は、dsiRNA二本鎖のオリゴヌクレオチド鎖の5´末端に結合していた。Apo-Si-K-18及びApo-Si-K-13を、前述の実施例にしたがって合成した。さらに、以下の構造的に関連する部分(Apo-Si-K-19、Apo-Si-W、及びApo-Si-G)がコントロールとして機能し、それらはApo-Si-K-18及びApo-Si-K-13と実質的な構造的類似性を共有しているにもかかわらず、これらの部分は、以下のように、化学式(II)のすべての構造的特徴に完全には準拠していない。(i)Apo-Si-K-19ではU及びQの両方がヌルではないが、化学式(II)はUまたはQのいずれかがヌルであることを意味する。(ii)Apo-Si-Wは、化学式(II)の不可欠な部分であるジスルフィド部分を含まない。(iii)Apo-Si-Gでは、U及びQの両方がヌルであるが、化学式(II)はQまたはUのいずれかがヌル以外であることを意味する。
【0423】
【0424】
【0425】
【0426】
コンジュゲート:1つの25ヌクレオチド長鎖と1つの27ヌクレオチド長鎖とでそれぞれ構成されるRNA二本鎖を、EGFR(Enhanced Green Fluorescent Protein)をコードする遺伝子の発現をサイレンシングすることを目的としたダイサー基質(dsiRNA)として設計した。オリゴヌクレオチド配列は以下のとおりであった。
【0427】
アンチセンス鎖配列
【0428】
5´-E-CGGUGGUGCAGAUGAACUUCAGGGUCA-3´(配列番号1)
【0429】
センスRNA配列
【0430】
5´-E-ACCCUGAAGUUCAUCUGCACCACCG-3´(配列番号2)
【0431】
Eは、本発明のE、E´若しくはE´´、またはそれぞれのコントロールを意味する。r=リボース及びm(例えばmG)=リボース部分の2´-ヒドロキシルでのメチル化。各二本鎖は、本発明のE部分(Apo-Si-K-18またはApo-Si-K-13)、またはそれぞれの制御部分(Apo-Si-K-19、Apo-Si-W、またはApo-Si-G)のいずれかである2つの同一のE部分に結合していた。
【0432】
したがって、まとめて5つのコンジュゲートが合成され、それぞれがEGFP遺伝子をサイレンシングするためのdsiRNAを含み、それぞれが2つのE部分に結合していた。2つは、Apo-Si-K-13またはApo-Si-K-18部分のいずれかを含む本発明のコンジュゲートであるが、3つのコンジュゲートはコントロールコンジュゲートであり、dsiRNA二本鎖はApo-Si-G、Apo-Si-K-19、またはApo-Si-W部分のいずれかに結合していた。各コンジュゲートに、そのE部分に応じて名前を付けた。
【0433】
細胞培養
【0434】
HeLa-EGFP細胞株は、Cell Biolabs社から入手した。細胞を、10%FBS(Gibco)、100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン(Biological Industries社、イスラエル)、及びブラストサイジン10μg/mlを添加したダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した。5%CO2加湿空気で、37°Cのインキュベーターで細胞を維持した。
【0435】
トランスフェクションの1日前に、細胞を24ウェルのガラス底のブラックプレートに播種した(40,000細胞/ウェル)。翌日、10%胎児ウシ血清[FBS、血清(+)条件]の存在下で、Apo-Si-K-18コンジュゲート若しくはApo-Si-K-13コンジュゲート(本発明のコンジュゲート)、またはそれぞれのコントロールと共に細胞をインキュベートした。無血清条件でのインキュベーションのために、培地を吸引し、細胞をハンクスの平衡塩液(HBSS)で洗浄し、培地を無血清Opti-MEM培地(Thermo Fisher Scientific社)に交換した。24時間後、培地を10%FCS培地に交換した。すべての細胞のインキュベーション期間は72時間であった。40~300nMの用量の範囲で、様々な濃度のコンジュゲートを評価した。
【0436】
遺伝子発現のダウンレギュレーション
【0437】
遺伝子発現のダウンレギュレーションを、トランスフェクションの72時間後に測定した。この目的のために、培地を吸引し、細胞をHBSSで洗浄した。タンパク質発現を、EGFP蛍光の強度測定によって測定し、infinite M200-Proマルチモードリーダー(Tecan社);励起波長488nm、発光波長535nmによって定量化した。実験を3回繰り返して行い、EGFP蛍光の結果を未処理細胞(すなわち、コンジュゲートで処理していない)の蛍光強度と比較した。結果を、コントロールと比較した蛍光強度の割合として表示した。群間差の有意性は、p<0.05を有意と定義して、両側t検定によって評価した。
【0438】
結果
【0439】
本発明のコンジュゲート:Apo-Si-K-13、及びApo-Si-K-18
【0440】
無血清条件:Apo-Si-K-13及びApo-Si-K-18の両方のコンジュゲートは、細胞による強力な取り込みと、それぞれの効果的な遺伝子サイレンシングとを示した。Apo-Si-K-13コンジュゲートは、40nMのコンジュゲートで75.5+2.0%のサイレンシングを示した(平均+標準偏差)。サイレンシングは、150nMのコンジュゲートで86.6+0.5%に増加した。Apo-Si-K-18コンジュゲートは、40nMのコンジュゲートで68.4+0.5%(平均+標準偏差)、150nMのコンジュゲートで84.7+0.2%サイレンシングに増加した、同様のサイレンシング効果を示した(p<0.001、コントロール、すなわち未処理細胞と比較したt検定)。
【0441】
血清の存在下:血清の存在下では、Apo-Si-K-13とApo-Si-K-18の両方のコンジュゲートが有意な遺伝子サイレンシングを提供した。Apo-Si-K-13コンジュゲートは、300nMで15.5+3.2%、600nMで44+1.5%に増加する遺伝子サイレンシングをもたらしたが、Apo-Si-K-18コンジュゲートは、300nMで65.4+0.6%の遺伝子サイレンシングをもたらした(平均+標準偏差);(コントロール、すなわち未処理細胞と比較、p<0.001、t検定)。
【0442】
対照コンジュゲート:Apo-Si-G、Apo-Si-K-19、Apo-Si-W
【0443】
無血清条件:無血清条件では、Apo-Si-Gコンジュゲートは細胞による強力な取り込みと、それぞれの効果的な遺伝子サイレンシングとを示した。Apo-Si-Gコンジュゲートは、40nMで40.7±2.2%(平均+標準偏差)、150nMで70.9±1.1%に増加したサイレンシングを示した。Apo-Si-K-19は、150nMで37.7+0.8%(平均+標準偏差)の遺伝子サイレンシングを示した(コントロール、すなわち未処理細胞と比較してp<0.001)。
【0444】
血清の存在下:コントロールコンジュゲートApo-Si-G、Apo-Si-K-19、及びApo-Si-Wはいずれも、本発明のコンジュゲートと構造的に類似しているにもかかわらず、血清の存在下で遺伝子サイレンシングを示さなかった。Apo-Si-Wコンジュゲートは、無血清条件下でも遺伝子サイレンシングを示さなかった。
【0445】
結果の要約
【0446】
Apo-Si-K-13及びApo-Si-K-18の両方のコンジュゲートは、インビトロで細胞とインキュベートすると、強力な取り込みと、遺伝子サイレンシングとを示した。両方のコンジュゲートによって発揮される遺伝子サイレンシング活性は、培地中の血漿タンパク質の存在下または非存在下のいずれか、すなわち、(S+)条件下と(S-)条件下との両方でそれぞれ明らかであった。
【0447】
本発明のコンジュゲートのこの性能は、コントロールコンジュゲートのパフォーマンスとは明確に対照的であった。Apo-Si-G及びApo-Si-K-19コンジュゲートは無血清(S-)条件下での遺伝子サイレンシングでアクティブであったが、Apo-Si-Wコンジュゲートはアクティブではなかった。コントロールコンジュゲートはいずれも、血漿タンパク質の存在下((S+)条件)での遺伝子サイレンシングにおいてアクティブではなかった。
【0448】
議論
【0449】
この実施例に示されるように、化学式(II)に示される構造を有する本発明の重要な化学的部分は、実際に、細胞膜を介した細胞への送達、及び生物学的効果の誘導、すなわちサイレンシングにおいて、関連するコンジュゲートの強力なパフォーマンスを必要とする。このパフォーマンスは、(S-)条件下と(S+)条件下との両方で観察された。重要なことに、本発明のコンジュゲート及びコントロールコンジュゲートのパネルは、化学式(II)による本発明の重要な化学的部分に関する重要な構造/機能の観点を提供する:すべてのコンジュゲートのE部分、本発明のコンジュゲートとコントロールコンジュゲートとの両方は、ステロール骨格とノナ-フルオロtert-ブタノール残基とを含む。しかしながら、明らかに、これは無血清条件下でも活性を付与するのに十分ではなかった(例えば、活性を示さなかったコンジュゲートApo-Si-Wの結果に反映されている)。E部分ごとにジスルフィド基を追加すると、無血清条件下での活性が必要になる(例えば、本発明のコンジュゲートApo-Si-K-13とApo-Si-K-18とのコンジュゲートのパフォーマンス、及び無血清条件下でのコントロールコンジュゲートApo-Si-Gのパフォーマンス)。しかしながら、これは血漿タンパク質の存在下でパフォーマンスを発揮するのに十分ではなかった。
【0450】
対照的に、各E部分にヌルでないUまたはQ部分を1つ追加すると、Apo-Si-K-18またはApo-Si-K-13コンジュゲートで観察された効果的な遺伝子サイレンシングによって示されるように、血漿タンパク質の存在下でコンジュゲートの活性が付与された。Apo-Si-K-19によって予期していない観察が行われ、E部分ごとにU及びQの両方がヌルではない場合、それぞれのコンジュゲートの生物学的パフォーマンスに対して有害であることが示された。
【0451】
まとめると、これらのデータは、化学式(II)が、膜貫通送達とその結果としての遺伝子サイレンシングにおけるそれぞれのコンジュゲートの所望のパフォーマンスを累積的かつ相互作用的に必要とする、様々な決定遺伝子間の、ユニークであり、新しく、かつ予測不可能な均衡を実際に表すという理解を支持している。
【0452】
実施例7:本発明のダイサー基板の性能に対する5´-リン酸塩のプラスの影響
【0453】
目的:化学式Cn-1、Cn-2、Cn-3、Cn-4、Cn-6、Cn-7、Cn-8、またはCn-9のいずれかに記載されている構造を有するダイサー基板は、パッセンジャー(センス)RNA鎖の5´末端に、リン酸、硫酸、またはカルボキシル基も含み、ダイサー酵素のRNAアンカー部位に存在する、正に帯電したアミノ酸残基が並んだ結合ポケットと相互作用する。実験は、そのような負に帯電した部分によって発揮される、本発明のダイサー基質のパフォーマンスに対する有益な影響を実証するために実施した。
【0454】
方法:実験では、それぞれが、実施例6に記載されているように、EGFP遺伝子の発現を抑制する特定の配列を有している2つのダイサー基質を使用した。dsiRNAの1つはさらに、パッセンジャー(センス)鎖の5´末端に結合したリン酸基を有していたが[(P+)dsiRNAで示す]、他のdsiRNAは、パッセンジャー(センス)鎖の5´末端は、末端ヌクレオチドの5´-ヒドロキシルであった[(P-)dsiRNAで示す]。Cell Biolabs社から入手したHeLa-GFP細胞株を、10%FBS(Gibco)、100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン(Biological Industries社、イスラエル)及びブラストサイジン10μg/mlを添加したダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した。細胞を、5%CO2加湿空気で、37°Cのインキュベーターで維持した。トランスフェクションの1日前、完全培地を含む24ウェルのブラックガラス底プレートに、抗生物質を添加せずに細胞(40,000細胞/ウェル)を播種した。翌日、0.1nM dsiRNAと1ulのトランスフェクション試薬とを使用して、製造説明書にしたがって、準最適条件下でRNAiMAX(Lipofectamine、Invitrogen社)を細胞にトランスフェクトした。次に、細胞をトランスフェクション混合物とともに24時間インキュベートした後、抗生物質を含まない完全培地を添加した(1ml/ウェル)。タンパク質のダウンレギュレーションを、トランスフェクションの72時間後に測定した:この目的のために、培地を吸引し、細胞をHBSSで洗浄した。EGFP蛍光強度を、488nmの励起波長、及び535nmの発光波長で、infinite M200-Proマルチモードリーダー(Tecan社)によって定量化した。
【0455】
結果:使用した最適ではない低用量(0.1nM dsiRNA)では、(P-)dsiRNAはEGFPレベルを20+2%下方制御した(平均+標準偏差)。対照的に、(P+)dsiRNAは遺伝子発現を67+2%抑制した(p<0.0001;t検定)。
【0456】
結論:パッセンジャー(センス)鎖の5´末端にリン酸基を含むダイサー基質は、この基を欠いているdsiRNAと比較して、遺伝子サイレンシングにおいて有利な性能を示した。
【0457】
実施例8:ダイサー基質である本発明のコンジュゲートの作用機構
【0458】
図3及び4は、本発明のコンジュゲートの作用機構(MOA)を例示している。化学式(Cn-3)及び(Cn-9)によるコンジュゲートがそれぞれ例示されており、RNA二本鎖は、リン酸基がパッセンジャー鎖の5´末端に結合している25/27ヌクレオチド長のダイサー基質である:細胞質に到達すると、著しく還元的な周囲条件に起因して、E、E´及びE´´部分の切断及び除去が行われ、6炭素の炭化水素鎖に結合したチオール基を含む各E部分ごとに短い断端(stump)が残る。(
図3及び
図4a)。次に、RNA二本鎖は、ダイサーエンドヌクレアーゼと相互作用する。この相互作用は、2ヌクレオチドのオーバーハングから構成されるガイド(アンチセンス)鎖二本鎖の3´末端の、タンパク質の疎水性ポケットへの結合、及びパッセンジャー(センス)鎖のリン酸基の、タンパク室表面の正電荷を有するポケットとの相互作用によって開始される。このアンカーによって、RNAがタンパク質上に配置され、RNA二本鎖の正確な二本鎖切断が可能になり、残りの1つのE断端に結合された21/21-ヌクレオチドの二重らせんが残る(
図3及び
図4b)。
図3及び
図4cは、酵素ヘリカーゼ(RNA鎖を分離することができる細胞質酵素)によるセンス鎖の除去を示している。この作用により、所望の遺伝子サイレンシングを誘導するために、2番目のE残基の断端が除去されて、インタクトのアンチセンス鎖が解放され、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に入る(
図3及び
図4d)。
【0459】
実施例9:本発明の化合物を血漿タンパク質とインキュベートすると、アルブミン結合画分及び無アルブミン画分の両方が観察された。
【0460】
目的:本発明の化合物がアルブミンとインキュベートされたときに、アルブミン結合画分及び無アルブミン画分の両方が見られ、したがって血清(+)条件において観察される活性について潜在的な作用機構を支持するかどうかを評価するために実験を実施した。
【0461】
根拠:本発明のコンジュゲートの主な利点は、血漿タンパク質の非存在下及び存在下の両方で生物学的活性を示す能力である。薬物の血漿タンパク質への結合は、循環中の薬物の半減期の延長や分解からの保護など、さまざまな態様で有利である。しかしながら、アルブミンへの結合親和性が高すぎると、薬物がその標的細胞と相互作用できる可能性が不当に制限される可能性がある。したがって、本発明のコンジュゲートは、アルブミンとの相互作用の際に、血漿タンパク質に結合する画分(アルブミン結合画分)と、細胞外液中に自由に拡散して標的細胞に到達し、相互作用する画分(無アルブミン画分)との両方を有することが望ましい。本実施例は、本発明のコンジュゲートのこれらの特徴を実証するために実施した。
【0462】
方法
【0463】
ゲル電気泳動を使用して、本発明のコンジュゲートがウシ血清アルブミン(BSA)にどの程度結合しているかを調べた。遊離画分を検出するために、RNAサンプルをTrisバッファー、pH=8で希釈し、BSA(10%)を2mg/mlの最終濃度まで添加した(レーンB)。対照サンプルは水で希釈した(レーンA)。
【0464】
各群(AまたはB)について、レーンを以下の表にしたがって指定した。
【0465】
【0466】
すべてのサンプルを25℃で一晩インキュベートした。次に、すべてのレーンのRNAサンプルを12%の天然ポリアクリルアミドゲルにロードし(レーンあたり19pmol)、5V/cmの電界で1時間移動させた(Bio-Rad社、mini-protean instrument、イスラエル所在)。
【0467】
結果
【0468】
図5に示すように、E部分Apo-Si-K-13またはApo-Si-K-18を含む本発明のコンジュゲートのインキュベーションにより、2つの画分が生成された:1つはアルブミン結合(矢印#1)、1つは無アルブミン(矢印#2)。対照的に、Apo-Si-GのE部分を含むコントロールコンジュゲートには画分が1つしかなかった:アルブミン結合画分のみが観察された。
【0469】
結論:これらの発見は、Apo-Si-K18またはApo-Si-K-13部分を含む本発明のコンジュゲートが、アルブミンとの接触時に2つの画分:アルブミン結合画分及び無アルブミン画分、を示すことを実証した。血漿タンパク質が存在する場合でも、このコンジュゲートは、自由に拡散して標的細胞と相互作用する非結合画分を示すので、これは、血漿タンパク質の存在下(S+)及び非存在下(S-)の両方で観察される生物学的性能(例えば、遺伝子サイレンシング)を説明することができる。対照的に、Apo-Si-Gコンジュゲートなどのコントロールコンジュゲートは、アルブミンに対して非常に大きな親和性を持っているため、アルブミン結合画分のみを示す。これらのコントロールコンジュゲートは、アルブミンとの相互作用時に、標的細胞との相互作用のために細胞外空間を介した拡散に必要な遊離画分を有していないため、無血清条件においてのみ活性を示す。
【0470】
実施例10:3つのE部分を含む本発明のコンジュゲートは、無血清[(S-)条件]と血漿タンパク質の存在[(S+)条件]との両方で、2つのE部分のみを含むコンジュゲートよりも優れている。
【0471】
方法
【0472】
これらの実験で使用されたE部分はApo-Si-K-43であり、化学式(Vc´´)に示されているように、以下の構造を有していた。
【0473】
【0474】
前記E部分を含む2つのコンジュゲートを調べた:1つは2つのE部分を含み、1つはオリゴヌクレオチドに結合した3つのE部分を含んでいた。各コンジュゲートは、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)をコードする遺伝子の発現をサイレンシングすることを目的とした、1つの25ヌクレオチド長鎖と1つの27ヌクレオチド長鎖とを含むダイサーの基質RNA二本鎖(dsiRNA)を含んでいた。したがって、EGFP遺伝子の発現のサイレンシングは、本発明のE部分によって可能にされた、インビトロでの膜貫通送達後に評価される生物学的機能として選択された。前記dsiRNAのヌクレオチド配列は、実施例6で上述したとおりであった。
【0475】
コンジュゲートの1つは、以下の構造を有する(すなわち、2つのE部分を有する)コンジュゲート(Cn-7)であった。
【0476】
【0477】
第2のコンジュゲートはコンジュゲート(Cn-9)であり、以下の構造を有していた(すなわち、3つのE部分を有していた)。
【0478】
【0479】
両方のコンジュゲートにおいて、すべてのR及びR´部分はリン酸基であった。
【0480】
細胞培養
【0481】
HeLa-EGFP細胞株はCell Biolabs社から入手した。細胞を、10%FBS(Gibco)、100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン(Biological Industries社、イスラエル所在)、及びブラストサイジン10μg/mlを添加したダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で増殖させた。37°Cのインキュベーターで、5%CO2加湿空気で細胞を維持した。
【0482】
トランスフェクションの1日前に、ガラス底の24ウェルブラックプレートに細胞を播種した(40,000細胞/ウェル)。翌日、10%ウシ胎児血清[FBS、血清(+)条件]の存在下で、細胞をコンジュゲート(Cn-7)またはコンジュゲート(Cn-9)のいずれかと共にインキュベートした。無血清条件[血清(-)条件]でのインキュベーションでは、培地を吸引し、細胞をハンクスの平衡塩溶液(HBSS)で洗浄し、培地を無血清Opti-MEM培地(Thermo Fisher Scientific社)に交換した。24時間後、残りのインキュベーション期間(合計72時間)、培地を10%FCS培地に交換した。細胞をコンジュゲート(Cn-7)またはコンジュゲート(Cn-9)のいずれかと共にインキュベートした:血清なしの条件[(S-)条件]では150nM、血漿タンパク質の存在下[(S+)条件]では600nMの線量。
【0483】
遺伝子発現のダウンレギュレーション
【0484】
遺伝子発現のダウンレギュレーションを、トランスフェクションの72時間後に測定した。この目的のために、培地を吸引し、細胞をHBSSで洗浄した。タンパク質発現を、EGFP蛍光の強度の測定によって測定し、infinite M200-Proマルチモードリーダー(Tecan社)によって定量化した;励起波長488nm、発光波長535nm。実験を3回繰り返して行い、EGFP蛍光の結果を未処理(すなわち、コンジュゲートで処理していない)細胞の蛍光強度と比較した。結果を、他のコンジュゲートの蛍光強度と比較した蛍光強度のパーセンテージとして提示した。コンジュゲート間の差の有意性は、有意であると定義されたp<0.05で、両側t検定によって評価した。
【0485】
結果
【0486】
無血清条件:複合体Cn-7及びCn-9は両方とも、細胞による有意な取り込み、及びそれぞれの効果的な遺伝子サイレンシングを示した。コンジュゲートCn-7は、150nMのコンジュゲートで41.4+1.0%の遺伝子サイレンシングを示した(平均+標準偏差)。コンジュゲートCn-9は、150nMのコンジュゲートで61.0+0.5%の、より高いサイレンシング効果を示した。コンジュゲート間の差は統計的に有意であった(p<0.001、Cn-7とCn-9コンジュゲートとの間のt検定比較)。
【0487】
血清の存在下:コンジュゲートCn-7及びCn-9の両方は、細胞による有意な取り込み、及びそれぞれの効果的な遺伝子サイレンシングを示した。コンジュゲートCn-7は、コンジュゲートの濃度600nMで12.3+1.6%の遺伝子サイレンシングをもたらし、Cn-9はその濃度で25.4+1.0%のより強い遺伝子サイレンシングをもたらした(平均+標準偏差)、(p<0.001、Cn-7コンジュゲートとCn-9コンジュゲートとの間のt検定比較)。
【0488】
コンジュゲートCn-7及びCn-9は両方とも、インビトロで細胞と共にインキュベートすると、有意な取り込み及び遺伝子サイレンシングを示した。両方のコンジュゲートによって発揮される遺伝子サイレンシング活性は、培地中の血漿タンパク質の有無、すなわち、(S+)条件と(S-)条件との両方において明らかであった。サイレンシングは、無血清条件において、より大きな振幅(amplitude)であり、これらの条件でのアルブミンへのコンジュゲートの競合的結合のそれぞれの欠如とおそらく一致する。重要なことに、(S+)条件と(S-)条件との両方で、遺伝子サイレンシングは、2つのE部分のみを含むコンジュゲート(Cn-7)と比較して、3つのE部分を含むコンジュゲート(Cn-9)において統計的に有意であった。
【0489】
結論
【0490】
本発明の2個または3個のE部分を含むDsiRNAは、インビトロで有意な遺伝子サイレンシングを示した。前記遺伝子サイレンシングは、培地中の血漿タンパク質の存在下または非存在下のいずれかで発生した。3つのE部分を含むコンジュゲートは、有意な遺伝子サイレンシングの提供において、2つのE部分のみを含むコンジュゲートよりも有利である。
【配列表】