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特許7191881タービンホイール及びタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】タービンホイール及びタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/30 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
F01D5/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020020330
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021124105
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】坂本 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義剛
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-55249(JP,A)
【文献】特開2008-169838(JP,A)
【文献】特開昭62-55402(JP,A)
【文献】特開昭54-130710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0255196(US,A1)
【文献】米国特許第2667327(US,A)
【文献】中国特許出願公開第109488390(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-11/24
F01D 25/00
F01D 25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン動翼を軸方向から挿入して嵌合させるための嵌合溝を形成する植込み部を外周縁部に間隔をあけて複数有し、前記タービン動翼の前記嵌合溝に沿った移動を阻止する環状の固定ワイヤを外周縁部に保持可能なタービンホイールであって、
周方向の両側及び径方向内方側が開口するように前記植込み部の軸方向一方側に設けられ、前記固定ワイヤの一部を収容可能な収容部を前記植込み部と共に形成する複数のタブ部と、
前記固定ワイヤを前記収容部内に保持するためのワイヤ保持ピンとを備え、
前記複数のタブ部のうち幾つかのタブ部は、径方向内端から径方向外方側に向かって延在し前記ワイヤ保持ピンが挿入可能なピンスロット部を有し、
前記ワイヤ保持ピンは、
前記ピンスロット部のスロット幅よりも幅が小さい第1ピン部と、
前記第1ピン部の軸方向一方側に設けられ、前記ピンスロット部のスロット幅よりも幅が大きい第2ピン部とを有し、
前記第1ピン部は、互いに離隔可能な複数の分割片を先端部に有し、
前記ワイヤ保持ピンは、前記第1ピン部が前記ピンスロット部内に位置すると共に前記第2ピン部が前記収容部内に位置するように配置され、且つ、前記第1ピン部の前記分割片が外側に屈曲されて前記タブ部に固定されている
ことを特徴とするタービンホイール。
【請求項2】
請求項1に記載のタービンホイールにおいて、
前記ワイヤ保持ピンは、段差面を有する段付き構造のピンであり、
前記ワイヤ保持ピンは、前記段差面が前記タブ部の前記収容部側の壁面に押し当てられるように構成されている
ことを特徴とするタービンホイール。
【請求項3】
請求項1に記載のタービンホイールにおいて、
前記ピンスロット部を有するタブ部のうち少なくとも1つのタブ部は、前記ピンスロット部の径方向外方側の端部における外表面側の開口縁部に座ぐり部を有する
ことを特徴とするタービンホイール。
【請求項4】
請求項1に記載のタービンホイールにおいて、
前記ワイヤ保持ピンは、工具の差込が可能な中空部を有する
ことを特徴とするタービンホイール。
【請求項5】
請求項4に記載のタービンホイールにおいて、
前記ワイヤ保持ピンは、前記第1ピン部における前記中空部の開口縁部に面取部を有する
ことを特徴とするタービンホイール。
【請求項6】
請求項1に記載のタービンホイールにおいて、
前記第1ピン部は、前記分割片を2つ有し、
前記ワイヤ保持ピンは、前記分割片の2つの並び方向が前記ピンスロット部の延在方向に対して直交するように配置されている
ことを特徴とするタービンホイール。
【請求項7】
請求項1に記載のタービンホイールにおいて、
前記第1ピン部は、前記分割片を3つ以上有する
ことを特徴とするタービンホイール。
【請求項8】
タービン動翼を軸方向から挿入して嵌合させるための嵌合溝を形成する植込み部と、前記タービン動翼の前記嵌合溝に沿った移動を阻止する固定ワイヤの一部を収容可能な収容部を前記植込み部と共に形成するように前記植込み部の軸方向一方側に設けられたタブ部と、を外周縁部に有するタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法であって、
前記タブ部における径方向内端から径方向外方側に向かって延在するピンスロット部に対して、前記ピンスロット部のスロット幅よりも幅が大きい前記ワイヤ保持ピンの第2ピン部を前記収容部側に位置させた状態で、前記ピンスロット部のスロット幅よりも幅が小さい前記ワイヤ保持ピンの第1ピン部を挿入し、
前記ワイヤ保持ピンを前記ピンスロット部に沿って移動させて前記ピンスロット部の径方向外方側の端部に当接させ、
前記ワイヤ保持ピンの前記第1ピン部の先端部の複数の分割片を外側へ屈曲させて前記タブ部の外表面に押し付けることで前記ワイヤ保持ピンを前記タブ部に固定する
ことを特徴とするタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法。
【請求項9】
請求項8に記載のタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法であって、
前記ワイヤ保持ピンの前記複数の分割片は、2つの分割片であり、
前記ワイヤ保持ピンを前記ピンスロット部に挿入する際に、前記2つの分割片の並び方向が前記ピンスロット部の延在方向に対して直交するように前記ワイヤ保持ピンを配置する
ことを特徴とするタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法。
【請求項10】
請求項8に記載のタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法であって、
前記ワイヤ保持ピンを前記ピンスロット部の径方向外方側の端部に当接させた後に、前記ワイヤ保持ピンの前記第2ピン部と前記植込み部との隙間にシムを配置し、
前記ワイヤ保持ピンを前記タブ部に固定した後に、前記シムを抜き取る
ことを特徴とするタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンのタービンホイール及びタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮機からの圧縮空気を燃料と混合して燃焼させることで燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼器からの燃焼ガスによって軸動力を得るタービンとで大略構成されている。タービンは、燃焼ガスの運動エネルギを回転動力に変換するタービンロータを備えている。タービンロータは、外周縁部の全周に亘って複数のタービン動翼を放射状に配置した円盤状のタービンホイールを軸方向に複数段積層して構成されている。
【0003】
タービンホイールとタービン動翼の結合構造の1つとして、タービンホイールの外周縁部に設けた嵌合溝(嵌合用スロット)に対してタービン動翼の翼植込み部をロータ軸方向から挿入して結合させるものがある。タービンホイールの嵌合溝は、ロータ軸方向に略平行な方向に延在している。タービン動翼の翼植込み部は、タービンホイールの嵌合溝に対して相補的な形状に形成されている。この結合構造では、タービンロータの回転に伴いタービン動翼に径方向外側の向きの遠心力が作用してタービン動翼の翼植込み部がタービンホイールの嵌合溝に係合することで、タービン動翼がタービンホイールに固定される。
【0004】
この結合構造では、タービン動翼の翼植込み部がタービンホイールの嵌合溝に沿ってロータ軸方向へ移動することが可能なので、固定ワイヤを用いてタービン動翼のロータ軸方向への移動を阻止するものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、タービンホイールの外周縁部に形成された複数の第1の保持スロットと複数のタービン動翼の各々の翼植込み部に形成された複数の第2の保持スロットとが整合することで、タービンホイールの外周縁部の全周に亘って延在し径方向内側に開口する環状保持スロットが形成される。この環状保持スロット内に環状の固定ワイヤを配置することで、複数のタービン動翼の嵌合溝に沿った移動が阻止されている。固定ワイヤを環状保持スロット内に保持するために、タービンホイールにおける固定ワイヤの径方向内側の位置に保持ピンが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-21605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガスタービンは、高温高圧の燃焼ガスによってタービンロータの軸動力を得るものなので、タービンホイールやタービン動翼等のタービンロータを構成する各部を冷却空気により冷却し、各部の温度上昇を抑制する必要がある。ガスタービンでは、一般的に、圧縮機から抽出した圧縮空気を冷却空気として用いている。この場合、冷却空気の流量を増加させることは、圧縮機から抽気する圧縮空気の流量を増加させることを意味する。したがって、冷却空気の流量を増加させると、その分、タービンロータを駆動する燃焼ガスの流量が減少するので、ガスタービン全体の効率が低下する。
【0007】
ガスタービンの高効率化の有効な手段の1つとして、タービンロータの各部を冷却する冷却空気を削減することが挙げられる。この場合、タービンホイールの軸方向の前後に形成されたホイールスペース内の雰囲気温度が上昇する。そこで、タービンホイールの材質を従来の12Cr鋼材よりも耐熱性の優れたNi基合金に変更することが提案されている。ただし、Ni基合金の材料により形成された部品では、残留引張応力が生じた状態において高温環境下で使用されると、残留引張応力に起因した割れの発生が懸念されている。
【0008】
特許文献1に記載の技術では、固定ワイヤを環状保持スロット内に保持するために、タービンホイールの外周縁部に保持ピンが固定されている。このような保持ピンによる固定ワイヤの保持構造においては、タービンホイールの外周縁部の一部をかしめることで保持ピンを固定するものがある。この場合、タービンホイールのかしめ部分及びその周辺部に残留引張応力が生じてしまう。このような保持ピンの固定構造のタービンホイールに対してNi基合金の材質を適用した場合、かしめにより生じた残留引張応力に起因してタービンホイールの割れの発生が懸念される。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、固定ワイヤを保持するためのワイヤ保持ピンの固定時におけるタービンホイールの外周縁部での残留引張応力の発生を抑制することができるタービンホイール及びタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、タービン動翼を軸方向から挿入して嵌合させるための嵌合溝を形成する植込み部を外周縁部に間隔をあけて複数有し、前記タービン動翼の前記嵌合溝に沿った移動を阻止する環状の固定ワイヤを外周縁部に保持可能なタービンホイールであって、周方向の両側及び径方向内方側が開口するように前記植込み部の軸方向一方側に設けられ、前記固定ワイヤの一部を収容可能な収容部を前記植込み部と共に形成する複数のタブ部と、前記固定ワイヤを前記収容部内に保持するためのワイヤ保持ピンとを備え、前記複数のタブ部のうち幾つかのタブ部は、径方向内端から径方向外方側に向かって延在し前記ワイヤ保持ピンが挿入可能なピンスロット部を有し、前記ワイヤ保持ピンは、前記ピンスロット部のスロット幅よりも幅が小さい第1ピン部と、前記第1ピン部の軸方向一方側に設けられ、前記ピンスロット部のスロット幅よりも幅が大きい第2ピン部とを有し、前記第1ピン部は、互いに離隔可能な複数の分割片を先端部に有し、前記ワイヤ保持ピンは、前記第1ピン部が前記ピンスロット部内に位置すると共に前記第2ピン部が前記収容部内に位置するように配置され、且つ、前記第1ピン部の前記分割片が外側に屈曲されて前記タブ部に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固定ワイヤの収容部を形成するタービンホイールのタブ部に径方向内端から径方向外方側に向かって延在するピンスロット部を設けると共に、ピンスロット部のスロット幅よりも幅の小さな第1ピン部とスロット幅よりも幅の大きな第2ピン部とを有するワイヤ保持ピンの第1ピン部の先端部に複数の分割片を設けたので、タービンホイールのタブ部をかしめずにワイヤ保持ピンのみをかしめることで、ワイヤ保持ピンをタブ部に固定することができる。したがって、ワイヤ保持ピンの固定時におけるタービンホイールのタブ部での残留引張応力の発生を抑制することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のタービンホイールの一実施の形態を備えたガスタービンを下半部を省略した状態で示す断面図である。
図2図1に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態を備えたタービンロータの一部分を拡大した状態で示す断面図である。
図3図2に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態を備えたタービンロータにおけるタービンホイールとタービン動翼との結合構造をIII矢視から見た図である。
図4】本発明のタービンホイールの一実施の形態に結合可能なタービン動翼を示す斜視図である。
図5】本発明のタービンホイールの一実施の形態を構成するホイール本体の一部分を示す正面図である。
図6図2の符号Zで示す本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造を示す断面図である。
図7図6に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造を矢視VIIから見た図である。
図8図6に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造を矢視VIII-VIIIから見た断面図である。
図9図7に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造の一部を構成するワイヤ保持ピンを矢視XI-XIから見た断面図である。
図10】本発明のタービンホイールの一実施の形態におけるワイヤ保持ピンの固定の際の一手順の一例を示す説明図である。
図11】本発明のタービンホイールの一実施の形態の第1変形例を構成するワイヤ保持ピンを示す断面図である。
図12】本発明のタービンホイールの一実施の形態の第2変形例を構成するワイヤ保持ピンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のタービンホイールの実施の形態及び本発明のタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
[一実施の形態]
まず、本発明のタービンホイールの一実施の形態を備えたガスタービンの構成について図1を用いて説明する。図1は本発明のタービンホイールの一実施の形態を備えたガスタービンを下半部を省略した状態で示す断面図である。
【0015】
図1において、ガスタービンは、圧縮機1と、燃焼器2と、タービン3とを備えている。圧縮機1は、吸い込んだ空気を圧縮して圧縮空気を生成するものである。燃焼器2は、圧縮機1で生成された圧縮空気を燃料系統(図示せず)からの燃料と混合し燃焼させることで燃焼ガスを生成するものである。本ガスタービンは、例えば、多缶型燃焼器であり、複数の燃焼器2が円環状に間隔をあけて配置されている。タービン3は、燃焼器2で生成された高温高圧の燃焼ガスにより回転駆動され、圧縮機1を駆動すると共に図示しない負荷(発電機,ポンプ,プロセス圧縮機などの被駆動機)を駆動するものである。タービン3には、タービン3の構成部品を冷却する冷却空気として、圧縮機1から抽気された圧縮空気が供給される。
【0016】
圧縮機1は、タービン3により回転駆動される圧縮機ロータ10と、圧縮機ロータ10を回転可能に内包する圧縮機ケーシング15とを備えている。圧縮機1は、例えば、軸流圧縮機である。圧縮機ロータ10は、軸方向に複数積層された円盤状の圧縮機ホイール11と、各圧縮機ホイール11の外周縁部に結合された複数の圧縮機動翼12とを備えている。圧縮機ロータ10では、各圧縮機ホイール11の外周縁部に環状に配列された複数の圧縮機動翼12により1つの圧縮機動翼列が構成されている。
【0017】
各圧縮機動翼列における作動流体の下流側には、複数の圧縮機静翼16が環状に配列されている。環状に配列された複数の圧縮機静翼16により1つの圧縮機静翼列が構成されている。圧縮機静翼列は、圧縮機ケーシング15の内側に固定されている。圧縮機1では、各圧縮機動翼列とその直ぐ下流側の各圧縮機静翼列とにより1つの段落が構成されている。
【0018】
タービン3は、燃焼器2からの燃焼ガスにより回転駆動されるタービンロータ30と、タービンロータ30を回転可能に内包するタービンケーシング35とを備えている。タービン3は、軸流タービンである。タービンロータ30とタービンケーシング35の間には、燃焼ガスが流れる流路Pが形成されている。
【0019】
タービンロータ30は、軸方向に配列された複数のタービンホイール組立体31と、複数のタービンホイール組立体31の間に配置されたスペーサ32とをスタッキングボルト33により一体に固定することで構成されている。各タービンホイール組立体31は、環状に配列された複数のタービン動翼41を外周部に有している。環状に配列された複数のタービン動翼41は、1つのタービン動翼列を構成する。各タービン動翼列は、流路P内に配置されている。
【0020】
各タービン動翼列における作動流体の上流側には、複数のタービン静翼36が環状に配列されている。環状に配列された複数のタービン静翼36により1つのタービン静翼列が構成されている。タービン静翼列は、タービンケーシング35の内側に固定されており、流路P内に配置されている。タービン3では、各タービン静翼列とその直ぐ下流側の各タービン動翼列とにより1つの段落が構成されている。
【0021】
タービンロータ30は、中間軸38を介して圧縮機ロータ10に接続されている。タービンケーシング35は、圧縮機ケーシング15に接続されている。
【0022】
次に、本発明のタービンホイールの一実施の形態を含むタービンロータの各部の構成を図2図5を用いて説明する。図2図1に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態を備えたタービンロータの一部分を拡大した状態で示す断面図である。図3図2に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態を備えたタービンロータにおけるタービンホイールとタービン動翼との結合構造をIII矢視から見た図である。図4は本発明のタービンホイールの一実施の形態に結合可能なタービン動翼を示す斜視図である。図5は本発明のタービンホイールの一実施の形態を構成するホイール本体の一部分を示す正面図である。
【0023】
図2及び図3に示すように、タービンロータ30の各タービンホイール組立体31は、円盤状のタービンホイール40と、タービンホイール40の外周縁部に放射状に配列された複数のタービン動翼41と、タービン動翼41のタービンホイール40に対する移動を阻止する固定ワイヤ42とを備えている。タービンホイール40は、複数のタービン動翼41が外周縁部に植込み可能であると共に固定ワイヤ42を外周縁部に保持可能な円盤状のホイール本体45と、固定ワイヤ42がホイール本体45の外周縁部から脱落することを防止するワイヤ保持ピン46とを備えている。隣接するホイール本体45は、スペーサ32を介して連結されている。スペーサ32は、隣接するホイール本体45に向かって延在する腕部32aを外周縁部に有している。スペーサ32の腕部32aは、隣接するホイール本体45との隙間を封止するシール部として機能する。固定ワイヤ42は、一端部側を他端部側に重ね合わせることで環状の状態でホイール本体45の外周縁部に保持されるものである。
【0024】
図2図4において、各タービン動翼41は、タービンロータ30の径方向Rに延在する翼部51と、翼部51の径方向内方Ri側の端部(根元側の端部)に設けられたプラットフォーム部52と、プラットフォーム部52から翼部51の反対方向に延在するシャンク部53と、シャンク部53の径方向内方Ri側に設けられた翼植込み部54とが一体に形成されている。すなわち、タービン動翼41は、翼部51、プラットフォーム部52、シャンク部53、翼植込み部54が径方向外方Ro側から径方向内方Ri側に向かって順に形成された構成である。
【0025】
翼部51は、横断面形状が翼形状に形成され、燃焼ガスの流路P(図1参照)内に配置される部分である。翼部51は、プラットフォーム部52は、燃焼ガスの流路P(図1参照)の内周面の一部を画成するものである。シャンク部53には、例えば、燃焼ガスの侵入を抑制するシールフィン55が複数(図2及び図4中、4つ)設けられている。複数のシールフィン55は、例えば、シャンク部53の軸方向Aの両壁面から軸方向Aに延在し、それらの先端部が径方向外側に折れ曲がっている。
【0026】
翼植込み部54は、図3及び図4に示すように、ホイール本体45に結合される部分であり、例えば、逆クリスマスツリー型と称する植込み構造を有している。具体的には、翼植込み部54は、例えば、周方向Cの両側に突き出て軸方向Aに対して略平行な方向に延在する一対の第1フック部54aと、一対の第1フック部54aに対して周方向C側に相対的に凹み、軸方向Aに対して略平行な方向に延在する一対の第1ネック部54bとを径方向に交互に複数組有している。翼植込み部54における複数組の一対の第1フック部54aの位置での周方向Cの長さは、径方向内方Ri側に向かって徐々に短くなるように設定されている。同様に、翼植込み部54における複数組の一対の第1ネック部54bの位置での周方向Cの長さは、径方向内方Ri側に向かって徐々に短くなるように設定されている。
【0027】
翼植込み部54の軸方向Aの一方側には、径方向内方Ri側に向かって突出する第1タブ部57が設けられている。第1タブ部57は、周方向Cの両側に翼植込み部54と同様な凹凸形状を有している。すなわち、第1タブ部57は、周方向Cの両側に突き出る一対の第1フック部57aと、一対の第1フック部57aに対して相対的に周方向C側に凹む一対の第1ネック部57bとを径方向に交互に複数組有している。第1タブ部57の周方向Cの長さも翼植込み部54と同様に設定されている。すなわち、第1タブ部57における複数組の一対の第1フック部57aの位置での周方向Cの長さは、径方向内方Ri側に向かって徐々に短くなるように設定されている。第1タブ部57における複数組の一対の第1ネック部57bの位置での周方向Cの長さは、径方向内方Ri側に向かって徐々に短くなるように設定されている。
【0028】
第1タブ部57は、翼植込み部54と共に、固定ワイヤ42の一部を収容する第1収容部58を形成している。第1収容部58は、周方向Cの両側及び径方向内方Ri側に開口した空間であり、固定ワイヤ42を径方向内方Ri側から挿入可能である。
【0029】
複数のタービン動翼41のうちの1つタービン動翼41における第1タブ部57には、図3に示すように、径方向内端から径方向外方に向かって延在して、第1収容部58の空間に連通するとともに、径方向内端側が開放されたスリット部57cが設けられている。スリット部57cは、固定ワイヤ42の取出用の工具の差込及び移動が可能なように形成されている。タービンホイール組立体31の分解時には、所定の工具をスリット部57cの径方向外端の開放側から差し込んでスリット部57cの径方向内端の開放側まで移動させることで、固定ワイヤ42を後述の環状のワイヤ収容部72から取り出すことができる。
【0030】
図2及び図5に示すホイール本体45は、Ni基合金を基材として形成されている。ホイール本体45の径方向Rの中間部における環状の厚肉部分には、軸方向A(ホイール本体45の厚み方向)に貫通するボルト穴61を複数有している。複数のボルト穴61は、周方向Cに所定の間隔をあけて設けられている。各ボルト穴61には、スタッキングボルト33が挿通されている。
【0031】
ホイール本体45の外周縁部には、図3及び図5に示すように、嵌合溝63が周方向Cに所定の間隔を空けて複数設けられている。嵌合溝63は、ホイール本体45の軸方向(図3及び図5中、紙面に直交する方向)の一方側の側面から他方側の側面まで延在する溝部であり、軸方向の両側及び径方向外方Ro側に開口している。嵌合溝63は、タービン動翼41の翼植込み部54の形状に対して相補形状に形成されており、タービン動翼41の翼植込み部54を軸方向から挿入して嵌合させるための部分である。
【0032】
換言すると、ホイール本体45は、図3に示すように、複数の嵌合溝63を形成するホイール植込み部64を外周縁部に所定の間隔をあけて複数有している。各ホイール植込み部64は、隣接する嵌合溝63間に位置しており、タービン動翼41の翼植込み部54と係合するものである。ホイール植込み部64は、ホイール本体45の周方向Cの両側に突き出て軸方向に対して略平行な方向に延在する一対の第2フック部64aと、一対の第2フック部64aに対して周方向C側に相対的に凹み、軸方向に対して略平行な方向に延在する一対の第2ネック部64bとを径方向に交互に複数組有している。ホイール植込み部64における複数組の一対の第2フック部64aの位置での周方向の長さは、径方向外方Ro側に向かって徐々に短くなるように設定されている。同様に、ホイール植込み部64における複数組の一対の第2ネック部64bの位置での周方向の長さは、径方向外方Ro側に向かって徐々に短くなるように設定されている。ホイール植込み部64の一対の第2フック部64aは、タービン動翼41の翼植込み部54の第1ネック部54bと係合するものである。ホイール植込み部64の一対の第2ネック部64bは、タービン動翼41の翼植込み部54の第1フック部54aと係合するものである。
【0033】
各ホイール植込み部64の軸方向Aの一方側には、図2及び図3に示すように、径方向内方Ri側に向かって突出する第2タブ部66が設けられている(後述の図6も参照)。第2タブ部66は、図3に示すように、周方向Cの両側にホイール植込み部64と同様な凹凸形状を有している。すなわち、第2タブ部66は、周方向Cの両側に突き出る一対の第2フック部66aと、一対の第2フック部66aに対して周方向C側に相対的に凹む一対の第2ネック部66bとを径方向に交互に複数組有している。第2タブ部66の周方向Cの長さもホイール植込み部64と同様に設定されている。すなわち、第2タブ部66における複数組の一対の第2フック部66aの位置での周方向Cの長さは、径方向外方Ro側に向かって徐々に短くなるように設定されている。第2タブ部66における複数組の一対の第2ネック部66bの位置での周方向Cの長さは、径方向外方Ro側に向かって徐々に短くなるように設定されている。第2タブ部66の一対の第2フック部66aは、タービン動翼41の第1タブ部57の第1ネック部57bと係合するものである。第2タブ部66一対の第2ネック部66bは、タービン動翼41の第1タブ部57の第1フック部57aと係合するものである。
【0034】
第2タブ部66は、図2に示すように、ホイール植込み部64と共に、固定ワイヤ42の一部を保持する第2収容部70を形成している(後述の図6も参照)。第2収容部70は、周方向の両側及び径方向内方Ri側に開口した空間であり、固定ワイヤ42を径方向内方Ri側から挿入可能である。
【0035】
ホイール本体45の嵌合溝63にタービン動翼41の翼植込み部54が嵌合された状態においては、図3に示すように、ホイール本体45の複数の第2タブ部66と複数のタービン動翼41の複数の第1タブ部57とが交互に係合することで、ホイール本体45の複数の第2収容部70と複数のタービン動翼41の複数の第1収容部58とが交互に繋がり環状のワイヤ収容部72が形成されている。ワイヤ収容部72は、径方向内方Ri側に開口する環状の空間であり、固定ワイヤ42を径方向内方Ri側から挿入して固定ワイヤ42の全体を収容する部分である。固定ワイヤ42は、環状のワイヤ収容部72に収容されることで、複数のタービン動翼41の翼植込み部54のホイール本体45の嵌合溝63に沿った移動を阻止するものである。
【0036】
次に、本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造を図5図9を用いて説明する。図6図2の符号Zで示す本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造を示す断面図である。図7図6に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造を矢視VIIから見た図である。図8図6に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造を矢視VIII-VIIIから見た断面図である。図9図7に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態における固定ワイヤの保持構造の一部を構成するワイヤ保持ピンを矢視XI-XIから見た断面図である。
【0037】
図6及び図7において、ホイール本体45の第2タブ部66には、第2タブ部66の径方向内端から径方向外方Ro側に向かって延在するピンスロット部67が形成されている。ピンスロット部67は、径方向内端側が開放されている一方、径方向外端側が第2収容部70の径方向外方Ro側の端部に収容された固定ワイヤ42の位置よりも径方向内方Ri側に位置するように形成されている。ピンスロット部67は、ワイヤ保持ピン46の挿入及び移動が可能なものである。ピンスロット部67は、例えば図5に示すように、周方向に配列する複数の第2タブ部66に対して1つ置きに設けられている。
【0038】
図6図8に示すように、第2タブ部66におけるピンスロット部67の径方向外方Ro側の端部における外表面の開口縁部には、座ぐり部68が形成されている。座ぐり部68は、かしめられたワイヤ保持ピン46が接触する部分である。
【0039】
図6に示すように、ワイヤ保持ピン46は、固定ワイヤ42をワイヤ収容部72内に保持するものである。ワイヤ保持ピン46は、図6及び図8に示すように、段付き構造のかしめピンであり、ワイヤ保持ピン46の軸方向に直交する段差面81を有している。具体的には、ワイヤ保持ピン46は、図7及び図8に示すように、ピンスロット部67のスロット幅よりも幅(外径)が僅かに小さい第1ピン部84と、第1ピン部84の軸方向一方側に一体に設けられ、ピンスロット部67のスロット幅よりも幅(外径)が大きい第2ピン部85とで構成されている。第1ピン部84の長さは、図6及び図8に示すように、ホイール本体45の第2タブ部66の厚みよりも大きくなるように設定されている。第2ピン部85の長さは、ホイール本体45の第2収容部70の幅よりも小さくなるように設定されている。ワイヤ保持ピン46は、耐熱性に優れた材料を基材として形成されている。
【0040】
また、ワイヤ保持ピン46は、例えば図7及び図9に示すように、工具の差込が可能な中空部82を有している。ワイヤ保持ピン46の第1ピン部84における中空部82の開口縁部には、面取部87が設けられている。
【0041】
第1ピン部84の先端部には、図6図7、及び図9に示すように、第1ピン部84の軸方向に延在する2つのスリット88が設けられている。2つのスリット88は、ワイヤ保持ピン46の中心線を中心とした点対称な位置に形成されている。すなわち、第1ピン部84は、先端部が2分割の構造であり、互いに離隔可能に分割された2つの分割片89を先端部に有している。
【0042】
ワイヤ保持ピン46は、図6及び図7に示すように、2つのスリット88の並び方向がピンスロット部67の延在方向に対して略平行となるように配置されている。換言すると、ワイヤ保持ピン46は、2つの分割片89の並び方向がピンスロット部67の延在方向に対して略直交するように配置されている。ワイヤ保持ピン46は、図8に示すように、第1ピン部84がピンスロット部67内に位置すると共に第2ピン部85が第2収容部70内に位置するように配置され、且つ、第1ピン部84の先端部の2つの分割片89がそれぞれ外側へ屈曲されてホイール本体45の第2タブ部66の座ぐり部68の表面に押し当てられることで、第2タブ部66に固定されるように構成されている。また、ワイヤ保持ピン46は、段差面81が第2タブ部66の第2収容部70側の壁面に押し当てられるように構成されている。
【0043】
次に、本発明のタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法の実施の形態を図2図7及び図10を用いて説明する。図10は本発明のタービンホイールの一実施の形態におけるワイヤ保持ピンの固定の際の一手順の一例を示す説明図である。
【0044】
前段階の第1段階として、ホイール本体45に複数のタービン動翼41を組み込む。具体的には、図5に示すホイール本体45の複数の嵌合溝63の各々に対して図4に示すタービン動翼41の翼植込み部54を軸方向から挿入し嵌合させる。これにより、図3に示すように、ホイール本体45の複数の第2タブ部66と複数のタービン動翼41の複数の第1タブ部57とが交互に係合し、ホイール本体45の複数の第2収容部70と複数のタービン動翼41の複数の第1収容部58とが交互に繋がり環状のワイヤ収容部72が形成される。
【0045】
前段階の第2段階として、図2及び図3に示すように、ワイヤ収容部72に固定ワイヤ42を収容する。具体的には、固定ワイヤ42をワイヤ収容部72の径方向内方Ri側の開口から挿入し、固定ワイヤ42の一端部側を他端部側に重ね合わせて環状にする。これにより、環状のワイヤ収容部72内に環状の固定ワイヤ42が配置される。
【0046】
前段階の終了後、ワイヤ収容部72内に固定ワイヤ42を保持するために、図6に示すように、ワイヤ保持ピン46をホイール本体45に固定する。具体的には、先ず、ホイール本体45の複数の第2タブ部66の各々のピンスロット部67に対して、ワイヤ保持ピン46の第2ピン部85を第2収容部70側に位置させた状態で、ピンスロット部67の径方向内端の開放側からワイヤ保持ピン46の第1ピン部84を挿入する。このとき、図7に示すように、ワイヤ保持ピン46の第1ピン部84の2つの分割片89の並び方向がピンスロット部67の延在方向に対して略直交するようにワイヤ保持ピン46を配置する。
【0047】
次いで、ワイヤ保持ピン46をピンスロット部67に沿って移動させてピンスロット部67の径方向外方Ro側の端部に当接させる。これにより、図6に示すように、ワイヤ保持ピン46の第2ピン部85が第2収容部70内において固定ワイヤ42よりも径方向内方Ri側の位置に配置される。
【0048】
その後、図10に示すように、ワイヤ保持ピン46の第2ピン部85の端面とホイール本体45のホイール植込み部64の軸方向の壁面との隙間にシム100を配置する。これにより、ワイヤ保持ピン46の段差面81を第2タブ部66の第2収容部70側の壁面に押し当てることができる。
【0049】
ワイヤ保持ピン46の段差面81を第2タブ部66の壁面に押し当てた状態で、ワイヤ保持ピン46の2つの分割片89をそれぞれ外側へ屈曲させて第2タブ部66の座ぐり部68の表面に押し当てるようにかしめる。具体的には、例えば、工具を図7に示すワイヤ保持ピン46の中空部82へ差し込む。これにより、図10に示すように、2つの分割片89がそれぞれ容易に外側へ押し曲げられて第2タブ部66の座ぐり部68の表面に押し当てられる。ワイヤ保持ピン46をかしめて第2タブ部66に固定した後に、シム100を抜き取って回収する。
【0050】
このように、本実施の形態においては、ワイヤ保持ピン46の第1ピン部84が第2タブ部66のピンスロット部67に位置すると共に第2ピン部85がホイール本体45の第2収容部70内に位置するように、ワイヤ保持ピン46をピンスロット部67に挿入し、ワイヤ保持ピン46をピンスロット部67の径方向外方Ro側の端部に当接させ、ワイヤ保持ピン46の2つの分割片89を外側へ屈曲させて第2タブ部66に押し付けることで、ワイヤ保持ピン46を第2タブ部66に固定している。したがって、ホイール本体45の第2タブ部66をかしめることなく、ワイヤ保持ピン46を第2タブ部66に固定することができる。
【0051】
また、第2収容部70内に配置された固定ワイヤ42よりも径方向内方Ri側の位置で複数のワイヤ保持ピン46を第2タブ部66に固定することで、固定ワイヤ42の径方向内方Ri側への移動を規制することができる。したがって、固定ワイヤ42のワイヤ収容部72内からの脱落を防止し、固定ワイヤ42をワイヤ収容部72内に保持することができる。
【0052】
また、固定ワイヤ42が複数のワイヤ保持ピン46によりワイヤ収容部72内に保持されることで、各タービン動翼41の翼植込み部54に隣接するホイール本体45のホイール植込み部64を跨るように固定ワイヤ42が延在する。このため、タービン動翼41の翼植込み部54のタービンホイール40の嵌合溝63に沿った移動を固定ワイヤ42によって阻止することができる。
【0053】
上述したように、本発明のタービンホイールの一実施の形態及び本発明のタービンホイールにおけるワイヤ保持ピンの固定方法の実施の形態によれば、固定ワイヤ42の第2収容部(収容部)70を形成するタービンホイール40の第2タブ部(タブ部)66に径方向内端から径方向外方Ro側に向かって延在するピンスロット部67を設けると共に、ピンスロット部67のスロット幅よりも幅の小さな第1ピン部84とスロット幅よりも幅の大きな第2ピン部85とを有するワイヤ保持ピン46の第1ピン部84の先端部に2つ(複数)の分割片89を設けたので、タービンホイール40の第2タブ部(タブ部)66をかしめずにワイヤ保持ピン46のみをかしめることで、ワイヤ保持ピン46をタブ部66に固定することができる。したがって、ワイヤ保持ピン46の固定時におけるタービンホイール40の第2タブ部(タブ部)66での残留引張応力の発生を抑制することができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、ワイヤ保持ピン46を段差面81を有する段付き構造にすると共に、ワイヤ保持ピン46の段差面81をタービンホイール40の第2タブ部66の第2収容部70側の壁面に押し当てるように構成したので、ワイヤ保持ピン46と第2タブ部66の接触面積が大きくなり、ワイヤ保持ピン46を更に強固に固定することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態によれば、タービンホイール40の第2タブ部66に形成したピンスロット部67の径方向外方Ro側の端部における外表面側の開口縁部に座ぐり部68を設けたので、ワイヤ保持ピン46と第2タブ部66の接触面積が大きくなり、ワイヤ保持ピン46を更に強固に固定することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、ワイヤ保持ピン46に中空部82を設けているので、ワイヤ保持ピン46の中空部82に第1ピン部84側から所定の工具を差し込むことで、ワイヤ保持ピン46の分割片89を容易にかしめることができる。したがって、タービンホイール組立体31の組立性が向上する。
【0057】
さらに、本実施の形態によれば、ワイヤ保持ピン46の第1ピン部84における中空部82の開口縁部に面取部87を設けたので、中空部82に所定の工具を容易に差し込むことができ、ワイヤ保持ピン46の分割片89のかしめが容易となる。したがって、タービンホイール組立体31の組立性が向上する。
【0058】
また、本実施の形態によれば、ワイヤ保持ピン46の分割片89を2つとしたので、タービンホイール組立体31の分解の際に、ワイヤ保持ピン46のタービンホイール40の第2タブ部66からの取り外しが容易である。
【0059】
また、本実施の形態によれば、ワイヤ保持ピン46の2つの分割片89の並び方向がタービンホイール40の第2タブ部66に設けたピンスロット部67の延在方向に対して直交するようにワイヤ保持ピン46を配置したので、2つの分割片89をかしめた際に確実に第2タブ部66に押し当てることができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、ワイヤ保持ピン46のピンスロット部67の径方向外方Ro側の端部への当接後にワイヤ保持ピン46とホイール植込み部64との隙間にシム100を配置し、当該シム100をワイヤ保持ピン46の固定後に抜き取るようにしたので、ワイヤ保持ピン46の第2ピン部85をタービンホイール40の第2タブ部66に押し当てた状態でワイヤ保持ピン46の分割片89をかしめることができる。その結果、ワイヤ保持ピン46を更に強固に第2タブ部66に固定することができる。
【0061】
[一実施の形態の変形例]
次に、本発明のタービンホイールの一実施の形態の第1変形例及び第2変形例を図11及び図12を用いて説明する。図11は本発明のタービンホイールの一実施の形態の第1変形例におけるワイヤ保持ピンを示す断面図である。図12は本発明のタービンホイールの一実施の形態の第2変形例におけるワイヤ保持ピンを示す断面図である。なお、図11及び図12において、図1図10に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0062】
図11に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態の第1変形例は、一実施の形態のワイヤ保持ピン46が中空構造であるのに対して(図9参照)、ワイヤ保持ピン46Aが中実構造のものである。具体的には、ワイヤ保持ピン46Aは、第1の実施の形態と同様に、第1ピン部84Aと第2ピン部85Aとで構成された段付きの中実構造のかしめピンである。第1ピン部84Aには、先端部を2分割する直線状の溝部88Aが設けられている。すなわち、第1ピン部84Aは、互いに離隔可能に溝部88Aにより分割された2つの分割片89Aを先端部に有している。第1ピン部84Aの溝部88Aの端面側の開口縁には面取部87Aが設けられている。
【0063】
ワイヤ保持ピン46Aは、第1ピン部84Aの溝部88Aの長手方向がピンスロット部67の延在方向と略平行となるように配置される。換言すると、ワイヤ保持ピン46Aは、2つの分割片89Aの並び方向がピンスロット部67の延在方向に対して略直交するように配置される。ワイヤ保持ピン46Aは、第1ピン部84Aの先端部の2つの分割片89Aがそれぞれ外側へ屈曲されてホイール本体45の第2タブ部66の座ぐり部68の表面に押し当てられることで、第2タブ部66に固定されるように構成されている。ワイヤ保持ピン46は、例えば、マイナスドライバのような工具で2つの分割片89を外側へ押し広げてかしめることが可能である。
【0064】
図12に示す本発明のタービンホイールの一実施の形態の第2変形例は、一実施の形態のワイヤ保持ピン46の第1ピン部84の先端部が2分割の構造であるのに対して(図7及び図9参照)、ワイヤ保持ピン46Bの第1ピン部84Bの先端部が4分割の構造のものである。具体的には、第1ピン部84Bの先端部には、第1ピン部84Bの軸方向に延在する4つのスリット88Bが設けられている。4つのスリット88Bは、ワイヤ保持ピン46Bの中心点を中心としてそれぞれ90度回転した位置に形成されている。すなわち、第1ピン部84Bは、互いに離隔可能に分割された4つの分割片89Bを先端部に有している。ワイヤ保持ピン46Bは、第1ピン部84Bの先端部の4つの分割片89Bがそれぞれ外側へ屈曲されてホイール本体45の第2タブ部66に押し当てられることで、第2タブ部66に固定されるように構成されている。
【0065】
上述した本発明のタービンホイールの一実施の形態の第1変形例及び第2変形例によれば、前述した一実施の形態と同様に、タービンホイール40の第2タブ部66をかしめずにワイヤ保持ピン46A、46Bのみをかしめることで、ワイヤ保持ピン46A、46Bをタブ部66に固定することができる。したがって、ワイヤ保持ピン46A、46Bの固定時におけるタービンホイール40の第2タブ部66での残留引張応力の発生を抑制することができる。
【0066】
また、上述した本発明のタービンホイールの一実施の形態の第1変形例によれば、ワイヤ保持ピン46Aを中実構造としたので、ワイヤ保持ピン46Aの製作が一実施の形態における中空構造のワイヤ保持ピン46よりも容易である。
【0067】
また、上述した本発明のタービンホイールの一実施の形態の第2変形例によれば、ワイヤ保持ピン46Bが4つの分割片89Bを有するので(ワイヤ保持ピン46Bの先端部を4分割の構造としたので)、ワイヤ保持ビン46Bをピンスロット部67に挿入する際に、ワイヤ保持ビン46Bの4つの分割片89Bの位置をピンスロット部67の延在方向に対して調整する必要がない。すなわち、4つの分割片89Bを任意の位置でワイヤ保持ビン46Bの第1ピン部84Bをピンスロット部67に挿入しても、4つの分割片89Bのうちの少なくとも2つの分割片89Bを第2タブ部66に押し付けることが可能である。それに対して、一実施の形態のワイヤ保持ピン46では、2つの分割片89の並び方向をピンスロット部67の延在方向に配置して第1ピン部84をピンスロット部67に挿入すると、一方の分割片89を第2タブ部66に押し付けることができない虞がある。したがって、ワイヤ保持ビン46Bの組立性が一実施の形態の場合よりも向上する。
【0068】
[その他の実施形態]
なお、本発明は上述した一実施の形態及びその変形例に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0069】
例えば、上述した一実施の形態及びその変形例においては、分割片89、89A、89Bを2つ及び4つ有するワイヤ保持ピン46、46A、46Bの構成の例を示したが、ワイヤ保持ピンが分割片を2つ及び4つ以外の複数有する構成も可能である。すなわち、ワイヤ保持ピンの第1ピン部の先端部に複数の分割片を設ける構成が可能である。ワイヤ保持ピンの複数の分割片をかしめることで、第2タブ部66をかしめることなく、ワイヤ保持ピンを第2タブ部66に固定することができる。
【符号の説明】
【0070】
40…タービンホイール、 41…タービン動翼、 42…固定ワイヤ、 46、46A、46B…ワイヤ保持ピン、 63…嵌合溝、 64…ホイール植込み部(植込み部)、 66…第2タブ部、 67…ピンスロット部、 68…座ぐり部、 70…第2収容部、 81…段差面、 82…中空部、 84、84A、84B…第1ピン部、 85…第2ピン部、 87…面取部、 89、89A、89B…分割片、 100…シム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12