(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】充放電制御装置、充放電システム、充放電制御方法及び充放電制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H02J7/00 B
(21)【出願番号】P 2020005970
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】杉山 暢克
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有美
(72)【発明者】
【氏名】森田 朋和
(72)【発明者】
【氏名】石井 恵奈
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-118790(JP,A)
【文献】特開2014-185896(JP,A)
【文献】特開2014-096940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、
前記セルブロックのそれぞれにおいてセルブロック容量、正極容量及び負極容量のいずれか1つに対する流れる電流の比率を電流負荷とした場合に、前記セルブロックのそれぞれの
前記電流負荷又は前記電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御する、
コントローラを具備する、充放電制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記電流負荷に関連する前記パラメータとして、前記組電池のSOC(State OF Charge)を推定し、
前記組電池の前記SOCに関して、前記セルブロックのそれぞれの開回路電圧特性における開回路電圧の充電量での二次微分値が他の範囲より大きくなる所定の範囲を規定した場合に、前記組電池の前記SOCが
前記所定の範囲内であることに少なくとも基づいて、前記組電池の前記SOCが前記所定の範囲から外れる場合に比べて、前記組電池に流れる電流を抑制する、
請求項1の充放電制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記セルブロックのそれぞれに流れる電流の測定値を用いて、前記セルブロックのそれぞれの前記電流負荷を算出し、
前記組電池の前記SOCが前記所定の範囲内であることに加え、前記セルブロックのいずれかにおいて前記電流負荷が閾値以上であることに基づいて、前記組電池に流れる電流を抑制する、
請求項2の充放電制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記セルブロックのそれぞれに流れる電流の測定値を用いて、前記セルブロックのそれぞれの前記電流負荷を算出し、
算出した前記電流負荷に基づいて、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御する、
請求項1の充放電制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記セルブロックのいずれかにおいて前記電流負荷が閾値以上であることに基づいて、前記セルブロックのいずれにおいても前記電流負荷が前記閾値より小さい場合に比べて、前記組電池に流れる電流を抑制する、
請求項4の充放電制御装置。
【請求項6】
前記セルブロックのそれぞれには、互いに対して並列な複数の可変抵抗の対応する1つが直列に接続され、
前記コントローラは、算出した前記電流負荷に基づいて前記可変抵抗のそれぞれの抵抗値を調整することにより、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御する、
請求項4又は5の充放電制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項の充放電制御装置と、
前記充放電制御装置によって充放電が制御される前記組電池と、
を具備する充放電システム。
【請求項8】
1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電を制御する充放電制御方法であって、
前記セルブロックのそれぞれにおいてセルブロック容量、正極容量及び負極容量のいずれか1つに対する流れる電流の比率を電流負荷とした場合に、前記セルブロックのそれぞれの
前記電流負荷又は前記電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御することを具備する、充放電制御方法。
【請求項9】
1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電において、コンピュータに、
前記セルブロックのそれぞれにおいてセルブロック容量、正極容量及び負極容量のいずれか1つに対する流れる電流の比率を電流負荷とした場合に、前記セルブロックのそれぞれの
前記電流負荷又は前記電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御させる、
充放電制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、充放電制御装置、充放電システム、充放電制御方法及び充放電制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報関連機器及び通信機器等の普及に伴い、二次電池が、機器の電源として広く普及している。また、二次電池は、電気自動車(EV)及び自然エネルギー等の分野にも、活用されている。特に、リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、かつ、小型化が可能であるため、幅広く使用されている。リチウムイオン二次電池では、正極活物質及び負極活物質がリチウムイオンを吸蔵及び放出することにより、電気エネルギーが貯蔵及び放出される。充電時には、正極から放出されたリチウムイオンが負極で吸蔵され、放電時には、負極から放出されたリチウムイオンが正極で吸蔵される。
【0003】
リチウムイオン二次電池等の二次電池では、複数の単セルを電気的に直列に接続することにより、高電圧化及び高容量化が実現される。また、複数のセルブロックが互いに対して電気的に並列に接続された組電池が、電源として用いられることがある。この場合、セルブロックのそれぞれは、1つ以上の単セルを備える。また、セルブロックが複数の単セルを備える場合、セルブロックでは、複数の単セルの直列接続構造のみが形成されるか、又は、複数の単セルの直列接続構造及び並列接続構造の両方が形成される。
【0004】
複数のセルブロックが並列に接続される組電池では、セルブロック間で同一種類の単セルを用い、かつ、セルブロック間で単セルの数及び接続構造が同一であっても、セルブロック間で単セルの容量及び内部抵抗等の性能が異なったり、接続される配線の抵抗がセルブロック間で異なったりする。このため、組電池では、セルブロックごとに、性能が異なる可能性がある。また、充放電を繰返すことにより、セルブロック間で劣化の度合いが異なり、容量及び内部抵抗等の性能がセルブロック間でばらつく可能性がある。組電池では、性能がセルブロック間でばらついても、セルブロック間で電流負荷が過度に大きくばらつくことが防止され、セルブロック間での劣化のばらつきの拡大が抑制されることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-193040号公報
【文献】特開2012-251806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複数のセルブロックが並列に接続される組電池において、セルブロック間で電流負荷が過度に大きくばらつくことを防止する充放電制御装置、充放電システム、充放電制御方法及び充放電制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電を制御する充放電制御装置が提供される。充放電制御装置のコントローラは、セルブロックのそれぞれにおいてセルブロック容量、正極容量及び負極容量のいずれか1つに対する流れる電流の比率を電流負荷とした場合に、セルブロックのそれぞれの電流負荷又は電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御する。
【0008】
実施形態によれば、1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電を制御する充放電制御方法が提供される。充放電制御方法では、セルブロックのそれぞれにおいてセルブロック容量、正極容量及び負極容量のいずれか1つに対する流れる電流の比率を電流負荷とした場合に、セルブロックのそれぞれの電流負荷又は電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、セルブロックのそれぞれに流れる電流が制御される。
【0009】
実施形態によれば、1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電においてコンピュータに実行させる充放電制御プログラムが提供される。充放電制御プログラムでは、コンピュータに、セルブロックのそれぞれにおいてセルブロック容量、正極容量及び負極容量のいずれか1つに対する流れる電流の比率を電流負荷とした場合に、セルブロックのそれぞれの電流負荷又は電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る充放電システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の充放電システムの組電池の回路モデルを示す概略図である。
【
図3A】
図3Aは、2個のセルブロックが設けられる組電池のモデルを用いた演算において設定された、セルブロックのそれぞれの開回路電圧特性、及び、組電池の電圧特性を示す概略図である。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aの演算において算出された、セルブロックのそれぞれを流れる電流のSOCに対する変化を示す概略図である。
【
図3C】
図3Cは、
図3Aの演算において算出された、セルブロックのそれぞれの電流負荷のSOCに対する変化を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るコントローラによって、組電池の充放電制御において行われる処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る充放電システムを示す概略図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係るコントローラによって、組電池の充放電制御において行われる処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3の実施形態に係る充放電システムを示す概略図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態に係るコントローラによって、組電池の充放電制御において行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る充放電システム1を示す。
図1に示すように、充放電システム1は、組電池2、負荷及び電源(符号3で示す)、電流測定部(電流測定回路)5、電圧測定部(電圧測定回路)6、充放電制御装置7及び駆動回路8を備える。組電池2は、複数のセルブロックB
1~B
nを備える。組電池2では、セルブロックB
1~B
nは、互いに対して電気的に並列に接続される。
【0013】
セルブロックB
1~B
nのそれぞれは、1つ以上の単セル11を備える。単セル11は、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池である。
図1の一例では、セルブロックB
1~B
nのそれぞれにおいて、複数の単セル11が電気的に直列に接続され、複数の単セル11の直列接続構造が形成される。そして、セルブロックB
1~B
nでは、直列接続される単セル11の数が、互いに対して同一になる。なお、ある一例では、セルブロックB
1~B
nのいずれかは、1つの単セル11のみから形成されてもよい。また、別のある一例では、セルブロックB
1~B
nのいずれかにおいて、複数の単セル11の直列接続構造に加えて、複数の単セル11が電気的に並列に接続される並列接続構造が形成されてもよい。
【0014】
組電池2は、充放電可能である。組電池2に電源から電力が供給されることにより、組電池2が充電される。また、組電池2から放電された電力は、負荷に供給される。組電池2は、電子機器、車両及び定置用電源装置等に搭載される。組電池2を充電する電力を供給する電源としては、組電池2とは別体の電池、及び、発電機等が挙げられる。また、組電池2から放電された電力が供給される負荷としては、電動機及び照明機器等が挙げられる。ある一例では、電動発電機が、電源及び負荷の両方として機能してもよい。電流測定部5は、組電池2に流れる電流Iを検出及び測定する。電圧測定部6は、組電池2に印加される電圧Vcを検出及び測定する。
【0015】
充放電制御装置7は、コントローラ12を備える。コントローラ12は、コンピュータを構成し、プロセッサ及び記憶媒体を備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal Processor)等のいずれかを含む。記憶媒体には、メモリ等の主記憶装置に加え、補助記憶装置が含まれ得る。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、及び、半導体メモリ等が挙げられる。コントローラ12では、プロセッサ及び記憶媒体のそれぞれは、1つであってもよく、複数であってもよい。コントローラ12のプロセッサは、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。また、コントローラ12のプロセッサによって実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークを介して接続されたコンピュータ(サーバ)、又は、クラウド環境のサーバ等に格納されてもよい。この場合、プロセッサは、ネットワーク経由でプログラムをダウンロードする。ある一例では、充放電制御装置7は、IC(Integrated Circuit)チップ等から形成される。
【0016】
コントローラ12は、組電池2に流れる電流Iの電流測定部5による測定値、及び、組電池2に印加される電圧Vcの電圧測定部6による測定値を取得する。電流測定部5での電流Iの測定、及び、電圧測定部6での電圧Vcの測定は、例えば、所定のタイミングで、定期的に行われる。このため、コントローラ12は、電流Iの測定値、及び、電圧Vcの測定値を、所定のタイミングで定期的に取得する。したがって、電流Iの時間変化(時間履歴)、及び、電圧Vcの時間変化(時間履歴)が、コントローラ12によって、取得される。また、コントローラ12は、駆動回路8の駆動を制御することにより、組電池2の充放電を制御する。これにより、組電池2の充電及び放電のそれぞれにおいて、組電池2を流れる電流が制御される。
【0017】
また、コントローラ12は、電流負荷判断部13及び充放電制御部15を備える。電流負荷判断部13及び充放電制御部15は、コントローラ12のプロセッサ等によって行われる処理の一部を、実施する。電流負荷判断部13は、セルブロックB1~Bnのそれぞれの電流負荷に関連する判断を行う。電流負荷に関連する判断は、所定のタイミングで定期的に行われる。充放電制御部15は、電流負荷判断部13での判断結果に基づいて、駆動回路8の駆動を制御し、組電池2の充放電を制御する。
【0018】
図2は、n個のセルブロックB
1~B
nが互いに対して並列に接続された組電池2の回路モデルを示す。ここで、
図2に示すモデルにおいて、組電池2全体の電圧をV
cとし、組電池2に流れる電流をIとする。また、セルブロックB
k(kは1~nの任意の1つ)の充電量Q
k、充電量Q
kを変数とするセルブロックB
kの開回路電圧V
k(Q
k)、セルブロックB
kの配線を含めた内部抵抗R
k、セルブロックB
kに流れる電流i
kを、規定する。
図2のモデルでは、以下の式(1)及び式(2)が成立する。なお、充電量Qは、例えば、SOC(State Of Charge)が0%の状態を基準(ゼロ)として示され、充電量Qの単位は、例えば、(mA・h)又は(A・h)等になる。
【0019】
【0020】
ここで、式(1)のdtは、微小時間を示す。そして、式(3)で示す一次近似の関係を用いて式(1)及び式(2)を整理すると、式(4)及び式(5)の関係が成立する。
【0021】
【0022】
したがって、内部抵抗R1~Rn、開回路電圧V1(Q1)~Vn(Qn)、及び、開回路電圧V1(Q1)~Vn(Qn)の充電量Qでの一次微分値V1´(Q1)~Vn´(Qn)を用いて、セルブロックB1~Bnの電流i1~inを算出可能になる。また、セルブロックB1~Bnのそれぞれにおいて、すなわち、セルブロックBkにおいて、電流負荷Pkを規定すると、電流負荷Pkは式(6)のようになる。
【0023】
【0024】
ここで、パラメータFkとしては、セルブロックBkの充電容量(満充電容量)又は放電容量等の容量(セルブロック容量)、及び、セルブロックBkの正極容量及び負極容量等のいずれかが用いられ、セルブロックBkの内部状態を示すパラメータが用いられる。ここで、充電容量(満充電容量)とは、SOCがO%の状態からSOCが100%の状態までのセルブロックBkの充電量であり、放電容量とは、SOCが10O%の状態からSOCが0%の状態までのセルブロックBkの放電量である。そして、セルブロックBkでは、正極端子と負極端子との間の電圧がVα1になる状態が、SOCが0%の状態と規定され、正極端子と負極端子との間の電圧がVα1より大きいVα2になる状態が、SOCが100%の状態として規定される。
【0025】
また、正極容量とは、正極の充電量が初期充電量から上限充電量になるまでのセルブロックBkの充電量である。そして、正極電位がVβ1になる状態での正極の充電量が初期充電量と規定され、正極電位がVβ1より高いVβ2になる状態での正極の充電量が上限充電量と規定される。また、負極容量とは、負極の充電量が初期充電量から上限充電量になるまでのセルブロックBkの充電量である。そして、負極電位がVγ1になる状態での負極の充電量が初期充電量と規定され、負極電位がVγ1より低いVγ2になる状態での負極の充電量が上限充電量と規定される。
【0026】
式(6)において、パラメータFkとしてセルブロックBkの充電容量(満充電容量)を用いると、電流負荷Pkは、実質的にセルブロックBkの充電レートに相当し、充電容量(満充電容量)に対応した値になる。また、Fkとして充電容量の代わりに前述の放電容量が用いられると、電流負荷Pkは、実質的にセルブロックBkの放電レートに相当し、放電容量に対応した値になる。
【0027】
ここで、組電池2に2個のセルブロックB1,B2が設けられる場合、すなわち、n=2の場合について、説明する。セルブロックB1,B2のモデルでは、式(1)と同様の関係から、式(7)が成立する。
【0028】
【0029】
そして、式(3)で示す一次近似の関係を用いて式(7)を整理すると、式(8)の関係が成立する。
【0030】
【0031】
そして、式(8)において、i2=I-i1を代入すると、式(9)が成立する。
【0032】
【0033】
そして、dtを微小時間だと仮定する。これにより、V1´(Q1)dtは、R1に対して無視可能な大きさであると近似され、V2´(Q2)dtは、R2に対して無視可能な大きさであると近似される。これにより、式(10)が成立する。
【0034】
【0035】
また、式(8)において、i1=I-i2を代入し、式(8)にi2=I-i1を代入した場合と同様にして整理すると、式(11)が成立する。
【0036】
【0037】
そして、式(10)から式(11)を減算することにより、セルブロックB1を流れる電流i1とセルブロックB2を流れる電流i2との差が、式(12)のように算出される。
【0038】
【0039】
ここで、式(12)の分子のV2(Q2)-V1(Q1)は、セルブロックB1の開回路電圧とセルブロックB2の開回路電圧との差に対応する大きさになる。ここで、セルブロックB1,B2は、互いに対して同種のセルブロック(電池)であるとする。そして、劣化によってセルブロックB1,B2の容量が互いに異なっても、開回路電圧特性(充電量又はSOCに対する開回路電圧の関係)は、セルブロックB1,B2間でほとんど変わらないものとする。この場合、セルブロックB1の満充電容量(充電容量)FCC1、セルブロックB2の満充電容量(充電容量)FCC2、及び、関数として示されるセルブロックB1,B2の開回路電圧特性Vを規定すると、式(13)の関係が成立する。なお、開回路電圧特性Vは、セルブロックB1,B2間でほとんど変わらないものと仮定した場合の、セルブロックB1,B2の開回路電圧特性である。
【0040】
【0041】
式(12)に式(13)を代入すると、式(14)の関係が成立する。
【0042】
【0043】
そして、式(15)のように仮定し、式(15)を式(14)に代入すると、式(16)の関係が成立する。
【0044】
【0045】
ここで、電流I及び内部抵抗R1,R2がほとんど変化しないとすると、式(16)の分子は、開回路電圧特性Vの傾きの大きさに対応して変化し、セルブロックB1,B2のそれぞれにおける充電量に対する電圧の傾きの大きさに対応して変化する。そして、式(16)の分子は、開回路電圧特性Vの傾きが大きいほど、大きい。
【0046】
組電池2に流れる充電電流又は放電電流が一定で、かつ、開回路電圧特性Vの傾きが一定であれば、電流i1,i2の差(i1-i2)は、変化しない。このため、セルブロックB1,B2のそれぞれにおいて、満充電容量(充電容量)等の容量に対応した電流が流れる。一方、開回路電圧特性Vの傾きが大きく変化すると、電流i1,i2の差(i1-i2)は、大きく変化する。すなわち、セルブロックB1,B2のそれぞれの開回路電圧特性Vにおいて充電量に対する電圧の傾きの変化が大きい範囲では、セルブロックB1,B2のそれぞれに流れる電流が、大きく変化し得る。このため、セルブロックB1,B2の一方に、大きな電流が流れ、セルブロックB1,B2の一方の電流負荷が大きくなる可能性がある。
【0047】
また、組電池2に電流が流れていない状態では、組電池2の電圧特性(充電量又はSOCに対する電圧の関係)は、セルブロックB1~Bnのそれぞれの開回路電圧特性(充電量又はSOCに対する開回路電圧の関係)と、同一であると仮定される。ここで、前述のように、セルブロックB1~Bnのそれぞれの開回路電圧特性Vにおいて充電量に対する電圧の傾きの変化が大きい範囲では、セルブロックB1~Bnのそれぞれに流れる電流が、大きく変化し得る。したがって、組電池2の開回路電圧特性において充電量に対する電圧の傾きの変化が大きい範囲では、セルブロックB1~Bnのそれぞれに流れる電流が、大きく変化し得る。すなわち、組電池2の開回路電圧の充電量での二次微分値が大きい範囲では、セルブロックB1~Bnのそれぞれに流れる電流が、大きく変化し得る。
【0048】
また、互いに対して容量及び内部抵抗が異なる2個のセルブロックB
1,B
2が設けられる組電池2のモデルを用いて、実際に演算を行った。演算に用いたモデルでは、セルブロックB
2に比べて、セルブロックB
1において、充電容量等の容量を小さくし、内部抵抗を高くした。すなわち、セルブロックB
2に比べて、セルブロックB
1において、劣化の度合いを大きくした。この結果、セルブロックB
1でのSOCに対する開回路電圧V
1の関係(開回路電圧特性)が、
図3Aの実線で示すように設定され、セルブロックB
2でのSOCに対する開回路電圧V
2の関係(開回路電圧特性)が、
図3Aの破線で示すように設定された。また、組電池2に流す電流Iを調整することで、組電池2でのSOCに対する電圧V
cの関係(電圧特性)が、
図3Aの一点鎖線で示すように設定された。なお、
図3Aでは、横軸がSOCを示し、縦軸が電圧を示す。
【0049】
演算では、開回路電圧V
1,V
2が及び電圧V
cが前述のように設定された場合において、セルブロックB
1に流れる電流i
1及びセルブロックB
2に流れる電流i
2を算出するとともに、セルブロックB
1の電流負荷P
1及びセルブロックB
2の電流負荷P
2を算出した。そして、
図3Bに示すように、SOCに対する電流i
1,i
2のそれぞれの関係を算出するとともに、
図3Cに示すように、SOCに対する電流負荷P
1,P
2のそれぞれの関係を算出した。電流負荷P
k(kは1及び2の任意の一方)の算出に用いるパラメータF
kとしては、充電容量(SOC0%から100%までの放電容量)を用いた。なお、
図3Bでは、横軸がSOCを示し、縦軸が電流を示す。そして、
図3Bでは、電流i
1のSOCに対する変化を実線で、電流i
2のSOCに対する変化を破線で示す。また、
図3Cでは、横軸がSOCを示し、縦軸が電流負荷を示す。そして、
図3Cでは、電流負荷P
1のSOCに対する変化を実線で、電流負荷P
2のSOCに対する変化を破線で示す。
【0050】
図3A乃至
図3Cに示すように、演算の結果、SOCが70%又はその近傍になる場合、及び、SOCが90%以上になる場合に、開回路電圧V
1,V
2の差は、大きくなった。そして、SOCが70%及びその近傍の範囲内、及び、90%以上の範囲内のいずれかである場合、すなわち、SOCが開回路電圧V
1,V
2の差が大きくなる所定の範囲内である場合に、電流i
1,i
2が大きく変化した。このため、SOCが前述の所定の範囲内である場合は、容量が小さく、かつ、劣化の度合いが大きいセルブロックB
1の電流i
1が、過度に大きくなった。一方、SOCが前述の所定の範囲から外れる場合、すなわち、SOC0%とSOC100%と間において前述の所定の範囲を除く大部分では、容量の小さいセルブロックB
1の電流i
1が、セルブロックB
2の電流i
2より小さくなった。
【0051】
また、SOCが前述の所定の範囲から外れる場合、すなわち、SOC0%とSOC100%と間において前述の所定の範囲を除く大部分では、セルブロックB1の電流負荷P1がセルブロックB2の電流負荷P2より小さいか、又は、電流負荷P1,P2の間にほとんど差がなかった。一方、SOCが70%及びその近傍の範囲内、及び、90%以上の範囲内のいずれかである場合、すなわち、SOCが前述の所定の範囲内である場合は、劣化の度合いが大きいセルブロックB1の電流負荷P1が過度に大きくなり、電流負荷P1,P2のばらつきが過度に大きくなった。
【0052】
本実施形態では、前述した組電池2のSOCに対するセルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnの関係に基づいて、コントローラ12は、組電池2の充放電を制御する。そして、コントローラ12のプロセッサは、コントローラ12の記憶媒体、又は、コントローラ12とネットワークを介して接続されたサーバ等から、組電池2のSOCに対するセルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnの関係を示す情報を、取得する。組電池2のSOCに対するセルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnの関係を示す情報には、劣化の度合いが大きいセルブロック(B1~Bnのいずれか)において電流負荷(P1~Pnのいずれか)が大きくなり易い組電池2のSOCの範囲、すなわち、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnが大きくばらつき易い組電池2のSOCの範囲が、含まれる。
【0053】
そして、コントローラ12は、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnが大きくばらつき易い組電池2のSOCの前述の範囲を、組電池2のSOCについての所定の範囲として取得する。そして、組電池2の充電及び放電のそれぞれにおいて、コントローラ12は、組電池2のリアルタイムのSOCが前述の所定の範囲内である場合は、組電池2に流れる電流Iを抑制する。ここで、組電池2のSOCについての所定の範囲は、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnが大きくばらつき易い組電池2のSOCの範囲であるため、セルブロックB1~Bnのそれぞれの開回路電圧特性Vにおいて充電量に対する電圧の傾きの変化が大きい範囲に相当する。すなわち、組電池2のSOCについての所定の範囲は、セルブロックB1~Bnのそれぞれの開回路電圧特性Vにおいて開回路電圧の充電量での二次微分値が大きい範囲に相当する。したがって、組電池2のSOCについての前述の所定の範囲は、セルブロックB1~Bnのそれぞれにおける充電量に対する電圧の傾きの変化の大きさに基づいて、設定される。
【0054】
図4は、組電池2の充放電制御において、コントローラ12(電流負荷判断部13及び充放電制御部15)によって行われる処理を示す。
図4に示す処理は、組電池2の充電及び放電のそれぞれにおいて、所定のタイミングで定期的に行われる。
図4に示すように、組電池2の充電及び放電のそれぞれにおいて、電流負荷判断部13は、組電池2のリアルタイムのSOCを推定及び算出する(S101)。これにより、セルブロックB
1~B
nの電流負荷P
1~P
nに関連するパラメータとして、組電池2のSOCが取得される。電流負荷判断部13は、電流I及び電圧V
cの測定結果を用いて、組電池2のSOCを算出する。組電池2のSOCの算出方法としては、電流積算法、組電池2の電圧V
cとSOCとの関係を用いた算出法、及び、カルマンフィルタを用いた推定法等が、挙げられる。
【0055】
そして、電流負荷判断部13は、算出した組電池2のSOCが前述の所定の範囲内であるか否かを判断する(S102)。前述のように、SOCの所定の範囲は、組電池2の開回路電圧特性において充電量に対する電圧の傾きの変化が大きい範囲に相当する。そして、組電池2のSOCが所定の範囲内である場合は、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnが大きくばらつき易い。
【0056】
本実施形態では、組電池2のSOCが所定の範囲内である場合は、電流負荷判断部13は、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnが大きくばらついていると判断する。すなわち、電流負荷P1~Pnが許容範囲を超えてばらついていると、判断される。一方、組電池2のSOCが所定の範囲から外れる場合は、電流負荷判断部13は、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnのばらつきが許容範囲であると判断する。ある一例では、SOCが70%及びその近傍の範囲内、及び、90%以上の範囲内のいずれかである場合、組電池2のSOCが所定の範囲内であると、判断される。
【0057】
また、組電池2のSOCが所定の範囲内である場合は(S102-Yes)、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制する(S103)。そして、充放電制御部15は、電流Iが抑制された状態で、組電池2を充電又は放電する(S104)。一方、組電池2のSOCが所定の範囲内である場合は(S102-No)、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制することなく、組電池2を充電又は放電する(S104)。したがって、充放電制御部15は、組電池2のSOCが所定の範囲内であることに基づいて、組電池2のSOCが所定の範囲から外れる場合に比べて、組電池2に流れる電流Iを抑制する。
【0058】
本実施形態では、前述のような処理が行われる。このため、劣化の度合いが大きいセルブロック(B1~Bnのいずれか)において電流負荷(P1~Pnのいずれか)が大きくなり易い範囲内に組電池2のSOCがなると、組電池2に流れる電流Iが抑制される。すなわち、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnが大きくばらつき易い範囲内に組電池2のSOCがなると、組電池2に流れる電流Iが抑制される。したがって、組電池2のSOCが前述の所定の範囲になっても、セルブロックB1~Bn間で電流負荷P1~Pnが過度に大きくばらつくことが防止される。また、セルブロックB1~Bn間で劣化の度合い等の性能がばらついても、劣化の度合いが大きいセルブロック(B1~Bnのいずれか)の電流負荷(P1~Pnのいずれか)が過度に大きくならないため、セルブロックB1~Bn間の劣化のばらつきの拡大が抑制される。
【0059】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る充放電システム1を示す。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態では、電流測定部(電流測定回路)X
1~X
nが、組電池2に設けられる。複数の電流測定部X
1~X
nは、互いに対して電気的に並列である。電流測定部X
k(kは1~nの任意の1つ)は、セルブロックB
kに電気的に直列に接続され、セルブロックB
kに流れる電流i
kを検出及び測定する。コントローラ12は、電流i
1~i
nの測定値を、所定のタイミングで定期的に取得する。したがって、電流i
1~i
nのそれぞれの時間変化(時間履歴)が、コントローラ12によって、取得される。
【0060】
本実施形態では、コントローラ12は、セルブロックBkを流れる電流ikを積算することにより、セルブロックBkのSOCを推定可能であるとともに、セルブロックBkのSOCが0%の状態からの充電量等を算出可能である。すなわち、コントローラ12は、セルブロックB1~BnのそれぞれのSOC及び充電量等を、推定可能である。
【0061】
また、コントローラ12の電流負荷判断部13は、電流ikの計測値及び時間変化、セルブロックBkの充電量の推定値、及び、組電池2の電圧Vcの計測値及び時間変化に基づいて、セルブロックBkの内部状態を示すパラメータを推定する。この際、セルブロックBkの内部状態を示すパラメータとして、セルブロックBkの充電容量(満充電容量)及び放電容量等の容量(セルブロック容量)、及び、セルブロックBkの正極容量及び負極容量等のいずれかが、推定される。ある一例では、前記特許文献2と同様にして、セルブロックBkの内部状態を示すパラメータが推定される。したがって、本実施形態では、コントローラ12によって、セルブロックB1~Bnのそれぞれの内部状態を示すパラメータが推定される。
【0062】
また、本実施形態では、前述のようにセルブロックB1~Bnのそれぞれの内部状態を示すパラメータが推定されるため、コントローラ12は、推定されたパラメータに基づいて、セルブロックB1~Bnのそれぞれの劣化の度合いを推定可能である。ある一例では、コントローラ12の電流負荷判断部13は、セルブロックB1~Bnについて、推定した充電容量(満充電容量)が小さいほど、劣化の度合いが大きいと判断する。また、充電容量等の容量の代わりに、正極容量及び負極容量を用いても、コントローラ12によって、同様にして、劣化の度合いが判断される。
【0063】
また、本実施形態では、電流負荷判断部13は、セルブロックBkの電流負荷Pkを算出する。この際、電流ikの測定値が用いられるとともに、セルブロックBkの内部状態を示す前述のパラメータが、パラメータFkとして用いられる。そして、前述した式(6)のようにして、電流負荷Pkが算出される。すなわち、本実施形態では、電流負荷判断部13によって、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnが算出される。そして、組電池2の充電及び放電のそれぞれにおいて、コントローラ12の充放電制御部15は、算出された電流負荷P1~Pnに基づいて、組電池2を流れる電流Iを制御し、セルブロックB1~Bnのそれぞれを流れる電流を制御する。すなわち、算出された電流負荷P1~Pnに基づいて、電流i1~inが制御される。
【0064】
図6は、組電池2の充放電制御において、本実施形態のコントローラ12(電流負荷判断部13及び充放電制御部15)によって行われる処理を示す。本実施形態でも第1の実施形態等と同様に、電流負荷判断部13は、S101及びS102の処理を行う。ただし、本実施形態では、電流負荷判断部13は、電流i
1~i
nの計測値から前述のようにしてセルブロックB
1~B
nの電流負荷P
1~P
nを算出する。そして、組電池2のSOCが所定の範囲内である場合は(S102-Yes)、電流負荷判断部13は、電流負荷P
kが閾値Pth以上のセルブロックが存在するか否かを判断する(S105)。
【0065】
電流負荷Pkが閾値Pth以上のセルブロックが存在する場合、すなわち、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnのいずれかが閾値Pth以上の場合は(S105-Yes)、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制する(S103)。そして、充放電制御部15は、電流Iが抑制された状態で、組電池2を充電又は放電する(S104)。一方、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnのいずれもが閾値Pthより小さい場合は(S105-No)、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制することなく、組電池2を充電又は放電する(S104)。なお、閾値Pthは、例えば、電流負荷についての許容範囲の上限値であり、コントローラ12の記憶媒体、又は、コントローラ12にネットワークを介して接続されたサーバ等の記憶媒体に記憶される。
【0066】
前述のように、本実施形態では、組電池2のSOCが所定の範囲内であることに加え、セルブロックB1~Bnのいずれかにおいて電流負荷が閾値Pth以上であることに基づいて、組電池2に流れる電流Iが抑制される。すなわち、算出された電流負荷P1~Pnに基づいて、セルブロックB1~Bnのそれぞれに流れる電流が、制御される。そして、本実施形態では、セルブロックB1~Bnのいずれかにおいて電流負荷が閾値Pth以上であることに基づいて、セルブロックB1~Bnのいずれにおいても電流負荷が閾値Pthより小さい場合に比べて、組電池2に流れる電流Iが、抑制される。このため、本実施形態では、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnがより適切に算出され、電流負荷P1~Pnに基づいてより適切に電流Iが制御される。
【0067】
(第2の実施形態の変形例)
なお、第2の実施形態のある変形例では、S101及びS102の処理が行われず、組電池2のSOCに基づく判断が行われない。ただし、本変形例でも、第2の実施形態等と同様に、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnに基づくS105の判断が、電流負荷判断部13によって、行われる。本変形例でも、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnのいずれかが閾値Pth以上の場合は(S105-Yes)、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制する(S103)。そして、充放電制御部15は、電流Iが抑制された状態で、組電池2を充電又は放電する(S104)。一方、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnのいずれもが閾値Pthより小さい場合は(S105-No)、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制することなく、組電池2を充電又は放電する(S104)。
【0068】
また、第2の実施形態の別のある変形例では、S105において電流負荷P1~Pnのそれぞれと閾値Pthを比較する代わりに、以下の処理が行われてもよい。本変形例では、コントローラ12の電流負荷判断部13は、セルブロックB1~Bnのそれぞれについて、満充電容量、及び、正極容量及び負極容量等のいずれかに基づいて、劣化の度合いを判断する。ここで、セルブロックB1~Bnの中で劣化の度合いが最も大きいセルブロックBεを規定する。本変形例では、電流負荷判断部13は、S105の判断の代わりに、セルブロックBεの電流負荷Pεを、セルブロックBε以外のセルブロックのそれぞれの電流負荷と比較する。
【0069】
そして、セルブロックBεの電流負荷PεがセルブロックBε以外のセルブロックのいずれかの電流負荷以上の場合は、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制する。そして、充放電制御部15は、電流Iが抑制された状態で、組電池2を充電又は放電する。一方、セルブロックBεの電流負荷PεがセルブロックBε以外のセルブロックのいずれの電流負荷よりも小さい場合は、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制することなく、組電池2を充電又は放電する。
【0070】
ここで、組電池2に2個のセルブロックB1,B2が設けられ(n=2)、かつ、セルブロックB1がセルブロックB2に比べて劣化の度合いが大きいとする。この場合、本変形例では、電流負荷判断部13は、電流負荷P1,P2を比較する。そして、電流負荷P1が電流負荷P2以上の場合は、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制する。そして、充放電制御部15は、電流Iが抑制された状態で、組電池2を充電又は放電する。一方、電流負荷P1が電流負荷P2よりも小さい場合は、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制することなく、組電池2を充電又は放電する。
【0071】
本変形例でも、第2の実施形態等と同様に、算出された電流負荷P1~Pnに基づいて、セルブロックB1~Bnのそれぞれに流れる電流が、制御される。このため、第2の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。
【0072】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る充放電システム1を示す。なお、以下の説明では、第2の実施形態と同様の部分については、説明を省略する。本実施形態でも、電流測定部(電流測定回路)X
1~X
nが設けられ、コントローラ12は、電流i
1~i
nの測定値、及び、電流i
1~i
nのそれぞれの時間変化(時間履歴)を取得する。そして、コントローラ12の電流負荷判断部13は、第2の実施形態等と同様に、セルブロックB
1~B
nの電流負荷P
1~P
nを算出する。
【0073】
本実施形態では、可変抵抗Y1~Ynが設けられる。複数の可変抵抗Y1~Ynは、互いに対して電気的に並列である。可変抵抗Yk(kは1~nの任意の1つ)は、セルブロックBkに電気的に直列に接続される。すなわち、セルブロックB1~Bnのそれぞれには、可変抵抗Y1~Ynの対応する1つが直列に接続される。本実施形態では、前述の実施形態等と同様に、コントローラ12の充放電制御部15は、駆動回路8の駆動を制御することにより、組電池2を流れる電流Iを制御する。また、本実施形態では、充放電制御部15は、可変抵抗Y1~Ynの抵抗値r1~rnを調整可能である。充放電制御部15は、抵抗値r1~rnを調整することにより、電流i1~inを制御する。
【0074】
図8は、組電池2の充放電制御において、本実施形態のコントローラ12(電流負荷判断部13及び充放電制御部15)によって行われる処理を示す。本実施形態でも第2の実施形態等と同様に、電流負荷判断部13は、S101、S102及びS105の処理を行う。そして、セルブロックB
1~B
nの電流負荷P
1~P
nのいずれかが閾値Pth以上の場合は(S105-Yes)、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制する(S103)。
【0075】
また、本実施形態では、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnのいずれかが閾値Pth以上の場合は(S105-Yes)、充放電制御部15は、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pn等に基づいて、可変抵抗Y1~Ynの抵抗値r1~rnを調整する(S106)。そして、充放電制御部15は、電流Iが抑制され、かつ、抵抗値r1~rnが調整された状態で、組電池2を充電又は放電する(S104)。一方、セルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnのいずれもが閾値Pthより小さい場合は(S105-No)、充放電制御部15は、組電池2に流れる電流Iを抑制することなく、かつ、抵抗値r1~rnが調整することなく、組電池2を充電又は放電する(S104)。
【0076】
ある一例では、コントローラ12は、算出された電流負荷P1~Pnの大きさに対応させて、可変抵抗Y1~Ynの抵抗値r1~rnを調整する。この場合、電流負荷が大きいセルブロックに直列に接続される可変抵抗では、抵抗値を大きくする。そして、電流負荷が小さいセルブロックに直列に接続される可変抵抗では、抵抗値を小さくする。これにより、電流負荷が大きいセルブロックに過度に大きい電流が流れることが、抑制される。したがって、電流負荷P1~Pnのばらつきが小さくなる状態に、抵抗値r1~rnが調整される。
【0077】
また、別のある一例では、コントローラ12は、電流i1~inに基づいてセルブロックB1~Bnの内部抵抗R1~Rnを算出する。セルブロックBkの内部抵抗Rkは、電流ikを用いて、式(17)のようになる。そして、充放電制御部15は、内部抵抗Rkと可変抵抗Ykの抵抗値rkとの和がセルブロック間で等しくなる状態に、制御する。すなわち、式(18)の関係が成立する状態に、抵抗値r1~rnを調整する。
【0078】
【0079】
前述のように抵抗値r1~rnが調整されることにより、電流i1~inのばらつきが小さくなる状態に、すなわち、電流i1~inが互いに対して同一又は略同一の大きさになる状態に、電流i1~inのそれぞれが制御される。したがって、電流負荷P1~Pnのばらつきが小さくなる状態に、抵抗値r1~rnが調整される。なお、式(18)の関係が成立する状態に抵抗値r1~rnを調整する場合、可変抵抗Y1~Ynの抵抗値r1~rnの総和が可能な限り小さくなる状態に抵抗値r1~rnが調整されることが、好ましい。また、内部抵抗Rkの算出方法としては、式(17)を用いた方法の他に、カルマンフィルタを用いた推定法、逐次最小二乗法を用いた算出、及び、フーリエ変換を用いた算出等が、挙げられる。
【0080】
本実施形態でも、第2の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。また、本実施形態では、組電池2に流れる電流Iを調整可能であることに加えて、可変抵抗Y1~Ynの抵抗値r1~rnを調整することにより、電流i1~inも調整可能である。
【0081】
(第3の実施形態の変形例)
なお、第3の実施形態等のように可変抵抗Y1~Ynが設けられる場合も、第2の実施形態の変形例において前述したように、コントローラ12による処理を適宜変更可能である。
【0082】
また、ある変形例では、第3の実施形態等のように可変抵抗Y1~Ynが設けられる構成において、S103の電流Iを抑制する処理が行われなくてもよい。本変形例ではセルブロックB1~Bnの電流負荷P1~Pnのいずれかが閾値Pth以上の場合は(S105-Yes)、充放電制御部15は、S106の可変抵抗Y1~Ynの抵抗値r1~rnの調整のみを行う。本変形例でも、第3の実施形態等と同様にして、抵抗値r1~rnが調整される。このため、電流負荷P1~Pnのばらつきが小さくなる状態に、抵抗値r1~rnが調整される。
【0083】
前述の少なくとも一つの実施形態又は実施例では、電流負荷又は電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、セルブロックのそれぞれに流れる電流が、制御される。これにより、複数のセルブロックが並列に接続される組電池において、セルブロック間で電流負荷が過度に大きくばらつくことを防止することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1]1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、
前記セルブロックのそれぞれの電流負荷又は前記電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御する、
コントローラを具備する、充放電制御装置。
[2]前記コントローラは、
前記電流負荷に関連する前記パラメータとして、前記組電池のSOC(State OF Charge)を推定し、
前記組電池の前記SOCが所定の範囲内であることに少なくとも基づいて、前記組電池の前記SOCが前記所定の範囲から外れる場合に比べて、前記組電池に流れる電流を抑制する、
[1]の充放電制御装置。
[3]前記組電池の前記SOCについての前記所定の範囲は、前記セルブロックのそれぞれにおける充電量に対する電圧の傾きの変化の大きさに基づいて、設定される、[2]の充放電制御装置。
[4]前記コントローラは、
前記セルブロックのそれぞれに流れる電流の測定値を用いて、前記セルブロックのそれぞれの前記電流負荷を算出し、
前記組電池の前記SOCが前記所定の範囲内であることに加え、前記セルブロックのいずれかにおいて前記電流負荷が閾値以上であることに基づいて、前記組電池に流れる電流を抑制する、
[2]又は[3]の充放電制御装置。
[5]前記コントローラは、
前記セルブロックのそれぞれに流れる電流の測定値を用いて、前記セルブロックのそれぞれの前記電流負荷を算出し、
算出した前記電流負荷に基づいて、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御する、
[1]の充放電制御装置。
[6]前記コントローラは、前記セルブロックのいずれかにおいて前記電流負荷が閾値以上であることに基づいて、前記セルブロックのいずれにおいても前記電流負荷が前記閾値より小さい場合に比べて、前記組電池に流れる電流を抑制する、[5]の充放電制御装置。
[7]前記セルブロックのそれぞれには、互いに対して並列な複数の可変抵抗の対応する1つが直列に接続され、
前記コントローラは、算出した前記電流負荷に基づいて前記可変抵抗のそれぞれの抵抗値を調整することにより、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御する、
[5]又は[6]の充放電制御装置。
[8][1]乃至[7]のいずれか1項の充放電制御装置と、
前記充放電制御装置によって充放電が制御される前記組電池と、
を具備する充放電システム。
[9]1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電を制御する充放電制御方法であって、
前記セルブロックのそれぞれの電流負荷又は前記電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御することを具備する、充放電制御方法。
[10]1つ以上の単セルをそれぞれが備える複数のセルブロックが互いに対して並列に接続される組電池の充放電において、コンピュータに、
前記セルブロックのそれぞれの電流負荷又は前記電流負荷に関連するパラメータの少なくともいずれか一方に基づいて、前記セルブロックのそれぞれに流れる電流を制御させる、
充放電制御プログラム。
【符号の説明】
【0085】
1…充放電システム、2…組電池、5…電流測定部、6…電圧測定部、7…充放電制御装置、8…駆動回路、11…単セル、12…コントローラ、13…電流負荷判断部、15…充放電制御部、B1~Bn…セルブロック、X1~Xn…電流測定部、Y1~Yn…可変抵抗。