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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】透析システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
A61M1/36 121
A61M1/36 123
A61M1/36 125
A61M1/36 127
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020018194
(22)【出願日】2020-02-05
(62)【分割の表示】P 2017509605の分割
【原出願日】2015-04-29
(65)【公開番号】P2020096876
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-02-06
(31)【優先権主張番号】62/127,155
(32)【優先日】2015-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/985,779
(32)【優先日】2014-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516325121
【氏名又は名称】アウトセット・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OUTSET MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エドワード・ホガード
(72)【発明者】
【氏名】ゴピ・リンガム
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・ホゥ
(72)【発明者】
【氏名】バラジ・エム・マニアム
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・リットソン
(72)【発明者】
【氏名】アンディ・エイチ・ウチダ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・デイビッド・スティーンミアー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・デイビッド・マグレガー
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152286(JP,A)
【文献】国際公開第2010/070886(WO,A1)
【文献】特開平04-035669(JP,A)
【文献】特開2007-167108(JP,A)
【文献】特開2010-273693(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01892000(EP,A1)
【文献】特開平11-033111(JP,A)
【文献】特表2003-508179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブセットおよび透析システムのダイアライザーをプライミングする方法であって、
生理食塩水供給源からの生理食塩水を、第1の方向で、前記チューブセット内、静脈ドリップチャンバを通しておよび前記ダイアライザーの血液側を通して動かして、前記チューブセットおよび前記ダイアライザーの前記血液側から空気を除去するために、第1の操作モードで前記透析システムの血液ポンプを操作する工程、
前記生理食塩水の少なくとも一部を、前記第1の方向とは反対の第2の方向で前記ダイアライザーの前記血液側を通しておよび前記静脈ドリップチャンバを通して動かして、前記チューブセットから出すために、第2の操作モードで前記血液ポンプを操作する工程、および
前記透析システムの1つ以上のバルブを定期的に動作して、前記チューブセットを開閉し、前記ダイアライザーから気泡を取り除く脈動効果を作り出す工程、を含む、プライミングする方法。
【請求項2】
前記チューブセットの前記静脈ドリップチャンバ内の前記生理食塩水の流体レベルをモニターする工程、および
前記静脈ドリップチャンバ内の流体レベルが安定したとき、または空気がもはや前記チューブセットを循環しないとき、前記第1の操作モードで前記血液ポンプの操作を停止する工程、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の操作モードで前記血液ポンプを操作する工程は、前記生理食塩水を前記ダイアライザーの前記血液側を通して動かす前に、前記生理食塩水の少なくとも一部を前記チューブセットの前記静脈ドリップチャンバ内に動かす工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の操作モードで前記血液ポンプを操作する工程は、前記生理食塩水を前記チューブセットの前記静脈ドリップチャンバを通して動かす前に、前記生理食塩水の少なくとも一部を前記ダイアライザーの前記血液側を通して動かす工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ダイアライザーの透析液側から空気を除去するために、透析液供給源からの透析液を、第1の方向で前記ダイアライザーの前記透析液側を通して動かすように、透析液ポンプを操作する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイアライザーの向きを物理的に操作することなく、空気が前記ダイアライザーの前記透析液側から除去される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ダイアライザーの向きを反転することなく、空気が前記ダイアライザーの前記透析液側から除去される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記生理食塩水が前記生理食塩水供給源から前記チューブセット内に動くことを可能にするために、電子コントローラにより前記透析システムの1つ以上のバルブを開く工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記血液ポンプを操作する工程は、前記透析システムの電子コントローラにより前記血液ポンプを操作する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記生理食塩水が、前記チューブセットの静脈ラインを前記チューブセットの動脈ラインに取り付けるユニオン継手を通して、前記チューブセットから出される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
透析治療が開始可能になる前に、所定量の生理食塩水は前記ユニオン継手を通して動かされる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、発明の名称が「Air Removal in Modular Home Dialysis System」であり、2014年4月29日に出願された米国仮出願61/985,779号の利益を要求し、また発明の名称が「Dialysis System」であり、2015年3月2日に出願された米国仮出願62/127,155の利益を要求し、両方の仮出願は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
[文献の援用]
本明細書で言及された全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により援用されるように、参照により同程度に本明細書に援用される。
【0003】
[技術分野]
本開示は、一般的に、透析システムに関する。より詳細には、本開示は、透析治療の準備および管理における専門家の関与の必要性を低減する多くの特徴を含む透析システムに関する。
【背景技術】
【0004】
現在、米国には末期の腎臓病患者が数十万人いる。殆どの患者は、生存のため透析を必要とする。多くの患者は、透析センターで透析治療を受けており、そのことは、患者に厳しく、制限され、かつ疲れるスケジュールに置かれる。センターでの透析を受ける患者は、一般的に、少なくとも週3回センターに通い、毎回、毒素および余剰流体が患者の血液から濾過される3~4時間の間、椅子に座っていなければならない。治療後、患者は、穿刺部が止血され、血圧が正常に戻るのを待たなければならず、そのことは、日常生活における他のより充実した活動のための時間からより多くの時間を奪うことを要求する。また、一般的なセンターは、一日の間に3~5人の患者の治療を交代で行うため、センターの患者(または通院患者)は、強硬なスケジュールに従う必要がある。その結果、週3回透析を行う人の多くは、セッション後少なくとも数時間にわたって消耗感を訴える。
【0005】
多くの市販の透析システムでは、透析治療の前、透析治療中および透析治療の後に、専門家からの重要なインプットおよび注意を必要とする。治療前に、専門家は、透析システム上に患者の血液チューブセットを手動で設置し、患者とダイアライザーに血液チューブセットを接続し、そして治療前にそのチューブセットから空気を除去するためにチューブセットを手動で準備する(またはプライミングする)ことを度々必要とする。治療中、一般的に、専門家は、静脈圧および流体レベルをモニターし、患者へ生理食塩水および/またはヘパリンをボーラス投与することを要求される。治療後に、専門家は、患者へチューブセット内の血液を戻し、透析システムを空にすることを度々要求される。ほとんどの透析システムにおける非効率性と作業中の著しい専門家の関与の必要性は、患者が大きな治療センターで透析治療を受けることをより一層困難にする。
【0006】
通院透析の要求を考えて、多くの患者がオプションとして在宅透析に頼っている。在宅透析は、患者が他の活動、例えば、出勤または家族の介護に合わせて治療時間を選ぶことを可能にするので、患者にスケジューリングの柔軟性を提供する。残念ながら、現在の透析システムは、一般的に、患者の家庭での使用に適していない。この1つの理由は、現在のシステムは大きくかさばりすぎているため、一般的な家庭内に収まらないことにある。また、現在の透析システムは、適切な使用のために大量の水を加熱するために大量のエネルギーを使用するという点で、エネルギー効率が悪い。いくつかの在宅透析システムが利用可能であるが、これらは、一般的に、製造コストが比較的高い複雑な流れバランス技術を使用しており、また、ほとんどのシステムは、高い騒音レベルを生成するソレノイドバルブのシステムによって設計されている。その結果、ほとんどの透析治療は透析センターで行われている。
【発明の概要】
【0007】
透析システムとの動的バランスを達成する方法が提供され、患者からの血液の流れを、患者のチューブセットおよびダイアライザーの血液側を通して血流を動かすために、血液ポンプを操作する工程、ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れを動かすために、第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプを操作する工程、ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れをバイパスする工程、およびダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れがバイパスされている間、第1の透析液ポンプと第2の透析液ポンプとの間の透析液の圧力を測定し、測定された透析液の圧力が安定するまで、第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、さらに、ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れを回復する工程を含む、方法。
【0009】
他の実施形態では、透析液の流れがダイアライザーの透析液側を通って回復するときに、流体はダイアライザーの血液側からダイアライザーの透析液側まで通過しない。
【0010】
また、透析システムとの動的バランスを達成する方法が提供され、患者からの血液の流れを、患者のチューブセットおよびダイアライザーの血液側を通して動かすために、血液ポンプを操作する工程、患者の静脈圧を測定する工程、ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れを動かすために、第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプを操作する工程、透析液の流れがダイアライザーの透析液側を通ることを防止する工程、ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れが防止されている間、第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプとの間の透析液の圧力を測定し、測定された透析液の圧力が安定するまで、第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、透析液の流れがダイアライザーの透析液側を通ることを許可する工程、および第1の透析液ポンプと第2の透析液ポンプとの間の流れアンバランスを引き起こすために、第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程であって、流れアンバランスは、当該流れアンバランスを均一にするためにダイアライザーの血液側とダイアライザーの透析液側との間の流体の流れをもたらす、第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、を含む。
【0011】
一実施形態では、流体の流れは、ダイアライザーの血液側からダイアライザーの透析液側に進む。
【0012】
別の実施形態では、流体の流れは、ダイアライザーの透析液側からダイアライザーの血液側に進む。
【0013】
いくつかの実施形態では、さらに、ダイアライザーの血液側とダイアライザーの透析液側との間の圧力損失をキャリブレートするために、第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程を含む、方法。
【0014】
他の実施形態では、さらに、測定された静脈圧が所定の閾値だけ変化した場合に、防止、測定および調節する工程を繰り返す工程を含む、方法。
【0015】
一実施形態では、所定の閾値は、30mmHgを超える。
【0016】
透析システムが提供され、患者からの血液の流れを、患者のチューブセットおよびダイアライザーの血液側を通して動かすように構成された血液ポンプ、患者の静脈圧を測定するように構成された静脈圧センサ、ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れを制御するように構成された第1のポンプおよび第2のポンプ、透析液の流れがダイアライザーの透析液側を通ることを防止するために、ダイアライザーの透析液側をバイパスするように構成された1つ以上のバルブ、第1のポンプと第2のポンプとの間に配置され、ダイアライザーの透析液側がバイパスされたときに、透析液の圧力を測定するように構成された透析液圧センサ、および血液ポンプ、静脈圧センサ、第1および第2のポンプ、1つ以上のバルブ、および透析液圧センサと操作可能に結合された電子コントローラであって、電子コントローラは、第1のポンプと第2のポンプとの間の流れアンバランスを引き起こすために、第1および第2のポンプのポンプ速度を調節するように構成されており、流れアンバランスは、当該流れアンバランスを均一にするためにダイアライザーの血液側とダイアライザーの透析液側との間の流体の流れをもたらす、電子コントローラ、を含む。
【0017】
透析システムが提供され、血液側および透析液側を含むダイアライザー、ダイアライザーの血液側に結合された血液回路であって、さらに、患者の静脈接続部位に接続されるように適合された静脈ラインと、患者の動脈接続部位に接続されるように適合された動脈ラインとを含む血液回路、血液回路に結合され、患者からの血液を、動脈ラインを通り、ダイアライザーの血液側を通り、そして静脈ラインを通って患者に戻すように構成された血液ポンプ、血液回路に結合され、患者の静脈圧を測定するように構成された静脈圧センサ、ダイアライザーの透析液側に結合された透析液回路であって、さらに、透析液供給源に結合された透析液ラインを含む透析液回路、透析液回路に結合されたアクチュエータであって、透析液がダイアライザーの透析液側を通って移動する第1の構成と、透析液がダイアライザーの透析液側を通って移動することを防止する第2の構成とを含むアクチュエータ、透析液回路に結合された第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプであって、アクチュエータが第1の構成のときに、透析液供給源から、透析液ラインを通り、そしてダイアライザーの透析液側を通る透析液を動かすように構成された、第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプ、透析液回路に結合され、第1の透析液ポンプと第2の透析液ポンプとの間の透析液の圧力を測定するように構成された透析液圧センサ、および血液ポンプ、静脈圧センサ、透析液圧センサ、アクチュエータ、第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプと操作可能に連結された電子コントローラであって、ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れを動かすために、第1の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、透析液の流れがダイアライザーの透析液側を通過するのを防止するためにアクチュエータを制御する工程、測定された透析液圧を透析液圧センサから受信する工程と、測定された透析液圧が安定するまで、第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、透析液の流れがダイアライザーの透析液側を通過することを可能にするためにアクチュエータを制御する工程、および第1の透析液ポンプと第2の透析液ポンプとの間の流れアンバランスを引き起こすために、第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節して、流れアンバランスは、当該流れアンバランスを均一にするためにダイアライザーの血液側とダイアライザーの透析液側との間の流体の流れをもらす工程、を実行することによって、透析治療中にダイアライザーを横切る流体流れの動的バランスを達成するように構成された電子コントローラ、を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、電子コントローラは、測定された静脈圧を静脈圧センサから受信するように構成され、かつ測定された静脈圧が所定の閾値だけ変化する場合に、制御、受信および調節する工程を繰り返すように構成される。
【0019】
透析システムに使い捨てのカートリッジおよびチューブセットを接続する方法が提供され、透析システムのアライメント機構に隣接して、使い捨てのカートリッジおよびチューブセットのアライメント機構を配置する工程と、使い捨てのカートリッジおよびチューブセットの静脈ドリップチャンバを透析システムの1つ以上の流体レベルセンサと音響的に結合させるために、透析システム上に使い捨てのカートリッジおよびチューブセットを取り付ける工程と、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、さらに、静脈ドリップチャンバ内の流体レベルを1つ以上の流体レベルセンサで測定する工程を含む、方法。
【0021】
透析システム上に取り付けるように適合された使い捨てカートリッジが提供され、透析システム上の対応するアライメント機構と取り外し可能に嵌合するように構成された複数のアライメント機構を有するフレーム、フレーム内に配置されたチューブセット、および
フレーム内に配置され、チューブセットに接続された静脈ドリップチャンバであって、フレームが透析システム上に取り付けられたときに、透析システムの1つ以上の流体レベルセンサと音響的に結合されるように、フレーム内に配置される静脈ドリップチャンバ、を含む。
【0022】
また、チューブセットおよび透析システムのダイアライザーをプライミングする方法が提供され、生理食塩水供給源からの生理食塩水を、第1の方向で、チューブセット内およびダイアライザーの血液側を通して動かして、チューブセットおよびダイアライザーの血液側から空気を除去するために、第1の操作モードで透析システムの血液ポンプを操作する工程、および生理食塩水の少なくとも一部を、第1の方向とは反対の第2の方向でダイアライザーの血液側を通して動かして、チューブセットから出すために、第2の操作モードで血液ポンプを操作する工程、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、チューブセットの静脈ドリップチャンバ内の生理食塩水の流体レベルをモニターする工程、および静脈ドリップチャンバ内の流体レベルが安定したとき、または空気がもはやチューブセットを循環しないとき、第1の操作モードで血液ポンプの操作を停止する工程、をさらに含む、方法。
【0024】
一実施形態では、第1の操作モードで血液ポンプを操作する工程は、生理食塩水をダイアライザーの血液側を通して動かす前に、生理食塩水の少なくとも一部をチューブセットの静脈ドリップチャンバ内に動かす工程をさらに含む。
【0025】
別の実施形態では、第2の操作モードで血液ポンプを操作する工程は、生理食塩水をチューブセットの静脈ドリップチャンバを通して動かす前に、生理食塩水の少なくとも一部をダイアライザーの血液側を通して動かす工程をさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、ダイアライザーの透析液側から空気を除去するために、透析液供給源からの透析液を、第1の方向でダイアライザーの透析液側を通して動かすように、透析液ポンプを操作する工程をさらに含む、方法。
【0027】
いくつかの実施形態では、ダイアライザーの向きを物理的に操作することなく、空気がダイアライザーの透析液側から除去される。
【0028】
他の実施形態では、ダイアライザーの向きを反転することなく、空気がダイアライザーの透析液側から除去される。
【0029】
いくつかの実施形態では、生理食塩水が生理食塩水供給源からチューブセット内に動くことを可能にするために、電子コントローラにより透析システムの1つ以上のバルブを開く工程をさらに含む、方法。
【0030】
一実施形態では、血液ポンプを操作する工程は、透析システムの電子コントローラにより血液ポンプを操作する工程をさらに含む。
【0031】
他の実施形態では、生理食塩水が、チューブセットの静脈ラインをチューブセットの動脈ラインに取り付けるユニオン継手を通して、チューブセットから出される。
【0032】
いくつかの実施形態では、透析治療が開始可能になる前に、所定量の生理食塩水はユニオン継手を通して動かされる。
【0033】
透析治療後に、透析送達システムの患者チューブセット内の血液を患者に戻す方法が提供され、生理食塩水を患者チューブセット内に引き込んで、血液を患者の体内に押し戻すために、患者チューブセットに結合された血液ポンプを動作する工程、患者チューブセット内に引き込まれた生理食塩水量を決定するために、血液ポンプの回転数を追跡する工程、および所定量の生理食塩水が患者チューブセット内に引き込まれたときに、血液ポンプを停止する工程、を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、所定量は300~500mlを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、生理食塩水供給源とチューブセットとの間の経路を形成するために、透析送達システムの1つ以上のピンチバルブを開く工程をさらに含む、方法。
【0036】
追加の実施形態では、生理食塩水供給源と、患者の動脈アクセス部位またはその近傍のチューブセットとの間の経路を形成するために、1つ以上のピンチバルブを開く工程をさらに含む、方法。
【0037】
いくつかの実施形態では、血液が患者の静脈アクセス部位を通して患者に押し戻される。
【0038】
透析治療後に透析システムのダイアライザーから流体を排出する方法が提供され、透析システムの患者チューブセットの静脈ラインを閉鎖する工程、およびダイアライザーの透析液側からダイアライザーの血液側内へ、およびダイアライザーから出て廃液容器内へと流体を引き出すために、患者チューブセットに結合されたポンプを操作する工程、を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、廃液容器は生理食塩水バッグを含む。
【0040】
他の実施形態では、ダイアライザーの透析液側からダイアライザーの血液側に流体を動かすために、流体はダイアライザーのマイクロチューブ壁を通って引き出される。
【0041】
追加の実施形態では、流体は、重力に抗してダイアライザーから引き出される。
【0042】
治療中に透析システムの静脈ドリップチャンバ内の流体レベルを制御する方法が提供され、患者チューブセットおよび静脈ドリップチャンバを通る血液の流れを生成する工程、静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルを第1および第2のセンサでモニターする工程、流体レベルが第1のセンサより下に降下したときに、自動的に、静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送または放出する工程、および流体レベルが第2のセンサより上に上昇したときに、自動的に、静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送する工程、を含む。
【0043】
治療中に透析システムの静脈ドリップチャンバ内の流体レベルを制御する方法が提供され、患者チューブセットおよび静脈ドリップチャンバを通る血液の流れを生成する工程、静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルをセンサでモニターする工程、センサが、流体レベルがより低い流体レベル閾値を下回って低下したことを検出した場合、自動的に、静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送または放出する工程、およびセンサが、流体レベルがより高い流体レベル閾値を上回って上昇したことを検出した場合、自動的に、静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送する工程、を含む。
【0044】
治療中に透析システムの静脈ドリップチャンバ内の流体レベルを制御する方法が提供され、患者チューブセットおよび静脈ドリップチャンバを通る血液の流れを生成する工程、静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルを第1および第2のセンサでモニターする工程、および第1のセンサが、流体レベルがより低い閾値を下回って低下したことを検出した場合、自動的に、静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送または放出し、第2のセンサが、流体レベルがより高い閾値を上回って上昇したことを検出した場合、自動的に、静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送することによって、静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルを自動的に維持する工程、を含む。
【0045】
透析システムが提供され、流れる血液から空気を除去するように構成された静脈ドリップチャンバ、静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルをモニターするように構成された少なくとも1つのセンサ、静脈ドリップチャンバに結合され、静脈ドリップチャンバ内にまたは静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送するように構成されたポンプ、および少なくとも1つのセンサおよびポンプと通信する電子コントローラであって、少なくとも1つのセンサが、流体レベルが第1の閾値を下回って低下したことを検出したときに、ポンプで静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送し、少なくとも1つのセンサが、流体レベルが第2の閾値を上回って上昇したことを検出したときに、ポンプで静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送することによって、静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルを維持するために、自動的にポンプを制御するように構成された電子コントローラ、を含む。
【0046】
透析治療で使用するために透析システムに挿入されるように適合されている使い捨てカートリッジが提供され、透析送達システム上のアライメントペグと嵌合するように構成された複数の位置合わせ孔を有するオーガナイザー、オーガナイザーに配置されたチューブセットであって、患者から血液を引き込むように構成された動脈ライン部、患者に血液を戻すように構成された静脈ライン部、透析送達システムの血液ポンプと相互作用するように構成された血液ポンプ部、透析送達システムのダイアライザーに血液を運ぶように構成された第1のダイアライザー部、ダイアライザーから血液を戻すように構成された第2のダイアライザー部、および生理食塩水供給源をチューブセットに結合するように構成された第1および第2の生理食塩水ライン、を含む、チューブセット、並びにオーガナイザー内に配置され、静脈ドリップチャンバに入る血液から空気を除去するように構成された静脈ドリップチャンバであって、静脈ドリップチャンバの下部に配置された第1および第2のポートであって、チューブセットの静脈ライン部に結合された第1のポートと、チューブセットの動脈ライン部に結合された第2のポートと、を含む静脈ドリップチャンバ、を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、ヘパリン供給源をチューブセットに結合するように構成されたヘパリンラインをさらに含む、使い捨てカートリッジ。
【0048】
一実施形態では、ヘパリンラインは、静脈ドリップチャンバの上部に配置された第3のポートに結合される。
【0049】
別の実施形態では、治療中にヘパリンライン内への血液の逆流を防止するために、ヘパリンラインは、非拍動位置で静脈ドリップチャンバに結合されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、非拍動位置は、静脈ドリップチャンバ内のエアギャップを含む。
【0051】
他の実施形態では、第1の生理食塩水ラインは、チューブセットの血液ポンプ部の近位端でチュービングセットに取り付けられる。
【0052】
追加の実施形態では、第2の生理食塩水ラインは、チューブセットの動脈ライン部の近位端近傍でチューブセットに取り付けられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、チューブセットの動脈ライン部に沿って配置され、透析送達システムの動脈圧センサと嵌合するように構成された動脈圧ポッドをさらに含む、使い捨てカートリッジ。
【0054】
追加の実施形態では、静脈ドリップチャンバに結合され、透析送達システムの静脈圧センサと嵌合するように構成された静脈トランスデューサ接続部をさらに含む、使い捨てカートリッジ。
【0055】
透析システムが提供され、筐体、筐体内に配置され、利用可能な水供給源を用いてリアルタイムに透析治療に使用するための水を調製するように構成された浄水システム、筐体内に配置され、透析治療のために透析液を調製するように構成されたた透析送達システム、筐体上または筐体内に配置されたダイアライザー、筐体上に配置された前面パネルであって、複数のアライメント機構、静脈レベルセンサ、血液ポンプ、複数のピンチバルブ、を含む、前面パネル、前面パネルに取り付けられるように構成されたオーガナイザーであって、複数のアライメント機構と嵌合するように構成された複数の装着機構を含み、オーガナイザー内に配置されたチューブセットであって、患者から血液を引き込むように構成された動脈ライン部、患者に血液を戻すように構成された静脈ライン部、血液ポンプと相互作用するように構成された血液ポンプ部、ダイアライザーに血液を運ぶように構成された第1のダイアライザー部、ダイアライザーから血液を戻すように構成された第2のダイアライザー部、生理食塩水供給源をチューブセットに結合するように構成された第1および第2の生理食塩水ライン、を含む、チューブセット、オーガナイザー内に配置され、静脈ドリップチャンバに入る血液から空気を除去するように構成された静脈ドリップチャンバであって、静脈ドリップチャンバの下部に配置された第1および第2のポートを含み、第1のポートはチューブセットの静脈ライン部に結合され、第2のポートはチューブセットの動脈ライン部に結合されており、オーガナイザーを前面パネルに取り付けると、自動的に、チューブセットの血液ポンプ部が血液ポンプに結合され、静脈ドリップチャンバが静脈レベルセンサに結合される、静脈ドリップチャンバ、を含む、オーガナイザー、を含む。
【0056】
本発明の新規な特徴は、以下の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用された、例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付図面を参照することによって得られるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】透析システムの一実施形態を示す図である。
図2】透析システムの浄水システムの一実施形態を示す図である。
図3】透析システムの透析送達システムの一実施形態を示す図である。
図4】透析送達システムの前面パネルの一例を示す図である。
図5】オーガナイザーに取り付けられたチューブセットを含むカートリッジの一実施形態を示す図である。
図6】オーガナイザーに取り付けられたチューブセットを含むカートリッジの一実施形態を示す図である。
図7】透析システム内に含まれる浄水システムの流れ図である。
図8】透析システムの浄水システムの水供給サブシステム、濾過サブシステム、予熱サブシステム、RO濾過サブシステムおよび低温殺菌サブシステムを示す模式図である。
図9】浄水システムの水供給サブシステムの機構(特徴)を示す図である。
図10】浄水システムの濾過サブシステムの一実施形態を示す図である。
図11】浄水システムの予熱サブシステムの一実施形態を示す図である。
図12】浄水システムのRO濾過サブシステムの一実施形態を示す図である。
図13】水準備システムの低温殺菌サブシステムの一実施形態を示す図である。
図14】透析送達システムの混合サブシステムの模式図である。
図15】混合チャンバの一実施形態を示す図である。
図16】調製された透析液を混合サブシステムから受け取ることができる透析送達システムの限外濾過サブシステムを示す図である。
図17】ユーザーへ血液を戻している間にチューブセットを通る生理食塩水の流れを説明する模式図である。
図18】プライミングシーケンス中に、患者チューブセットの静脈ラインと動脈ラインとを接続するように適合されたユニオン継手の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本開示は、透析治療に関連したシステム、装置および方法であり、使いやすく、透析治療中に専門家の関与の必要性を排除または減少する自動化された機構(特徴)を含む透析システムを含む。いくつかの実施形態では、透析システムは、在宅透析システムであってもよい。透析システムの実施形態は、自動化し、透析治療の性能、効率性および安全性を改善する種々の機構(特徴)を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、急性および慢性の透析治療をユーザーに提供することができる透析システムが記載されている。システムは、利用可能な水供給源を利用してリアルタイムに透析治療に利用するための水を調整するように構成された浄水システムと、透析治療のための透析液を調整するように構成された透析送達システムとを含んでもよい。システムは、透析治療中にユーザーに接続して、ユーザーから血液を回収および送達する使い捨てカートリッジおよびチューブセットを含んでもよい。
【0060】
図1は、臨床、または例えばユーザーの家などの非臨床のいずれか一方の環境で、ユーザーに透析治療を提供するように構成された透析システム100の一実施形態を示す。透析システム100は、浄水システム102と、筐体106内に配置された透析送達システム104とを備えてもよい。浄水システム102は、透析治療のために、リアルタイムに水供給源を浄化するように構成されていてもよい。例えば、浄水システムは、住居の水供給源(例えば、水道水)に接続されて、リアルタイムに低温殺菌された水を準備してもよい。続いて、浄水手段と一般的に関連する大量の水を加熱および冷却する必要なしに、低温殺菌された水が、透析治療のために(例えば、透析送達システムと共に)利用されてもよい。
【0061】
また、透析システム100は、システムの筐体106に取り外し可能に結合されうるカートリッジ120を含んでもよい。カートリッジは、オーガナイザーに取り付けられた患者のチューブセットを含んでもよく、詳細は後述する。殺菌され、使い捨てで、1回利用部品であるカートリッジおよびチューブセットは、治療前に透析システムに接続されるように構成されている。この接続では、透析治療前に、カートリッジ、チューブセットおよび透析システムの間の、対応する部品を正確に位置合わせする。例えば、チューブセットは、カートリッジが透析システムに結合されると、チューブセットを通じてユーザーの血液を抜き取りおよび送り出すための1つ以上のポンプ(例えば、ぜん動ポンプ)、クランプおよびセンサと自動的に関連付けされる。また、チューブセットは、治療前の自動化されたプライミングおよび空気除去のために、透析システムの生理食塩水供給源に関連付けされる。いくつかの実施形態では、カートリッジとチューブセットは、透析システムのダイアライザー126に接続されていてもよい。他の実施形態では、カートリッジとチューブセットは、チューブセットに事前に取り付けられた内蔵ダイアライザーを含んでもよい。ユーザーまたは患者は、ディスプレイを含むユーザー・インターフェース113を通して、透析システムと情報をやりとりすることができる。
【0062】
図2~3は、それぞれ、透析システム100の一実施形態の浄水システム102および透析送達システム104を示す。2つのシステムは、説明を容易にするため、分けて図示および記載されているが、両方のシステムが透析システムの単一の筐体106内に含まれうることは、理解されるべきである。図2は、前面ドア105(開状態で示されている)を含む筐体106内に収容された浄水システム102の一実施形態を示す。前面ドア105は、セディメントフィルタ108、カーボンフィルタ110および逆浸透(RO)フィルタ112を含む1つ以上のフィルタなどの浄水システムと関連した機構(特徴)へのアクセスを提供することができる。フィルタは、浄水システム102と流体連通した水供給源(例えば、水道水)からの水を浄化するのに役立つように構成することができる。浄水システムは、詳細は後述するように、システム内で低温殺菌し、そして液温を制御するように構成された熱交換器を含む加熱冷却素子をさらに含んでもよい。システムは、任意で、塩素量を測定するための液体サンプルを提供する塩素サンプルポート195を含んでもよい。
【0063】
図3では、筐体106内に収容された透析送達システム104は、上部蓋109と前面ドア111を含んでもよく、両方とも開状態で示されている。上部蓋109は、開くことができ、透析システムの種々の機構(特徴)、例えばユーザー・インターフェース113(例えば、電子コントローラ、およびタッチスクリーンなどのディスプレイを含む計算装置)および透析液容器117へのアクセスを可能とする。前面ドア111は、開閉可能であり、前面パネル210へのアクセスを可能にして、前面パネル210は、カートリッジ120を透析システム100に結合するように構成されたアライメント機構(アライメント機能、alignment features)および取り付け機構(取り付け特徴)を含む、カートリッジ120およびその関連チューブセットと相互作用するように構成された種々の機構(特徴)を含んでもよい。ダイアライザー126は、前面ドア111内にまたは前面パネル上に設置されてもよく、カートリッジのチューブセットだけでなく、準備された透析液にもダイアライザーを接続する配線またはポートを含んでもよい。
【0064】
また、いくつかの実施形態では、透析システム100は、血圧バンドを含んでもよく、ユーザーの血圧のリアルタイムのモニターを提供する。システム(すなわち、システムの電子コントローラ)は、透析治療中に、ユーザーの血圧をモニターするように構成されていてもよい。もしユーザーの血圧が閾値(例えば、ユーザーが低張を示す血圧の閾値)以下に低下した場合に、システムは、低血圧警告によりユーザーに警報を出して、透析治療を停止してもよい。ユーザーがシステムからの低血圧警告の設定した回数だけ無視した場合に、システムは、透析治療を自動的に停止するように構成されていてもよく、その時点で、システムは、ユーザーの体に戻るユーザーの血液(チューブセットおよびダイアライザーに留まる血液)の帰還が必要であることをユーザーに知らせてもよい。例えば、システムは、ユーザーが3回低血圧警告を無視した場合に、自動的に治療を停止するように予めプログラムされていてもよい。他の実施形態では、システムは、透析治療を再開する前に、生理食塩水のボーラスをユーザーに与えて、ユーザーの流体レベルを回復してもよい。患者へ送達される生理食塩水量は、限外濾過流体の除去中に、追跡され明らかにされてもよい。
【0065】
図3の透析送達システム104は、図2の浄水システム102によって供給される浄水により、透析液を自動的に準備するように構成されていてもよい。さらに、透析送達システムは、浄水を脱気して、透析液容器117からの酸および重炭酸塩の濃縮物に比例して混合してもよい。結果として生じる透析液は、1つ以上の限外濾過装置(後述する)を通過させられて、微生物およびエンドトキシン汚染物質の特定の規制限度を確実に満たしてもよい。
【0066】
透析は、ユーザーの血液および透析液をダイアライザー126に通すことによって、透析システム100の透析送達システム104内で行われてもよい。透析システム100は、血液透析、限外濾過および血液透析濾過を含む、異なるタイプの透析を実現するために、ダイアライザーへおよびダイアライザーから、透析液および血液の流れを調節するための、種々の流れ制御装置および機構(特徴)を操作するように構成された電子コントローラを含んでもよい。
【0067】
図4は、図3の透析送達システム104の前面パネル210の一例を示しており、カートリッジ120およびそれに関連するチューブセットを透析システム100に対して位置決めして取り付けることを支援する多数の機構(特徴)を含み、カートリッジのチューブセットに沿った流体の流れをモニターおよび制御してもよい。透析システム上への新しい殺菌済みカートリッジの取り付け中に、カートリッジ上の位置合わせ機構(位置合わせ特徴)(例えば、図5に示された、カートリッジを通る孔125)は、位置決めペグ260とぴったり合ってもよい。また、位置合わせペグは、カートリッジおよびチューブセットを、血液ポンプ213およびスプリングワイヤ22、位置調整機構(位置調整特徴)212、静脈および動脈圧センサ182aおよび182b、静脈空気センサ2161、動脈空気センサ216、ピンチクランプ180a-dおよび静脈ドリップチャンバホルダを含む、透析治療のために利用される前面パネル上の機構(特徴)に位置合わせする働きをする。血液ポンプ213は、例えばぜん動ポンプであってもよい。また、ヘパリンポンプまたは注射器のためのホルダーまたは溝215が示されている。
【0068】
カートリッジは、これらの位置決めペグ260を利用して、前面パネル上の所定位置に押し付けられて、カートリッジとチューブセットの全ての機構(特徴)が、前面パネル210の対応する機構(特徴)と一致してそこに適切に取り付けられることを確実にすることができる。いくつかの実施形態では、カートリッジは容易に片手で取り付けることができ、システムのドアを閉じることで、システム上にカートリッジを据え付けることができる。図1に示すように、透析システムは、運搬を容易にするため車輪を含んでもよい。特定の一実施形態では、ドアのレバーを下に回転してドアを閉めることによって、前面パネル210上へ水平にカートリッジを据え付けるのに加えられる力により、その車輪上の透析システム100が動かない傾向にある。
【0069】
ピンチクランプは、透析治療の前、透析治療中および透析治療の後に多数の機能のために利用されてもよい。ピンチクランプ180a-dは、透析送達システムの電子コントローラによって制御されてもよい。ピンチクランプ180aおよび180bは、生理食塩水供給源(例えば、生理食塩水バッグ)からチューブセットへの生理食塩水の流れを制御するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ピンチクランプは開かれてもよく、そして血液ポンプ213が操作されて、チューブセットの中へ生理食塩水を引き込み、プライミングシーケンス中に空気が除去され、治療前にダイアライザーから不純物を洗い流し、治療終了時に血液をユーザーに戻してもよい。また、ピンチクランプ180aおよび180bは、治療中にユーザーへ生理食塩水の治療ボーラスを送達するために利用され、血圧の維持、または、患者の電解質もしくは流体レベルを調節してもよい。他の実施形態では、例えばぜん動ポンプなどのポンプは、生理食塩水の治療用ボーラスをユーザーに送達するように構成されてもよい。
【0070】
ピンチクランプ180cおよび180dは、ユーザーにつながるチューブセットの動脈および静脈ラインを閉じるように構成されてもよい。また、それらは、治療の前、治療中および治療の後に複数回開閉されて、例えばチューブセットのプライミング、プライミングした生理食塩水の廃棄、患者への返血および/または治療後のダイアライザーの排液などの動作を容易にしてもよい。一実施形態では、システムは、静脈空気センサ2161、動脈空気センサ216またはシステムの他の空気センサからの情報を取り込んで、気泡がライン、特に静脈ラインに見つかったときに、ピンチクランプ180cおよび180dを閉じてもよい。さらなる実施形態では、システムは、血液ポンプの操作を逆転して、静脈ドリップチャンバを通して気泡を取り除くように試みることによって、検出された気泡を除去するように構成されてもよい。
【0071】
また、ピンチクランプ180a-dは、各治療前にチューブセット上の一連の自己テストを行うように動作させてもよい。チューブセットは、血液ポンプで加圧されてもよく、ピンチバルブを閉じることによって、圧力がチューブセット内に保持されてもよい。そのときに、動脈および静脈圧センサは、チューブセット内の圧力低下を探知するのに利用されてもよい。
【0072】
また、図4は、静脈ドリップチャンバホルダ179を図示しており、静脈ドリップチャンバホルダ179は、一対の静脈レベルセンサ181aおよび181bを含んでもよい。カートリッジが透析送達システムに結合された際に、静脈ドリップチャンバ(詳細は後述する)は、静脈ドリップチャンバホルダ179に係合してもよい。透析治療中に、透析レベルセンサ181aおよび181bは、静脈ドリップチャンバ内の流体レベルをモニターしてもよい。流体レベルがセンサ181a上に上昇した場合、透析送達システムは、自動的に静脈ドリップチャンバ内に空気を入れて、流体レベルを低下させることができる。あるいは、流体レベルがセンサ181bより下に低下した場合、透析送達システムは、自動的に静脈ドリップチャンバの外に空気を圧送して(あるいは、容器の外に空気を放出して)、流体レベルを上昇させることができる。他の実施形態では、システムは、2つの静脈レベルセンサの代わりに単一のアナログまたは非バイナリデジタルレベルセンサを含み、ドリップチャンバ内の実際のレベルを検出してもよい。その際、透析送達システムは、この単一のセンサによって検出されたレベルに基づいて、上記と類似の調節を行うように構成されてもよい。この単一のセンサは、例えば、超音波、光学または容量式のレベルセンサを含んでもよい。
【0073】
再度図4を参照すると、一実施形態では、カートリッジを前面パネル210に適切に取り付けると、カートリッジ存在検出器214と係合し、それは、カートリッジが前面パネルに据え付けられたことを透析システム(例えば、システムのコントローラ)に伝達するように構成されたスイッチまたはセンサであってもよい。安全対策として、システムは、カートリッジ存在検出器214が、カートリッジが適切に据え付けられていることを示すまで、ピンチクランプ180a-dを閉じることを許可しないだろう。また、存在検出器は、チューブセットの血液ポンプ部を、血液ポンプに自動的にローディングすることを開始してもよい。一実施形態では、血液ポンプは、存在検出器214が押されたときに、チューブセットの血液ポンプ部を把持して血液ポンプ内へ引き込むように動作するスプリングワイヤ22を含んでもよい。さらにまた、カートリッジとチューブセットを前面パネルに接続することによって、チューブセットの各部分のセルフチェックを開始して、チューブ内の漏れを識別してもよい。
【0074】
図5および図6は、オーガナイザー124に取り付けられるチューブセット122を含むカートリッジ120の一実施形態を示す。図5では、チューブセット122の大部分はオーガナイザーによって視界から遮られているが、動脈ライン230、静脈ライン232、生理食塩水ライン233およびヘパリンライン234は示されている。図5を参照すると、ユーザーは、前面パネルの位置決めペグ260にオーガナイザーの位置決め孔125を一致させることによって、オーガナイザー124により前面パネルに対するカートリッジの適切な配置を確実にすることができる。図5は、オーガナイザーの頂部近傍の複数の位置決め孔125を示しているが、任意の数および位置の位置決め孔と位置決めペグを利用して、カートリッジ120を位置合わせして取り付けてもよい。さらに、オーガナイザー124は、バルブ(例えば、上記したピンチバルブ180a-d)、センサ(例えば、圧力および空気センサ)、血液ポンプ、静脈ドリップチャンバなどを含む透析システムの1つ以上の機構(特徴)に対して、チューブセット122の適切な配置を確実にすることができる。また、図5に示すように、カートリッジは、透析送達システム上の機構(特徴)にアクセスするための多数のアクセス孔2165を含んで、カートリッジがシステム上に据え付けられたときに、ピンチバルブまたは血液ポンプにアクセスしてもよい。
【0075】
図6は、チューブセット122を含み、透析送達システムの前面パネル210と相互作用(interface with)するように構成されているカートリッジ120およびオーガナイザー124の背面を示す。カートリッジ120のチューブセット122は、動脈ライン230、静脈ライン232、および前面パネル210上の血液ポンプ213と相互作用するように構成された血液ポンプ部2167を含んでもよい。血液ポンプ213は、動脈ライン230を通ってユーザーから血液を引き込み、血液をダイアライザーに通し、処理された血液を、静脈ライン232を通って患者に戻すように構成されてもよい。チューブセット122は、治療およびプライミング中にラインから空気を除去するために、静脈ドリップチャンバ361に接続されてもよい。例えばアクセスポイント(例えば、フィステル針またはカテーテル)を介してチューブセット122の動脈ライン230の一端と静脈ライン232の一端とをユーザーの血管に接続することにより、血液が循環し透析することができる連続的な経路を作り出してもよい。動脈ラインおよび静脈ラインの他端は、例えばカラーコードコネクタ(例えば、動脈の場合は赤、静脈の場合は青)を介して、ダイアライザー(後述)に取り付けられてもよい。
【0076】
チューブセットは、例えば生理食塩水ライン233を介して生理食塩水バッグなどの生理食塩水溶液へ接続する生理食塩水接続部353aおよび353bをさらに含んでもよい。図6に示すように、生理食塩水接続部353aは、チューブセットの血液ポンプ部の近傍でチューブセットに接続してもよい。チューブセット353bは、カートリッジを出て、そして動脈ラインがユーザーに接続されている近傍で、動脈ライン230上のチューブセットに接続してもよい。動脈接続部の近傍で生理食塩水接続部353bを使用者に接続することにより、動脈ライン内のすべての血液をユーザーに戻すことができるので、透析治療後の返血が改善される。チューブセットは、ヘパリンライン234を介してヘパリンポンプまたは注射器と接続する接続部を含んでもよい。ヘパリンポンプおよびヘパリンラインは、例えば静脈ドリップチャンバの上部など、非拍動性の場所でチューブセットに接続して、ヘパリンラインへの血液の逆流を防止してもよい。静脈ドリップチャンバの上部の接続部は、ヘパリンラインと静脈ドリップチャンバ内の流体との間に形成される空隙のために、非拍動性の場所となり得る。
【0077】
続いて、チューブセット122を通る血液などの流体の流れについて説明する。上述したように、チューブセット122の血液ポンプ部2167と相互作用する血液ポンプは、ぜん動ポンプであってもよい。血液ポンプは、2つの操作モードで操作してもよい。1つの操作モードは、血液ポンプの「フォワード(正)」操作モードであってもよく、それは、透析治療中に利用され、血液を患者からチューブセット内に移動させて患者に戻すことができる。別の操作モードは、血液ポンプの「リバース(逆)」操作モードであってもよく、それは、プライミングシーケンス中に利用されて、生理食塩水を、チューブセットを通して移動することができる。「フォワード(正)」操作モードでは、流体は、「リバース(逆)」操作モードでチューブセットを通って流れる流体とは反対の方向に、チューブセットを通って流れる。透析治療中は、血液ポンプ213が「フォワード(正)」操作モードでチューブセットと相互作用するため、血液は動脈ライン230を通って患者からチューブセット122に引き込まれてもよい。動脈圧ポッド355は、透析送達システムの前面パネル上の圧力センサ(図4の動脈圧センサ182b)またはトランスデューサと嵌合して、治療中の動脈ラインの圧力を測定してもよい。動脈圧ポッド355は、血液がシステム内に伝達(transmission)されることなしに、圧力を伝達することを可能にするダイアフラムを含む。血液は、チューブセットを通り、生理食塩水接続部353aを過ぎて、チューブセットの血液ポンプ部を通り、ダイアライザーに向かうチューブ部357を通って、続いていてもよい。血液がダイアライザーを通過すると、それはカートリッジに戻り、チューブ部359を通ってチューブセット122内に続くことができ、そこでドリップチャンバの底部の入口ポート365で静脈ドリブンチャンバ361に入る。血液は静脈ドリップチャンバ361に流入し、そこで空気は血液から静脈ドリップチャンバ内に分離され、システムから(例えば、ドリップチャンバの上部のベントまたはポートから)除去される。静脈ドリップチャンバは、ライン363および静脈トランスデューサプロテクタ371を介して、透析送達システム上の静脈圧センサまたはトランスデューサに接続され、血液または他の流体が圧力センサを汚染するのを防止してもよい。静脈ドリップチャンバに入った血液は、出口ポート367を介してチャンバから出て、静脈ライン232を通って患者に戻されるまで、チューブセットを通って流れ続けてもよい。
【0078】
図6に示すように、静脈ドリップチャンバは、血液が静脈ドリップチャンバの底部から静脈ドリップチャンバに出入りすることを可能にする入口ポート365および出口ポート367を含む。ラインまたは血液に捕捉された気泡は、チャンバ内に浸透し(percolate)、患者に戻される前に血液から除去される。この構成は、ダイアライザーから空気を押し上げ押し出すためのダイアライザーのプライミング中に、チューブセットを通る流体の流れを逆転させることを可能にする。また、チューブセットの静脈ラインで空気が検出された場合に、チューブセット内で血液の流れを逆転させてもよい。
【0079】
治療前に、チューブセットは生理食塩水によりプライミングされ、ラインから空気を除去し、透析治療のためにシステムを準備してもよい。プライミングシーケンス中に、チューブセットの動脈および静脈ラインがつながれて、チューブセット内に連続ループを形成してもよい。図18は、静脈ライン232に動脈ライン230を取り付けるように構成されたユニオン継手256の一実施形態を示す。
【0080】
生理食塩水は、「フォワード(正)」および「リバース(逆)」操作モードで血液ポンプを動作させて、血液ポンプをチューブセットと相互作用させ、且つ生理食塩水供給源からチューブセットへ生理食塩水を移動させることによって、生理食塩水接続部353aおよび/または353bを通ってチューブセットに引き込まれてもよい。ポンプをこの「リバース(逆)」操作モードで操作するとき、生理食塩水は、生理食塩水供給源からチューブセットおよびダイアライザーの血液側に移動し、チューブセットおよびダイアライザーに流体を充填し、静脈ドリップチャンバを介してチューブセットから空気を除去する。この「リバース(逆)」操作モードでは、生理食塩水が透析治療中の血流の方向とは反対方向に、チューブセットを通って流れる。したがって、生理食塩水は、ダイアライザーの血液側を通って流れる前に、静脈ドリップチャンバを通って流れる。静脈ドリップチャンバ内の空気は、静脈レベルセンサでモニターされてもよい。システム内の空気は、生理食塩水によって静脈ドリップチャンバ内に押し込まれてもよい。
【0081】
静脈レベルセンサがもはや静脈ドリップチャンバ内の流体レベルの変化を検出しないとき、または空気センサがもはやチューブセットを循環する空気を検出しなくなったとき、チューブセットはプライミングされ、治療の準備が整う。続いて、血液ポンプを「フォワード(正)」操作モードで操作して、生理食塩水を上述したのとは別の方向に移動させて、チューブセットから出してもよい。「フォワード(正)」操作モードでは、生理食塩水は、静脈ドリップチャンバを通過する前にダイアライザーの血液側を通り、静脈ライン232を通って患者に入る。いくつかの実施形態では、プライミングシーケンス中に使用された生理食塩水は、透析治療の開始時に患者内に送達される。送達される生理食塩水量は、患者個人の流体除去要求に応じて、透析治療中に追跡され考慮される。別の実施形態では、生理食塩水の一部または全部が、治療前にチューブセットからポンプでくみ出されまたは排出される。
【0082】
プライミングシーケンスを完了するために、透析液は、透析液ポンプ(以下に説明する)により、ダイアライザーの透析液側を通ってポンプ輸送または移動させられてもよい。透析液は、生理食塩水がダイアライザーの血液側を通ってポンプ輸送されるのと同じ方向に、ダイアライザーの透析液側を通ってポンプ輸送される。ダイアライザーを通る生理食塩水および透析液の方向は、ダイアライザーを通って底部から上部の方向であり、これはダイアライザーの上部を通って気泡を自然にパージすることを可能にする。このように、本開示のプライミングシーケンスは、ダイアライザーの両側(血液側および透析液側)を同じ方向に流体を通して移動させるため、他の従来のシステムで必要とされるようにダイアライザーの向きを物理的に操作または「反転」することなく、ダイアライザーの血液側および透析液側の両方から空気を除去することができる。
【0083】
治療中では、チューブセット内の血液は、通常、ダイアライザーの血液側を上から下方向に通過する。しかしながら、プライミング中では、血液ポンプは、「リバース(逆)」方向に操作され、ダイアライザーを通る生理食塩水を下から上方向に押して、ダイアライザーから空気をより効果的に除去してもよい。チューブセットおよび静脈ドリップチャンバの特有の構成は、流体が静脈ドリップチャンバの底部の接続部で静脈ドリップチャンバに出入りするため、チューブセットを通る「リバース(逆)」方向の生理食塩水の流れを可能にする。従来の静脈ドリップチャンバは、チューブ接続が静脈ドリップチャンバの上部および下部で行われ、一方向に静脈ドリップチャンバを通る流体の流れのみを可能にする。本開示の特有の構成は、ダイアライザーを物理的に反転させることなく、ダイアライザーの血液及び透析液側の両方をプライミングすることを可能にする。プライミング中に静脈ドリップチャンバ内で発生した空気は、システムから外部へ放出するか、またはシステムから外部へポンプで排気することによって除去されてもよい。一実施形態では、システムのピンチバルブを定期的に動作して、プライミングシーケンスのタイミングに応じてチューブセットの生理食塩水ラインを開閉し、ダイアライザー内で遊離した気泡を「叩いて」もよい。例えば、ピンチバルブを4~8秒毎に開閉して、ライン内の生理食塩水の脈動効果を作り出してもよい。
【0084】
生理食塩水がチューブセット内に入っているプライミングシーケンスの後、システムはさらに、チューブセット内の漏れをチェックするために自己検査を行ってもよい。一実施形態では、静脈ライン上のピンチバルブは、血液ポンプが駆動している状態で閉じられ、空気が静脈ドリップチャンバ内にポンプ輸送されてもよい。続いて、動脈ピンチバルブが閉じられ、そして静脈ピンチバルブが開けられ、そしてシステムは圧力の安定を検査してもよい。もし圧力低下がなければ、システムに漏れがないことを確認できる。
【0085】
透析治療の完了時に、血液はチューブセットの内部に依然として残る。血液ポンプ213は、チューブセット内に生理食塩水を引き込むように制御して、残っている血液を患者の体内に押し戻してもよい。この返血機構(返血特徴)は、システムのコントローラおよび血液ポンプによって高度に制御されてもよい。例えば、透析治療および返血中に、システムのコントローラは、どの程度生理食塩水がチューブセットに押し込まれたかを正確に知るために、生理食塩水投与を制御するピンチバルブが開かれているときに、血液ポンプによって行われた正確な回転数をモニターおよび追跡(観測)してもよい。所望の容量の生理食塩水がチューブセット内に引き込まれたとき、血液ポンプは停止され、または無効にされてもよい。これによって、システムは、どの程度の生理食塩水が使用されたか、および生理食塩水供給源またはバッグにどの程度残っているかを正確に知ることができる。透析治療の終了時には、チューブセット内の血液量が既知であるので(典型的には約250ml)、システムはチューブセット内の正確な量の生理食塩水を精密に測定して、血液をユーザーに戻してもよい。返血に利用される生理食塩水の予想量(典型的には、返血の徹底度の変化に応じて300~600ml)は、返血後に患者の目標体重が達成されるように、限外濾過における全流体の除去目標に統合されてもよい。返血の前に、必要量の生理食塩水が生理食塩水供給源に残っていない場合、システムは生理食塩水供給源が補充または交換される必要があることをユーザーに警告してもよい。
【0086】
一実施形態では、患者により透析治療が開始される前に、ダイアライザーはフラッシュされてもよい。いくつかのケースでは、診療所はこのラベリングを無視し、ダイアライザーをフラッシュしない。システムは、500mlまでの生理食塩水でダイアライザーをフラッシュするように構成されてもよい。上述したように、プライミングシーケンス中、チューブセットは生理食塩水で満たされる。このプライミング中に、動脈および静脈ラインは、図18に示すように、ユニオン継手256によって互いに取り付けられる。チューブセットがプライミングされた後に、患者は、ユニオン継手256からキャップ258を取り外し、ユニオン継手を廃棄物バケット上に配置してもよい。続いて、透析システムは、プライム廃棄シーケンスに置かれてもよく、バルブ180bおよび180c(図17)が閉じられていること、およびバルブ180aおよび180d(図17から)が開かれていることを最初に確認する。所望のプライム廃棄量がシステムを通してポンプ輸送され、図18のユニオン継手256を通って排出されるまで、血液ポンプは、チューブセット内に生理食塩水を引き込むためにフォワード(正)方向に操作されてもよい。続いて、バルブ180dが閉じられ、バルブ180Cが開かれ、適切な量の生理食塩水がユニオン継手から外に出るまで(例えば、一実施形態では40mlの生理食塩水)、生理食塩水がユニオン継手を通して重力排水される。
【0087】
また、システムは、透析治療後にダイアライザーから流体を自動的に排出してもよい。一実施形態では、血液ポンプは、静脈ラインがクランプされた状態でリバース(逆)方向に運転されて、ダイアライザーの透析液チャンバからダイアライザーのマイクロチューブ壁を通って、ダイアライザーを通る重力に逆らって生理食塩水供給源またはバッグ内に流体を引き込んでもよい。
【0088】
図7は、透析システム100内に含まれる浄水システム102の流れ図を示す。例えば蛇口から入ってくる水は、1つ以上のセディメントフィルタ108および1つ以上のカーボンフィルタ110を含む多くのフィルタを通って流れてもよい。塩素サンプルポート195は、カーボンフィルタ110の間に配置されて、塩素含有量を測定するための流体サンプルを提供してもよい。重複または二重のカーボンフィルタが、カーボンフィルタの不具合時にシステムおよびユーザーを保護するために利用されてもよい。続いて、水は、逆浸透(RO)供給ヒーター140、RO供給ポンプ142、1つ以上のROフィルタ112(RO1およびRO2として示されている)および熱交換器(HEX)144を通過してもよい。ROフィルタ112からの透過液は、HEX144に送達されてもよく、一方、過剰な透過液は、受動的に再循環させて、RO供給ポンプおよびROフィルタを再び通過させてもよい。再循環は、流入水道水をRO水で希釈して、流入水からの塩のより高い除去率を達成することによって、浄水システムの運転を助ける。HEX144を通過した後、浄水は、透析液を調製し、透析治療を補助するために、透析送達システム104に送られてもよい。さらに、浄水プロセス中に、ROフィルタからの濃縮物は、ドレーン152に送られてもよい。
【0089】
図8を参照すると、透析システムの浄水システム102は、図7において上述されたように、水供給サブシステム150、濾過サブシステム154、予熱サブシステム156、RO濾過サブシステム158および低温殺菌サブシステム160を含む、1つ以上のサブシステムを含んでもよい。上記サブシステムの各々は、ドレーン152への排出を生成してもよい。浄水システム102は、透析治療のために水供給源をリアルタイムで浄化するように構成されてもよい。例えば、浄水システムは、住宅の水供給源(例えば、水道水)に接続されて、低温殺菌水をリアルタイムに調製してもよい。低温殺菌された水は、浄水手法と典型的に関連した大量のバッチ量の水を加熱および冷却する必要なしに、(例えば、透析送達システムと共に)透析治療に使用することができる。
【0090】
図9は、浄水システムの水供給サブシステム150の機構(特徴)を示し、水供給サブシステム150は、浄水システムを通る流体の流れを制御するための様々なバルブ(例えば、三方バルブ、制御バルブなど)を含んでもよい。例えば、少なくとも1つのバルブ2169が開けられて、浄水のために水を浄水システムに流入させることを可能としてもよい。流入水は、例えば水道水供給源2171から流入してもよい。浄水システムから戻ってくる流体は、1つ以上のバルブを通ってドレーン152に導かれてもよい。さらに、サブシステムは、給水圧を設定値に調節することができる供給調整器183を含んでもよい。ドレーン圧力センサ153は、ドレーンにおける圧力を測定してもよい。水は、水供給サブシステム150から、次に説明する濾過サブシステムに流れることができる。
【0091】
図10は、浄水システムの濾過サブシステム154の一実施形態を示す。濾過サブシステムは、図9で説明した水供給サブシステム150から水を受け取とることができる。水は、まず、水圧を測定するように構成された供給圧センサ2173と、流入水の温度を感知するように構成された供給温度センサ2175とを通過してもよい。濾過サブシステムは、例えば5ミクロンのポリプロピレンカートリッジフィルタなどのセディメントフィルタ155を含んでもよい。フィルタは通常、6ヶ月毎に交換が必要である。セディメントフィルタの高容量とフィルタを通る比較的低い流量に基づいて、平均寿命は米国における平均都市水質に基づいて1年以上と推定される。6ヶ月の交換間隔により、早期のセディメントフィルタ汚れがまれになることが、高く保証される。また、フィルタの構造および材料に基づいて、濾過されていない水がフィルタを通過することをもたらす不具合が、まれに発生すると予想される。ポストセディメント圧力センサ2177は、セディメントフィルタを横切る圧力降下を測定して、セディメントフィルタをいつ取り替える必要があるかをモニターし特定してもよい。セディメントフィルタが濾過されていない水を通過させた場合、その結果は、ポストセディメント圧力センサ2177での圧力降下によって検出されるカーボンフィルタの汚れになるだろう。センサが5psigに低下したときにこの圧力低下が重要な因子である場合、システムは、治療を開始する前に、カーボンフィルタとセディメントフィルタの両方を交換する必要がある。
【0092】
続いて、水は、例えば有機化学物質、塩素およびクロラミンなどの物質を水から濾過するように構成された1つ以上のカーボンフィルタ110(CF-1およびCF-2として示されている)を通って流れてもよい。例えば、カーボンフィルタ110は、10ミクロンフィルタを有する粒状カーボンブロックカートリッジを含んでもよい。カーボンフィルタは、カーボンフィルタ間の流路に配置された塩素サンプルポート195と直列に接続されてもよい。塩素サンプルポートは、例えば水の総塩素濃度レベルがある閾値未満(例えば、0.1ppm未満)であることを保証するような品質管理の目的のために、流れる水に対する(例えば、システムの前面パネルを通るような)アクセスをユーザーに提供してもよい。さらに、ポストカーボン圧力センサ2179は、カーボンフィルタの後に配置されて、セディメントおよびカーボン濾過後のライン内の流体圧力をモニターしてもよい。図10にも示されているように、任意選択の空気分離装置187がセディメントフィルタとカーボンフィルタとの間に配置され、余分な空気および気泡をラインから除去してもよい。いくつかの実施形態では、各カーボンフィルタは、高い塩素条件で、かつ器具サポートよりも高い流量で操作したとき、遊離塩素およびクロラミンが0.5ppm未満である水を2500ガロン生産する耐用年数を有する仕様にされてもよく、それにより、2500ガロンを超える期待耐用年数が期待される。カーボンフィルタを通る400mL/分の最大処理流量に基づいて、単一のカーボンフィルタについて予想されるのは、流入水の水質に応じて約6ヶ月から1年またはそれ以上である。通常、システムは6ヶ月毎に両方のフィルタの交換を必要とする。ほとんどのカーボンフィルタは、熱または化学消毒に耐えられないため、給水および排水システムによって実現される再循環/消毒液路は、カーボンフィルタ(またはセディメントフィルタ)を含まない。カーボンフィルタの塩素吸収容量は有限であり、流入水の水質に依存するので、塩素サンプルポート195から水サンプルが採取されて、遊離塩素濃度レベルが0.1ppm未満であることを確認してもよい。2段階のカーボン濾過を使用し、第1のカーボンフィルタの後に遊離塩素が「等しく存在しない(equivalent absence)」ことを確認することにより、第2のカーボンフィルタが第1のカーボンフィルタに対して完全に余剰で最大容量のままであることを確実にすることができる。第1のカーボンフィルタが満了すると、通常は両方のフィルタが交換される。水は、濾過サブシステムから、次に説明する予熱サブシステムに流れることができる。
【0093】
図11は、浄水システムの予熱サブシステム156の一実施形態を示す。予熱サブシステムは、ライン内の水の温度を制御して、RO濾過性能を最適化するように構成されてもよい。予熱サブシステムは、例えばペルチェヒーター/冷却器などの熱電装置を含みうる1つ以上のRO供給ヒーター186を含んでもよい。RO供給ヒーター186は、RO濾過の前に、水の温度を制御(regulate)または調節(adjust)するように構成することができる。一実施形態では、逆浸透のための目標温度は、最適なROフィルタ性能のために25℃である。水が冷た過ぎる場合、ROフィルタは流れが十分ではなく、システムは十分な水を生成しないだろう。水が温か過ぎる場合、ROフィルタはより多くの流れを可能にするが、脱塩を減少させる。一実施形態では、25℃は、流れと脱塩がバランスされ、適切な脱塩と共に十分な水量を提供する温度である。RO供給ヒーターは、ヒーターを通って流れる流体を加熱または冷却するために使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、RO供給ヒーターは、ペルチェ効果によって廃水または利用済み透析液から熱を回収してもよい。他の実施形態では、例えば熱消毒サイクルの間、RO供給ヒーターは、反対の極性に置かれて、ペルチェ効果を無効にしてもよい。水処理中、流入水は、RO供給ヒーターの2つの熱電ウェーハの高温側に取り付けられたチタン板を通って流れる。廃水は、ウェーハの低温側に取り付けられた別個のチタン板を通って導かれてもよい。したがって、ペルチェ効果によって、熱は廃水から流入水に投入される。予熱システムが2の性能係数を達成する最大出力では、流入水を加熱する電力の半分が廃水から回収されることを意味し、残りの半分はウェーハの電気加熱から得られる。より低い出力レベルでは、性能係数が高くなり、熱のより高い割合が廃水の流れから回収されることを意味する。熱消毒中、RO供給ヒーターの熱電ウェーハは、反対極性に置かれてもよい。このようにして、両方のチタン板が加熱され、ペルチェ効果が無効にされる。これにより、水は加熱だけされて、ヒーターの両側上に流入する水の温度(incoming temp on either side of the heater)より常に上の温度であることを確実にする。
【0094】
図11に示すように、予熱サブシステム156は、濾過サブシステムとRO供給ヒーターとの間のラインにプロセス供給バルブ188を、およびドレーンへ使用済み透析液を送るための使用済み透析液リターンバルブ190を含んでもよい。RO供給ヒーターは、ヒーターのいずれかの側の流体の温度を測定するための一対の温度センサ192および194を含んでもよい。水は、予熱サブシステムから、次に説明するRO濾過サブシステムに流れることができる。
【0095】
図12は、浄水システムのRO濾過サブシステム158の一実施形態を示す。RO濾過サブシステムは、上述した予熱サブシステムから予熱された水を受け取ることができる。RO濾過サブシステムは、1つ以上のROフィルタ112(RO-1およびRO-2として示す)を横切って水を送り、透過流と濃縮流を生成しうるRO供給ポンプ142を含んでもよい。濃縮流は、複数のROフィルタによって濾過されてもよい。さらに、透過流は過剰な透過流と混合され、流入水と混合するために再循環させてもよい。さらに、各ROフィルタ112は、ROフィルタを横切る流体ラインの流速を高く保つために、再循環ポンプ200を含んでもよい。再循環ポンプは、一定速度で運転し、濃縮流から生じる流れをROフィルタの入口に戻すように駆動してもよい。RO供給ポンプを通して再循環させる代わりに別個の再循環ポンプを使用することは、全体の電力消費を低下させ、RO膜上の流速を高くして付着物を低減し、高い水生成速度を可能にする。いくつかの実施形態では、RO供給ポンプは、低圧であるが高流量のポンプである再循環ポンプと比較して、高圧であるが比較的低流量のポンプであってもよい。
【0096】
RO供給ポンプおよびRO濃縮流量制限装置2181によって生成された圧力は、ドレーンへの廃棄物の流量を制御してもよい。制限装置が汚れたり詰まったりしないようにするために、RO濃縮流量制限装置を通る流れは、バルブ180を動作することによって周期的に反転させられてもよい。さらに、フィルタ寿命および性能を改善するために、再循環ポンプは、ROフィルタ筐体内の流体流量を増加するために利用されてもよい。この流量の増加は、ROフィルタの表面近傍で起こりうる境界層効果(boundary layer effect)で、そこではフィルタ膜近傍の水が流れないことがあり、それを低減するのに役立ってもよい。境界層は、ROフィルタの表面上に蓄積し、集められてROフィルタを汚す可能性がある総ての溶解固形物の濃度がより高い領域を生成しうる。
【0097】
RO濾過サブシステムは、サブシステムを通り流れる水の導電率を測定し、溶質クリアランスを測定するように構成された1つ以上の導電率センサ196と、流体圧力をモニターするように構成された圧力センサ198と、流体から空気および気泡を分離および除去するように構成された空気分離装置187とを含んでもよい。さらに、RO濾過サブシステムは、逆止めバルブを含む種々のバルブ180と、ROフィルタを通って低温殺菌サブシステムに向かう流れ、さらなる濾過のためにRO濾過サブシステムを逆向きに通る流れ、またはドレーンに向かう流れを制御するための流体ポンプとを含んでもよい。水は、RO濾過サブシステムから、次に説明する低温殺菌サブシステムに流れることができる。
【0098】
図13は、水準備システムの低温殺菌サブシステム160の一実施形態を示す。低温殺菌サブシステムは、流体を加熱することによって微生物汚染への患者の暴露を最小限に抑えるように構成され、システムから微生物汚染およびエンドトキシンを排除してもよい。低温殺菌サブシステムは、熱交換器(HEX)145であって、低温殺菌温度まで水を加熱し、水が高温で滞留することを可能とし、続いて水を透析液の生成のための安全な温度に戻すように冷却するように構成された熱交換器(HEX)145を含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、HEX145は低温殺菌サブシステムが受け取った水を約148℃の温度に加熱してもよい。加熱された水は、十分な時間、HEXの滞留チャンバ内に保持され、細菌を排除および殺し、エンドトキシンを変性させてもよい。エンドトキシンは、死んだ細菌の死骸であって、長い脂質鎖で特徴付けられる、と説明されてもよい。水と透析液の調製中に、エンドトキシンを細菌とともにモニターして、透析液の純度を判断してもよい。透析液中のエンドトキシンは、望ましくない炎症反応をユーザーに引き起こす可能性がある。したがって、透析液中のエンドトキシンのレベルを最小にすることが望ましい。エンドトキシンは、典型的な限外濾過装置の孔サイズによって容易に捕捉されない。代わりに、エンドトキシンは表面吸着によって限外濾過装置で阻止され、追加のエンドトキシンが通過し始めるほどまで、エンドトキシンにより飽和状態になりうる。過熱された水中のエンドトキシンを130℃という低温で加熱すると、エンドトキシンが変性することが実証されているが、必要な滞留時間は非常に長い(数十分)。これらの昇温において、水は液相に留まり、水は典型的には極性溶媒と考えられるが、非極性溶媒のように挙動し始めてエンドトキシンの脂質鎖を変性させる。温度が220℃以上に上昇すると、エンドトキシンの変性が数秒で起こる。本開示のHEXは、水を液体状態に保つ圧力(220℃で約340psi、しかしHEXは1000psiを超える圧力に耐えることができる)を維持しながら220℃以上で運転してもよい。一実施形態では、HEXの好ましい温度および圧力範囲は、180~220℃および145~340psiである。続いて、滞留チャンバを出るときに水が冷却されてもよい。HEX145は、同時に、流入水を加熱かつ流出する水を冷却して、エネルギー消費を減らす、独立型の逆流熱交換器である。
【0100】
低温殺菌サブシステムは、流体ライン内の流体圧力を維持し、水が沸騰するのを防止するように構成されたHEXポンプ193を含んでもよい。水がHEX145を通過した後、水調整装置197は、透析送達システムで利用するために水の圧力を低下させてもよい。低温殺菌サブシステムを通って流れる水の圧力および温度をそれぞれ測定するために、1つ以上の圧力センサ182または温度センサ184が含まれていてもよい。さらに、空気分離装置187は、水から空気および気泡をさらに除去してもよい。一実施形態では、HEX145が加熱しているときに、流量制限装置189およびバルブ180が、ドレーンへ放出される水を制限するために利用されてもよい。水が低温殺菌サブシステムを通過すると、水は浄水システム全体を通過しており、透析液の調製および透析送達システムによる送達に使用するのに十分清潔で純粋である。
【0101】
図14は、透析送達システムの混合サブシステム162の模式図を示す。浄水システムからの浄水は、透析送達システムに送られ、脱気チャンバ221内の最終脱気の準備として、ヒーター220を通って流れてもよい。一実施形態では、ヒーター220内に流入する水は43~47℃程度であってもよく、ヒーターは50℃以上まで水を加熱してもよい。脱気チャンバは、例えば、ポンプ噴霧装置222を含む噴霧チャンバであってもよい。脱気中、噴霧チャンバ再循環ポンプ225は、脱気チャンバの底部から流体を高い流量で汲み上げる。ヒーター220から流入した温水は、ポンプ噴霧装置222を通って流体レベルより上の脱気チャンバに入る。ヒーターに入りかつ出るときの水の温度は、温度センサ184でモニターされてもよい。噴霧チャンバ再循環ポンプ225の高流量と組み合わされたこの制限噴霧ヘッドは、-7psig~-11psigの範囲の真空を脱気チャンバ内に生成する。真空圧力と熱は、組み合わされて、流入水を効果的に脱気する。空気が脱気チャンバの頂部に集まり、水位がレベルセンサ2183より下に落ちると、脱気ポンプ191は、オンにされるか、またはより速く作動して、収集された空気を脱気チャンバの頂部から除去してもよい。脱気ポンプ191は、空気と液体の混合を脱気チャンバから除去してもよい。
【0102】
脱気と、その後のヒーター220によるほぼ体温までの冷却との後、酸および重炭酸塩濃縮物は、所望の透析液組成に達するように、濃縮ポンプ223によって流体経路と容積的に比例(volumetrically proportioned)させてもよい。水および濃縮物は、インライン混合の代わりに、時間遅延または容積混合を利用する一連の混合チャンバ224で混合され、流体の導入を円滑にしてもよい。図15は、入口部236aおよび出口部236bを含みうる混合チャンバ224の一実施形態を示す。混合チャンバは、入口部を出口部に接続する複数のチャネル238を含んでもよい。チャネルは、チャネルのいくつかが、他のチャネルよりも入口部から出口部までのより長い経路を含むように配置されてもよい。従って、混合チャンバのチャネルを通って移動する流体は、再結合される前に変化するチャネル長に沿って分離および分割されて、混合チャンバを出る時までに、「塊状」の流入流体のより完全な混合を達成してもよい。
【0103】
一実施形態では、濃縮ポンプは、高速で運転して、ポンプ機構(ポンプ特徴)内の任意の気泡を押し出してもよい(例えば、通常運転中の~7ml/分と比較して30ml/分以上で運転してもよい)。透析液が混合されると、透析液ポンプ226は、透析送達システムを通る透析液の流れを制御してもよい。混合サブシステム162は、透析液調製中に流体をモニターするために、様々な圧力センサ182、温度センサ184および導電率センサ196を含んでもよい。導電率センサは、液体イオン特性を測定し、組成が正しいことを確認するために利用されてもよい。
【0104】
透析液送達システム内の流路は、流路を通る洗浄および/または殺菌流体の循環を可能にする1つ以上のバイパスまたは循環経路を含んでもよい。循環経路は、循環経路を流れる流体が使用後にシステムから排出可能な開放流れループであってもよい。別の実施形態では、循環経路は、循環経路を流れる流体がシステムから排出できない閉鎖流れループであってもよい。
【0105】
図16は、調整された透析液を混合サブシステムから受け取ることが可能な透析送達システムの限外濾過サブシステム164を示す。限外濾過サブシステムは、混合サブシステム162から調製された透析液を受け取るように構成される。透析液ポンプ226および使用済み透析液のポンプ227は、限外濾過サブシステムを通る透析液の流れを制御するために操作されてもよい。ポンプ226および227は、透析液の流れを制御し、ダイアライザー126に入る前に限外濾過装置228および透析液ヒーター230を通過するようにしてもよい。温度センサ184は、透析液ヒーター230を通過する前後の透析液の温度を測定してもよい。透析液ヒーターは、ユーザーの好みに基づいて、典型的には35~39℃の間で透析液を加熱するようにユーザーが設定可能であってもよい。ダイアライザーを通過した後、使用済みの透析液は、ドレーンに戻る前に、使用済み透析液のポンプ230を通って、透析液ヒーター228を通って戻ってもよい。一実施形態では、図14の脱気ポンプは、使用済み透析液のポンプ227の背側(back)を濡らすために利用されてもよい。限外濾過サブシステムは、透析液がダイアライザー126を通過できるように制御されることを可能とする、あるいは透析液が「バイパスモード」においてダイアライザーを通過するのを防止するように制御されることを可能とする1つ以上のアクチュエータまたはバルブ177を含んでもよい。透析液ポンプ226と使用済み透析液のポンプ227との間に配置された圧力センサ182cは、透析液が「バイパスモード」においてダイアライザーを通過することが妨げられたときに、ポンプ間の透析液の圧力を測定するように構成されてもよい。
【0106】
図17は、ダイアライザーの血液側からダイアライザーの透析液側に、またはその逆に流体を通過させる透析治療中に、患者から血液を引き抜き、ダイアライザーを通る血液の流れを生成するように構成された血液回路サブシステム166を示す。上述したように、血液回路サブシステム166は、本明細書に記載されている他の機構(特徴)の中でも、チューブセット122、血液ポンプ213、ピンチクランプ180a~d、静脈ドリップチャンバ361、静脈レベルセンサ181、動脈ライン230、静脈ライン232、生理食塩水供給源240およびヘパリンポンプ242を含む。血液ポンプ213は、第1および第2の操作モードで操作するように制御されてもよい。透析治療中に、ポンプが動脈ライン230を通して患者から血液を引き抜き、矢印244の方向にチューブセットを通って流れ、ダイアライザー126を通って流れ、静脈ドリップチャンバ361を通って流れ、そして静脈ライン232を通って患者に戻される第1の操作モードで、血液ポンプ213が操作されてもよい。また、血液ポンプは、ポンプ方向が逆転されて、ライン内の流体が矢印246の方向に流れるようにする(例えば、上記のプライミングシーケンス中に)第2の操作モードで操作されてもよい。
【0107】
また、血液回路サブシステムは、上述したように、静脈レベルチャンバ361内の流体レベルを自動的に制御するように適合された通気回路248を含んでもよい。通気回路は、圧力補償ポンプ250、1つ以上の通気バルブ252および空気フィルタ254を含んでもよい。また、システムの静脈圧センサ182aは、通気回路248内に配置されてもよい。透析治療中に、静脈レベルセンサ181は、静脈ドリップチャンバ361内の血液の流体レベルをモニターしてもよい。電子コントローラは、センサから流体レベル情報を受け取り、センサが下限閾値を下回る流体レベルを検出した場合に、圧力補償ポンプ250および/または通気バルブ252により静脈ドリップチャンバから空気をポンプ輸送または放出することによって、および、センサが上限閾値を超えて上昇する流体レベルを検出した場合に、静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送することによって、静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルを自動的に維持してもよい。
【0108】
再度図17を参照すると、透析治療後の患者にチューブセット内の血液を戻す方法を説明する。最初に、ユーザーは、動脈ライン230が体に入る位置で動脈針(図示せず)上のラインをクランプしてもよい。このクランプは、生理食塩水接続部353bとユーザーの身体との間に配置されてもよい。続いて、ユーザーは、ACLMPが開かれていることを確認してもよく、これは、生理食塩水接続部353bの遠位の動脈ライン上の別のクランプである。続いて、透析システムの電子コントローラは、ピンチクランプ180bおよび180cを開き、ピンチクランプ180aを閉じてもよい。続いて、電子コントローラは、「フォワード(正)方向」に操作するように血液ポンプ213に指示して、生理食塩水を、生理食塩水供給源(例えば、生理食塩水バッグ)からピンチクランプ180bを通って、動脈ラインが患者に接続する場所に非常に近い生理食塩水接続部353bで、動脈ライン230内に引き込んでもよい。血液ポンプは、指定された時間操作され、または所定量の生理食塩水(例えば、300~600ml)がチューブセットに引き込まれるまで駆動して、チューブセットおよびダイアライザー内の血液を、静脈ライン232を通して患者に戻してもよい。いくつかの実施形態では、血液返還プロセスは、チューブセット内の生理食塩水の色に基づいて手動で停止されてもよい(すなわち、生理食塩水の色が透明または淡いピンク色になったときに血液ポンプを停止してもよい)。
【0109】
上述した透析液ポンプおよび使用済み透析液のポンプは、透析システムの電子コントローラと通信する電子回路の一部であり、制御された限外濾過速度を達成してもよく、また、患者へまたは患者からの流体の追加または除去を正確に制御するように調節されてもよい。
【0110】
透析液ポンプおよび使用済み透析液のポンプは、高精度で制御され、動的バランス、周期バランスおよび連続修正(continuous correction)を達成してもよい。図16~17を参照すると、透析液ポンプ226および使用済み透析液のポンプ227は、透析送達システムを通して透析液をポンプ輸送するように構成されてもよい。透析液ポンプは、透析液を、限外濾過装置および透析液ヒーターを通して押して、加熱するように制御されてもよい。
【0111】
システムの流れをキャリブレートするために、システムは、バルブ177が、ダイアライザーを通る透析液の流れを防止するように動作させられるバイパスモードに入るように制御されてもよい。これにより、ダイアライザーの血液側上の患者チューブセットを透析液の流れから隔離し、限外濾過ができない透析液の流れのためのクローズドシステムが形成される。システムがバイパス状態にあるときはいつでも、使用済み透析液のポンプは、透析液ポンプ226と使用済み透析液のポンプ227との間に配置された圧力センサ182cによって測定される一定の圧力を維持するように機能(servoed)されてもよい。使用済み透析液のポンプ速度は、透析液ポンプのポンプ速度が一定の速度に維持されている間、圧力センサ182cによって測定された圧力が安定するまで調節されてもよい。圧力が安定されたら、使用済み透析液のポンプのポンプ速度対透析液ポンプのポンプ速度は、限外濾過がゼロになるポンプ速度比として記録されてもよい。システムがバイパスを終了して透析治療に戻るとき、使用済み透析液のポンプの速度は、所望の限外濾過速度に基づいて調節されてもよい。
【0112】
ダイアライザーがバイパスされるとき、透析液の圧力測定は、ダイアライザーの血液側からの影響または圧力から独立して(例えば、血液チューブセットから隔離されて)行われてもよい。透析液および使用済み透析液のポンプが同じ速度で稼働するとき、2つのポンプの間に配置された圧力センサ182cでは圧力変化がないので、ポンプ間の流れアンバランスはない。しかしながら、透析液および使用済み透析液のポンプが異なる速度で稼働する場合、流れアンバランスがポンプ間に生成され、この流れアンバランスを表す圧力変化が圧力センサ182cで測定されてもよい。いくつかの実施形態では、流れアンバランスは、各ポンプのポンプストロークに基づいて制御されてもよい。他の実施形態では、流れアンバランスは、測定された静脈圧に基づいて最適なポンプ速度を決定するルックアップテーブルに基づいて制御されてもよい。システムの電子コントローラは、ダイアライザーの透析液側と血液側との間に流れアンバランスを生成するために、透析液ポンプ226に対する使用済み透析液のポンプ227の(または、使用済み透析液のポンプ227に対する透析液ポンプ226の)ポンプ速度を調整することによって、ダイアライザーを横切る流体の流れ(すなわち、限外濾過)を自動的に制御するように構成されてもよい。ポンプ226および227を異なる速度で操作することによって、流れアンバランスがダイアライザーの透析液側上に生成されたとき、流れアンバランスを均一にするために、流体は血液側から透析液側に透析膜を横切って流れてもよく、逆も同様である。
【0113】
透析液ポンプ226および使用済み透析液のポンプ227のポンプ速度は、所望の限外濾過速度に基づいてシステムによって固定されてもよく、バルブ180は、透析治療中に通常操作のために開けられてもよい。治療中、システムは、圧力センサ182aでユーザー側の静脈圧をモニターし続けてもよい。静脈圧が変化する場合(例えば、変化が30mmHg超)、システムは、上述した同じ技術によって、ポンプを自動的にリバランスするように構成されてもよい。これにより、ポンプをバランスさせて、ダイアライザーを通る所望量の流体移動を実現するか、または、ダイアライザーを通る流体移動を実現しないようにすることができる。1つの特定の実施形態では、システムは、ユーザーの静脈圧の変化を検出し、静脈圧に対する速度のルックアップテーブルに基づいて、使用済み透析液のポンプ227の速度を自動的に調節して、ユーザーにおける限外濾過バランスを維持してもよい。システムがキャリブレートされると、使用済み透析液のポンプ速度が変調され、患者からの流体除去速度を調節してもよい。いくつかの実施形態では、使用済み透析液のポンプのポンプ速度は、透析液ポンプに対して交互に増加または減少されて、血液透析濾過を可能にしてもよい(例えば、患者への流体の押し込み/引き抜き)。
【0114】
上述したように、浄水システムおよび透析液送達システムは、様々なポンプ、バルブ、センサ、空気分離装置、空気センサ、熱交換器および他の安全機構(安全特徴)を含んでもよい。これらの機構(特徴)の全ては、透析システムの電子コントローラによって、電子的にかつ自動的に制御されてもよい。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
透析システムとの動的バランスを達成する方法であって、
患者からの血液の流れを、患者のチューブセットおよびダイアライザーの血液側を通して血流を動かすために、血液ポンプを操作する工程、
前記ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れを動かすために、第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプを操作する工程、
前記ダイアライザーの前記透析液側を通る前記透析液の流れをバイパスする工程、および
前記ダイアライザーの前記透析液側を通る前記透析液の流れがバイパスされている間、前記第1の透析液ポンプと前記第2の透析液ポンプとの間の透析液の圧力を測定し、前記測定された透析液の圧力が安定するまで、前記第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、を含む、透析システムとの動的バランスを達成する方法。
(態様2)
さらに、前記ダイアライザーの前記透析液側を通る透析液の流れを回復する工程を含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記透析液の流れが前記ダイアライザーの前記透析液側を通って回復するときに、流体は前記ダイアライザーの前記血液側から前記ダイアライザーの前記透析液側まで通過しない、態様2に記載の方法。
(態様4)
透析システムとの動的バランスを達成する方法であって、
患者からの血液の流れを、患者のチューブセットおよびダイアライザーの血液側を通して動かすために、血液ポンプを操作する工程、
患者の静脈圧を測定する工程、
前記ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れを動かすために、第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプを操作する工程、
透析液の流れが前記ダイアライザーの透析液側を通ることを防止する工程、
前記ダイアライザーの前記透析液側を通る透析液の流れが防止されている間、前記第1の透析液ポンプおよび前記第2の透析液ポンプとの間の透析液の圧力を測定し、前記測定された透析液の圧力が安定するまで、前記第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、
前記透析液の流れが前記ダイアライザーの透析液側を通ることを許可する工程、および
前記第1の透析液ポンプと前記第2の透析液ポンプとの間の流れアンバランスを引き起こすために、前記第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程であって、前記流れアンバランスは、当該流れアンバランスを均一にするために前記ダイアライザーの血液側と前記ダイアライザーの透析液側との間の流体の流れをもたらす、前記第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、を含む、透析システムとの動的バランスを達成する方法。
(態様5)
前記流体の流れは、前記ダイアライザーの前記血液側から前記ダイアライザーの前記透析液側に進む、態様4に記載の方法。
(態様6)
前記流体の流れは、前記ダイアライザーの前記透析液側から前記ダイアライザーの前記血液側に進む、態様4に記載の方法。
(態様7)
さらに、前記ダイアライザーの前記血液側と前記ダイアライザーの前記透析液側との間の圧力損失をキャリブレートするために、前記第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程を含む、態様4に記載の方法。
(態様8)
さらに、前記測定された静脈圧が所定の閾値だけ変化した場合に、前記防止、測定および調節する工程を繰り返す工程を含む、態様4に記載の方法。
(態様9)
前記所定の閾値は、30mmHgを超える、態様8に記載の方法。
(態様10)
透析システムであって、
患者からの血液の流れを、患者のチューブセットおよびダイアライザーの血液側を通して動かすように構成された血液ポンプ、
患者の静脈圧を測定するように構成された静脈圧センサ、
前記ダイアライザーの透析液側を通る透析液の流れを制御するように構成された第1のポンプおよび第2のポンプ、
透析液の流れが前記ダイアライザーの透析液側を通ることを防止するために、前記ダイアライザーの透析液側をバイパスするように構成された1つ以上のバルブ、
前記第1のポンプと前記第2のポンプとの間に配置され、前記ダイアライザーの透析液側がバイパスされたときに、透析液の圧力を測定するように構成された透析液圧センサ、および
前記血液ポンプ、前記静脈圧センサ、前記第1および第2のポンプ、前記1つ以上のバルブ、および前記透析液圧センサと操作可能に結合された電子コントローラであって、前記電子コントローラは、前記第1のポンプと前記第2のポンプとの間の流れアンバランスを引き起こすために、前記第1および第2のポンプのポンプ速度を調節するように構成されており、前記流れアンバランスは、当該流れアンバランスを均一にするために前記ダイアライザーの前記血液側と前記ダイアライザーの前記透析液側との間の流体の流れをもたらす、電子コントローラ、を含む、透析システム。
(態様11)
透析システムであって、
血液側および透析液側を含むダイアライザー、
前記ダイアライザーの前記血液側に結合された血液回路であって、さらに、患者の静脈接続部位に接続されるように適合された静脈ラインと、患者の動脈接続部位に接続されるように適合された動脈ラインとを含む血液回路、
前記血液回路に結合され、患者からの血液を、前記動脈ラインを通り、前記ダイアライザーの前記血液側を通り、そして前記静脈ラインを通って患者に戻すように構成された血液ポンプ、
前記血液回路に結合され、患者の静脈圧を測定するように構成された静脈圧センサ、
前記ダイアライザーの前記透析液側に結合された透析液回路であって、さらに、透析液供給源に結合された透析液ラインを含む透析液回路、
前記透析液回路に結合されたアクチュエータであって、透析液が前記ダイアライザーの前記透析液側を通って移動する第1の構成と、透析液が前記ダイアライザーの前記透析液側を通って移動することを防止する第2の構成とを含むアクチュエータ、
前記透析液回路に結合された第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプであって、前記アクチュエータが前記第1の構成のときに、前記透析液供給源から、前記透析液ラインを通り、そして前記ダイアライザーの前記透析液側を通る透析液を動かすように構成された、第1の透析液ポンプおよび第2の透析液ポンプ、
前記透析液回路に結合され、前記第1の透析液ポンプと前記第2の透析液ポンプとの間の前記透析液の圧力を測定するように構成された透析液圧センサ、および
前記血液ポンプ、前記静脈圧センサ、前記透析液圧センサ、前記アクチュエータ、前記第1の透析液ポンプおよび前記第2の透析液ポンプと操作可能に連結された電子コントローラであって、
前記ダイアライザーの前記透析液側を通る透析液の流れを動かすために、前記第1の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、
透析液の流れが前記ダイアライザーの前記透析液側を通過するのを防止するために前記アクチュエータを制御する工程、
測定された透析液圧を前記透析液圧センサから受信する工程と、
前記測定された透析液圧が安定するまで、前記第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節する工程、
前記透析液の流れが前記ダイアライザーの前記透析液側を通過することを可能にするために前記アクチュエータを制御する工程、および
前記第1の透析液ポンプと前記第2の透析液ポンプとの間の流れアンバランスを引き起こすために、前記第2の透析液ポンプのポンプ速度を調節して、前記流れアンバランスは、当該流れアンバランスを均一にするために前記ダイアライザーの前記血液側と前記ダイアライザーの前記透析液側との間の流体の流れをもらす工程、
を実行することによって、透析治療中に前記ダイアライザーを横切る流体流れの動的バランスを達成するように構成された電子コントローラ、を含む、透析システム。
(態様12)
前記電子コントローラは、前記測定された静脈圧を前記静脈圧センサから受信するように構成され、かつ前記測定された静脈圧が所定の閾値だけ変化する場合に、前記制御、受信および調節する工程を繰り返すように構成される、態様11に記載のシステム。
(態様13)
透析システムに使い捨てのカートリッジおよびチューブセットを接続する方法であって、
前記透析システムのアライメント機構に隣接して、前記使い捨てのカートリッジおよびチューブセットのアライメント機構を配置する工程と、
前記使い捨てのカートリッジおよびチューブセットの静脈ドリップチャンバを前記透析システムの1つ以上の流体レベルセンサと音響的に結合させるために、前記透析システム上に前記使い捨てのカートリッジおよびチューブセットを取り付ける工程と、を含む、使い捨てカートリッジおよびチューブセットを接続する方法。
(態様14)
さらに、前記静脈ドリップチャンバ内の流体レベルを前記1つ以上の流体レベルセンサで測定する工程を含む、態様13に記載の方法。
(態様15)
透析システム上に取り付けるように適合された使い捨てカートリッジであって、
前記透析システム上の対応するアライメント機構と取り外し可能に嵌合するように構成された複数のアライメント機構を有するフレーム、
前記フレーム内に配置されたチューブセット、および
前記フレーム内に配置され、前記チューブセットに接続された静脈ドリップチャンバであって、前記フレームが前記透析システム上に取り付けられたときに、前記透析システムの1つ以上の流体レベルセンサと音響的に結合されるように、前記フレーム内に配置される静脈ドリップチャンバ、を含む、使い捨てカートリッジ。
(態様16)
チューブセットおよび透析システムのダイアライザーをプライミングする方法であって、
生理食塩水供給源からの生理食塩水を、第1の方向で、前記チューブセット内および前記ダイアライザーの血液側を通して動かして、前記チューブセットおよび前記ダイアライザーの前記血液側から空気を除去するために、第1の操作モードで前記透析システムの血液ポンプを操作する工程、および
前記生理食塩水の少なくとも一部を、前記第1の方向とは反対の第2の方向で前記ダイアライザーの前記血液側を通して動かして、前記チューブセットから出すために、第2の操作モードで前記血液ポンプを操作する工程、を含む、プライミングする方法。
(態様17)
前記チューブセットの静脈ドリップチャンバ内の前記生理食塩水の流体レベルをモニターする工程、および
前記静脈ドリップチャンバ内の流体レベルが安定したとき、または空気がもはや前記チューブセットを循環しないとき、前記第1の操作モードで前記血液ポンプの操作を停止する工程、をさらに含む、態様16に記載の方法。
(態様18)
前記第1の操作モードで前記血液ポンプを操作する工程は、前記生理食塩水を前記ダイアライザーの前記血液側を通して動かす前に、前記生理食塩水の少なくとも一部を前記チューブセットの静脈ドリップチャンバ内に動かす工程をさらに含む、態様16に記載の方法。
(態様19)
前記第2の操作モードで前記血液ポンプを操作する工程は、前記生理食塩水を前記チューブセットの静脈ドリップチャンバを通して動かす前に、前記生理食塩水の少なくとも一部を前記ダイアライザーの前記血液側を通して動かす工程をさらに含む、態様16に記載の方法。
(態様20)
前記ダイアライザーの透析液側から空気を除去するために、透析液供給源からの透析液を、第1の方向で前記ダイアライザーの前記透析液側を通して動かすように、透析液ポンプを操作する工程をさらに含む、態様16に記載の方法。
(態様21)
前記ダイアライザーの向きを物理的に操作することなく、空気が前記ダイアライザーの前記透析液側から除去される、態様20に記載の方法。
(態様22)
前記ダイアライザーの向きを反転することなく、空気が前記ダイアライザーの前記透析液側から除去される、態様20に記載の方法。
(態様23)
前記生理食塩水が前記生理食塩水供給源から前記チューブセット内に動くことを可能にするために、電子コントローラにより前記透析システムの1つ以上のバルブを開く工程をさらに含む、態様16に記載の方法。
(態様24)
前記血液ポンプを操作する工程は、前記透析システムの電子コントローラにより前記血液ポンプを操作する工程をさらに含む、態様16に記載の方法。
(態様25)
前記生理食塩水が、前記チューブセットの静脈ラインを前記チューブセットの動脈ラインに取り付けるユニオン継手を通して、前記チューブセットから出される、態様16に記載の方法。
(態様26)
透析治療が開始可能になる前に、所定量の生理食塩水は前記ユニオン継手を通して動かされる、態様25に記載の方法。
(態様27)
透析治療後に、透析送達システムの患者チューブセット内の血液を患者に戻す方法であって、
生理食塩水を前記患者チューブセット内に引き込んで、血液を患者の体内に押し戻すために、前記患者チューブセットに結合された血液ポンプを動作する工程、
前記患者チューブセット内に引き込まれた生理食塩水量を決定するために、前記血液ポンプの回転数を追跡する工程、および
所定量の生理食塩水が前記患者チューブセット内に引き込まれたときに、前記血液ポンプを停止する工程、を含む、血液を患者に戻す方法。
(態様28)
前記所定量は300~500mlを含む、態様27に記載の方法。
(態様29)
生理食塩水供給源と前記チューブセットとの間の経路を形成するために、前記透析送達システムの1つ以上のピンチバルブを開く工程をさらに含む、態様27に記載の方法。
(態様30)
前記生理食塩水供給源と、患者の動脈アクセス部位またはその近傍のチューブセットとの間の経路を形成するために、1つ以上のピンチバルブを開く工程をさらに含む、態様29に記載の方法。
(態様31)
血液が患者の静脈アクセス部位を通して患者に押し戻される、態様27に記載の方法。
(態様32)
透析治療後に透析システムのダイアライザーから流体を排出する方法であって、
前記透析システムの患者チューブセットの静脈ラインを閉鎖する工程、および
前記ダイアライザーの透析液側から前記ダイアライザーの血液側内へ、および前記ダイアライザーから出て廃液容器内へと流体を引き出すために、前記患者チューブセットに結合されたポンプを操作する工程、を含む、流体を排出する方法。
(態様33)
前記廃液容器は生理食塩水バッグを含む、態様32に記載の方法。
(態様34)
前記ダイアライザーの前記透析液側から前記ダイアライザーの前記血液側に流体を動かすために、前記流体は前記ダイアライザーのマイクロチューブ壁を通って引き出される、態様32に記載の方法。
(態様35)
前記流体は、重力に抗して前記ダイアライザーから引き出される、態様32に記載の方法。
(態様36)
治療中に透析システムの静脈ドリップチャンバ内の流体レベルを制御する方法であって、
患者チューブセットおよび前記静脈ドリップチャンバを通る血液の流れを生成する工程、
前記静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルを第1および第2のセンサでモニターする工程、
前記流体レベルが前記第1のセンサより下に降下したときに、自動的に、前記静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送または放出する工程、および
前記流体レベルが前記第2のセンサより上に上昇したときに、自動的に、前記静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送する工程、を含む、流体レベルを制御する方法。
(態様37)
治療中に透析システムの静脈ドリップチャンバ内の流体レベルを制御する方法であって、
患者チューブセットおよび前記静脈ドリップチャンバを通る血液の流れを生成する工程、
前記静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルをセンサでモニターする工程、
前記センサが、前記流体レベルがより低い流体レベル閾値を下回って低下したことを検出した場合、自動的に、前記静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送または放出する工程、および
前記センサが、前記流体レベルがより高い流体レベル閾値を上回って上昇したことを検出した場合、自動的に、前記静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送する工程、を含む、流体レベルを制御する方法。
(態様38)
治療中に透析システムの静脈ドリップチャンバ内の流体レベルを制御する方法であって、
患者チューブセットおよび前記静脈ドリップチャンバを通る血液の流れを生成する工程、
前記静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルを第1および第2のセンサでモニターする工程、および
前記第1のセンサが、前記流体レベルがより低い閾値を下回って低下したことを検出した場合、自動的に、前記静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送または放出し、前記第2のセンサが、前記流体レベルがより高い閾値を上回って上昇したことを検出した場合、自動的に、前記静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送することによって、前記静脈ドリップチャンバ内の血液の前記流体レベルを自動的に維持する工程、を含む、流体レベルを制御する方法。
(態様39)
透析システムであって、
流れる血液から空気を除去するように構成された静脈ドリップチャンバ、
前記静脈ドリップチャンバ内の血液の流体レベルをモニターするように構成された少なくとも1つのセンサ、
前記静脈ドリップチャンバに結合され、前記静脈ドリップチャンバ内にまたは前記静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送するように構成されたポンプ、および
前記少なくとも1つのセンサおよび前記ポンプと通信する電子コントローラであって、前記少なくとも1つのセンサが、前記流体レベルが第1の閾値を下回って低下したことを検出したときに、前記ポンプで前記静脈ドリップチャンバから外に空気をポンプ輸送し、前記少なくとも1つのセンサが、前記流体レベルが第2の閾値を上回って上昇したことを検出したときに、前記ポンプで前記静脈ドリップチャンバ内に空気をポンプ輸送することによって、前記静脈ドリップチャンバ内の血液の前記流体レベルを維持するために、自動的に前記ポンプを制御するように構成された電子コントローラ、を含む、透析システム。
(態様40)
透析治療で使用するために透析システムに挿入されるように適合されている使い捨てカートリッジであって、
透析送達システム上のアライメントペグと嵌合するように構成された複数の位置合わせ孔を有するオーガナイザー、
前記オーガナイザーに配置されたチューブセットであって、
患者から血液を引き込むように構成された動脈ライン部、
患者に血液を戻すように構成された静脈ライン部、
前記透析送達システムの血液ポンプと相互作用するように構成された血液ポンプ部、
前記透析送達システムのダイアライザーに血液を運ぶように構成された第1のダイアライザー部、
前記ダイアライザーから血液を戻すように構成された第2のダイアライザー部、および
生理食塩水供給源を前記チューブセットに結合するように構成された第1および第2の生理食塩水ライン、を含む、チューブセット、並びに
前記オーガナイザー内に配置され、静脈ドリップチャンバに入る血液から空気を除去するように構成された静脈ドリップチャンバであって、
前記静脈ドリップチャンバの下部に配置された第1および第2のポートであって、前記チューブセットの前記静脈ライン部に結合された前記第1のポートと、前記チューブセットの前記動脈ライン部に結合された前記第2のポートと、を含む静脈ドリップチャンバ、を含む、使い捨てカートリッジ。
(態様41)
ヘパリン供給源を前記チューブセットに結合するように構成されたヘパリンラインをさらに含む、態様40に記載の使い捨てカートリッジ。
(態様42)
前記ヘパリンラインは、前記静脈ドリップチャンバの上部に配置された第3のポートに結合される、態様41に記載の使い捨てカートリッジ。
(態様43)
治療中に前記ヘパリンライン内への血液の逆流を防止するために、前記ヘパリンラインは、非拍動位置で前記静脈ドリップチャンバに結合されている、態様42に記載の使い捨てカートリッジ。
(態様44)
前記非拍動位置は、前記静脈ドリップチャンバ内のエアギャップを含む、態様43に記載の使い捨てカートリッジ。
(態様45)
前記第1の生理食塩水ラインは、前記チューブセットの前記血液ポンプ部の近位端で前記チューブセットに取り付けられる、態様40に記載の使い捨てカートリッジ。
(態様46)
前記第2の生理食塩水ラインは、前記チューブセットの前記動脈ライン部の近位端近傍で前記チューブセットに取り付けられる、態様40に記載の使い捨てカートリッジ。
(態様47)
前記チューブセットの前記動脈ライン部に沿って配置され、前記透析送達システムの動脈圧センサと嵌合するように構成された動脈圧ポッドをさらに含む、態様40に記載の使い捨てカートリッジ。
(態様48)
前記静脈ドリップチャンバに結合され、前記透析送達システムの静脈圧センサと嵌合するように構成された静脈トランスデューサ接続部をさらに含む、態様40に記載の使い捨てカートリッジ。
(態様49)
透析システムであって、
筐体、
前記筐体内に配置され、利用可能な水供給源を用いてリアルタイムに透析治療に使用するための水を調製するように構成された浄水システム、
前記筐体内に配置され、透析治療のために透析液を調製するように構成されたた透析送達システム、
前記筐体上または前記筐体内に配置されたダイアライザー、
前記筐体上に配置された前面パネルであって、
複数のアライメント機構、
静脈レベルセンサ、
血液ポンプ、
複数のピンチバルブ、を含む、前面パネル、
前記前面パネルに取り付けられるように構成されたオーガナイザーであって、前記複数のアライメント機構と嵌合するように構成された複数の装着機構を含み、
前記オーガナイザー内に配置されたチューブセットであって、
患者から血液を引き込むように構成された動脈ライン部、
患者に血液を戻すように構成された静脈ライン部、
前記血液ポンプと相互作用するように構成された血液ポンプ部、
前記ダイアライザーに血液を運ぶように構成された第1のダイアライザー部、
前記ダイアライザーから血液を戻すように構成された第2のダイアライザー部、
生理食塩水供給源を前記チューブセットに結合するように構成された第1および第2の生理食塩水ライン、を含む、チューブセット、
前記オーガナイザー内に配置され、静脈ドリップチャンバに入る血液から空気を除去するように構成された静脈ドリップチャンバであって、
前記静脈ドリップチャンバの下部に配置された第1および第2のポートを含み、
前記第1のポートは前記チューブセットの前記静脈ライン部に結合され、
前記第2のポートは前記チューブセットの前記動脈ライン部に結合されており、
前記オーガナイザーを前記前面パネルに取り付けると、自動的に、前記チューブセットの前記血液ポンプ部が前記血液ポンプに結合され、前記静脈ドリップチャンバが前記静脈レベルセンサに結合される、静脈ドリップチャンバ、を含む、オーガナイザー、
を含む、透析システム。
図1
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